23-24 イザボーレビト

2007年3月3日生まれ

シニア2シーズン目

シーズン獲得賞金:$81,000

世界ランキング:2位

シーズンランキング:2位

シーズンベストスコア 212.16(6位) 世界選手権

ショートプログラムシーズンベスト 73.73 世界選手権

フリーシーズンベスト 138.43 世界選手権

スピンレベル4率 24/39 = 61.5%(国際大会:20/33 = 60.6%)

ステップレベル4率 8/13 = 61.5%(国際大会:6/11 = 54.5%)

スピンオールレベル4 0/6(国際大会:0/5)

スピンステップオールレベル4 0/6(国際大会:0/5)

ジャンプ回転不足率 3/67 =4.48%(国際大会:3/57 = 5.26%)

ジャンプ回転不足なし 3/6(国際大会:2/5)

スピンステップオールレベル4ジャンプ回転不足なし 0/6(国際大会:0/5)

 

○23-24シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
CS Nebelhorn Trophy 1 198.79 69.30 129.49
Others Japan Open 3 135.63   135.63
GP Skate America 2 208.15 70.07 138.08
GP Grand Prix de France 1 203.22 71.83 131.39
GPF Grand Prix Final 5 191.86 56.53 135.33
NC US Championships 3 200.68 75.38 125.30
WC World Championships 2 212.16 73.73 138.43

レビト選手はシニア2シーズン目。現行ルールならまだジュニアに縛られる年齢で、今のシニアの中では最年少グループに入ります。昨季世界選手権4位ですので、今期こそ表彰台へ、というシーズンです。

初戦はネーベルホルン杯。あまり怖い相手もおらず198.79で優勝。スピンステップでレベル4が2つだけだったりと、それほどいい出来でもないですが初戦としては順調でしょうか。

今期はアメリカの中心選手としてジャパンオープンで来日してくれました。135.63とまずまずの滑り。

グランプリシリーズは当然スケートアメリカからということになります。ヘンドリックス選手との対戦ですが、他にもグレン選手や吉田陽菜選手など多士済々といった顔ぶれ。11番滑走出てきて70.07といい滑りを見せたのですが、この試合は70点台が3人とレベルが高い。首位にはヘンドリックス選手が75.92でいて5.85差。グランプリ初優勝にはやや高めなハードルとなります。フリーは10番滑走。3連続でアンダーローテーション付いたくらいでしっかりまとめ138.08でトータル208.15で首位に立って残り2人を待ちますがここは220点超えて行ったヘンドリックス選手の勝ち。グランプリ3戦目で3回目の2位という形になりました。

2戦目は1週空いてのフランス。ここはシード選手としてはイ・ヘイン選手がいて、ヨーロッパチャンピオンのグバノワ選手、好調のピンツァローネ選手、日本からは住吉選手樋口選手と言った実績のある顔ぶれがそろいます。ここのショートは最終滑走。スピンステップオールレベル4、基礎点満額引き出して71.83を出し首位に立ちます。2位とは5.10差。順当に行けば勝てそうというフリーも最終滑走。優勝へのターゲットスコアは126.98 シニアに上がってからのフリーのワーストは127.97 これは勝てる、と思ったかどうかわかりませんが、前半良かったところから中盤以降、アンダーローテーションがつき、耐える着氷になり、極めつけは最後のスピンが足替えのコンビネーションスピンのつもりがコンビネーションに出来ず足替えのキャメルスピンと認定され、その結果同じスピン2度目扱いで零点。このスピン零点で一気に危なくなって、フィニッシュしてリンクに座り込む。私大丈夫なの??? 非常に不安な得点待ちでしたが出てきたスコアは131.39 トータル203.22で逃げ切り優勝。グランプリシリーズ初制覇となりました。

 

2位と1位でファイナルへ。昨季は表彰台に乗っている試合です。5番滑走で出てきたショートは冒頭ルッツがまさかの2回転で零点に。コンビネーション苦手なのでリカバリーは3-2に。56.53の6位と出遅れます。もう失うものも無いフリーは1番滑走でしっかり滑って135.33を出しトータル191.86 残りのメンバー待ちますが結局5位に終わりました。

 

アメリカの1番手、という立ち位置は今シーズンも変わっていない、という情勢での全米選手権が1月にあります。昨年優勝からの2連覇狙い。ショートは最終滑走で出ましたノーミス。75.38で首位に立つのですが2位には全要素全ジャッジ+2以上を叩きだしたグレン選手が0.40の僅差で続きます。フリーも最終滑走で連覇へのターゲットスコアは135.09 しっかり滑れば勝てる、という水準ですが冒頭のコンビネーションで転倒。これで際どくなったものの中盤までは頑張っていたのですが残り2つ、フリップ、ループと連続で転倒。合計3転倒では点が伸びず125.30 トータル200.68は3位。連覇はならず。それでも世界選手権の代表には選出されました。

 

4大陸には出ないのがアメリカスタイル。ナショナルと4大陸が近すぎます。というわけで今期は世界選手権へ直行。今期は昨季より不安定ではあるけど、それでも優勝争いをする一角だよね、というくらいの位置にいます。ショートプログラムは35人中33番滑走。グランプリファイナルはしくじりましたが同じ轍は踏まない。アテンションが1つ付いたくらいでほぼミスなく滑って73.73はISUパーソナルベスト更新。この後ヘンドリックス選手に抜かれますが2位で折り返します。フリーは先に滑った坂本選手を超えるには149.24が必要。さらにあと2人残している。優勝には人生最高の演技が必要だし表彰台にしてもかなりのスコアを出しておきたい場面。飛ぶこと、降りることに集中していたでしょうか、ルッツ2本は!とeが付き、最後のスピンはVがつく。でも遠くから見ると完璧。150点あるかも、という坂本選手を慌てさせた演技で138.43 トータル212.16で2位につけてあと2人。そのまま残ってワールド銀メダルを獲得しました。

 

○要素別スコア

Event Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Nebelhorn Trophy 198.79 102.20 97.59 64.57 3.96 20.69 12.98
Japan Open 135.63 67.55 68.08 44.22 4.02 9.57 9.74
Skate America 208.15 107.75 100.40 64.70 5.48 23.79 13.78
Grand Prix de France 203.22 103.80 99.42 64.70 4.29 20.30 14.51
Grand Prix Final 191.86 92.65 99.21 56.98 0.77 22.17 12.73
US Championships 200.68 102.04 102.64 62.47 0.71 23.60 15.26
World Championships 212.16 106.90 105.26 64.35 5.23 23.16 14.16

今期はワールドの212.16が最高。グランプリファイナルの191.86がワーストでした。

技術点は100点を超えることが多いです。スケートアメリカの107.75が最高。このスコアは今季全選手中の11位タイ、ISU公認では10位タイにあたります。

PCSの方は100点前後でワールドで105.26まで出してきました。今シーズン全選手中3位です。

ジャンプの基礎点は64点台の試合が多く、64.70が最高でした。これは割と平凡な水準になってきます。加点の方はマイナス無しで全試合プラスが付きました。最高が5.48 これもそれほど高いものにはなっていませんでした。

スピンは23点台。これも割と普通のスコアです。ステップ系要素は全米選手権で15.26がありますが、国際大会では14.51が最高でした。全選手中11位タイ。ISU公認試合だけなら9位タイとなります。

何で稼ぐ? というのはあまりなく、強いて言えばPCSが高いという構図です。

 

○要素別偏差値

Event Total J Base J GOE Spin Step PCS
Nebelhorn Trophy 64.82 64.10 63.73 51.73 58.97 64.80
Skate America 68.27 64.24 66.84 64.23 62.89 67.12
Grand Prix de France 66.45 64.24 64.41 50.16 66.47 66.31
Grand Prix Final 62.27 55.99 57.19 57.70 57.75 66.14
US Championships 65.52 61.86 57.07 63.47 70.15 68.96
World Championships 69.74 63.87 66.33 61.69 64.75 71.12

偏差値で見るとトータルスコアは60台中盤から後半。世界選手権は69.74と70近いところに達しました。

ジャンプの基礎点は60台前半。加点の方も60台中盤です。たまにしくじりますがそれでも50台後半まではあります。

スピンは偏差値でだいぶばらついていて、いい時は60台中盤まで出ますが悪いと50と平均レベルまで落ち込みます。

ステップ系要素は全米選手権で70に乗っていますが国内参考記録。国際大会では60台中盤あたりまでです。

PCSは世界選手権で70台の偏差値を出していて、それ以外も60台中盤から後半です。

何か突出してこの要素が得意、というものはなく、大きな穴が無く全体的にスコアを出してくる、という選手です。

 

イザボーレビト 要素別偏差値23-24

レーダーチャートはバランス型ですが、左上がやや凸に見えます。

右上右下のばらつきが大きい選手は多いですが、レビト選手は下のばらつきが大きく、左下も結構ばらつきます。今期は全体的に不安定だった、ということなようです。

 

●シーズン最高の基礎点構成

○グランプリフランス ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz!+3T ! 10.10   0.17 10.27 0.333
2 2A   3.30   0.99 4.29 3.000
3 FCSp4   3.20   0.91 4.11 2.778
4 3F   5.83 x 1.21 7.04 2.222
5 CCoSp4   3.50   0.60 4.10 1.667
6 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.000
7 LSp4   2.70   0.81 3.51 2.889
  TES   32.53   5.86 38.39  

ショートプログラムの最高基礎点は32.53でした。ルッツからの3-3を飛び1.1倍は単独フリップ、スピンステップオールレベル4で32.53です。今期全選手中5位タイ、ISU公認だけなら4位タイの基礎点です。多くの選手が目指す基礎点構成になっています。

コンビネーションを1.1倍の方へ入れれば0.48基礎点が上がって33.01にまで出来ます。

レビト選手はセカンドループが飛べますので今の構成でトーループをループに替えて基礎点0.70上げることは出来てその場合33.23になります。セカンドループを1.1倍に持ってくれば33.78まで上げることが可能です。いまより1.25基礎点を上げることが可能という計算ですが、ハイリスクミドルリターンでしょうか。ただ、セカンドループとセカンドトーループ、それほど得意度に差が無い選手のようにも感じますので、レビト選手の場合は選択肢に入ってくるかもしれません。

 

スケートアメリカ フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T   10.10   1.18 11.28 1.889
2 2A   3.30   0.75 4.05 2.333
3 3F   5.30   1.21 6.51 2.333
4 2A   3.30   0.75 4.05 2.444
5 CCoSp3   3.00   1.07 4.07 3.556
6 3Lz+1Eu+3S< 10.82 x -1.10 9.72 -1.889
7 ChSq1   3.00   0.86 3.86 1.556
8 3F+2T   7.26 x 0.91 8.17 1.667
9 3Loq q 5.39 x -0.28 5.11 -0.667
10 FCSp4   3.20   1.10 4.30 3.444
11 StSq4   3.90   1.17 5.07 2.889
12 FCCoSp4   3.50   1.00 4.50 2.778
  TES   62.07   8.62 70.69  

フリーは62.07が最高基礎点でした。3連続のサルコウがアンダーローテーション。これをしっかり基礎点満額取れれば63.02に基礎点を上げることができます。また、スピンも1つレベル3があり、ここでも0.50基礎点が下がるので63.52がこの構成の満額基礎点です。

3連続で3つ目に3回転のサルコウを入れるというのは男子では標準構成ですが女子では少数派。トリプルアクセル以上の高難度ジャンプがあるとこれが価値を生んでくるのですが、シークエンスでアクセルを飛べるようになった今、単独ダブルアクセルを2つ跳んでおいて3連続にサルコウを入れるのは基礎点的にもあまり得ではないですし、GOEの幅という点でも損になっています。3F+2Tを3F+2Aにして、3連続は3Lz+2T+2Loにし、3Sは単独で前半に飛ぶ。ここまで出来ると1.22基礎点を上げることが出来て64.74まで出せます。3連サルコウよりもシークエンスのアクセルを習得したいという状況です。コンビネーションが苦手に見えるので、シークエンスでアクセルを飛ぶのは外野が勝手に思うよりはハードル高いのかなあ、とも思います。

 

○平均GOE3.100以上

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
US Championships FS 5 CCoSp4   3.50   1.50 5.00 4.222
US Championships SP 3 FCSp4   3.20   1.28 4.48 4.000
Japan Open FS 5 CCoSp3V   2.25   0.90 3.15 3.800
US Championships SP 6 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.778
World Championships SP 6 StSq3   3.30   1.23 4.53 3.778
World Championships FS 5 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.778
US Championships FS 11 StSq4   3.90   1.39 5.29 3.556
Skate America FS 5 CCoSp3   3.00   1.07 4.07 3.556
World Championships SP 7 LSp4   2.70   0.96 3.66 3.444
World Championships SP 3 FCSp4   3.20   1.14 4.34 3.444
Skate America FS 10 FCSp4   3.20   1.10 4.30 3.444
Japan Open FS 7 ChSq1   3.00   1.67 4.67 3.400
World Championships SP 5 CCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.333
Japan Open FS 10 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.200
Nebelhorn Trophy FS 11 StSq3   3.30   1.06 4.36 3.143
Nebelhorn Trophy SP 2 2A   3.30   0.99 4.29 3.143
World Championships FS 10 FCSp3   2.80   0.88 3.68 3.111
US Championships FS 7 ChSq1   3.00   1.57 4.57 3.111
World Championships FS 11 StSq4   3.90   1.23 5.13 3.111
Grand Prix de France FS 5 CCoSp4   3.50   1.10 4.60 3.111
Skate America SP 7 LSp4   2.70   0.85 3.55 3.111

レビト選手は意外と高GOEが出ていません。+4.000以上は全米選手権だけ。全米とジャパンオープン除くと+3.778が最高です。ステップの高評価が比較的多いです。レベル3でしたが世界選手権の+3.778は今シーズンのステップとしては、全選手中6位、ISU公認としては4位でした。

スピンでは足替えのコンビネーションスピンとフライングのキャメルスピンの高評価が見えます。世界選手権のCCoSpでもらった+3.778という評価は今シーズンの足替えのコンビネーションスピンとして全選手中5位でした。同じく世界選手権のFCSpで+3.444は今期のフライングのキャメルスピンとして全選手中2位です。ただ、スピンのミスも多く、得意なのか? というとどうなんでしょう? スピンのレベル4率は61.5%とトップ選手の中ではそれほど高くありません。そこがスピンのスコアがばらつく理由なわけですが、やはり得意なわけでは特にない、と受け取るのがただしいのかもしれません。

 

○3回転-3回転

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Nebelhorn Trophy SP 1 3Lz+3T   10.10   1.06 11.16 1.714
Nebelhorn Trophy FS 1 3Lz+3T   10.10   0.71 10.81 1.000
Japan Open FS 1 3Lz+3T   10.10   0.79 10.89 1.400
Skate America SP 1 3Lz!+3T ! 10.10   -0.08 10.02 -0.111
Skate America FS 1 3Lz+3T   10.10   1.18 11.28 1.889
Grand Prix de France SP 1 3Lz!+3T ! 10.10   0.17 10.27 0.333
Grand Prix de France FS 1 3Lz+3T   10.10   1.35 11.45 2.333
Grand Prix Final FS 1 3Lz+3Tq q 10.10   -0.67 9.43 -1.000
US Championships SP 1 3Lz+3T   10.10   1.52 11.62 2.333
US Championships FS 1 3Lz+3T F 10.10   -2.61 7.49 -4.444
World Championships SP 1 3Lz!+3T ! 10.10   0.25 10.35 0.333
World Championships FS 1 3Lz!+3Tq ! 10.10   -0.93 9.17 -1.444

3回転-3回転はルッツから飛んでいます。昨季はセカンドループを多用していましたが今季は無し。すべてセカンドがトーループです。

今期は跳んだのは14回。グランプリファイナルのショートは1つ目が2回転で単独にしていますので、コンビネーションの失敗というか微妙ですが飛びたかったところという意味ではカウントして全15回と見ても良いでしょうか。そのうちGOEプラスになったのは8回。5割を少し超える成功率です。転倒は1回で2回転になったの1回なので、大過失は15分の2と見ると、大きなミスにはならずにある程度点は取れていて計算できる要素、という見方もできます。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Nebelhorn Trophy FS 6 3Lz+1Eu+3Sq F 11.77 x -2.71 9.06 -4.429
Japan Open FS 6 3Lz+1Eu+3S   11.77 X 1.18 12.95 1.800
Skate America FS 6 3Lz+1Eu+3S< 10.82 x -1.10 9.72 -1.889
Grand Prix de France FS 6 3Lz+1Eu+3S< 10.82 x -1.94 8.88 -3.222
Grand Prix Final FS 6 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.10 12.87 1.778
US Championships FS 6 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.01 12.78 1.667
World Championships FS 6 3Lze+1Eu+3S e 10.47 x -0.60 9.87 -1.333

3連続はルッツからで3つ目3サルコウ型です。6番目の要素で1.1倍付きます。

今シーズン7回飛んでGOEプラスは3回。成功率は5割を切りました。

レビト選手は今期のルッツはショートフリーすべてコンビネーションで入ってくるという構成になっています。そうすると得意なジャンプなのか、とも思えるのですが、20回飛んでe1回に!5回とエッジ判定を取られる率が30%ありました。フリップの方がまだ今期は!が付いたのは2回だけで比較的エッジを取られる率は低いので、3連続はフリップからでもいいような、あるいはループあたりに付けてもいいようにも感じます。

 

 

 

シニア2シーズン目。昨季表彰台に乗ったファイナルは5位、昨季初制覇したナショナルは3位に。それでも昨季表彰台に乗れなかったワールドで2位に入り結果を残しました。多少不安定さを感じさせたシーズンでしたが一定の結果を残す。力は見せてくれたと思います。

来期は、そろそろ何か勝ちたい。坂本花織選手の壁をぶち破りたい、というシーズンになっていきます。得意がこれ苦手がこれ、というのがあまりはっきりしておらず、全体的に割と高評価だけどしくじることもある、という選手なので、一発の爆発力は無く220点の壁を破っていくのはまだ難しい。シーズンオフ、各要素の精度を上げてGOEを1つ1つ上げていくという作業になっていくのだろうと思います。

 

 

 

23-24 千葉百音

2005年5月1日生まれ

シニア1シーズン目

シーズン獲得賞金:$21,000

世界ランキング:15位

シーズンランキング:15位

シーズンベストスコア 214.98(4位) 4大陸選手権

ショートプログラムシーズンベスト 71.10 4大陸選手権

フリーシーズンベスト 143.88 4大陸選手権

スピンレベル4率 50/63 = 79.4%(国際大会:25/30 = 83.3%)

ステップレベル4率 12/20 = 60.0%(国際大会:6/10 = 60.0%)

スピンオールレベル4 1/10(国際大会:1/5)

スピンステップオールレベル4 1/10(国際大会:1/5)

ジャンプ回転不足率 35/103 = 34.0%(国際大会:17/50 = 34.0%)

ジャンプ回転不足なし 2/10(国際大会:1/5)

スピンステップオールレベル4ジャンプ回転不足なし 1/10(国際大会1/5)

 

○23-24シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
DL 木下トロフィー 3 177.25 58.70 118.55
DL げんさんサマーカップ 4 187.09 66.02 121.07
CS Autumn Classic 6 160.25 57.66 102.59
RT 近畿選手権 2 160.88 60.88 100.00
GP Skate America 6 177.79 64.24 113.55
GP Grand Prix de France 9 164.76 56.59 108.17
DL 東北高等学校選手権 1 56.13 56.13  
NC 全日本選手権 2 209.27 68.02 141.25
IH 全国高等学校選手権 2 180.24 59.71 120.53
4CC Four Continents 1 214.98 71.10 143.88
WC World Championships 7 195.46 62.64 132.82

千葉百音選手は昨季4大陸選手権で3位に入っていますが、基本的にはジュニアで活躍していた選手です。本格シニア参戦は今シーズンからとなります。今期から木下アカデミーへ移籍。ちょっと驚きでしたが、新天地でどんな力を見せるか楽しみでもありました。

 

シーズン序盤は8月に国内2戦。木下トロフィーは吉田陽菜選手、住吉りをん選手といった年の近い2人の後塵を拝して3位。げんさんサマーカップはそこにさらに坂本花織選手も加わって4位。昨季すでに200点を出している千葉選手としてはスコアもいまいちな序盤です。

国際大会は9月のオータムクラシックから。坂本選手に勝つのは厳しいけれど、他はビッグネーム無いですし、確実に2位には入ってきますかね、と見ていたらまさかの6位。160.25は国際大会でのジュニアに上がった20年以降のワーストスコア。どうしちゃったのですか? というレベルの驚きのスコアです。

9月末に一旦近畿選手権を挟みますが、ここでも160点台。2位ではあるので無事西日本へ進んで、西日本は免除なので全日本出場権は得ましたが、やっぱりおかしいくらいにスコアが伸びません。

グランプリデビュー戦はスケートアメリカ。ヘンドリックス選手、レビト選手という昨季の主役たちに、今季すでに4度目の対戦となる吉田陽菜選手やペトロキナ選手にアンバーグレン選手もいるという豪華メンバー。ショートはまずまずの出来で64.24までは出して5位スタート。3位とは5.83差。少し差があるものの表彰台はノーチャンスでもない、というフリーでしたが、ここでサルコウとルッツで2転倒。フリーは113.55と伸びずトータル177.79で6位に終わります。

グランプリ2戦目は1週おいてのフランス。初戦6位だと優勝してもファイナルは無いですが、来シーズンにつなげるためには上位に入って、できれば表彰台に乗ってポイントを獲っておきたいところ。ところがショートプログラム、冒頭フリップで回転不足での転倒。56.59で9位スタートとなります。フリーはダウングレード1つにアンダーローテーション6つ。ことごとくジャンプが決まらず108.17で終わりトータル164.76 総合9位となり、ランキングポイントも得られず。これはもしかしたら来期のグランプリ枠ないかも、という非常に残念な出来で前半戦を終えます。

 

11月に東北の高校の大会でショートプログラムを滑って56.13 小さな大会ながらやはり良くない出来です。そこから一カ月半で全日本。今シーズンのここまでのこの流れを見ていると、ちょっと圏外かな、と思わざるを得ない試合でした。

シーズン序盤の調子の悪さはスポーツ喘息によるもの。原因が分かったので全日本は大丈夫。そういった報道を聞いても半信半疑というか、それはそれ、点を取れるかどうかはまた別、としか思えない部分がどうしてもありました。全日本は第4グループの1番滑走。シニアの国際舞台組の中からでは最初の登場です。ここで今シーズン初めて、ほぼノーミス。68.02と久しぶりの会心の演技を見せます。この後有力選手もたくさんいるので何位で残るか? というのは読めなかったのですが、結局3位。首位とは10点以上の差が付きましたが、表彰台圏内で折り返します。フリーは22番滑走。ここで首位に出られれば表彰台が決まる、という局面。ターゲットスコアは134.17 パーソナルベスト137.70は持っているものの、今期のベストはここまで121.07 ショートはたまたま出たフロックか? それともしっかり復活したのか? 文字通り短いショートは乗り切れても、4分あるフリーをしっかり滑れるか? 全く読めないフリーでしたがここでもほぼミスのない演技で滑り切り、パーソナルベスト相当の141.25まで出してトータル209.27 首位に出て残り2人を待ちます。最終順位は2位。初の表彰台となりました。

代表選考は、国際大会ひどかったのと全日本2位と、どう見るか? 予想が付かなかったですが、4大陸と世界選手権、ダブル代表に決まりました。

 

次は4大陸の前に、インターハイを挟みます。ここでショートから転倒もあり、トータルスコア180.24で終わったあたりがまたシーズン後半を不安にさせます。

昨季3位に入っている4大陸選手権。韓国勢との勝負と見られる試合。26人中の19番滑走、強豪組の中では早い方の順番で出てきます。ここで全日本に続いてのノーミス。今度はスピンステップもすべてレベル4をもらってパーソナルベストの71.10で首位に立って折り返します。2位には安定のキムチェヨン選手が1.33差、3位はNHK杯覇者のジーグラー選手が2.85差、4位にトリプルアクセル持ちの渡辺倫果選手で3.88差。この辺までは全く優勝争いがわかりません。フリーは抽選でしたがそれでも最終滑走。2年連続の表彰台までは130.10 チャンピオンシップ初制覇までは133.59 優勝出来なければ表彰台にも乗れなさそうな僅差に上位がひしめきますが、全日本を再現できれば勝てるというシチュエーションです。ここで本当に全日本を再現したかのような演技。最後のルッツに!が付き、その前に1つqがあるというところまで全日本と同じで143.88のパーソナルベスト更新。トータル214.98と初の210点台に乗せて4大陸チャンピオンとなりました。

 

一躍表彰台候補となって臨むことになった世界選手権。ランキングも上がって最終グループ前のグループでショートプログラムを滑ります。コンビネーションをしっかり決めて、これは今回も行くかと思われたのですが、最後のルッツが1回転になり零点。それでも62.64と60点台には乗せますが13位と後半グループに入れず折り返します。フリーは8番滑走。序盤良かったのですが中盤のループがうまく入らずダウングレード。ただ、ミスはそれだけに抑えることが出来て技術点69.38まで持ってきます。滑走順早くPCSがあまり伸びませんでしたがフリー132.82のトータル195.46 ここで首位にでて第3グループ終わってもまだ2位。最終グループ3番目の坂本選手のところまで長く長くグリーンシートで待ち続けて、結局最終順位は7位。来期のグランプリシードの6位までは0.02差と迫る健闘を見せてシーズンを終えました。

 

○要素別スコア

Event Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
木下トロフィー 177.25 91.35 85.90 59.56 -4.55 23.56 12.78
げんさんサマーカップ 187.09 96.75 91.34 62.54 -2.37 22.57 14.01
Autumn Classic 160.25 74.73 88.52 48.64 -9.36 22.25 13.20
近畿選手権 160.88 81.20 81.68 54.26 -9.08 23.27 12.75
Skate America 177.79 89.44 90.35 60.13 -5.03 20.45 13.89
Grand Prix de France 164.76 80.35 85.41 55.33 -9.45 22.41 12.06
東北高等学校選手権 56.13 29.86 27.27 15.09 -0.64 10.34 5.07
全日本選手権 209.27 111.78 97.49 67.03 7.78 24.13 12.84
全国高等学校選手権 180.24 93.45 87.79 58.85 2.04 22.79 9.77
Four Continents 214.98 114.21 100.77 67.03 7.65 24.50 15.03
World Championships 195.46 100.38 95.08 57.34 5.48 24.04 13.52

スコアのばらつきが極めて大きいです。最高は214.98 全日本で209.27を出している一方、160点台が3試合。非常に不安定です。シーズン序盤はスポーツ喘息で体調が悪かったということですが、インターハイの180.24はそれとは関係なくスコア伸びなかったということになります。昨季もそうだったのですが、小さめな試合はスコアが悪いことが多く、大きい試合はしっかり点を出してくる傾向があります。

技術点は悪い時に70点台というのもありますが、4大陸選手権では114.21まで出しました。今シーズン全選手中4位にあたるスコアです。PCSの方は4大陸で100点に乗せました。この100.77で全選手中5位、ISU公認だけで見れば4位です。技術点もPCSも順位が変わらないです。

ジャンプの基礎点は67.03が最高。これがノーミス時の基礎点です。今シーズン全選手中10位の基礎点になります。トリプルアクセル以上が無い選手の中では3番目の高さです。

ジャンプの加点の方はマイナスの試合が目立ちますが全日本以降はプラスがもらえるようになりました。4大陸の7.65が今シーズン全選手中11位、ISU公認だけで見ると9位相当です。

スピンはシーズン後半24点台を出すようになってきました。4大陸の24.50が全選手中14位、ISU公認試合だけで見れば11位にあたります。

ステップ系要素も4大陸の15.03が最高です。全選手中4位、ISU公認だけなら3位にあたります。

各要素、10位前後までで収まっていて大きな穴、苦手な分野は無いですが、安定感には欠ける、ということなようです。

 

○要素別偏差値

Event Total J Base J GOE Spin Step PCS
木下トロフィー 56.89 58.75 46.29 63.31 57.99 55.17
げんさんサマーカップ 60.51 61.93 50.76 59.31 64.02 59.65
Autumn Classic 50.63 47.08 36.43 58.02 60.05 57.33
近畿選手権 50.86 53.09 37.01 62.14 57.84 51.70
Skate America 57.09 59.36 45.31 50.77 63.43 58.84
Grand Prix de France 52.29 54.23 36.25 58.67 54.46 54.77
全日本選手権 68.68 66.73 71.56 65.60 58.28 64.72
全国高等学校選手権 57.99 57.99 59.80 60.20 43.24 56.73
Four Continents 70.78 66.73 71.29 67.10 69.02 67.42
World Championships 63.59 56.38 66.84 65.24 61.62 62.73

偏差値で見るとトータルスコアは50前後の試合があったのが全日本でいきなり覚醒し、4大陸では70台の偏差値を叩きだしました。

ジャンプの基礎点は崩れると平均割れの40台の試合もありましたが、最高は66.73と60台後半まで出します。加点の方は崩れた時は30台とひどいことになっている一方で70台に乗せた試合もありました。非常にばらつきが大きい。

スピンは60前後が標準ですがいい時は60台後半です。ステップ系要素も同様。

PCSは50台が多かったですがシーズン後半は60台中盤まで出してきています。

各要素60台中盤から後半を出す力があって、ジャンプの加点は70台の偏差値を出せるということで、どの要素が苦手というのはないのですが、どの要素も非常にばらつきが大きいという形になっています。

 

 

千葉百音 要素別偏差値23-24

レーダーチャートはいい時はバランス型ですが、どこを見てもばらつきが大きいという形です。特にジャンプの加点のばらつきが大きいというのはだいたいどの選手もそうなるのですが、それ以外の部分のばらつきがここまで大きい選手もなかなかいません。

 

●シーズン最高の基礎点構成

○4大陸選手権 ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F+3T   9.50   1.36 10.86 2.556
2 2A   3.30   0.80 4.10 2.333
3 FCSp4   3.20   0.55 3.75 1.556
4 3Lz! ! 6.49 x 0.34 6.83 0.444
5 CCoSp4   3.50   0.85 4.35 2.333
6 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.333
7 LSp4   2.70   0.96 3.66 3.556
  TES   32.59   6.20 38.79  

ショートプログラムの最高基礎点は32.59でした。今シーズン全選手中4位、ISU公認のみで見れば3位にあたる基礎点です。フリップから3-3を飛んで単独ジャンプはルッツを1.1倍に置いてスピンステップオールレベル4で32.59 割とありがちな構成のようでいて、意外と他の選手でこれをしっかり出せた選手は今季いませんでした。

ここから1.1倍にコンビネーションの方を入れる、というようなことをしても0.36しか基礎点は上がりませんのでリスクとリターンは見合わないでしょうか。トリプルアクセル習得というようなことが無ければ、ショートはこの構成で安定度完成度高めるという方向へ行くのでしょう。

 

○4大陸選手権 フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F+3T   9.50   1.21 10.71 2.333
2 2A   3.30   0.80 4.10 2.444
3 3S   4.30   0.86 5.16 2.111
4 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.111
5 3Lo   4.90   1.12 6.02 2.333
6 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.000
7 3Fq+2T+2Lo q 9.13 x -0.45 8.68 -0.889
8 3Lz+2A+SEQ   10.12 x 1.10 11.22 1.778
9 FCCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.778
10 3Lz! ! 6.49 x 0.51 7.00 0.667
11 StSq4   3.90   1.39 5.29 3.444
12 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.889
  TES   64.34   11.08 75.42  

フリーは64.34まで基礎点を出しました。今シーズン全選手中6位の基礎点。ISU公認試合だけで見ると5位の基礎点です。2回飛ぶジャンプはルッツとフリップ。後半にルッツ2本とフリップが入り、3連続とシークエンスも入れていてかなり基礎点高くなる構成になります。この構成で143.88まで出していて、全選手中3位のシーズンベストでした。ここから基礎点を上げることは1.1倍をいじるとかスピンの組み合わせを変えるなどでいくらか可能ですがせいぜい1点以内です。高難度ジャンプ無しではここが限界。この構成での安定感を上げる方が先とは思われますが、これより上積みするには高難度ジャンプが求められます。以前は4回転トーループにチャレンジしていましたが、今オフにどういう選択をしていくでしょうか?

 

○平均GOE3.200以上(国際大会+全日本選手権より)

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
World Championships FS 12 LSp4   2.70   1.23 3.93 4.556
全日本選手権 FS 12 LSp3   2.40   1.06 3.46 4.222
Grand Prix de France FS 12 LSp4   2.70   1.16 3.86 4.222
Skate America SP 7 LSp4   2.70   1.12 3.82 4.111
Autumn Classic FS 12 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
Skate America FS 12 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
World Championships SP 7 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.889
Four Continents FS 12 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.889
Autumn Classic SP 7 LSp4   2.70   0.97 3.67 3.714
Four Continents SP 7 LSp4   2.70   0.96 3.66 3.556
全日本選手権 SP 7 LSp4   2.70   0.93 3.63 3.444
Four Continents FS 11 StSq4   3.90   1.39 5.29 3.444
Four Continents SP 6 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.333
Grand Prix de France SP 7 LSp4   2.70   0.85 3.55 3.333

千葉選手の評価が高い要素はレイバックスピンです。スピン、ではなくてレイバックスピンに限定されます。平均GOE+4.000以上が国際大会で5回ありました。世界選手権の最後のレイバックスピン、+4.556は今期全体の中で2位タイにあたる高評価です。レイバックスピンが得意な選手としてはこれまで宮原知子さんが有名でしたが、引退後の現在は、島田麻央選手、ヘンドリックス選手、そしてこの千葉百音選手の3人が常に高い評価を受ける選手となっています。

 

○セカンド3回転を含む要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
木下トロフィー SP 1 3F+3T< 8.66   -1.06 7.60 -2.200
木下トロフィー FS 1 3F+3T< 8.66   -1.06 7.60 -1.600
げんさんサマーカップ SP 1 3F+3Tq q 9.50   0.00 9.50 -0.200
げんさんサマーカップ FS 1 3F+3T   9.50   1.06 10.56 1.800
Autumn Classic SP 4 3Fq+3T< F 9.53 x -2.65 6.88 -4.857
Autumn Classic FS 1 3F+3T<< F 6.60   -2.65 3.95 -5.000
近畿選手権 SP 1 3F+3Tq q 9.50   -0.18 9.32 -0.400
近畿選手権 FS 2 2Aq+3T< < F 6.66   -1.68 4.98 -5.000
Skate America SP 1 3Fq+3T q 9.50   -0.30 9.20 -0.667
Skate America FS 1 3F+3Tq q 9.50   -0.15 9.35 -0.333
Grand Prix de France FS 1 3F+3T< 8.66   -2.04 6.62 -3.889
全日本選手権 SP 1 3F+3T   9.50   1.06 10.56 1.889
全日本選手権 FS 1 3F+3T   9.50   1.14 10.64 2.111
全国高等学校選手権 SP 1 3F+3T<< << F 6.60   -2.65 3.95 -5.000
全国高等学校選手権 FS 1 3F+3T   9.50   1.41 10.91 2.800
Four Continents SP 1 3F+3T   9.50   1.36 10.86 2.556
Four Continents FS 1 3F+3T   9.50   1.21 10.71 2.333
World Championships SP 1 3F+3T   9.50   1.36 10.86 2.444
World Championships FS 1 3F+3T   9.50   1.14 10.64 2.222

千葉選手のコンビネーションジャンプ、今期はフリップからの3-3をショートフリー共に冒頭で跳ぶのが基本となっていました。昨季はルッツからでしたが、難易度を下げたというよりはおそらくは、昨季はジュニアルールでショートで単独フリップが必須だから、ということだったと思われます。

このコンビネーションの確率が低いです。今期実際に飛んだのは19回、コンビネーションにならなかったものを入れると20回のうちGOEプラスになったのは8回なので成功率は40%でした。ただ、全日本以降は8回中7回成功。全日本、4大陸、世界選手権と大事な試合はすべて成功させています。シーズン後半の復調具合がここにはっきり表れています。それでもインターハイでは転倒がありました。大きな試合でないといい結果が出せないタイプなのでしょうか。大舞台に強い?

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
木下トロフィー FS 7 3F<+2T+2Lo 7.96 X -0.85 7.11 -1.800
げんさんサマーカップ FS 7 3F!<+2T+2Lo ! 7.96 X -1.27 6.69 -2.800
Autumn Classic FS 7 3F<+2T+2Lo 7.96 x -0.76 7.20 -1.571
近畿選手権 FS 7 3F!<+2T+2Lo< ! 7.59 X -1.84 5.75 -4.400
Skate America FS 7 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.30 9.43 0.667
Grand Prix de France FS 7 3F+2T+2Lo< 8.76 x -0.76 8.00 -1.333
全日本選手権 FS 7 3F+2T+2Lo   9.13 X 0.91 10.04 1.667
全国高等学校選手権 FS 7 3F+2T+2Lo   9.13 X 0.88 10.01 1.800
Four Continents FS 7 3Fq+2T+2Lo q 9.13 x -0.45 8.68 -0.889
World Championships FS 7 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.38 9.51 0.556

3連続ジャンプはフリーで後半最初のジャンプとして飛びます。フリップに2回転を2つ付けています。今シーズン10回飛んでGOEプラスは4回。成功率はここでも40%です。ただ、やはりシーズン後半は成功率が上がっていて、4大陸では軽いマイナス付きましたが、全日本、世界選手権と成功しています。

 

○ルッツで始まる要素(国際大会+全日本選手権より)

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Autumn Classic SP 1 3Lz   5.90   -1.30 4.60 -2.286
Autumn Classic FS 8 1Lz   0.66 x -0.26 0.40 -4.286
Autumn Classic FS 10 3Lz< F 5.19 x -2.36 2.83 -5.000
Skate America SP 4 3Lz< 5.19 x -0.74 4.45 -1.667
Skate America FS 8 3Lz< F 5.19 x -2.36 2.83 -5.000
Skate America FS 10 3Lz!<+2A+SEQ 8.82 x -1.21 7.61 -2.556
Grand Prix de France SP 4 3Lz+2T   7.92 x 0.76 8.68 1.222
Grand Prix de France FS 8 3Lz<+2A<+SEQ 8.10 x -1.76 6.34 -3.556
Grand Prix de France FS 10 3Lzq q 6.49 x -0.67 5.82 -1.111
全日本選手権 SP 4 3Lz   6.49 X 1.26 7.75 2.111
全日本選手権 FS 8 3Lzq+2A+SEQ q 10.12 X -0.25 9.87 -0.444
全日本選手権 FS 10 3Lz! ! 6.49 X 0.34 6.83 0.667
Four Continents SP 4 3Lz! ! 6.49 x 0.34 6.83 0.444
Four Continents FS 8 3Lz+2A+SEQ   10.12 x 1.10 11.22 1.778
Four Continents FS 10 3Lz! ! 6.49 x 0.51 7.00 0.667
World Championships SP 4 1Lz* * 0.00 x 0.00 0.00  
World Championships FS 8 3Lz+2A+SEQ   10.12 x 1.01 11.13 1.556
World Championships FS 10 3Lz! ! 6.49 x 0.42 6.91 0.667

千葉選手の課題はジャンプの安定感と思われます。ここでは今季のルッツジャンプをすべて拾ってみました。エッジのアテンションが目立つほか、qやアンダーローテーションもあり転倒もある。1回転になったジャンプもあります。ルッツから始まる要素はショートフリーで3回入れていて、主要大会で18回組み入れたことになりますが、GOEがプラスになったのは8回と50%に満たないです。ただ、これも、全日本以降は9回中7回はGOEプラスと成功率が上がります。それでも!は多数ついている。フリップにも!が付く傾向があるので、どちらかが苦手というタイプではなく、両方跳び分けが上手ではない、ということになります。

千葉選手は今季のジャンプ要素でアンダーローテーション以上の回転不足がついたものが34%あります。3回に1回は回転不足が付く。シーズン後半はだいぶそれが解消されたのが一気にスコアが上昇した理由でした。どのジャンプが苦手だから回転危なくなる可能性がある、というタイプではなく、すべてのジャンプがしっかり回り切れるか、回転足りなくなるかぎりぎりのところにいて、調子悪いと全部取られる。そんな風に見えます。

 

今シーズンはシニア本格参戦。グランプリシリーズで結果が出せず、これは最悪の場合来期グランプリ枠が回ってこずに国内ローカルの選手になってしまうかも、という危険な状態でした。それが全日本で大躍進。一気にシーズン後半の主役に。4大陸制覇によりチャンピオンシップの優勝者の仲間入りもし、来期以降への心配が一気に払しょくされました。

昨季もそうだったのですが、全日本や4大陸といった大きな試合では結果を出してきます。一方で、ブロック大会やインターハイのような国内ローカルな試合では点が全然出ません。大きな試合に合わせる調整力があるのか、ただ単に不安定なのだけどたまたま大きな試合に当てられる運の良さがあるのか。

来期は大学生になり、また生活環境が変わるわけですが、仙台から関西に移籍したのと比べれば変化は小さいでしょうか。練習環境は変わらないはず。シニア1年目の新鋭ではなく、シニアの中核選手として、グランプリシリーズは普通に表彰台に乗って来るよね、くらいの見られ方をすることになります。

荒川静香さん、羽生結弦さん。2人ともオリンピックの2シーズン前に明確な結果を出して、オリンピックでは優勝争う中心人物たちの1人、という位置付けになっていました。仙台から3人目、千葉選手も同じ道を行くことができるでしょうか。

 

23-24 ルナヘンドリックス

1999年11月5日生まれ

シニア8シーズン目

シーズン獲得賞金:$85,000

世界ランキング:3位

シーズンランキング:5位

シーズンベストスコア 221.28(2位) スケートアメリカ

ショートプログラムシーズンベスト 76.98 世界選手権

フリーシーズンベスト 145.36 スケートアメリカ

スピンレベル4率 23/33 = 69.7%

ステップレベル4率 7/11 = 63.6%

スピンオールレベル4 2/5

スピンステップオールレベル4 2/5

ジャンプ回転不足率 7/57 = 12.3%

ジャンプ回転不足なし 1/5

スピンステップオールレベル4ジャンプ回転不足なし 0/5

 

○23-24シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
Others Japan Open 2 140.31   140.31
GP Skate America 1 221.28 75.92 145.36
GP Cup of China 3 201.49 70.65 130.84
GPF Grand Prix Final 2 203.36 73.25 130.11
EC European Championships 1 213.25 74.66 138.59
WC World Championships 4 200.25 76.98 123.27

昨季はグランプリファイナル3位、ヨーロッパ選手権2位、世界選手権3位。主要大会すべて表彰台に乗ったもののあと一歩頂点には届かない。ということで今シーズンこそは! というシーズンになっていました。

今期はチャレンジャーシリーズには出場せず、初戦はジャパンオープンとなりました。参考記録ですが初戦からフリー140点台を出してきます。

グランプリシリーズは初戦のスケートアメリカから。シードは他にレビト選手がいて、それ以外もグレン選手に千葉百音選手、吉田陽菜選手、さらにエストニアのペトロキナ選手もいるという、今振り返って見ると豪華メンバーな試合。そんな中で最終滑走で出てきて75.92 2位と4.47差。フリーの基礎点低いヘンドリックス選手なので安全圏ではないですが優位に試合を進めます。フリーも最終滑走。優勝するには132.24が必要という中でほぼノーミスの滑りで145.36 グランプリ初戦からトータル221.28と220点台に乗せて豪華メンバーの中圧勝。グランプリシリーズ2勝目を上げます。

次はグランプリ4戦目の中国杯です。ここには吉田陽菜選手、渡辺倫果選手といったトリプルアクセル勢、韓国からキムイェリム選手、エストニアのペトロキナ選手といったところがいます。やはりショートから最終滑走。今回はアクセルが1回転半になって零点扱いに。それでも70.65が出て2位に5.56差をつけて首位で折り返します。フリーは最終滑走で133.33出れば優勝ということで十分可能な領域だったのですが、アンダーローテーションが2つ付いて、スピンステップのレベルも獲り切れず。130.84でトータル201.49 2.48差で3位。吉田陽菜選手のグランプリ初優勝を許す形になりましたが、ファイナル進出を決めました。

翌週にナショナルがあったのですが体調が優れないとのことで欠場。次戦はグランプリファイナルとなります。ファイナルですので当然豪華メンバー。坂本選手、レビト選手と言ったシード組との今季初対戦となります。この試合は6人中の4番滑走。冒頭のフリップこそオーバーターンになったものの、あとはミスなく滑り73.25 2人残して首位に立ちますが、最終滑走坂本選手が77.35で上へ行きます。基礎点で劣るのでフリーでの逆転はなかなか苦しいのですが、それでもハイスコアを出してプレッシャーを掛けたい5番滑走。体調不良にケガもあってショートは持ちこたえてもフリーの長さは厳しかったでしょうか。序盤よかったものの後半に入ってルッツが2回転に。次の3連続もフリップにqが付いて加点が得られず。技術点が61.73止まりでフリーは130.11 トータル203.36は際どく0.20差で1人残して首位には立ちましたが、最終滑走坂本花織選手ははるかかなたのスコアを出していき結局2位。前年よりも1つ順位は上げましたが栄冠をつかむことは出来ませんでした。

 

年が明けて次はヨーロッパ選手権です。昨季は2位。今年こそ、という試合で今年も当然大本命。ショートは2人残して登場。軽くqが1つ付いたくらいでしっかり滑って74.66 2位に4.96差をつけて首位に立ちます。ヨーロッパ選手権はしっかり抽選をするので首位でも最終滑走にならないフリー。最終グループ4番滑走。今期こそ、というプレッシャーのかかる局面でしたが、後半で3連続が付けられなかったくらいであとはミスなく滑りました。フリーは138.59 トータル213.25で首位に立って残り2人を待ちます。直後に滑ったグバノワ選手も自己ベストを出して迫ってきますが届かず。ヘンドリックス選手がヨーロッパ選手権初優勝。念願のチャンピオンシップのタイトルを獲得しました。

 

さらにもう1つ、と目指して世界選手権へ。ショートプログラムは最後から2番目の登場。直前にレビト選手がいい演技をして場が温まっていました。このショートが今季最高の演技。見事なパーフェクト演技で全要素全ジャッジプラス評価、76.98のパーソナルベストをマーク。2位に3.25差をつけて首位に立ちます。フリーは最後から2番目。先に滑った坂本選手がトータル222.96まで出しているのでその上へ出るには145.99が必要。パーソナルベストは145.53 シーズンベストも145.36を持っています。ノーミス出来れば出せる水準ですが、ここまでの滑走で見ると割と厳しめ判定側かなあ、という印象の試合になっていました。冒頭のコンビネーションが3-2になったのは後半3-3にする上積みを狙ったのか、セカンドに3回転入れられなかったのか。微妙な雰囲気で本心はわからなかったですが前半はしっかり滑っていきます。今期は後半のジャンプでやや苦しんでいる印象でしたが、結局この試合でもそれが出てしまいました。ルッツが2回転になったところで優勝が手元からこぼれていき、コンビネーションのセカンドがダウングレードなところで2位も遠ざかり。次のフリップで転倒したところで表彰台から落ちた形になりました。フリーは伸びずに123.27 トータルは200.25 最終的に4位ということになりました。

 

○要素別スコア

Event Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Japan Open 140.31 69.31 71.00 41.84 5.24 12.89 9.34
Skate America 221.28 112.34 108.94 62.57 8.40 26.11 15.26
Cup of China 201.49 95.69 105.80 57.19 1.60 22.81 14.09
Grand Prix Final 203.36 100.07 103.29 59.31 4.30 22.66 13.80
European Championships 213.25 107.39 105.86 60.45 5.15 26.19 15.60
World Championships 200.25 96.07 105.18 53.42 3.89 24.38 14.38

今期は5試合全試合で200点超えとなりました。スケートアメリカの221.28が最高。今シーズン全選手の中で2位です。

技術点はスケートアメリカで112.34まで出しました。世界選手権は残念な96.07です。技術点のイメージの選手ではないですが、112.34は全選手中5位にあたるスコアでした。

PCSはすべて100点台。スケートアメリカの108.94が最高で坂本選手に次ぐ2位のスコアです。

ジャンプの基礎点は60点前後でこれもスケートアメリカが最高値。62.57ありました。ただ、流石にこれはそれほど高いとは言えません。トリプルアクセル以上のジャンプがあると70点台の基礎点になる選手が何人もいますし、高難度ジャンプ無しでも67点台までは出ます。坂本選手で65.40の試合がありますので3点近くビハインドがあります。

ジャンプの加点もスケートアメリカの8.40が最高です。マイナスになった試合はありませんが、それほど伸びていない試合も多いです。この8.40は今シーズンの全選手の中で7位相当、ISU公認のみなら6位にあたります。

スピンは26点台を普通に叩きだしてきますが22点台と伸びない試合もありました。ヨーロッパ選手権の26.19が最高。全体2位の高評価です。

ステップ系要素も15点台を出す力があり、ヨーロッパ選手権の15.60が最高でした。これが今シーズンの全選手中最高評価になります。

ジャンプ・・・、ジャンプさえ決められれば・・、というヘンドリックス選手です。

 

○要素別偏差値

Event Total J Base J GOE Spin Step PCS
Skate America 73.10 61.97 72.83 73.59 70.15 74.15
Cup of China 65.81 56.22 58.89 60.28 64.41 71.57
Grand Prix Final 66.50 58.48 64.43 59.68 62.99 69.50
European Championships 70.14 59.70 66.17 73.91 71.81 71.61
World Championships 65.36 52.19 63.59 66.61 65.83 71.05

偏差値で見るとトータルスコアは60台半ば以上は必ず出ます。スケートアメリカは70台中盤に近いところまで来ました。

ジャンプの基礎点は良い時で60台に乗りますが、5試合中4試合は60に届かず。平凡な範疇になります。加点の方は60台が標準でいい時に70を超える力があります。

スピンはばらつきありますがいい時は70台をしっかり出してきます。

ステップも同様で70台の力があり、PCSは70台標準です。

やはりジャンプの評価が他の要素と比べてはっきり落ちますが、他の要素は超一流という水準になっています。

 

 

 

ルナヘンドリックス 23-24シーズン要素別偏差値

レーダーチャートで表すと右側が凹む形。ジャンプがどうしても凹みます。ただ、下も左下もばらつきが大きいです。スピンのレベル4率が60%台とトップ選手の中では意外と低いです。昨季は95.6%のスピンレベル4率でしたので今期著しく悪化していました。その辺がこのばらつきに出ていそうです。

 

●シーズン最高の基礎点構成

ヨーロッパ選手権 ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F   5.30   1.44 6.74 2.778
2 2A   3.30   0.85 4.15 2.444
3 CCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.667
4 3Lzq+3T q 11.11 x -0.51 10.60 -0.889
5 StSq4   3.90   1.56 5.46 3.889
6 FCSp4   3.20   1.01 4.21 3.111
7 LSp4   2.70   1.27 3.97 4.667
  TES   33.01   6.92 39.93  

ショートプログラムの最高基礎点はヨーロッパ選手権の33.01でした。今期全選手中3位、ISU公認大会だけで見れば2位にあたる高い基礎点です。基礎点が高くなる印象の無い選手ですが、ショートはルッツとフリップ飛べれば基礎点はしっかり確保できます。1.1倍に3-3で持ってきてスピンステップオールレベル4 これより上を出すにはトリプルアクセル投入か、セカンドループを持ってくるしかありません。

フリーは基礎点で劣るので、ショートでこの構成をしっかりこなしてリードを確保したい、という選手になります。

 

スケートアメリカ フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3Tq q 10.10   -0.08 10.02 -0.111
2 2A   3.30   0.75 4.05 2.333
3 3F   5.30   1.44 6.74 2.667
4 2A   3.30   0.85 4.15 2.556
5 CCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.333
6 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.000
7 3Lz+2T   7.92 x 1.35 9.27 2.333
8 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.68 9.81 1.444
9 3S   4.73 x 0.92 5.65 2.111
10 FCCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
11 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.333
12 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.667
  TES   60.38   12.04 72.42  

フリーは最高基礎点が60.38でした。このスコアは本人がもくろんでいる構成をすべてしっかりこなして出したスコアです。

2回飛ぶジャンプはルッツとフリップ。高い基礎点が出そうな組み合わせなのですが、トリプルループが構成に入っていない6トリプル構成です。そのため基礎点はそれほど高くなっていません。トリプルアクセルを入れると60点台後半で70点近いところまで出ますし、さらに4回転まで入ると70点を超えてくるので基礎点で10点ほどのビハインドを負うことになります。高難度ジャンプが無くても例えばキムチェヨン選手は64.68まで出してきますので、基礎点で4点ほどの差がついてきます。坂本花織選手で62.65がありますので2点以上の差が付きます。もう少し欲しいところだと思いますが、ループなしだとこれ以上基礎点を上げるのはセカンド3回転を後半に持ってくる、くらいしかありません。

基礎点ビハインドがあるのでノーミスしないといけない。他の選手とは出来栄え勝負でいけるけれど、坂本選手と出来栄え勝負するとなかなか苦しい中で基礎点もビハインドがある。出来栄えを上げていくか、ループを習得するか。前者を選んでいるわけですが、どうしてもノーミス勝負すると苦しい。あと2シーズン、次のオリンピックまでどうしていくでしょうか。

 

○平均GOE3.800以上

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
European Championships SP 7 LSp4   2.70   1.27 3.97 4.667
Skate America SP 7 LSp4   2.70   1.23 3.93 4.556
European Championships FS 12 LSp4   2.70   1.16 3.86 4.333
World Championships SP 5 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.222
Japan Open FS 12 LSp3   2.40   1.04 3.44 4.200
Skate America SP 5 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
World Championships FS 12 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
World Championships SP 3 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
European Championships FS 5 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
European Championships SP 5 StSq4   3.90   1.56 5.46 3.889
Grand Prix Final SP 5 StSq4   3.90   1.56 5.46 3.889
Cup of China SP 7 LSp3   2.40   0.93 3.33 3.889
Japan Open FS 5 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 3.800
Cup of China SP 3 CCoSp3   3.00   1.11 4.11 3.778
Skate America SP 3 CCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.778
World Championships SP 7 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.778
European Championships SP 3 CCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.667
Cup of China SP 5 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.667
European Championships FS 6 ChSq1   3.00   1.79 4.79 3.667
European Championships FS 11 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.667
Skate America FS 12 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.667
Skate America SP 6 FCSp4   3.20   1.19 4.39 3.667
Japan Open FS 11 StSq3   3.30   1.21 4.51 3.600

ヘンドリックス選手が高評価を得ている要素はスピンとステップです。コレオも1つ入っていますが傾向としては中盤で入ってくるコレオより演技終盤に入るステップの方が評価が高くなっています。

ジャンプは1つも高評価リストに乗ってきません。ジャンプの最高評価は平均GOE+3.111のショートプログラム冒頭のフリップというのが2回ありました。

ヨーロッパ選手権のレイバックスピンでもらった+4.667という評価は、今シーズンの全レイバックスピンの中の最高評価でした。

 

○3回転-3回転

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Japan Open FS 1 3Lz+3T< 9.26   -0.39 8.87 -0.600
Skate America SP 4 3Lz+3T< 10.19 x -0.08 10.11 -0.111
Skate America FS 1 3Lz+3Tq q 10.10   -0.08 10.02 -0.111
Cup of China SP 4 3Lz+3Tq q 11.11 x 0.08 11.19 0.000
Cup of China FS 1 3Lz+3T< 9.26   -1.94 7.32 -3.222
Grand Prix Final SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.52 12.63 2.444
Grand Prix Final FS 1 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.444
European Championships SP 4 3Lzq+3T q 11.11 x -0.51 10.60 -0.889
European Championships FS 1 3Lz+3T   10.10   1.26 11.36 2.111
World Championships SP 1 3F+3T   9.50   1.44 10.94 2.556
World Championships FS 7 2Lz+3T<< <<  3.74 x -0.66 3.08 -3.222

3回転-3回転はショートは1.1倍のところで、フリーは冒頭でルッツから飛んできます。世界選手権だけ安全策だったのでしょうか、ショートでフリップから飛んだものがあります。

今シーズンは11回構成にいれて、1つ目が2回転になったのが1つ、セカンドのアンダーローテーションが3つ、qが3つでクリアに飛べたのは4回でした。成功率はそれほど高くないですが、シーズン中盤以降、大事な試合では決まっていました。それだけに世界選手権のフリーは残念でした。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Japan Open FS 8 3S+2T+2Lo   8.03 X 0.86 8.89 1.800
Skate America FS 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.68 9.81 1.444
Cup of China FS 8 3F<+2T+2Loq 7.96 x -1.21 6.75 -2.889
Grand Prix Final FS 8 3Fq+2T+2Lo q 9.13 x -1.44 7.69 -2.778
World Championships FS 9 3Sq+2T+2Lo q 8.03 x -0.80 7.23 -1.778

3連続ジャンプは今シーズンは8番目の要素として入れています。基本はフリップからですが、世界選手権ではそこで入らずに最後のサルコウからリカバリーで入れていました。

これが6試合で5回入ってGOEプラスは2回。大事な方の試合3つで決まらなかったという形になっています。

 

○ステップの要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Japan Open FS 11 StSq3   3.30   1.21 4.51 3.600
Skate America SP 5 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
Skate America FS 11 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.333
Cup of China SP 5 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.667
Cup of China FS 11 StSq3   3.30   1.08 4.38 3.222
Grand Prix Final SP 5 StSq4   3.90   1.56 5.46 3.889
Grand Prix Final FS 11 StSq3   3.30   0.75 4.05 2.222
European Championships SP 5 StSq4   3.90   1.56 5.46 3.889
European Championships FS 11 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.667
World Championships SP 5 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.222
World Championships FS 11 StSq3   3.30   0.99 4.29 3.000

ステップは非常に高評価の選手です。世界選手権ショートの+4.222は今季の全体の最高評価ステップでした。他の選手の最高が+3.889ですので、それ以上の評価をヘンドリックス選手は4回も今期受けているということになります。ステップの評価はとにかく高いです。昨季もステップの最高評価はヘンドリックス選手。ステップ2連覇、なんてタイトルはありませんが、今期も素晴らしいステップでした。

 

今期、ついに、ヨーロッパ選手権を制しました。ジュニア時代は全く無名。ジュニアグランプリシリーズの表彰台経験もなければ、世界ジュニアの出場経験もありません。そんなところから24歳にしてついにチャンピオンシップを制覇。花を咲かせることが出来ました。

まだ、もう1つ上、世界選手権、さらに上、オリンピックがあります。来期はグランプリファイナル、世界選手権、坂本花織選手を破って、タイトルを獲りたいというシーズンになるのだろうと思われます。

 

23-24 坂本花織

2000年4月9日生まれ

シニア7シーズン目

シーズン獲得賞金:$125,000

世界ランキング:1位

シーズンランキング:1位

シーズンベストスコア 226.13(1位) スケートカナダ

ショートプログラムシーズンベスト 77.35 グランプリファイナル

フリーシーズンベスト 151.00 スケートカナダ

スピンレベル4率 54/63 = 85.7%(国際大会:35/39 = 89.7%)

ステップレベル4率 12/21 = 57.1%(国際大会:8/13 = 61.5%)

スピンオールレベル4 5/10 (国際大会:4/6)

スピンステップオールレベル4 1/10(国際大会1/5)

ジャンプ回転不足率 5/107 = 4.67%(国際大会:3/67 = 4.48%)

ジャンプ回転不足なし 7/10(国際大会:4/6)

スピンステップオールレベル4ジャンプ回転不足なし 1/10(国際大会:1/5)

 

○23-24シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
DL げんさんサマーカップ 3 187.62 67.28 120.34
CS Autumn Classic 1 203.20 75.62 127.58
Others Japan Open 1 149.59   149.59
DL 全兵庫選手権 1 222.39 78.15 144.24
GP Skate Canada 1 226.13 75.13 151.00
GP Grand Prix Espoo 1 205.21 69.69 135.52
GPF Grand Prix Final 1 225.70 77.35 148.35
NC 全日本選手権 1 233.12 78.78 154.34
NG 国民体育大会 1 225.02 79.66 145.36
IC Challenge Cup 1 212.43 67.76 144.67
WC World Championships 1 222.96 73.29 149.67

坂本選手は世界選手権3連覇のかかるシーズンでした。

初戦はげんさんサマーカップから出てきます。187.62で3位。吉田陽菜選手と住吉りをん選手に敗れました。あれ? という感じではありますが、まあ初戦です。

国際大会は9月に入ってチャレンジャーシリーズのオータムクラシックから。ここでは200点に乗せた203.20 周りにスコアが伸びる選手がいなかったこともあって圧勝です。ちょっと意外ですが、チャレンジャーシリーズとしては2017年のアジアンオープンフィギュア以来6年ぶりの優勝。いつもはあまりシーズン序盤から点が伸びる選手ではないのですが、今期は早い仕上がりでした。

 

ジャパンオープンをこなして、翌週には地元兵庫のローカル大会。参考記録すぎますが10月時点で早くも220点台を出します。10月3戦目でスケートカナダです。こんな連戦して大丈夫?? とも思われますが、この時期の連戦は坂本選手にはよくあるスケジューリングです。キムチェヨン選手、渡辺倫果選手、松生理乃選手あたりが相手となる試合。ショートから最終滑走で出てきて75.13 ルッツでアテンションついたりと完ぺきではないのですがこのスコア。5点近いリードを持ってのフリーは全要素全ジャッジプラス2以上で151.00 結果的に今シーズンのフリーのベストとなるスコアを出して圧勝。グランプリ通算3勝目となりました。

2戦目はレギュラー化してきたフィンランドエスポー。表彰台でファイナル確定ですが、そうじゃなくて連勝したいというところ。また今回もキムチェヨン選手がいて、他に住吉選手やアンバーグレン選手がいます。そういった力関係の中でショートはフリップが2回転になってセカンドはちゃんと3回転を付けノーバリューは回避。69.69とスコア伸びませんでしたがそれでも首位に立ちます。1.04差とはいえショートから首位に立てばフリーは強い。やや辛め判定の試合の中で坂本選手もルッツでeが付き、サルコウはアンダーローテーション取られましたがそれでも135.52出してトータル205.21を出せば2位に15点差つけての勝利。グランプリシリーズ連勝で通算4勝目。ファイナル進出を問題なく決めました。

 

実はまだ勝ったことのないグランプリファイナル。何なら表彰台にも乗ったことがありません。ジュニアグランプリファイナルも世界ジュニアも表彰台に乗っていますので、主要大会で持っていないメダルはこれだけです(ユースオリンピックも6位でメダル無いけど)。

ここでもまたショートから最終滑走で出てきて全要素全ジャッジ+2以上、77.35というシーズンベストなだけでなく、結果的に今シーズン全体のショートの最高スコアを出してトップに立ちます。ただ、ショート1位なのまでは昨季と同じ。フリーで崩れると昨年と同じ轍を踏むことになります。フリーはまたも最終滑走。優勝へのターゲットスコアは126.02 これは余裕のある試合展開になりました。中盤フリップでミスが出てコンビネーション入らなかったものの、最後のループに2Tを付けてリカバリー。148.35を出して結果的には20点以上の大差をつけて問題なく優勝。これでオリンピック以外のシニアのビッグタイトルを揃えたことになりました。

 

間1週おいて3連覇がかかる全日本選手権です。久しぶりに最終滑走でもなく最終グループ1番滑走で出てきます。強豪ぞろいの全日本。今季一番難易度が高い試合になる可能性もあったのですが、全要素全ジャッジプラス評価を得て78.78 2位に8.86の大差をつけており、意外と楽な展開に。フリーはやっぱり最終滑走に収まって優勝へのターゲットスコアは130.50 フリーはスピンでV2つ取られるといういまいちな部分こそありましたが、ジャッジの評価は全要素プラスで154.34まで出してトータル233.12 2位とは23.85差。問題なく3年連続4度目の全日本制覇を果たしました。

 

年が明けて1月は国体に登場。子供の喧嘩に親が出る状態で当然優勝。2月は調整試合チャレンジカップ。ここではショートでルッツが2回転になるミス。67.76では青木祐奈選手に上を行かれまさかの2位。これで久しぶりにフリーを最終滑走を避けることが出来ましたが終盤のループで転倒。ピリッとしない出来ながらも144.67は出してトータル212.43 今シーズン最小の3.06差。何とか逆転優勝は果たしました。

 

そして3連覇のかかる世界選手権。抽選したのにやっぱり最終滑走になる坂本選手。今シーズン、結局ショートは国際大会ではすべて最終滑走でした。レビト選手、イ・ヘイン選手が73点台、その上にヘンドリックス選手が76.98を出してきたところで登場。さすがに首位に立つにはノーミスが必要というところでしたがルッツで!をもらいました。コンビネーションも今一つ、耐えたジャンプで加点はあまりつかず。73.29で4位。これでフリーは最終滑走回避が確定。抽選で最終グループ3番目の登場と決まります。上位3人を残しての登場なのでターゲットスコアは見えません。冒頭ダブルアクセルはいつもの加点を引き出しますが、次のルッツはe判定。ショートのミスが頭に残っていたでしょうか。ただ、以降は文句のつけようのない滑り。149.67まで出してトータル222.96 首位に立って残り3人を待ちます。直後のレビト選手がいい滑りをしますが届かず2位。残り2人はスコアを伸ばせず、坂本選手の3連覇が決まりました。

 

○要素別スコア

Event Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
げんさんサマーカップ 187.62 90.88 98.74 58.73 2.97 19.59 9.59
Autumn Classic 203.20 96.73 106.47 52.29 7.13 23.90 13.41
Japan Open 149.59 77.26 72.33 45.62 10.16 11.58 9.90
全兵庫選手権 222.39 112.47 109.92 61.42 13.72 22.73 14.60
Skate Canada 226.13 117.52 108.61 65.27 13.07 23.68 15.50
Grand Prix Espoo 205.21 102.63 103.58 59.38 5.09 24.17 13.99
Grand Prix Final 225.70 116.20 109.50 65.40 11.02 24.37 15.41
全日本選手権 233.12 119.05 114.07 65.27 16.22 21.70 15.86
国民体育大会 225.02 112.36 112.66 60.65 12.58 24.77 14.36
Challenge Cup 212.43 108.55 104.88 59.37 9.88 24.30 15.00
World Championships 222.96 112.79 110.17 64.09 10.26 24.95 13.49

坂本選手は初戦のげんさんサマーカップこそ180点台でしたが他の試合はすべて200点超えです。国際大会の最低が203.20 国際大会での220点台が3試合ありました。全日本は230点台。他を寄せ付けない強さでした。

技術点は100点台から110点台。スケートカナダの117.52が最高です。今期全選手中2位にあたる技術点です。

PCSは100点台後半くらいまで普通に出して、世界選手権では110.17と今期の全選手中唯一の110点台です。国内参考ですが全日本では114.07という驚異的な評価を受けています。

ジャンプの基礎点は時折50点台に沈むこともありますが基本は60点台あります。グランプリファイナルの65.40が最高。それほど高くないと言えば高くないですが、トリプルアクセル以上のジャンプが無い場合、せいぜい67点台までしか出ませんので、それほど差は無いです。世界チャンピオンの坂本選手相手にリードを奪うにはトリプルアクセル以上のジャンプが欲しい、という構図にはなっています。

ジャンプの加点は二桁を普通に出してきます。最高はスケートカナダの13.07 この値は今季の全選手中2位でした。全日本で16.22もらっていますが、これなら全選手中1位相当ですが国内参考記録です。ジャンプの基礎点と加点を合わせたスコアではスケートカナダで78.34まで出していて、今シーズンの全選手中3位にあたります。シニアの中では1位。ジャンプで稼げないわけではないです。

スピンは24点台を出します。最高で世界選手権の24.95がありました。今期の全選手中、B級大会まで含めて8位にあたります。

ステップ系要素は15点台が普通に出てきます。スケートカナダで15.50がありました。これは今季の全選手中2位にあたります。

全体的に穴が無い。ジャンプの基礎点は低いですが加点で稼ぐのでジャンプのスコアが低いわけではないです。スコア的にはスピンが一番本人比で低い順位になってきます。坂本選手に勝つには高難度ジャンプを入れて基礎点でかなりの優位を築いたうえで、それをしっかり決めて逃げ切る、というのが一番わかりやすい形になるのだろうと思います。

 

○要素別偏差値

Event Total J Base J GOE Spin Step PCS
げんさんサマーカップ 60.71 57.86 61.70 47.30 42.35 65.75
Autumn Classic 66.44 50.98 70.23 64.68 61.08 72.12
全兵庫選手権 73.51 60.74 83.73 59.96 66.91 74.96
Skate Canada 74.89 64.85 82.40 63.79 71.32 73.88
Grand Prix Espoo 67.18 58.56 66.05 65.77 63.92 69.74
Grand Prix Final 74.73 64.99 78.20 66.57 70.88 74.61
全日本選手権 77.46 64.85 88.85 55.81 73.09 78.38
国民体育大会 74.48 59.91 81.39 68.19 65.74 77.22
Challenge Cup 69.84 58.55 75.86 66.29 68.87 70.81
World Championships 73.72 63.59 76.64 68.91 61.47 75.16

偏差値で見るとトータルスコアは普通に70を超えてきて70台中盤まで出します。

ジャンプの基礎点はやはりやや低めで60前後。基礎点満額得た高い時で60台中盤までです。

ジャンプの加点の方は70台は普通に出していていい時は80台まで達します。偏差値80超えというのは異常値扱いされるくらいの水準です。

スピンは60台が標準でいい時は60台後半まで出ます。

ステップ系要素は60台中盤は多くの場合あって、いい時は70台に乗せます。

PCSは70台。国内参考記録は70台後半まで出ますが、国際大会では75.16まででした。

やはり偏差値で見るとジャンプの基礎点が本人の中では低い側にあって、スピンもやや低い側。一方、ジャンプの加点は異常値レベルで高い、というのが見て取れます。

 

 

坂本花織選手の23-24シーズン要素別偏差値

レーダーチャートで表すとこうなります。右下に飛び出した形。ジャンプの加点がある種生命線です。ステップは、レベルが取れない試合も結構あることで少し凹んで見えることもあります。ステップのレベル4率は60%前後になっています。

 

●シーズン最高の基礎点構成

○グランプリファイナル ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   1.32 4.62 3.889
2 3Lz   5.90   1.77 7.67 2.889
3 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.000
4 3F+3T   10.45 x 1.59 12.04 3.111
5 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.111
6 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.778
7 CCoSp3   3.00   0.81 3.81 2.778
  TES   32.45   8.71 41.16  

ショートプログラムは32.45が最高基礎点でした。1.1倍にコンビネーションを入れていて基礎点を高めているのですが、最後のスピンがレベル3でした。オールレベル4を作れれば32.95まで基礎点を出せます。今シーズンはショートでそのノーミス基礎点を出した試合はありませんでした。

この32.45は今期の全選手の中で10位にあたる数値です。トリプルアクセル無しでもセカンドループで33.23まで出せますし、セカンドループもなしでも33.01までは基礎点でますので、32.45くらいならそれより上の基礎点の選手は普通にいます。ただ、トリプルアクセル組以外ならそれほど差は無いので出来栄え勝負になってきます。

基礎点をここから上げるのはスピンをオールレベル4にすること。それ以上は1.1倍のコンビネーションをルッツからにすることで0.06上げることは出来ますが、ルッツが得意ではない坂本選手にとっては現実的ではないと思います。トリプルアクセルを入れる気が無ければ、今以上に各要素の出来栄えを磨いていくこと、という道になるのだろうと思いますが、すでにすべての要素で+2以上、平均すると+3以上のGOEを得ているので、なかなか大変だろうと思います。

 

○グランプリファイナル フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   1.32 4.62 4.000
2 3Lz   5.90   1.77 7.67 3.111
3 3S   4.30   1.29 5.59 3.000
4 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
5 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.667
6 3F   5.30   -2.04 3.26 -3.889
7 FSSp4   3.00   0.69 3.69 2.333
8 3F+3T   10.45 x 1.59 12.04 3.000
9 2A+3T+2T   9.68 x 1.08 10.76 2.556
10 ChSq1   3.00   1.71 4.71 3.444
11 3Lo+2T   6.82 x 1.33 8.15 2.667
12 FCCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.222
  TES   62.65   12.39 75.04  

フリーの最高基礎点は62.65でした。これは本来の構成ではなく、1つ目のフリップでコンビネーションを入れるつもりが入らず、最後にリカバリーで付けたことで結果的に0.13想定より基礎点が上がりました。本来は62.52がベストの構成です。想定基礎点より上がっていますが、フリップのGOEが大きくマイナスですので結果オーライでもないです。実際、基礎点はこの試合が最高ですが、フリーのスコア、フリーの技術点は62.52が基礎点のスケートカナダでした。この62.65の基礎点で出した技術点75.04は今シーズン全選手中4位にあたります。これより上にいるのはすべて日本人選手というのもなかなか恐ろしい。スケートカナダで出した77.87なら全選手中3位にあたりました。

2回飛ぶジャンプはフリップとトーループ。これはここ数シーズン変わっていません。ジャンプの順番も昨シーズンと変わっておらず、スピンやステップとジャンプの順番がいくつか入れ替わっているというくらいです。

この62.65は今季のフリーとしては全選手中15位ですが、実際にはステップが1つ入らないジュニアの選手で、ステップを入れればこれより上に行く基礎点構成を持った選手、というのが他に何人もいます。

ここから基礎点を上げるには、現在練習中という4回転ループを入れる、ということになるのだろうと思います。高難度ジャンプが入ると多くの選手は単独ダブルアクセルというのが入らなくなるのですが、そこが一つの見せ場な坂本選手は構成どうするのでしょう。実際にはまだそれを悩むほどのところまで4回転ループは仕上がっていなさそうですが、楽しみです。

 

○平均GOE4.000以上(国際大会+全日本選手権)

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
全日本選手権 FS 1 2A   3.30   1.60 4.90 4.778
Japan Open FS 1 2A   3.30   1.54 4.84 4.600
Autumn Classic FS 1 2A   3.30   1.52 4.82 4.571
World Championships SP 1 2A   3.30   1.46 4.76 4.333
全日本選手権 SP 6 StSq4   3.90   1.67 5.57 4.333
全日本選手権 SP 1 2A   3.30   1.41 4.71 4.222
World Championships FS 1 2A   3.30   1.41 4.71 4.222
Challenge Cup FS 1 2A   3.30   1.39 4.69 4.143
Autumn Classic SP 1 2A   3.30   1.32 4.62 4.143
Grand Prix Espoo SP 1 2A   3.30   1.37 4.67 4.111
Skate Canada SP 1 2A   3.30   1.37 4.67 4.111
Grand Prix Final FS 1 2A   3.30   1.32 4.62 4.000
Skate Canada FS 1 2A   3.30   1.32 4.62 4.000
全日本選手権 FS 8 3F+3T   10.45 X 2.12 12.57 4.000
全日本選手権 FS 10 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
Challenge Cup SP 1 2A   3.30   1.32 4.62 4.000

坂本選手の要素の中で評価が高いのはとにかくダブルアクセルです。普通に平均GOE+4.000以上を出してきます。当然全選手中最高評価。ダブルアクセルの要素で坂本選手以外の今シーズンの最高評価が平均GOE+3.571ですから、他に比類ないダブルアクセルと言えます。

他は全日本でのステップやコレオ、コンビネーションジャンプで+4以上が付いていました。

 

○3回転-3回転の要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
げんさんサマーカップ SP 4 3F+3T   10.45 X 1.41 11.86 2.600
げんさんサマーカップ FS 8 3F+3T< 9.53 X -0.71 8.82 -1.200
Autumn Classic SP 4 3F+3T   10.45 x 1.80 12.25 3.429
Japan Open FS 8 3F+3T   10.45 X 1.94 12.39 3.800
全兵庫選手権 SP 4 3F+3T   10.45 X 1.91 12.36 3.600
Skate Canada SP 4 3F+3T   10.45 x 1.29 11.74 2.444
Skate Canada FS 8 3F+3T   10.45 x 1.67 12.12 3.222
Grand Prix Espoo FS 8 3F+3T   10.45 x 1.44 11.89 2.778
Grand Prix Final SP 4 3F+3T   10.45 x 1.59 12.04 3.111
Grand Prix Final FS 8 3F+3T   10.45 x 1.59 12.04 3.000
全日本選手権 SP 4 3F+3T   10.45 X 2.04 12.49 3.778
全日本選手権 FS 8 3F+3T   10.45 X 2.12 12.57 4.000
国民体育大会 SP 4 3F+3T   10.45 X 1.77 12.22 3.400
Challenge Cup SP 4 3F+3T   10.45 x 1.59 12.04 3.000
Challenge Cup FS 8 3F+3T   10.45 x 2.12 12.57 3.714
World Championships SP 4 3F+3T   10.45 x 1.06 11.51 1.889
World Championships FS 8 3F+3T   10.45 x 1.82 12.27 3.444

坂本選手の3-3はすべてフリップからのものです。ショート、フリー共に飛びます。何試合か片方入っていないのがありますが、フリップがダブルになったりで入らなかったものです。3-3を飛んでGOEマイナスになったのは1度だけ。3-3にならなかったことが4回ありますが、ほとんど小さな大会で、グランプリシリーズの試合が1つだけあります。

飛ぶはずだった回数は21回で成功は16回ですので3-3の成功率としてはかなり高いものです。大事な試合での成功率はさらに高い計算になりますので非常に安定していたと言えます。

全日本の+4.000は極端ですが、それ以外でも平均GOEは+3以上のものがほとんどです。

3回転-3回転のジャンプとしては、ジャパンオープンの+3.800 チャレンジカップの+3.714あたりはISU非公認として参考記録にしたとしても、その次の評価になる世界選手権の+3.444でも今期全体で2位にあたるものです。1位は3T-3Tでしたので、フリップ以上の難易度のジャンプからの3-3としては最高評価でした。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
げんさんサマーカップ FS 9 2A+3T<+2T < F 8.76 X -1.68 7.08 -5.000
Japan Open FS 9 2A+3T+2T   9.68 X 1.54 11.22 3.400
全兵庫選手権 FS 9 2A+3T+2T   9.68 X 1.34 11.02 3.200
Skate Canada FS 9 2A+3T+2T   9.68 x 1.38 11.06 3.222
Grand Prix Espoo FS 9 2A+3T+2T   9.68 x 1.32 11.00 3.111
Grand Prix Final FS 9 2A+3T+2T   9.68 x 1.08 10.76 2.556
全日本選手権 FS 9 2A+3T+2T   9.68 X 1.56 11.24 3.778
国民体育大会 FS 9 2A+3T+2T   9.68 X 1.40 11.08 3.400
Challenge Cup FS 9 2A+3T+2T   9.68 x 1.43 11.11 3.571
World Championships FS 9 2A+3T+2T   9.68 x 1.32 11.00 3.111

3連続ジャンプはフリーで必ず入ってくる要素。坂本選手はダブルアクセルからリズムよく、音はめして気持ちよく跳んできます。上記の表で見た目に失敗しているのは1つだけですが、表に乗っていないオータムクラシックは3連続を付けられなかったというものですのでそれもミスの側でカウントされると言えるでしょう。それも含めて11回のうち成功は9回です。ミスした2回はシーズン序盤の重視されていない試合。大事な試合ではすべて決めてきた。それも一番悪くて+2.556 他はすべて+3以上という高評価です。

今期の全選手の3連続ジャンプの中でチャレンジカップの+3.571が最高。ISU公認だけで見てもスケートカナダの+3.222が最高評価になります。

 

○その他高評価要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Grand Prix Final FS 2 3Lz   5.90   1.77 7.67 3.111
全日本選手権 FS 2 3Lz   5.90   1.77 7.67 3.111
全日本選手権 FS 11 3Lo   5.39 X 1.68 7.07 3.556
World Championships FS 11 3Lo   5.39 x 1.68 7.07 3.444
全日本選手権 FS 3 3S   4.30   1.35 5.65 3.111
World Championships FS 3 3S   4.30   1.35 5.65 3.111
Autumn Classic SP 6 StSq3   3.30   1.32 4.62 3.857
Grand Prix Final SP 6 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.778
Skate Canada FS 10 ChSq1   3.00   1.86 4.86 3.667
全日本選手権 FS 10 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000

これはジャンプやステップコレオの中からいくつかピックアウトしてきたものです。

ルッツは本来あまり得意ではない要素なはずですがエッジ判定を取られなければ高い評価を受けることも多く、グランプリファイナルでは+3.111 今季の全選手のルッツの中で3位にあたる評価、シニアの選手だけなら1位の評価です。

ループはもともと得意な要素。世界選手権の+3.444は今季の全選手中最高評価でした。

サルコウも高評価で世界選手権で+3.111をもらっています。3連続の3つ目3Sでこれより高い評価を受けた選手が1人いますが、サルコウで始まるあるいはサルコウ単独の要素としてはこれが最高評価です。

ステップはレベル3ですがオータムクラシックで+3.857 レベル4ではグランプリファイナルで+3.778をもらっています。この+3.778の方でISU公認試合の中では全選手中今期3位の評価になりました。

コレオは全日本で+4.000 スケートカナダで+3.667をもらっています。ISU公認試合としては今季2位タイの評価です。

こうしてみると、ジャンプは何飛んでも高評価で世界のトップ級。ステップコレオも世界の頂点にほど近いところにいます。

 

今期は初戦のげんさんサマーカップこそ3位でしたが、国際大会は全勝。全日本、世界選手権、ダブル3連覇を果たしました。最高のシーズンになった、と言えるのではないでしょうか。

次、目標、何? あとはオリンピックの金メダルというのがあるわけですが、来シーズンはまだオリンピックが来ません。4連覇を目標に練習する? ちょっと難しいかなあ、という気がします。なぜ3連覇なら目標になれたのかと見ると、2連覇のときは最後の世界選手権こそしっかり勝ったものの、シーズン途中が苦しみすぎた、というのがあったので、途中含めてしっかり勝っていくということで目標になりえた。それを今シーズン果たした以上、次は4連覇を目標に、というのは心情的に難しいように感じます。

そこで出てくるのが、4回転。これは練習時の目標としてはわかりやすい。習得出来たらそれこそ鬼に金棒。花織に4回転。ループ得意でしたものねえ。基礎点上げるために最近はフリーで1回だけでしたが、以前はショートフリーで合計3回飛んでいました。坂本選手と言えばダブルアクセルの方が有名ですが、トリプルループも元々評価が高い。これ入って全ノーミスしたら240点が見えてきます。

シーズンオフも、休みのオフよりもアイスショーやテレビ出演など忙しそうですが、来期は4連覇を目指すシーズン。今期の3連覇は56年ぶりでしたが、次の4連覇はキャロルへイスさん(5連覇しています)以来65年ぶりとなります。

 

 

 

 

23-24 選手別 凡例

今年も次回から、選手別に23-24シーズンを振り返っていきます。

実際にはまだシーズンは完全終了しておらず、国内では

昨年の時も付けましたが、その振り返りの前に、その振り返りの時に使ういろいろな略語、言葉の凡例を付けておこうと思います。

 

 

シーズン獲得賞金:ISU公式試合で獲得した賞金の総額です。

世界ランキング:ISUの24年4月時点での世界ランキングです

シーズンランキング:ISUの24年4月時点での23-24シーズンのランキングです

シーズンベストスコア:国際試合でのベストスコア。International Competition いわゆる国際B級試合やユースオリンピックまで含めるので、ISUのシーズンベストスコアとは異なります。また、ここで記す順位も同様で、ISUシーズンベストスコア順位とは異なります。ただし、各国のナショナル選手権や国内のローカル大会は含めません。

 

スピンレベル4率:出場全試合のスピン要素のうち、レベル4を何回獲ったかの確率です。レベル4でもVがついたものはレベル4としてカウントしていません。

ステップレベル4率:スピンと同様にステップでレベル4をどれだけ取ったか? レベル4率の計算と同様、Vがついたものはレベル4としてカウントしていません。

スピンステップオールレベル4:スピンとステップ、ショートフリー合計8要素ですべてレベル4であった試合がどれだけあったか

ジャンプ回転不足率:ジャンプ要素で回転不足だった割合はどれだけか? ジャンプ要素の数として数えるので、コンビネーションジャンプも要素として1つです。コンビネーションジャンプの中で二つ以上回転不足があっても、回転不足要素数1として数えます。また、3回転のつもりが1回転になった、というような、いわゆる“抜ける”という状態は、1回転で回転が足りている場合は回転不足と数えません。また、qは回転不足とはここではカウントしていません。基礎点削られるアンダーローテーションかダウングレードを回転不足としてカウントしています。

 

ジャンプ回転不足なし試合:ジャンプ要素で上記の定義の回転不足が一つもなかった試合の数、割合

スピンステップオールレベル4ジャンプ回転不足なし:そのままの意味で、ショートフリー通じて、スピンとステップがすべてレベル4で、上記の定義でジャンプに回転不足がなかった試合の数、割合

 

 

以下、試合結果、要素別などを記します

これまでも、あまり説明なく使っていましたが、今回簡単に説明しておきます

 

Grade:大会のグレード GP,CS,JGP・・・など

GP:グランプリシリーズ

CS:チャレンジャーシリーズ

JGP:ジュニアグランプリシリーズ

GPF:グランプリファイナル

JGPF:ジュニアグランプリファイナル

EC:ヨーロッパ選手権

4CC:四大陸選手権

WC:世界選手権

WT:国別対抗戦

IC:インターナショナルコンペティション(国際B級大会)

Others:それら以外の国際試合(今期はユースオリンピックと ジャパンオープンです)

NC:ナショナルチャンピオンシップ

NJ:ナショナルジュニア(全日本ジュニア)

RT:地方選手権(中部選手権や西日本選手権など)

CC:日本学生氷上選手権

NG:国民スポーツ大会

IH:インターハイ

IJ:全国中学スケート大会

DL:その他国内ローカル大会

 

Event:大会の名称。国際大会では英語で示します。スペースの関係で省略していることも多いです

 

Pl:その大会の順位

Total:トータルスコア

SP:ショートプログラムスコア

FS:フリープログラムスコア

TSS:トータルセグメントスコア(ショートならショート、フリーならフリーの合計点)

TES:技術点

PCS:演技構成点

 

Jump:ジャンプで得た得点。

J Base:ジャンプの基礎点の合計

J GOE:ジャンプ要素で得た加点(減点)の合計

Spin:スピンで得た得点。

Step:ステップとコレオシークエンスで得た得点。

 

各要素の偏差値:23-24シーズンのグランプリシリーズ(ファイナル含む)、チャレンジャーシリーズ、ヨーロッパ選手権四大陸選手権において、ショートフリーを両方とも滑った選手を母集団として、各要素で平均、標準偏差を計算させ、それを元にして、各選手のそれぞれの要素での偏差値計算をさせたもの。したがって、国際B級試合や国内試合など、偏差値計算用の平均、標準偏差の母集団に含まれないものを計算していることもあり、本来の偏差値の考え方とは少し異なっていることがあります。

(世界選手権を含まないのは、最初にこの計算をしたのが19-20シーズンで世界選手権だけ中止になったシーズンだったためです)

 

偏差値欄のSpin

ショートフリー合わせての、ジャンプ、スピン、それぞれで得た得点から上記条件で計算させた偏差値

偏差値欄のStep

ショートフリー合わせてのステップ系要素について得た得点から、上記条件で計算させた偏差値。ステップ系要素とはステップとコレオシークエンスを合わせたもの。ジュニアカテゴリーにはフリーでステップがないため、ショートのステップで得た得点をフリーでも取ったと仮定した補正を加えて計算させています。

偏差値グラフのJ Base

ショートフリー合わせてのジャンプの基礎点について、上記条件で計算させた偏差値

偏差値グラフのJ GOE

ショートフリー合わせて、ジャンプで得た加点減点の合計について、上記条件で計算させた偏差値

 

シーズン最高の基礎点

基本的には国際大会から持ってきています。特に日本人選手の場合日本国内の試合に多数出ていてそちらの方が高い基礎点を組めた試合が多い場合もありますが、それでも国際大会からを選んでいます。同じ基礎点の試合が複数ある場合は、その中から技術点が高い方の試合を選んでいます。

 

要素別欄のBaseValue:各要素の基礎点。1.1倍時のジャンプは1.1倍された形で表記されます。Baseと略されることもあります

要素別のElements欄の左側の数字:要素の順番を示します。たまに、13番目の要素とか、あり得ない数字が出ることもありますが、記録上、予定の要素が入らず飛ばされ、予定されていない要素が入った時などに、そういう形になることがあります。

GOE:その要素で得た加点あるいは減点です

Score:基礎点と上記GOEを合わせた得点です

AvGOE:ここには-5~+5で表される各ジャッジの各要素の評価のジャッジ全員の平均を計算したものが記されます。得点計算には、一番高い評価と一番低い評価を切り捨てて通常は計算されますが、ここではそれをせず、全ジャッジの平均を記しています。文中で平均GOEと記している場合は、こちらのことを指しています。

世界選手権24 男子シングルレビュー3

前回の続きで男子シングルのレビュー、3回目です。

 

○ショートフリー合わせた要素別のスコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Ilia MALININ 333.76 135.28 127.59 32.62 24.55 13.72
2 Yuma KAGIYAMA 309.65 140.07 104.24 23.75 26.23 16.36
3 Adam SIAO HIM FA 284.39 134.36 104.32 8.84 23.45 16.42
4 Shoma UNO 280.85 136.07 104.16 0.99 25.51 16.12
5 Jason BROWN 274.33 139.90 76.86 13.17 27.62 16.78
6 Lukas BRITSCHGI 274.09 128.97 90.69 14.51 24.75 15.17
7 Deniss VASILJEVS 257.80 131.26 78.20 8.30 25.15 14.89
8 Kao MIURA 254.72 124.24 98.38 1.51 20.99 12.60
9 Nikolaj MEMOLA 253.12 120.11 87.71 11.74 19.79 13.77
10 Junhwan CHA 249.65 124.89 89.05 -1.55 23.66 15.60
11 Aleksandr SELEVKO 247.57 122.18 85.02 3.08 22.89 14.40
12 Mark GORODNITSKY 243.25 116.68 78.82 12.51 21.84 13.40
13 Nika EGADZE 241.55 113.41 97.79 0.20 19.80 12.35
14 Mikhail SHAIDOROV 234.19 108.75 105.33 -9.47 20.51 11.07
15 Donovan CARRILLO 232.67 112.06 86.34 -2.62 23.23 13.66
16 Gabriele FRANGIPANI 231.38 115.02 87.89 -2.27 19.30 12.44
17 Wesley CHIU 227.21 111.84 87.20 -3.29 20.86 10.60
18 Hyungyeom KIM 222.79 101.69 85.32 1.97 21.50 12.31
19 Roman SADOVSKY 221.57 115.29 79.87 -8.65 23.02 12.04
20 Camden PULKINEN 219.86 112.62 84.76 -6.37 19.92 10.93
21 Luc ECONOMIDES 217.10 110.66 78.96 -5.15 20.77 12.86
22 Semen DANILIANTS 213.99 97.65 88.85 -0.31 16.86 10.94
23 Andreas NORDEBACK 211.45 106.49 70.93 -0.09 21.97 12.15
24 Sihyeong LEE 207.59 99.49 86.15 -6.97 20.43 11.49

PCSは鍵山選手が1位の140点超え。今期は自身の4大陸選手権と、その上にグランプリファイナルの宇野昌磨選手のスコアがあります。世界選手権が最高値にならない、というのもちょっと珍しいかもしれないです。2位がジェイソンブラウン選手、3位に宇野昌磨選手。マリニン選手がPCSでも4番目。1位と4.79差。PCSハンデはもうほぼなくなっています。

ジャンプの基礎点はショートフリー合わせてマリニン選手は127.59まで出しています。2位はシャイドロフ選手の105.33でした。3位にアダムシャオイムファ選手で104.32 基礎点だけ高くても上位には来ない、というのは確かですが、マリニン選手はその基礎点の構成をしっかりこなすのでとんでもないことになりました。鍵山選手、宇野選手も104点台。およそ23点のジャンプの基礎点差をどうこれから補っていくか。課題というか難題です。

ジャンプの加点も32.62のマリニン選手が圧倒的な1位。鍵山選手は23.75で2番目に続いています。ブリッチギー選手の14.51が3番目。鍵山選手の23.75でも十分高いのですが、マリニン選手がとびぬけすぎました。一方、宇野選手は+0.99 三浦選手は+1.51 2人とも今大会はとても満足いくような出来とは言えずに終わったようです。

スピンはジェイソンブラウン選手の27.62が1位。27点台は今シーズンただ一人の記録です。鍵山選手がここでも2位。宇野選手が3位です。このあたりは宇野選手もしっかり点を稼いでいます。三浦選手は20.99で鍵山選手と5.24差。大きな差がついています。

ステップ系要素もジェイソンブラウン選手が16.78で1位です。今期シーズン全体で1位。やはりスピンステップはジェイソンブラウン選手が一日の長があります。アダムシャオイムファ選手が2位で鍵山選手が3位です。マリニン選手は13.72 14点台までは出す選手ですから本人比でステップはそれほどいいわけではありませんでした。三浦選手は12.60 ステップ系要素だけで鍵山選手と3.76差があります。スピンステップで9点差。鍵山選手に勝つには、少なくとも鍵山選手より常に4回転を最低1本、できれば2本多くないといけない、というような計算になります。中位なら4回転だけで勝負できますが、上位で勝負するにはスピンステップもある程度点が取れることが最低限必要になってきそうです。

 

以下、個別の要素を見ます

 

○4回転アクセル

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Ilia MALININ 1 4A   12.50   3.93 16.43 3.111

4回転アクセルを飛んだのは当然マリニン選手1人だけです。今期は2回目の成功で平均GOE+3.111は今季最高の出来です。ISU公認試合としては通算6回目のGOEプラスの成功ジャンプとなりました。

 

○4回転ルッツ

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Ilia MALININ 2 4Lz   11.50   4.44 15.94 3.889
FS Ilia MALININ 7 4Lz+1Eu+3F   19.03 x 4.27 23.30 3.778
FS Adam SIAO HIM FA 1 4Lz   11.50   3.61 15.11 3.111
SP Nikolaj MEMOLA 1 4Lz   11.50   3.29 14.79 3.000
SP Ilia MALININ 2 4Lz+3T   15.70   3.29 18.99 2.889
FS Nikolaj MEMOLA 1 4Lz   11.50   0.33 11.83 0.222
SP Mikhail SHAIDOROV 1 4Lz   11.50   -1.15 10.35 -0.889
SP Adam SIAO HIM FA 1 4Lz   11.50   -3.29 8.21 -2.889
FS Mikhail SHAIDOROV 1 4Lz F 11.50   -5.75 5.75 -5.000

4回転ルッツは今大会は4選手が9回飛びました。成功ジャンプは3人で6本です。シャイドロフ選手はショートでわずかなマイナスまで来ましたが、GOEプラスの成功まではありませんでした。

マリニン選手は3本成功。2つはコンビネーション。トリプルルッツ並みの成功率、加点です。フリーの単独ルッツは平均GOE+3.889 これは今シーズンのISU公認試合としては最高評価です。

 

○4回転フリップ

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
SP Shoma UNO 1 4F   11.00   4.56 15.56 4.222
FS Yuma KAGIYAMA 2 4F   11.00   4.56 15.56 4.111
FS Mikhail SHAIDOROV 2 4F! ! 11.00   -0.31 10.69 -0.222
FS Shoma UNO 2 4Fq q 11.00   -5.19 5.81 -4.444

4回転フリップは3選手が飛びました。宇野選手はショートで、鍵山選手はフリーで成功。シャイドロフ選手は!がついてわずかなマイナスでした。

今シーズン4回転フリップでGOEプラスの成功ジャンプをISU公認試合で決めたのは結局この3選手でした。最高評価は宇野選手のこの+4.222です。鍵山選手はこれが初成功ともなりました。

 

○4回転ループ

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Ilia MALININ 3 4Lo   10.50   2.70 13.20 2.556
FS Shoma UNO 1 4Loq F 10.50   -5.25 5.25 -5.000
FS Kao MIURA 1 4Lo<< F 4.90   -2.45 2.45 -5.000

4回転ループは3選手が飛んで、成功した宇野はマリニン選手のみでした。

今期4回転ループをISU公認試合でGOEプラスの成功ジャンプを決めたのは3人だけです。マリニン選手、宇野選手にマッテオリッツォ選手。三浦選手は成功させることができませんでした。

 

○4回転サルコウが入る要素で平均GOEがプラス

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
SP Kao MIURA 1 4S   9.70   4.02 13.72 4.111
FS Yuma KAGIYAMA 1 4S   9.70   3.88 13.58 3.889
SP Yuma KAGIYAMA 1 4S   9.70   3.60 13.30 3.667
FS Adam SIAO HIM FA 4 4S   9.70   3.19 12.89 3.222
FS Ilia MALININ 4 4S   9.70   2.91 12.61 3.111
FS Junhwan CHA 1 4S   9.70   2.49 12.19 2.556
SP Nika EGADZE 1 4S+3T   13.90   2.36 16.26 2.444
SP Roman SADOVSKY 1 4S   9.70   2.08 11.78 2.111
FS Donovan CARRILLO 1 4S   9.70   1.52 11.22 1.556
FS Nika EGADZE 2 4S+2T   11.00   1.52 12.52 1.444
SP Donovan CARRILLO 1 4S   9.70   0.83 10.53 0.778

サルコウになると多くの人が飛んできます。GOEプラスの成功ジャンプは11本ありました。最高評価は三浦佳生選手。ショートの冒頭のサルコウジャンプは素晴らしかったです。平均GOE+4超えは今大会では1人だけでした。鍵山選手がそれに次ぐ評価でショートフリー共に冒頭のジャンプを決めています。

他に2本決めたのがメキシコのカリーヨ選手。メキシコ史上最高の選手と言ってよいかと思います。

 

○4回転トーループが入る要素で平均GOE+2.000以上

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Yuma KAGIYAMA 3 4T+1Eu+3S   14.30   3.66 17.96 3.889
SP Ilia MALININ 1 4T   9.50   3.66 13.16 3.889
SP Yuma KAGIYAMA 2 4T+3T   13.70   3.39 17.09 3.556
FS Kao MIURA 7 4T+3T   15.07 x 3.26 18.33 3.333
FS Adam SIAO HIM FA 5 4T   10.45 x 3.26 13.71 3.333
FS Aleksandr SELEVKO 1 4T   9.50   3.12 12.62 3.333
FS Shoma UNO 6 4T   10.45 x 2.99 13.44 3.222
SP Junhwan CHA 2 4T   9.50   2.58 12.08 2.667
FS Lukas BRITSCHGI 1 4T+3T   13.70   2.44 16.14 2.556
FS Adam SIAO HIM FA 2 4T+3T   13.70   2.31 16.01 2.556
SP Nika EGADZE 2 4T   9.50   2.44 11.94 2.556
FS Ilia MALININ 8 4T+3T   15.07 x 2.17 17.24 2.222
FS Nika EGADZE 1 4T   9.50   2.17 11.67 2.222
SP Gabriele FRANGIPANI 1 4T+3T   13.70   2.17 15.87 2.111
FS Mikhail SHAIDOROV 3 4T+3T   13.70   1.90 15.60 2.000

4回転トーループは男子ではもはや標準装備が当たり前くらいの要素になっています。GOEプラス2以上で切っても多数の選手が出してきます。

最高評価はマリニン選手の単独ジャンプもありますが、鍵山選手が3連続で平均GOE+3.889というすごい評価を受けました。ショートの単独トーループも+3.556 やはり鍵山選手のジャンプの質は極めて高いです。この質のまま本数が増えるとすごいてんすうになっていきます。

 

○平均GOE+4.000以上の要素

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
SP Adam SIAO HIM FA 6 StSq4   3.90   1.95 5.85 4.778
FS Jason BROWN 8 StSq4   3.90   1.89 5.79 4.778
FS Jason BROWN 10 ChSq1   3.00   2.36 5.36 4.667
FS Yuma KAGIYAMA 10 StSq4   3.90   1.78 5.68 4.556
FS Jason BROWN 7 CCoSp4   3.50   1.60 5.10 4.556
FS Jason BROWN 12 CCSp4   3.20   1.46 4.66 4.556
SP Yuma KAGIYAMA 6 StSq4   3.90   1.78 5.68 4.444
SP Shoma UNO 5 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
SP Jason BROWN 6 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
FS Shoma UNO 5 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
SP Shoma UNO 1 4F   11.00   4.56 15.56 4.222
FS Adam SIAO HIM FA 7 StSq4   3.90   1.67 5.57 4.222
FS Yuma KAGIYAMA 12 FCCoSp4   3.50   1.55 5.05 4.222
FS Deniss VASILJEVS 12 ChSq1   3.00   2.14 5.14 4.222
FS Yuma KAGIYAMA 2 4F   11.00   4.56 15.56 4.111
SP Kao MIURA 1 4S   9.70   4.02 13.72 4.111
SP Ilia MALININ 4 3A   8.80 x 3.31 12.11 4.111
FS Deniss VASILJEVS 6 StSq3   3.30   1.32 4.62 4.111
SP Junhwan CHA 7 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
SP Jason BROWN 7 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
FS Adam SIAO HIM FA 10 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
FS Yuma KAGIYAMA 8 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
FS Deniss VASILJEVS 11 FSSp4   3.00   1.20 4.20 4.000

今大会は満点が1つ、アダムシャオイムファ選手のショートのステップでありました。ジャンプが壊滅だったので落ち込むキスアンドクライだったのですが、そんな中で満点要素があるという不思議構図です。ただし、1人のジャッジは+3評価だったので平均GOEは+4.778となっています。

上位の要素は鍵山選手、ジェイソンブラウン選手、宇野昌磨選手が目立ちます。スピンやステップ系の要素の方が高い平均GOEを得やすいですが、男子の場合はジャンプでも+4以上を出してきます。意外とマリニン選手は単独トリプルアクセルの1つだけ。まだジャンプの質なら鍵山選手、宇野選手も勝負になります。

 

男子は、新時代が始まりました。女子の坂本選手の3連覇は非常に久しぶりの3連覇という扱い。次々に優勝者が変わるというのが女子の基本構図。一方、男子は1度優勝した選手は基本的に何度も優勝する、という形で今世紀も来ています。マリニン選手は今大会初優勝。19歳で初優勝したら何回優勝するのか? ただ、2位3位、鍵山選手、アダムシャオイムファ選手も全く届かない水準ではない、というところは見せてくれました。オリンピックまであと2年。今の構成では届かないですが、構成上げればないことも無い。

宇野選手は・・・、どうするんですかね。4回転4種類5本を組んでノーミス出来ればまだチャンスは残ると思っているんですが・・・。権利はほぼなかったとはいえ、ソチの代表選考の最終グループで滑っていたわけで、勤続疲労も積もってきているのも見て取れます。

 

これで今シーズンはほぼ終わりです。国際B級大会はまだありますが日本からの派遣は無い模様。国内ローカルはいくつか残っていますが、トップ選手が真剣に滑るレベルの試合はありません。オリンピックの中間年は一番静かに終わります。

来期はオリンピック前シーズン。冒険プログラムはこの辺まででしょうか。今期のプログラム、ノーミスするまでやってほしかった選手も何人かいますが、それはそれ、新しいプログラムも心待ちにしたいと思います。

 

世界選手権24 男子シングルレビュー2

前回の続き、男子フリー編です。

 

○フリーの要素別スコア

Pl Name Nation J Base J GOE Spin Step PCS
1 Ilia MALININ USA 93.59 22.36 12.04 9.19 90.61
2 Adam SIAO HIM FA FRA 77.22 17.42 11.62 10.57 92.07
3 Yuma KAGIYAMA JPN 72.04 14.36 13.61 10.68 93.61
4 Lukas BRITSCHGI SUI 62.50 9.28 12.89 9.93 86.08
5 Jason BROWN USA 52.45 8.32 14.56 11.15 93.98
6 Shoma UNO JPN 70.66 -7.53 12.67 10.49 88.84
7 Kao MIURA JPN 70.23 1.90 9.33 8.31 81.95
8 Deniss VASILJEVS LAT 54.00 4.06 12.91 9.76 87.65
9 Aleksandr SELEVKO EST 56.41 3.04 12.12 9.87 82.05
10 Mark GORODNITSKY ISR 54.83 9.14 11.07 8.50 79.22
11 Junhwan CHA KOR 59.75 -0.99 11.59 10.14 81.95
12 Nikolaj MEMOLA ITA 57.10 4.53 9.19 8.81 80.39
13 Mikhail SHAIDOROV KAZ 70.76 -5.21 10.47 7.49 72.66
14 Donovan CARRILLO MEX 58.45 -2.43 11.83 8.87 75.76
15 Nika EGADZE GEO 65.59 -6.20 9.69 7.56 74.83
16 Wesley CHIU CAN 61.91 -3.98 10.03 7.39 73.86
17 Gabriele FRANGIPANI ITA 55.69 -0.62 9.97 7.59 76.12
18 Hyungyeom KIM KOR 61.39 0.50 10.64 8.40 66.97
19 Luc ECONOMIDES FRA 54.55 -4.37 10.13 8.48 74.29
20 Camden PULKINEN USA 56.15 -4.74 8.93 7.70 73.97
21 Semen DANILIANTS ARM 60.24 0.13 7.63 7.03 65.50
22 Roman SADOVSKY CAN 52.07 -11.22 11.86 7.89 76.69
23 Andreas NORDEBACK SWE 47.00 -0.82 10.31 8.10 70.66
24 Sihyeong LEE KOR 57.54 -4.07 10.26 7.03 64.60

フリーはジャンプの基礎点が1人だけ違うマリニン選手がいます。2位はアダムシャオイムファ選手。1位と2位で16.37差です。鍵山選手が3位でマリニン選手とは21.55差。あまりと言えばあまりな差です。宇野選手、三浦選手は70点台。ミスも出ると基礎点は伸びずマリニン選手との基礎点差が23点台とすごいことになります。

そして、加点の方もマリニン選手が1位になりました。もうこうなると手が付けられません。ジャンプだけで115.95点。スピンステップ零点でもいい、くらいのスコアになってきます。いうまでも無くジャンプの基礎点も加点も今期1位です。アダムシャオイムファ選手、鍵山選手も二桁の加点は得ました。

スピンはジェイソンブラウン選手が14点台。今季1位のスコア。2位の鍵山選手も今期これより上はジェイソンブラウン選手しかいないという素晴らしいスピンでした。三浦選手は9.33で21位。もう少し頑張りましょう、という水準になります。

ステップ系要素もジェイソンブラウン選手が1位です。これも鍵山選手が2位。マリニン選手はステップはそれほどスコアが伸びませんでした。

PCSもジェイソンブラウン選手が1位。スピンステップPCSとブラウン選手が1位です。ジャンプはマリニン選手。アメリカは両極振り切ってます。鍵山選手が2位でアダムシャオイムファ選手が3位。マリニン選手で4位です。これだけPCS稼げるならマリニン選手にとっては十分でしょう。

 

○総合上位6選手のフリーの構成

 

Ilia

MALININ

Yuma

KAGIYAMA

Adam SIAO

HIM FA

Shoma

UNO

Jason

BROWN

Lukas

BRITSCHGI

1 4A 4S 4Lz 4Loq 3A+2A 4T+3T
2 4Lz 4F 4T+3T 4Fq 3A 4T
3 4Lo 4T+1Eu+3S 3A+2A 4T+2T 3Lo 3A+2A
4 4S 3A+2A 4S 3A FCCoSp4 3Lo
5 CCSp4 FCSSp4 4T StSq4 3Lz+3T CCoSp4
6 StSq4 3A 3A 4T 3F+1Eu+3Sq 3A
7 4Lz+1Eu+3F 3Lz+3T StSq4 3A+1Eu+3F CCoSp4 3F+1Eu+2S
8 4T+3T ChSq1 3Lz+1Eu+3S 3S StSq4 3Lz
9 ChSq1 3F FCCoSp4 FCSp4 1A StSq4
10 3Lz+3A StSq4 ChSq1 CSSp4 ChSq1 ChSq1
11 FSSp3 CCoSp4 CCoSp4 ChSq1 3F FCCoSp4
12 CCoSp4 FCCoSp4 CSSp3 CCoSp4 CCSp4 CSSp4
Base 109.79 88.94 93.72 87.26 69.55 79.40
GOE 27.39 21.75 23.11 -0.97 16.93 15.20
PCS 90.61 93.61 92.07 88.84 93.98 86.08
Total 227.79 203.30 206.90 173.13 180.46 180.68

マリニン選手がアクセル込みで4回転5種類6本、アダムシャオイムファ選手と宇野選手が3種類4本、鍵山選手は3種類3本、ブリッチギー選手が1種類2本、ジェイソンブラウン選手が無しです。やはり5種類6本は突出しています。

GOEは3人が20点台。マリニン選手の27.39は素晴らしいですが、鍵山選手も21.75まで稼ぎました。トリプルアクセル転倒込みでこのスコアですので、しっかりトリプルアクセルを降りられればGOEはマリニン選手に追いつけます。フリーのスコア差は24.49 トータルスコアの差は24.11 トリプルアクセル決めれば18点ほどの差に縮まります。鍵山選手が降りたことのある4回転は4種類。今の構成は4回転3本。これを4種類5本にすれば、どういう並びにするかによりますが基礎点を10点ほど上げることは出来、基礎点が上がると同じ出来栄えで得られるGOEも高くなるのでそれにより自然と3点程度同じ出来栄えならスコアは上がります。あと5点ほど。これくらいまでなら出来栄え勝負というところまで行けます。逆に言えば、4種類5本が最低ラインでもあります。宇野選手も同様で、4種類5本を組めるのですが、昨季実績では結局ノーミスは出来なかったという現実はあります。

マリニン選手は後半にコンビネーションをすべてつぎ込んでいる、というのも恐ろしいところです。1,1倍で見ると鍵山選手はやや弱いです。

上位6人は全員スピンで締めています。フリーもやはりスピンで終える選手がほとんどです。ジェイソンブラウン選手以外は冒頭4つジャンプを続けています。ジャンプの難易度が緩いブラウン選手は3つ目まで。この辺、ほとんどの選手が似たような構成になってきます。アダムシャオイムファ選手は6つジャンプを続けるという、これはこれで特徴的な構成ではありました。

 

○総合7~12位の選手のフリーの構成

 

Deniss

VASILJEVS

Kao

MIURA

Nikolaj

MEMOLA

Junhwan

CHA

Aleksandr

SELEVKO

Mark

GORODNITSKY

1 2S 4Lo<< 4Lz 4S 4T 3A
2 3Lz+3T 4T 3A+1Eu+3S 1T 3Lz 3A+2A
3 3A+2A 4S 3Lz 4S<+1T 3Lo 3Lz
4 3Loq FCSp2 3Lo FCSp4 3A+3T 3F+3T
5 FCCoSp4 3A+1Eu+3S FCSp3 3Lz+3Lo CCSp4 FCCoSp4
6 StSq3 StSq3 3A StSq4 StSq4 CSSp4
7 3A 4T+3T 3Lz+REP 3A+2A+2A 3A< 2A+1Eu+3S
8 3Lz+1Eu+3Sq 3A+2A 3F!+2A 3Aq 3F!+2A+2A 3F
9 3F! 3F CSSp3 3F 3S< 3Lo
10 CCoSp3 CSSp4 StSq3 CCoSp4 FSSp4 CCoSp3
11 FSSp4 ChSq1 ChSq1 ChSq1 ChSq1 ChSq1
12 ChSq1 CCoSp3 CCoSp4 FCCoSp3 CCoSp4 StSq3
Base 69.80 84.83 72.30 76.35 73.01 70.63
GOE 10.93 4.94 7.33 4.14 8.43 12.91
PCS 87.65 81.95 80.39 81.95 82.05 79.22
Total 168.38 169.72 160.02 161.44 163.49 162.76

ここの水準だと4回転の本数は少し減ってきます。三浦選手が3種類4本、チャジュンファン選手は2種類3本のつもりが2本になった形、メモラ選手、セレフコ選手は1本、バシリエフス選手は1本入れようとしたけれど0本に、ゴロニツキー選手は最初から予定なしです。4回転3種類持って決められると上位6に入って行ける水準ということになるでしょうか。

基礎点は三浦選手がこの中では1番高いです。4回転3本分の基礎点は確保していますのでさすがにそうなります。他は70点台以下。マリニン選手は当然として、アダムシャオイムファ選手でも90点台の基礎点がありますので、80点に届かない基礎点だとそのあたりと勝負するのは難しい。表彰台争いをしていくにはやはり4回転3本は最低必要ではありそうです。

GOEは4回転の無いゴロニツキー選手とバシリエフス選手が二桁稼ぎました。このあたりの選手たちは出来栄えで稼いだという構図です。三浦選手とチャジュンファン選手は4点台。表彰台争いをしていくには出来が悪すぎたと言わざるを得ません。

ここのあたりの選手も冒頭3つはジャンプです。4回転3本以上入れようとした三浦選手とチャジュンファン選手は4つ目もジャンプ。4回転多い選手の方が序盤のジャンプの数が多い。スピン入れる前に山をほとんど超えておきたい、ということなようです。

最後の要素はやはりスピンが多いですが、4回転の無いバシリエフス選手とゴロニツキー選手はコレオやステップで締めています。こういったところで特徴を出そうとしているのが見て取れます。今期の有力選手の中ではフリーの最後をスピン以外で締めるのは、他にケビンエイモズ選手くらいでした。

 

○フリー上位18人のPCS

Name J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Ilia MALININ 27.25 26.50 28.25 26.75 26.50 27.25 27.00 27.75 27.50
Adam SIAO HIM FA 27.50 27.50 26.75 26.75 27.00 28.50 29.00 27.50 28.50
Yuma KAGIYAMA 27.75 28.25 28.25 28.00 27.75 28.25 28.25 28.00 28.00
Lukas BRITSCHGI 25.25 25.25 25.00 25.25 26.00 26.75 26.00 26.50 26.75
Jason BROWN 27.75 28.25 27.50 28.75 27.25 29.00 27.50 28.25 29.50
Shoma UNO 26.25 27.00 28.00 27.75 26.00 26.25 26.25 26.50 26.75
Kao MIURA 24.75 24.75 24.50 24.25 23.50 25.50 24.75 25.25 24.00
Deniss VASILJEVS 25.75 26.25 26.00 26.00 27.25 27.00 26.25 26.00 26.75
Aleksandr SELEVKO 24.25 24.00 25.25 24.75 25.00 24.25 25.00 25.00 22.75
Mark GORODNITSKY 22.75 23.00 23.75 24.50 24.00 22.75 24.00 24.25 24.75
Junhwan CHA 25.00 24.25 23.50 24.00 25.25 23.25 25.25 25.75 24.25
Nikolaj MEMOLA 24.75 23.25 23.75 24.00 23.00 25.50 24.50 22.75 26.00
Mikhail SHAIDOROV 21.75 23.25 22.50 21.00 23.25 20.75 21.50 21.50 21.25
Donovan CARRILLO 22.00 22.50 23.75 22.75 23.00 22.00 22.50 23.00 23.25
Nika EGADZE 22.00 22.75 25.00 22.25 22.25 21.00 23.75 22.75 20.75
Wesley CHIU 23.25 22.25 22.00 23.00 20.75 22.25 22.00 22.50 21.50
Gabriele FRANGIPANI 22.25 23.75 21.25 23.75 23.75 22.75 22.50 22.75 22.50
Hyungyeom KIM 19.50 21.25 20.00 20.50 19.75 18.50 19.75 22.25 20.00

ジャッジ毎のPCSが男子のフリーは結構ばらつきが小さくなっていました。ショートでは評価が分かれていたマリニン選手。最小で26.50 最大で28.25 その差は1.75に収まっています。9人中6人は平均9点超えと評価しました。ちゃんと滑ればPCSが出る、という選手にマリニン選手もなりました。一度ここまでくれば来シーズン以降もきっと変わらないでしょう。

鍵山選手は安定して高評価。最低で27.75 最高で28.25 誰が見てもいい滑りなようです。

全体の最高では9番ジャッジがジェイソンブラウン選手に29.50を付けました。Composition満点ついています。

 

○フリー上位18人のジャッジ別PCS順位

  J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Ilia MALININ 4 5 1 4 5 4 4 3 4
Adam SIAO HIM FA 3 3 5 4 4 2 1 4 2
Yuma KAGIYAMA 1 1 1 2 1 3 2 2 3
Lukas BRITSCHGI 7 7 8 7 6 6 7 5 5
Jason BROWN 1 1 4 1 2 1 3 1 1
Shoma UNO 5 4 3 3 6 7 5 5 5
Kao MIURA 9 8 10 10 12 8 10 9 11
Deniss VASILJEVS 6 6 6 6 2 5 5 7 5
Aleksandr SELEVKO 11 10 7 8 9 10 9 10 15
Mark GORODNITSKY 13 15 11 9 10 13 13 11 9
Junhwan CHA 8 9 14 11 8 12 8 8 10
Nikolaj MEMOLA 9 13 11 11 15 8 11 15 8
Mikhail SHAIDOROV 19 13 15 21 13 20 18 23 19
Donovan CARRILLO 17 19 11 16 15 17 15 13 14
Nika EGADZE 17 17 8 18 17 18 14 15 21
Wesley CHIU 12 20 16 15 21 16 17 19 18
Gabriele FRANGIPANI 16 11 19 14 11 13 15 15 16
Hyungyeom KIM 22 23 20 22 23 24 22 22 22

ジャッジ毎の順位をづけを見ると、ジェイソンブラウン選手に1位を付けたのが6人と最高で、鍵山選手も4人から1位の評価を受けています。アダムシャオイムファ選手、マリニン選手も1位評価が1人いました。

上位の選手は極端に大きな評価の割れ方はなかったようです。いくらか意見が分かれた、という程度でしょうか。中位以下でジャンプを武器とする選手は評価が分かれやすい。シャイドロフ選手は最高が13位で最低が23位、エガゼ選手も最高の8位と最低の21位、大きな差が出ます。女子と同じ傾向でもありました。

 

 

もう一回続きます。