全日本選手権19男子シングル数値編2

全日本選手権の振り返り、男子シングルの数値編続きです。

今回は各要素の高得点者が表に並びます

 

表の見方は、左からショートかフリーか、選手名、要素順、要素名称、回転不足などの情報、基礎点、1.1倍かどうか、GOEの加点減点、得点、右端は-5~+5のGOE表記です。

 ●四回転のルッツ、フリップ、ループ

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP 宇野昌磨 1 4F   11.00   3.93 14.93 3.111
FS 宇野昌磨 1 4F   11.00   1.57 12.57 1.222
FS 羽生結弦 1 4Lo   10.50   -1.80 8.70 -1.333
FS 佐藤駿 1 4Lz   11.50   -5.75 5.75 -4.444

四回転のうち、難易度が高いルッツ、フリップ、ループを今大会で試みたのは3人が4回。全員違う種類なのですが、GOEがプラスなのは宇野選手のフリップだけで、ショートフリー共にGOEプラスの成功ジャンプでした。

羽生選手のループは着氷したもののGOEはマイナス。佐藤駿選手の今大会唯一の四回転ルッツは転倒でした。ただ、GOEは一人だけ-5ではなく-4を付けたジャッジがいました。

 

●単独の四回転サルコウトーループでGOEプラス

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP 羽生結弦 1 4S   9.70   4.30 14.00 4.000
FS 鍵山優真 3 4T   9.50   3.66 13.16 3.333
FS 田中刑事 1 4S   9.70   3.19 12.89 3.000
SP 鍵山優真 2 4T   9.50   2.85 12.35 2.667
SP 佐藤駿 5 4T   10.45 X 2.71 13.16 2.556
FS 羽生結弦 2 4S   9.70   2.77 12.47 2.556
FS 友野一希 2 4S   9.70   2.77 12.47 2.556
FS 佐藤駿 3 4T   9.50   1.90 11.40 1.889
FS 宇野昌磨 2 4T   9.50   0.95 10.45 1.111
SP 島田高志郎 2 4T   9.50   0.68 10.18 0.667

四回転の単独ジャンプを飛ぼうとした(エレメントに回転不足を含めて4回転が入っている)選手は12名います。その中でGOEがプラスになった成功ジャンプは7人でした。

最高評価は羽生選手のショートプログラム冒頭の4回転サルコウで平均GOE+4.000 体力に余裕のある段階で飛ぶ難易度低い種類の四回転だと、羽生選手はここまでの完成度を出せるんですね。

鍵山選手は四回転トーループはショートフリー共にきれいに決めました。また、佐藤駿選手はただ一人、ショートプログラムで1.1倍四回転を入れています。そこで入れるか四回転、とだれもが思った場面でした。

 

 ●四回転を含むコンビネーションジャンプ

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP 羽生結弦 2 4T+3T   13.70   4.34 18.04 4.000
FS 鍵山優真 1 4T+2T   10.80   3.39 14.19 3.222
FS 宇野昌磨 6 4T+2T   10.80   2.99 13.79 2.889
FS 田中刑事 2 4T+2T   10.80   2.99 13.79 2.889
SP 宇野昌磨 2 4T+2T   10.80   2.85 13.65 2.778
FS 友野一希 1 4T+3T   13.70   2.58 16.28 2.333
FS 佐藤駿 2 4T+2T   10.80   2.04 12.84 2.000
FS 佐藤洸彬 1 4T+3T   13.70   1.22 14.92 1.333
SP 本草 1 4S<+2T < 9.06   0.00 9.06 0.111
FS 羽生結弦 7 4T+1Eu+3F< < 15.66 X -1.76 13.90 -1.444
SP 友野一希 1 4T+3T< < 12.86   -1.90 10.96 -1.778

四回転を含むコンビネーションジャンプは8選手が要素として入れています。コンビネーションで難しそうなのに意外とGOEマイナスが少ないな、と思ったりしますが、これは、一つ目の四回転で失敗すると、そもそもコンビネーションに出来ないので、四回転でちゃんと着氷したものだけがコンビネーションになった結果、低いGOEはあまり出てこない、ということかと思います。

最高評価は羽生結弦選手で、ここでも+4.000を出しました。2番手に鍵山優真選手。四回転の精度では佐藤駿選手の方が上、とされてきたように感じますが、今大会では四回転で得ているGOEははっきり鍵山選手の方が上になっています。

本草太選手、名前は入っていてGOEもかろうじてプラスですが、4回転が回転不足でした。結局、単独四回転を含めて回転十分なGOEプラスジャンプがなかった、ということになりますので、これだと上位進出はちょっと厳しかったなあ、というのが見えた感じです。

 

四回転に挑戦した選手は全体で12名いたわけですが、成功したのは結局、ジュニアの英雄二人以外は、グランプリシリーズ経験者だけ、ということで、やはりそのレベルの選手でないと難しいし、逆に、四回転を飛ばないとグランプリレベルにはたどり着けない、ともいえる結果でした。

 

 ●トリプルアクセルを含むコンビネーションで平均GOEプラス

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS 鍵山優真 4 3A+1Eu+3S   12.80   2.74 15.54 3.000
FS 佐藤駿 5 3A+3T   12.20   2.06 14.26 2.333
FS 木科雄登 1 3A+2T   9.30   2.06 11.36 2.111
FS 友野一希 3 3A+3T   12.20   1.83 14.03 2.000
FS 島田高志郎 2 3A+2T   9.30   1.49 10.79 1.778
FS 中村優 2 3A+2T   9.30   1.37 10.67 1.667
FS 櫛田一樹 2 3A+2T   9.30   1.49 10.79 1.556
FS 日野龍樹 3 3A+2T   9.30   1.14 10.44 1.444
FS 鈴木潤 2 3A+3T   12.20   1.26 13.46 1.444
FS 吉岡希 6 3A+2T   9.30   1.03 10.33 1.111
FS 宇野昌磨 8 3A+1Eu+1F   9.90 X 0.69 10.59 0.778
FS 佐藤洸彬 6 3A+2T   9.30   0.57 9.87 0.778
FS 吉岡希 2 3A+3T   12.20   0.34 12.54 0.556
FS 羽生結弦 8 3A+3T< < 12.50 X 0.46 12.96 0.444
FS 山隈太一朗 2 3A+2T   9.30   0.11 9.41 0.333

トリプルアクセルくらいになってくると、全日本レベルの選手ではほとんどが標準装備になってきます。コンビネーションで入れている選手が多数いますが、評価は上から三人ジュニアカテゴリーからの参戦が並びました。

最高評価は鍵山優真選手で平均GOEが+3.000 トリプルアクセルでも今回は佐藤駿選手の評価を上回りました。

1.1倍ボーナスタイムにトリプルアクセルコンビネーションを入れたのは二人で、羽生選手と宇野選手。この二人にとっては、ジャンプ構成の中でトリプルアクセルは難易度の低い側という位置づけになっていますね。ただ、どちらも評価はあまりよくありませんでした。

 

●単独のトリプルアクセル 平均GOE+2.000以上

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP 宇野昌磨 4 3A   8.80 X 3.20 12.00 3.556
SP 田中刑事 1 3A   8.00   2.74 10.74 3.111
SP 羽生結弦 3 3A   8.80 X 2.63 11.43 3.000
FS 友野一希 7 3A   8.80 X 2.63 11.43 2.889
SP 島田高志郎 1 3A   8.00   2.17 10.17 2.444
FS 鍵山優真 10 3A   8.80 X 2.29 11.09 2.444
SP 佐藤駿 1 3A   8.00   2.06 10.06 2.333
SP 中村優 1 3A   8.00   1.83 9.83 2.000
FS 佐藤駿 7 3A   8.80 X 1.71 10.51 2.000
FS 日野龍樹 7 3A   8.80 X 1.83 10.63 2.000

単独のトリプルアクセルは、上位選手にとってはショートプログラムの必須要素ですし、フリーでも四回転で2回飛べるのは1種類まで、となった現行ルールでは、トリプルアクセルを2回飛ぶのは上位選手にとってはほとんど必須であり、片方は単独になるケースが多く、多くの選手のジャンプの力量を比較するのに便利な要素です。

最高評価は宇野選手のショートプログラムで平均GOE+3.556 四回転と比べると難易度は落ちるのでしょうけれど、後半になって飛ぶことで究極レベルにはならず、GOEで4を超えるところにはなかなか届かないのでしょうか。

鍵山選手はショートは失敗しましたがフリーでは最後のジャンプとして入れてしっかり高評価を得ました。今回、ジャンプ要素についても佐藤駿選手にほぼ全面勝利となっています。

 

●セカンド三回転のコンビネーションで平均GOE+2.000以上

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP 羽生結弦 2 4T+3T   13.70   4.34 18.04 4.000
FS 鍵山優真 8 3F+3T   10.45 X 2.20 12.65 3.667
FS 友野一希 1 4T+3T   13.70   2.58 16.28 2.333
FS 佐藤駿 5 3A+3T   12.20   2.06 14.26 2.333
SP 本田太一 2 3T+3T   8.40   1.02 9.42 2.111
FS 本田ルーカス剛史 6 3Lz+3T   10.10   1.35 11.45 2.111
SP 須本光希 2 3F+3T   9.50   1.14 10.64 2.000
FS 友野一希 3 3A+3T   12.20   1.83 14.03 2.000
FS 木科雄登 4 3Lo+3T   9.10   1.12 10.22 2.000

セカンド三回転、という条件で拾ってきましたが、一つ目が四回転やトリプルアクセルで入ってきている選手も多く、この辺は上の方で既出です。最高評価は4回転-3回転の羽生結弦選手。2位に敗れたとはいえ、この辺はやはりレベル違うわ、というのを見せてくれます。

セカンド3回転の高評価で唯一1.1倍ボーナスタイムに入っているのが鍵山優真選手。今大会は表現面でどう、というよりも、こういったジャンプ要素も含めてトータルで魅せてくれての表彰台だったというのがこの辺によく表れています。

総合成績では下位に沈んだ本田太一選手ですが、ショートプログラムの3-3はしっかり決めていました。

 

●三連続ジャンプで平均GOEプラス

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS 鍵山優真 4 3A+1Eu+3S   12.80   2.74 15.54 3.000
FS 鈴木潤 7 2A+1Eu+3S   8.91 X 1.04 9.95 2.333
FS 本草 8 3Lo+1Eu+3S   10.67 X 0.77 11.44 1.444
FS 中村優 8 3Lo+1Eu+3S   10.67 X 0.77 11.44 1.444
FS 須本光希 8 2A+1Eu+3S   8.91 X 0.68 9.59 1.333
FS 本田ルーカス剛史 7 2A+1Eu+2S   5.61 X 0.47 6.08 1.333
FS 宇野昌磨 8 3A+1Eu+1F   9.90 X 0.69 10.59 0.778
FS 佐藤駿 8 3F+1Eu+3S   11.11 X 0.45 11.56 0.778
FS 日野龍樹 1 3Lz+1Eu+3S   10.70   0.42 11.12 0.778
FS 櫛田一樹 10 2Lo+1Eu+3S   7.15 X 0.37 7.52 0.778
FS 渡邊純也 9 2A+1Eu+2S   5.61 X 0.24 5.85 0.667
FS 友野一希 9 3Lz!+1Eu+2S ! 8.47 X 0.25 8.72 0.556
FS 吉岡希 7 3Lo+1Eu+2S   7.37 X 0.28 7.65 0.556

三連続ジャンプはフリーだけの要素で、本来は23選手入れられるはずなのですが、17選手しか要素に入っていませんでした。三つつなげるところまでたどり着けなかった、というケースが結構あったようです

そんな中で最高評価は、また出ました鍵山優真選手。トリプルアクセルから始まる難易度高い構成の3連続ですが、ただ一人平均GOE+3.000まで乗せました。

多くの選手が1.1倍ボーナスタイムに入れる三連続ですが、ボーナスタイムに入れた選手としては、今シーズンでの引退を表明している鈴木潤選手の+2.333が最高評価を得ています。三番手に中村優選手と並んで山本草太選手が入っています。今回ジャンプが全体的に良くなかった山本草太選手ですが、三連続はきっちり決めてきました。

不思議なもので、男子の三連続は、全員が二つ目1Euタイプで、女子に多い2T-2Loで三連続を作る構成がいません。四回転が複数入って、トリプルサルコウが余る選手の場合は、1Eu-3Sの三連続がお得なのですが、そうではない選手の場合、3-3持ちなら三連続は2T-2Loを持ってきた方が1Eu-2S構成より得です。まあ、2Tというのは4Tや3Tからの抜けで出やすい要素なので、3回2Tが入る危険を生まないように、そもそも3連続に2Tを使わないようにしておく、という考え方があるんでしょうかね。

 

●レベル4のスピンで平均GOE+2.000以上

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP 羽生結弦 7 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 3.556
FS 羽生結弦 12 CCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.222
FS 宇野昌磨 12 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.111
FS 羽生結弦 11 FCSSp4   3.00   0.99 3.99 3.111
SP 羽生結弦 4 FCSp4   3.20   1.05 4.25 2.889
SP 宇野昌磨 6 CCoSp4   3.50   1.10 4.60 2.778
SP 羽生結弦 5 CSSp4   3.00   1.03 4.03 2.667
SP 本草 5 CSSp4   3.00   0.90 3.90 2.667
SP 田中刑事 7 CCoSp4   3.50   1.00 4.50 2.556
SP 宇野昌磨 3 FCSp4   3.20   0.91 4.11 2.444
SP 宇野昌磨 5 CSSp4   3.00   0.86 3.86 2.444
SP 島田高志郎 7 CCoSp4   3.50   0.90 4.40 2.444
FS 本草 5 FCSSp4   3.00   0.86 3.86 2.444
FS 鍵山優真 5 FCSp4   3.20   0.82 4.02 2.333
FS 羽生結弦 3 FCCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.333
SP 鍵山優真 3 CCSp4   3.20   0.78 3.98 2.111
SP 鍵山優真 6 FSSp4   3.00   0.64 3.64 2.111
FS 宇野昌磨 10 FCCoSp4   3.50   0.80 4.30 2.111
FS 鍵山優真 12 CCoSp4   3.50   0.75 4.25 2.111
SP 本草 3 FCSp4   3.20   0.69 3.89 2.000
SP 本草 7 CCoSp4   3.50   0.80 4.30 2.000
FS 佐藤駿 6 FSSp4   3.00   0.64 3.64 2.000
FS 島田高志郎 11 FCCoSp4   3.50   0.75 4.25 2.000
FS 島田高志郎 12 CCoSp4   3.50   0.80 4.30 2.000

スピンの最高評価は羽生結弦選手のCCoSp チェンジフットコンビネーションスピンが平均GOE+3.556でした。2番目のフリーの羽生選手のCCoSpが来ます。上の方は羽生選手と宇野選手だけが並んでいて、やっと8番目に山本草太選手、9番目に田中刑事選手が入ります。

そのほか、島田高志郎選手、鍵山優真選手の名前が目立ちます。

ジャンプの場合、トリプルアクセル以下の中難度くらいの要素になってくると、一本きれいに決めた総合点は中位下位の選手というのが名前を入れてくることもある、というのが上の方で見た結果ですが、スピンというのはたまたまうまくできて高いGOEを一つだけ得た、ということがあり得ない要素なんだ、というのがこういうのを見るとよくわかる気がします。

 

●ステップレベル4

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP 羽生結弦 6 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.000
SP 宇野昌磨 7 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.000
FS 髙橋大輔 5 StSq4   3.90   1.62 5.52 3.667
SP 田中刑事 6 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.444
FS 宇野昌磨 9 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.222
FS 渡邊純也 12 StSq4   3.90   0.89 4.79 2.000
SP 渡邊純也 7 StSq4   3.90   0.50 4.40 1.333

ステップレベル4は全部並べても延べ7人、5人で7回しかありません。最高評価は羽生選手宇野選手、それぞれのショートのステップで平均GOEは+4.000を記録しました。

高橋大輔選手、田中刑事選手は一つづつレベル4で+3台中盤です。

総合20位の渡邊純也選手がショートフリー共にレベル4を並べています

 

●ステップレベル3で平均GOE+2.000以上

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS 田中刑事 12 StSq3   3.30   1.23 4.53 3.444
FS 羽生結弦 4 StSq3   3.30   1.27 4.57 3.333
FS 友野一希 4 StSq3   3.30   1.13 4.43 3.000
SP 佐藤洸彬 4 StSq3   3.30   1.13 4.43 2.889
FS 本草 11 StSq3   3.30   1.04 4.34 2.778
SP 友野一希 6 StSq3   3.30   0.94 4.24 2.444
SP 島田高志郎 6 StSq3   3.30   0.80 4.10 2.333
SP 木科雄登 6 StSq3   3.30   0.94 4.24 2.333
FS 山隈太一朗 11 StSq3   3.30   0.85 4.15 2.333
SP 鍵山優真 5 StSq3   3.30   0.85 4.15 2.222
FS 鍵山優真 7 StSq3   3.30   0.85 4.15 2.222
FS 木科雄登 6 StSq3   3.30   0.80 4.10 2.000

レベル3で高評価なのはこういったあたりの選手が並びます

ジュニア勢では木科雄登選手のショートプログラムが最高評価でした。鍵山選手はショートフリー共に平均GOEは+2.222です。佐藤駿選手はレベル3は取っていましたがGOEは+1台でした

 

●コレオシークエンス平均GOE+2.000以上

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS 髙橋大輔 11 ChSq1   3.00   2.07 5.07 3.667
FS 羽生結弦 10 ChSq1   3.00   2.00 5.00 3.667
FS 宇野昌磨 11 ChSq1   3.00   1.71 4.71 3.000
FS 友野一希 12 ChSq1   3.00   1.71 4.71 2.889
FS 鍵山優真 11 ChSq1   3.00   1.36 4.36 2.333
FS 須本光希 11 ChSq1   3.00   1.21 4.21 2.222
FS 本田ルーカス剛史 8 ChSq1   3.00   1.14 4.14 2.111
FS 本草 6 ChSq1   3.00   1.21 4.21 2.000

上コレオシークエンスの最高評価は高橋大輔選手でした。+3以上は羽生選手と宇野選手までの三人。ジュニアからは鍵山選手が最高評価でした。
表現面で定評がある田中刑事選手がここに入ってこないのは少し意外な感じはします

 

男子は、宇野選手と羽生選手が各要素で見てもやはり突出して目立っていました。それに次いで、総合3位なので当たり前と言えば当たり前なのですが、鍵山優真選手もジュニアながら各要素で高評価となっていました。

 

以上、男子シングルの数値編でした。

 

全日本選手権19男子シングル数値編1

前回まで2回ほど、全日本選手権の女子シングル数値編、というのをお届けしました。その流れですので、続いて男子シングルとなります。まずはその前半、散布図が並びます

 

全日本選手権19男子シングルTESPCS

まず、ショートフリー合わせての技術点、演技構成点を見たもの。上位八人は個別の色がついていて、9~23位は水色の小さい点になります。フリーに進出してフリーを滑った選手のみがプロットされます

成績上位選手が当然右上に出る形になります。標準ラインはPCS=TESのあたりですが、PCSは150点が天井なので、それに近いところにいる宇野昌磨選手、羽生結弦選手といったところは、TES寄りになっていくのですが、今回はそれほどTESにかたよりませんでした。これは、バランスが取れたというより、TESを思ったように伸ばせなかった結果、という読み取り方になるかと思います。

TESの3位4位はジュニア勢。鍵山優真選手は表現面の評価も高い選手ではあるのですが、いかんせんまだジュニア。採点するとTESに偏ります。また、四回転はトーループ一種類でしたが、TES合計は佐藤駿選手を上回りました。

田中刑事選手から須本光希選手あたりまでの上位のシニア選手はTESとPCSが拮抗したあたりにいます。左上に突出している水色は、見なくてもわかりますね、高橋大輔選手です。PCSだけなら全体三番手でした。TESだけだと全体22番目ですけれど・・・

上位に行ききれなかったシニア、9位の佐藤洸彬選手、10位島田高志郎選手といったところがPCS110点を超える水色の二つです。この二人はPCS寄りになってしまっていますが、思うようにTESを伸ばしきれなかった結果かな、と感じます

 

全日本選手権19男子シングルジャンプ

次は、ジャンプの基礎点とGOEの稼ぎ方。

右上にトップ二人、となりそうなところですが、これはそうなっていませんね。総合2位だった羽生選手は基礎点は99.20で全体トップでしたが、加点は6番目。出来栄えが今一つでした。結果としてジャンプで得た得点は103.99で全体3番目でした。

基礎点二番手は佐藤駿選手。GOEでは4回転ルッツの転倒分が大きく響いて4番手ですが、ジャンプで得た得点は106.26と羽生選手越えで全体2位です。

加点トップは鍵山優真選手でした。19.05にも及ぶ加点を得ています。ただ基礎点はショートでトリプルアクセルが入らずゼロだったことであまり高くなく、ジャンプ合計点103.40は全体4位です。トリプルアクセル入ってたらジャンプの総合点でもトップになるところでした。

総合点トップは宇野昌磨選手。基礎点は94.05で三番手、加点は17.82の二番手ですが、合わせた111.87がトップでした。ミスがなかったわけでもないのですが、飛べるジャンプをバランスよく跳んで点を稼いだ計算です。

総合6位の友野一希選手はジャンプで得た得点は4位の田中刑事選手よりも上でした。友野選手と田中選手の差は、スピンとPCSにあります。

本草太選手はジャンプで点が取れず、基礎点78.10、加点-3.58の合計74.52 このスコアだとジャンプだけで宇野選手と37,35差、田中選手とでも17.17差あります。

水色の小さい点になってしまっていますが、10位の島田高志郎選手はジャンプ基礎点71.16 加点-3.25の合計67.91と60点台に留まっています。上位と戦うには苦しい水準です。

高橋大輔選手は基礎点54.63 加点-7.03の合計47.60 ジャンプで得た得点はフリーを滑った23人中22番目でした。

男子は、ジャンプでGOEの合計がプラスになっている選手がだいぶ少ないです。女子も24人中10人しかプラス側がいませんでしたが、男子は23人中9人だけプラスです。とはいえ上位6選手はプラス評価。上位に行くにはジャンプをちゃんと降りて加点をもらえること、というのが必須ではあります。

 

全日本選手権19男子シングルスピン

スピンはショートフリー合わせて6回ありますが、6回すべてレベル4だったのは4人だけでした。宇野昌磨羽生結弦、鍵山優真、という表彰台三選手と、総合は20位だった関西学院大学の渡邊純也選手です。その中で基礎点トップはスピンの種類の関係で宇野昌磨選手が19.90入りました。二番目に羽生結弦選手の19.70 三番目に鍵山優馬選手と渡邊純也選手の19.40です。

加点は羽生結弦選手が6.77もらってトップ。二番手が宇野選手です。

加点三番手は山本草太選手になっています。ジャンプは点が取れませんでしたがスピンは上位にいる山本選手です。一方、友野一希選手はスピンで点が取れていない現状があります。基礎点16.28 加点2.33の合計18.61というスピンで得たスコアは、スピントップの羽生選手とは7.86ポイント、三位表彰台の鍵山優真選手とは4.92ポイントの差があります。スピンだけでこれだけ差がつくと、全日本の表彰台争い、みたいな数点差の勝負になってきたときにはだいぶ響きます。5位佐藤駿選手とはトータルスコアで1.81差、4位田中刑事選手と7.75差というのは、スピンの出来で入れ替わらないこともないくらいの点差でした。スピンはジャンプと比べて、各選手試合ごとの獲得点差はそれほど大きくありません。高い人は安定して高い。つまり、ベースとなるスコアなので、一度レベルアップすればなかなか落ちてこない。ここで5点6点さがあると、四回転一本増やさないといけない、みたいな計算になってくるので確実にレベルアップしておきたい分野ではあります。

 

全日本選手権19男子シングルステップ

コレオシークエンスも含めたステップ系のスコアです。ステップレベル4はショートフリー合わせて7例しかありませんでした。ショートフリー2つともレベル4を得たのは二人。優勝した宇野昌磨選手と、総合20位の渡邊純也選手です。渡邊純也選手はジャンプのスコアが全体21番目だったので上位には入ってきていませんが、スピンステップすべてレベル4という、国内大会レベルの選手としてはなかなか達成できないことを成し遂げました。

加点トップはステップが一つレベル3だった羽生選手。合計スコアとしては宇野昌磨選手の方が上になります。加点三番手は高橋大輔選手。ステップのレベルは2と4でしたが、こういうところでは加点を大きく取ってきます。

それに次ぐのは田中刑事選手と友野一希選手。さすがにジュニア勢よりはこういった選手が上にいて、鍵山優馬選手は加点で6番目になります。

 

 

次回、各要素の個別の点数に移ります

全日本選手権19女子シングル数値編2

全日本選手権19の振り返りをここ数回してきています。

前回は数値編の全体感を見るような散布図が並びましたが、今回は個別の要素での数字が並びます。

 

各表は、左からショートかフリーか、選手名、要素順、要素名、回転不足などの情報、基礎点、1.1倍チェック、加点(減点)、得点、右端に+5~-5のGOE評価となります

分かりにくい表記になってしまいますが、平均GOE○○といった場合のGOEは一番右端の+5~-5の評価のことを指します。 

 

トリプルアクセル 全選手

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP 紀平梨花 1 3A   8.00   -2.40 5.60 -3.000
SP 吉田陽菜 1 3A   8.00   -4.00 4.00 -5.000
FS 紀平梨花 2 3A+3T< 11.36   1.03 12.39 1.222
FS 紀平梨花 5 3A   8.00   2.51 10.51 3.111
FS 河辺愛菜 1 3A< 6.40   0.09 6.49 0.111

エレメントとしてトリプルアクセルが含まれていたのは3選手で5回。きちんと成功したのは結局紀平梨花選手だけでした。紀平選手は回転は3回とも足りています。コンビネーションの二つ目は回転不足がありましたけれど。ショートはGOEがマイナス。フリーの単独トリプルアクセルのは5番目の要素という中盤で飛んで、平均GOE+3.111という高スコアをだしています。

全日本ジュニアチャンピオンの河辺愛菜選手は着氷してGOEはプラスですが回転不足。ダブルアクセルの高評価より点ははっきり高い、という意味では成功ですが、トリプルアクセルの成否で言えば成功とはいえない扱いです。吉田陽菜選手は回転は足りていますが転倒となりました。

 

●3回転-3回転で平均GOE+1.000以上

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP 川畑和愛 2 3Lz+3T   10.10   1.77 11.87 2.889
SP 紀平梨花 2 3F+3T   9.50   1.44 10.94 2.667
SP 三宅咲綺 1 3T+3T   8.40   1.08 9.48 2.667
SP 永井優香 1 3T+3T   8.40   1.08 9.48 2.444
SP 山下真瑚 1 3Lz+3T   10.10   1.35 11.45 2.333
SP 新田谷凜 1 3F+3T   9.50   0.91 10.41 1.667
SP 松千 1 3Lz+3T   10.10   0.93 11.03 1.556
FS 樋口新葉 2 3Lz+3T   10.10   1.60 11.70 2.778
FS 横井ゆは菜 9 3S+3T   9.35 X 1.04 10.39 2.444
FS 川畑和愛 1 3Lz+3T   10.10   1.10 11.20 1.889
FS 吉田陽菜 2 3Lz+3T   10.10   0.67 10.77 1.111

3回転-3回転のコンビネーションは全日本のレベルで見ると高難度ジャンプの範疇です。これを回転不足なしで入った要素としては全体で16例、GOEがプラスの成功ジャンプとしては14例しかありませんでした。

そんな中でGOE+1以上の成功ジャンプはショートで7人、フリーでは4人しかいません。

ショートフリーどちらもしっかり決めたのは川畑和愛選手一人だけ。川畑選手の平均GOE+2.889が最高点でした。フリーの最高点は樋口新葉選手でした。これが決まって波に乗ったでしょうか。

ジュニアからは川畑選手以外にも浦松千聖選手、吉田陽菜選手が3Lz-3Tをしっかり決めています。

後半1.1倍ボーナスタイムに入れたのは横井ゆは菜選手のみ。後半盛り上がってくるところでジャンプの何度も上がって盛り上がっていくという構成は好きです

 

●2A-3Tを含むコンビネーションで平均GOE+1.000以上

Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
樋口新葉 7 2A+3T   8.25 X 1.14 9.39 2.667
河辺愛菜 5 2A+3T+2T   8.80   1.02 9.82 2.444
川畑和愛 3 2A+3T   7.50   0.96 8.46 2.333
三宅咲綺 1 2A+3T   7.50   0.96 8.46 2.333
野比 3 2A+3T   7.50   0.78 8.28 1.778
吉田陽菜 9 2A+3T   8.25 X 0.66 8.91 1.667
吉岡詩果 3 2A+3T   7.50   0.66 8.16 1.556
横井ゆは菜 11 2A+3T+2T   9.68 X 0.54 10.22 1.333
永井優香 2 2A+3T   7.50   0.42 7.92 1.000

割と使い手の多い2A-3T  ルール上これがショートに入ることはあり得ないので、全選手フリーでの要素となります。最高評価は樋口新葉選手でした。樋口選手のフリーは、セカンドトーループ二つが全選手のコンビネーションジャンプの中で最高評価ということで、本当に今回はしっかりジャンプが決まったんだなあ、というのが見て取れます。

ジュニアから河辺愛菜選手が3連続で入れて2番目の評価。トリプルアクセルも跳ぶ選手ですからこのコンビネーションは点が取りやすいのかもしれませんね。川畑選手と二人、世界ジュニアでは6位7位にあたりに並んで入って、来シーズンの3枠を取ってきていただけたら嬉しいです。

このコンビネーションはジュニアの評価が高く、ほかにも吉田陽菜選手、吉岡詩果選手と入っています。また、シニアに上がってますが三宅咲綺選手が、3T-3Tのコンビネーションに続いて高評価で入っています。総合では12位に入った選手。まだルッツやフリップをあまり飛んでいないので、全体では伸び切っていないですが、年々点を伸ばしていてこの先楽しみです。

永井優香選手や、ただ一人後半1.1倍に入れつつ3連続な横井ゆは菜選手など、2A-3Tは3-3コンビネーションと同じ名前が目立ちますが、そんな中にスピンステップの方が得意そうな竹野比奈選手も名前を連ねています

 

●三連続ジャンプで平均GOEがプラス

Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
紀平梨花 8 2A+2T+2Lo   6.93 X 0.85 7.78 2.667
河辺愛菜 5 2A+3T+2T   8.80   1.02 9.82 2.444
新田谷凜 8 2A+2T+2Lo   6.93 X 0.61 7.54 1.778
三宅咲綺 7 3T+2T+2Lo   7.92 X 0.78 8.70 1.778
樋口新葉 9 3Lz+2T+2Lo   9.79 X 1.01 10.80 1.667
吉岡詩果 6 3Lz+2T+2T   9.35 X 0.93 10.28 1.556
横井ゆは菜 11 2A+3T+2T   9.68 X 0.54 10.22 1.333
永井優香 7 2A+2T+2Lo   6.93 X 0.33 7.26 1.000
山下真瑚 1 3Lz<+3T+2T < 10.22   0.13 10.35 0.333

 三連続ジャンプはフリーにしかない要素です。同じ3連続の中でも難度がずいぶん違うという部分はあるのですが、三連続であるという条件だけで抜き出すと最高評価は紀平梨花選手でした。3連続は1.1倍ボーナスタイムに入れる選手が目立ちます。セカンドトーループで入れる場合はダブルアクセル起点になるようです。ほとんどの選手にとっては3回転-3回転の二連続ジャンプより、3-3を含むない三連続ジャンプの方が難易度が低く、後半に入れやすい心理もあるでしょうか。世界では三連続で三つ目3Sというコンビネーションがそれなりに使われていますが、全日本では竹野比奈選手が2A-1Eu-3Sとして試みた一例のみでした。残念ながら最後のトリプルサルコウが回転不足なうえ転倒でしたけれど。

 

●単独三回転で平均GOE+2.000以上

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP 坂本花織 5 3Lo   5.39 X 1.75 7.14 3.667
SP 紀平梨花 4 3Lo   5.39 X 1.47 6.86 3.111
SP 横井ゆは菜 4 3F   5.30   1.51 6.81 2.889
SP 川畑和愛 5 3Lo   5.39 X 1.26 6.65 2.556
SP 山下真瑚 4 3Lo   5.39 X 1.12 6.51 2.333
SP 永井優香 2 3Lz   5.90   1.35 7.25 2.333
FS 紀平梨花 3 3F   5.30   1.74 7.04 3.333
FS 紀平梨花 11 3Lo   5.39 X 1.61 7.00 3.333
FS 紀平梨花 5 3A   8.00   2.51 10.51 3.111
FS 本田真凜 3 3Lo   4.90   1.47 6.37 2.889
FS 紀平梨花 1 3S   4.30   1.11 5.41 2.667
FS 樋口新葉 3 3S   4.30   1.17 5.47 2.667
FS 樋口新葉 5 3Lo   4.90   1.33 6.23 2.667
FS 川畑和愛 2 3Lo   4.90   1.12 6.02 2.333
FS 津内胡菜 1 3Lz   5.90   1.35 7.25 2.333
FS 川畑和愛 9 3S   4.73 X 0.86 5.59 2.111
FS 三宅咲綺 4 3S   4.30   0.92 5.22 2.111
FS 山下真瑚 3 3Lo   4.90   0.98 5.88 2.000

単独三回転の最高評価は坂本花織選手のショートプログラム3Loでした。坂本選手のトリプルループは、昨シーズンの国際試合の単独三回転ジャンプとして最高評価でもありますし、本当にいいジャンプを飛びます。

フリーでは紀平梨花選手のトリプルアクセルが最高評価でした。これ、加点として、ではなくて、+5~-5のGOEとして、なので、ほかの選手のすべての3回転ジャンプより、紀平選手の3回転半ジャンプの方が評価が高かった、という意味になります。紀平選手はショートフリーで単独ジャンプを6回飛んでいますが、ショートのトリプルアクセル以外はすべて平均GOE+2以上のクリーンなジャンプでした。これが日本のトップですし、こうでないと世界のトップで戦えない、ということなのだろうとも思います。

ジャンプ苦手感を最近は出している本田真凜選手ですが、フリーのトリプルループは高評価で、単独三回転ジャンプとして紀平選手に次ぐ評価を受けていました。

フリー24位に終わった津内胡菜選手ですが、冒頭のトリプルルッツは平均GOE+2.333がつく高評価ジャンプでした。単独のトリプルルッツは延べ23人が要素として入れていますが、ショートの永井優香選手と並んでの最高評価です。女子シングルで全日本に出てくる選手は、結果として下位に終わっても、それぞれ何か一つはトップに引けを取らないものを持っている、ということの現れに感じました

 

●単独ダブルアクセル 平均GOE+2.000以上

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP 横井ゆは菜 1 2A   3.30   1.13 4.43 3.444
SP 樋口新葉 1 2A   3.30   1.08 4.38 3.333
SP 宮原知子 2 2A   3.30   0.99 4.29 3.111
SP 坂本花織 3 2A   3.30   1.04 4.34 3.111
SP 山下真瑚 2 2A   3.30   0.90 4.20 2.667
SP 本田真凜 4 2A   3.63 X 0.80 4.43 2.444
SP 永井優香 4 2A   3.63 X 0.75 4.38 2.333
SP 川畑和愛 1 2A   3.30   0.71 4.01 2.222
SP 笠掛梨乃 4 2A   3.30   0.71 4.01 2.222
SP 野比 4 2A   3.63 X 0.71 4.34 2.111
SP 廣谷帆香 5 2A   3.63 X 0.66 4.29 2.000
FS 坂本花織 1 2A   3.30   1.32 4.62 4.000
FS 横井ゆは菜 1 2A   3.30   1.23 4.53 3.667
FS 樋口新葉 1 2A   3.30   1.04 4.34 3.111
FS 宮原知子 1 2A   3.30   0.94 4.24 2.778
FS 本田真凜 2 2A   3.30   0.80 4.10 2.333

単独ダブルアクセル、というのはショートプログラムでほとんどの選手が入れてくる基本要素です。ただ、ショートでトリプルアクセルを飛んだ紀平梨花選手や吉田陽菜選手は、ショートフリー通じて単独ダブルアクセルという要素がありません。

最高評価はフリーの坂本花織選手で+4.000 フリーのジャンプはひどかった坂本選手ですが、冒頭は最高評価で入っていました。本当は、この時期にはトリプルアクセルになっているはずだったんでしょうね・・・。それに次ぐのは横井ゆは菜選手、樋口新葉選手。トリプルアクセルの練習を積んできた、という選手たちが単独ダブルアクセルの評価は高いです。

そんな中に宮原知子選手の名前もあります。本田真凜選手もショートフリー共に名前は言ってますし、上位に来る選手はトリプルアクセルを飛ばない限りは単独ダブルアクセルでしっかり高評価を得られる、ってことなんでしょうきっと。

 

 ●レイバックスピン 平均GOE+2.500以上

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS 宮原知子 12 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
FS 紀平梨花 12 LSp4   2.70   1.00 3.70 3.778
SP 本田真凜 5 LSp4   2.70   0.89 3.59 3.444
FS 本田真凜 12 LSp4   2.70   0.89 3.59 3.333
SP 野比 7 LSp4   2.70   0.89 3.59 3.222
FS 河辺愛菜 4 LSp4   2.70   0.85 3.55 3.222
SP 紀平梨花 7 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.111
SP 磯邉ひな乃 7 LSp4   2.70   0.73 3.43 2.778
SP 松千 3 LSp4   2.70   0.73 3.43 2.667
FS 磯邉ひな乃 9 LSp4   2.70   0.69 3.39 2.667
FS 千葉百音 12 LSp4   2.70   0.69 3.39 2.667
SP 横井ゆは菜 2 LSp4   2.70   0.69 3.39 2.556
SP 井上千尋 6 LSp4   2.70   0.73 3.43 2.556
FS 吉岡詩果 11 LSp4   2.70   0.69 3.39 2.556

スピンの中で、女子シングルではレイバックスピンの使用率が極めて高いことと、比較的容易ならしく高評価選手が多いので、これだけ個別に抜き出しました。

レイバックスピンの最高評価は宮原知子選手。ショートはレベル3で、あれ、どうしたの? という感じでしたが、フリー、本人もはっきりわかるくらいによくない演技だったにもかかわらず最後の要素であるレイバックスピンはしっかり演じて最高評価。こういうところはさすがです。

二番目に紀平選手を挟んで、三番目に本田真凜選手が入ります。その次に竹野比奈選手。スピンの評価が高い選手が続きます。

ジュニアからもレイバックスピンの高評価選手が複数入ってきます。川畑和愛選手の名前がないですが、それはレイバックスピンの要素を入れていないためです。

 

●レイバックスピン以外のスピンでレベル4の平均GOE+2.500以上

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS 宮原知子 4 FCSp4   3.20   1.05 4.25 3.444
FS 紀平梨花 4 FCSp4   3.20   1.05 4.25 3.333
FS 紀平梨花 9 CCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.333
SP 宮原知子 6 FCSp4   3.20   1.05 4.25 3.222
SP 本田真凜 7 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 2.889
SP 紀平梨花 3 FCSp4   3.20   0.87 4.07 2.667
FS 松原星 5 FSSp4   3.00   0.81 3.81 2.667
SP 横井ゆは菜 7 CCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.556
FS 松原星 4 CCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.556

レイバックスピン以外でも最高評価は宮原知子選手でした。紀平梨花選手、本田真凜選手と、レイバックスピンと同じ名前が上位に連なります。レイバックスピンと異なるのは、松原星選手。高校生だった昨シーズンの11位から下げて今回は16位でしたが、フリーのスピン二つは高評価でした。

 

 ●ステップレベル4

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS 樋口新葉 11 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
SP 坂本花織 7 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.889
FS 紀平梨花 6 StSq4   3.90   1.39 5.29 3.556
SP 樋口新葉 7 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.444
SP 吉岡詩果 6 StSq4   3.90   0.89 4.79 2.333
SP 野比 6 StSq4   3.90   0.78 4.68 2.000

今回、ステップのレベル4は8選手で10例のみでした。樋口新葉選手と竹野比奈選手の二人は、ショートフリー共にレベル4です。最高評価は樋口新葉選手のフリー。レベル4で平均GOE4.0ともなると、世界のトップと並ぶ水準です。シニアのトップ選手が上から並ぶ中、ジュニアの吉岡詩果選手も名を連ねています。

総合20位に終わった佐藤伊吹選手や、フリーに進めなかった竹野仁奈選手もレベル4を取っていました。

 

●ステップレベル3で平均GOE+2.000以上

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP 宮原知子 4 StSq3   3.30   1.41 4.71 4.222
FS 宮原知子 6 StSq3   3.30   1.32 4.62 4.000
SP 本田真凜 6 StSq3   3.30   1.27 4.57 3.778
SP 紀平梨花 6 StSq3   3.30   1.13 4.43 3.556
FS 坂本花織 5 StSq3   3.30   1.08 4.38 3.333
FS 本田真凜 6 StSq3   3.30   1.04 4.34 3.222
SP 横井ゆは菜 6 StSq3   3.30   0.94 4.24 2.778
FS 川畑和愛 5 StSq3   3.30   0.85 4.15 2.556
SP 永井優香 5 StSq3   3.30   0.75 4.05 2.333
FS 横井ゆは菜 5 StSq3   3.30   0.80 4.10 2.333
FS 河辺愛菜 6 StSq3   3.30   0.71 4.01 2.333
SP 松田悠良 6 StSq3   3.30   0.66 3.96 2.000
SP 大庭雅 7 StSq3   3.30   0.66 3.96 2.000

レベル3ではありますが、宮原知子選手が平均GOEで4.000以上をショートフリー共に並べました。総合で上位に入ってくる選手は、ステップがレベル3になることはあっても、高いGOEを得てきます。

総合成績で下位の方になってしまった松田悠良選手、大庭雅選手ですが、さすがかつてはグランプリシリーズに出ていただけあってか、こういうところで名前が入ってきました。

 

●コレオシークエンス 平均GOE+2.000以上

Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
宮原知子 11 ChSq1   3.00   2.07 5.07 4.222
紀平梨花 10 ChSq1   3.00   1.93 4.93 3.889
坂本花織 10 ChSq1   3.00   1.71 4.71 3.444
新田谷凜 11 ChSq1   3.00   1.43 4.43 2.889
本田真凜 11 ChSq1   3.00   1.50 4.50 2.889
川畑和愛 11 ChSq1   3.00   1.43 4.43 2.778
野比 11 ChSq1   3.00   1.07 4.07 2.222
樋口新葉 6 ChSq1   3.00   1.07 4.07 2.111

コレオシークエンスはフリーにしかない要素なので、全員フリーでの実施です。

これも最高評価は宮原知子選手。ただ一人平均4.0を超えてきました。

一方、不思議なもので、ステップではレベル4のGOE4.00をたたき出した樋口選手、同じフリーでコレオシークエンスでは平均GOE2.111にとどまっています。コレオで上位と1点差付けられる、というのは世界で勝負していく中ではちょっと苦しい。ただ、ほとんどの選手が、ジャンプ要素がすべて終わった後でコレオシークエンスが入って来るのに対し、全体の中盤でコレオシークエンスが入ってくる樋口選手は、力を入れきれない部分があるでしょうか。樋口選手はステップの方がジャンプが終わった後に入れているので、そういった体力バランスの点で影響があるのかもしれません。

 

 

満遍なく点が取れている選手、総合では上位にいたけれど要素別を見ると偏りがある選手、総合では思うような順位にはならなかったけれど一つ一つの要素では、流石と言えるようなものを見せてくれた選手、トータルでは上位に及ばないけれど一つの要素ではトップに引けを取らないものを持っている選手。様々いました

 

以上、全日本選手権19の女子シングル振り返り、数値編でした。

 

全日本選手権19女子シングル数値編1

さて、前回までで全日本選手権の文章並べた感想編を2回書きましたが、今回は数値編です。数字とグラフ、というか散布図ですけど、並びます

 

全日本選手権19女子シングルTESPCE

 まず、ショートフリー合わせての技術点、演技構成点を見たもの。上位八人は個別の色がついていて、9~24位は水色の小さい点になります。フリー進出選手のみがプロットされます

当たり前ですが、上位八人が右上に出るわけですけれど、紀平梨花選手は突出して右上です。まあ、大差で優勝したわけですからそりゃあそうだろう、という話ではあるのですけれど。技術点も演技構成点もトップです。

全体見ると、PCSの1.1倍がTESというくらいが標準的でしょうか。紀平選手はだいたいそのあたりで、トリプルアクセルという高難度ジャンプがありながらもバランスが取れていることが見て取れます。

二位樋口新葉選手はややPCS寄り、三位川畑和愛選手はややTES寄りです。上位三人はTESの得点上位三人と一致します。

一方、極端にPCSに寄ったのが三選手。宮原知子選手、坂本花織選手、本田真凜選手。本田選手はPCSだけなら五位でした。坂本選手はいつもは割とバランス型の位置に来るのですが、今回は技術点がひどすぎてこの位置に。宮原選手はもともとPCS寄りな選手ですが、今回はジャンプの回転不足が合計10個もあったりして、いつもよりさらにPCS寄りになりました。

逆にTESに寄ったのが今回7位と躍進した新田谷凜選手。技術点だけなら全体4位。PCSはあまりもらえませんでしたが、ジャンプを次々に決めた結果過去最高順位となっています。

 

全日本選手権19女子シングルジャンプ

次は、ジャンプの基礎点とGOEの稼ぎ方。

やはり右上に突出する紀平梨花選手。基礎点トップなうえにGOEもはっきりトップです。基礎点二番手は、ほとんど重なってしまって見えないですが新田谷凜選手。黒にほとんど隠れているところに緑もいて、これは樋口新葉選手です。回転不足が続出した今大会ですが、新田谷選手樋口選手、二人は、3回転3回転の後ろのトーループが一つ回転不足になっただけ、ということで基礎点が高く残りました。

GOE二番手は川畑和愛選手。川畑選手はショートでフリップがない、フリーのフリップがeマーク、ということでフリップが苦手な分基礎点で樋口選手新田谷選手に劣りましたが、ショートの3Lz-3Tで加点最高などGOEを稼いで3位表彰台の原動力となっています。

全日本レベルの大会だと、ジャンプのGOEは平均するとマイナスになります。プラスを出せた選手は10人だけです。上位の選手の中では宮原知子選手がGOE-4.03と最も低い値になっています。坂本花織選手、本田真凜選手もGOEマイナスです。この三選手は、ジャンプに関しては全選手の中で見て標準的、あるいは標準より下の水準に今大会はなってしまっていました。

基礎点60点以上のところにある小さい水色三つはジュニアの三選手で、河辺愛菜選手、浦松千聖選手、吉岡詩果選手です。川畑選手も含め、ジュニアの選手はしっかり基礎点の高い構成を組めていて、回転不足はそれほど出ていない、ということが見えます。ただ、その中でしっかり決めてGOEを稼げたのが川畑選手であり、それにより世界ジュニアの切符をつかんだ、というようにも見えます。

 

全日本選手権19女子シングルスピン

スピンは基礎点が最も高かったのは横井ゆは菜選手でした。横井選手はスピン6つのうち一つがレベル3だったのですが、フリーではレイバックスピンなしの高得点スピン構成なため、一つレベル3でも、レイバックスピン入りのオールレベル4の選手より基礎点が高くなっています。レイバックスピンはレベル4でも基礎点が2.7しか入らないので、やや不利になります

GOE最高点は宮原知子選手の+5.89 二番手に紀平梨花選手が+5.87で続きます。宮原選手は今シーズンスピンで今一つレベル4が揃っておらず、今大会もレベル4は三つだけで、3が二つに4Vが一つ。したがって基礎点は全体18番目だったりしましたが、加点はしっかりとりました。まあ、いつも通りレベル4を6つ揃えていれば、表彰台には乗っていたんですけどね・・・。

一方、坂本花織選手は基礎点がフリー通過24選手中24番目。レベル4は一つだけでレベル3が3つに3Vと2Vが一つづつ。これではちょっと点が出ません。加点は人並みには取ったのですが、宮原選手とはだいぶ差がある。世界選手権を逃した致命傷は、実はスピンで負っていた、ということなようです。スピンでレベル4を6つ取っていれば、トータルスコアで宮原選手の上にまでは出ることが出来ていました。

また、本田真凜選手がGOEで3番手なことも目を引きます。宮原紀平本田、旧浜田組三人でスピンのGOE上から3人、というのは偶然か必然か。まあ、それはともかく、ジャンプの出来が今一つでも、こういうところでしっかり点を取ってきているというのが、本田選手の成長と感じさせられます

一方、総合2位の樋口選手はスピンで点が伸びていません。特に一見ノーミスに見えたフリーで、スピンはレベル4が一つであとはレベル3と2Vとなり、基礎点からだいぶ削られました。その辺が210点まで届かなかった一つの要因で、世界選手権でユヨン選手やアメリカ勢との競り合いの中では上位に上がっていくには一つのポイントになってくるかもしれません。ジャンプが決まり始めたので、次にはトリプルアクセルと、こういった一つ一つの取りこぼしをなくすことへ目が行く段階に上がった感じになるのでしょうきっと。

水色の小さな点で横井選手に次ぐ基礎点18.7まで稼いだのは竹野比奈選手と磯部ひな乃選手という大学生二人です。竹野比奈選手はGOEも4.47稼いで旧浜田組3人に次いで全体で四番目でした。スピンが好き、スピンが得意、という言葉に嘘偽りない結果が見られています。

 

全日本選手権19女子シングルステップ

コレオシークエンスも含めたステップ系のスコアは、上位選手のGOEが高い、という形で、なるほど強い選手がこういうところで点を取るんだな、というのが見えますが、レベル4を並べた基礎点最高は樋口新葉選手と竹野比奈選手でした。竹野比奈選手はジャンプがあまり伸びず総合では14位でしたが、スピンステップでは上位に引けを取らないところを見せています。九州地元で活動を続けている竹野比奈選手ですが、失礼ながら関西中京といったスケートどころで指導を受けたら、ジャンプの精度も上がってグランプリレベルの選手に普通になっていけるのではないかと思ったりもします。

GOE最高はスピンに続いて宮原知子選手。レベル3が二つなので基礎点はあまり取れていないのですが、評価自体はやはり高い選手です。GOE2番手に紀平梨花選手、3番手に坂本花織選手、ということで昨シーズンの3強がステップは評価高い、というところを見せています。

本田真凜選手はここでもGOE5番手と上位に近い評価。スピンステップPCSと高評価ですので、やはり結局、あとはジャンプ、ということになります。

 

次回、各要素の個別の点数に移ります

 

全日本選手権19 男子シングル感想

前回女子シングルの感想を記しました。

というわけで今回は男子シングルになります。

 

 

優勝、宇野昌磨選手。

勝っちゃうんだ。というのはさすがに驚きました。

決して、すごくいい出来だったわけではないんですけどね。今シーズンは紆余曲折あって、まあ通過点の全日本は2位には入って世界選手権の出場権はちゃんととって、復活は年明けかな、くらいに思っていたのですけれど。小説ですか? くらいな今シーズン前半の展開でした。

ショートの衣装は、私は前の方が好きです。このプログラムは宇野選手の代表作になるような気がしていたので、ちゃんとこうやってノーミス演技が見られて、記録にも残ってよかったです。コンビネーションが4-3になればなおよかったですけど。全要素全ジャッジプラス評価。それも+2以上の評価。コンビネーションが4-3になれば110点が見えてきましたでしょうか。

ただ一人のショートフリーでステップレベル4を並べて、ショートのステップGOEは+4.000 ショートフリースピンもすべてレベル4  コーチって、必要なんだ

見ている方がそう思わされる今シーズン前半でした。

ランビエール先生ありがとうございます。

 

羽生選手は久しぶりに対日本人選手敗北。というか、現役選手で羽生選手に勝ったことあるのって、ネイサンチェン選手しかもうほとんどいなかったりしました。カッコつきで高橋大輔選手ってのもありますけど。

中一週挟んでの三連戦、というスケジュールが割と批判されていますけど、実際のところ、日本のトップ選手は結構それをこなしてきてるんですよねえ。NHK杯~グランプリファイナル~全日本選手権、というのはそのスケジュールになることが多いです。たまにNHK杯がグランプリ4戦目とかになるとこのスケジュールから外れるんですけど。実際、宮原知子選手は、そのスケジュールが3年続きましたけど、全日本は勝ち続けました(2~4連覇目)。羽生選手の場合は、年齢的なものなど他の要因もあるにはあるんでしょうけれど、それよりも、単に、慣れの問題が結構あったのではないかということを思いました。ここ数年、それほど試合数をこなしてないんですよね。そこが大きかったのではないかと思います。

ループ降りて、サルコウしっかり決めた時点で、ああさすがに勝つんだ、と思ったのですが、まさかのルッツ3回転を失敗するという、その辺から、あれ? あれ? あれれ? れれ? という感じで、羽生選手を見ていて、こんなにうまくいかないことってあるんだ、というのを見たのは何年ぶりでしょう。

今回の構成はオーソドックスなものだったでしょうか。グランプリファイナルのフリー、決められなかったのですが、トリプルアクセル-トリプルアクセルというシークエンスが最後に組まれていたので、一度見たいんですよね、試合でしっかり決まるそれ。構成上げないと、そのシークエンスは出現しないので、構成上げた上で最後までしっかり滑る、というかなり厳しいことが要求されてしまうのですが、見たいなあ、試合で。

あれ、四大陸出るの? と思いましたが、主要大会で四大陸だけ取ってないんでしたっけね。

 

鍵山選手の表彰台は、結構多くの人にとって予想された範疇にあったんじゃないかと思いました。プレビューの時に、四大陸はミニマムポイント取りに行く時間がないから無いですね、なんて書きましたが、それは外れで四大陸代表に。昨シーズン、チャレンジカップでミニマムスコアを確保していたようで、そこが抜け落ちてました。すみません。

鍵山選手のスケジュールも結構今シーズンきつい感じはあります。

ジュニアグランプリ1、中3週でジュニアグランプリ2、中1週で関東選手権、中2週東日本選手権、中2週全日本ジュニア、中2週ジュニアグランプリファイナル、中1週全日本選手権、中2週でユースオリンピック、中3週で四大陸選手権、中3週世界ジュニア

予定では10試合滑ることになります。ジュニアグランプリファイナル以降は、ジュニアルールとシニアルールが交互に入る。間1か月空く試合はなく、長くて中3週。関東選手権と東日本選手権は、鍵山選手にとっては調整レベルの試合かと思いますが、全日本ジュニア以降は、どの試合を見ても勝負の試合です。

ユースオリンピックがなければ、ここからはそれほどハードでもないのですが、これが入ることで常に臨戦態勢、みたいな時期が長く続いての世界ジュニアになっていきます。いい経験と言えばいい経験なのでしょうけれど、結構きつそうに見えます

今回は、高難度プログラムで入りましたが、スピンは六つすべてレベル4 ジャンプに意識が行きすぎず確実に点が取れていたのは素晴らしかったと思います。バランス型なので、四回転がもう一本増えれば、もうその時点で世界のトップと戦えそうな印象でした。

 

田中選手は4年ぶりに表彰台から落ちた形でした。プレビューではちゃんと述べませんでしたが、世界選手権の代表選考という点では、実は圧倒的に有利な位置にいました。代表選考のテーブルに上るためには、全日本で表彰台に上がればいいのですが、上がれなかった選手でも選ばれる条件はいくつかあり、それを満たしていたのは、羽生選手、宇野選手の他では、田中刑事選手と、ジュニアの佐藤駿選手だけでした。佐藤選手はジュニアなので、実質的には世界選手権の代表に選ばれる対象ではありません。そういった状況の中で、佐藤選手あるいは鍵山選手、といった強いジュニアがいますので、ほかのシニアの上位選手は表彰台に上らないと三枠目に入れないのに、田中選手は、自分が表彰台に乗れなくても、ジュニアの選手、あるいは出る気のない高橋大輔選手が表彰台に乗ってくれれば三枠目が確定する、といった状況での全日本でした。そして結果、その通りになる。まあ、四位に入って、ほかのシニア選手より上でしたから世界選手権の代表になって何の違和感もないのですが、これでフリーミスって10位くらいで代表になっちゃったらどうしよう、と思ってフリーは見てました。四回転二本降りた時点で、まあ、これで大丈夫かな、とは思いましたけれど。

ただ、今回の全日本の時点で、鍵山選手とフリーのPCSが3.6しか差がありませんでした。田中選手が著しい失敗をしたわけでもないのにその差ですので、鍵山選手がシニアに上がってPCSも高まってきた時点でそこは逆転してしまいそうに見えます。一方で技術点の優位性は今の時点で見られない。この状況だとちょっとこの先苦しいのかなあ、と思わざるを得ない部分はあります。

 

佐藤駿選手は5位 四回転を早い時点から飛べるようになってはいたのですが、ベストスコアは210点台に留まっていて、現時点では鍵山選手の方が一枚か二枚上かな、と思っていたのですが、ジュニアグランプリファイナルで四回転3本決めて優勝。今回はショートも入れて四回転3本でしたが、注目の四回転ルッツは残念転倒でした。ただ、やっぱり滑りの点では鍵山選手の方が上だな、と今回見ていて感じたのも事実です。PCSでだいぶ差が出る、というだけでなく、技術点の方でもスピンでレベル4が揃う鍵山選手に対し、レベル3が散見する佐藤選手。ジャンプのGOEで+3を超える数字をいくつも出してくる鍵山選手に対して、基本的に+2台までにとどまる佐藤選手。この辺の細かい差が鍵山選手の方が勝率高くなる要因な感じがします。多少ミスが出た時のベースが鍵山選手の方が高いんですね。

ただ、爆発力があるのは佐藤選手の魅力。ルッツ、降りたと思ったんですけどね。ロミオとジュリエットの衣装、結構好きです。テーマ的にはもう少し勇ましい系統のものを選ぶとさらに似合うのではないかと思うのですけれど。来シーズンどうだろう

スケジュール的にはユースオリンピックか四大陸か、どちらかは鍵山選手ではなくて佐藤駿選手に回した方がいいんですけど、ユースオリンピックは全日本ジュニア終わった時点で代表決めるしかなかった(全日本では直前過ぎる)。四大陸はミニマムスコアもってない佐藤駿選手には渡せない(ミニマムスコアを取りに行く時間的余裕はぎりぎりあるにはあるのだけど)。というわけでどちらもなし。まあ、しょうがないですかね。

世界ジュニアは鍵山選手と佐藤選手。枠三つとか、何の心配もなく取って帰ってきそうなので、二人表彰台というのを期待したいと思います。シーズンベストがだいぶ高いので、世界ジュニア表彰台で来シーズングランプリは確実に2枠になりそうですし、先々楽しみです。

 

友野選手は6位。ショート終わった時点で田中選手との8点弱の差はまだ何とかなるんじゃないかと思っていたんですが、表彰台必須だったので佐藤選手との10点近い差を逆転しないといけない。これは苦しいなあ、とは思ったのですが、演技終わった時点で、もしかしたらまだチャンス残るかも、と思ってました。ところが、佐藤選手の前に鍵山選手にあっさり上をいかれてしまい世界選手権が消え、まさか四大陸まで消えるとは・・・

宇野選手羽生選手、両方出るとは思わなかったんですよね四大陸。何なら両方出なくてもいいんじゃくらいな感じなんですけど。四大陸の使い方が最近男女とももったいない感があるのはどうにかならないものかなあ。

ステップ系要素の評価は高いんですけどねえ。コレオシークエンスは羽生高橋大輔宇野三選手に次ぐ四番目の評価。一方でスピンがいまいちなんですよねえ。レベル2とか2Vさらにはレベル1なんてのもありまして。ステップ見てるのは飽きないのですが・・・。

グランプリデビューNHK杯チゴイネルワイゼンから、世界選手権5位まで一気に駆け抜けた、あの勢いをもう一度、期待しております。四回転あと一本、4本決まれば260点くらいまではいくんだよなあ。

 

フリーで何とか7位まで上がった山本草太選手。四回転、なんですよね、結局問題は。今回クリーンに決まったのは四分の一。ショートフリー1本づつにしてクリーンに滑るなんてすれば250点くらいはすぐに出るんでしょうけどそれだとノーミスでも勝負できない、となるとやっぱり四本五本と入れる構成にチャレンジしないといけない。入れると確率下がって四大陸にも届かない。どうしたらいいんでしょう。シーズンベストもまだ23位に残ってますが、この後抜かれて25位以下に落ちる可能性は極めて高い。ランキングはまだ30位台。この後B級大会に出ても今シーズンはランキングポイントはもう増やせないのでランキングは上がらない。こうなると来シーズンもグランプリ1枠の可能性が高い。グランプリ1枠だとランキングが上がらない。世界ランキング制度の構造的な欠陥もあるような気もしますけど、どうにかならないものかなあ

滑りの美しい選手、という印象はかわらないのですけど、点にはあまり反映されないんですよね。PCSはあまり伸びない。表現、というより、滑りが美しい、という世界を作っている印象。ただ、ジャンプで失敗するとその印象も薄くなってしまう。表現、の場合はジャンプの失敗の印象を後から上書きできるんですけど、滑りの美しさは印象に対する訴えとしては柔らかいだけに弱い。そして、滑りが生きるステップシークエンスも、レベルが取れない。レベル4は取れたことないんじゃないでしょうか。

何かが惜しいんですよね。少なくともグランプリで2戦は見たいんだけどなあ。ショートのエデンの東は山本選手の滑りに合ったプログラムだと思います。オリンピックシーズンにフリーの信長協奏曲と合わせてもう一回やってくれないかなあ。

 

ショート5位でチャンスのある位置にいた島田高志郎選手は結局トータルでは10位でした。鍵山選手は第三グループの最後。最終グループの選手は6分間練習の準備でリンクサイドに集まっているので鍵山選手のスコアは全員聞いてます。鍵山選手の上まではいかないと世界選手権はない。上に出るためには177点が必要。という情報が揃った状態で6分間練習に入っていった島田選手。周りには羽生選手宇野選手田中刑事選手、オリンピアンたちがいる。というシチュエーションからの最終グループ1番滑走。ちょっと厳しい環境でしたかね。今シーズンが一番チャンスだったような気もするのですが、フリーの自己ベストがルール改正前までさかのぼっても140点台、トータルで220点台。現実的にはまだ代表を争う、というには実績的には薄かったでしょうか。

スピンはランビエール先生譲りなのかいいものを見せてくれるんですけどね。羽生選手宇野選手と同等とはいきませんが、その下の層の何人かの中には入る加点をもらっています。

鍵山選手佐藤駿選手は高1、山本草太選手で大学2年、友野一希選手は3年。島田選手は高3で、前後にトップを争う選手がいない世代です。中学時代は三宅星南選手とのライバル関係があったような記憶がありますが、今は少し差が付きました。世代トップとして上下の世界レベルの選手たちと争っていってくれるとこの先いいのですがどうでしょう?

 

高橋大輔選手、シングル最後の演技は12位でした。ショートプログラムは、エキシビジョン??? いやぁ、好きですけど、高橋選手のああいう演技。でも、試合の振付なのそれ? という感じで。技術点24.53は29人中25位・・・。4回転無しのジャンプ要素三つすべて回転不足、スピンレベル4無し、ステップレベル2 まあ、そうなりますね・・・。フリーもそこまでひどくはなかったですが、技術点は全体の21番目でした。それでもコレオシークエンスは全選手中最高点。ステップはフリーでは3人しかいなかったレベル4をとり加点も最高点。

まあ、点数がどうのこうの、という話じゃないですかね、もう、高橋選手は。生きる伝説がそこに滑っている、というそれだけでよいというか。フリーが終わった直後、スタンドに向けたカメラが写した宮原知子選手の視線、というのが高橋大輔選手の価値をすべて物語っていたように感じました。

アイスダンスに移って、アイスダンスも放映されるようになってくれることを期待しております。ランキングポイントゼロから始まりますが、グランプリシリーズ、NHK杯には地元枠で呼ばれちゃったりするんですかね。来シーズンいきなり世界選手権というのは普通に考えると厳しいと思われますが、四大陸のミニマムスコアくらいまでなら届かないこともないのではないかと思います。

 

今回はジュニアが躍進した大会でしたね。男女ともジュニアが表彰台に。女子は、シニアの自爆感がありましたが、男子はもう自力で上回っていったというように見えました。フリーの180.58というスコアは、羽生選手宇野選手とルール変更前の高橋大輔選手しか、今大会の出場選手では超えたことのないスコア。佐藤選手もジュニアグランプリファイナルと2戦続けてフリーの技術点90点越え。北京オリンピックシーズンには高校三年生になる二人。羽生選手宇野選手と合わせて、北京オリンピックはものすごい布陣になりそうだな、と思わされた全日本選手権でした。

 

全日本選手権19 女子シングル感想

今年も全日本選手権が終わりました。

いつもは数字やグラフを並べる形になってますが、たまには、ただの感想を述べてみたいと思います。

 

優勝は大方の予想通りなんでしたかね。

自分の予想ではもう少し競るかと思っていたのですが、昨シーズンからの三強のうちの二人が崩れてしまったので、楽勝、という展開になってしまいました。

あの展開なら余計に四回転飛びに行ってもよかったと思うのですけれど、あまり直前の他の選手の結果というのは構成に反映しないものなような気はします。ショートプログラム終わった時点での他の選手の結果(自分との点差)は反映されるのでしょうけれど。

でもまあ、最後にちゃんと締まってよかった。あのまま紀平選手までトリプルアクセルで転倒、なんてなってしまうと、近年まれにみる締まりのない全日本になってしまうところでしたから。個人的にはショートプログラムの衣装は、スケートカナダまでの青系のものの方が好きなんですが、少数派なんですかね。青の方がバグダッド感を感じるのですけれど。

 

 

宮原選手は回転不足8つ、ショートと合わせると10個。ジャンプはコンビネーションまで含めて全部で15回なので、三分の二が回転不足。今のルールでは、全日本レベルの大会なら回転不足は実は致命傷にならないと思っているのですが、さすがにここまで並ぶと厳しいですね。クリーンに飛べた三回転はショートの単独ループと、フリーのコンビネーションの一つ目のルッツという二つだけ。逆に、それでよく4位に残ったなあ、と思いました。

宮原選手の結果が出て、うわあ、世界選手権なしか、と思ったら、まさかの坂本選手はそれより点が出ずに宮原選手が世界選手権に残るという展開。ジャンプ以外のベースになる部分のレベルが高いのであの出来でもぎりぎり190点台に残るんですね。大崩れしない強み、というよりは大崩れしても190点台に残る強み、というのが世界選手権の枠取りという点では重要なものな感じはします。ロシア3、紀平梨花、米国2にユヨン選手あたりまでは200点を普通に出してきたとしても190点台に残っておけば8位には残る。カナダやヨーロッパ勢で一人くらい神懸かり演技をして190点台で上に出る選手がいても9位。そうなると、紀平選手がロシア3に勝てなくても順当に4番に入っておけば来シーズン3枠がきっちり残る。これが、大崩れしたら170点台になります、が二人+紀平選手だと、紀平選手が表彰台に乗っていかないと危ない、ということになるので、大崩れしても190点台出せるというのは重要です。

 

坂本選手はショートフリー合わせて回転不足5つとダウングレード1つ ジャンプもよくなかったのですけれど、スピンがショートフリーでレベル4が1つだけということでスピンで全然点が取れませんでした。結果的にフリーは基礎点から宮原選手より下。ということで6位にまで落ちてしまいました。

よくよく考えてみると坂本選手にとって今シーズンは、初めて挑戦者ではない立場になったんだな、と思いました。オリンピックシーズンは、序列としては5~6番手でシーズンインして、スケートアメリカで有力候補に名乗りを上げて全日本で逆転代表入り、なので完全に挑戦者の立場でした。

オリンピックに出たから翌年は受ける立場か、というとそうでもなくて、まだ世界選手権にも出てないし、全日本で勝ったわけでもないし、明らかに宮原選手の方が格上で、かつ、紀平選手が注目も浴びて強い、という中での二番手三番手の立場なので、ほとんどの試合で挑戦者側。ただ、四大陸は前の年に勝っていたこともあり受け身な立場でしたかね。その辺がフリーで崩れたところにつながった感じがしました。

今シーズンは全日本チャンピオンとして入ったシーズンですし、グランプリシリーズも前年にファイナルに進んだという立場です。ロシアが圧倒的に強い、と言われても、立場的には挑戦者感がない感じでシーズン進んできて、全日本はこんな感じに。勝ち続ける難しさ? 次へ向けて、挑戦者感を取り戻すことがカギな気がします。

マトリックス、好きなんだけどなあ。ノーミスマトリックス、お願いだから見せてください。挑戦者感をもって向かっていけば、四大陸選手権でそれが見られるのではないかと期待しております。

 

宮原選手も坂本選手も、次へ立て直すには世界選手権や四大陸の代表にならず、長いオフシーズンにしてしまった方がむしろ良かったんじゃないか、という気がしたりもしました。ポイント稼いでランキング保たなきゃいけないような位置でもないですし。坂本選手はトリプルアクセル導入、宮原選手は全面的なジャンプの立て直し。それをするには1月から来シーズンへの準備に入って9カ月の時間を取った方がよかった気がするのですけど、世界選手権はどちらかはいてくれないと来シーズン3枠が怖いは怖いから、宮原選手が入るのは仕方ないのかなあ。

 

横井選手は表彰台まであと3.04ポイント。表彰台乗ってたら世界選手権代表入ったんでしょうか? でも、僅差なら宮原選手入れましたかね。それでも四大陸は取れていたと思われます。今シーズンはグランプリシリーズの成績もそれほど遜色ないですし、全日本で上に出た横井選手を、枠取りという概念のない四大陸になら選んでもよかったんじゃないかという気はするのですけどね。樋口選手はともかく、紀平選手、四大陸いらなかったんじゃ・・・、という気もしました。

こういう、大学に入るタイミングでシニアに上がる選手、というのがその先大成するような世界がフィギュアスケートの世界、特に、女子シングルの世界にあってほしい、と思うし、そう思わせてくれる選手でもある。もうちょっとPCS出してあげてもいいんじゃないの? 特にフリー、と思ったりもしました。

 

川畑選手は実力のある選手だと思っていたし、180点台で一桁順位にまでは来て、世界ジュニアを吉岡選手と争うんだろうな、と思っていましたが、表彰台に乗るのはさすがに驚きです。ジャンプの回転不足が、三連続の最後の2Loのみ、というのは上位の中では一番回転不足ダメージが少ない出来でした。大人体形化しているうえでジャンプが安定しているのはいいですね。世界ジュニア頑張れば、来シーズンのグランプリ2枠もあるのかもしれません。

 

樋口新葉選手の復活表彰台。ただ、復活ではあるのですけど、200点台一桁は、宮原選手坂本選手が順当に滑れば超えていく点数ではありました。復活度合いはまだほどほどだと思います。完全復活したら、宮原選手や坂本選手がノーミスでも、どっちに転ぶかわからない、という水準までの点数が出せるはずですし。真に復活と言えるのは210点台後半まで出してからな感じがします。ショートフリーでトリプルアクセル入ってノーミスなら230点まで届く資質がある、というのは全日本で見せてくれましたので、シーズン後半のトリプルアクセル投入をお待ちしております。

 

真に復活した、と言えるのは新田谷凛選手だったのではないかと思います。過去最高位の7位。いまいち信じてなかったんですけど、この結果が出ても今シーズンで引退、というのはかわらないようで。同世代でもう少し実績的に落ちる選手も、結構グランプリシリーズに出ていたりしたんですけどね。新田谷選手も一試合くらい回ってきてもよかったと思うのですが、いろいろなめぐりあわせでチャレンジャーシリーズ止まりでした。この7位という結果があると、シーズン後半に国際試合に送ってもらえるし、来シーズンチャレンジャーシリーズには出してもらえると思うんですが、それでも引退なのかなあ。このレベルの選手が大学卒業とともに引退しないといけない、という競技であるというのがフィギュアスケートの現実でもある。今回、たぶん初めてだと思うのですけど、同い年の宮原選手に、ショートフリー共に技術点では勝ちました。フリーでは総合点でも勝ってます。ショートはフリップトーの三回転-三回転も決まって全要素全ジャッジプラス評価。まだまだいけると思うんですけどねえ・・・。

 

復活途上と言えばもう一人、永井優香選手。9位まで戻ってきました。永井選手もショートで全要素全ジャッジプラス評価で技術点は全体3位。グランプリシリーズで表彰台に乗ったのはもう4年前なんですねえ。その時の雰囲気に近いところまで戻ってきたなあ、と思いました。ルッツ好きだなあ。

現在大学3年生。来シーズンで終わりなんでしょうか。ユニバーシアードが来シーズンはあるので、そこが現実的な目標になるのかと思いますけれど、来シーズン大学一年生に上がる世代が、ちょうどユニバーシアードレベルな選手が多いので代表争いは苦しいかなあ。もう一度国際舞台にチャレンジしてほしいのですけれど。9位はチャレンジャーシリーズ送ってもらえるのかどうか。

 

復活途上で来シーズン大学一年生に上がるユニバーシアードレベル、に当てはまるが本田真凛選手かと思います。久しぶりに最終グループ。ノーミス演技、ということでもないのですけれど、ショートで実は回転不足が二つもありながら、それでも60点台後半までは出してくる、というレベルにまで戻ってきた、という風にみています。フリーは回転不足4つ、2回転になったのが一つ。ショートフリーでクリーンに飛んだジャンプが半分しかないのに180点台に乗ってきているのは、ベースになるスピンステップで点が取れているから。

コレオシークエンスのGOEは全体5番目。レベル4のスピンで平均GOE+3以上を出したのは、紀平選手宮原選手と本田真凛選手の三人だけ(全員二つづつ)。ステップもレベル3ではありましたが、ショートは平均GOE+3超え。今回はルッツが決まらないだけでなく、フリップも結局4回挑んで2回転になった一つと後の三つは!付きで回転不足、ということでジャンプが散々だったのですが、それでも180点には乗っている。後一二年、ジャンプの調整が済めば200点くらいまでは出せるようになってくるんじゃないかなあ、と思っています。一方で本田真凛選手を見ていると、ジャンプなんてループ以下の三種類+ダブルアクセルでいいから、安定した演技を黙ってみていたい、という気分になったりもします。

問題は、来シーズングランプリシリーズの枠があるか? なんですよね・・・。来シーズンはチャレンジャーシリーズ~国内地方大会二つ~全日本~インカレを経てユニバーシアード、というコースかなあ。海外在住だとやりにくいのですけど。ラ・ラ・ランドは今シーズンで終わりなのかなあ。だとすると、放映されるような大会はもうないんでしょうか。三シーズン目持ち越しでもいいんで完成形が見たいです

 

 

山下真瑚選手、ショート5位なのに放映無し・・・。羽生選手が出ることで男子優先になってましたね今シーズン。そういえば全日本ジュニアも男子中心でしたし、ちょっと女子不遇時代になってきたんでしょうか。

ショートの構成は雰囲気に合っていていいなあと思います。フリーはジャンプいまいち決まらず。ケガの状態はどうなんでしょう。ちょっと今回は厳しかったですかねえ。

ただ、シーズンベストは190点近く持ってますし、ランキングもまだ割と上位にいます。2月3月にB級大会に送ってもらえればランキング24位に入って来シーズンのグランプリ枠がほぼ確保されると思うのですけど、11位という結果はどうかなあ。

 

 

今回は全体的にジャッジの判定が厳しかったように感じました。ジャンプの回転不足は今シーズン全体の傾向なところもあるんでしょうけれど、スピンのレベル判定が常になく厳しかった印象です。ショートフリーで6つすべてレベル4だったのは、ジュニアの吉岡詩果選手、明治大学の佐藤伊吹選手、同じく明治大学の松原星選手の三人だけ。上位選手で6つレベル4だった選手がいないんですね。昨年は上位は軒並み全部レベル4だったのですけれど。まあ、ネームバリューに左右されず、きっちり公平にレベル判定した結果、なのかもしれませんけれど、意外感はだいぶありました。

 

 

以上、たまには表でもグラフでもなく、文章並べた、全日本選手権女子シングルの感想でした

 

 

ロシア選手権19プレビュー

全日本選手権とロシア選手権は、重なる年もあるようですが、今年は一週ずれて、全日本の翌週にロシア選手権、という構図になりました。

今回はロシア選手権プレビュー。ロシアは女子シングルだけ見ることにします。全日本の時のようにグランプリシリーズとチャレンジャーシリーズの全出場選手のスコアから平均と分散を取って、それを元に各選手の各要素での偏差値を求めてレーダーチャート化したものを準備しました。ジュニアの選手については、全日本の男子の時に記したように、コレオシークエンスがない分をステップ系要素の部分では補正を加えています。その試合のショートフリーのステップで得た平均GOEに0.5を掛けた数値をステップ系GOEに、コレオの基礎点3.0分をステップ系基礎点に加える、という補正を行ってステップ系要素の偏差値を計算させました。合計点には補正を行っていません。

ここでは、ロシア勢で今シーズン200点以上のスコアを出した選手を取り上げていきます。

 ●アリョーナコストルナヤ

Grade Event Pl Total SP FS
CS Finlandia Trophy 1 234.84 77.25 157.59
GP Internationaux de France 1 236.00 76.55 159.45
GP NHK Trophy 1 240.00 85.04 154.96
GPF Grand Prix Final 1 247.59 85.45 162.14

 

コストルナヤスケート偏差値

シーズンベストトップはコストルナヤ選手。247.59は史上最高得点です。ショートの最高スコア85.45というのも持ってます。

今シーズンはここまで国際試合4試合。スコアは上がり続けている状態です。彼女もジュニア上がり一年目にありがちな、ノーミスが続くとPCSがどんどん上がっていく、という途上にまだあります。

彼女の構成には今のところショートフリー合わせてのトリプルアクセル3本、というのがあります。四回転はなし。四回転が必須な時代になった、と騒がれていますが、実際には今一番上にいる選手には四回転がない、という事実があります。247.59でも取りこぼしはいくつかありましたので、四回転無しでも250点までは現実的に可能、という絵が見えています。250点まではトリプルアクセルは必須ですが、四回転がなくてもたどり着けるわけです。

そのためには、穴のないスキルが求められます。レーダーチャート的にはジャンプのGOEが目立っていますが、ほかの要素もすべて高水準。グランプリファイナルのステップが偏差値65.59で一番低い、ということで、四試合で一番低い偏差値の要素でも65を超えている、というバランスです。

トリプルアクセルはチャレンジャーシリーズからフリーで2本いれて回転不足1つ。グランプリシリーズはショートフリー3本で回転不足1つ。それがファイナルではショートフリー3本ですべてクリーンに降りて大きな加点も得ました。それによって基礎点もGOEもじわじわ上がってきた、という形です。

 

 ●アレクサンドラトゥルソワ

Grade Event Pl Total SP FS
CS Nepela Memorial 1 238.69 74.91 163.78
GP Skate Canada 1 241.02 74.40 166.62
GP Rostelecom Cup 1 234.47 74.21 160.26
GPF Grand Prix Final 3 233.18 71.45 161.73

 

トゥルソワスケート偏差値

シーズンベスト2位はトゥルソワ選手。241.02は史上最高点でいた時期もありました。

ここまで4戦していて、ファイナルが一番点が低い、というのはあまりいい流れではないといえばないです。昨シーズンも勝てなかった二試合はジュニアグランプリファイナルとロシア選手権という12月の試合でした。たまたまなのか、シーズン中盤に一度少し落ちる時期が来るのか。

四試合してフリーの最低点が160.26で160点台というのもなんとも恐ろしい水準です。スケートカナダの166.72はフリーの史上最高スコアとなっています。

レーダーチャートは当然右寄り。ジャンプの基礎点偏差値はスケートカナダで81.60 ジャンプGOE偏差値はオンドレイネペラ杯で82.75 二つそろったらとてつもないスコアになるという水準です。

一方、PCSはまだ低め。ファイナル出場6選手の中でも一番低く、フリーのPCSは65~67付近にとどまっています。スピンはショートフリー合わせて25点前後、ステップはいい時は14点台に乗るのですが、レベルが取れずに12点台になることもあります。スピンが26点前後、ステップも15点前後を安定して取るコストルナヤ選手とはこの辺で2~4点ほど負ける計算です。グランプリシリーズでは四回転サルコウが一度も決まらず、結果的にフリーで決まる4回転の本数は3本にとどまっていましたが、これを4本5本としっかり決めていくと、フリー170点を大きく超えてトータルでコストルナヤ選手の上に行くことができます。今のトゥルソワ選手は、スピンステップをきっちりやって点差を詰める、というよりは、四回転を増やして大きく稼ぐ、という戦略なようですが、結果的にどうなっていくでしょうか

 

●アンナシェルバコワ

Grade Event Pl Total SP FS
CS Lombardia Trophy 1 218.20 67.73 150.47
GP Skate America 1 227.76 67.60 160.16
GP Cup of China 1 226.04 73.51 152.53
GPF Grand Prix Final 2 240.92 78.27 162.65

 

シェルバコワスケート偏差値

シーズンベスト3番手はシェルバコワ選手。ファイナルで240.92と240点に乗せました。

エテリ三人衆の中では三番手感がありますが、昨シーズンのロシア選手権で優勝したのはシェルバコワ選手です。ただ、まだ国際試合でのビッグタイトルはありません。この前のファイナルは2位。昨シーズンの世界ジュニアも2位でした。

個人的に、ファイナルで一番驚きだったのはシェルバコワ選手でした。ショートプログラムから78.27 トリプルアクセル無しでショートから78点台というのは驚異的なスコアです。実際には同じ試合でザギトワ選手がもっと上に行きましたが、ジュニア上がりのシェルバコワ選手はまだまだPCSの出ない選手。それがファイナルでは34.55まで何とか伸ばしてきました。その上で、トリプルアクセル無しで技術点43.72をたたき出しています。フリーでもそうだったのですが、レベルが取れていなかったステップでレベル4を並べ、かつ、大きな加点もとっていたというのが一番の驚きでした。

そんなわけで、ファイナル以前のレーダーチャートははっきりと右寄りでジャンプタイプだったのですが、ファイナルのチャートは割とバランス型に近くなってきています。ファイナルで初めてフリー四回転3本構成に上げたのでジャンプ基礎点が上がった一方、初めて入れたフリップで今シーズン初の転倒、ということでジャンプGOEは低くなりましたが、ジャンプで得た点数自体は増えました。その上でステップの向上、PCSの向上。さらにスピンの合計点27.16はシニアの中では今シーズンフランス杯のザギトワ選手に次いで2番目の高スコアです。

スコアバランス的にトゥルソワ選手をやや小型化したタイプだったところから、今シーズントゥルソワ選手とは少し違う方向へ進化してきています。

ファイナルの構成のベースのまま、フリーの四回転フリップをきれいに降りれば、コストルナヤ選手の247.59の上までいくことに計算上なります。

 

●エフゲニアメドベージェワ

Grade Event Pl Total SP FS
CS Autumn Classic 2 217.43 75.14 142.29
IC Shanghai Trophy 1 191.78 72.16 119.62
GP Skate Canada 5 209.62 62.89 146.73
GP Rostelecom Cup 2 225.76 76.93 148.83

 

メドベージェワスケート偏差値


 

シーズンベスト4番手はメドベージェワ選手になります。ロステレコム杯の225.76なので、上位3人とは15点ほど差がある、というのが実情です。

今シーズンはここまで四戦。チャレンジャーシリーズにも入っていない上海トロフィーは、ちょっとフリーでひどいスコアでしたが、他はフリーで140点台にまとめてきています。

シーズンベスト225.76は、上位3人の一番悪いシーズンスコアよりも低い、という位置なので、普通に勝負するにはまだちょっと苦しいです。最低でも230点台は欲しい。230点台中盤まで伸ばせば、3人いるので誰かひとりはたいていそこまで落ちてくる、と見ることが出来て表彰台の芽が出てきます。実際、ファイナルでは3位のトゥルソワ選手が233.18のスコアでした。

レーダーチャートはチャレンジャーシリーズでさえなかった上海トロフィーを外した3試合で表していますが、左寄りの姿が見えます。ジャンプの基礎点偏差値が60前後で上位との差がある。GOEはロステレコム杯くらい取れれば偏差値72ほどあり、失敗がつきものな四回転多数構成のトゥルソワ選手、シェルバコワ選手より上回れることもあります。

メドベージェワ選手のジャンプ構成というのは、実はその他普通の選手と比べても決して高いものではありません。シーズンベストのロステレコム杯ではショートフリー合わせてトリプルルッツは1本だけでした。今シーズン8回ルッツを飛んで、4回エッジエラーのeが付き、残りの4回も!付き。回転不足も3回。クリーンなルッツがありません。だからこそのロステレコム杯でのルッツ一本構成なのだと思いますが、これだと上位と戦うのはやはり苦しいです。

一方、強いのはやはりPCS ロステレコム杯のショートフリー合わせて110.72というPCSは今シーズン全選手の中でただ一人110点を超えるトップスコアです。コストルナヤ選手とはあまり差が付きませんが、トゥルソワ選手とならPCSで10点上回れます。同じロステレコムでのステップ系スコア15.67はUSインターナショナルの宮原選手に次いで全選手中2番目、ロシアの選手の中ではトップです。表現系スコアはやはりロシア勢の中で群を抜いてます。

ルッツ入ってのノーミスで235点ほどまでのスコアを伸ばせば、表彰台のチャンスはありそうです。

 

●カミラワリエワ

Grade Event Pl Total SP FS
JGP JGP Courchevel 1 200.71 62.31 138.40
JGP JGP RUS 1 221.95 73.56 148.39
JGPF JGP Final 1 207.47 69.02 138.45

 

ワリエワスケート偏差値

シーズンベスト5番手は、ジュニアからカミラワリエワ選手です。ジュニアグランプリのロシアでは221.95のスコアを出しました。これは当然コレオシークエンスなしのスコア。メドベージェワ選手のシーズンベスト225.76とは3.81の差ですので、コレオシークエンスで平均GOE+2程度を稼げれば、それより上のスコアになる、という単純計算がされます

ケガの影響ということでジュニアグランプリファイナルでは組み入れていませんでしたが、ジュニアグランプリシリーズでは四回転トーループが構成に入っていました。彼女は今のところトリプルアクセルもなく、ルッツループもないので、ジュニアグランプリファイナルは、ある種普通の人たちの最高構成程度のものだったのですが、それでも207.47 コレオなしを考えればシニア構成なら実質210点程度のスコアを出してきたことになります。

レーダーチャートは、例によって、ジュニア組はステップ要素でコレオ補正をしたものではありますが、基本的には右寄りなチャートです。ジャンプでミスが嵩んだジュニアグランプリ初戦は、ジャンプのスコアも下がって下に飛び出た形になります。

四回転を持つワリエワ選手は、当然ジャンプが決まれば高スコアを出すことができます。ジュニアグランプリロシアではショートフリー合わせてジャンプの得点は88.37 これはジュニアの中では今シーズン最高点ですし、シニアでもこの上はファイナル表彰台の三人しかいません。ただ、ジャンプはまだ不安定で、ジュニアグランプリの初戦では71.42という平凡なスコアにとどまっています。

実は彼女が一番優れているのはスピンです。ジュニアグランプリロシアではショートフリー合わせて27.85というスコアを出しています。これはジュニアシニア通じて今シーズンの全選手の中での最高点です。初戦の27.39でも、ザギトワ選手の27.66を挟んで三番目のスコア。同世代ライバルのアリッサリュウ選手と、ジャンプで得る得点はさほど変わらないのですが、スピンで数点上に行ける、というのが、四回転無しでもファイナルを勝ち切ったところに影響しました。

ケガからどこまで回復しているのか? というのがロシア選手権で上位に絡んでいく一つのポイントなのでしょうきっと。四回転フルに組み込んだ構成で来た時、プレッシャー薄目な立場と合わせると、上位三人に一泡吹かせる展開もあるのかもしれません。

 

エリザベータトゥクタミシェワ

Grade Event Pl Total SP FS
CS Lombardia Trophy 2 214.38 73.66 140.72
CS Finlandia Trophy 2 212.53 72.66 139.87
GP Skate America 3 205.97 67.28 138.69
GP Cup of China 3 209.10 65.57 143.53
CS Golden Spin 1 221.15 72.86 148.29

 

トゥクタミシェワスケート偏差値

シーズンベスト6位はトゥクタミシェワ選手。グランプリファイナルと同時期に裏で行われていたチャレンジャーシリーズ最終戦ゴールデンスピンで出した221.15で220点に今シーズンも乗せてきました。

トゥクタミシェワ選手はいつも試合数をたくさんこなすスタイル。今シーズンもここまで最多の5試合をこなしています。

グランプリ2戦ではショートがうまくいかず60点台のスコアになり、フリー巻き返すも3位まで、という形でファイナル進出を逃しました。チャレンジャーシリーズ3試合では、ショートで70点台に乗せて、フリーも140点台という形で210点以上のスコアになっています。

レーダーチャートは右寄り。子供たちばかり出てくるロシア勢の中でシニアの大人の演技をしている、と評されることの多いトゥクタミシェワ選手なのですが、点の取り方は実はジャンプ偏重です。PCS偏差値は60台前半。これはトゥルソワ選手とほぼ同じ水準です。ョートフリーのPCS合計が100点に乗ったのは今シーズン1試合だけ。フリーのPCSは良くて67点台であり、あまり伸びていません。ステップはレベル4がなかなか取れず、基本がレベル3というあたりで伸び悩んでいます。一つのステップでトップ選手はレベル4+加点で5点以上を出してくるのですが、トゥクタミシェワ選手の場合、レベル3+加点で4点前後になるので、ステップ一つで1点差がつく。ショートフリーで2点差がつく。コレオの盛り上がりとか、全選手最大級なのですが、あまり得点としては寄与していない現実が残念ながらあります。

そして、実はスピンが結構残念なことになっていまして、偏差値にして50前後しかないんですね。グランプリシリーズのみならず、チャレンジャーシリーズというやや格落ちする大会、そこに出てくる選手たちすべてをひっくるめて平均取った時の、平均に近いスコアしか取れていない、という現実があり、スピンだけで上位と3~4点差がついています。ショートトリプルアクセル組なのに、ノーミスに見える演技をしても70点台後半までなかなか伸びてこないのは、その辺の影響です。

その辺の差をジャンプで補う、というのが採点上見たトゥクタミシェワ選手の姿です。ゴールデンスピンではジャンプだけで87.49のスコアを稼ぎました。これより上は、シニアではエテリ三人組しかいません。なので、このジャンプで、ほかの選手、宮原選手や坂本選手、ブレイディテネル選手といった、他国の上位陣との差を詰める、ひっくり返す、といった構図があるのですが、ジャンプでさらに上をいく選手がいるロシア国内だとちょっと厳しいという現実があります。

四回転完成間近、というようなことも聞きますので、四回転投入してノーミス演技が出来れば、230点台半ばまで届いて表彰台チャンスもありそうなのですが、投入はあるか? 世界選手権の枠に入るために一発勝負したいなら、大博打でも入れていく手はありそうです。

 

 ●アリーナザギトワ

Grade Event Pl Total SP FS
GP Internationaux de France 2 216.06 74.24 141.82
GP NHK Trophy 3 217.99 66.84 151.15
GPF Grand Prix Final 6 205.23 79.60 125.63

 

ザギトワスケート偏差値

欠場、とすでに発表されていますが、話題としては入れておきたい

シーズンベスト7番目がザギトワ選手です。NHK杯の217.99が今シーズンのベスト。ショートが悪くてこのスコアなので、ショートフリー、いい方で並べたら230点には乗るのですが、そうはいっても実際に出た点数ではロシア人選手中7番手というのが現実。ジュニアから上がった3人が強くてどうの、という言われ方をされていますが、実際には今シーズン、メドベージェワ選手、さらにはトゥクタミシェワ選手よりもベストは下です。あの三人がいなくても盤石なわけではない、勝てるかどうかもわからない、という状況。

元々一シーズンずっと無敵の強さを見せる、ということでもなくて、昨シーズンは言わずもがなですが、オリンピックシーズンもグランプリ2戦は、ショートで転倒なんかがあってフリーでぎりぎり逆転して勝っていました。ジュニア時代もグランプリシリーズでは紀平選手や本田真凛選手にころっと負けていたりします。それでも一番大事な試合にはしっかり勝つ。ジュニアの時は世界ジュニア。シニアに上がってもオリンピック、昨シーズンは世界選手権、と勝ちました。その論理で行けば今シーズンは、一番大事なのは、世界選手権、の前にその出場枠が危ないのだからロシア選手権、となるのだろう、と思っていました。なので、ファイナルで崩れても三週間でしっかり合わせてくるのではないか。ザギトワ選手はすでにグランプリシリーズなんてどうでもいい、と公に口外は出来なくてもチーム内でその前提で準備するくらいは許される選手なので、ロシア選手権には合わせてくるのではないか、と思っていました。

それが、休養ニュース。残念です。

シーズンベストは7番手ですが、昨シーズン出しているパーソナルベストは238.43あります。トリプルアクセル無しでも240点までは出せるわけで、これをロシア選手権にぴったり合わせてくれば、表彰台には十分乗ってくる圏内ではありました。

 

 ●クセニア シニツィナ

Grade Event Pl Total SP FS
JGP JGP RUS 2 204.25 73.04 131.21
JGP JGP Egna 1 215.58 74.65 140.93
JGPF JGP Final 4 195.57 69.40 126.17

 

シニツィナスケート偏差値

ジュニアから二人目、シニツィナ選手。シーズンベストは215.58で8番目です。

ジュニアグランプリの二戦目ではショートプログラムで74.65というジュニアとしてはとてつもないスコアを出しています。ジュニアなのでPCSはあまり稼げず32.32な中、TESは42.33 トリプルアクセル無しで現行の1.1倍は1本だけルールの中でここまでの点数はなかなか出ません。

レーダーチャートはやはり右寄り。PCSはまだ出してもらえていません。スピンは3試合全要素でレベル4と取りこぼしはないのですが、加点があまりもらえない。そんな中でジャンプのGOEは2戦目に偏差値にして80.0 15.81もの加点を得ていました。これより上を今シーズン取っているのはコストルナヤ選手とトゥルソワ選手のみです。

構成にトリプルアクセル無し、四回転無し、のジュニアで210点台を出してきているのは彼女だけ。まだ、シニアの上位と勝負するのはこのロシア選手権では厳しそうですが、ジュニアの中で2番手くらいには入って、世界ジュニアへの道筋をつけることを目指すことになるでしょうか。

 

●ダリアウサチェワ

Grade Event Pl Total SP FS
JGP JGP Riga 2 194.40 69.04 125.36
JGP JGP Croatia 2 197.19 71.09 126.10
JGPF JGP Final 3 200.37 70.15 130.22

 

ウサチェワスケート偏差値


ロシアの今シーズン200点ランカー、9人目もジュニアからウサチョワ選手です。ジュニアグランプリファイナルでは3位表彰台に乗りました。

ショートプログラムは70点前後を3試合並べていて、フリーではベストが130.22 まだ上位と戦うにはちょっと厳しいですが、一般的なジュニアのレベルから考えると十分ではあります。

彼女も四回転、トリプルアクセルは構成になく、セカンドループもありません。それでもジュニアの段階でこれだけの点数が出せるわけですから、高難度ジャンプが飛べないと話にならない、とか言う前に、まず、それなしでも200点を出せる力、というのを日本のジュニア勢も持っていくことが求められるんでしょうか。

レーダーチャートは下に向かって伸びてます。ジャンプ構成は割と標準的なのでジャンプ基礎点偏差値は60前後にとどまりますし、どの試合もノーミスではないのでジャンプGOEもほどほどです。PCSもジュニアなのでまだ伸びず、ショートフリー合わせて90点台前半。そういった中でスピンが、三試合オールレベル4で加点もある程度取って、ショートフリー合計が26点前後とトップ選手並みのスコアを出しています。

ほぼ標準構成ともいえる中でどの程度のスコアが出せるか、という観点で、日本ジュニア勢のいいターゲットになるような選手に見えます。

 

200点スコアラーは以上9選手です。昨シーズンヨーロッパ選手権に勝ったサムドゥロワ選手や、二シーズン前にオリンピックに出たソツコワ選手。世界選手権に2回出て、昨シーズンも候補の一人だったコンスタンてぃのわ選手、といったところのスコアが伸びてきていなくても、9人の200点スコアラーがいる、というのがロシアの層の厚さを示しているでしょうか。

 

ロシア200点スコアラーレーダーチャート

ちょっと見づらいですが、9選手のトータルスコアが一番いい試合でレーダーチャートを作るとこんな感じになります。ジャンプの基礎点はやはりトゥルソワ選手が目立つけどシェルバコワ選手も高くて、その次にコストルナヤ選手がやっぱり続く。GOEはコストルナヤ選手が強い。シニツィナ選手も高難度ジャンプないなかGOEはすごく稼ぐのね。スピンはワリエワ選手がトップというちょっと驚き構図でステップにPCSはメドベージェワ選手。

選手それぞれに特色はやっぱりありますね。

 

優勝スコアは250点を超えてきそうな感じでしょうか。ロシアの場合、優勝スコアが男子シングルより女子シングルの方が高くなるんじゃないかという心配もあったりします。まあ、男子も一人くらいはしっかり高得点出して勝つかもしれませんが、表彰台スコアあたりになると女子のが高い、なんて事態が起きるかもしれません

 

以上、ロシア選手権プレビューでした。