全日本選手権20 男子シングル数値編3

前回からの続きです

 

今回からは各個別の要素を見ていきます

表のBaseValueは基礎点、GOEは9人のジャッジがマイナス5からプラス5までを評価した9人分の平均を取ったものを載せています。なので5.000なら9人全ジャッジが+5を付けた、という意味です

実際の採点には評価の一番良い1人、一番悪い1人を切り捨てた後平均とるので、8人が+5で一人が+4以下でもGOE+5分の加点がもらえるのですが、ここでは全ジャッジの平均を取っています

 

●四回転のルッツフリップループ 

  Name Elements   BaseValue   GOE
SP 宇野昌磨 4F   11.00   3.556
FS 宇野昌磨 4F   11.00   2.556
FS 羽生結弦 4Lo   10.50   3.333
FS 大島光翔 4Lz< 9.20   -5.000

ループ以上の難度の4回転に挑んだのは三人。宇野選手はショートフリーでともにフリップを成功。羽生選手もループを成功させました。世界の表彰台クラスはトーループサルコウ以外の三種類目の四回転が必須、ということなのかもしれません。鍵山選手はまだその領域には届いていません

もう一人名前があるのは佐藤駿選手、と思いきや、佐藤選手は結果的に四回転ルッツに当たる要素はなく、ジュニアで高校三年生の大島選手が四回転ルッツに挑みました。結果は回転不足で転倒、ということで残念ながら成功させることは出来ませんでした。

 

 ●四回転サルコウ

  Name Elements   BaseValue   GOE
SP 鍵山優真 4S+2T   11.00   2.889
SP 羽生結弦 4S   9.70   3.222
SP 島田高志郎 4S   9.70   -0.889
SP 友野一希 4Sq q 9.70   -5.000
SP 三浦佳生 4S   9.70   -5.000
FS 田中刑事 4S+2T   11.00   2.222
FS 友野一希 4Sq+2T q 11.00   -0.889
FS 羽生結弦 4S   9.70   4.222
FS 三浦佳生 4S   9.70   3.222
FS 鍵山優真 4S   9.70   3.000
FS 宇野昌磨 4S   9.70   2.333
FS 本草 4S   9.70   2.333
FS 島田高志郎 4Sq q 9.70   -0.222
FS 田中刑事 4S   9.70   -0.889
FS 三宅星南 4Sq q 9.70   -5.000

四回転サルコウはショートで5人、フリーで9人が挑んでいます。フリーでは田中刑事選手のみが2回飛ぶ要素として四回転サルコウを選びました。結果として15回四回転サルコウは試されています。コンビネーションにした選手が3人います。

結構驚いたのですが、アンダーローテーションやダウングレードになった選手はおらず、qマークがつく選手はいましたが、それでも全員基礎点は満額得られています。サルコウは抜けるときには回転不足ではなく3回転や2回転になるというような傾向があったりしますでしょうか

名前が載っている選手は世界のメダリストかこの前のNHK杯に出ていたグランプリレベル(ジュニアもいますが)の選手です

 

回転ぎりぎりのqマークは4例。転倒は3例、降りたけどGOEマイナスというのが4例。8例はGOEプラスの成功ジャンプになっています。成功するとGOEは+2以上付くようです。

最高評価は羽生選手のフリーで+4.222付きました。その羽生選手と鍵山選手がショートフリーで四回転サルコウ二本成功です。

 

●四回転トーループを含むコンビネーション

  Name Elements   BaseValue   GOE
SP 羽生結弦 4T+3T   13.70   3.111
SP 友野一希 4Tq+3T q 13.70   -0.222
SP 三浦佳生 4T+2T   10.80   2.667
FS 羽生結弦 4T+1Eu+3S   15.73 X 3.667
FS 羽生結弦 4T+3T   15.07 X 4.000
FS 鍵山優真 4T+3T   13.70   3.667
FS 佐藤駿 4T+3T   13.70   2.111
FS 三浦佳生 4T+2T   11.88 X 2.000
FS 宇野昌磨 4T+1T<< << 10.45 X -3.444

四回転トーループをコンビネーションで跳んだのはショートで3人フリーで5人で6回ありました。フリーの1.1倍ボーナスタイムに跳んだ選手が3人で4回もあります

コンビネーションにした選手というのは全員着氷です。GOEマイナスは二人。他は+2以上の評価を受けています。

最高評価はここでも羽生結弦選手の+4.000 サルコウトーループ、二種類の四回転で+4以上の評価を受けました。3連続で四回転入れてそれも1.1倍のところに入れる、という選手はなかなかいません。

名前があるのは表彰台3人+友野選手と、ジャンプが得意と有名な10代の二人です。中学生三浦佳生選手がショートもフリーも4T+2TをGOE+2以上の評価で成功させています。

 

●単独の四回転トーループ

  Name Elements   BaseValue   GOE
SP 鍵山優真 4T   9.50   3.444
SP 佐藤駿 4T   9.50   3.333
SP 本草 4T   9.50   -0.889
SP 宇野昌磨 4T+COMBO   9.50   -5.000
SP 中村俊介 4T< < 7.60   -5.000
FS 宇野昌磨 4T   10.45 X 3.000
FS 三浦佳生 4T   9.50   2.778
FS 中野紘輔 4T   9.50   1.778
FS 佐藤駿 4T   9.50   -1.222
FS 鍵山優真 4T   9.50   -2.667
FS 友野一希 4T   9.50   -2.778
FS 島田高志郎 4T   9.50   -5.000
FS 本草 4T   9.50   -5.000
FS 日野龍樹 4T< < 7.60   -5.000
FS 小林諒真 4T<< << 4.20   -4.778
FS 中村俊介 4T<< << 4.20   -5.000

単独の四回転トーループは、コンビネーションにしそこなった、という選手もいるかと思いますが、要素として単独で認定されているものは載せています。また、ショートで転倒してコンボ扱いなものも載せました

こうやって見ると、むしろコンビネーションの方が成功率が高い。これは、ちゃんと飛べればコンビネーションにする、という前提な選手が多いからでしょうか。

羽生選手はここでは名前がありません。ショートフリー、使った四回転トーループはすべてコンビネーションなためです。

宇野選手はフリップやサルコウをクリーンに決めたのに、トーループが成功率が低いという結果になっています。最近そんな姿を何度か見ている気がします。むしろフリップをフリーは2回飛んだら? ショートはコンビネーションにしたら? と思ったりします。

四回転トーループはグランプリ組ではない選手も挑んでいて名前がいくつか入っていますが、成功したのは昨年すでに大学を卒業しながら競技を続けている中野紘輔選手のみでした。過去の記録までしっかり調べていませんが、少なくとも今シーズンはこれまで要素にも入っていませんでしたし初めての成功でしょうか? 全日本で四回転決めました、ってのは一生の自慢になる事柄かと思います

 

トリプルアクセルを含む要素で平均GOE+2.000以上

  Name Elements   BaseValue   GOE
SP 羽生結弦 3A   8.80 X 4.556
SP 鍵山優真 3A   8.80 X 3.889
SP 宇野昌磨 3A   8.80 X 3.444
SP 友野一希 3A   8.80 X 2.778
SP 佐藤駿 3A   8.80 X 2.667
SP 田中刑事 3A   8.00   2.333
SP 櫛田一樹 3A   8.00   2.222
SP 三宅星南 3A   8.00   2.000
FS 日野龍樹 3A+3T   12.20   2.222
FS 中村俊介 3A+3T   12.20   2.111
FS 羽生結弦 3A+2T   9.30   3.667
FS 羽生結弦 3A   8.80 X 3.889
FS 鍵山優真 3A   8.80 X 3.222
FS 宇野昌磨 3A   8.00   3.444

トリプルアクセルの最高評価はやはり羽生選手、ということでショートでは+4.556が付きました。9人中5人のジャッジが満点付けています。コンビネーションでの最高評価も羽生選手です。ただ、3A+3Tというそれより基礎点の高いコンビネーションでは、今シーズン限りの引退を表明した日野龍樹選手が+2.222という評価を受けています

トリプルアクセルくらいになると全日本選手権レベルではほとんどの選手が構成に入れてきますが、GOEで+2まで持ってくるのは結構大変です。そんな中ショートでは櫛田一樹選手が+2.222 フリーでは中村俊介選手が3A+3Tのコンビネーションで+2.111という評価を得ました。

鍵山選手佐藤駿選手はこういったところに名前を連ねていますが、三浦佳生選手がいません。トリプルアクセルの苦手感を感じます

 

●セカンドループジャンプ

  Name Elements   BaseValue   GOE
FS 鍵山優真 3Lz+3Lo   11.88 X 2.000

コンビネーションの二つ目にループを付けたのは鍵山選手のみでした。GOEは+2.000 高評価を得ました。

 

●三連続ジャンプで平均GOEがプラス

  Name Elements   BaseValue   GOE
FS 羽生結弦 4T+1Eu+3S   15.73 X 3.667
FS 三浦佳生 2A+1Eu+3S   8.91 X 1.667
FS 國方勇樹 2A+1Eu+3S   8.91 X 0.667
FS 本田太一 2A+1Eu+3S   8.10   1.222
FS 小林建斗 3S+1Eu+2S   6.71 X 0.333
FS 長谷川一輝 2A+2T+2Lo   6.30   0.889
FS 本田ルーカス剛史 2A+1Eu+2S   5.61 X 1.111

三連続ジャンプでプラス評価をもらった選手は少ないです。トップ選手でもほとんどプラスがついていません。そんな中で四回転からの三連続でGOEが3.667ついた羽生選手というのは突出しています。

 

 

今回はここで切って、もう一回続きます

 

全日本選手権20 男子シングル数値編2

 前回の続きで全日本選手権20の男子シングル数値編2です

今回は演技構成点の中身を見ていきます

 

●上位9選手のフリーのスケーティングスキル

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
羽生結弦 9.64 9.50 9.00 9.50 9.75 9.75 9.75 9.75 9.75 9.50
宇野昌磨 9.25 9.00 9.25 9.50 9.00 9.25 9.50 9.50 9.25 8.75
鍵山優真 8.64 8.25 9.00 8.25 9.00 8.75 8.75 8.75 8.50 8.50
田中刑事 8.21 8.25 8.25 8.00 8.25 8.25 8.50 8.25 8.25 8.00
三浦佳生 7.36 6.75 7.25 7.00 7.50 7.50 7.25 7.50 7.50 7.75
佐藤駿 7.57 7.25 7.50 7.50 7.25 7.75 7.75 7.75 7.50 7.75
島田高志郎 7.50 7.50 7.50 7.25 7.75 7.75 7.50 7.50 7.50 7.25
友野一希 7.79 7.50 7.75 8.00 8.00 7.75 7.75 8.00 7.50 7.75
本草 7.54 7.75 7.75 7.50 7.25 7.50 7.75 7.50 7.00 7.50

演技構成点を各ジャッジ毎のものまで並べてみました。ショートもフリーもと並べると大変なので差が出やすいフリーだけにしています。係数掛ける前の素の0.25刻みの10点満点でジャッジが付けたスコアです。

 

まずはスケーティングスキル。

羽生選手は満点こそないものの高い水準で並べています。ただし2番ジャッジのみは宇野選手の方がスケーティングスキルが高い、と判定し、鍵山選手と同等という風にもつけています。

 

●上位9選手のフリーのトランジション

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
羽生結弦 9.46 9.00 9.25 9.50 9.50 9.50 9.50 9.50 9.50 9.50
宇野昌磨 8.93 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00 9.00 9.25 8.50 8.25
鍵山優真 8.36 8.00 9.00 8.00 9.00 8.25 8.25 8.25 8.25 8.50
田中刑事 7.79 7.75 8.00 7.50 7.50 7.75 8.25 8.00 8.00 7.25
三浦佳生 6.82 6.25 7.00 6.50 6.75 7.00 7.00 6.75 7.25 6.75
佐藤駿 7.04 6.75 7.00 7.00 6.50 7.25 7.50 7.00 7.25 7.00
島田高志郎 7.11 7.00 7.25 6.75 7.25 7.50 7.00 7.25 7.00 7.00
友野一希 7.43 7.25 7.50 7.75 7.50 7.25 7.50 7.75 7.00 7.25
本草 7.04 7.00 7.25 7.00 6.75 7.25 7.25 7.00 6.50 7.00

続いてトランジション

これも当然のように羽生選手がトップ。全員9点台を付けました。ただ、1番ジャッジは宇野選手と同点を付けています。

宇野選手が2番手ですが9番ジャッジは鍵山選手の方が上だったという判定です。宇野選手は7人が9点台。鍵山選手2人が9点を付けていて後は8点台です。

 

 ●上位9選手のフリーのパフォーマンス

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
羽生結弦 9.86 10.00 9.50 9.75 10.00 9.75 9.75 10.00 10.00 9.75
宇野昌磨 9.32 9.25 9.50 9.50 9.25 9.25 9.50 9.75 9.00 9.00
鍵山優真 8.68 8.25 9.25 8.50 8.75 8.50 8.50 8.75 8.50 9.25
田中刑事 8.21 8.50 8.50 8.00 7.75 8.00 8.75 8.25 8.50 7.75
三浦佳生 7.29 6.75 7.50 7.00 7.00 7.25 7.25 7.75 7.50 7.50
佐藤駿 7.39 7.00 7.50 7.75 6.50 7.50 7.75 7.25 7.25 7.50
島田高志郎 7.39 7.50 7.50 7.00 7.50 7.50 7.25 7.50 7.50 7.00
友野一希 7.57 7.50 7.75 7.75 7.50 7.50 7.50 7.75 7.50 7.50
本草 6.96 7.00 7.00 7.00 6.75 7.00 7.25 7.25 6.75 6.75

パフォーマンスは羽生選手に満点をつけたジャッジが4人出ました。一方で、2番ジャッジは宇野選手と同等と見ています。

宇野選手は全員9点台。9番ジャッジは宇野選手より鍵山選手の方が上と判定しました。

 

 ●上位9選手のフリーのコンポジション

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
羽生結弦 9.86 9.75 9.25 10.00 9.75 10.00 9.75 10.00 9.75 10.00
宇野昌磨 9.32 9.50 9.25 9.50 9.00 9.25 9.25 9.75 9.50 9.00
鍵山優真 8.79 8.50 9.25 8.00 8.75 8.75 8.75 8.75 8.75 9.25
田中刑事 8.21 8.25 8.25 8.25 7.75 8.25 8.75 8.25 8.25 8.00
三浦佳生 7.14 6.50 7.25 6.50 7.00 7.00 7.50 7.50 7.25 7.50
佐藤駿 7.39 7.25 7.25 7.50 6.50 7.50 7.50 7.50 7.50 7.25
島田高志郎 7.57 7.50 7.75 7.50 7.75 7.75 7.50 7.25 7.25 7.75
友野一希 7.82 7.75 8.00 8.25 7.75 7.75 8.00 7.75 7.50 7.75
本草 7.36 7.25 7.25 7.50 7.00 7.50 7.50 7.50 7.25 7.25

コンポジションでも羽生選手は4人のジャッジから満点をもらいました。不思議なもので、パフォーマンスで満点をもらったジャッジと重なっているのは一人だけで、あとは別のジャッジになっています。

宇野選手は2番ジャッジからは羽生選手と同点の判定をもらいました。また鍵山選手も2番ジャッジからは羽生選手と同点という判定をもらっています。9番ジャッジからは宇野選手より鍵山選手の方がいい、という判定をもらいました。一方3番ジャッジからは鍵山選手のコンポジション田中刑事選手や友野一希選手より劣っていて全体の5番目である、という判定をもらっています。なかなか評価のばらつきが大きいです。

 

●上位9選手のフリーのインタープリテーション

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
羽生結弦 9.79 9.75 9.50 9.75 9.75 10.00 9.75 10.00 10.00 9.50
宇野昌磨 9.36 9.50 9.25 9.75 9.25 9.00 9.50 9.75 9.25 8.50
鍵山優真 8.64 8.25 8.75 8.25 9.00 8.50 8.75 8.75 8.75 8.75
田中刑事 8.29 8.25 8.50 8.25 8.00 8.00 8.50 8.50 8.50 7.50
三浦佳生 7.11 6.75 7.00 6.75 7.00 6.75 7.50 7.50 7.75 7.25
佐藤駿 7.29 7.00 7.25 7.50 6.25 7.25 7.75 7.25 7.25 7.50
島田高志郎 7.57 7.75 7.50 7.25 7.75 7.75 7.50 7.50 7.50 7.50
友野一希 7.86 7.50 8.00 8.50 8.00 7.75 7.75 8.25 7.75 7.50
本草 7.11 7.00 7.25 7.25 6.75 7.50 7.25 7.50 6.75 6.75

インタープリテーション、音楽表現、については羽生選手は3人のジャッジから満点をもらいました。7番ジャッジは羽生選手に3項目で満点をつけたことになります。この項目では3番ジャッジが宇野選手と羽生選手で同点と付けました。

宇野選手が二番手ですが、9番ジャッジは鍵山選手の方が上、と判定しています。

鍵山選手は一人だけ9点もらっていたあと8点台でスコア的には三番手。そんな中で3番ジャッジは友野選手の方が鍵山選手より上、と判定しました

 

●上位9選手のフリーのPCS評価

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
羽生結弦 48.61 48.00 46.50 48.50 48.75 49.00 48.50 49.25 49.00 48.25
宇野昌磨 46.18 46.25 46.25 47.25 45.50 45.75 46.75 48.00 45.50 43.50
鍵山優真 43.11 41.25 45.25 41.00 44.50 42.75 43.00 43.25 42.75 44.25
田中刑事 40.71 41.00 41.50 40.00 39.25 40.25 42.75 41.25 41.50 38.50
三浦佳生 35.72 33.00 36.00 33.75 35.25 35.50 36.50 37.00 37.25 36.75
佐藤駿 36.68 35.25 36.50 37.25 33.00 37.25 38.25 36.75 36.75 37.00
島田高志郎 37.14 37.25 37.50 35.75 38.00 38.25 36.75 37.00 36.75 36.50
友野一希 38.47 37.50 39.00 40.25 38.75 38.00 38.50 39.50 37.25 37.75
本草 36.01 36.00 36.50 36.25 34.50 36.75 37.00 36.75 34.25 35.25

そんな5項目をジャッジ毎に合計して並べるとこうなりました

流石に全ジャッジ羽生選手をトップとしていますが、2位と一番点差があるのは9番ジャッジで4.00差。一番差が小さいのは2番ジャッジで0.25差です。差の差が3.75あります。

羽生選手についた最高点は三項目で満点付けた7番ジャッジで49.25 一番低いのは2番ジャッジの46.50でこの差は2.75あります。男子シングルのフリーなので係数は2.0あり、PCSスコアにすると5.5点の違いがあることになります。

羽生選手の場合はほとんど天井までスコアが来ているのでジャッジ間スコア差はそれほど大きくないですが、宇野選手で最高と最低が4.50なので係数2.0掛ると9.0の差。鍵山選手も4.25差からの8.5差。かなり大きな違いです。

最終的なPCSスコアの順位とは違う順番になっているジャッジも結構います。同じ演技を見て同じルールの中で点数を付ける専門家であるジャッジがつけてもこうなるわけです。

素人が見てあれこれ言うと、そりゃあ意見が分かれるよなあ、というのがこの辺からも感じられます。

 

ただ、ジャッジは全日本だと9人いるので、多少極端な評価を付けるジャッジがいても、最終的には割と平均化されてその影響は小さくなります。極端すぎる上下一人づつは切られて計算にカウントされませんし、残った7人で平均取るため、一人のジャッジの影響度はそれほど大きくはなりません

 

次回へ続きます

 

 

全日本選手権20 男子シングル数値編1

前回までに感想編を上げましたので今回からは数値編になります

まずは男子シングルです

 

ショートプログラム上位15人のタイプ別得点 

Pl Name Jump Spin Step PCS
1 羽  生  結  弦 41.90 8.52 5.79 47.32
2 鍵  山  優  真 38.42 12.95 4.67 42.56
3 宇  野  昌  磨 31.22 12.96 4.90 46.14
4 田  中  刑  事 26.75 11.53 4.62 40.71
5 佐  藤      駿 32.29 10.74 3.31 36.97
6 山  本  草  太 28.27 12.23 4.53 37.57
7 友  野  一  希 29.37 9.28 5.13 38.94
8 三  宅  星  南 28.93 10.06 3.42 36.68
9 島  田  高志郎 25.85 6.48 3.31 37.24
10 櫛  田  一  樹 24.80 8.94 3.63 33.86
11 日  野  龍  樹 23.03 9.99 3.23 33.54
12 本  田  太  一 24.57 8.57 2.93 31.79
13 三  浦  佳  生 22.89 9.70 3.87 33.15
14 本  田  ルーカス剛史 18.58 10.27 4.85 34.82
15 須  本  光  希 20.93 8.68 3.08 35.46

どの選手が何で得点を稼いでいるのかがよく見て取れます

差が大きいのはやはりジャンプ。羽生選手はただ一人ジャンプで40点を超えるスコアを出していました。コンビネーションを転倒した宇野選手はジャンプのスコアが伸びず全体四番手。佐藤駿選手の方がジャンプのスコアが高いです

一方、スピンでは宇野選手がトップでした。二番手鍵山選手とは0.01ポイント差。三番手は山本草太選手です。スピン要素が一つ零点になった羽生選手、島田選手は点が出ていません

ステップは羽生選手がトップ。二番手は友野一希選手でした。山本選手友野選手はトータルスコアではトップスリーとだいぶ差があるのですが、こういった各要素ではトップと匹敵する力があります。

PCSは羽生宇野両選手やはり突出していて五項目平均9点を超えています。それに次ぐのが鍵山選手、田中刑事選手でここまでが平均8点越え、その下は友野選手、山本選手、島田選手とグランプリ組が続き、その下が佐藤駿選手に三宅選手です。

 

 ●フリー上位15人のタイプ別得点

Pl Name Jump Spin Step PCS
1 羽  生  結  弦 97.07 11.62 9.92 97.22
2 宇  野  昌  磨 77.26 12.51 8.46 92.36
3 鍵  山  優  真 74.87 11.36 7.74 86.22
4 田  中  刑  事 53.82 11.31 8.67 81.42
5 三  浦  佳  生 64.99 10.07 7.15 71.44
6 佐  藤      駿 62.53 10.60 6.72 73.36
7 島  田  高志郎 55.34 12.41 8.03 74.28
8 友  野  一  希 46.20 10.81 8.49 76.94
9 山  本  草  太 45.59 12.01 7.12 72.02
10 三  宅  星  南 44.10 10.42 8.78 72.14
11 日  野  龍  樹 48.64 10.37 6.61 68.72
12 森  口  澄  士 51.67 9.24 6.37 63.64
13 本  田  ルーカス剛史 39.28 9.97 7.84 70.42
14 須  本  光  希 41.92 7.68 8.36 71.26
15 中  野  紘  輔 45.31 9.85 5.85 60.58

フリーでも同じものを見てみます。

やはり全体で差がついているのがジャンプのスコアです。トータルスコアへのジャンプの影響度の大きさがうかがえます

スコア上位3人がそのままジャンプのスコア上位3人でした。羽生選手と宇野選手の間でもジャンプのスコアで20点の差があります。このジャンプの差を埋めないと、宇野選手であろうと鍵山選手であろうと、羽生選手に勝てないという構図です

ジャンプの四番手は中学生にして四回転二種類決める三浦選手、五番手は中学生のころから四回転を飛んでいた佐藤駿選手。ジャンプが得意なこの二人ですが、そのジャンプのスコアで3位の鍵山選手と10点の差がある、ということでトップスリーと勝負するにはちょっと厳しいことになっています。

スコア4位の田中刑事選手はジャンプでは8位。鍵山選手と20点以上ジャンプで差が付けられました。本調子ではなかったようですが、これだとやはり表彰台は厳しい、というのが日本の姿なようです

 

スピンは宇野選手がトップでした。二位は島田高志郎選手。ショートではスピンノーバリューがありましたがフリーはしっかり点を稼ぎました。ということでランビエール組がワンツーです。

本草太選手が三番手。山本選手はショートでも3位。ショートフリー通じてスピンはすべてレベル4を揃えていて、スピンは日本のトップクラスにいます。

羽生選手はフリーでもスピンは4番手にとどまっています

 

ステップは羽生選手がトップ。二番手にはジュニア扱いの三宅星南選手がいます。フリーでステップレベル4を取れたのはなんと三宅選手だけ。これによってステップのスコアで高い位置に来ました

三番手田中刑事選手、四番手友野一希選手と、ステップ系要素で魅せると定評のある選手が続きます。宇野選手が五番手で、スコアは14位の須本選手がステップ系スコアでは六番手に入りました。

 

PCSは上位4人がそのまま4位まで並んでいて、5番目には友野選手が続いています。

 

●総合上位15人のショートフリー合わせたタイプ別スコア

Pl Name Jump Spin Step PCS
1 羽  生  結  弦 138.97 20.14 15.71 144.54
2 宇  野  昌  磨 108.48 25.47 13.36 138.50
3 鍵  山  優  真 113.29 24.31 12.41 128.78
4 田  中  刑  事 80.57 22.84 13.29 122.13
5 佐  藤      駿 94.82 21.34 10.03 110.33
6 友  野  一  希 75.57 20.09 13.62 115.88
7 三  浦  佳  生 87.88 19.77 11.02 104.59
8 島  田  高志郎 81.19 18.89 11.34 111.52
9 山  本  草  太 73.86 24.24 11.65 109.59
10 三  宅  星  南 73.03 20.48 12.20 108.82
11 日  野  龍  樹 71.67 20.36 9.84 102.26
12 森  口  澄  士 73.15 18.28 10.24 95.43
13 本  田  ルーカス剛史 57.86 20.24 12.69 105.24
14 須  本  光  希 62.85 16.36 11.44 106.72
15 中  野  紘  輔 69.24 19.28 8.71 90.83

ショートフリー合わせて同じものを見ています

ジャンプでは羽生選手が突出してますが二位は宇野選手ではなく鍵山選手となっています。四番手佐藤駿選手、五番手三浦佳生選手ですが、鍵山選手との差は20点ほどあります。持っているジャンプは鍵山選手の方が高いわけではないので、精度の差をどれだけ埋めていけるか、ということになるでしょうか。

 

スピンは宇野選手がトップ。二位は鍵山選手で三位は山本草太選手。羽生選手は一つノーバリューが効いて9番目になっています。

ステップは羽生選手がトップで二番手は友野選手です。そこに宇野選手、田中刑事選手と続きます。こういったあたりはまだ鍵山選手は伸びてこず6番目でジュニア扱いの本田ルーカス剛史選手よりも下だったりします。

三浦佳生選手で11番目、佐藤駿選手はここにいない24位まですべて見ると16番目となっていて、ステップ系要素の苦手感が伺えます

 

PCSは上から4人はそのまま、佐藤駿選手や三浦佳生選手は、やはりトータルスコアの順位と比べてPCS順位は低くなる、という傾向が見えます

 

● 上位15人のショートフリーのジャンプの点の入り方

Pl Name Base Jump GOE
1 羽  生  結  弦 106.20 32.77
2 宇  野  昌  磨 98.28 10.20
3 鍵  山  優  真 98.41 14.88
4 田  中  刑  事 74.79 5.78
5 佐  藤      駿 92.10 2.72
6 友  野  一  希 90.04 -14.47
7 三  浦  佳  生 84.42 3.46
8 島  田  高志郎 89.85 -8.66
9 山  本  草  太 90.66 -16.80
10 三  宅  星  南 71.29 1.74
11 日  野  龍  樹 76.93 -5.26
12 森  口  澄  士 77.72 -4.57
13 本  田  ルーカス剛史 65.75 -7.89
14 須  本  光  希 68.19 -5.34
15 中  野  紘  輔 72.00 -2.76

上記表でBaseは基礎点でJump GOEがGOEで獲得した得点です

ジャンプは得られたGOEがマイナスな選手がかなり目立ちます

羽生選手は基礎点トップでGOEもトップという理想形です。

鍵山選手が僅差ですが基礎点GOE共に二番目。宇野選手がどちらも三番目でした。

その下からは基礎点とGOEの順位がだいぶ異なってきます。

佐藤駿選手が基礎点4位なのですがGOEは平凡であまりプラスを稼げていません。

基礎点では山本選手が5位、友野選手が6位ですがどちらもGOEは大きくマイナスで、全体の下から二人がこの二人ということになっています。高難度構成に挑んでいるのだけどそれを決められずに苦しんでいる、というこの二選手の状況が、このジャンプの基礎点とGOEに表れています。

その二人に近い状況なのが島田高志郎選手。このあたりの、グランプルシリーズに出ているくらいの位置の選手は、日本の代表に選ばれるためには高難度構成が必要なのでその構成にチャレンジするのだけど、それをこなしきれない、といった構図が浮き彫りになっています。この三選手、ノーミスの完成形演技は素晴らしいものなのですが、なかなかそれを見る機会が得られません。

 

●上位15人のショートフリーのスピンの点の入り方 

Pl Name Base Spin GOE
1 羽  生  結  弦 15.05 5.09
2 宇  野  昌  磨 19.40 6.07
3 鍵  山  優  真 18.50 5.81
4 田  中  刑  事 18.60 4.24
5 佐  藤      駿 17.80 3.54
6 友  野  一  希 17.05 3.04
7 三  浦  佳  生 17.60 2.17
8 島  田  高志郎 15.40 3.49
9 山  本  草  太 19.70 4.54
10 三  宅  星  南 17.60 2.88
11 日  野  龍  樹 17.80 2.56
12 森  口  澄  士 16.60 1.68
13 本  田  ルーカス剛史 17.50 2.74
14 須  本  光  希 14.80 1.56
15 中  野  紘  輔 18.40 0.88

スピンはショートフリーすべてレベル4を取ったのは山本草太選手のみで基礎点トップになっています。すべてレベル4が1人だけ、というのはかなり少ないと言えます。日本はテクニカルスペシャリストが厳しいなあという印象。

GOEを一番稼いだのは宇野選手、次いで鍵山選手です。スピン一つノーバリューになり、ノーバリューだとGOEもゼロ計算ですので、一つ要素丸ごと少ない状態でしたが羽生選手がGOEでは三番目にいました。

 

 ●上位15人のショートフリーのステップ系要素の点の入り方

Pl Name Base Step GOE
1 羽  生  結  弦 10.20 5.51
2 宇  野  昌  磨 8.90 4.46
3 鍵  山  優  真 8.90 3.51
4 田  中  刑  事 9.60 3.69
5 佐  藤      駿 8.20 1.83
6 友  野  一  希 9.50 4.12
7 三  浦  佳  生 8.90 2.12
8 島  田  高志郎 8.90 2.44
9 山  本  草  太 8.90 2.75
10 三  宅  星  南 9.50 2.70
11 日  野  龍  樹 8.20 1.64
12 森  口  澄  士 8.90 1.34
13 本  田  ルーカス剛史 10.20 2.49
14 須  本  光  希 8.90 2.54
15 中  野  紘  輔 8.20 0.51

ステップはショートフリー共にレベル4という選手がいませんでした。ショートレベル4でフリーレベル3の羽生選手と本田ルーカス剛史選手が基礎点ではトップになります。

GOEは羽生選手がトップで宇野選手が二番手。それに続くのが友野選手で四番手は田中刑事選手です。

ステップ系要素のGOEは10代選手と20代選手ではっきり差が出ている部分になっています。

 

次回へ続きます

全日本フィギュア20感想 女子シングル2

前回の女子シングル1の続きです

 

今シーズン復帰の三原舞依選手が五位。国内参考記録ですが200点に復帰。見ていて心配な細さなんですが、新年の名古屋のフェスティバルも出るようですし、無理して何とか全日本には出たい! とかそういうことではなく、あの細さで普通にしっかりトレーニングして選手としてやっている、と受け取ってよいようですね。

フリーはルッツが一つ二回転になっていましたが、それが三回転ちゃんと飛べていても計算上は宮原選手には少し届かないくらいの点数でした。技術点では宮原選手をはっきり上回っているのでPCSがあともう少し伸びてくるといいのですが。現状はまだ各要素8点平均程度。毎試合伸ばしてきているので210点くらいは見えてきたかなあ

妖精に見えたからとローリーニコルさんが付けたフリーの振付。ガブリエルのオーボエもよかったですが、確かに三原選手にはフィギュア界きっての妖精感を感じました

三原選手が表彰台乗ってたら世界選手権の代表選考どうしたんだろう? 昨シーズン全試合欠場で今シーズンはISU公認試合がない、という関係上、ミニマムスコアを持っていません・・・。この先ミニマムスコアが確保できる試合の開催の見込みも立っていない。という中で代表に選べたかどうか? 

 

昨シーズン終わりの時点では1強プラス4ないしは5の、4の中に入っていると思っていた樋口選手横井選手が7位8位に終わりました。二人ともフリーは前半グループ。おいおい何やってますの・・・、という位置でしたが、樋口選手はショート61.53は出してたんですけどね。これでフリー前半グループとは中堅層のレベルがだいぶ上がったなあと思いました

横井選手はフリーノーミス。やっと出たよ、という思い半分、ショート崩れてからのフリーノーミスは割とよく見る展開だったようなという思い半分。ショートフリーしっかりそろえると210点台半ばまで出ます、というのを今年2月に見せていたのに今シーズンはまたうまくいかず。安定して結果が出せればオリンピック代表争いの候補の一人なのですが、もったいないなあ。トムとジェリーはらしい演目だったと思います

樋口選手はフリー、納得感のある反応してましたが、それほどいい出来でもなかったような。フリップ抜けたしサルコウもうまくいかなかったですし。実際、トリプルアクセルありなのにフリーのジャンプの基礎点合計が宮原選手に負けている。それでも130点台を確保できる強さはあったのですけど、全体のレベルが上がってきているので総合7位まで持ってくるのがやっとでした。ショートもフリーも樋口選手に合ったプログラムだとは思っています。あとは、トリプルアクセル決まったbird set freeを見たいです

 

白岩選手が9位。昨シーズン怪我もあって不振、全日本も欠場。強化選手からも外れてしまっていましたし、世界ランキングも下がっていて国際的にもちょっと苦しい。今回もどうかなあ、と見ていましたが、一定の存在感は示せたかなという感じはしました。フリー後半息切れ感があって、最後のジャンプは転倒でしたし三連続も入りませんでした。その辺クリアできれば200点までたどり着けるのですが、来シーズンに希望は何とかつながる190点到達だったかと思いました。9位なので強化選手には復帰しそう。

白岩選手と似た立場なのが山下真瑚選手で、ショート4位と躍進したもののフリーで崩れ13位。ケガがあったということで残念でしたが、ちょっとこれで来シーズン苦しくなったかなあ。グランプリシリーズ開催されるにしてもランキングが結構下がっているので1枠しか回ってこなさそうですし。ただ、ショートは良かったので、万全な状態で滑ればチャンスはあるのね、という希望はまだある。セビリアの理髪師、結構好きなのですが、流石に4シーズン連続はしないかな。来シーズンは変えるかな

 

新旧の全日本ジュニアチャンピオンが躍進して松生選手4位の河辺選手6位でした。松生選手は全日本ジュニア、NHK杯と198点台でしたが、ついに今回200点到達。三試合続けて目立ったミスがなかったと思います。来シーズンオリンピックチャンスがありそう。カラーパープル、衣装なんでピンクなんだろう? ピンク似合うけど、パープルじゃないのね、とか思ったり思わなかったり。

河辺選手はトリプルアクセルが今シーズンなかなか決まってないです。それでも全日本は回転はqでぎりぎりですが基礎点満額もらえるところまで来ました。そして、ほかのジャンプが崩れないので全体のスコアは結構高く出ます。ジャンプの基礎点合計は全体で紀平選手に次いで二位です。トリプルアクセルがしっかり決まらずに200点に到達したので、ショートフリーで2本決めてくると210点にまで届いて、この選手もオリンピックチャンスがある位置に来てます。プログラム的には昨シーズンのブラックスワンがあっていたな、と感じたのですが、その辺はトリプルアクセルも決まって全体の出来がバランスよくよかったからかなあ。そのせいか黒が似合う印象。

 

ジュニア勢では住吉選手が12位と躍進。186.08のスコアは驚きでした。一方で全日本ジュニア2位の吉田選手は163.78の16位。 これ、世界ジュニアが開催予定だったら代表選考に非常に迷う展開でした。ウルトラCの河辺選手ジュニア出戻り、なんてのが採用されそうな流れでしたけど世界ジュニアはなし。住吉選手吉田選手、二人は来シーズンどうするんでしょう。シニアに上がるかどうか。

 

ベテラン新田谷選手はショート5位からのトータル10位。昨シーズンよかったので今シーズンが普通のシーズンであればチャレンジャーシリーズに派遣されていたはずなのですがコロナで派遣無し。引退撤回で大学卒業年齢から国際大会に復帰していく、というのを体現してもらいたかったのですが世の中うまくいかないもの。それでもショート5位で過去最高位を上回るチャンス、初の200点チャンスがやってきたのですが、フリーはルッツが二本決まらず伸びませんでした。国際大会で見たい選手なのですが10位だとどうだろう? 世の中が平穏に戻ってくれたとして、チャレンジャーシリーズへの派遣があってくれるかどうか。

 

ベテラン組では竹野比奈選手は17位でした。ジャンプがなかなか決まらないですし、セカンド3Tがダブルアクセルにしか付けられないのでどうしても上位にはなかなか入っていけないのですが、相変わらずの美しいスピン。ショートフリー合わせてのスピンでの得点は全体4位でした。競技会での点数・順位以上に、ショーでは生きるタイプかと思います。

 

今シーズン復帰した本郷理華選手は18位でした。フリーでは回転不足5つと苦しんでましたが、この選手はもう、そういう細かいことは言いから、最初から最後までしっかり滑ってくれれば満足です、という風に言いたい気分です。

 

今年からのシニア組では川畑和愛選手が11位、吉岡詩果選手は15位青木祐奈選手が19位

この辺全部東日本勢なのですが、東日本の選手が今回かなり苦しんでいました。三人ともフリーが伸びず。東日本勢の枠はかなり縮小されそうです。来シーズン厳しいなあ。

 

女子では永井優香選手がシーズンの早い段階から今シーズンでの引退を表明していました。ショートではまずまずの出来だったもののフリーはジャンプがことごとく決まらず。終盤、気持ちが切れてしまっているように見えたのは残念でした。

 

女子はショート通過ラインが54.45 50点台半ばにまで上がってきています。昔はフリーの第一グループとか、ジャンプ跳んで次を滑って、というだけで、演技にまでまだなっていません、みたいな選手が目立っていたのですが最近は全然そんなことなくなってます。中堅層のレベルが上がっているというのか厚みを増しているのか、そういう風に見えるので、もう女子は全日本36人でもいいんじゃないか、というような気がしてきました。

 

以上、全日本の感想、女子シングル編でした

全日本フィギュア20感想 女子シングル1

前回男子シングルでしたので今回は女子シングル

今回も文字羅列編です。データ編は次回以降

長くなったので二回に分けました

 

女子も一応、単純な順位の結果は載せておきます

本田真凜選手欠場で全29選手の出場でした

 

全日本選手権 女子シングル結果

Pl Name Total SP FS
1 紀  平  梨  花 234.24 79.34 154.90
2 坂  本  花  織 222.17 71.86 150.31
3 宮  原  知  子 209.75 66.48 143.27
4 松  生  理  乃 204.74 65.57 139.17
5 三  原  舞  依 203.65 69.55 134.10
6 河  辺  愛  菜 201.58 64.70 136.88
7 樋  口  新  葉 195.04 61.53 133.51
8 横  井  ゆは菜 194.22 59.83 134.39
9 白  岩  優  奈 190.39 63.96 126.43
10 新田谷      凜 189.48 67.16 122.32
11 川  畑  和  愛 186.18 64.56 121.62
12 住  吉  りをん 186.08 62.62 123.46
13 山  下  真  瑚 185.56 67.28 118.28
14 鈴  木  な  つ 170.13 59.93 110.20
15 吉  岡  詩  果 168.82 62.00 106.82
16 吉  田  陽  菜 163.78 58.79 104.99
17 竹  野  比  奈 163.06 57.04 106.02
18 本  郷  理  華 160.85 59.05 101.80
19 青  木  祐  奈 158.24 59.97 98.27
20 千  葉  百  音 158.22 54.45 103.77
21 松  原      星 155.46 56.25 99.21
22 廣  谷  帆  香 149.58 55.27 94.31
23 浦  松  千  聖 148.36 55.05 93.31
24 永  井  優  香 146.94 58.99 87.95
25 大  矢  里  佳 54.09 54.09  
26 佐  藤  伊  吹 53.71 53.71  
27 渡  辺  倫  果 46.18 46.18  
28 松  田  悠  良 44.69 44.69  
29 滝  野  莉  子 43.69 43.69  

紀平梨花選手の二連覇。過去に全日本を二連覇以上してオリンピック出場しなかった女子選手は、1950年代の生田艶子さんまでさかのぼらないと例がありません。実質的にはオリンピック当確の位置にいるんだと思いますが、あとはケガと、オリンピックがあるかどうか、というのがカギになってしまうんですかね

フリーで四回転成功ですが、残念ながらトリプルアクセルは回転不足。四回転とトリプルアクセルの両方回転充足の成功とはなりませんでした。18歳での四回転成功は女子では2位の高い年齢での成功となると思います。ISU公認大会ではないですが。これまでの女子の四回転成功の最高年齢記録は19年世界選手権のトゥルシンバエワ選手が19歳36日で決めたもの。まだ20歳を超えての成功者はいません。この先も安定して決めていけるかどうか。

構成要素もフリーの前半は超高難度でしたが後半は紀平選手レベルで見ると余裕を持たせていたように感じました。後半3-3がありはしましたが、最後のジャンプはルッツ来るか、と思わせておいての単独ダブルアクセル。足への負担の考慮からかフリーではルッツなし。四回転飛べた、という一つの実績をまず持っておいて、その次は四回転ありで構成を上げていく、という段階を踏んでいる形なんでしょうか

トリプルアクセルが回転不足だったのですが、四回転サルコウとの間の時間がずいぶん短いなと思いました。要素として続いてしまうのはわかるのですが、もう少しつなぎをとった方が心理的に楽な気もするのですがどうなんでしょう? あんまりジャンプの準備動作が長すぎるとPCSは痛むし全体の印象が良くなくなるのはあるんですけど。まあ、四回転入れるときだけ要素間を長くする、なんてことは振付の関係上出来ないですし仕方ないんですかね。というよりも、それでも飛べるでしょ、飛びなさい、というのが今回は振付師兼コーチなランビエール先生の考え方だったりもするのかもしれませんけれど。

全日本は同じ時期にロシア選手権があるという何とも皮肉なスケジュールなのですが、あちらでは260点が出てました。それと比べると234点というスコアは見劣りしてしまうのですが、あっちはルールも違うし、審判団の採点方針も彼我でだいぶ違うしで、あまり直接的には比較参考に出来るようなものではないと思います。なので、比較ではなくて紀平選手だけを見て考えた方がたぶん良いのですが、四回転サルコウが装備されたことで、フリーは構成を際際まで攻めていけば160点台後半までは見える、170点もGOE頑張れば出る、というところまで来ています。

 

滑走直前、今回は来日したランビエール先生と、日本でずっとついていた濱田先生と二人と話をしていました。あれ、紀平選手の頭の中どうなってるんですかね? 瞬時に日本語と英語とそれぞれ聞き取って理解してるんでしょうか? リスニング力かなり高くないと、英語聞いた後一度日本語に戻ってすぐに次の英語を聞き取るって大変だと思うのですが、実は聞き流してたりするのかなあ

ショートもフリーも今シーズン初披露。今のところまだ、昨シーズンのプログラムの方が私は好きです。穏やか系より壮大系の方が何となくあっていて好みに感じてます。ただ、そういうのを続けるのではなく今シーズンはピアノで、とオリンピック前に入れていくのは幅が広がっていいんだろうな、とも思いました。

 

坂本選手が二位。フリー冒頭スーパーダブルアクセル。あれを見てしまうと、トリプルアクセル跳んでよー!!! と叫びたくなる。飛べそうに見えるんですけどねえ。それでも難しいもんなんでしょうねえ。坂本選手にトリプルアクセル三本入ったらすごい点出そうに思うのですけど

とは言いつつ、出来はNHK杯の方がよかったように感じました。それがそのまま点数にも出てましたけど。フリー最後の得意のトリプルループで軸傾いてしまってたのがプログラム全体の印象を私の中ではだいぶ左右してしまっています。あのトリプルループに+5を付けたジャッジがいるのがよくわからぬ・・。その同じ要素に別のジャッジは-1付けるし、ジャッジ感ばらつきのこの大きさは何なんだ・・

滑る方向間違えて反対行ったのは紀平選手でしたが、坂本選手が間違えて反対行ったら、コレオのジャッジを斬るところどうするんだろ? いいや、せっかくだからコーチ斬っちゃえ、とかやるんだろうか、と思ったりもしました。それにしてもあれ、人間は避けるけど、アクリル板は避けないので、あんまりやりすぎるとアクリル板に引っ掛かって転倒とかなるんじゃと心配

豪快なジャンプで加点をたくさん獲るのですが、実際にはジャンプ基礎点はかなり低いです。今回はフリーでルッツ一本、その一本もeマークで基礎点から減点。フリーのジャンプの基礎点合計は宮原選手よりも低い。そう考えると、トリプルアクセル入れるより前に、3回転以下だけの組み合わせでももう少し基礎点を上げることもできたりする。そっちの伸び代を先に埋めていくんでしょうか。でもトリプルアクセル見たい。四回転でもなく。

 

宮原選手が表彰台に復帰しました。これで7期連続で世界選手権の代表(ケガ棄権や中止含む)。近年ではこれを超えるのは9期連続の浅田真央さん、8期連続の村主章枝さんくらいです。あとは伊藤みどりさんが欠場2回を含めて9期連続、ということになってそうですが、そういった錚々たるメンバーしかもう上にはいません。

昨シーズンあたりからジャンプが決まらないではすまず、ジャンプで転倒が目立ち始めたのでだいぶ心配していて、ショートでループ零点やったし、まずいなあこれ、と思っていたのですがフリーまとめて表彰台に乗りました

安定と信頼の知子さん、とかどこかの誰かが言っていたようですが、正直な感覚としてここ一二年は、はらはらとドキドキの知子さんであって、ジャンプの安定感がない・・・。今回はショートとフリー、大きなミスは一つづつくらいで済んだので210点近い点数は確保してくれました。

フリーのトスカ、すごかったですね。宮原選手の衣装は青系、赤系の二つのタイプが多いように感じていますが、私は赤系の方が好きです。ファイアーダンスしかりミスサイゴンしかり。パッと見、小さくて弱そうなのだけど、実は燃えてますみたいなのが好きです。

フリーのステップがレベル4の満点。それだけを単独で取り出してもすごいことですが、これ、転倒した直後の要素でした。ショート6位で表彰台に乗るには巻き返さなきゃいけなくて、1位2位は置くとしても3位にいたのは三原舞依選手で、それをひっくり返すにはミスすると厳しくて、という中でジャンプ転倒という大きなミスをした直後の要素としてのステップ。どういうメンタルしてたらそこで満点取れる滑りができるんでしょう。

ショートでループがしっかり入ってフリーもノーミスだったら10点ちょっとの上積みができたはずでした。そう考えると宮原選手のノーミス標準は220点ほど、これはたぶん平昌のころからここ数年変わっていないと思います。この220点ノーミス標準に対して、どこまでミスなく滑れるか。そう考えると上二人がしっかり滑った時にはちょっと勝てない。一方で自分がしっかり滑れば台からは落ちない。そんな位置にいるように感じました。

 

こうやって上位3人見ると、平昌オリンピックのシーズンと順番こそ変わっているのですが表彰台メンバー同じです。昨シーズンこそ坂本選手宮原選手が大崩れして表彰台に違うメンバーが入ってきていましたが、結局、上三人が崩れてくれないとまだ他は勝てない、という構図があるようです。

 

一旦ここで切ります

全日本フィギュア20感想1 男子シングル

今年の全日本選手権は面白かったですねえ

男女ともトップ選手が今年初戦という異例の状態で迎えた試合でしたが、昨年と比べて全体の出来が良かったように感じました

実際、点数も特に女子は高かったですし

 

そんな全日本選手権のレビュー

数値編はたぶん後でやりますが、とりあえず文章羅列型の感想編

まずは男子シングルです

一応、結果も載せておきます

 

全日本選手権20 男子シングル結果

Pl Name Total SP FS
1 羽  生  結  弦 319.36 103.53 215.83
2 宇  野  昌  磨 284.81 94.22 190.59
3 鍵  山  優  真 278.79 98.60 180.19
4 田  中  刑  事 238.83 83.61 155.22
5 佐  藤      駿 236.52 83.31 153.21
6 友  野  一  希 223.16 81.72 141.44
7 三  浦  佳  生 221.26 67.61 153.65
8 島  田  高志郎 220.94 71.88 149.06
9 山  本  草  太 217.34 82.60 134.74
10 三  宅  星  南 213.53 79.09 134.44
11 日  野  龍  樹 202.13 69.79 132.34
12 森  口  澄  士 196.10 66.18 129.92
13 本  田  ルーカス剛史 194.03 67.52 126.51
14 須  本  光  希 193.37 67.15 126.22
15 中  野  紘  輔 187.06 66.47 120.59
16 櫛  田  一  樹 184.81 71.23 113.58
17 中  村  俊  介 184.01 63.97 120.04
18 大  島  光  翔 178.45 62.34 116.11
19 本  田  太  一 177.87 67.86 110.01
20 長谷川  一  輝 175.24 63.59 111.65
21 木  科  雄  登 174.30 61.38 112.92
22 小  林  建  斗 172.41 60.88 111.53
23 小  林  諒  真 168.94 63.91 105.03
24 國  方  勇  樹 159.29 60.08 99.21
25 杉  山  匠  海 59.22 59.22  
26 山  隈  太一朗 57.51 57.51  
27 山  田  耕  新 56.56 56.56  
28 唐  川  常  人 54.51 54.51  
29 石  塚  玲  雄 50.29 50.29  
30 古  家  龍  磨 47.09 47.09  

 

羽生結弦選手圧勝。最近勝ててない全日本で特に昨年は実際に出て負けている。なので今回は、なんだかんだ言いつつ、このタイトルを取り戻したい、というような意志があって出てくるのかな、と思っていたのですが、あんまりそういう口ぶりではなかったでしょうか

今シーズンの国際大会のベストスコアはスケートアメリカのネイサンチェン選手299.15なので、それを大きく上回った、ということに計算上なってますけど、そこはあんまり参考にはならないかな

結果的に圧勝でしたが、実際にはそんなにかけ離れた差があるようには感じませんでした。なんというか、二シーズン前の世界選手権でネイサンチェン選手と羽生選手が、結果的に点差は大差だけどそんなにかけ離れた差があるようには感じない、というのと同じ程度に。

実際、計算上はもっと点が出るポテンシャルが羽生選手にありますし。スピンノーバリュー事件はちょっと横に置くとして、構成ももっと基礎点高くできるはずです。ショートフリー通じて、フリップもルッツもなしで4種類のジャンプだけの構成になってます。そうすることでジャンプの練習負荷が減って四回転アクセルに時間を回せる? その辺はよくわかりませんが。鍵山選手が3Lz-3Loのコンビネーションをやってますが、羽生選手こそ子のコンビネーション入れるといいと思うんですけどねえ。まあ、フリーのトリプルループはあの流れであの場所で飛べるジャンプは単独ループしかないですし、きれいな流れなのでプログラム的には好きだから変えてほしくない気もしますけれど。

コーチがいない影響は、スピンノーバリュー事件に出てるんでしょうか。審判に四の五の言われないはっきりしたレベルカウント、というのをコーチがいればたぶん練習時に指摘していたように感じます。特にオーサー先生は、そういう審判団からどう得点を引き出すか、というのに長けている人ですし。一方で、精神的な面ではコーチがいないことの影響が見た目感じられませんでした。昨シーズンの宇野選手なんかも思い起こすと、あの立場の選手がコーチ不在で一人でもしっかり精神的に安定していられるというのはものすごいことだな、と思いました

 

宇野選手二位。五連覇ならず。ショートノーミスで106点の首位スタートなら面白かったのですが、羽生選手から9点ビハインドの3位でフリー、というところからの逆転はなかなか厳しい。四回転はフリップ2本にサルコウも決まったのに、トーループの安定感のなさはなんなのでしょう? フリーではリカバリーで後半4回転トーループ2本となってましたが、2本目というか通算3本目の方はやはりクリーンに決まらず。もうフリーは四回転フリップ2本にしたらどうです? と思ったりもしました。

宇野選手はショートフリー通じてルッツとループが無しの4種類のジャンプ構成です。実際にはルッツはある予定でリカバリーしたら消えた、ということではあるはずですけれど、不思議なものでトップ2選手がジャンプの種類が少なくなる。4回転3種類の選手に起きる現象なのですが、こういうのを見ていると、6種類コンプリートボーナスとかあってもいいかなと思ってしまいます

ノーミスのGreat Splitを世界選手権ではお待ちしております

 

鍵山選手3位。昨年と同じ順位ですが感覚的にはずいぶん違う。昨年は大健闘三位という感じでしたが、今年は、みんな3位だと予想してたでしょ? の3位。先輩、今季初戦っすよねえ、流石にノーミスされると勝てないですけど、ツーミスくらいしたら食いますよ? という感じで挑んでいって、宇野選手を食いかけた3位。3連続をきれいに決めてたらたぶん2位でした。技術点だけなら2位でしたし。世界選手権表彰台あるかも、な勢いを感じます。フリーは、まだ、個人的には昨シーズンのタッカーの方が好きで、アバターってもうちょっと重くなかったっけ? と思う部分もあり、今の勢いには合うんだか合わないんだか。

四回転二種類持ち選手の限界近い構成になってきています。ルッツループまで組み込んでいるので、あとは1.1倍ボーナスをハードにしていくくらいしか基礎点上げていくすべはない。PCSがまだ伸び切っていないので、そこの伸びとスピンステップレベルをしっかりとったノーミスなら300点までは行けそうですが、その上、320点超えて頂点を目指すには四回転3種類目も必要そう。オリンピックまでに3種類目を入れる練習をしていくのかどうか?

 

 

ちょっと上位3人とその下の差が開いてしまいました。NHK杯時点で見えていた現実ではありますけれど。来年のオリンピック代表選考がちょっとつまらなくなってきてます・・・

逆転があるとすれば、ジュニア2年抜けでシニアに殴り込みをかけて大化けした三浦佳生選手あたりでしょうか。

三浦選手はまだ難しいジャンプ発表会という感じがあってPCSが伸びてないですしスピンステップも点が取れてないです。それでも中学3年生ですし、世界ジュニア見たかったんですけどねえ。グランプリファイナルはシリーズがああなった時点でさっさと中止でいいと思うけど、世界ジュニアは何とかやろうとしてほしかったなあ。

佐藤駿選手はシニア1年目の今年も5位 世界ジュニアがあれば、迷って迷って3枠目は彼に回す(四大陸が回らなければ)、というのがありえた5位という位置、でしょうか。フリーはロミオとジュリエットに戻してました。表現力系の選手ではないですが、佐藤選手のロミオ結構好きだったのでこれはこれであり、と思ってました。来シーズンもロミオでオリンピック選考会に挑む、なんてあってくれてもいいなあ。ライバル鍵山選手と得点的には少し差が出てしまっていますが、来シーズン、一発勝負の全日本で四回転四種類五本+トリプルアクセル二本のスーパー構成でひっくり返す、なんて展開があったりしても面白いです。

 

シニアで上位をうかがっていた選手、友野一希選手、山本草太選手、島田高志郎選手、あまり伸びませんでした。この中だと友野選手のフリーのムーランルージュは好きなんですけどねえ。昔のエキシビジョン、犬のおまわりさんの運命と並ぶ代表作になりそうないいプログラムだと思うのですが。山本選手もそうなのですが、トップ3に勝たないとオリンピックがない、ということで四回転2種類の高難度構成をショートもフリーも入れて、こなしきれずに点が伸びてこない。気持ちはわかるし、オリンピックを狙うにはそれしかないというか最低限そこのクリアが必要というのはわかるのですけど、ただ見ているだけの外野としては、この二人の、少し難度を落としてもいいから完成したノーミス演技というのを見たい、と思ってしまう部分があります。

 

田中刑事選手は4位。4期連続の世界選手権代表でしたが今季は代表落ちとなりました。例年なら4位だと四大陸選手権は回って来るのですが今シーズンは中止。何もなしの4位、というのはちょっと悲しい。フリーは四回転二本降りて、流石これは全日本に合わせてきたのか、間に合ったのか? と一瞬思ったのですが後半、コンビネーションが入らず伸びませんでした。シャーロックホームズと言えば田中刑事を思い浮かべるようになりたい、というようなことを述べていたようでしたが、最後のポーズとか二シーズン見てると、この曲と言えば田中刑事、というイメージには私の中ではなってます。むしろ三シーズンくらいやっているような印象でした。

 

中位以下だと今シーズンで引退、という選手も毎年それなりにいるのですが、今シーズンは特に学生選手権が中止になってしまっているので全日本の重みが重かったかなあ。

その代表格が今年は本田太一選手でしょうか。フリーの出来は正直良くなかった、というかひどかったに近いものだったかもしれません。大学四年生を過ぎても続けられるのは限られたごくごく一部の選手、というのが今のフィギュアスケート界の現実。立ち位置的にいろいろと大変なスケート人生だったのだろうと思うのですが、お疲れさまでしたと言いたいです。

大会後でしたし大学4年生ではないですが日野龍樹選手も引退と述べていました。こちらは羽生結弦世代。いつかのNHK杯で、日野選手もっと来いや、と羽生選手が言っていたのが記憶に残っています。世界のトップまで引けませんでしたがグランプリシリーズまではたどり着いた選手。全日本も最高位4位、ISU公認試合ではないですがユニバーシアードで6位にまでなったこともあります。

こういう選手が一人一人辞めていく。残念ですが、毎年全日本で見られる光景でもありました。これが30歳とかならいいんですけど、22歳とか、伸びても25歳とかで辞めていく。フィギュアスケート界の構造的な問題なように感じています。

 

次の試合、今シーズンあるかな?

 

以上、全日本フィギュア、男子シングルの感想でした

 

 

全日本選手権20プレビュー2

だいぶ時間が空いてしまいましたが、前回に続いて全日本選手権のプレビューです

今回は男子になります

 

まず、エントリー選手の今シーズンのベストスコアを並べました。地方のローカル大会や国体の予選などは含めていません。全日本につながるブロック大会、全日本ジュニアと国際大会であったNHK杯および国内メンバーだけでしたがジャパンオープンまでを含めてみています。国体予選などを含めればここに乗っているスコアより高い点を出している選手もいます

 

〇今シーズンのベストスコア

  Name Total Event
1 鍵山優真 287.21 関東選手権
2 佐藤駿 229.18 東日本選手権
3 友野一希 226.62 NHK Trophy
4 本草 221.22 西日本選手権
5 三浦佳生 220.55 東日本選手権
6 本田ルーカス剛史 217.56 NHK Trophy
7 田中刑事 215.52 NHK Trophy
8 木科雄登 207.78 西日本選手権
9 三宅星南 203.53 全日本ジュニア
10 山隈太一朗 203.36 東日本選手権
11 須本光希 202.14 西日本選手権
12 日野龍樹 199.45 西日本選手権
13 大島光翔 198.84 全日本ジュニア
14 森口澄士 190.69 西日本選手権
15 櫛田一樹 189.79 近畿選手権
16 中村俊介 182.23 全日本ジュニア
17 本田太一 180.58 近畿選手権
18 小林建斗 180.56 東日本選手権
19 山田耕新 171.00 西日本選手権
20 小林諒真 169.55 東日本選手権
21 中野紘輔 168.87 中四国九州選手権
22 杉山匠海 167.62 中四国九州選手権
23 長谷川一輝 164.58 東日本選手権
24 國方勇樹 159.93 東日本選手権
25 唐川常人 155.51 東京選手権
26 石塚玲雄 153.92 東日本選手権
27 古家龍磨 147.87 西日本選手権

エントリー選手の中で、羽生結弦選手、宇野昌磨選手、そして島田高志郎選手は今シーズン試合出場がありませんので、それを除いた全27選手分になります。

 

鍵山優真選手の287.21は突出したスコアです。これに次ぐスコアとしてNHK杯で275.87も出しています。このままいくと二年連続表彰台が濃厚、という水準。今シーズンに限らず、羽生選手宇野選手以外で287.21はおろか、275.87も、出せた選手は他にいません。ISU非公認ですが日本男子歴代3位のスコアです

 

2番手も今シーズンシニアに上がった佐藤駿選手ですが、遠く離れた229.18です。昨シーズンジュニアグランプリファイナルに勝った時のスコアが255.11  これにコレオを付ける程度だと鍵山選手には全然届きませんが、ショートから四回転二本でノーミス、まで行ければNHK杯の275.87程度は出せます。高難度ジャンプが要素に入っているけれど、まだ確度がそれほど高くはない、という中で全日本はどうか? 今シーズン、世界選手権の代表に選ばれるためには、鍵山優真選手に勝つことは必要条件です

 

シニアで世界選手権出場経験のある友野選手が3番手、ジュニア時代活躍しながらシニアに上がる時期にケガをして以降苦しんでいる山本選手が4番手。このあたりはしっかり決まれば250点は出てくるのだけど、ノーミス演技が出来ていない、という状態。現実的には四大陸選手権の枠やユニバーシアードへ、という位置なんですが今シーズンはどちらも開催自体がされず。来シーズンのオリンピック代表レースのためにはインパクトを与えつつ自信が持てる演技、点数が欲しいところなのだと思うのですがどうなるでしょう?

 

その下がジュニア勢。四回転持ちの中学生三浦選手が5番手で、全日本ジュニアに勝ちNHK杯も表彰台に乗った本田ルーカス剛史選手が6番手。この二人は確実に世界ジュニアへ・・・って、世界ジュニアもあっさり中止されてしまいました・・・。

 

オリンピア田中刑事選手が7番手。ケガ明けというかケガからの回復途上で全然参考にならないスコア、ではありますが、鍵山優真選手の今シーズンのスコアは田中刑事選手が出したことのない領域なのも事実。5期連続の世界選手権代表選手はなるでしょうか?

 

上位に絡んでくるのはこの辺までの選手でしょうかねえ。

 

ショートプログラムのベストスコア

  Name TSS Event
1 鍵山優真 98.46 関東選手権
2 友野一希 86.47 近畿選手権
3 佐藤駿 81.84 東日本選手権
4 本草 80.77 中部選手権
5 本田ルーカス剛史 80.35 全日本ジュニア
6 田中刑事 77.00 西日本選手権
7 三宅星南 75.55 西日本選手権
8 木科雄登 75.39 西日本選手権
9 櫛田一樹 73.77 近畿選手権
10 三浦佳生 72.49 東日本選手権
11 日野龍樹 71.75 西日本選手権
12 須本光希 68.64 近畿選手権
13 森口澄士 68.55 西日本選手権
14 大島光翔 68.06 全日本ジュニア
15 中村俊介 66.58 全日本ジュニア
16 山隈太一朗 66.35 東日本選手権
17 本田太一 66.34 近畿選手権
18 中野紘輔 63.62 中四国九州選手権
19 小林諒真 62.93 東日本選手権
20 小林建斗 61.65 東日本選手権
21 石塚玲雄 58.69 東京選手権
22 長谷川一輝 58.52 東京選手権
23 杉山匠海 58.44 西日本選手権
24 山田耕新 56.03 西日本選手権
25 唐川常人 54.53 東京選手権
26 古家龍磨 50.78 中四国九州選手権
27 國方勇樹 50.53 東京選手権

ショートプログラムは上位24人しかフリーに進めません。羽生選手宇野選手、それに島田選手がカウントされていないことを考えると、シーズンベストから見るボーダーラインは58.69となってきます。女子の55.46とあまり変わらなかったりします。この辺に、競技人口の厚みの違いが表れています

 

トップは鍵山選手の98.46  日本人3人目の100点突破なるか? というところまで来ています。この時はステップがレベル2だったのですが、これをレベル4に出来れば100点越えでした。NHK杯のショートでは、このステップレベル4を出せていたのですが、トリプルアクセルが抜けて零点。ノーミスなら技術点は57~58点出るので、もう少し試合経験積んでシニアジャッジがシニア点を演技構成点で出してくれれば100点が自然に出るだろう、というところにすでにいます。

 

友野選手は4回転を二本降りた近畿選手権で86.47 この時はコンビネーションの二つ目が二回転で、スピン二つがレベル2  すべてが揃えば90点台前半までは出ますが、なかなかすべてを揃えられる成功率が備わっていない状態です。

 

佐藤駿選手が三番手で81.84 四回転ルッツが要素として入っているので基礎点は最も高いのですが、ジャンプが全部そろわない。また、演技構成点は良くて7点台半ば、NHK杯だと平均7点を切るくらいになって来るので、ちょっと苦しい。演技構成点がこの水準だと、四回転ルッツ持ちのノーミスでも100点に届かせるのは極めて難しいです。そういう見方をすると、鍵山選手の方が一歩先へ行っている、と言えるのかもしれません

 

5番手までが80点台。フリー最終グループ入りは80点は必要そうに見えます。三浦選手の中学生最終グループ入りが見たい気もしますが、ここでショート一発ノーミス演技でそこまでもってきてくれたりしますでしょうか?

 

こうやって見ると、NHK杯でシーズンベストを更新した選手がいなかったんですね。なんだかそれは残念な光景です。

 

〇フリーのベストスコア

  Name TSS Event
1 鍵山優真 188.75 関東選手権
2 三浦佳生 148.06 東日本選手権
3 佐藤駿 147.34 東日本選手権
4 本草 144.15 西日本選手権
5 友野一希 143.35 NHK Trophy
6 田中刑事 138.95 NHK Trophy
7 本田ルーカス剛史 138.34 NHK Trophy
8 山隈太一朗 137.01 東日本選手権
9 須本光希 136.09 西日本選手権
10 木科雄登 132.39 西日本選手権
11 大島光翔 130.78 全日本ジュニア
12 三宅星南 128.25 全日本ジュニア
13 日野龍樹 127.70 西日本選手権
14 森口澄士 126.99 近畿選手権
15 小林建斗 118.91 東日本選手権
16 長谷川一輝 117.08 東日本選手権
17 本田太一 116.36 西日本選手権
18 櫛田一樹 116.02 近畿選手権
19 中村俊介 115.65 全日本ジュニア
20 山田耕新 114.97 西日本選手権
21 杉山匠海 110.90 中四国九州選手権
22 國方勇樹 110.65 東日本選手権
23 中野紘輔 109.95 西日本選手権
24 小林諒真 106.62 東日本選手権
25 唐川常人 102.86 東日本選手権
26 石塚玲雄 98.64 東日本選手権
27 古家龍磨 98.47 西日本選手権

フリーも鍵山選手の188.75が飛びぬけたスコアです。NHK杯では188.61でした。関東選手権で決めていたルッツループがNHK杯でも決まっていれば190点まではありました。200点まで伸ばすには、演技構成点が8点を少し超えたあたりなものを9点前後までもっていく、というアプローチか、四回転のフリップかルッツを習得するか、どちらかになるでしょうか。

 

2番手が中学生の三浦選手。四回転を三本降りるのだけどトリプルアクセルが決まらない、という今シーズンがあります。また、演技構成点が6点台なのも苦しいところ。9点前後の選手とはPCSで25点ほど差がついてしまうので四回転三本分の差がそこで埋まってしまいます。その辺は、年齢を経ていけば解消されていくのかと思われますが、今シーズンの全日本、という時期には大きな差として残ります

 

140点台で続くのが佐藤駿選手、山本草太選手、友野一希選手。このあたりは、誰がノーミス演技してくるか、ということでしょうか。最終グループの早い方の演技順のこの辺の選手が170点から180点出して、トータル260点台くらいまで持っていけると鍵山選手にもプレッシャーが与えられるというか、表彰台争いがどうなるかわからない状態で進んでいくのでよいのですがどうなるでしょう。

 

男子の優勝争いは、ここに記載の選手よりは、今シーズン試合出場のない羽生結弦選手と宇野昌磨選手がメインになって来るのかと思われます。宇野選手にとっては五連覇がかかる試合で、全日本で五連覇となれば男子シングルでは、今は解説者としておなじみの佐野稔さんが1977年に成し遂げて以来となります。羽生選手が勝てば5年ぶりです。

コロナ由来でグランプリシリーズ欠場してるのに何で全日本出るの? でなくても代表にしてあげなよそれくらいの実績あるでしょ、と言われたりもしている羽生選手ですが、個人的な印象としては、本人が出たかったんじゃないかと思っています。最後の優勝が2015年。主要大会で、一番タイトルから離れているのが全日本になってます。去年も負けたし、今年こそ取りたい。獲っておきたい。そんな気持ちがあったりするんじゃないでしょうか。勝手な推測ですが。

 

最近は四日間開催だったような気がする全日本ですが、今回は試合としては三日間に圧縮されていて、ショートプログラムは男女同日開催です。スケジュール的には今回は女子メイン構成でしょうか。ショートもナイトセッションが女子シングルですし、男子は土曜日にフリーですが女子は最終日日曜日にフリーが来ます