21-22 松生理乃

2004年10月10日生まれ

シニア1シーズン目

シーズン獲得賞金:$5,000

世界ランキング:30位

シーズンランキング:16位

シーズンベストスコア 224.34 (8位) チャレンジカップ

ショートプログラムシーズンベスト 74.21 チャレンジカップ

フリーシーズンベスト 150.13 チャレンジカップ

ショートプログラム楽曲:恋は何のために?

フリープログラム楽曲:月光

スピンレベル4率 42/51=82.4% (国際大会:21/24=87.5%)

ステップレベル4率 4/17=23.5%(国際大会:4/8=50.0%)

スピンオールレベル4 2/8(国際大会:1/4)

スピンステップオールレベル4  1/8(国際大会:1/4)

ジャンプ要素回転不足率 11/87=12.6%(国際大会:5/40=12.5%)

ジャンプ回転不足なし 1/8(国際大会:1/4)

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 1/8(国際大会1/4)

 

○21-22シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
DL みなとアクルス 1 207.48 69.70 137.78
DL げんさんサマーカップ 5 192.56 70.27 122.29
RT 中部選手権 1 201.44 69.48 131.96
Others Japan Open 2 135.12   135.12
GP NHK Trophy 6 186.17 63.34 122.83
GP Rostelecom Cup 8 184.36 62.98 121.38
NC 全日本選手権 7 198.77 72.31 126.46
4CC Four Continents 5 202.21 60.16 142.05
IC Challenge Cup 1 224.34 74.21 150.13

松生理乃選手は今シーズンからシニアへ上がりました。

シーズン初戦と言っていいのかくらいの早い時期、7月頭のみなとアクルス杯で前年の全日本を超えるパーソナルベスト相当のスコア207.48を出します。フリーではトリプルアクセルにチャレンジ。今シーズン中に完成するかはどうかという部分はありましたが、代表争いの面白い存在になりそうだ、と見られていました。

女子のトップが集まったげんさんサマーカップでは5位。フリーでスコアが伸びませんでした。

中部選手権とジャパンオープントリプルアクセルはダウングレードながらスコア的にはまずまずの結果を出してグランプリシリーズへ。最初からエントリーされていたのはロステレコム杯のみでしたが、NHK杯の地元枠を確保。2戦分の出場権を得ます。ただ、ここで結果を残せませんでした。この時期、あまりはっきりと明言されていなかったと思いますが、ケガを抱えているようでした。

力はあるけれどシーズンベスト低めな6番手、という立ち位置で全日本を迎えます。

ショートは全要素全ジャッジプラス評価の72.31で6位スタート。3位まで1.96ポイント差。フリー次第で全くわからないという位置で初めてのフリー最終グループに入ります。

戦前の予想された上位6人がそのまま最終グループに入ったフリー。その1番滑走として出てきての月光。冒頭から二つのジャンプで転倒。この時点でオリンピックは夢と消えました。気落ちしてそのまま大崩れしてもおかしくない展開でしたが、3つ目の要素以降は立て直して全要素全ジャッジプラス評価。いい印象を残して終えましたがこの時点で2位。総合で7位に終わります。

これは昨シーズン権利があったのに中止で出られなかった世界ジュニアかな、と思っていたら、いろいろなめぐりあわせもあって四大陸選手権に回ります。これがシニアの大きな大会に出られてよかったのか、世界ジュニアの表彰台チャンスがもらえず悪かったのかは何とも微妙なところ。本調子ではなさそうなまま臨んでショートではジャンプの転倒もあり8位スタート。残念な感じでしたがフリーでは盛り返します。スピンステップオールレベル4で全要素プラス評価。技術点が初めて70点台後半までもってきて142.05 初の140点台でフリーだけなら3位、総合5位まで順位を上げました。

大きな大会はこれで終わり。後は国内ローカル大会くらいか、とも思われましたが2月の終わりにチャレンジカップに派遣されました。ここで驚きのスコア。ショートは全要素全ジャッジプラス2以上の評価で74.21のパーソナルベスト相当のスコアを出します。そしてフリー。前半は妖精が舞うステップの中に組み込まれた4つのジャンプを決め、スピンを挟んで後半、ステップからコンビネーションジャンプ3つ、コレオにスピンとすべて決め、スコアはまさかの150.13 トータルスコアは224.34という驚きの水準に達しました。ISU公認にはなりませんが、今シーズンのベスト8位にあたるスコアで、来シーズンに繋げました。

 

○要素別スコア

Event Pl Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
みなとアクルス 1 207.48 110.46 98.02 69.42 6.31 23.13 11.60
げんさんサマーカップ 5 192.56 98.49 95.07 59.06 5.17 22.09 12.17
中部選手権 1 201.44 109.10 92.34 66.26 5.70 23.67 13.47
Japan Open 2 135.12 71.32 63.80 46.55 5.11 10.74 8.92
NHK Trophy 6 186.17 93.19 92.98 58.26 1.35 23.10 10.48
Rostelecom Cup 8 184.36 92.04 93.32 52.55 2.72 23.42 13.35
全日本選手権 7 198.77 106.57 94.20 63.98 4.23 25.23 13.13
Four Continents 5 202.21 107.39 95.82 65.16 4.76 24.19 13.28
Challenge Cup 1 224.34 121.58 102.76 66.22 14.77 25.36 15.23

技術点はみなとアクルス杯で110点を出しましたがその後はそこまではなかなか伸びず。そこから最後のチャレンジカップでは一気に121.58まで伸ばしました。これは坂本花織選手の世界選手権での123.35に極めて近い水準です。

PCSは90点台半ばあたり。チャレンジカップで100点に乗せました。5項目平均8点前後、チャレンジカップで8.5あたりになります。

ジャンプの基礎点はチャレンジカップで66.22 トリプルアクセル以上のジャンプがない中では限界近い構成です。コンビネーションをすべて1.1倍に入れることで作り出しています。一方、みなとアクルス杯では69.42まで出ています。これはアンダーローテーションながらもトリプルアクセルが構成に入っているためです。

ジャンプの加点はシーズン序盤は5点から6点ありましたが、中盤はそこまで伸びず、最後のチャレンジカップでは二桁加点と大きく稼ぎました。この14.77という加点は今シーズン8位という高い加点になります。

スピンでは23点台が多かったですが4大陸選手権で国際大会初の24点台、チャレンジカップで全日本並みの25点台を出しました。

ステップ系要素は国内でも13点台にとどまっていましたが、チャレンジカップではショートフリーレベル4を揃え15点台まで出し、上位と遜色ないスコアを出しています。

 

○要素別偏差値

Event Pl Total J Base J GOE Spin Step PCS
みなとアクルス 1 62.98 64.17 62.98 57.70 52.74 61.90
げんさんサマーカップ 5 58.93 56.44 61.07 54.46 55.00 59.94
中部選手権 1 61.34 61.81 61.96 59.38 60.18 58.12
NHK Trophy 6 57.20 55.84 54.65 57.60 48.28 58.54
Rostelecom Cup 8 56.71 51.58 56.95 58.60 59.70 58.77
全日本選手権 7 60.62 60.11 59.49 64.23 58.83 59.36
Four Continents 5 61.55 60.99 60.38 61.00 59.42 60.44
Challenge Cup 1 67.55 61.78 77.18 64.64 67.18 65.06

偏差値に直すと、トータルスコアは60前後でしたがチャレンジカップで67.55まで一気に伸ばしました。

ジャンプの基礎点は偏差値60を少し超えるくらい。トリプルアクセル無しではここが限界ですが、トリプルアクセルを入れると65に近いところまで来ます。

ジャンプの加点は偏差値60前後でしたがチャレンジカップでは偏差値77.18という極めて高いものになりました。

スピンステップも偏差値60前後だったものがチャレンジカップで偏差値60台半ばから後半に上げています。

偏差値60くらいの選手のように一見見えていたけれど、本領発揮したチャレンジカップでは偏差値60台後半まで出してきて、ちょっと普通のレベルの選手ではないぞ、という風に変わりました。

21-22シーズン 松生理乃要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャートはこうなって、チャレンジカップだけ他の試合より全体的に一回りおおきくなっています。特にジャンプの加点は突出しました。もともと苦手な要素というのはあまりなく、バランスよく偏差値60前後なことが多かったわけですが、チャレンジカップで一回り大きな選手になりました。次はISU公認試合でこれができるか、というのが問われます。

 

●シーズン最高の基礎点構成

チャレンジカップ ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F   5.30   1.59 6.89 3.000
2 2A   3.30   1.25 4.55 3.571
3 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.000
4 3Lz+3T   11.11 x 1.53 12.64 2.571
5 LSp4   2.70   0.81 3.51 2.857
6 StSq4   3.90   1.25 5.15 3.143
7 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
  TES   33.01   8.44 41.45  

ショートの最高基礎点は33.01 ルッツフリップトーループと3つ3回転があり、1.1倍にコンビネーション。トリプルアクセル無しで基礎点上げるにはルッツループの投入以外ありません。

 

チャレンジカップ フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz   5.90   2.01 7.91 3.429
2 3F   5.30   1.59 6.89 3.000
3 2A   3.30   1.06 4.36 3.286
4 2A   3.30   1.32 4.62 4.143
5 FCCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.143
6 StSq4   3.90   1.48 5.38 3.714
7 3Lz+3T+2T   12.54 x 1.77 14.31 2.857
8 3S+3T   9.35 x 1.38 10.73 3.286
9 3Lo+2T   6.82 x 1.27 8.09 2.571
10 ChSq1   3.00   1.70 4.70 3.429
11 CCoSp4   3.50   1.47 4.97 4.143
12 LSp4   2.70   0.92 3.62 3.571
  TES   63.11   17.02 80.13  

フリーの最高基礎点は63.11 トリプルアクセル無しでの今シーズン全体の最高は63.33ですのでそれに極めて近いところまで来ています。コンビネーションをすべて1.1倍に入れて、3回転5本を1.1場合している計算です。レイバックスピンがあるのでややスピンの基礎点で低くなります。そこを変えればもう少し基礎点は上がります。

国内ローカルなので外しましたが、アンダーローテーションのトリプルアクセル入りのみなとアクルス杯では65.01の基礎点がありました。

 

○平均GOE3.200(国際大会+全日本選手権より)

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Challenge Cup FS 4 2A   3.30   1.32 4.62 4.143
Challenge Cup FS 11 CCoSp4   3.50   1.47 4.97 4.143
全日本選手権 FS 11 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.778
Four Continents FS 11 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.778
Challenge Cup FS 6 StSq4   3.90   1.48 5.38 3.714
Four Continents FS 10 ChSq1   3.00   1.79 4.79 3.667
Challenge Cup SP 2 2A   3.30   1.25 4.55 3.571
Challenge Cup FS 12 LSp4   2.70   0.92 3.62 3.571
全日本選手権 SP 3 FCSp4   3.20   1.10 4.30 3.556
全日本選手権 SP 7 CCoSp4   3.50   1.25 4.75 3.556
Challenge Cup FS 1 3Lz   5.90   2.01 7.91 3.429
Challenge Cup FS 10 ChSq1   3.00   1.70 4.70 3.429
Rostelecom Cup FS 11 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.333
Four Continents FS 6 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.333
Challenge Cup FS 3 2A   3.30   1.06 4.36 3.286
Challenge Cup FS 8 3S+3T   9.35 x 1.38 10.73 3.286
全日本選手権 SP 6 StSq3   3.30   1.04 4.34 3.222

チャレンジカップは全体の評価がとにかくよく、こういった形で要素を取り出すとチャレンジカップだらけになりました。最高評価はダブルアクセルとスピンで4.143 ステップやコレオも上の方に出てきますし、バランスよく各要素をこなすことができるのが見て取れます。

 

トリプルアクセル

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
みなとアクルス FS 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000
げんさんサマーカップ FS 1 3A<< <<  3.30   -1.65 1.65 -5.000
中部選手権 FS 1 3A<< <<  3.30   -1.65 1.65 -4.800
Japan Open FS 1 3A<< <<  3.30   -1.16 2.14 -3.167

今シーズン序盤はトリプルアクセルに挑みましたが、回転不足の転倒か、ダウングレードということになりました。怪我もあったようでシーズン中盤以降はチャレンジもありませんでしたが来シーズンどうでしょうか? 元祖トリプルアクセルのグランプリ東海。トリプルアクセルが入るようになるとよいのですが。

 

○3回転-3回転を含む要素(国際大会+全日本選手権より)

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
NHK Trophy SP 1 3Lz<+3T 8.92   -0.54 8.38 -1.111
NHK Trophy FS 2 3Lz+3T+2T   11.40   1.18 12.58 2.000
Rostelecom Cup FS 8 3S+3T< 8.43 x -1.90 6.53 -4.333
全日本選手権 SP 4 3Lz+3T   11.11 X 1.10 12.21 1.778
全日本選手権 FS 7 3Lz+3T+2T   12.54 X 1.35 13.89 2.333
全日本選手権 FS 8 3S+3T   9.35 X 1.23 10.58 2.889
Four Continents SP 4 3Lz+3T   11.11 x -1.35 9.76 -2.222
Four Continents FS 7 3Lz+3T+2T   12.54 x 1.26 13.80 2.111
Four Continents FS 8 3S+3T   9.35 x 1.17 10.52 2.778
Challenge Cup SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.53 12.64 2.571
Challenge Cup FS 7 3Lz+3T+2T   12.54 x 1.77 14.31 2.857
Challenge Cup FS 8 3S+3T   9.35 x 1.38 10.73 3.286

松生理乃選手は今シーズン、3連続ジャンプをすべて3回転-3回転-2回転で跳びましたので、ここの中にすべて入ってきています。

グランプリシリーズでは調子が上がっていなかったからかちょっと違いましたが、全日本以降は、ショートフリー、4回あるコンビネーションジャンプをすべて1.1倍の後半に入れる構成にしていました。従って、3回転-3回転も後半に来る形です。全日本以降だと、四大陸のショート以外はすべて成功ジャンプでした。怪我さえなければこの安定感、と思ってよいのでしょうか。

 

チャンスがあってのオリンピックシーズンでしたが、結果的にはちょっと遠かったという形でした。ただ、オリンピックへ出場したのは同い年の河辺愛菜選手でした。まだ若かった、ということではなさそうです。チャレンジカップの出来を見ると、世界ジュニアに出ていたら面白かった、と思うのですがこれもめぐりあわせ。全日本ジュニアの優勝経験がありながら世界ジュニアの出場経験がないという珍しいことになっています。224.34というチャレンジカップのスコアは日本勢では今シーズン2番目です。ここにトリプルアクセルが加わればとんでもないことになっていきます。

樋口美穂子先生が山田先生のところを離れて独立しました。松生理乃選手はどうしたんでしょう? ついていったのか、山田先生のところに残るのか? 河辺愛菜選手が樋口先生のところへやってきました。同い年、力的にも近い関係。同じ場所で練習するのは微妙かもしれませんが、目の前に女子のトリプルアクセルがあるということも意味します。どっちなのかなあ、残ったのかなあ?

妖精、という言葉は三原舞依選手の形容でよく出てくるように感じますが、三原舞依選手には精霊になっていただいて、松生理乃選手に妖精という言葉を使いたい感じがしています。ピンクが似合うと思っていますが、青系衣装でも四大陸、チャレンジカップの月光は良かった。

一気に飛躍する可能性も感じる来シーズン。新たなプログラムもお待ちしております。

 

21-22 カレンチェン

1999年8月16日生まれ

シニア7シーズン目

シーズン獲得賞金:$2,000

世界ランキング:10位

シーズンランキング:14位

シーズンベストスコア 202.49 (34位) フィンランディア杯

ショートプログラムシーズンベスト 68.74 スケートカナダ

フリーシーズンベスト 134.99 フィンランディア杯

ショートプログラム楽曲:レクイエム

フリープログラム楽曲:バタフライラバーズ

スピンレベル4率 43/48=89.6%

ステップレベル4率 11/16=68.8%

スピンオールレベル4 3/7

スピンステップオールレベル4  3/7

ジャンプ要素回転不足率 20/80=25.0%

ジャンプ回転不足なし 0/7

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 0/7

 

○21-22シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
CS Autumn Classic 4 173.00 58.01 114.99
CS Finlandia Trophy 6 202.49 67.50 134.99
GP Skate Canada 10 183.41 68.74 114.67
GP Internationaux de France 5 194.00 64.67 129.33
NC US Championships 2 213.85 74.55 139.30
OG OlympicGames Team 5 65.20 65.20  
OG OlympicGames Team 4 131.52   131.52
OG Olympic Games 16 179.93 64.11 115.82
WC World Championships 8 192.51 66.16 126.35

昨シーズン世界選手権4位。この立場でカレンチェン選手は今シーズンに入りました。初戦は9月のオータムクラシック。あれ? 173.00? ショートもフリーも点が伸びず。大丈夫かなあ? というシーズンインでした

10月に入ってフィンランディア杯。ここで200点を出して、まあまあ、ちゃんと、力はある、ある、大丈夫、というのを感じさせてくれました。

グランプリ2戦は10位と5位。元々あまりフランプリシリーズに合わせてくる選手ではなく、過去の最高位も5位ですし、特に心配する必要はないのかもしれませんが、有力4人で3枠を争うアメリカ、大丈夫?? という部分もありました。

そして年が明け全米選手権。ブレイディテネル選手がケガで間に合わず欠場。さらにはアリサリュウ選手がショート終わってコロナで離脱。ちょっと拍子抜けな展開でしたが、しっかりと2位を確保し2度目のオリンピック出場権を得ました。

オリンピックは団体戦から登場。平昌の時には最優秀枠取り係として3枠確保に貢献しながら団体戦は他の二人が出てメダルをもらえなかったのですが、今回はショートフリー共に滑って表彰台に貢献。まだメダルは届いていないようですが、銀か、場合によっては金か、いずれにしてもオリンピックメダルを手に入れることになりました。出来が良かったかというとそうでもないですが、ショートで彼女が崩れていたらトータルで日本に負けていましたから、2位以内確保への貢献度は十分にあります。

ただ、団体戦で2本滑ったことで調整も難しかったでしょうか、個人戦は16位に終わりました。

シーズン最後の世界選手権。枠取りもあるのでさぼれません。ショートは8位スタートで第3グループに入ります。フリー、シーズン最後のバタフライラバーズ。今シーズン苦しんだループを構成から外すという手に出たのですが、もう一つ苦しんだフリップにも嫌われ思うようにスコアは伸ばせませんでした。結局トータル8位。なんだかんだで上位入賞、という見方もできますが、本人としてはもう少し上が望める試合でしたので残念ではありました。

 

○要素別スコア

Event Pl Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Autumn Classic 4 173.00 79.76 94.24 53.24 -9.96 23.50 12.98
Finlandia Trophy 6 202.49 99.24 104.25 55.53 1.99 26.45 15.27
Skate Canada 10 183.41 84.60 100.81 48.45 -4.07 25.69 14.53
Internationaux de France 5 194.00 95.33 99.67 59.70 -1.17 23.98 12.82
US Championships 2 213.85 109.69 104.16 63.05 5.41 25.60 15.63
OlympicGames Team 5 65.20 32.72 33.48 17.95 -2.44 12.08 5.13
OlympicGames Team 4 131.52 65.68 65.84 44.12 -0.55 12.65 9.46
Olympic Games 16 179.93 82.85 99.08 46.91 -2.14 24.19 13.89
World Championships 8 192.51 93.03 99.48 53.13 -0.15 25.23 14.82

トータルスコアでは全米選手権で213.85まで出ましたが、国際大会で200点に乗せたのは結局フィンランディア杯の1度だけでした。

技術点が100点に届いていない一方、PCSは100点に乗せることが多く届かなくても99点台。TESよりPCSの方で稼いでいる構図です。

ジャンプの基礎点は全米選手権で63点台まで出しました。他は50点台までです。ジャンプの加点はマイナスが多く苦しみました。

スピンはフィンランディア杯で26.45 これは今シーズン3位。上にいるのはワリエワ、シェルバコワ、2選手だけです。

ステップ系要素もフィンランディア杯の15.27が最高。米国選手ではトップのスコアでした。

 

○要素別偏差値

Event Pl Total J Base J GOE Spin Step PCS
Autumn Classic 4 53.62 52.09 35.66 58.85 58.23 59.38
Finlandia Trophy 6 61.63 53.80 55.73 68.03 67.34 66.06
Skate Canada 10 56.45 48.52 45.55 65.67 64.40 63.76
Internationaux de France 5 59.32 56.92 50.42 60.34 57.59 63.00
US Championships 2 64.71 59.42 61.47 65.39 68.78 66.00
Olympic Games 16 55.50 47.37 48.79 61.00 61.85 62.61
World Championships 8 58.92 52.01 52.13 64.23 65.55 62.88

偏差値で見ると200点に乗せたフィンランディア杯でトータルスコアが60に乗りました。

ジャンプの基礎点は偏差値50前後が多いです。ジャンプの加点も50前後、あまり今シーズンうまくいきませんでした。

スピンはフィンランディア杯で偏差値68.03 ステップでもフィンランディア杯で67.34 偏差値60台後半まで出していて高い評価です。

トータルスコアで伸び悩みましたが、スピンステップは今シーズンも世界の中で上位の優れた評価を受けています。

21-22シーズン カレンチェン要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャートで見ると左側に寄った形になります。ジャンプで今シーズン苦しんだというのがはっきり出ているレーダーチャートです。

 

●シーズン最高の基礎点構成

○オリンピック団体戦 ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T< 9.26   -0.84 8.42 -1.333
2 2A   3.30   0.85 4.15 2.667
3 CCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.444
4 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.000
5 3Loq q 5.39 x -2.45 2.94 -5.000
6 StSq4   3.90   1.23 5.13 3.222
7 LSp3   2.40   0.82 3.22 3.444
  TES   30.95   1.77 32.72  

ショートプログラムの最高基礎点は結局30.95でした。全米選手権では32.09あったのですが、国際大会で回転不足で基礎点が削られここまでしか出ていません。それでもトリプルアクセル無し組とは基礎点差が3点未満ですので、ショートは出来栄え勝負で太刀打ちできます。

 

○オリンピック団体戦 フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A+3T   7.50   0.90 8.40 2.111
2 3F!q ! 5.30   -1.14 4.16 -2.222
3 3Sq q 4.30   -0.43 3.87 -1.000
4 3Lo< 3.92   -1.12 2.80 -2.889
5 StSq4   3.90   1.06 4.96 2.667
6 FCCoSp4   3.50   0.90 4.40 2.556
7 3Lz+2T+2Lo   9.79 x 1.01 10.80 1.889
8 3Lz   6.49 x 0.93 7.42 1.556
9 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
10 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.000
11 3Loq+2T q 6.82 x -0.70 6.12 -1.444
12 LSp4   2.70   1.00 3.70 3.667
  TES   60.72   4.96 65.68  

フリーの最高基礎点は60.72 これもオリンピックの団体戦で出したスコアです。2回飛ぶジャンプはルッツとループ。今シーズンループに苦しみましたがフリップも苦手なのでループを2回入れざるを得ない、というのがあったようです。基礎点60点まであれば、やはりトリプルアクセル無し組となら出来栄え勝負も可能です。ただ、今シーズンは余りそちらの方も伸びなかったのが苦しいところでした。

ただ、それでも7試合中3試合でスピンステップオールレベル4 ジャンプ以外のところでは稼いでいました。

 

○平均GOE3.600以上

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Finlandia Trophy SP 7 LSp4   2.70   1.26 3.96 4.500
Finlandia Trophy FS 12 LSp4   2.70   1.22 3.92 4.500
Skate Canada SP 7 LSp4   2.70   1.20 3.90 4.444
US Championships SP 3 CCoSp4   3.50   1.50 5.00 4.222
US Championships SP 6 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.111
Skate Canada FS 12 LSp3   2.40   0.99 3.39 4.000
US Championships FS 10 ChSq1   3.00   1.93 4.93 3.889
World Championships SP 7 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.889
World Championships FS 12 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.889
Finlandia Trophy SP 3 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 3.875
Finlandia Trophy FS 9 CCoSp4   3.50   1.34 4.84 3.875
Skate Canada SP 3 CCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.778
Skate Canada FS 9 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.778
US Championships FS 12 LSp4   2.70   1.00 3.70 3.778
Autumn Classic SP 7 LSp3   2.40   0.91 3.31 3.714
Skate Canada FS 10 ChSq1   3.00   1.86 4.86 3.667
Internationaux de France FS 12 LSp4   2.70   1.00 3.70 3.667
OlympicGames Team FS 12 LSp4   2.70   1.00 3.70 3.667
Finlandia Trophy SP 4 StSq4   3.90   1.43 5.33 3.625
Finlandia Trophy FS 5 StSq4   3.90   1.37 5.27 3.625

平均GOE○○以上、というのは選手ごとに閾値は変えています。200点前後の選手の場合、この閾値は2点台半ばくらいなことが多いのですが、カレンチェン選手は3.600で切ってもこれだけの数の要素が拾われました。

上位にはスピンが並びます。スピンランク3位ですからこうなって当然と言えば当然ではあります。平均GOEが+4.000以上は全米選手権とフィンランディア杯スケートカナダ。オリンピックと世界選手権が入ってこないのは残念ではありました。

 

○3回転-3回転の要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Autumn Classic FS 2 3Lz+3T<< <<  7.20   -2.83 4.37 -4.714
Finlandia Trophy FS 2 3Lz+3Tq q 10.10   0.20 10.30 0.250
Skate Canada FS 2 3Lz+3T< 9.26   -1.01 8.25 -1.667
US Championships SP 1 3Lz+3Tq   10.10   -0.34 9.76 -0.556
OlympicGames Team SP 1 3Lz+3T< 9.26   -0.84 8.42 -1.333
Olympic Games SP 1 3Lz+3Tq q 10.10   -0.08 10.02 -0.333
World Championships SP 1 3Lz+3Tq q 10.10   0.08 10.18 0.111

3回転-3回転はシーズン前半はフリーに入れていましたが、後半はショートの冒頭の要素となりました。すっきりきれいな成功はありませんが、転倒まではいかず、回転不足だけどqで耐えることが多い、というシーズン後半でした。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Autumn Classic FS 7 2A+1Eu+3S< 7.96 x -0.76 7.20 -2.143
Finlandia Trophy FS 7 2A+1Eu+3S   8.91 x 1.51 10.42 3.500
Skate Canada FS 7 2A<+1Eu+3S< 7.24 x -1.03 6.21 -3.000
Internationaux de France FS 7 3Lzq+1Eu+3S< 10.82 x -2.02 8.80 -3.556
US Championships FS 7 3Lz+2T+2Lo   9.79 x 1.77 11.56 3.000
OlympicGames Team FS 7 3Lz+2T+2Lo   9.79 x 1.01 10.80 1.889
Olympic Games FS 7 3Lz+2T+2Lo   9.79 x 1.01 10.80 1.556
World Championships FS 7 3Lzq+2T+2Lo q 9.79 x -0.67 9.12 -1.111

3連続ジャンプは、シーズン前半はダブルアクセル起点の3つ目サルコウ。子のサルコウで回転不足が目立ったためか、シーズン後半はルッツ起点で2回転を2つ付ける形にかえています。この変更は成功だったようです。世界選手権では軽いGOEマイナスがつきましたが、基礎点を削られることはなく、計算できる得点源となりました。

 

 

回転不足が課題の選手では元々ありましたが、今シーズンはそれが大事な場面で目立ってしまったように感じます。2大会続けてオリンピックの枠取りに貢献しました。前回大会はその報酬を受け取れなかった感じですが、今回は団体メダルという報酬を得ました。スピンステップが魅力の選手、それがあるのでジャンプで崩れても200点前後までもってきてそれなりの順位に残ってきます。

シーズン前半はたいていスコアが伸びてこずに目立たない立ち位置になるのですが、来シーズンは出来ればグランプリシリーズからの活躍を期待したいです。

 

21-22 河辺愛菜

2004年10月31日生まれ

シニア2シーズン目

シーズン獲得賞金:$13,000

世界ランキング:47位

シーズンランキング:38位

シーズンベストスコア 205.44 (30位) NHK杯

ショートプログラムシーズンベスト 73.88 NHK杯

フリーシーズンベスト 133.22 スケートカナダ

ショートプログラム楽曲:四季より 冬

フリープログラム楽曲:ミラク

スピンレベル4率 43/63=68.3% (国際大会:16/24=66.7%)

ステップレベル4率 7/21=33.3%(国際大会:3/8=37.5%)

スピンオールレベル4 1/9(国際大会:0/4)

スピンステップオールレベル4  0/9(国際大会:0/4)

ジャンプ要素回転不足率 7/107=6.54%(国際大会:3/40=7.50%)

ジャンプ回転不足なし 5/9(国際大会:2/4)

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 0/9(国際大会0/4)

 

○21-22シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
DL みなとアクルス 3 168.94 62.77 106.17
DL 木下トロフィー争奪 2 171.12 53.29 117.83
DL げんさんサマーカップ 7 184.06 64.73 119.33
Others Japan Open 3 134.91   134.91
RT 近畿選手権 2 184.14 65.16 118.98
GP Skate Canada 9 186.52 53.30 133.22
GP NHK Trophy 2 205.44 73.88 131.56
DL 愛知県代表選考会 1 64.24 64.24  
DL 京都府総体 2 125.23   125.23
NC 全日本選手権 3 209.65 74.27 135.38
OG Olympic Games 23 166.73 62.69 104.04
WC World Championships 15 182.44 63.68 118.76

シニア2シーズン目、昨シーズンはコロナで大会が壊滅していたことを考えると、実質的に国際的にはシニアデビューなシーズンになっていた今シーズン。非常に浮き沈みの大きなことになりました。

シーズン序盤は国内ローカルレベルの選手のような大会の回り方をしています。7月8月ですでに3試合。徐々にスコアを上げ、げんさんサマーカップでは184.06の7位。代表を争うトップ選手とは少し差があるけど、将来有望だから頑張ろうね、みたいな位置でした。

10月に入りジャパンオープン。国内選手のみとなったこの試合に、若手の有望株みたいな位置づけで出場してトリプルアクセルを決めて130点台のスコアを出し3位。このあたりで、そうだ、トリプルアクセル決めれば一発あるんだ、と存在感を出し始めました。

いろいろなめぐりあわせで、本来はチャレンジャーシリーズ巡りな位置だったはずが、グランプリ2戦の出場権が回ってきます。スケートカナダ、グランプリデビュー戦。ショートは散々の出来で洗礼を浴びますが、失うものが何もありませんなフリーでqながらもトリプルアクセルを着氷、スピンステップオールレベル4で133.22のスコア。ISU公認大会でトリプルアクセル認定。総合順位は9位に終わってランキングポイントも得られませんでしたが、それでもやはり、一発あるなあ、という存在感を見せています。

そしてNHK杯。本来はオーストリア杯に翌週出るはずが、紀平選手のケガ欠場で回ってきた代役舞台。ここでショートからトリプルアクセルを決めて73.88 失礼ながらまさかの2位スタート。フリーはトリプルアクセルが入らず転倒からのスタートとなりましたが、以降の要素は無難にまとめ130点台には乗せてトータル205.44 ユヨン、アリサリュウ、海外の同世代有力選手を打ち負かし、グランプリ2位表彰台となりました。

流れ的には4年前の坂本花織選手と似ていました。シーズン開幕前はそれほど目立たない立場、シニアの国際大会デビューシーズンの高校2年生。グランプリ初戦でもそれほど目立つ順位でもないところから、グランプリ2戦目で人生初の200点に乗せ、日本のトップ選手に続いて2位表彰台。ここまで来てもまだ全日本の表彰台候補というよりはその少し下という位置づけ。

そんな流れで全日本を迎えました。世界ランクはNHK杯のポイントしかないので話にならず、シーズンベストは5番目。まだまだダークホース的位置づけでしたが、ショートからトリプルアクセルを着氷、全要素プラス評価の74.27で3位、表彰台圏内に付けます。フリーは先に滑った宮原知子三原舞依、有力2選手が微妙なミスが積み重なってスコアを力ほどは伸ばしきれず、132.60を出せばその時点で首位に立ち表彰台が確定する、という状況で自分の滑走順を迎えます。この時点のシーズンベストは133.22 ジャパンオープンでの134.91というのもある一方、NHK杯の131.56では届かない。そんな微妙なターゲットスコア。濱田先生のいってらっしゃい、に送り出されてのフリー、ミラクル。冒頭、トリプルアクセルを平均GOE2.444の高評価で成功させますが、そこで逆に何かが見えてしまって固くなったのか、2つ目の要素の3回転-3回転が決まらずセカンドが2回転に、次のループもなんとか着氷という形のジャンプになり、4つ目のルッツからのコンビネーションはステップアウトしてセカンドが入らず。パーソナルベストレベルが必要な中で苦しくなるのですが、ここからが素晴らしい、ステップレベル4をしっかり確保し、2A-3T-2Tの3連続でも加点を取る。その次フリップ、通常は単独なところ、きれいな着氷ではないものの力でセカンドでトリプルトーループを付け見事に着氷、結果的に1.1倍にセカンド3Tが入ったことで基礎点が上がります。ここまで入ってようやく際どい勝負。コレオをしっかり滑り最後のスピンもレベルが取れないと危ないという中でしっかりレベル4。天を仰ぐフィニッシュ。どうだろう? パーフェクトではない、大きなミスもない、できることはやった、そんな表情で何度かうなづきました。結果、135.38でこの時点で首位に立ちます。決定打は、フリップの後に付けたリカバリーのトリプルトーループでした。

表彰台に乗って初めて選考の対象としてまともに考えてもらえる、というくらいの位置にいましたが、代表発表で名前を呼ばれオリンピック代表に選ばれます。全日本だけの本当の一発ならおそらく選ばれてなかったのではないかと思いますが、NHK杯2位でシーズンベスト5位までのスコアは持っていた、というのが結果的に大きかったのではないかと思われます。

 

ただ、河辺選手の今シーズンのハイライトは、ある意味ここで終わってしまいました。オリンピックはショートフリーとトリプルアクセルは決まらず、ほかのジャンプも精彩を欠いて23位。世界選手権も15位に終わります。一発当たれば大きいけれど、当たらないと世界の舞台では厳しかった、というシーズン後半になりました。

 

○要素別スコア

Event Pl Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
みなとアクルス 3 168.94 85.53 85.41 58.30 -5.81 21.31 11.73
木下トロフィー争奪 2 171.12 88.02 84.10 55.57 1.61 19.04 11.80
げんさんサマーカップ 7 184.06 95.61 89.45 65.52 -1.80 20.10 11.79
Japan Open 3 134.91 74.79 60.12 50.44 4.62 10.67 9.06
近畿選手権 2 184.14 99.41 85.73 69.75 -4.08 20.66 13.08
Skate Canada 9 186.52 96.32 92.20 66.90 -3.31 21.92 10.81
NHK Trophy 2 205.44 109.51 96.93 69.67 6.28 21.07 12.49
愛知県代表選考会 1 64.24 35.29 28.95 19.23 0.49 10.89 4.68
京都府総体 2 125.23 67.29 58.94 50.44 -0.77 9.38 8.24
全日本選手権 3 209.65 114.31 95.34 74.79 3.99 21.77 13.76
Olympic Games 23 166.73 81.53 90.20 60.80 -11.80 20.55 11.98
World Championships 15 182.44 91.17 91.27 68.07 -11.14 20.57 13.67

シーズン序盤は、ショートフリー足しても技術点は80点台で国内の中堅選手並みです。それが徐々に上がっていってNHK杯では109.51まで出ます。全日本では114.31 これくらい出ると世界で戦えます。

PCSは100点に乗らず、NHK杯の96.93が最高でした。5項目平均8点ほどです。7点台前半が標準だったところからだいぶ伸びてきました。

ジャンプの基礎点はNHK杯の69.67が最高、全日本では74.79まで出ました。74.79は国内参考記録ですが、国際大会でこれより上の基礎点構成を出した日本人選手は今シーズンいないという高い基礎点です。

ジャンプの加点はNHK杯の+6.28が最高。全日本はミスもあったので+3.99とそれほど高いわけでもありませんでした。オリンピック、世界選手権の二桁マイナスは残念です。

スピンは20~21点台、ステップは11から12点台でしたが、世界選手権で13.67と13点台半ばまで出してきました。シーズン後半苦しんでいましたが、何も成長がなかったということでもなく、ステップは世界選手権が一番の出来でした。

 

○要素別偏差値

Event Pl Total J Base J GOE Spin Step PCS
みなとアクルス 3 52.52 55.87 42.63 52.03 53.25 53.50
木下トロフィー争奪 2 53.11 53.83 55.09 44.96 53.53 52.62
げんさんサマーカップ 7 56.62 61.26 49.36 48.26 53.49 56.19
近畿選手権 2 56.65 64.42 45.53 50.00 58.63 53.71
Skate Canada 9 57.29 62.29 46.83 53.93 49.59 58.02
NHK Trophy 2 62.43 64.36 62.93 51.28 56.28 61.18
全日本選手権 3 63.57 68.18 59.08 53.46 61.33 60.12
Olympic Games 23 51.92 57.74 32.57 49.66 54.25 56.69
World Championships 15 56.18 63.16 33.68 49.72 60.97 57.40

偏差値で見ると、シーズン序盤の国内ローカルレベル時代は50をちょっと超えたあたりという水準です。それがNHK杯では60台に乗って、世界で戦う選手になっています。

ジャンプの基礎点は60台が標準。全日本レベルなら60台後半まで出ます。

ジャンプの加点はばらつきが大きく、NHK杯で60台に乗せてトップ選手の姿を見せていますが、オリンピック、世界選手権では大きく崩れて30台前半、失礼ながら落第レベルになってしまっています。

スピンは50前後、普通の選手というか、本人比で苦手な要素なのだろうと思います。

ステップは世界選手権で偏差値60に乗りました。初めてステップレベル4をショートフリーで揃えた試合。今シーズン成長した部分なのだろうと思われます。

 

21-22シーズン 河辺愛菜要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャートを見ると、ジャンプGOEのばらつきの大きさが目立ちます。ジャンプでGOEをしっかり稼げた時は下がやや凹む形です。それにしてもジャンプのGOEは極端な形で出ました。

 

●シーズン最高の基礎点構成

NHK杯 ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A   8.00   2.06 10.06 2.556
2 3Lz+3T   10.10   1.35 11.45 2.333
3 FSSp4   3.00   0.56 3.56 1.778
4 3F! ! 5.83 X 0.15 5.98 0.222
5 StSq3   3.30   0.85 4.15 2.444
6 LSp4   2.70   0.66 3.36 2.333
7 CCoSp4   3.50   0.65 4.15 1.778
  TES   36.43   6.28 42.71  

ショートプログラムの最高基礎点はNHK杯で36.43まで出ました。国内大会なので外しましたが全日本では37.03まで出ています。このNHK杯の構成でステップレベル4だと37.03です。トリプルアクセル投入はさすがに強い。36.43は今シーズン7位の高い基礎点です。37.03は5位に相当します。これをノーミスで滑ればショートは当然上位へ顔を出せます。

 

スケートカナダ フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Aq q 8.00   -0.69 7.31 -0.778
2 3Lz+3Tq q 10.10   -0.51 9.59 -0.778
3 LSp4   2.70   0.66 3.36 2.444
4 3Lo   4.90   1.26 6.16 2.333
5 3Lz+2T   7.20   -0.25 6.95 -0.333
6 StSq2   2.60   0.59 3.19 2.333
7 2A+3T+2T   9.68 x 0.72 10.40 1.778
8 FSSp4   3.00   0.43 3.43 1.333
9 3Fq q 5.83 x -0.45 5.38 -0.889
10 3S   4.73 x 0.98 5.71 2.222
11 ChSq1   3.00   1.43 4.43 2.778
12 CCoSp4   3.50   0.90 4.40 2.556
  TES   65.24   5.07 70.31  

フリーはスケートカナダで65.24まで出ました。全日本では66.96まであります。このスケートカナダの構成でステップレベル4なら66.54まで出すことができ、ジャパンオープンで実際にそこまで基礎点を出しました。そこに、セカンド3回転のコンビネーションをリカバリーで後半に入れたことで全日本では66.96まで基礎点が上がりました。65.24だと日本勢で今シーズン3番目、66.54や66.96なら2番目相当になります。この領域はトリプルアクセルが構成に入っていないと出ません。トリプルアクセルがあっても、ほかのジャンプで基礎点を削られるとここまで出ないのですが、そういったことなく60点台後半の基礎点構成を何度も今シーズン出すことが出来ていました。

 

○平均GOE2.400以上(国際大会+全日本選手権より)

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
World Championships SP 7 CCoSp3   3.00   0.90 3.90 3.000
NHK Trophy FS 11 ChSq1   3.00   1.43 4.43 2.889
Skate Canada FS 11 ChSq1   3.00   1.43 4.43 2.778
Olympic Games FS 3 LSp4   2.70   0.77 3.47 2.778
Skate Canada SP 7 CCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.667
World Championships SP 1 2A   3.30   0.85 4.15 2.667
Skate Canada FS 12 CCoSp4   3.50   0.90 4.40 2.556
NHK Trophy SP 1 3A   8.00   2.06 10.06 2.556
Olympic Games SP 6 LSp4   2.70   0.69 3.39 2.556
World Championships SP 5 StSq4   3.90   0.95 4.85 2.556
World Championships FS 12 CCoSp3   3.00   0.81 3.81 2.556
Skate Canada FS 3 LSp4   2.70   0.66 3.36 2.444
NHK Trophy SP 5 StSq3   3.30   0.85 4.15 2.444
NHK Trophy FS 2 3Lz+3T   10.10   1.52 11.62 2.444
全日本選手権 SP 5 StSq4   3.90   1.00 4.90 2.444
全日本選手権 SP 6 LSp4   2.70   0.66 3.36 2.444
全日本選手権 FS 1 3A   8.00   1.94 9.94 2.444
全日本選手権 FS 11 ChSq1   3.00   1.29 4.29 2.444
World Championships FS 3 LSp4   2.70   0.66 3.36 2.444

河辺愛菜選手の今シーズンの最高評価要素は世界選手権のショート最後のスピンでしたがレベルが3でした。NHK杯スケートカナダのコレオも高評価。いいフリーの時のコレオは高評価を受けるようです。ジャンプからは世界選手権のダブルアクセルが入っています。トリプルアクセル持ちは単独ダブルアクセル要素がなかなかないのですが、自重して入れたダブルアクセルはさすがに高評価だったという形です。その次にトリプルアクセルNHK杯のショートでとんだものが高評価として入ってきています。

 

トリプルアクセル

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
みなとアクルス FS 1 3A<< <<  3.30   -1.65 1.65 -5.000
Japan Open FS 1 3A   8.00   0.20 8.20 0.167
近畿選手権 SP 1 3A   8.00   1.33 9.33 1.600
近畿選手権 FS 1 3Aq q 8.00   -4.00 4.00 -4.600
Skate Canada FS 1 3Aq q 8.00   -0.69 7.31 -0.778
NHK Trophy SP 1 3A   8.00   2.06 10.06 2.556
京都府総体 FS 1 3Aq q 8.00   -4.00 4.00 -5.000
全日本選手権 SP 1 3A   8.00   0.91 8.91 1.111
全日本選手権 FS 1 3A   8.00   1.94 9.94 2.444
Olympic Games SP 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000
Olympic Games FS 1 3A<< <<  3.30   -1.65 1.65 -4.889
World Championships FS 1 3A< 6.40   -3.02 3.38 -4.556

今シーズン、国内ローカル大会含めトリプルアクセルを多数跳びました。12回飛んでダウングレード2、アンダーローテーション2、あとの8回はqはありますが基礎点は満額入りました。基礎点満額の8回のジャンプのうち、GOEがわずかなマイナスまででしっかり着氷したのは6回。成功ジャンプは6/12 とみなせて5割の成功率でした。ショートフリー2本そろったのが全日本。勝負所にしっかり合わせた形でした。

 

○3回転-3回転を含む要素(国際大会+全日本選手権より)

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Skate Canada FS 2 3Lz+3Tq q 10.10   -0.51 9.59 -0.778
NHK Trophy SP 2 3Lz+3T   10.10   1.35 11.45 2.333
NHK Trophy FS 2 3Lz+3T   10.10   1.52 11.62 2.444
全日本選手権 SP 2 3Lz+3T   10.10   1.35 11.45 2.333
全日本選手権 FS 9 3F+3T   10.45 X -0.23 10.22 -0.333
Olympic Games SP 2 3Lz+3T   10.10   1.18 11.28 2.000
World Championships SP 2 3Lz!+3Tq ! 10.10   -1.18 8.92 -2.000
World Championships FS 2 3Lzq+3T q 10.10   -0.17 9.93 -0.222

3回転-3回転は河辺選手の場合、トリプルアクセルの直後に来るという負荷のかかるジャンプです。これが成功率高く、軽いGOEマイナスがあるくらいで、基礎点削られることもなく、転倒もなく、しっかり成功させています。強いて言えば全日本のフリーは本来入るところの2番目の要素が3-2になり、リカバリーで後半にフリップに付けた、というのはありますが、それもしっかり着氷しました。

3回転3回転を回転不足もせずしっかり飛べる、というのは大きな強みです。

 

○3連続ジャンプ(国際大会+全日本選手権より)

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Skate Canada FS 7 2A+3T+2T   9.68 x 0.72 10.40 1.778
NHK Trophy FS 7 2A+3T+2T   9.68 X 0.72 10.40 1.667
全日本選手権 FS 7 2A+3T+2T   9.68 X 0.54 10.22 1.333
Olympic Games FS 7 2A+3Tq+2T q 9.68 x -1.02 8.66 -2.556
World Championships FS 7 2A+3Tq+2Tq q 9.68 x -1.44 8.24 -3.444

3連続はダブルアクセル起点のもの。シーズン中盤まではうまくいっていたのですが、オリンピックと世界選手権ではうまくいきませんでした。この2試合は3連続がうまくいかなかったというよりは、それまでの流れが悪すぎてそれに飲まれたという印象でした。

 

○回転不足があった要素(国際大会+全日本選手権より)

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Olympic Games SP 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000
Olympic Games FS 1 3A<< <<  3.30   -1.65 1.65 -4.889
World Championships FS 1 3A< 6.40   -3.02 3.38 -4.556

今シーズン主要大会で回転不足があったのはトリプルアクセルのみです。オリンピックや世界選手権、本人比で見てもかなり悪い出来だったのは確かですが、それでもトリプルアクセル以外のジャンプはすべて回転は足りています。ですから出来が良ければ当然回転不足の心配などしなくていいレベルなわけで、いい滑りをしたように見えるのだけどレビューの積み重ねでスコアが下がる、というような心配がほとんどない選手です。

 

今シーズン、一気にスターダムに駆け上がりオリンピック代表へ。シンデレラガールともされましたが、オリンピック、世界選手権では厳しい結果となりました。天国と地獄を見た形。いろいろと叩かれる形にもなってしまいましたが、NHK杯で表彰台に上がり、全日本でも表彰台に上って、選考レースでしっかり結果を出したのは事実です。河辺選手の立ち位置ではオリンピックに照準を合わせる、のではなくて、選考会に照準を合わせる、という形になるのは当然で、シーズン後半失速してしまったのは仕方ないところな気がします。

フリーのミラクル、冒頭、不敵な表情を浮かべるところから始まってトリプルアクセルを下りるところまで、一連の流れが決まると素晴らしいものがあります。演技内容以前にそういう絵になる部分がある選手だと思いますので、これくらいの挫折でつぶされずに活躍を続けてほしいものです。

今シーズン、元々グランプリの枠はなかった選手。来シーズンは本人の今シーズンの実績と、世界情勢の関係から、おそらく最初から枠が回って来るかと思います。それだけでもある種今シーズンは飛躍した、と言えるのだと思います。17歳でオリンピックに出ました。17歳でオリンピックに出られず、21歳でオリンピックにたどり着いた選手もいます。4年後、またチャンスはある。今度は、結果まで出すチャンスもある。それまでに力を付けていく姿を見たいと思います。

 

21-22 アナスタシアグバノワ

2002年12月2日生まれ

シニア4シーズン目

シーズン獲得賞金:$8,000

世界ランキング:35位

シーズンランキング:17位

シーズンベストスコア 203.91 (32位) フィンランディア杯

ショートプログラムシーズンベスト 69.50 フィンランディア杯

フリーシーズンベスト 135.58 オリンピック

ショートプログラム楽曲:Une vie d'amour

フリープログラム楽曲:王冠を賭けた恋より

スピンレベル4率 29/33=87.9%

ステップレベル4率 5/11=45.5%

スピンオールレベル4 2/5

スピンステップオールレベル4  1/5

ジャンプ要素回転不足率 0/53=0.00%

ジャンプ回転不足なし 5/5

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 1/5

 

○21-22シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
CS Finlandia Trophy 5 203.91 69.50 134.41
CS Golden Spin 1 184.29 65.68 118.61
EC Europe Championships 7 188.17 67.02 121.15
OG OlympicGames Team 4 67.56 67.56  
OG Olympic Games 11 200.98 65.40 135.58
WC World Championships 6 196.61 62.59 134.02

グバノワ選手は久しぶりの国際舞台登場でした。ジュニア時代はロシア代表として活躍するもシニアに上がってグランプリシリーズの枠をもらえず姿を消します。国籍をジョージアに移した今シーズン。国際舞台にしばらく出ていなかったことで逆に所属変更してもスムーズに試合に出る権利を得ました。3年ぶりの国際大会はフィンランディア杯。203.91といきなり200点超え。これはルール変更前も含めてもパーソナルベストとなるスコアです。

久しぶりの国際舞台復帰、当然グランプリの出場権はありません。2戦目もチャレンジャーシリーズのゴールデンスピン。スコア的には低調ながらチャレンジャーシリーズ初優勝を果たします。

ジョージアは前年の世界選手権でオリンピックの出場枠を獲得済み。その出場枠を移籍シーズンにグバノワ選手は確保してヨーロッパ選手権、オリンピックと出場していきます。

ヨーロッパ選手権、ショートでは全要素全ジャッジプラス評価の6位で折り返しフリー最終グループ入り。しかしフリーではコンビネーションジャンプが決まらずにスコアが伸びず7位に終わりました。

オリンピックでは団体戦から出場。だいぶロシア感の強い団体メンバーでしたが、グバノワ選手は4位。もう一歩というところでフリー進出は逃しました。

個人戦のショートは団体戦ほどの出来にはならず10位で折り返すと、フリーはほぼミスのない演技でトータル200点まで乗せて11位となりました。

シーズン最後の世界選手権まで休まず登場。久しぶりにシーズン通して疲れもあり調整難しかったでしょうかショート冒頭のジャンプで転倒。シーズンワーストのスコアで14位スタートとなります。フリーは第2グループから登場、逆に思い切り行けたでしょうか、全要素プラス評価でフリーだけなら5位、総合6位と、グランプリのシードが取れる位置まで入って入賞となりました。これでジョージアの来シーズンの出場枠は2つ。移籍初年度に前シーズンに枠を取ってきた選手からその枠を奪った形になっていましたが、枠を増やし、自分以外の分も確保して返す形でシーズンを終えました。

 

○要素別スコア

Event Pl Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Finlandia Trophy 5 203.91 109.68 95.23 64.66 8.45 23.83 12.74
Golden Spin 1 184.29 93.49 90.80 55.64 5.69 20.47 11.69
Europe Championships 7 188.17 97.78 91.39 60.48 2.41 21.98 12.91
OlympicGames Team 4 67.56 36.90 30.66 19.29 2.79 11.51 3.31
Olympic Games 11 200.98 104.49 96.49 64.66 4.08 22.44 13.31
World Championships 6 196.61 104.72 92.89 65.08 3.78 22.45 13.41

トータルスコアは2回200点に乗せてきました。技術点は悪い時は100点を欠きますが、良い時は100点台。フィンランディア杯は110点に近いところまで出しています。PCSは90点台後半まで。5項目平均8点あたりまでオリンピックでは持ってきました。

ジャンプの基礎点は60点台中盤です。加点はフィンランディア杯の8.45が最高。他は、加点をそれほど伸ばせませんでした。

スピンは23点台が最高、ステップは13点台が最高。上位とは少し差があります。

 

○要素別偏差値

Event Pl Total J Base J GOE Spin Step PCS
Finlandia Trophy 5 62.01 60.62 66.57 59.88 57.27 60.04
Golden Spin 1 56.69 53.88 61.94 49.41 53.09 57.09
Europe Championships 7 57.74 57.50 56.43 54.11 57.95 57.48
Olympic Games 11 61.22 60.62 59.24 55.55 59.54 60.88
World Championships 6 60.03 60.93 58.73 55.58 59.94 58.48

トータルスコアは偏差値60台前半あります。ジャンプの基礎点もミスなく滑ると60に乗ってきます。加点はシーズン前半の方がよく偏差値60台、フィンランディア杯では60台後半まで出ています。

スピンは偏差値50台、チャンピオンシップ3試合では50台中盤にとどまりました。

ステップは偏差値60に乗りそうで乗らないところ。

PCSはいい時は偏差値60に乗ってきます。

 

21-22シーズン グバノワ要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャートはこんな形で。ジャンプの加点が大崩れして凹む試合が出る選手が結構いるのですが、グバノワ選手はそういったことがなく凹みがありません。フィンランディア杯で出来がよく、ジャンプの加点が伸びていますが、それ以外は割と全体的にバランスよく、穴がない選手のように見えます。

 

●シーズン最高の基礎点構成

○世界選手権 ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F   5.30   -2.65 2.65 -5.000
2 2A   3.30   0.52 3.82 1.444
3 FCSp4   3.20   0.73 3.93 2.333
4 3Lz+3T   11.11 x 0.17 11.28 0.333
5 CCoSp4   3.50   0.65 4.15 1.778
6 StSq4   3.90   0.95 4.85 2.556
7 LSp4   2.70   0.42 3.12 1.556
  TES   33.01   0.79 33.80  

ショートプログラムの基礎点は33.01があります。ルッツフリップトーループでコンビネーションが1.1倍、スピンステップオールレベル4で33.01です。トリプルアクセル無しでこれより上へ行くには、あとはセカンドループ投入しかなく、今シーズンそういった選手はいませんでした。つまり、トリプルアクセル無しの最高基礎点となっています。

 

○世界選手権 フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.333
2 2A   3.30   0.57 3.87 1.778
3 3S   4.30   1.11 5.41 2.444
4 3Lo   4.90   0.91 5.81 1.889
5 ChSq1   3.00   0.71 3.71 1.222
6 FCSp4   3.20   0.73 3.93 2.333
7 3F+3T   10.45 x 0.83 11.28 1.444
8 3F+2T+2T   8.69 x 0.61 9.30 1.111
9 2A   3.63 x 0.28 3.91 0.889
10 CCoSp4   3.50   0.70 4.20 2.000
11 StSq4   3.90   0.95 4.85 2.444
12 LSp4   2.70   0.42 3.12 1.667
  TES   61.67   9.25 70.92  

フリーの最高基礎点は61.67でした。1.1倍のところにセカンド3回転を入れたり点を稼ぐ構成になっているのですが、2回飛ぶジャンプがフリップとトーループ。ルッツが1回というあたりで少し基礎点が低くなります。また、スピンでレイバックスピンが入っていることでスピンの基礎点合計が9.40になっています。スピンで最高の基礎点は10.20まであるので、0.80マックスから低くなる形です。そのあたりの細かい積み上げで基礎点を上げることは出来ますが、トリプルアクセルが無い者同士の闘いとなる場合は、あとはトータルの出来栄え勝負です、という形で十分戦えるだけの基礎点が確保されていると言えます。

 

○平均GOE2.500以上

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Finlandia Trophy SP 3 FCSp4   3.20   1.07 4.27 3.250
Finlandia Trophy SP 6 StSq4   3.90   1.24 5.14 3.125
Finlandia Trophy FS 6 FCSp4   3.20   1.01 4.21 3.125
Olympic Games FS 11 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.000
Olympic Games SP 6 StSq3   3.30   0.94 4.24 2.889
Golden Spin SP 1 3F+3T   9.50   1.48 10.98 2.857
Golden Spin SP 3 FCSp4   3.20   0.96 4.16 2.857
Europe Championships FS 6 FCSp4   3.20   0.91 4.11 2.778
Finlandia Trophy FS 11 StSq3   3.30   0.88 4.18 2.750
Finlandia Trophy FS 12 LSp4   2.70   0.72 3.42 2.750
Europe Championships SP 6 StSq3   3.30   0.90 4.20 2.667
OlympicGames Team SP 6 StSq2   2.60   0.71 3.31 2.667
Finlandia Trophy SP 1 3F+3T   9.50   1.41 10.91 2.625
Finlandia Trophy FS 2 2A   3.30   0.88 4.18 2.625
Europe Championships SP 1 3F+3T   9.50   1.36 10.86 2.556
Europe Championships SP 7 LSp4   2.70   0.69 3.39 2.556
OlympicGames Team SP 3 FCSp4   3.20   0.82 4.02 2.556
World Championships SP 6 StSq4   3.90   0.95 4.85 2.556
Finlandia Trophy SP 4 3Lz   6.49 x 1.48 7.97 2.500
Finlandia Trophy SP 5 CCoSp4   3.50   0.82 4.32 2.500
Finlandia Trophy SP 7 LSp4   2.70   0.59 3.29 2.500

グバノワ選手は今シーズン平均GOEが+3.000を超えたのはフィンランディア杯の3つのスピンのみでした。GOEの稼ぐ幅はトップ層と比べるとやや差があります。

評価が高いのスピンが多いですが、オリンピックのステップやゴールデンスピンのコンビネーションジャンプのように他の要素も入ってきます。

 

○3回転-3回転の要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Finlandia Trophy SP 1 3F+3T   9.50   1.41 10.91 2.625
Finlandia Trophy FS 1 3Lz+3Tq q 10.10   -0.30 9.80 -0.500
Finlandia Trophy FS 7 3F+3T   10.45 x 0.97 11.42 1.875
Golden Spin SP 1 3F+3T   9.50   1.48 10.98 2.857
Golden Spin FS 1 3Lz+3T   10.10   1.30 11.40 2.286
Europe Championships SP 1 3F+3T   9.50   1.36 10.86 2.556
Europe Championships FS 1 3Lz+3T   10.10   -2.95 7.15 -4.889
OlympicGames Team SP 1 3F+3T   9.50   1.21 10.71 2.333
Olympic Games SP 1 3Fq+3T q 9.50   -0.15 9.35 -0.222
Olympic Games FS 1 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.444
Olympic Games FS 7 3Fq+3T q 10.45 x -0.23 10.22 -0.444
World Championships SP 4 3Lz+3T   11.11 x 0.17 11.28 0.333
World Championships FS 1 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.333
World Championships FS 7 3F+3T   10.45 x 0.83 11.28 1.444

3回転-3回転はフリップからの方が得意そうですが、最後の世界選手権ではショートで1.1倍にルッツからの3-3を入れるなど、シーズンを通して徐々に完成度を上げて行ったようです。

ヨーロッパ選手権のフリーでは転倒しましたが他は転倒無し。回転不足による基礎点減点もありません。高い安定感がありました

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Finlandia Trophy FS 8 3F+2T+2T   8.69 x 0.62 9.31 1.125
Europe Championships FS 8 3F+2T+2T   8.69 x 0.38 9.07 0.778
Olympic Games FS 8 3F+2T+2T   8.69 x 0.38 9.07 0.667
World Championships FS 8 3F+2T+2T   8.69 x 0.61 9.30 1.111

3連続ジャンプはフリップ起点で2回転トーループを2つ。3つ目をループにする選手が多いですが、ほかのコンビネーションを2つとも3回転付けているので、ダブルトーループが2つ余っており問題なく使えます。ループにした方が基礎点は0.2上がりますが、平均GOEが0.4下がると基礎点の増加分が相殺されてしまうので、変なリスクは冒す必要がない、ともいえるのでしょうか。

ゴールデンスピンでは3-3が1つ3-2になったことで、3連続の3つ目を付けるのをやめていますが、あとの4試合はしっかり決めています。

 

○何らかのマークがついた要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Finlandia Trophy FS 1 3Lz+3Tq q 10.10   -0.30 9.80 -0.500
Golden Spin FS 7 3Fq+2T q 7.26 x -0.85 6.41 -1.571
Olympic Games SP 1 3Fq+3T q 9.50   -0.15 9.35 -0.222
Olympic Games SP 4 3Lzq q 6.49 x -1.10 5.39 -1.889
Olympic Games FS 7 3Fq+3T q 10.45 x -0.23 10.22 -0.444

今シーズン5試合、オリンピックでは団体戦のショートまであって合計53回のジャンプ要素において、qマークは5つほど付きましたが、回転不足で基礎点減点あるいはダウングレードという要素が一つもありませんでした。さらに、フリップ、ルッツのエッジエラー、!もありません。ジャンプのクリーンさは際立っていました。

 

 

国籍移って1シーズン目というか、国際舞台復帰1シーズン目というか。ジュニアの有力選手が18歳になって久しぶりに姿を現しました。ロシア時代は国際大会での200点突破経験はありませんでしたが、復帰してきて初戦から200点を出しています。かつてはロシアジュニアでトップを争ったザギトワさんとスケート年齢では1つ下ですが、日本的学齢で言えば同学年に相当する年齢。若くして栄華を極め引退していくのと、息長く現役を続けていくのはどちらが幸せなのでしょう。そして、運命のめぐりあわせ、国籍変わったことで特に制限なく試合に出ることが来シーズン以降もできることになります。

ロシアの若手が国籍替えたら息長く滑ることができるのか? 少し前から興味ある事柄だったのですが、グバノワ選手の今後でそれも見えてくるのだろうと思います。ただ、練習拠点はロシア国内なままだったはずなのですが・・・、その辺はどうなんでしょうかね。

 

21-22 三原舞依

1999年8月22日生まれ

シニア6シーズン目

シーズン獲得賞金:$27,000

世界ランキング:21位

シーズンランキング:8位

シーズンベストスコア 218.03 (12位) 四大陸選手権

ショートプログラムシーズンベスト 72.62 四大陸選手権

フリーシーズンベスト 145.41 四大陸選手権

ショートプログラム楽曲:レミゼラブルより

フリープログラム楽曲:フェアリーオブザフォレスト

スピンレベル4率 40/42=95.2% (国際大会:23/24=95.8%)

ステップレベル4率 9/14=64.3%(国際大会:6/8=75.0%)

スピンオールレベル4 4/6(国際大会:3/4)

スピンステップオールレベル4  2/8(国際大会:1/4)

ジャンプ要素回転不足率 3/74=4.05%(国際大会:0/40=0.00%)

ジャンプ回転不足なし 4/6(国際大会:4/4)

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 1/6(国際大会1/4)

 

○21-22シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
DL げんさんサマーカップ 3 194.75 61.83 132.92
Others Japan Open 5 124.24   124.24
CS Asian Open Figure 1 203.58 67.83 135.75
GP Skate Canada 4 210.01 67.89 142.12
GP Grand Prix Torino 4 214.95 70.46 144.49
NC 全日本選手権 4 206.86 73.66 133.20
4CC Four Continents 1 218.03 72.62 145.41
DL アンリシャルパンティエ 1 139.39   139.39

三原舞依選手の今シーズンは、多くの日本のトップ選手と同じようにげんさんサマーカップから始まりました。194.75の3位。紀平梨花選手のいないこの試合の3位は代表争いで微妙な立ち位置。当然私もいますよ、というのを示している一方、当選圏には入っていない、という位置でした。

少し空いて10月にジャパンオープン。フリーだけの試合ですが124.24とスコア伸びず。日本人だけの試合で5番手というのは嫌な立ち位置です。珍しく転倒もありました。

本格的にシーズンインはジャパンオープン終わった後、と考えるのがいいのでしょうか、すぐに北京に飛んで出場したアジアンオープンフィギュアでは200点に乗せて優勝。本人比では満足いくスコアではなさそうですが勝ちは勝ち。2シーズン前に休養していて世界ランキングポイントゼロのところから貴重な250ポイントを得ます(出場者数が減ってチャレンジャーシリーズ分のポイントはもらえませんでした)

そこからグランプリ2連戦。これこれ、これぞ三原舞依、という演技でまずはスケートカナダで210点に乗せ、グランプリトリノでは214.95までスコアを伸ばします。どちらも表彰台に届かず4位。これでグランプリシリーズは昨シーズンの国内ローカル版NHK杯も含めて7回目の4位です。なお、グランプリ最低順位も4位。誰か4位3つでメダル1つとか交換してあげてほしいです。

そんな形で表彰台は逃しましたが、この214.95は日本人選手のシーズンベスト2位という形で全日本選手権に臨むことになります。

ショートはノーミスのいい演技で73.66を出しますが5位。ただ3位とは0.61差、2位とも1.00差とほぼ差はありません。2位から6位の5人でフリー勝負という状況、むしろ圏外で先に滑る方が心理的に楽かな、という点でいい位置だったと思います。フリー、前半はいい滑りで入っていったのですが、後半に入る1.1倍のジャンプ3つ。これがことごとく決まりませんでした。この時点でトップには立つものの、最終的には4位。3位とは2.79ポイント差。失敗したアクセルの後ろにシングルトーループを付けなければとか、3連続の最後のトーループがしっかり入っていればとか、最後のループからのコンビネーションの2つ目をトーループではなくてループに出来ていればとか、ほんのわずかな違いで、また、この点差だとジャッジ運の差で、表彰台を逃した形でした。結果、オリンピックの代表からは外れます。

かわりに、ということでもないでしょうが派遣されたのは四大陸選手権。ここではショートノーミスで首位に立つとフリーは最終滑走。ジャンプ、スピン、ステップ、高いレベルで次々と決めていきます。実質的にほぼ優勝決まったかな、の最後のスピンの要素でミスが出てレベル2になるご愛敬はありましたが、ショートフリー共に1位、パーソナルベストのスコアで5年ぶり2度目の四大陸優勝を果たしました。

 

○要素別スコア

Event Pl Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
げんさんサマーカップ 3 194.75 103.50 91.25 64.82 5.26 21.76 11.66
Japan Open 5 124.24 63.12 62.12 43.24 -1.39 12.68 8.59
Asian Open Figure 1 203.58 106.86 96.72 62.56 7.02 23.63 13.65
Skate Canada 4 210.01 113.36 96.65 65.66 9.30 24.38 14.02
Grand Prix Torino 4 214.95 116.30 98.65 65.66 12.33 24.26 14.05
全日本選手権 4 206.86 107.55 99.31 59.90 7.46 24.89 15.30
Four Continents 1 218.03 115.67 102.36 65.66 11.96 22.62 15.43
アンリシャルパンティエ 1 139.39 72.03 67.36 42.93 5.74 13.20 10.16

技術点はシーズン序盤は100点台にとどまっていましたが中盤以降110点台に乗せてきます。ただ、全日本で107.55と前後の試合と比べて低めのスコアで終わってしまったのは残念でした。グランプリトリノの116.30という技術点はロシア勢以外では今シーズン5番目のスコアです。

一方PCSは100点に乗らないことが多いです。トップ選手の中では残念ながらやや低めの評価にとどまっています。四大陸では102.36と100点台に乗せてきました。5項目平均8.5前後まで出してきました。

ジャンプの基礎点は65.66というスコアが3つあります。これは、予定構成をすべて基礎点欠けることなく実施できた、という試合が3つあったということであり、なかなかない事象です。また、ジャンプの加点は2試合で10点を超えました。12.33のグランプリトリノは今シーズン11位のスコアにあたります。コンスタントに10点超えると安定して出来のいい選手、と見ていいと思います。

スピンは24点台が多いです。ステップは四大陸で15.43まで伸ばしました。今シーズン8位のスコアです。

 

○要素別偏差値

Event Pl Total J Base J GOE Spin Step PCS
げんさんサマーカップ 3 59.53 60.74 61.22 53.43 52.97 57.39
Asian Open Figure 1 61.92 59.05 64.17 59.25 60.89 61.04
Skate Canada 4 63.67 61.37 68.00 61.59 62.37 60.99
Grand Prix Torino 4 65.01 61.37 73.09 61.21 62.49 62.32
全日本選手権 4 62.81 57.06 64.91 63.18 67.46 62.76
Four Continents 1 65.84 61.37 72.47 56.11 67.98 64.80

偏差値で見ると、グランプリトリノや四大陸で65台の値になります。

ジャンプの基礎点は60に乗せたくらいですが、加点は偏差値70超えと高い評価です。

スピンは60台前半、ステップは60台後半まで出します。PCSは60台前半。

それなりに高めなジャンプの基礎点で高い評価を受けつつステップが得意、苦手な穴になる要素がない、という風に見えます。

21-22シーズン 三原舞依要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャートで見るとこうなります。ジャンプの基礎点がやや偏差値伸びていないでしょうか。一方で加点は高く伸びます。

四大陸のスピンが凹んでいて目立っていますが、基本的には下、左下は高い側にいるチャートです。

 

●シーズン最高の基礎点構成

四大陸選手権 ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   0.75 4.05 2.444
2 3Lz+3T   10.10   1.18 11.28 2.000
3 FSSp4   3.00   0.69 3.69 2.222
4 3F   5.83 x 1.29 7.12 2.444
5 CCoSp4   3.50   1.00 4.50 2.889
6 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.333
7 LSp4   2.70   0.69 3.39 2.667
  TES   32.33   6.94 39.27  

ショートプログラムの最高基礎点は32.33でした。グランプリトリノ、全日本、四大陸と3試合で32.33です。基礎点が削られるミスが少ないことが見て取れます。

ルッツフリップトーループ、3回転3つで1.1倍には単独フリップが来ます。1.1倍にコンビネーションを持ってくることができれば、0.48基礎点を上げることができます。コンビネーションでGOEが1段階下がれば、その基礎点上昇は相殺されてしまうので、そのリスクを取るには確実性がかなり要求されることになります。

 

○グランプリトリノ フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T   10.10   1.69 11.79 2.667
2 2A   3.30   0.99 4.29 2.889
3 3F   5.30   1.44 6.74 2.667
4 3S   4.30   1.41 5.71 3.111
5 CCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.667
6 2A+3T   8.25 x 1.20 9.45 2.889
7 3Lz+2T+2Lo   9.79 x 1.01 10.80 1.778
8 3Lo   5.39 x 1.12 6.51 2.111
9 FSSp4   3.00   0.77 3.77 2.444
10 StSq4   3.90   1.11 5.01 3.000
11 ChSq1   3.00   1.14 4.14 2.111
12 FCCoSp4   3.50   0.85 4.35 2.444
  TES   63.33   13.68 77.01  

フリーでは63.33まで基礎点を出しました。これはトリプルアクセル以上の高難度ジャンプが入っていない構成として今シーズントップの基礎点でした。これより基礎点上げるには、3Lz+3Tを3Loと入れ替えてコンビネーションすべてを1.1倍に持ってくる、という手に出れば0.52基礎点を上げることは出来ます。リカバリーが全くできなくなりますしこれくらいのバランスの方がいいような気はします。

 

○平均GOE3.000以上(国際大会+全日本選手権より)

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Four Continents FS 10 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.889
Four Continents FS 11 ChSq1   3.00   1.79 4.79 3.667
Skate Canada FS 12 FCCoSp4   3.50   1.25 4.75 3.556
全日本選手権 SP 6 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.556
全日本選手権 FS 10 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.556
全日本選手権 FS 12 FCCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.556
Four Continents FS 9 FSSp4   3.00   1.07 4.07 3.556
Skate Canada FS 5 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.444
Skate Canada FS 10 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.333
全日本選手権 FS 11 ChSq1   3.00   1.71 4.71 3.333
Four Continents SP 6 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.333
Skate Canada FS 11 ChSq1   3.00   1.64 4.64 3.222
全日本選手権 SP 5 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.222
Four Continents FS 5 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.222
Asian Open Figure FS 5 CCoSp4   3.50   1.11 4.61 3.125
Skate Canada SP 7 LSp4   2.70   0.85 3.55 3.111
Grand Prix Torino SP 5 CCoSp4   3.50   1.10 4.60 3.111
Grand Prix Torino FS 4 3S   4.30   1.41 5.71 3.111
全日本選手権 SP 7 LSp4   2.70   0.85 3.55 3.111
全日本選手権 FS 4 3S   4.30   1.35 5.65 3.111
全日本選手権 FS 5 CCoSp4   3.50   1.10 4.60 3.111
Asian Open Figure SP 6 StSq3   3.30   0.99 4.29 3.000
Grand Prix Torino FS 10 StSq4   3.90   1.11 5.01 3.000

三原舞依選手はステップ、スピンと高めの評価です。シーズン最高の評価は四大陸選手権フリーで、すべてのジャンプを着氷し、ほぼ優勝が見えたところで入っていったステップからコレオの流れの要素でした。GOEの評価と共に、三原舞依選手が今シーズン一番輝いていた場面だったのだろうと思います。

ジャンプの中ではサルコウジャンプが2回、平均GOEで+3.000を超える高い評価を得ました。単独で飛ぶから、という点はあるかとは思いますが、トリプルサルコウは得意なジャンプと見てよさそうです。今シーズンとんだトリプルサルコウは全大会全ジャッジでプラス評価でした。

 

○3回転-3回転を含む要素(国際大会+全日本選手権より)

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Asian Open Figure SP 4 3F!+3T ! 10.45 x -0.18 10.27 -0.375
Asian Open Figure FS 1 3Lz+3T   10.10   1.67 11.77 2.750
Skate Canada SP 2 3Lz+3Tq q 10.10   -0.34 9.76 -0.667
Skate Canada FS 1 3Lz+3T   10.10   1.26 11.36 2.111
Grand Prix Torino SP 2 3Lz+3T   10.10   1.26 11.36 2.111
Grand Prix Torino FS 1 3Lz+3T   10.10   1.69 11.79 2.667
全日本選手権 SP 2 3Lz+3T   10.10   1.52 11.62 2.556
全日本選手権 FS 1 3Lz+3T   10.10   1.60 11.70 2.778
全日本選手権 FS 7 3Lz+3Tq+2T< 12.25 X -1.94 10.31 -3.111
Four Continents SP 2 3Lz+3T   10.10   1.18 11.28 2.000
Four Continents FS 1 3Lz+3T   10.10   1.77 11.87 2.889

3回転-3回転の安定度も三原舞依選手は高いです。今シーズンの国際大会と全日本で、セカンド3回転が回転不足で基礎点削られたという例がありません。リカバリーで3連続の2つ目も3回転にした全日本では3つ目の2回転が回転不足と取られていますが、セカンドはqで抑えました。

 

○3連続ジャンプ(国際大会+全日本選手権より)

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Asian Open Figure FS 7 3Lz+2T+2Lo   9.79 x 0.98 10.77 1.750
Skate Canada FS 7 3Lz+2T+2Lo   9.79 x 1.10 10.89 1.667
Grand Prix Torino FS 7 3Lz+2T+2Lo   9.79 x 1.01 10.80 1.778
全日本選手権 FS 7 3Lz+3Tq+2T< 12.25 X -1.94 10.31 -3.111
Four Continents FS 7 3Lz+2T+2Lo   9.79 x 1.35 11.14 2.222

3連続ジャンプはルッツ起点で2回転を2つ付けるのが基本形です。国際大会では問題なく成功させているのですが、全日本でセカンド3回転にしたこともあり大きくGOEマイナスとなりました。これが成功していればオリンピックだったのですが・・・。

 

○回転不足があった要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
げんさんサマーカップ SP 2 3Lz+3T< 9.26   -0.44 8.82 -0.750
Japan Open FS 6 2Aq+3T<< <<  5.06 X -1.57 3.49 -4.667
全日本選手権 FS 7 3Lz+3Tq+2T< 12.25 X -1.94 10.31 -3.111

今シーズン回転不足があった要素はすべての試合を通じて3つだけでした。それもすべて国内の試合で出たもので、国際大会では1つの回転不足もありません(qまではあります)。素晴らしい安定感でした。ただ、全日本の回転不足は、結果的に致命傷になった、というのは運命のめぐりあわせでしょうか。

 

あと一歩、あと半歩、あと0.1歩くらいの差でオリンピックを逃した三原舞依選手。それでも四大陸選手権は獲りました。チャンピオンシップ2勝目。素晴らしい出来でした。全日本の直接対決でスコアとして僅差とはいえ負けたのは事実なので、オリンピック代表に選出されないのは仕方ないと思いますが、世界選手権はあってもよかったのではと思います。

218.03という四大陸選手権のスコアは世界選手権2位相当のスコア。オリンピックでも5位相当のスコアです。これでもシーズン通じての日本人としてのスコア順位は3番目、というのが日本の恐ろしさ。来期も厳しい戦いが待っています。

全日本とグランプリシリーズ、4位が多い三原選手のめぐりあわせ。来期のグランプリシリーズはメンバーがおそらくだいぶ変わることになるわけで、初優勝の芽もありますし、ファイナル進出チャンスもあるでしょうし、そうやって活躍してPCSの評価が上がっていく、ということもあるのでしょう。運に恵まれないことも多い選手のような感じがありますが、来期は不運をねじ伏せる活躍が期待できそうに感じます。

 

 

21-22 マライアベル

1996年4月18日生まれ

シニア8シーズン目

シーズン獲得賞金:$22,000

世界ランキング:13位

シーズンランキング:10位

シーズンベストスコア 210.35 (23位) ロステレコム杯

ショートプログラムシーズンベスト 72.55 世界選手権

フリーシーズンベスト 140.98 ロステレコム杯

ショートプログラム楽曲:River Flows in You

フリープログラム楽曲:Hallelujah

スピンレベル4率 32/36=88.9%

ステップレベル4率 6/12=50.0%

スピンオールレベル4 4/6

スピンステップオールレベル4  2/6

ジャンプ要素回転不足率 2/60=3.33%

ジャンプ回転不足なし 4/6

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 2/6

 

○21-22シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
IC Cranberry Cup 3 179.42 67.07 112.35
GP Internationaux de France 6 190.79 60.81 129.98
GP Rostelecom Cup 4 210.35 69.37 140.98
NC US Championships 1 216.25 75.55 140.70
OG Olympic Games 10 202.30 65.38 136.92
WC World Championships 4 208.66 72.55 136.11

マライアベル選手のシーズン初戦は8月のクランベリーカップでした。179.42 いたって平凡なスコア。過去何シーズンも見たことのないようなスコア。3枠が見込まれるアメリカとはいえ、有力4選手がいる状態でこれは大丈夫なのか??? というシーズン立ち上がりでした。

2戦目は11月まで飛んでのグランプリシリーズ2試合。フランス杯は190.79 まだ心配なスコア。これがロステレコム杯で210.35と210点台にまで乗せて、この時点でアメリカ勢シーズンベスト2位になります。これで代表争い勝負になるな、というのを感じられる出来でした。

そして1月、全米選手権。結果的に、ブレイディテネル選手がけがで欠場したため、代表争いとしてはだいぶ余裕のある状態でしたが、それはそれとしてナショナル選手権は重いし重要。というこの試合で216.25 25歳にしてナショナル初優勝を果たしました。

オリンピックでは団体戦の時期から北京入りし、チームに帯同してキスアンドクライにも顔を出していました。結果的には出場無し。全米チャンピオン出さないんだ、という意外感はありましたが、本人は常に楽しそうに見えた25歳にして掴んだ初オリンピックです。

個人戦ではショート、コンビネーションで転倒があり11位スタート。フリーは盛り返しますが最終的に10位で終わりました。

シーズン最後の世界選手権。今回は数多い表彰台チャンスのある選手としての試合でもありました。ショートはシーズンベストの72.55で3位で折り返します。フリーもノーミスなら表彰台が見える、というところでしたが、3連続が入らず最後のルッツもステップアウト、この2つが痛くて、最終結果は4位。過去最高位ではありますが惜しかったなあ、という感想にもなる順位でした。

 

○要素別スコア

Event Pl Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Cranberry Cup 3 179.42 87.26 92.16 55.58 -4.75 24.07 12.36
Internationaux de France 6 190.79 96.45 95.34 59.31 2.21 22.25 12.68
Rostelecom Cup 4 210.35 107.61 102.74 59.31 8.65 24.65 15.00
US Championships 1 216.25 111.85 104.40 62.11 9.38 25.37 14.99
Olympic Games 10 202.30 101.68 101.62 61.37 1.42 24.78 14.11
World Championships 4 208.66 104.95 103.71 60.24 4.40 25.32 14.99

技術点は100点台、PCSも100点台と割とTESとPCSが拮抗している選手です。

ジャンプの基礎点はシーズン後半は60点台に乗ってきています。ジャンプの加点の方はロステレコム杯で8.65まで出しました。オリンピックや世界選手権では一桁前半にとどまっています

スピンはいい時は25点台まで乗せてきます。ステップはロステレコム杯の15.00が最高。

こうして並べると、オリンピックの時に各要素が前後の試合と比べて伸びなかったな、というのが見えて、そのあたりは残念でした。

 

○要素別偏差値

Event Pl Total J Base J GOE Spin Step PCS
Cranberry Cup 3 55.37 53.84 44.41 60.62 55.76 58.00
Internationaux de France 6 58.45 56.62 56.10 54.96 57.03 60.12
Rostelecom Cup 4 63.76 56.62 66.91 62.43 66.27 65.05
US Championships 1 65.36 58.71 68.13 64.67 66.23 66.16
Olympic Games 10 61.57 58.16 54.77 62.83 62.73 64.30
World Championships 4 63.30 57.32 59.77 64.52 66.23 65.70

偏差値で見ると、トータルスコアは60代前半くらいあります。ジャンプの基礎点は50代後半。ジャンプの加点はいいとき悪い時の差があり、いい時は偏差値60台後半まで出せています。スピンは60台前半、ステップは60台中盤をコンスタントに出してきます。

 

21-22シーズン マライアベル要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャートではこうなって、右側が伸びない形です。ジャンプでは稼げずステップやPCSが強い、という形です。ジャンプは出来が良ければ加点はだいぶ稼げるのですが、基礎点はどうしても少し弱い、という形になっています。

 

●シーズン最高の基礎点構成

○世界選手権 ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F+3Tq q 9.50   -0.30 9.20 -0.556
2 2A   3.30   0.90 4.20 2.778
3 FSSp4   3.00   0.90 3.90 2.889
4 3Lz   6.49 x 1.26 7.75 2.111
5 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.333
6 CCoSp4   3.50   1.25 4.75 3.556
7 LSp4   2.70   0.93 3.63 3.333
  TES   32.39   6.28 38.67  

世界選手権では32.39の基礎点でした。3-3ありでルッツフリップトーループを飛ぶ。トリプルアクセル無しでは十分高い方の基礎点です。コンビネーションを1.1倍に持ってくれば32.75まで基礎点を上げることができます。スピンの組み合わせが少し弱くて、基礎点3.5 3.0 2.7になっていますが、ルール上、3.5 3.2 2.7が可能で、このあたりで0.2ほど上位の他の選手と比べてマックスが低くなる構成でもあります。

 

ロステレコム杯 フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F+2A+SEQ   6.88   1.36 8.24 2.556
2 3Lo   4.90   1.26 6.16 2.556
3 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.333
4 3S   4.30   -0.49 3.81 -1.111
5 2A   3.30   0.47 3.77 1.444
6 StSq4   3.90   1.23 5.13 3.111
7 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.98 10.11 1.889
8 3Lz+2T   7.92 x 0.84 8.76 1.444
9 FCCoSp4   3.50   0.85 4.35 2.444
10 3Lz   6.49 x 1.52 8.01 2.556
11 ChSq1   3.00   1.86 4.86 3.556
12 LSp4   2.70   1.00 3.70 3.556
  TES   59.52   12.03 71.55  

フリーの最高基礎点はロステレコム杯の59.52 オリンピックでも同じ59.52ですが、スコアはロステレコム杯の方が上でした。

マライアベル選手はフリーでは3回転-3回転がありません。セカンド3回転がない。冒頭ジャンプはダブルアクセル入りのシークエンスです。2回飛ぶジャンプはルッツとフリップで基礎点高いものが選ばれています。

こうやって見るとトーループが余っているので、単独ダブルアクセルの代わりに単独トリプルトーループを入れれば基礎点が0.9上がって60点台に乗ります。それをしないのは、本当はコンビネーションでトーループを入れたい意志があったのでしょうか? 2シーズン前までは普通にセカンド3回転を飛んでいました。昨シーズンあたりからそれが入らなくなってきています。ショートでは入れるけれどフリーでは入らないセカンド3回転。入れることができれば基礎点が3点前後上がるわけですが、そのリスクを背負うよりは出来栄えで3点分稼ぐ方が確率高い、という見立てなのでしょうか。

回転不足率が極めて低いあたりがマライアベル選手の強みとしてあります。それをベースによい出来栄えで滑る、という戦略なようでした。

 

○平均GOE3.400以上

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
US Championships SP 5 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
US Championships FS 11 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
US Championships SP 6 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 3.889
US Championships SP 7 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.889
World Championships FS 3 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 3.889
World Championships FS 12 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.889
US Championships FS 3 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.778
Cranberry Cup SP 3 FSSp4   3.00   1.20 4.20 3.600
Cranberry Cup SP 5 CCoSp3   3.00   1.10 4.10 3.600
Cranberry Cup FS 12 LSp4   2.70   0.99 3.69 3.600
Rostelecom Cup FS 11 ChSq1   3.00   1.86 4.86 3.556
Rostelecom Cup FS 12 LSp4   2.70   1.00 3.70 3.556
US Championships FS 6 StSq3   3.30   1.23 4.53 3.556
Olympic Games FS 12 LSp4   2.70   0.96 3.66 3.556
World Championships SP 6 CCoSp4   3.50   1.25 4.75 3.556
Internationaux de France FS 12 LSp4   2.70   0.93 3.63 3.444
Olympic Games SP 6 CCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.444
Olympic Games FS 3 CCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.444
Cranberry Cup SP 7 LSp4   2.70   0.90 3.60 3.400
Cranberry Cup FS 6 CCoSp4   3.50   1.28 4.78 3.400

マライアベル選手の評価の高い要素はスピンです。上記表ではステップも見かけますが、ほとんど全米選手権での高評価なもので、国際大会で高い評価を受けているのはスピンになっています。

 

○3回転-3回転の要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Cranberry Cup SP 2 3Fq+3T   9.50   -0.88 8.62 -1.400
Internationaux de France SP 2 3F+3T<< <<  6.60   -2.65 3.95 -5.000
US Championships SP 1 3F+3T   9.50   0.83 10.33 1.333
Olympic Games SP 1 3F+3T< 8.66   -2.65 6.01 -5.000
World Championships SP 1 3F+3Tq q 9.50   -0.30 9.20 -0.556

フリーでは入れていない3回転-3回転ですが、ショートではフリップ起点の3-3を常時入れていました。このコンビネーションで回転不足が出てしまっている現実があります。オリンピックの転倒含め成功率は低かったです。もしかしたらショートから3-2にした方が安定して高いスコアが出せていた可能性もありますが、世界選手権ではわずかなGOEマイナスに抑えていてセカンド2回転では届かない点を得ています。一つは賭け要素を入れて上位をうかがっていたという感じがあります。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Internationaux de France FS 7 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.61 9.74 1.111
Rostelecom Cup FS 7 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.98 10.11 1.889
US Championships FS 7 3F+2T+2Lo   9.13 x 1.21 10.34 2.222
Olympic Games FS 8 3Lz+2T+2Lo   9.79 x -0.34 9.45 -0.667

3連続ジャンプは1.1倍に入れていますが2回転2つを付ける比較的難易度抑え目なものです。世界選手権では3つ目を付けられず3連続が入りませんでした。

 

今シーズンは全米選手権初優勝。あきらめなければ夢はかなう、とのコメントを残していますが、長い道のりでした。特に昨シーズンから今シーズンの前半はスコアが伸びず。昨シーズンは全米選手権5位で今シーズン序盤も170点台から190点あたりのスコアになっていたので、これは危ないかな、という風に失礼ながら見ていました。

あきらめなければ夢はかなう。ジュニアグランプリシリーズに出場したのも17歳になってから、という選手です。世界ジュニアの出場経験はありません。18歳でのシニアデビュー時はグランプリの枠をもらえず。19歳のシニア2シーズン目でも地元枠のスケートアメリカのみ。ただ、このスケートアメリカで2位表彰台に乗ったことにより、世界の上位で戦うことができる選手になりました。ロシアならすでに引退している年齢です。そこからさらに5シーズンを経て全米チャンピオンになりオリンピック出場。オリンピックでは団体戦に出してあげたかったです。全米チャンピオンをなんで出さないかなあ。

フリーで3回転-3回転が無かったり、ジャンプの技術が他のトップ選手と比べて落ちる状態になってきているのは事実だと思います。それでも、ルッツフリップ2本入りでスピンステップも高いレベルで滑るフリー演技はさすがで他の上位選手に見劣りするものではないです。転倒があってもいいイメージが残るハレルヤ素晴らしい。

来シーズンはどうするのでしょう? 4年後を目指すと29歳になります。近年では29歳で2回目のオリンピックと言うと鈴木明子さんがいます。アメリカは適度なレベルの競争の国。まだまだトップでやれると思いますが、去就に注目されます。

 

 

21-22 樋口新葉

2001年1月2日生まれ

シニア6シーズン目

シーズン獲得賞金:$9,000

世界ランキング:11位

シーズンランキング:9位

シーズンベストスコア 214.44 (17位) 北京オリンピック

ショートプログラムシーズンベスト 79.73 オーストリア

フリーシーズンベスト 141.04 フランス杯

ショートプログラム楽曲:ユアソング

フリープログラム楽曲:ライオンキングより

スピンレベル4率 42/51=78.8% (国際大会:28/33=84.8%)

ステップレベル4率 13/17=76.5%(国際大会:9/11=81.8%)

スピンオールレベル4 2/7(国際大会:1/5)

スピンステップオールレベル4  2/7(国際大会:1/5)

ジャンプ要素回転不足率 9/83=10.8%(国際大会:8/53=15.1%)

ジャンプ回転不足なし 3/7(国際大会:2/5)

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 1/7(国際大会1/5)

 

○21-22シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
DL げんさんサマーカップ 4 193.41 62.40 131.01
DL 東京夏季フィギュア 1 74.02 74.02  
Others Japan Open 1 136.27   136.27
GP Skate Canada 6 205.27 69.41 135.86
CS Cup of Austria 1 189.43 79.73 109.70
GP Internationaux de France 3 204.91 63.87 141.04
NC 全日本選手権 2 221.78 74.66 147.12
OG OlympicGames Team 2 74.73 74.73  
OG Olympic Games 5 214.44 73.51 140.93
WC World Championships 11 188.15 67.03 121.12

樋口新葉選手の今シーズンは8月のげんさんサマーカップから始まりました。日本の有力選手のほとんどが集まったこの試合で4位。日本で4番目ではオリンピックの代表にはなれません。あまりいい立ち上がりではありませんでした。8月にはもう一試合、東京夏季フィギュアでここはショートだけで74.02という高いスコアを出します。この試合はダブルアクセル構成。それでもそろえばこれだけのスコアが出ます。

10月に入って今度はフリーだけの試合でジャパンオープンに出場。トリプルアクセルをきれいに決めて136.27 トリプルアクセル入った割には点が出ない、といういいんだか悪いんだかみたいな試合。まだシーズン序盤ですからトリプルアクセルを下りたということの方が大事だったでしょうか。

10月後半からはグランプリシリーズが始まり本格的にシーズンが進んでいきます。スケートカナダはフリーでトリプルアクセルをまた決めましたがスコアはやはり135点台でトータルも205点ほど。6位に終わります。1試合、チャレンジャーシリーズのオーストリア杯を挟みました。ここでショートからトリプルアクセルを投入して79.73という極めて高いスコアを出してきました。ところがフリーが大崩れトータルスコアは180点台でシーズンワーストになります。なかなか2本そろいません。

翌週フランス杯ではロシア勢の一角を崩して3位表彰台。この試合もフリーでqマークながらもトリプルアクセルを下ります。トリプルアクセルの着氷率は高くなってきました。ただ、この時点でシーズンベストスコアは日本勢で5番目。代表争いという点では微妙なものがありました。

 

そして運命の全日本。ショートではダブルアクセル構成ながら74.66を出して2位スタート。普通に滑れば表彰台、というのが見えた状況でフリーの自分の滑走順を迎えますが、波が大きくてなかなかその普通に滑るが出来ないことが多い樋口選手。ライオンキングはキングか?都落ちか? 冒頭トリプルアクセル投入でGOEマイナスですが着氷、その後はコンビネーションで一つ回転不足がつきますが、課題のフリップも!でこらえ、大きなミスなく滑り切り147.12の高いスコアでこの時点トップ。最終的に2位表彰台でオリンピック代表を決めました。一番大事な試合でショートフリー2本そろえることが出来ました。

 

オリンピックは団体戦ショートプログラムに登場。メダル争いのカギになる選手かとも思われましたが、ROCに次ぐ2位で9ポイントを稼ぎ後の選手を非常に楽にさせる貢献をしました。

個人戦ではショートプログラムからトリプルアクセル投入し着氷。フリーのトリプルアクセルも着氷。オリンピック個人戦トリプルアクセルを2本決めた女子選手は浅田真央さん以来2人目です。

世界選手権は精彩を欠いて11位に終わりましたがオリンピックで団体戦のメダルを取り(まだ手元になさそうですが)、トリプルアクセル2本を決め、大事なところでは結果を出したシーズンとなったようです。

 

○要素別スコア

Event Pl Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
げんさんサマーカップ 4 193.41 100.95 92.46 64.27 3.20 21.78 11.70
東京夏季フィギュア 1 74.02 41.04 32.98 19.23 4.05 12.43 5.33
Japan Open 1 136.27 69.46 66.81 43.96 5.97 9.96 9.57
Skate Canada 6 205.27 104.59 100.68 62.02 2.44 24.56 15.57
Cup of Austria 1 189.43 94.91 96.52 58.39 -0.41 23.54 13.39
Internationaux de France 3 204.91 105.33 99.58 65.65 2.48 23.43 13.77
全日本選手権 2 221.78 116.05 105.73 69.64 5.92 24.34 16.15
OlympicGames Team 2 74.73 40.54 34.19 19.23 3.98 11.98 5.35
Olympic Games 5 214.44 112.20 103.24 72.41 0.85 23.68 15.26
World Championships 11 188.15 92.37 97.78 60.96 -6.25 23.29 14.37

技術点は100点中盤くらいが標準でオリンピックでは110点台に乗せています。世界選手権がシーズンワーストの92.37 ケガもしていたようですし後講釈ですが休んだ方がよかったのかもしれません。

PCSはなかなか100点までもらえなかったですがオリンピックでは103.24まで出ました。5項目平均8.5をすこし超えるくらいのところまで来た形です。

ジャンプの基礎点は60点台前半から中盤が多かったのですが、オリンピックでは国内選手権をも超えて72.41まで出しました。ロシア勢以外では今シーズン3位の高い基礎点構成です。一方、ジャンプの加点は伸びていません。国際大会ではフランス杯の+2.48が最高。オリンピック団体戦のようにショートだけで+3.98確保したりは出来るのですが、ショートフリーどちらかでジャンプが崩れることが多く、合わせるとプラスマイナス0に近いところに収束してしまいます。

スピンはスケートカナダの24.56が最高。これは日本勢で4番目のスコアになります。

ステップ系要素はスケートカナダで15.57まで出ました。これは全体5位の高い評価です。

 

○要素別偏差値

Event Pl Total J Base J GOE Spin Step PCS
げんさんサマーカップ 4 59.16 60.33 57.76 53.49 53.13 58.20
Skate Canada 6 62.38 58.65 56.48 62.15 68.54 63.68
Cup of Austria 1 58.08 55.94 51.70 58.97 59.86 60.90
Internationaux de France 3 62.28 61.36 56.55 58.63 61.37 62.94
全日本選手権 2 66.86 64.34 62.33 61.46 70.85 67.05
Olympic Games 5 64.87 66.41 53.81 59.41 67.30 65.39
World Championships 11 57.73 57.86 41.89 58.19 63.76 61.74

偏差値的にはトータルスコアは60前後、シーズンベストのオリンピックで64.87と60台半ばまで出しています。

ジャンプはオリンピックで60台後半まで出ますが、崩れるとオーストリア杯のように50台半ばまで落ち込みます。ジャンプの加点は偏差値50台。評価は高くありません。

スピンも偏差値50台が標準で60に乗せたのはスケートカナダくらい。ステップは偏差値60台後半まで出る高い評価を受けています。

PCSは60台半ばまで出るようになってきました。

21-22シーズン 樋口新葉要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャートこういう形です。右下が凹みがち。下もあまり伸びずに左側が膨らむ形です。世界選手権が全体的に小さくなってしまっているのがよく見えます。ステップとPCSが高評価。ノービスの頃からジャンプのイメージが強く、今もトリプルアクセルに挑んでいく姿が印象的なのですが、能力的にはステップやPCSという魅せる項目の方が高く出ています。

 

●シーズン最高の基礎点構成

オーストリア杯 ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A   8.00   2.40 10.40 3.000
2 3Lz+3T   10.10   1.42 11.52 2.286
3 FCSp4   3.20   0.77 3.97 2.286
4 3F   5.83 x 1.38 7.21 2.571
5 CCoSp4   3.50   0.91 4.41 2.429
6 StSq4   3.90   1.33 5.23 3.429
7 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.000
  TES   37.23   9.02 46.25  

ショートプログラムはシーズンベストのオーストリア杯で37.23という基礎点を出しました。これより上は、コンビネーションを1.1倍のところに持ってくるしかありません。今シーズンこの上の基礎点を出したのは、ワリエワ、トゥルソワ、両選手だけです。

この構成でコンスタントにノーミスできるようになると強いです。

 

○フランス杯 フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Aq q 8.00   -0.23 7.77 -0.333
2 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.444
3 3S   4.30   0.92 5.22 2.222
4 CCoSp4   3.50   0.60 4.10 1.667
5 2A   3.30   0.75 4.05 2.333
6 3Lz+3Tq+2T q 12.54 x -0.34 12.20 -0.444
7 3Lo+2T   6.82 x 0.77 7.59 1.444
8 3Fe e 4.66 x -0.48 4.18 -1.111
9 FCSp3   2.80   0.48 3.28 1.667
10 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.111
11 ChSq1   3.00   1.36 4.36 2.778
12 FCCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.556
  TES   66.42   7.38 73.80  

フリーの基礎点はフランス杯が最も高かったです。66.42はロシア勢以外だと今シーズン5番目になります。ここまでの基礎点を出すにはトリプルアクセル以上のジャンプが必須になっています。

冒頭にトリプルアクセルで2回飛ぶジャンプはルッツとトーループ。フリップのeとスピンレベル3で基礎点削られていますが、この構成でノーミスなら基礎点が1.57上がって67.99にまでなります。

 

○平均GOE3.200以上(国際大会+全日本選手権より)

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
全日本選手権 FS 10 StSq4   3.90   1.78 5.68 4.444
全日本選手権 FS 11 ChSq1   3.00   2.07 5.07 4.111
Skate Canada FS 11 ChSq1   3.00   1.93 4.93 3.889
全日本選手権 SP 6 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.889
Skate Canada SP 6 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.778
OlympicGames Team SP 6 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.778
全日本選手権 SP 1 2A   3.30   1.23 4.53 3.667
Skate Canada SP 7 LSp4   2.70   0.93 3.63 3.444
Skate Canada FS 10 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.444
Cup of Austria SP 6 StSq4   3.90   1.33 5.23 3.429
Skate Canada SP 5 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.222
Internationaux de France SP 6 StSq3   3.30   1.04 4.34 3.222
全日本選手権 SP 7 LSp4   2.70   0.85 3.55 3.222
OlympicGames Team SP 1 2A   3.30   1.04 4.34 3.222
OlympicGames Team SP 7 LSp4   2.70   0.89 3.59 3.222
World Championships SP 5 CCoSp3   3.00   0.94 3.94 3.222
World Championships SP 6 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.222

樋口選手の評価の高い要素はステップ系要素です。ステップあるいはコレオが評価上位を占めています。それ以外ではダブルアクセルとスピンがいくつかあります。

残念なのは上の方にオリンピックや世界選手権がないこと。オリンピックも団体戦はありますが個人戦で評価の高い要素がありませんでした。

 

トリプルアクセルを含む要素

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
げんさんサマーカップ FS 1 3A   8.00   -2.20 5.80 -2.75
Japan Open FS 1 3A   8.00   2.40 10.40 3.17
Skate Canada FS 1 3A   8.00   1.14 9.14 1.33
Cup of Austria SP 1 3A   8.00   2.40 10.40 3.00
Cup of Austria FS 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.00
Internationaux de France FS 1 3Aq q 8.00   -0.23 7.77 -0.33
全日本選手権 FS 1 3A   8.00   -1.60 6.40 -2.00
Olympic Games SP 1 3A   8.00   1.71 9.71 2.22
Olympic Games FS 1 3A   8.00   1.83 9.83 2.22
World Championships FS 1 3Aq q 8.00   -4.00 4.00 -5.00

トリプルアクセルに挑む選手が近年はたくさんいますが、樋口新葉選手はそのなかで成功率が高い選手です。今シーズン10回飛んで回転が足りずに基礎点が削られたのは1回だけです。転倒は2回。後の8回はGOEマイナスはあってもダブルアクセルでは取れない高い点数を確保しています。世界選手権ではケガもあったようでうまくいきませんでしたが、基本的に樋口選手にとってトリプルアクセルは計算できるジャンプになってきています。

 

○3回転-3回転を含む要素(国際大会+全日本選手権より)

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
Skate Canada SP 2 3Lzq+3Tq q 10.10   -1.43 8.67 -2.444
Skate Canada FS 2 3Lz+3Tq q 10.10   -0.17 9.93 -0.111
Cup of Austria SP 2 3Lz+3T   10.10   1.42 11.52 2.286
Cup of Austria FS 2 3Lz+3T< 9.26   -0.71 8.55 -1.286
Internationaux de France SP 2 3Lz+3Tq q 10.10   -0.34 9.76 -0.667
Internationaux de France FS 2 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.444
Internationaux de France FS 6 3Lz+3Tq+2T q 12.54 x -0.34 12.20 -0.444
全日本選手権 SP 2 3Lz+3T   10.10   1.35 11.45 2.333
全日本選手権 FS 2 3Lz+3T   10.10   1.69 11.79 2.778
全日本選手権 FS 6 3Lz+3T< 10.19 X -1.10 9.09 -1.778
OlympicGames Team SP 2 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.333
Olympic Games SP 2 3Lz+3T< 9.26   -0.51 8.75 -0.889
Olympic Games FS 2 3Lz+3T< 9.26   -2.95 6.31 -5.000
Olympic Games FS 6 3Lz+3Tq q 11.11 x -0.08 11.03 -0.222
World Championships SP 2 3Lz+3T   10.10   1.35 11.45 2.444
World Championships FS 2 3Lz+3T< 9.26   -0.17 9.09 -0.222
World Championships FS 6 3Lz+3T< 10.19 x -2.95 7.24 -5.000

3回転-3回転は樋口選手にとって従来得意なジャンプだったはずかと思います。これが今シーズン17回飛んでGOEマイナスが10回。セカンドジャンプの回転不足減点が6回あります。これはトリプルアクセルの確率より低いです。トリプルアクセルの練習に時間を取られているためなのか、意識がトリプルアクセルに行くからなのか。両方あるのかと思いますが、フリーの方が成功率低いので、冒頭のトリプルアクセルに行く意識の強さ、というのがどうしてもあるのかなあ、と思います。

トリプルアクセルと3-3が揃ったときが、樋口新葉トリプルアクセル完成の時、なのかもしれません。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
Skate Canada FS 8 3Fe+2T+2Lo e 7.96 x -0.73 7.23 -1.667
Internationaux de France FS 6 3Lz+3Tq+2T q 12.54 x -0.34 12.20 -0.444
全日本選手権 FS 7 3Lo+2T+2Lo   8.69 X 0.91 9.60 1.778
Olympic Games FS 7 3Lo+2T+2Lo   8.69 x 0.91 9.60 1.889

3連続ジャンプの出来も今一つでした。オーストリア杯、世界選手権では要素に3連続を入れることができませんでした。

シーズン序盤はフリップからの3連続にしていましたが、フリップ二!月期、スケートカナダではついにeがついたためか断念。フランス杯ではルッツからで3-3-2にしましたがこれは負荷が重いと判断したのかこの1回で終わります。全日本以降はループ起点の3連続にして確実性を高めていました。

 

 

今シーズンは念願のオリンピック出場を果たした樋口新葉選手。最終選考会の全日本ではショートフリー2本そろえた素晴らしい演技でした。ただ、ほかの試合ではショートフリーしっかりそろえることがなかなかできませんでした。シーズンベストがショート、フリー、トータルですべて違う試合になる、という選手は割と少数です。このあたりに不安定さが出ていたように感じます。

ショートはノーミスで79点台まで出ました。大きな大会ならPCSましで80点には乗ったでしょう。ここにフリーノーミスで150点まで出せて230点、というのは見えているのですが、実際のシーズンベストは214点台。結局シーズン終わっての国際大会のスコアでは日本勢の中でも4番目で終わっています。来シーズン、また代表としてチャンピオンシップに出られる保証はありません。

今シーズンは大事な全日本で結果を出し、夢のオリンピックでトリプルアクセル2本を決めるという結果を出しました。不安定だけど大事な試合に合わせて目標は達成できる。オリンピックがシーズンベストな選手は4人しかおらず、その4人の一人が樋口新葉選手です。来シーズンはそれが世界選手権で、トリプルアクセルに他の要素も全部そろうと・・・、世界を獲るチャンスがあるのかもしれません。