USインターナショナル 4回転アクセル

ショート終わった時点では、これはちょっと拍子抜けな試合かな、と思ったのでしたがとんでもない。ついに、それも、あっさりと、出てしまいました4回転アクセル。

 

○男子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Ilia MALININ USA 257.28 71.84 185.44
2 Kevin AYMOZ FRA 236.17 83.52 152.65
3 Camden PULKINEN USA 219.49 77.44 142.05
4 Mark GORODNITSKY ISR 218.83 77.65 141.18
5 Jimmy MA USA 216.76 69.88 146.88
6 Stephen GOGOLEV CAN 208.43 72.89 135.54
7 Arlet LEVANDI EST 202.29 70.02 132.27
8 Donovan CARRILLO MEX 181.44 68.10 113.34
9 Eric SJOBERG USA 179.09 47.49 131.60
10 Wesley CHIU CAN 171.69 55.14 116.55
  Daniel GRASSL ITA 73.69 73.69  

優勝スコアは平凡な257.28でした。ただ、この中身はとんでもない。4回転アクセルが飛び出しました。詳細は後で取り上げます。

マリニン選手、ショートは2転倒のひどい出来だったのですがフリーで逆転優勝です。まだまだ不安定で全米選手権のように2本そろえて300点というのをコンスタントに出すことは出来ないようですが、結果的には圧勝でした。

2位にはケビンエイモズ選手。ジャンプ決まらず技術点伸びませんでしたがPCSはショートもフリーもトップです。フリーはグラディエーター。最近だと鍵山優真選手がやってましたが、むしろ坂本花織選手のものに方向性は近い感じでした。

3位にプルキネン選手。世界選手権で5位に入っての翌シーズン。ちょっとスコア伸びなかったでしょうか。フリーは4回転決まらず。今シーズンはグランプリ2戦にシード扱いで出てきますので、調子を上げていってほしいところです。

 

○イリアマリニン選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4A   12.50   1.00 13.50 0.857
2 4T   9.50   2.85 12.35 3.000
3 4Lz F 11.50   -5.75 5.75 -5.000
4 4S   9.70   0.97 10.67 1.000
5 CCSp3   2.80   0.56 3.36 2.000
6 StSq3   3.30   0.40 3.70 1.143
7 4Lz+1Eu+3S   17.93 x -0.46 17.47 -0.286
8 3F+3T   10.45 x 1.17 11.62 2.143
9 3Lz+3A+SEQ   15.29 x 1.92 17.21 2.571
10 FSSp4   3.00   0.60 3.60 2.000
11 ChSq1   3.00   1.70 4.70 3.286
12 CCoSp4   3.50   1.26 4.76 3.571
  TES   102.47   6.22 108.69  

出ました4回転アクセル。回転十分、平均GOEプラスの成功ジャンプとなりました。世界初成功。USインターナショナルはチャレンジャーシリーズの1試合であり、ISU公式戦であってISU公認となります。技術的には飛べることを証明しましたし、たとえ練習でも飛べればすごいわけですが、今回はプレッシャーがほとんどない試合。あとはプレッシャーがかかる大事な試合で跳べるかどうかで、これが得点源として価値のある計算のできるジャンプかどうかが変わってきます。それにしても高いジャンプでした。練習で決めていたことは知っていましたが、ショートの出来がひどかったので今回は無しかな、と思いましたが、逆に失うものはない試合とばかりに入れてきて一発成功して見せました。驚きました。

その他の構成もいろいろとおかしい・・・。2回飛ぶジャンプは4回転ルッツです。4回転はアクセル含めて5本。この構成でコンビネーションは1.1倍にすべて詰め込みました。シークエンストリプルアクセルもいます。

基礎点102.47は18-19シーズン以降の要素数12になってからの最高基礎点です。まあ今シーズンからルール変わってはいますがとんでもない構成であることは間違いないです。

そんな基礎点ですが、スピンステップで取りこぼしがあって、すべてレベル4ならさらに1.0基礎点が上がります。

2回飛ぶジャンプが1つ余っているので構成上げることが出来なくもないです。今回の滑りを見ると3Lz+3A+3Aのシークエンスが可能に見えます。今の4Lzからの3連続を4Lz+2Tに替えてそのシークエンスを持ってくると4.95基礎点を上げられます。シークエンスに3A2つはきついなら1つを2Aにして4Lzの後ろを3Tにしたとすると、それでも2.97基礎点を上げられます。マリニン選手は昨シーズンセカンド3回転ループを構成に入れていました。そこまで使うと1.1倍に4Lz+3T 3F+3Lo 3Lz+3A+3A という異次元構成があり得て、ここまで行くと基礎点を8.91上げることが出来て、ノーミスで基礎点112.38という異世界まで行きます。

ただ、実は世界ジュニアで出したパーソナルベストをこのフリーは超えていません。ルッツ転倒が響いています。また、難しい技発表会な雰囲気もあり、演技構成点が伸びていないのですが、これも伸びてくると手の付けられないことになってきます。今シーズン中にそこまで行けるかどうか。

マリニン選手はグランプリ2戦、初戦のスケートアメリカでは鍵山選手と対戦、最終6戦目のフランスでは佐藤駿選手、クビテラシビリ選手、ケビンエイモズ選手らと争います。

 

○女子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Yelim KIM KOR 190.64 58.32 132.32
2 Young YOU KOR 183.40 63.19 120.21
3 Mana KAWABE JPN 180.11 62.68 117.43
4 Audrey SHIN USA 176.44 61.16 115.28
5 Sonja HILMER USA 174.46 57.93 116.53
6 Jocelyn HONG NZL 162.54 60.76 101.78
7 Jill HEINER USA 142.53 47.41 95.12
8 Alessia TORNAGHI ITA 133.48 49.06 84.42
9 Marilena KITROMILIS CYP 129.64 52.55 77.09
10 Eliska BREZINOVA CZE 129.15 43.03 86.12
11 Sofia Lexi Jacqueline FRANK PHI 115.89 37.62 78.27
12 Victoria ALCANTARA AUS 108.84 41.25 67.59
13 Andrea MONTESINOS CANTU MEX 103.29 39.86 63.43

女子もスコアはあまり伸びませんでした。

優勝は韓国のキムイェリム選手。パーソナルベストは今年の4大陸選手権の209.91

それが今回は190点にとどまりました。ショートの出遅れが響いています。3枠になった世界選手権の韓国の代表有力候補ではありますが、きわどい位置の選手でもあります。

2位にはユヨン選手。フリーで入れたトリプルアクセルはステップアウトもなく着氷しましたがダウングレード判定となりました。ショートでダウングレード1つ、フリーはダウングレード1つに回転不足3つ。なかなか苦しい試合でした。昨シーズンも序盤は180点台並べてましたし、大事な試合に合わせればいいという立場なので、9月はこんなものなのかもしれません。ただ、トリプルアクセルをGOEプラスで最後に決めたのは20年のNHK杯フリーなのでもう2年近く前になります。そのあたりが心配です。紀平梨花選手とぶつかるグランプリシリーズ2戦目のスケートカナダでどこまで合わせてくるでしょうか。

河辺愛菜選手は3位でした。180.11というスコアは本人比でもいまいちです。今シーズンから樋口美穂子先生のところへ移籍。これまではなんならオリンピックの代表に決まった日時点でも自分が飛べない難しいジャンプを飛ぶ後輩がいます、自分と同等くらいは周りにたくさんいます、という環境だったところから、自分だけとびぬけたエース格です、むしろ他に生徒あまりいないかも、私が明らかに中心です、みたいなところに移った形です。これで先生と合わないと大変なんだろうと思いますが、映像見る限りではいい関係を今のところ築けているように見えます。河辺選手にとって今シーズンは全然勝負のシーズンではありません。4年後に向けての立て直し積みなおしのシーズン。少し格は違いますが、バンクーバー後の浅田真央さんのように、すぐに結果を求めないシーズンでもあると思うので、この試合の点数という部分はあまり気にしても仕方ないし、本人サイド特に樋口先生もあまり気にしていないのかな、とも感じました。

 

○河辺愛菜選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   0.79 4.09 2.286
2 3Lz+3T+2T   11.40   1.18 12.58 1.857
3 2A   3.30   0.66 3.96 2.143
4 3Fe< 3.18   -1.46 1.72 -4.571
5 StSq3   3.30   0.73 4.03 2.143
6 3Lz<+3T< 8.89 x -1.98 6.91 -4.143
7 FCSp4   3.20   0.38 3.58 1.286
8 ChSq1   3.00   1.10 4.10 2.000
9 2Lo   1.87 x -0.51 1.36 -3.000
10 3S+2T   6.16 x 0.52 6.68 1.143
11 CCoSp4   3.50   0.63 4.13 1.429
12 SSp4   2.50   0.65 3.15 2.429
  TES   53.60   2.69 56.29  

トリプルアクセル無し構成で今シーズンここまで来ている河辺選手です。2回飛ぶジャンプはルッツとトーループ。1つ目のコンビネーションで3連続はしっかり決めました。2つ目のコンビネーションは2つとも回転不足。フリップも回転不足で合計3つの回転不足があり、単独ループは2回転。さすがにここまでなると基礎点はだいぶ削られて53.60となりました。

単独のダブルアクセルを2つ置いてあるのはこの辺にトリプルアクセルを組み込んでいこうという意志でしょうか。1つではなくて2つあるところに意味があるのかもしれません。

ここには出ていないのですが、ちょっとオリンピアンとしてはPCSが渋かったなあという印象でもありました。まあ、よく考えてみると旧ルールだったからオリンピックに出られましたが、現行の17歳で開幕を迎えるシーズンにシニアになれるルールだと今シーズンがシニアデビュー相当なわけです。PCSもこれから伸びてくるでしょうか。

河辺選手のグランプリシリーズは3戦目のフランスからになります。今回優勝したキムイェリム選手の他、優勝候補にベルギーのヘンドリックス選手がいて日本からは同い年松生理乃選手と、年上だけど今シーズンシニアデビューの住吉りをん選手がいます。調子が上がれば表彰台争いの一角かと思われますがどうでしょうか。

 

 

平日開催という珍しいチャレンジャーシリーズでしたが、チャレンジャーシリーズ2戦目は週末のロンバルディア杯です。日本からは女子は坂本花織選手に樋口新葉選手というオリンピックメダリストたちと渡辺倫果選手の3人派遣、男子は島田高志郎選手が派遣というかスイスから移動な感じで参加します。

 

JGP リガ 3戦連続表彰台

ジュニアグランプリの3戦目がラトビアのリガにて行われました。初戦、2戦目と木下アカデミー勢が席巻してましたが、今回は木下アカデミーからの派遣はなしです。今回はMFアカデミー勢が派遣されて健闘しました

 

○女子シングル 上位12人

Pl Name Nation Total SP FS
1 Jia SHIN KOR 194.68 70.41 124.27
2 Soho LEE USA 185.92 64.06 121.86
3 Ami NAKAI JPN 185.62 63.87 121.75
4 Inga GURGENIDZE GEO 180.28 58.80 121.48
5 Nikola FOMCHENKOVA LAT 169.07 55.79 113.28
6 Kimmy REPOND SUI 168.96 58.88 110.08
7 Jihyun HWANG KOR 166.61 58.01 108.60
8 Justine MICLETTE CAN 150.77 57.85 92.92
9 Hannah HERRERA USA 145.30 49.30 96.00
10 Valentina ANDRIANOVA GER 142.13 45.33 96.80
11 Nella PELKONEN FIN 140.94 53.74 87.20
12 Sofja STEPCENKO LAT 139.99 43.24 96.75

昨シーズンの世界ジュニア2位、韓国のシンジア選手が優勝しました。日本勢3連勝を阻止、力を発揮しました。ショート1番滑走のフリー最終滑走。シンジアに始まりシンジアに終わる、比喩でも比喩ではない意味でも、という試合になりました。トリノオリンピック高橋大輔選手が確かそんな形でしたが、その形でしかも優勝してしまうという非常に珍しいものになりました。

2位にはアメリカからソーホーリー選手。ここまで2試合日韓で占められていた表彰台に3試合目にしてアメリカから割って入りましたが、韓国系の選手ですね。ショートノクターン、フリーくるみ割り人形浅田真央さんの若いころのプログラムだったりしますが、たまたまなのか憧れリスペクトがあるのか。ショート2位からのフリー、見た目ノーミス、逆転優勝有るか? という演技でしたがqが並んでスコア伸びず、逆に何とか踏みとどまって僅差で2位を確保した、という試合になりました。 2009年2月生まれ。島田麻央選手同様、ミラノオリンピックには出られず、最短オリンピックは21歳という世代になります。

日本から派遣の中井亜美選手が3位でした。これで日本から派遣の女子選手は3大会連続で5人全員表彰台確保を継続してきています。ショートはマイナス要素無しのいい演技で63.87、国内参考含めても自己ベストのスコアで3位につけてのフリー。衣装はアオザイ風なんでしょうか、足首まで伸ばしたらベトナムで歩いてそうにも見えるミスサイゴン。ジャンプの抜け2つがありながらも120点台までスコアをのばして2人を残して首位、表彰台を確定させました。ショートはアイガッドリズム、フリーはミスサイゴン。曲名聞いただけで全日本4連覇経験のある2人の顔が浮かぶ曲をショートフリーで並べるのはなかなか勇気がいるんじゃないかと思います。

 

○中井亜美選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A< 6.40   -1.10 5.30 -1.667
2 3Lz+3T   10.10   1.52 11.62 2.556
3 1Lo   0.50   -0.18 0.32 -3.556
4 FSSp4   3.00   0.69 3.69 2.333
5 3Lo+2A+SEQ   8.20   1.05 9.25 2.222
6 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.21 12.32 2.222
7 CCoSp4   3.50   1.00 4.50 2.778
8 1A   1.21 x -0.41 0.80 -3.667
9 3Lz   6.49 x 1.52 8.01 2.667
10 LSp4   2.70   0.73 3.43 2.667
11 ChSq1   3.00   1.36 4.36 2.778
  TES   56.21   7.39 63.60  

冒頭のトリプルアクセルは回転不足で基礎点から減点となりました。ただ、それでも5.30を得ているのでダブルアクセル比ではおつりが来ます。今シーズンこれで3本目のトリプルアクセルですが回転不足はあっても転倒はありません。転倒しなければアンダーローテーションまでならダブルアクセル比で高いスコアになりつつ、余ったダブルアクセルを後でシークエンスで使えますので十分です。

問題は2つのジャンプの抜け、ループとアクセル。優勝したシンジア選手との点差は9.06 2つのジャンプをしっかり飛んで、平均GOE+2を得ていれば9.05これよりスコアが上がります。トリプルアクセル以外ノーミスで優勝が見えるところにいました。これまで国内の試合でループジャンプが抜けて1回転になったことも、アクセルジャンプが1回転になったことも記録上ありません。冒頭二つの難しいジャンプを下りて少し硬くなったんでしょうか? とはいえフリーの合計121.75は国内の試合で出せてことの無い高いスコアですし、海外に弱いとか大事な試合に弱いとかそういうことではなさそうです。

2回飛ぶジャンプは結果的にルッツだけでしたがループが本来もう一つあったのでしょう。試合前の予定構成ではトリプルアクセル2本で提出していましたが勝負が懸かっていたからかそれには挑みませんでした。

基礎点は56.21と結果的に低めです。ジャンプ2本抜ければこうなります。ループとアクセルがしっかり入っていれば7.41基礎点が上がるので63.62になります。ジュニアルールでこの領域はトリプルアクセル以上のジャンプがないと出ません。

ノーミスでフリー130点が見えています。トリプルアクセル込みでノーミスなら135点まで出ます。ショートフリーノーミスで200点が見えるところまで来ました。

 

中井亜美選手、3位表彰台で2戦目をもらえるかどうか。同じ3位の櫛田選手よりスコアは上です。ただ外国人選手で負けた人数は中井選手の方が2人で多い。7戦目もらえると、6戦目でつぶしあいがあってややメンバー的に薄くなる可能性もあり、優勝でファイナルへ、という道も見えるのですが、どうなるでしょうか。

 

○男子シングル 上位12名

Pl Name Nation Total SP FS
1 Nikolaj MEMOLA ITA 225.76 83.04 142.72
2 Rio NAKATA JPN 200.17 68.91 131.26
3 Rakhat BRALIN KAZ 199.38 68.66 130.72
4 Robert YAMPOLSKY USA 196.67 65.05 131.62
5 Makar SUNTSEV FIN 189.03 67.11 121.92
6 Tsudoi SUTO JPN 183.30 69.64 113.66
7 Konstantin SUPATASHVILI GEO 176.09 57.11 118.98
8 Casper JOHANSSON SWE 175.05 57.39 117.66
9 Kyrylo MARSAK UKR 174.10 58.94 115.16
10 Nikita KOVALENKO ISR 173.58 59.06 114.52
11 Noah BODENSTEIN SUI 172.22 55.10 117.12
12 Grayson LONG CAN 167.60 55.08 112.52

男子は先週のオストラバからの連戦となったイタリアのメモラ選手が力の差を見せつける演技で圧勝しました。ショートもフリーも他を寄せ付けない点差です。オストラバでは214.11だったスコアが225.76まで伸ばし、ここまで3試合の全体の最高スコアになっています。2戦で2位と優勝。ジュニアグランプリは7戦あるので、1位2位はファイナル確定ではないのですが、実質的にはほぼ確定です。

2位に日本から派遣の中田璃士選手が入りました。2位争いは今大会混戦でしたが際どい中で抜け出しました。ショート3位で残り2人でのフリーだったため、スコアが出た瞬間暫定トップで表彰台確定、MFアカデミーから二人続けての滑走だったため独りぼっちのキスアンドクライでしたが歓喜&涙となりました。国際大会は初挑戦。昨シーズン全日本ノービスAで優勝という実績はありますが、国内でのベストスコアも166.59という選手。それが初国際大会で200点に乗せての表彰台となりました。

3位にはカザフスタンからラハトブラリン選手が入りました。ショートフリー通じてトリプルアクセル無しという構成でしたが滑りの良さが目立ち得点を伸ばしての逆転表彰台。カザフスタンはデニステン選手に続く選手がなかなかいなかったのですが、昨シーズン四大陸選手権で5位に入ったシャイドロフ選手と並んで将来が期待されます。

日本から、そしてMFアカデミーからもう一人派遣の周藤集選手はショート2位からフリーで伸びずに6位となりました。本人は大変悔しそうでしたが、ショートもフリーも国内の試合のスコアと比べてもベストスコアでした。

 

○中田璃士選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A   8.00   -0.69 7.31 -0.778
2 3T+3T   8.40   0.72 9.12 1.667
3 FCSp4   3.20   0.64 3.84 2.111
4 2Lz   2.10   0.09 2.19 0.556
5 3F   5.30   0.91 6.21 1.667
6 2A+1Eu+2S   5.61 x 0.14 5.75 0.444
7 CSSp3   2.60   0.11 2.71 0.444
8 3Lo+2A+SEQ   9.02 x 0.49 9.51 1.000
9 ChSq1   3.00   1.14 4.14 2.222
10 3S   4.73 x 0.80 5.53 1.778
11 CCoSp4   3.50   0.45 3.95 1.222
  TES   55.46   4.80 60.26  

今シーズンから実戦投入しているトリプルアクセルを初めてショートフリー2本とも着氷しました。2本飛ぶジャンプは結果的にトーループだけになっています。本来は3連続の3つ目が3回転サルコウになってサルコウも2回飛ぶ予定なはずでした。

ルッツが2回転になったのも含め、2つのジャンプが2回転になってしまいました。セカンド3回転がトーループトーループで入っています。構成的にはちょっともったいないところです。3つ目サルコウダブルアクセルからなので、まだセカンドサードで3回転を付けるには1つ目のジャンプを楽なものにしないとできない、ということなようですが、その辺が次の課題になって来るのだろうと思います。そこにトリプルアクセル2本目が組み込めるようになっていくと、自然と基礎点が上がって、全日本ジュニアで優勝争いできるところまで行けるのだろうと思います。幸か不幸か、中田選手も次のオリンピックは年齢制限で出られない世代となってしまったので、シニアに上がるまで4年、オリンピックまで8年あります。

 

○周藤集選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A+2T   9.30   0.91 10.21 1.222
2 3Lz!+2T ! 7.20   -0.34 6.86 -0.556
3 3Aq q 8.00   -3.54 4.46 -4.333
4 CSSp3   2.60   0.52 3.12 2.000
5 3Loq F 4.90   -2.45 2.45 -5.000
6 FCSp4   3.20   0.78 3.98 2.556
7 2Lz   2.31 x -0.09 2.22 -0.333
8 2A+1Eu+2S F 5.61 x -1.65 3.96 -5.000
9 CCoSp3   3.00   0.43 3.43 1.444
10 3F!< F 4.66 x -2.12 2.54 -5.000
11 ChSq1   3.00   0.07 3.07 0.111
  TES   53.78   -7.48 46.30  

周藤選手はトリプルアクセルを2本投入してきました。2本目は大きな減点入っていますが転倒はしていません。ショートフリー通じて3本転倒せずに着氷したのが初になります。フリーで2本降りたのも初です。フリーは中盤以降、はっきり言えばよれよれに見えるところがあったのですがそのあたりはこの初めてトリプルアクセル2本降りたというのが影響していたようにも感じます。2本飛ぶジャンプはそのトリプルアクセルとルッツなはずでしたがルッツの2本目は2回転になりました。

3転倒はやはり痛くGOEは著しいマイナスになっています。セカンド3回転無し、3連続も3回転付けたいところでしたが3つ目は2回転にとどまっています。

というわけで課題もいろいろあるわけですが、今回はとにかくこのシーズン序盤にトリプルアクセルを初めて2本転倒せずに降りたというのが大きかったと思います。トリプルアクセル2本飛ぶと体力的にこうなるんだというのを実地に感じ取ることができ、一番難しいところをこなせたことで、あとは、単発で飛ぶだけならきっとできるのであろう3回転のジャンプをしっかり飛んでいくだけになるのだろうと思います。

 

次戦は1週飛んで4戦目のアルメニアになります。女子はファイナルが懸かる吉田陽菜選手と、木下でもMFでもアカデミーでもないけれど荒川静香羽生結弦二人の金メダリストの高校の後輩千葉百音選手の2人、男子もファイナルが懸かる中村俊介選手と大学生になった片伊勢武アミン選手が出場予定です。吉田選手と中村選手は優勝でファイナル確定、2位でも実質的にはほぼ確定、3位でも高確率でファイナルへ進めそうな情勢です。

JGP オストラバ 濱田組連勝

ジュニアグランプリが2戦目。日本勢の活躍が続いています。今週はチェコのオストラバで行われました。

 

○女子シングル 上位12人

Pl Name Nation Total SP FS
1 Mao SHIMADA JPN 212.65 71.49 141.16
2 Minsol KWON KOR 189.37 62.73 126.64
3 Ikura KUSHIDA JPN 177.02 55.67 121.35
4 Mia KALIN USA 175.85 59.24 116.61
5 Heesue HAN KOR 170.00 57.06 112.94
6 Lorine SCHILD FRA 165.82 58.07 107.75
7 Sarina JOOS SUI 157.35 54.72 102.63
8 Elyce LIN-GRACEY USA 152.88 56.15 96.73
9 Nataly LANGERBAUR EST 152.54 56.00 96.54
10 Jiaying CHENG CHN 144.98 49.67 95.31
11 Sara-Maude DUPUIS CAN 143.17 51.11 92.06
12 Vivien PAPP HUN 143.04 54.22 88.82

島田麻央ジュニアデビュー戦。試合としては楽勝でした。212.65 日本ジュニア最高得点をジュニアデビュー戦で出してしまいました。日本女子としてISU公認の200点突破は現役選手としては先週の吉田陽菜選手に続いて10人目。これが210点突破になると5人目にまで絞られます。ご存じの通り新ルールで島田麻央選手は次回のオリンピックには出られなくなりました。オリンピックに出られるチャンスは7年半後です。これまでのスケート人生と同じくらいの長さをこれからのスケート人生で経てからのオリンピックになります。それまでこの能力を維持、そして進化していけるかどうか。まずは長いジュニア生活、前人未到の世界ジュニア4連覇を目指すことになるのかと思われます。

2位には韓国のクォンミンソル選手が入りました。2009年生まれの13歳で島田麻央選手と同じくこれがジュニアデビュー戦でした。フリーは猫型髪型で出てきてのキャッツ。あざといようでそんな感じもなく似合うプログラム。韓国ジュニアも激戦でこの200点弱のところに選手が多数いますが、世界ジュニアに出てこられるでしょうか?

3位に日本からもう一人、櫛田育良選手が入りました。ショートはループで転倒し8位と出遅れ。そこからフリーでルッツに!がつくなどはありましたが見た目にはクリーンな演技で逆転の3位表彰台を掴みました。

 

○島田麻央選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A   8.00   1.37 9.37 1.778
2 4T< F 7.60   -3.80 3.80 -5.000
3 3Lz+3T   10.10   1.35 11.45 2.333
4 FSSp4   3.00   1.03 4.03 3.444
5 3F+2A+SEQ   8.60   1.29 9.89 2.444
6 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.111
7 3S+3T+2T   10.78 x 1.23 12.01 2.667
8 3Lo   5.39 x 1.40 6.79 2.889
9 3Lz   6.49 x 2.02 8.51 3.444
10 CCoSp4   3.50   1.70 5.20 4.778
11 LSp4   2.70   1.20 3.90 4.444
  TES   69.16   10.29 79.45  

トリプルアクセルと4回転トーループの両立。日本勢初の試みでしたがそれは成功しませんでした。基礎点は69.16 昨シーズンの日本勢の最高基礎点が吉田陽菜選手の67.73 ISU公認では樋口新葉選手の66.42がありますが、それを早くも超えています。これ、ジュニアルールですのでステップが入っていません。ショートでステップがレベル4でしたので同じようにレベル4を取れるとすると基礎点は3.9上がって73.06となります。昨シーズン73点以上の基礎点を出したのはロシア勢しかいません。

4回転トーループが回転不足でしたがこれが回転足りると基礎点は1.9上がって74.96まで出ます。ここまで来ると、昨シーズンでもこれより上は、トゥルソワ、ワリエワ、シェルバコワ、アカチエワの4選手だけになります。そこから基礎点を上げるにはコンビネーションの組み換えで3連続に2Aを2本入れるシークエンスにして、3F+3Tを前半に持ってくる、ということで可能で基礎点がさらに2.11上げられて77.07になります。現状の持ち手の組み合わせで行けるのはそのあたりまでかと思います。その上はトリプルアクセルか4回転の2本目投入ということになっていきます。女子のトリプルアクセルや4回転持ちはダブルアクセルが余って来るのですが、これをルール改正でシークエンスに使えるようになったことで基礎点を上げやすくなっています。

ジャンプがすごすぎて目立っていませんが、スピンも高い水準にあります。CCoSpは平均GOE+4.778 9人のジャッジのうち7人が+5を付けました。それも含め今大会のスピンのスコアは26.14 昨シーズンの日本勢の最高は坂本花織選手の25.85 過去遡っても確認できた範囲では日本勢初のスピン26点台ということになりそうです。

基礎点77.07でノーミスすると日本勢初の技術点90点越えが現実的に見えてきます。これが出せると多少PCSがジュニア扱いされても全日本勝ってしまう水準になります。

なお、余計なことを言っておくと、ルールが多少異なりますが、2019年8月、カミラワリエワ選手のジュニアグランプリデビュー戦のスコアは200.71 フリーは基礎点63.81で138.40というスコアでした(ショートのコンビネーションで転倒しています)。

 

○櫛田育良選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz!+3Tq ! 10.10   -1.26 8.84 -2.111
2 3S+3T   8.50   1.17 9.67 2.556
3 2A   3.30   0.66 3.96 2.000
4 FSSp3   2.60   0.67 3.27 2.667
5 3Lz!q ! 5.90   -1.18 4.72 -2.000
6 3F   5.83 x 1.29 7.12 2.444
7 ChSq1   3.00   1.71 4.71 3.556
8 LSp4   2.70   0.77 3.47 3.000
9 3Lo   5.39 x 1.19 6.58 2.333
10 2A+2T+2Lo   6.93 x 0.52 7.45 1.667
11 CCoSp4   3.50   0.85 4.35 2.111
  TES   57.75   6.39 64.14  

櫛田育良選手は冒頭からセカンド3回転2本立てという構成でした。最初から最後までクリーンに滑ったように見えたのですが、ルッツからみで!とqが出て減点されています。ただ最終的な順位にはこの辺は影響しなかったと思います。

2回飛ぶジャンプはルッツとトーループ。2回飛ぶルッツで!が2つはちょっと痛いです。ショートと合わせて3つすべて!判定。国内の試合では今年に入って13回とんで1回しか!をもらっていなかったのですがこの辺は国際大会の緊張で癖が出てしまったか、国際審判員との基準の差か、どちらでしょう。

基礎点は57.75 ステップは1度だけレベル4を取れたことがありますが、今大会のショートもレベル3でしたのでまだレベル3が標準とすると、シニアルールなら基礎点が3.3上がって61.05にまではなります。スピンのレベル3を4に出来れば61.40までなります。シニア上位の普通くらいの基礎点です。そこからさらに基礎点を上げるには1.1倍のジャンプ構成が弱いのでここにセカンド3回転やルッツジャンプなどを入れていく必要がありそうです。

櫛田選手はJGP2戦目が決まっていません。残りの枠が3つありますが、今大会3位なので2位と持っている柴山選手より優先順位はおそらく低くなります。表彰台には乗ったのでJGP0戦のサブのメンバーよりは優先順位は上になるでしょうか? 残りの中井亜美選手、千葉百音選手次第で2戦目あるかないか変わってきそうです。

この先、どれだけ強い選手でも4年間ジュニアに残留することになるので、JGPの枠詰まり問題が生じてきそうです。

 

○男子シングル 上位12名

Pl Name Nation Total SP FS
1 Nozomu YOSHIOKA JPN 219.68 72.03 147.65
2 Nikolaj MEMOLA ITA 214.11 71.56 142.55
3 Andreas NORDEBACK SWE 212.37 72.01 140.36
4 Minkyu SEO KOR 209.59 74.39 135.20
5 Maxim ZHARKOV USA 193.48 71.04 122.44
6 Kai KOVAR USA 191.65 69.11 122.54
7 Aleksa RAKIC CAN 182.82 65.33 117.49
8 Haru KAKIUCHI JPN 178.01 64.58 113.43
9 Lukas VACLAVIK SVK 176.46 59.89 116.57
10 Tonghe TIAN CHN 166.56 59.12 107.44
11 Aleksandr VLASENKO HUN 164.85 57.08 107.77
12 David SEDEJ SLO 146.27 49.64 96.63

ジュニア最終シーズンにしてジュニアグランプリ初出場となった吉岡希選手がショート2位から逆転優勝を果たしました。ショートは最終グループ6人が5.28の差の中に並ぶ大混戦。そのなかでただ一人フリー4回転を決め抜け出しました。国内でも8月のげんさんサマーカップで優勝した時の197.73がベストスコアだったのですが、それをはるかに上回る219.68での優勝。ジュニアルール初のショート70点台ですし、フリーは昨シーズンまで120点台前半がやっとだった選手が一気に150点近いところまで来ました。吉岡選手は5戦目のグダンスクが決まっていますのでそこでファイナル進出を賭けることになります。

2位にはイタリアのメモラ選手が入りました。2003年生まれの18歳で吉岡選手同様ジュニア最終シーズンです。グラスル選手リッツォ選手に次ぐイタリアの三番手を争う位置にいる選手です。昨シーズンはヨーロッパ選手権15位でした。4回転がまだないのですが今大会はフリーで2本のトリプルアクセルをクリーンに決めて初表彰台となっています。

3位はスウェーデンのノルデバック選手。こちらも2004年3月生まれでジュニア最終シーズンとなっています。昨シーズン世界ジュニア10位。212.37はそのスコアを上回るパーソナルベスト。ショート3位を守り切ってジュニアグランプリ初表彰台となりました。

ショート首位の韓国ソミンキュ選手はフリーで伸びず4位。トリプルアクセル無しでショート首位に立ち驚かされましたが、さすがにフリーでトリプルアクセル無し構成は男子では辛く大学生たちに逆転されました。まだ13歳のジュニア1年目ですが今大会ショートフリーいずれもPCSではトップでした。また、スピン、ステップ系要素のスコアも全体トップです。年齢を重ねて高難度ジャンプが入ってきたら明らかにトップまで行く逸材な感じがあります。ただし、島田麻央選手同様ミラノオリンピックには出られません。

日本から派遣のもう一人、垣内珀琉選手は8位でした。国際大会は4年半ぶり。178.01というスコアはげんさんサマーカップの183.47を下回り本人比でも普通でしたが、それでも世界ジュニアのミニマムスコアは獲りましたし、8位はぎりぎり世界ランキングポイントも入りますし、久しぶりの国際大会は一定の成果を得たと思います。

 

○吉岡希選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4T+2T   10.80   1.49 12.29 1.667
2 3F   5.30   1.06 6.36 2.000
3 3A   8.00   1.26 9.26 1.556
4 FCSp2   2.30   0.13 2.43 0.556
5 3Lo   4.90   0.77 5.67 1.556
6 4T   10.45 x 2.44 12.89 2.556
7 3A+1Eu<<+2S <<  10.23 x -3.20 7.03 -4.000
8 ChSq1   3.00   1.36 4.36 2.667
9 3Lz+2A+SEQ   10.12 x -0.93 9.19 -1.333
10 CSSp4   3.00   -0.13 2.87 -0.556
11 CCoSp3   3.00   0.47 3.47 1.556
  TES   71.10   4.72 75.82  

4回転2本成功。4回転成功は初めてではないですが、1つのフリーで2本成功はこれが初です。2回飛ぶジャンプは回転トーループトリプルアクセル。結果的にセカンド3回転が入らず、3Tと3Sが余った形になりました。そのあたりとスピンには伸びしろがはっきり見られます。ステップはレベル4経験がまだないのでレベル3としてシニアルールで足されると基礎点は3.3上がって74.40 ここに2回転になったトーループサルコウが3回転に出来てオイラーもちゃんと回った場合6.75基礎点が上がって81.15になるので基礎点80点台到達です。スピンのレベルも取れると82.55になります。これがまず目指すところになりそうで、そこまで行くと日本のシニア上位とも戦えて、シニアのグランプリシリーズの枠に入ってこられる可能性もありそうです。

その辺の細かいいろいろはありますが、今回はとにかく4回転2本が決まったことが大きかったと思われます。

 

○垣内珀琉選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.333
2 3Lo   4.90   0.77 5.67 1.667
3 4T< F 7.60   -3.80 3.80 -5.000
4 CSSp4   3.00   -0.34 2.66 -1.222
5 3F! ! 5.30   -0.98 4.32 -1.778
6 3S+2T+2Lo   8.03 x 0.00 8.03 0.000
7 2A+2T<< <<  4.07 x -1.56 2.51 -4.667
8 ChSq1   3.00   0.64 3.64 1.222
9 3Lz   6.49 x 0.59 7.08 1.000
10 FCSp2   2.30   0.00 2.30 0.000
11 CCoSp3   3.00   -0.04 2.96 -0.111
  TES   57.79   -3.29 54.50  

垣内選手は4回転トーループに挑みましたが回転不足で転倒となりました。まだこれまで4回転トーループの着氷はありません。一度だけげんさんサマーカップで回転が足りて基礎点満額入ったことはありますがその時も転倒でした。また、トリプルアクセルが構成にありません。これまで試合でトリプルアクセルが要素として入ったこともありません。現在16歳の高校2年生。そろそろ高難度ジャンプが欲しい時期ではあると思います。

 

次戦はJGP3戦目、ラトビアのリガ開催です。日本からは男子シングルで中田璃士選手と周藤集選手。女子シングルに中井亜美選手が出場します。

JGP クールシュベル 3年ぶり派遣の日本勢ダブル優勝

ジュニアグランプリシリーズが始まりました。一昨年は全試合中止。昨シーズンはシリーズは行われましたが日本からの派遣は中止となり、日本勢のジュニアグランプリ派遣は3年ぶりとなります。ロシア勢もいない今シーズン。3年前とは様変わりしているジュニアの勢力図ですがシーズン序盤から日本勢の活躍が楽しめる展開になっています。

 

○女子シングル 上位12人

Pl Name Nation Total SP FS
1 Hana YOSHIDA JPN 203.52 66.56 136.96
2 Ayumi SHIBAYAMA JPN 188.39 67.09 121.30
3 Yujae KIM KOR 185.67 60.87 124.80
4 Maria Eliise KALJUVERE EST 169.32 54.06 115.26
5 Clare SEO USA 168.34 54.23 114.11
6 Lia PEREIRA CAN 154.59 50.63 103.96
7 Nella PELKONEN FIN 153.98 58.42 95.56
8 Ella CHEN ISR 150.07 53.14 96.93
9 Seojin YOUN KOR 146.86 49.34 97.52
10 Sarah EVERHARDT USA 144.13 52.93 91.20
11 Carla Anthea GRADINARU SUI 139.57 50.90 88.67
12 Lola GHOZALI FRA 134.93 46.27 88.66

ジュニア4年目にして初のジュニアグランプリ出場になった吉田陽菜選手が200点超えでショート2位から逆転の初優勝を飾りました。日本女子の現役選手でISU公認200点超えは9人目。ジュニアカテゴリーでの200点突破は本田真凜選手以来2人目です。年齢的にもシニアでいい選手ではあるのですが、2シーズンJGP派遣無しや昨シーズン世界ジュニアへ出損なっていることもあり、シニアに上がってもグランプリの枠がない、ということでだと思いますが、ジュニアグランプリへ回ってきて、しっかりここで優勝しました。こうなるとファイナルへ進みたいところ。次のエントリーは4戦目のアルメニアです。最大の敵はコロナでしょうか。おそらく吉田陽菜選手と島田麻央選手を最初から2戦エントリーにして、しかも6戦目7戦目はエントリー者未定にしたのは、この2人はコロナにあたって1戦出られなくても6戦目7戦目でリカバリーできるように、との連盟の思惑なような気がしますが、いずれにしてもファイナルへ進出して、来シーズンのシニアのグランプリ枠獲得へつなげていってほしいです。

2位も日本から柴山歩選手、ということで日本のワンツーです。ショートは首位。フリーのトゥーランドットはミスがありましたが2位表彰台を確保しました。ISU公式試合は初めての出場ですので1も2もなくパーソナルベストなわけですが、ISU公認試合以外でも国内外試合含めてこの188.39はベストスコアになっています。昨シーズンは伸び悩んだ印象でしたが今シーズンは最初から国際大会で一つ結果を出した形になりました。ジュニアグランプリ2戦目は確定していませんが、1戦目がこの結果なら2戦目をもらえそうにも感じます。

3位は韓国からキムユジェ選手が入りました。フリーでトリプルアクセルを着氷。追い上げを見せました。2009年6月生まれの13歳。現在のジュニアカテゴリーでは最年少の位置になります。昨シーズンの世界ジュニアで2位4位5位を占めた韓国ジュニアは層が厚いです。

 

○吉田陽菜選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A   8.00   -1.37 6.63 -1.556
2 2A+3T   7.50   1.14 8.64 2.778
3 3Lo   4.90   1.26 6.16 2.556
4 CCoSp4   3.50   0.90 4.40 2.556
5 SSp4   2.50   0.71 3.21 2.889
6 3F! ! 5.30   0.30 5.60 0.556
7 3Lzq+3T q 11.11 x -0.34 10.77 -0.444
8 FCCoSp4   3.50   0.85 4.35 2.444
9 3Lz   6.49 x 1.18 7.67 2.000
10 ChSq1   3.00   1.93 4.93 3.778
11 3S+2A+2T+SEQ   9.79 x 0.92 10.71 2.111
  TES   65.59   7.48 73.07  

吉田陽菜選手はフリー冒頭でトリプルアクセルを着氷。ただしステップアウトで減点されOEはマイナスとなりました。ただ、極めて転倒率が低いトリプルアクセルであり、ダブルアクセル比で十分におつりの来る得点を吉田陽菜選手はほとんどの場合に取れています。

スピンオールレベル4 これはショートでもそうでしたしそれだけでなく、今年に入ってからのすべての国際試合でレベル4です。

課題はルッツからのコンビネーションなんでしょうか。ショートでも1つ目も2つ目もqが付き、フリーもルッツでqが付きました。

トリプルアクセルを持つ吉田陽菜選手はダブルアクセルジャンプが旧ルールでは1つあまります。シークエンスの1.0倍化に伴い、3連続にダブアクセル入りのシークエンスを付けました。これにより以前の3S+2T+2Loと比べて1.76基礎点が上がっています。欲張ってトリプルアクセル2本構成にすると2A+3Tが3A+2Tになり基礎点が1.80上がって、さらにダブルアクセルが1つ余るので3S+2A+2Tを3S+2A+2Aに替えて基礎点をさらに2.20上げることができます。トリプルアクセル2本目投入の価値が、シークエンス1.0倍化ルールで上がっていますので、先々そういった構成になっていくかもしれません。

コンビネーションを完璧に決めてトリプルアクセルもしっかりした着氷をすればもうあと5点ほど上へ行けますし、ショートで5.29を得たステップ要素も入るシニアルールなら技術点80点を楽に超えてくることができる、というのが見えました。ショートからトリプルアクセルのはいるシニアルールで2本ノーミス揃えたら220点台まで乗せることができる計算です。そこまで行くと全日本表彰台まであります。世界ジュニア狙いのはずが世界選手権に回る、なんて芽があるかどうか。

 

○柴山歩選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   0.57 3.87 1.778
2 3Lz   5.90   0.34 6.24 0.778
3 FSSp3   2.60   0.56 3.16 2.000
4 3Lo   4.90   0.91 5.81 2.000
5 3S   4.30   0.80 5.10 1.889
6 ChSq1   3.00   1.21 4.21 2.333
7 3Lz+3T   11.11 x 1.01 12.12 1.778
8 CCoSp4   3.50   0.85 4.35 2.556
9 1A   1.21 x 0.00 1.21 0.000
10 3F+3T   10.45 x 1.21 11.66 2.333
11 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
  TES   52.97   8.54 61.51  

柴山選手は冒頭に単独のダブルアクセルがいます。これは完成形ではトリプルアクセルを入れたい、という意志の表れかと思います。昨シーズンも近畿選手権まではトリプルアクセルを構成に入れていましたが、すべてダウングレード扱いになっていました。おそらく現在もトリプルアクセル習得を目指しているのだろうと思われます。

当初の予定構成では2つ目の要素でコンビメーションが入るはずでした。少し着氷が乱れて2つ目を飛ばなかったようにも見えましたがあるいは最初から1.1倍にコンビネーションをすべてつぎ込むことが頭にあったかどうか。1.1倍で3連続予定のところが3Lz+3Tにしました。そうなるとダブルアクセルから3連続にするかな? といったところでしたがこれがミス。最後に3F+3Tをリカバリーで入れます。結果的に2A+2T+2Loが1Aに置き換わったという形になり、基礎点6.93が1.21になった計算になります。結局ノーミスでも優勝には届かなかったわけですが、それでも最大限攻めていって何とか勝を得たいというものを感じました。

最後のジャンプでリカバリーでコンビネーションにして3Tを付けたのは大きな意味がありました。これが単独ジャンプであったり、あるいは安全に2Tを付けただけだったりした場合、スコア的に足りずに3位になるところでした。この3Tが入ったことで2位を得ています。このリカバリー3Tがもしかしたらファイナルへつなげた、みたいなことに最終的になる可能性もあります。

ノーミスならフリーの技術点はもうあと6.5点ほど上へ行けますし、ショートではステップレベル4で4.96のスコアを得ていました。シニアルールノーミスなら200点が見えた、ということになるかと思います。

柴山選手はあと3シーズンジュニアが続く形になりますがミラノオリンピックシーズンにはシニア解禁です。ジュニアを4シーズンやってシニアに上がった年にオリンピックシーズン、というのは坂本花織選手と同じ星回り。同じ展開でオリンピックを掴む未来があるでしょうか。

 

○男子シングル 上位12名

Pl Name Nation Total SP FS
1 Shunsuke NAKAMURA JPN 219.65 77.68 141.97
2 Younghyun CHA KOR 196.15 70.25 125.90
3 Ryoga MORIMOTO JPN 188.66 69.46 119.20
4 Noah BODENSTEIN SUI 184.42 61.26 123.16
5 Michael XIE USA 180.95 66.08 114.87
6 Ian VAUCLIN FRA 175.44 61.49 113.95
7 Adam HAGARA SVK 174.70 56.09 118.61
8 Lucius KAZANECKI USA 167.85 55.45 112.40
9 Jean MEDARD FRA 155.10 56.81 98.29
10 David LI CAN 154.74 51.27 103.47
11 Makar SUNTSEV FIN 147.30 52.93 94.37
12 Tommaso BARISON ITA 142.13 51.89 90.24

優勝は中村俊介選手。ジュニアグランプリデビュー戦初優勝。これで日本勢のダブル優勝木下アカデミーダブル優勝です。2005年8月6日生まれの17歳。年齢も吉田陽菜選手と同じです。全日本ジュニアで2年連続6位ですし、昨シーズンあたりからジュニアグランプリ派遣があってもよかったのですが、コロナのせいで今回が初出場となりました。スコア的には楽勝。ただ、今シーズン国内ですでに出ている3試合ではフリーで120点前後であり、そのままのスコアだと負けるところでした。結果的に出来が良かったので楽勝に見えただけでノープレッシャーで楽勝、と最初から思えるような試合ではなかったようです。ISU公認試合は初めてでしたので最初のパーソナルベストにこれがなるわけですが、国内の試合をすべて含めても、ショート、フリー、トータル、すべてベストスコアでした。初の200点突破になります。JGP次戦は4戦目のアルメニア、吉田陽菜選手と同じスケジュールになります。

2位には韓国からチャヨンヒョン選手が入ってきました。ショート2位を守り切っての2位です。2003年9月生まれの18歳。ジュニア最後のシーズンで初のジュニアグランプリ表彰台となっています。

3位に森本涼雅選手が入りました。2007年2月生まれの15歳。3年前の全日本ノービスA優勝者。展開次第では今回の遠征で自分だけ表彰台に乗らずに帰ることになるかも、という変なプレッシャーがかかるフリーでしたがしっかり乗り切って表彰台を確保しました。森本選手は2戦目がまだ固まっていませんが、未定の残り2枠に入れてもらえるかどうか? 微妙なところでしょうか。

 

中村俊介選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4T F 9.50   -4.75 4.75 -5.000
2 3A   8.00   2.40 10.40 2.778
3 CSSp4   3.00   0.81 3.81 2.556
4 3Lz+3T   10.10   0.51 10.61 0.889
5 3F   5.30   1.06 6.36 2.111
6 3A+3T   13.42 x 2.06 15.48 2.556
7 ChSq1   3.00   1.00 4.00 1.889
8 FCSp2   2.30   -0.46 1.84 -2.000
9 3Lz*+1Eu+3S   5.28 x 0.25 5.53 0.556
10 3Loq q 5.39 x -0.70 4.69 -1.333
11 CCoSp4   3.50   0.40 3.90 1.111
  TES   68.79   2.58 71.37  

中村俊介選手は4回転トーループに挑んでいますが今回は転倒でした。げんさんサマーカップでは転倒はしないけれどGOEは大きくマイナス、というところまで来ています。今シーズンは国内で3戦こなしてこれが4戦目ですが、4回転トーループはq以上の回転で基礎点は満額入るところまで来ています。後はきれいに降りるだけ。

トリプルアクセルを2回、トリプルトーループを2回飛んだあと、トリプルルッツを飛んでザヤックルールで弾かれ基礎点無しに。トリプルアクセルのコンビネーションで、あまりにきれいに決まったばかりにトーループを思わず3回転にしてしまったんでしょうか。これを2回転にしておけば基礎点は3.30上がって72.09になり、フリーのスコアが140点台でトータル220点に乗るところでした。

 

○森本涼雅選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   0.61 3.91 1.778
2 3Lz+3T   10.10   0.00 10.10 0.000
3 3Fe+2T e 5.54   -0.60 4.94 -1.556
4 FCSp4   3.20   0.64 3.84 2.000
5 3Lo   4.90   0.70 5.60 1.333
6 FCSSp4   3.00   0.69 3.69 2.111
7 2A+1Eu<<+3Sq <<  8.36 x -2.15 6.21 -5.000
8 3Fe e 4.66 x -2.06 2.60 -4.778
9 3Lz   6.49 x 0.67 7.16 1.111
10 CCoSp4   3.50   0.45 3.95 1.000
11 ChSq1   3.00   0.93 3.93 1.444
  TES   56.05   -0.12 55.93  

森本選手は構成にまだ4回転は無いですしトリプルアクセルも無いです。今年5月のレイクカップからトリプルアクセルに試合で挑んでいますが、これまで3試合いずれもダウングレードに終わっています。今回は冒頭ダブルアクセルで回避です。表彰台を確保する現実的な判断だったかもしれません。

2回飛ぶジャンプは3回転のルッツとフリップ。このフリップが2つともeが付きました。課題になるジャンプです。

スピンはオールレベル4 ショートもそうでした。木下トロフィーではショートフリーの6回のうち1つしかレベル4がなかったところから一気に改善されていました。

この構成でこのスコアなのでトリプルアクセルが入ればすぐに200点が見えますし、入らなくてもノーミスなら200点くらいまでは行けそうに感じます。

 

次週はチェコのオストラバで2戦目。日本からはこの試合で4種目フルエントリー。男子シングルに吉岡希選手と垣内珀琉選手。女子シングルはついにジュニアデビューの島田麻央選手と櫛田育良選手の2人。ペアで村上遥奈&森口澄士組、アイスダンスに来田奈央&森田真沙也組となります。

 

 

 

 

げんさんサマーカップ 欠場多し

近年では夏のローカル大会の目玉化しているげんさんサマーカップが行われました。

今シーズンは初めて世界チャンピオンのエントリーもあったのですが、残念ながら欠場でした。学校行事参加による調整不足とか言わずに、単位取れなさそうなので欠場とか言ってもらえたら、そのキャラと相まって受けたんじゃないかと思いますが、いずれにしても欠場。まあ、すでに出る大会を選べる立場ですので仕方ないとは思いますが、ただのファンからしたら残念ではありました。

 

○女子シングルシニア(上位12名)

Pl Name 所属 Total SP FS
1 三  原  舞  依 シスメックス 207.61 69.16 138.45
2 河  辺  愛  菜 中京大中京高校 179.67 66.58 113.09
3 住  吉  りをん オリエンタルバイオ/明治大学 176.29 55.25 121.04
4 横  井  ゆは菜 邦和みなとSC/中京大 170.96 57.07 113.89
5 大  庭      雅 東海東京FH 166.69 57.38 109.31
6 籠  谷  歩  未 同志社大学 164.61 56.74 107.87
7 永  見  千代乃 ノートルダム清心女子大学 157.16 55.11 102.05
8 横  井  きな結 中京大中京高校 156.54 54.15 102.39
9 山  下  真  瑚 中京大学 155.16 51.86 103.30
10 渡  辺  倫  果 法政大学 149.55 60.14 89.41
11 青  木  祐  奈 日本大学 148.50 55.03 93.47
12 竹  野  仁  奈 筑紫女学園大学 143.89 46.63 97.26

世界チャンピオンを欠いた試合の優勝は、現四大陸チャンピオンの三原舞依選手でした。ただ一人200点を超えるスコアで圧勝です。途中で曲が止まるとか、もはや全く関係なく勝ちました。グランプリシリーズは4戦目のイギリスと6戦目のフィンランドという通常では入らない地での2試合。メンバー的にはイギリスはユヨン、レビト、テネルにグバノワ、となかなかのメンバーですが初優勝のチャンスはあるメンバーとも感じます。

2位には河辺愛菜選手が入ってきました。実績的には順当な位置なんだと思いますがスコアが伸びませんでした。今回はトリプルアクセル投入はショートフリー共になし。今シーズンは新天地へ移籍というか故郷帰郷というか、拠点を変えて臨んでいますが、まだまだ調整段階でしょうか。グランプリは2戦持っていて、3戦目のフランスと6戦目のフィンランドです。

3位には住吉りをん選手。ショート2転倒でなかなかひどいことになっていましたがフリーで盛り返して3位表彰台。大崩れしても170点台後半くらいまでは来ました。フリーは冒頭4回転投入もアンダーローテーションで転倒。まだ決まってきません。グランプリは1戦、フランスを持っています。

グランプリ組の横井ゆは菜選手が4位。ショートはフリップが2回転になり零点、フリーもジャンプが不安定でスコアが今一つ伸びてきませんでした。グランプリは今シーズンは1戦、2戦目のスケートカナダにエントリーです。

その他大庭選手、籠谷選手といった全日本常連組が上位に入ってきました。昨年全日本6位の渡辺倫果選手は10位。ショートフリー、3本飛びに行ったトリプルアクセルはすべて転倒に終わります。スコアは伸びませんでしたが、まだまだ調整段階でしょうか。

女子のシニアは松生理乃選手も欠場、吉田陽菜選手はジュニアグランプリを控えコロナ対策を指示されたようでやはり欠場。200点級の選手たちの欠場が目立ち、ローカル大会では仕方ないとはいえ、少し残念な展開となりました

 

三原舞依選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A+3T   7.50   0.84 8.34 2.000
2 3Lz   5.90   1.18 7.08 2.200
3 3S   4.30   0.86 5.16 1.800
4 3F!q ! 5.30   -1.06 4.24 -2.000
5 FSSp4   3.00   0.70 3.70 2.200
6 CCoSp4   3.50   0.93 4.43 2.400
7 2A+3T   8.25 X 0.84 9.09 1.800
8 3Lz+2T+2Lo   9.79 X 0.79 10.58 1.400
9 3Lo   5.39 X 0.98 6.37 1.800
10 StSq4   3.90   1.43 5.33 3.600
11 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.000
12 FCCoSp4   3.50   1.17 4.67 3.200
  TES   63.33   10.16 73.49  

三原選手は大技なしの構成です。2回飛ぶジャンプはルッツとトーループ。スピンステップオールレベル4 ショートでもスピンステップレベル4でした。減点ついたのはフリップ。!マークがついています。これ、ショートでも同じようにフリップに!がついてGOE減点。今の構成の中ではフリップが唯一残る課題なようです。

 

○男子シングルシニア(上位12名)

Pl Name 所属 Total SP FS
1 山  本  草  太 中京大学 263.84 95.15 168.69
2 友  野  一  希 上野芝スケートクラブ 218.48 82.43 136.05
3 三  浦  佳  生 オリエンタルバイオ目黒日大高 203.88 80.11 123.77
4 山  隈  太一朗 明治大学 183.12 66.58 116.54
5 櫛  田  一  樹 倉敷FSC 153.56 48.11 105.45
6 佐  藤  由  基 日本大学 149.45 51.47 97.98
7 小  林      隼 同志社大学 144.41 49.31 95.10
8 鈴  木  楽  人 法政大学 126.80 41.54 85.26
9 鈴  木      空 就実大学 126.59 49.64 76.95
10 嘉手納  宙  大 臨海フィギュアSC 125.34 42.29 83.05
11 三  島  悠  生 ひょうご西宮FSC 122.34 42.47 79.87
12 和  田  龍  京 中京大学 121.01 47.33 73.68

男子のシニアでは山本草太選手が優勝しました。スコア的には圧勝。お肉初ゲットです。山本選手は昨シーズンまで国内では240点台がベストだったのですが、7月のみなとアクルス杯で271.41を出したのに続いて今大会でも260点台まで乗せてきました。今シーズン、世界選手権は激しい3枠目争いが予想されるわけですが、その有力候補です、というのをこの7月8月に見せているように感じます。グランプリは3戦目のフランスにエントリー。270点前後を出していけば初の表彰台も見えそうにも感じます。

2位に友野一希選手。げんさん5連覇ならず。4連覇の前の年はジュニアで勝ってますので、サマーカップにげんさんがスポンサーとしてついてから5戦全勝だったのですが、今シーズンは初めて肉を取り逃しました。スコア的にも本人比でなんともあれなスコア。世界選手権6位の実力者ですので、夏の調整試合でどんなスコアでも問題はないのだろうと思いますが、肉待ちのご家族はさぞ残念だったろうと思います。グランプリシリーズは3戦目フランスと5戦目NHK杯のエントリー。調子を上げてファイナルを目指してほしいようにも感じます。

三浦佳生選手が3位表彰台。コロナで練習不足でした、とのことですが、それがあからさまに出たスコア。フリーは決まった4回転なし。昨シーズンは4大陸でケガをし世界ジュニアも満身創痍状態で終え、この夏にはコロナ。練習詰めてない要素山盛りで大変そうですが、今シーズンは本格的なシニアデビューというか昇格というかのシーズン。グランプリはスケートカナダ1戦だけになってますが、試合結果次第でNHK杯地元枠あるか? ということになるのでしょう。復調期待です。

 

○山本草太選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4S   9.70   2.91 12.61 2.800
2 4T+2T   10.80   1.58 12.38 1.600
3 4T   9.50   2.85 12.35 2.800
4 3A+1Eu+3S   12.80   -1.33 11.47 -1.000
5 FCSp4   3.20   0.64 3.84 1.800
6 StSq3   3.30   1.10 4.40 3.400
7 2A   3.63 X -0.66 2.97 -1.800
8 3F+3T   10.45 X 1.06 11.51 2.200
9 3Lz   6.49 X -1.77 4.72 -3.000
10 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.000
11 CSSp3   2.60   0.78 3.38 3.000
12 CCoSp2   2.50   0.50 3.00 2.200
  TES   77.97   9.16 87.13  

本草太選手はフリーで4回転3本を着氷しました。ただその後のジャンプで減点が散見します。スピンではレベル2や3も見られます。このあたり、昨シーズン前半の友野選手の状態に近い印象です。難しいところはクリアできたのだけど、そのあとのそれよりは簡単なはずの要素で取りこぼす。とはいえ、難しいところが出来たのですから、あとは細部の詰めであって、それが完成した時、全日本の表彰台も見えてくる、というところかもしれません。フリーで4回転3本をすべて加点で決めたのは初めてのこと。さらに今回はショートフリー通じて4回転5本を加点付きで成功でした。

 

○女子シングルジュニア(上位12名)

Pl Name 所属 Total SP FS
1 山  田      恵 木下アカデミー 148.65 48.07 100.58
2 和  田  薫  子 グランプリ東海クラブ 147.08 50.53 96.55
3 奥  野  友莉菜 駒場学園高校 137.36 53.63 83.73
4 清  水  咲  衣 大阪スケート倶楽部 134.23 47.73 86.50
5 後  藤  千  弦 中京大中京高校 126.85 39.90 86.95
6 矢  口  真  央 スペリオール愛知FSC 125.19 45.33 79.86
7 大  坪  瑚  子 邦和みなとスケート部 122.87 41.10 81.77
8 杉  山  菜  那 京都宇治FSC 122.76 43.17 79.59
9 鴨  井  彬莉彩 パピオフィギュアクラブ 122.73 45.26 77.47
10 吉  本      玲 神戸クラブ 119.97 47.65 72.32
11 伊  勢  野  花 広島スケートクラブ 118.89 43.66 75.23
12 田  邊  桜  香 星槎国際横浜 118.67 44.05 74.62

女子のジュニアは島田麻央選手、柴山歩選手、櫛田育良選手といったところがジュニアグランプリを控えコロナ対策で欠場。ジュニアグランプリ組がこぞって欠場となってしまったのでややスコアが伸びない展開となりました。

優勝は山田恵選手。昨シーズンまでは福岡のハピオフィギュアクラブ所属でしたが今シーズンから木下アカデミーに入ってきています。全日本ノービスAで昨年4位に入っていて今シーズンからジュニアに上がってきた選手です。

2位には和田薫子選手。昨シーズン全日本ノービスAで2位に入り今シーズンからジュニアに上がってきています。昨シーズンの2位とは島田麻央選手の次、という意味ですから価値があります。2月の愛知県内の試合で170点台を出していますので、ちょっと今回のスコアは本人比で残念だったかもしれません。ジュニアグランプリはサブメンバーとしてエントリーに名前が見られます。

3位には東京からエントリーしてきた奥野友莉菜選手が入りました。昨年のこの大会はショート落ちしていた選手。ジュニア3年目で今年高校1年生になりました。昨年全日本ジュニア12位。全日本進出を狙いたいくらいの位置の選手かと思います。

 

○女子の高難度ジャンプ要素

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
SP 渡辺倫果 1 3A<< <<   F 3.30   -1.65 1.65 -5.000
FS 渡辺倫果 1 3Aq q  F 8.00   -4.00 4.00 -5.000
FS 住吉りをん 1 4T< <  F 7.60   -3.80 3.80 -5.000
FS 横井きな結 1 3A< <  F 6.40   -3.20 3.20 -5.000
FS 渡辺倫果 3 3A<+REP <  F 4.48   -3.20 1.28 -5.000

今大会で高難度ジャンプを要素に入れたのは3人。渡辺倫果選手はトリプルアクセル3本に挑みましたがすべて転倒に終わりました。シーズン序盤としてはありなチャレンジだったと思います。

トリプルアクセルはもう一人、横井きな結選手。こちらも回転不足で転倒。3シーズンぶりのトリプルアクセル成功はなりませんでした。

住吉りをん選手は4回転トーループに挑戦。これも回転不足で転倒。まだ、4回転成功を掴めていません。住吉選手はフリーの予定要素で1つ目4Tのあと2つめに4Sの記載があったのですが、4回転2種類を将来的には組み込んでいくつもりなんでしょうか。

 

○男子シングルジュニア(上位12名)

Pl Name 所属 Total SP FS
1 吉  岡      希 法政大学 197.73 66.68 131.05
2 中  村  俊  介 木下アカデミー 194.94 73.89 121.05
3 垣  内  珀  琉 ひょうご西宮FSC 183.47 60.79 122.68
4 田  内  誠  悟 名東FSC 177.71 60.76 116.95
5 佐々木  晴  也 京都大学 173.71 50.82 122.89
6 中  田  璃  士 MFアカデミー 166.59 53.01 113.58
7 高  橋  星  名 木下アカデミー 164.90 53.41 111.49
8 松  岡  隼  矢 法政大学 154.87 49.69 105.18
9 蛯  原  大  弥 明治神宮外苑FSC 154.10 53.70 100.40
10 北  村  凌  大 日本大学 150.45 48.07 102.38
11 磯  和  大  智 京都宇治FSC 149.81 50.06 99.75
12 名  倉  一  裕 岡山SC 146.25 50.55 95.70

男子のジュニアもジュニアグランプリ組の森本選手がコロナ対策欠場となりました。

優勝は西宮から上京し今年から法政大学に通う吉岡希選手でした。昨シーズン2位から1つ上がってジュニアの部初優勝。197.73はパーソナルベスト相当のスコアです。かつて出場者数が少なかったころはノービス部門があったのですが、16年のノービスAで優勝して以来6年ぶりのげんさんサマーカップ優勝です。6年前のノービスにお肉は配られたかどうか? 吉岡選手はジュニアグランプリの2戦目と5戦目にエントリーしています。

2位は中村俊介選手。昨シーズン国際大会で210点台を出しているので、194.93というスコアは少し残念だったかもしれません。中村選手はジュニアグランプリで1戦目と4戦目にエントリー。同じ初戦エントリーの森本選手はコロナ対策欠場してるのですが、出てきていいのか? コロナ対策欠場は木下アカデミー組の方針だったと思うのですが・・・。

3位には垣内珀琉選手。やはりジュニアグランプリエントリー組です。2戦目のオストラバにエントリーしています。

 

木下アカデミー組をはじめ、欠場が多く少し残念な試合でしたが、今年も夏のメイン大会として見どころあるげんさんサマーカップでした。

 

フィラデルフィアインターナショナル シーズン開幕

フィギュアスケート22-23シーズン国際大会の開幕戦としてフィラデルフィアインターナショナルが行われました。新ルールの国際大会初戦でもあります。

 

○女子シングルシニア

Pl Name Nation Total SP TSS FS TSS
1 Isabeau LEVITO USA 207.67 70.72 136.95
2 Lindsay THORNGREN USA 203.62 69.57 134.05
3 Gracie GOLD USA 180.26 67.01 113.25
4 Ava ZIEGLER USA 146.26 46.66 99.60
5 Maryn PIERCE USA 143.82 49.80 94.02
6 Jill HEINER USA 128.45 52.97 75.48
7 Tara PRASAD IND 126.54 45.60 80.94
8 Cheuk Ka Kahlen CHEUNG HKG 121.51 41.79 79.72
9 Amanda HSU TPE 110.81 36.72 74.09
10 Sofia FRANK PHI 110.45 43.59 66.86

8月のフィラデルフィアでの試合。ほとんどはアメリカの選手のエントリーであり、それ以外の国の選手もアメリカ拠点の選手がほとんどだろうと思われます。

優勝は昨シーズン世界ジュニアチャンピオンで今シーズンからシニアにあがるイサボーレビト選手。アメリカ勢はオリンピックの代表3人が今シーズンは誰もグランプリシリーズにエントリーしていないという形ですので、レビト選手がある種エース格に近い形になっていくのかもしれません。グランプリシリーズは初戦アメリカ大会から現世界チャンピオンの坂本花織選手に挑戦することになります。

2位には世界ジュニア3位のソーングレン選手。この二人までが200点突破。今のシニアの上位陣となら十分に戦える力を見せています。グランプリシリーズは2戦目のカナダから。復活なるかの紀平梨花選手やユヨン選手との対決になります。

そして3位。グレイシーゴールド選手が入ってきました。180.26 6年ぶりの180点到達、6年ぶりの世界ランキングポイント獲得です。ショートの技術点35.70は世界選手権のミニマムスコアを超えてきました。フリーの技術点は52.63でわずかに世界選手権のミニマムポイント53.00に届きませんが、四大陸選手権の42.00ははるかに上回っています。1995年8月生まれ、間もなく27歳になります。今シーズンも氷の上に立ってくれました。カレンチェン選手やマライアベル選手がグランプリ休んで全米選手権に出てくるかわかりませんが、メンバー一新した状態であれば、四大陸選手権あたりに再びゴールド選手が戻ってくる選手が見られるかもしれない、と思わせてくれる試合でした。

 

○ゴールド選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T   10.10   1.06 11.16 1.571
2 2A   3.30   0.53 3.83 1.714
3 3Lo   4.90   0.78 5.68 1.714
4 3S   4.30   0.86 5.16 2.000
5 FCSp4   3.20   0.77 3.97 2.286
6 StSq2   2.60   0.47 3.07 1.857
7 3T   4.62 x 0.00 4.62 0.143
8 2Lz   2.31 x 0.29 2.60 1.286
9 ChSq1   3.00   0.80 3.80 1.571
10 2S   1.43 x 0.05 1.48 0.571
11 CCoSp3   3.00   0.60 3.60 2.000
12 FCCoSp3   3.00   0.66 3.66 2.143
  TES   45.76   6.87 52.63  

ゴールド選手は3回転-3回転をしっかり取り戻していて、ショートでもフリーでも3Lz-3Tを成功させてきています。ただ、体力面の問題なのでしょうか、後半の構成が弱くなっています。コンビネーションが結局冒頭の1つしか入りませんでした。2回転になったルッツとサルコウ、見ていて2回転になってしまったという風にあまり見えなくて、最初から2回転でいいやという風に入っていったようにも見えます。昨シーズンも後半はコンビネーションを入れるでもなく、2回転の単独ジャンプが入って来る構成でした。この辺で3回転のジャンプが入って来るだけでもスコアが上がっていきます。そういった、スコアの上積みを目指す方向へ行くのかどうか。そっちへ進んでくれると、四大陸選手権で姿を見られるかもしれません。

 

○男子シングルシニア

Pl Name Nation Total SP TSS FS TSS
1 Liam KAPEIKIS USA 209.56 72.91 136.65
2 Dinh TRAN USA 198.65 71.54 127.11
3 Gabriel BLUMENTHAL CAN 188.15 68.12 120.03
4 Samuel MINDRA USA 183.38 63.30 120.08
5 Darian KAPTICH AUS 182.61 60.12 122.49
6 Goku ENDO USA 163.45 59.13 104.32
7 Paul YEUNG USA 153.34 62.67 90.67

男子もほとんどがアメリカ人選手のエントリーとなっています。

優勝は昨シーズンは全米選手権7位、世界ジュニア8位のリアムカペイキス選手でした。グランプリシリーズではマリニン選手と並んでスケートアメリカからエントリーです。男子もアメリカは昨シーズンのオリンピック代表がグランプリシリーズに誰もエントリーしていませんので、これくらいの位置の選手から世界選手権の代表に入ってくる可能性があります。

 

○ディントラン選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3S   4.30   0.52 4.82 1.286
2 3A+2T   9.30   0.00 9.30 0.143
3 3A   8.00   -2.24 5.76 -2.857
4 3T+2A+2A+SEQ   10.80   -1.18 9.62 -2.714
5 CCoSp3   3.00   0.30 3.30 1.000
6 ChSq1   3.00   0.20 3.20 0.429
7 3Lz+2T   7.92 x -0.83 7.09 -1.429
8 3Lz   6.49 x 0.12 6.61 0.286
9 3F   5.83 x -0.11 5.72 -0.429
10 FCCoSp4   3.50   0.49 3.99 1.429
11 StSq3   3.30   0.26 3.56 0.714
12 FSSp2   2.30   0.23 2.53 1.000
  TES   67.74   -2.24 65.50  

2位に入ったトラン選手のフリーの構成です。4つ目の要素で今シーズンの新ルール、シークエンス1.0倍基礎点が生かされたものが入っています。3T+2A+2A この選手は3回転のループが構成に入っていないのでちょっと使い方が異なりますが、トリプルアクセルを2本飛べる選手はセカンド3回転1本と3連続で3つ目3サルコウを使ってもダブルアクセルが余ります。3つ目サルコウを使わなければダブルアクセルが2本余ります。

従って、男子の上位選手は多くの場合ダブルアクセルが余ってきて、従来ルールではセカンドで2回転トーループが入る箇所が1つはありましたので、そこをダブルアクセルのシークエンスにしていく、ということで基礎点が2点ほど上げることができる計算になります。

男子のトップの方までいくと、シークエンスはトリプルアクセルを使った方が、みたいな計算になるケースが出てくるのですがそこまでいかない中堅から上位の男子の選手では、ダブルアクセルシークエンスをこの先よく見ることになっていくと思われます。

 

ということで、シーズン初戦の国際大会では、アメリカ勢のシニアデビュー、ゴールド選手のミニマム獲得、ルール変更に由来する構成の変化、と見どころがいろいろある試合となりました。

 

 

 

羽生結弦

主な戦績を記します

基本的に国内は全日本レベルの大会のみです。国際大会はチャレンジャーシリーズ以上の格のものを載せてあります。

 

Season Event Pl Total SP TSS FS TSS
04-05 全日本ノービス 1 (1)   (1)
05-06 全日本ノービス 2 67.44   67.44
06-07 全日本ノービス 3 71.03   71.03
06-07 全日本ジュニア 7 128.96 38.80 90.16
07-08 全日本ノービス 1 103.87   103.87
07-08 全日本ジュニア 3 161.02 49.55 111.47
08-09 JGP Merano 5 146.68 51.06 95.62
08-09 全日本ジュニア 1 182.17 57.25 124.92
08-09 全日本選手権 8 181.65 64.50 117.15
08-09 World Junior 12 161.77 58.18 103.59
09-10 JGP Torun Cup 1 198.65 66.77 131.88
09-10 JGP Croatia 1 201.15 70.78 130.37
09-10 全日本ジュニア 1 194.15 76.00 118.15
09-10 JGP Final 1 206.77 69.85 136.92
09-10 全日本選手権 6 195.22 57.99 137.23
09-10 World Junior 1 216.10 68.75 147.35
10-11 NHK Trophy 4 207.72 69.31 138.41
10-11 Rostelecom Cup 7 202.66 70.24 132.42
10-11 全日本選手権 4 220.06 78.94 141.12
10-11 Four Continents 2 228.01 76.43 151.58
11-12 Cup of China 4 226.53 81.37 145.16
11-12 Rostelecom Cup 1 241.66 82.78 158.88
11-12 Grand Prix Final 4 245.82 79.33 166.49
11-12 全日本選手権 3 241.91 74.32 167.59
11-12 World Championships 3 251.06 77.07 173.99
12-13 Skate America 2 243.74 95.07 148.67
12-13 NHK Trophy 1 261.03 95.32 165.71
12-13 Grand Prix Final 2 264.29 87.17 177.12
12-13 全日本選手権 1 285.23 97.68 187.55
12-13 Four Continents 2 246.38 87.65 158.73
12-13 World Championships 4 244.99 75.94 169.05
13-14 Skate Canada 2 234.80 80.40 154.40
13-14 Trophee Eric Bompard 2 263.59 95.37 168.22
13-14 Grand Prix Final 1 293.25 99.84 193.41
13-14 全日本選手権 1 297.80 103.10 194.70
13-14 Olympic Team SP 1 97.98 97.98  
13-14 Olympic Games 1 280.09 101.45 178.64
13-14 World Championships 1 282.59 91.24 191.35
14-15 Cup of China 2 237.55 82.95 154.60
14-15 NHK Trophy 4 229.80 78.01 151.79
14-15 Grand Prix Final 1 288.16 94.08 194.08
14-15 全日本選手権 1 286.86 94.36 192.50
14-15 World Championships 2 271.08 95.20 175.88
14-15 World Team Trophy 1 288.58 96.27 192.31
15-16 Skate Canada 2 259.54 73.25 186.29
15-16 NHK Trophy 1 322.40 106.33 216.07
15-16 Grand Prix Final 1 330.43 110.95 219.48
15-16 全日本選手権 1 286.36 102.63 183.73
15-16 World Championships 2 295.17 110.56 184.61
16-17 Autumn Classic 1 260.57 88.30 172.27
16-17 Skate Canada 2 263.06 79.65 183.41
16-17 NHK Trophy 1 301.47 103.89 197.58
16-17 Grand Prix Final 1 293.90 106.53 187.37
16-17 Four Continents 2 303.71 97.04 206.67
16-17 World Championships 1 321.59 98.39 223.20
16-17 World Team Trophy 3 284.00 83.51 200.49
17-18 Autumn Classic 2 268.24 112.72 155.52
17-18 Rostelecom Cup 2 290.77 94.85 195.92
17-18 Olympic Games 1 317.85 111.68 206.17
18-19 Autumn Classic 1 263.65 97.74 165.91
18-19 GP Helsinki 1 297.12 106.69 190.43
18-19 Rostelecom Cup 1 278.42 110.53 167.89
18-19 World Championships 2 300.97 94.87 206.10
19-20 Autumn Classic 1 279.05 98.38 180.67
19-20 Skate Canada 1 322.59 109.60 212.99
19-20 NHK Trophy 1 305.05 109.34 195.71
19-20 Grand Prix Final 2 291.43 97.43 194.00
19-20 全日本選手権 2 282.77 110.72 172.05
19-20 Four Continents 1 299.42 111.82 187.60
20-21 全日本選手権 1 319.36 103.53 215.83
20-21 World Championships 3 289.18 106.98 182.20
20-21 World Team Trophy 2 300.88 107.12 193.76
21-22 全日本選手権 1 322.36 111.31 211.05
21-22 Olympic Games 4 283.21 95.15 188.06

記録に残らない小さな大会はそれ以前からも出ていたと思われますが、日本スケート連盟の記録に残る試合へのデビューはノービスBに上がった2004年10月、東北・北海道選手権になります。当時はまだぎりぎり順位点制度が残っていました。この時点でのライバルは1つ年上の鈴木潤さん。公式戦デビュー戦では7人のジャッジのうち1人は鈴木潤さんに1位を付けるという割と僅差ではありましたが優勝を果たします。そして全日本ノービスBも優勝しました。また、この優勝の結果でしょう、国際大会にも10歳にして派遣され、フィンランドで行われたサンタクロースカップで優勝したとされています(元データ見つからないですが)。

次のシーズンから順位点方式ではなく現在と同じ要素別得点形式にほとんどの試合で変わります。また、この時期にホームリンクが閉鎖され、練習拠点が遠くなり練習時間がやや減ったともいわれています。記録に残る最初の要素別スコア方式の試合、05年の東北・北海道選手権。ノービスB2シーズン目のこの最初の試合、まだ構成の中で3回転ジャンプはトーループの1種類でした。その3回トーループダブルアクセル、ダブルルッツと3転倒で50.26 練習時間が減った影響が出ていたでしょうか。全日本ノービスでは3回転はサルコウ1本の構成でこれもクリーンに決まらず67.44と地区大会よりはスコアを伸ばしましたが2連覇ならずの2位。日野龍樹選手に敗れました。この時の表彰台が日野龍樹羽生結弦田中刑事の3人。同世代のトップをこの3人で構築していきます。

次のシーズンはノービスAに上がります。全日本ノービスは1つ上の世代を差し置いて、日野、田中、羽生の表彰台で羽生結弦さんは3位。3回転はループにサルコウが回転不足でトーループが転倒。まだ公式戦で3回転は決まってきません。ノービスAの3位は全日本ジュニアに出ますがここでは7位に入りました。フリーでトーループサルコウ、2種類の3回転を初めて公式戦で決めてきました。2シーズンぶりに国際大会派遣もあり4月にムラドストトロフィー。要素別採点方式で初の国際大会は134.40で優勝。ショートフリーでトリプルループを決め、3種類目の3回転がこのシーズンでそろいます。また、ホームリンクが再開し調子を戻してきます

ノービスA2年目は羽生、田中、日野の順でやはり表彰台に3人並びます。ノービスB 1年目以来の全国制覇を果たしました。全日本ジュニアは3位。フリーだけなら1位のスコアでノービスからの推薦出場にして表彰台に立ちます。このシーズンにフリップはeが付きますが、3回転5種類で着氷に成功してきます。このシーズンはまだ順位点方式だった全中にも優勝。記録の確認ができないのですが、3月終わりにはコペンハーゲンの国際大会にも派遣されて優勝していました

 

08-09シーズンからジュニアに上がりました。ジュニア1シーズン目からジュニアグランプリシリーズに派遣されます。ショート1番滑走から6位につけフリー最終グループ入り。フリーは4位でトータル146.68が最初のパーソナルベストとして記録され5位に入りますが、2戦目の派遣はありませんでした。

国内に戻って東日本ジュニアではトリプルアクセルを公式戦初成功。これで3回転までの基本ジャンプの習得を終えました。全日本ジュニアはジュニア1年目にして優勝。全日本初出場を果たし8位に入ります。世界ジュニアは161.77の12位。国際大会のパーソナルベストではありますが、国内では全日本ジュニアに全日本と180点台を続けていた時期ですので、本人としてはやや物足りない結果だったのではないかと思います

 

09-10シーズンはジュニアを極めたシーズンでした。ジュニアグランプリ2戦で優勝。2戦目のクロアチアでは201.15 200点に乗せてきます。全日本ジュニアを勝ったあとジュニアグランプリファイナルに出場し206.77で優勝。世界ジュニアでは216.10までスコアを伸ばし優勝します。ジュニア2シーズン目にしてジュニア的無し状態でした。ついでのように全中三連覇も果たしています。表彰台は羽生-日野-田中、3人そろい踏み。相変わらず仲が良いこのころまでの3人です。

 

いよいよシニアに上がった10-11シーズン。女子と違って男子でジュニアを2年で通過してシニアに上がるのは並大抵のことではありません。さすがにグランプリシリーズ2戦は4位と7位。簡単にはいきませんが、NHK杯では4回転トーループを公式戦初成功となりました。全日本で220.06と4位にはいり4大陸選手権の派遣を勝ち取ります。この4大陸で228.01 パーソナルベストの2位表彰台となりました。シニアのチャンピオンシップ初メダル。最年少記録にもなりました。ここで試練が訪れます。311 東日本大震災。拠点が仙台の羽生結弦さんは避難生活も強いられる大きな被害を受け、しばらくは練習もままならない時期を過ごす形になりました。

 

普通ならここで1,2年低迷期が訪れそうなところなのですが、11-12シーズン、グランプリ2戦目のロステレコム杯で241.66 グランプリ初優勝を果たします。初のファイナル進出を果たして4位。全日本では初の3位表彰台で世界選手権の切符を掴みます。この世界選手権、ショートはルッツに失敗し7位折り返しで最終グループ入りは出来ませんでしたがフリーはほぼノーミスの演技で逆転3位表彰台となります。251.06のパーソナルベスト。250点台に乗せました。

 

12-13シーズンに入る前に、拠点を海外に移します。クリケットクラブ、ブライアンオーサーコーチの下へ。ブライアンコーチ下には4回転サルコウが得意なハビエルフェルナンデスさんが先にいましたが、その効果もあるのか、シーズン初戦のフィンランディア杯で公式戦初の4回転サルコウ挑戦でこれを決めます。ただ、結果的にこのシーズンにクリーンに決まった4回転サルコウはこの1本だけとなりました。

グランプリシリーズ初戦はスケートアメリカショートプログラム95.07はこの時の世界最高スコアとなります。この先世界最高スコアを何度も出していくことになりますが、これが自身最初のものとなりました。ただ、フリーは4回転2本が決まらず試合としてはパトリックチャンに敗れ2位に終わりました。2戦目のNHK杯は261.03のパーソナルベストで優勝。2度目のファイナルは2位初表彰台。パトリックチャンさんに初勝利を果たしたわけですが、上に行ったのは高橋大輔選手。この時期は日本勢のトップはどちらか? というつばぜり合いが続いていた時期です。

5回目の出場となる全日本選手権。この大会で国内参考記録ながら285.23というものすごいスコアを出して初優勝を果たします。

四大陸選手権はフリーでスーパー演技を見せたケビンレイノルズ選手に敗れ2位。最年少メダル記録を持つ大会ではあるのですが、なかなか優勝に縁がない大会に四大陸はなっていきます。

オリンピックの枠を賭けた世界選手権。ショートは4回転転倒にコンビネーションはいらずで9位と出遅れます。日本勢3人ショート終わって、4位9位11位、あれ?3枠際どい? という中で迎えたフリー。4回転サルコウこそクリーンには決まりませんでしたが、後半、1.1倍のジャンプ5つをクリーンに決め169.05 まだ若者扱いでPCSをもらえなかった時期ですが、結果的に技術点だけならフリートップのスコアで総合4位。2年連続の表彰台はなりませんでしたが、3枠確保に大きく貢献しました。

 

いよいよソチオリンピックシーズンとなります。フィンランディア杯で265.59でまずパーソナルベストを出して優勝します。グランプリ2戦はカナダとフランスでどちらも2位。この時点で世界選手権を3連覇しているパトリックチャンさんに敗れます。

シーズン3度目の挑戦はグランプリファイナル。ショートプログラムで99.84 世界最高スコアで首位に立つと、フリーも4回転サルコウで転倒ながら技術点102.03に達する193.41というスコアをだし、トータル293.25でファイナル初優勝。パトリックチャンさんにここで勝利をおさめます。

全日本は問題なく2連覇して、いざ、オリンピックへ。この大会から団体戦というものが生まれ、結果的に最初で最後になった団体戦出場を果たします。ショートプログラム最終滑走で顔を出し97.98の1位。場慣れするいい機会となったか、また、ここでもパトリックチャンさんに勝ったのが後につながることになったか、そんなショートプログラムでした。

個人戦はちょうど1週間後でした。19番滑走で出てきて乃ショートプログラム、パリの散歩道。冒頭4回転トーループでは7人が満点をつけるクリアな出来。101.45 ついに男子シングルショートプログラムで100点の扉を開けて首位。2位パトリックチャンさんとは3.93差 3位とは14.47ありましたから一騎打ちという形でフリーに進みます。フリーはあまりいい出来ではありませんでした。次の滑走のパトリックチャンさんはスコアが耳に入っての滑走だったでしょうか、こちらも崩れたため、結果的に逃げ切り優勝となりました。本人曰く悔しい金メダル。とはいいながらも、日本男子史上初の金メダルとなりました。

オリンピックで金メダルを取って世界選手権に出た男子選手はソルトレイクヤグディンさん以来ですが、羽生結弦さんはこのシーズンは世界選手権に出場します。さすがに疲れもあるか、ショートは4回転が回転不足で転倒となり3位と出遅れます。首位の町田樹さんとは6.97差。 フリーはオリンピックで決められなかった4回転サルコウをなんとか着氷。以降も多少荒い部分もありましたが大きなミスなくまとめ執念の追い上げ。先に滑っていた町田樹さんを0.33上回り逆転優勝を果たします。世界選手権初優勝。

これでこのシーズンは、グランプリファイナル、オリンピック、世界選手権と3冠を果たしました。

 

ある意味では獲るものを獲ってしまったような状態でしたが、まだ19歳。先へ進みます。

14-15シーズンは腰痛などで調整が遅れチャレンジャーシリーズはパス。初戦は中国杯となります。ショートが今一つで2位だったのですがフリーの6分間練習で大事件が発生します。ハンヤン選手との激突事件。しばらく起き上がれないような大ダメージを受けていたようなのですが、最終滑走の1つ前で出てきて、5転倒ながら最後まで演技をし2位表彰台を確保します。これが結局ファイナルにつながるわけですが、難しい選択だったかと思います。

この怪我が癒えていない状態なはずですが間2周置いてNHK杯に出場。この試合は4位。グランプリシリーズに出場して表彰台に乗れないのは、結局この試合が最後となりました。

そうまでして勝ち取ったグランプリファイナル。これを圧倒的なスコアで連覇。全日本も2連覇。しかし、世界選手権はフリーで4回転が決まらず、同僚ハビエルフェルナンデスさんに逆転優勝をさらわれます。この試合はナムグエンさんも5位に入り、クリケットブラザーズの最盛期とも言え、エキシビジョンで無理やりナムグエンさんに4回転飛びに行かせ転倒・・・、という微笑ましい姿もありました。

このシーズンは国別対抗戦があり、オペラ座ジャパン(⁺ミスサイゴンもいるよ)な構成で、楽しんでいる姿がありました。

 

15-16シーズンはオリンピックの中間年ですが、もしかしたらここがキャリアのピークだったかもしれません。ハイスコア連発シーズンになります。

チャレンジャーシリーズはフィンランディア杯派だったのですが、このシーズンから拠点に近いオータムクラシック派に鞍替え。まず簡単に優勝。ついでグランプリシリーズはスケートカナダが初戦ですが、ここでパトリックチャンさんに敗れます。なかなか勝てないスケートカナダ。そしてまだまだ侮れないパトリックチャンさんです。

思うところあったか帰国してのNHK杯。初めてショートプログラムで2本の4回転を決めて106.33の世界最高スコア。フリーは陰陽師SEIMEIで全要素全ジャッジプラス評価で216.07という驚異のスコアをマーク、トータル322.40も含め世界最高スコアで優勝します。

NHK杯は国内の空気もありましたが、グランプリファイナルはバルセロナ。ここでショートは4回転2本をダブル満点評価、全要素全ジャッジ+2以上というバラード1番で110.95

 110点台にまで乗せました。フリーも単独4回転2本満点含めノーミス。ショートフリー通じて全要素全ジャッジプラス評価で219.48を乗せてトータル330.43 異次元の世界最高スコアを叩きだしてのファイナル3連覇となりました。

これでも簡単に勝てないのが世界選手権。ショートは全要素全ジャッジ+2以上の評価で110.56 2位に12.04の大差で首位に立ちましたが、フリーは後半の4回転サルコウが転倒でコンビネーションはいらずなどミスが重なりスコアは伸びず。ショート2位の宿敵と言うべきか盟友と言うべきか、ハビエルフェルナンデスさんに大逆転優勝を許しての2位となりました。

 

翌16-17はオリンピックプレシーズン。ここで初戦のオータムクラシックから、新たな4回転、ループを投入。これをショートフリー共に成功させ史上初の4回転ループ成功者となりました。

グランプリシリーズは、なぜか勝てないスケートカナダ、パトリックチャン選手に敗れ2位。NHK杯は簡単に勝ちましたが、この試合がネイサンチェン選手との公式戦初顔合わせだったりしました。また、国際大会で羽生-田中-日野、3人そろい踏みした最初で最後の大会。田中刑事さんは3位表彰台だったのですが日野龍樹さんは9位。日野選手もっと来いや、インタビューは優勝インタビューだったでしょうか。

グランプリファイナルは4連覇。ただしフリーはスコア伸びず2位でネイサンチェン選手に迫られます。NHK杯では影も踏ませずでまだそれほど強い印象を与えなかったかもしれませんが、このファイナルでこの先羽生結弦さんの立ち位置を脅かすのはこの人、というのを見せてきました。

全日本はインフルエンザ欠場。普通の選手ならこれでシーズン後半がつぶれてしまったりするのですが、過去の実績も本シーズン実績も文句なく、シーズン後半の代表戦に選ばれます。

まだ取れていない唯一の大きな大会、四大陸選手権。ショートでサルコウが2回転になるミスがあり3位スタート。フリーもコンビネーションのサルコウが2回転になり目論見ほどはスコアを伸ばせず、それでも206.67を出してトータル303.71 300点に乗せて首位に立ち最終滑走を待ちます。最終滑走はショート首位のネイサンチェン選手。技術点では115.48まで伸ばす好演技で逃げ切り優勝。またしても四大陸選手権のタイトルが獲れず、また、ネイサンチェン選手への初敗北を喫することとなりました。

世界選手権はリベンジ戦。今シーズン安定感に欠けるサルコウがまたしてもショートで決まらずコンビネーションはいらずで5位発進。首位と10.66差。フリーは最終グループ1番滑走という位置からでした。ここで4回転4本、トリプルアクセル2本という高難度構成を全要素全ジャッジマイナス評価無しで技術点126.12まで得ての223.20 トータル321.59で首位に立ち残りの選手を待ちます。ここから、新鋭ネイサンチェン選手、4回転ルッツのボーヤンジン選手、宿敵パトリックチャンさんと続きますがフリーのスコアは誰も届かず。残り2人、ショート2位の宇野昌磨選手がループ、フリップ、トーループ2本の4回転4本構成を着氷してきましたがそれでも2.28届かず、最終滑走、ショート首位で2連覇中のフェルナンデスさん。得意の4回転サルコウの2本目で転倒するなどスコアを伸ばせずフリーだけだと6位。最終的に羽生結弦さんが大逆転で2度目の世界選手権制覇をしました。

そして、2度目のオリンピックシーズンを迎えます。初戦のオータムクラシックはショートプログラムで世界最高得点を更新する112.72を出してきました。グランプリ初戦のロステレコム杯ではフリーで初の4回転ルッツを成功。これで4種類目の4回転が入りました。

まずまず順調に来ていたかと思われたのですがNHK杯。11月9日。公式練習、4回転ルッツを飛んだ際に転倒し負傷。そのまま欠場を余儀なくされます。そのまま全日本もまさかの欠場。これまでの実績でオリンピックの代表には選ばれましたが、そもそもけがの状態は大丈夫なのか? と心配される状態。ただ、その状態はベールに包まれたままオリンピックを迎えます。

平昌オリンピック、会場入りして3カ月ぶりに表舞台に出てきて乃最初のインタビューでは、全然問題ないです、というようなコメントでしたが、試合の前なら全然問題ないです、といつでもいう人。状態はまだよくわかりませんし、どれだけ練習が出来てきたのかもわからない状態です。今回は団体戦はパス。個人戦ショートプログラムは2月16日でした。バラード1番。4回転サルコウトリプルアクセル、4回転トーループ-3回転トーループの構成。これを全要素全ジャッジ+2以上の評価で完璧に滑り111.68 首位に立ちます。2位とは4.10差、3位とは7.51差 ショートでループやルッツを入れなかったことから、構成面では最上のものは組めておらずフリーでもそうなのではないか? と思われる状態です。残り3人で登場したフリー。やはりルッツやループの4回転は構成になく、それでも基礎点を上げていくギリギリの選択で4回転のサルコウトーループを2本鶴入れるという構成を組みました。2本目のトーループでミスが出たり、割と鬼門な最後のトリプルルッツも軽いミスはありましたが、それでもケガに憑りつく怨霊を吹き飛ばすSEIMEIは206.17でトータル317.85 ショート2位3位の残り2人を待ちます。ハビエルフェルナンデス:ラマンチャの男、宇野昌磨トゥーランドット、いずれも名演でしたが王者には届かず。羽生結弦、オリンピック2連覇を果たしました。

 

ここから先は、何を目指して滑っていくか。怪我との戦い、モチベーションとの戦い。さらにはコロナまで湧いてきて、いろいろなことの起きる4年間でした。

18-19シーズンはロステレコム杯の公式練習中にまたもケガ。フリーは出場するかどうか? というところでしたが強行出場。ニジンスキーに捧ぐをロシアに捧げる演技でしたがさすがに後半は苦しい滑りとなりました。

怪我でファイナルも全日本も欠場。復帰戦は世界選手権になります。さすがに試合勘も鈍っていたか、ショートではサルコウが2回転になって零点など3位スタート。フリーは4回転トーループ-トリプルアクセルというもしかしたら3年後のルール変更の一因にもなったかもしれない前代未聞のシークエンスを飛ぶなど206.10のハイスコアでトップに迫っての2位表彰台となりました。

翌19-20シーズンは久しぶりに満足に滑れそうなシーズンでした、途中までは。

初戦はオータムクラシックで優勝。グランプリシリーズは鬼門のスケートカナダでしたが今回は楽勝でした。322.59のパーソナルベストおまけつき。そして結果的に3年ぶりとなる日本国内での試合となったNHK杯。これも楽勝でした。グランプリファイナルは久しぶりに4回転ルッツを決めるという場面もありましたが、その他ではミスも重なり2位に終わります。さらに4年ぶりの全日本。ここで久しぶりに敗戦、宇野選手に敗れての2位。日本人選手に敗れたのは2014年のケガ明けというか怪我中のNHK杯以来5年ぶりとなりました。

取り残してある忘れ物を取りに四大陸選手権へ。299.82と、300点に乗らず、本人比では満足いく出来ではなさそうでしたがそれでも優勝。これでジュニアグランプリファイナル、世界ジュニア、四大陸選手権、グランプリファイナル、世界選手権、オリンピック、すべて制覇しスーパースラムを男子選手として初めて達成します。

さて世界選手権、というところでコロナが世界を覆い、試合は中止となりました。

20-21シーズンはコロナシーズン。国際大会はまともな形では開催されなくなりました。羽生結弦さんは初戦が全日本となります。スピンで零点とか珍しい光景もありましたが今回はキスアンドクライでプーさんにソーシャルディスタンスを取ることを命じたりしながらしっかり優勝。5年ぶりの全日本チャンピオンとなります。世界選手権は厳戒態勢の中開かれました。ショートは首位。フリーは意外と大事なところで決まってくれない4回転サルコウが1回転になるなどスコアが伸びず、総合3位となりました。

コロナ禍ながら国別対抗戦もあったこのシーズン。エキシビジョン前の練習時間に4回転アクセルにチャレンジ、というようなシーンもありました。4回転アクセルへの挑戦具合が世界選手権でも口にされていましたし、このあたりから本格的に表に出始めます。

 

そして北京オリンピックシーズン。コロナは収まらないながらこのシーズンは試合は普通に展開されていきました。そんな中でグランプリシリーズは欠場。コロナではなくケガの影響といいます。怪我に苦しんできた選手。心配ではありましたが全日本には出てきました。フリーでは4回転アクセルを構成に入れるもダウングレード判定。それでも試合自体はしっかり優勝でした。今一つはっきり語られてこなかった北京オリンピックへの出場可否。代表権を得たことでようやく、みんなの夢、という言葉を使いながら三連覇を目指すことを明言。それと同時に4回転アクセルへの想いがさらに語られます。

オリンピックは北京入りも遅く、いろいろと取りざたされましたが団体戦には出ず個人戦のみの登場となります。ショートプログラム。結果的に立った2回の序奏とロンドカプリチオーソでしたが冒頭のサルコウが1回転に。この時点で3連覇はほぼ消えたのではないかと思われました。そこから30秒ほどで次の4回転トーループ-3回転トーループは完ぺきに着氷。残りの要素6つは全要素全ジャッジ+3以上の高評価。どんなメンタルしてたらそんなことができるのかわかりませんが、スコアとしては8位スタートと出遅れる形になります。

フリーは冒頭の4回転アクセルを明言。回転足りたように見えなくもなかったですがアンダーローテーション判定。次のサルコウも転倒となりましたが、残りの要素、結果的に協議開催後の演技となるこの天と地とを演じ切り、4位という結果になりました。練習中にケガも悪化させていたようですね。

エキシビジョン向けの練習ではこれまでの様々なプログラムを演じるというファンサービスなのか人生の振り返りなのか、そういった光景もあり、このさきどうなのかな、とこの時点で感じさせられていました

 

2022年7月19日。プロ宣言と同時に競技会からの撤退を表明。

 

○満点スコア要素

Season Event     Elements  Base   GOE Scores AveGOE Date
13-14 全日本選手権 SP 4 3A 9.35 X 3.00 12.35 3.000 2013/12/21
14-15 Cup of China SP 1 3A 8.50   3.00 11.50 2.889 2014/11/7
15-16 Autumn Classic SP 1 3A 8.50   3.00 11.50 2.857 2015/10/14
15-16 Autumn Classic FS 5 StSq2 2.60   1.50 4.10 2.857 2015/10/15
15-16 Skate Canada SP 1 3A 8.50   3.00 11.50 2.889 2015/10/30
15-16 NHK Trophy FS 7 3A+2T 10.78 x 3.00 13.78 2.889 2015/11/28
15-16 NHK Trophy FS 12 ChSq1 2.00   2.10 4.10 2.889 2015/11/28
15-16 Grand Prix Final SP 1 4S 10.50   3.00 13.50 2.889 2015/12/10
15-16 Grand Prix Final SP 2 4T+3T 14.60   3.00 17.60 2.889 2015/12/10
15-16 Grand Prix Final SP 6 StSq3 3.30   1.50 4.80 2.889 2015/12/10
15-16 Grand Prix Final FS 1 4S 10.50   3.00 13.50 2.889 2015/12/12
15-16 Grand Prix Final FS 2 4T 10.30   3.00 13.30 2.889 2015/12/12
15-16 Grand Prix Final FS 7 3A+2T 10.78 x 3.00 13.78 2.889 2015/12/12
15-16 Grand Prix Final FS 12 ChSq1 2.00   2.10 4.10 3.000 2015/12/12
15-16 全日本選手権 SP 2 4T+3T 14.60   3.00 17.60 3.000 2015/12/25
15-16 全日本選手権 FS 1 4S 10.50   3.00 13.50 2.889 2015/12/26
15-16 全日本選手権 FS 2 4T 10.30   3.00 13.30 2.889 2015/12/26
15-16 全日本選手権 FS 3 3F 5.30   2.10 7.40 3.000 2015/12/26
15-16 World Championships SP 1 4S 10.50   3.00 13.50 2.889 2016/3/30
15-16 World Championships SP 4 3A 9.35 x 3.00 12.35 3.000 2016/3/30
15-16 World Championships SP 6 StSq3 3.30   1.50 4.80 3.000 2016/3/30
16-17 Autumn Classic SP 6 StSq4 3.90   2.10 6.00 2.857 2016/9/30
16-17 NHK Trophy SP 4 3A 9.35 x 3.00 12.35 2.889 2016/11/25
16-17 Grand Prix Final SP 6 StSq4 3.90   2.10 6.00 2.889 2016/12/8
16-17 Four Continents SP 4 3A 9.35 x 3.00 12.35 2.889 2017/2/17
16-17 World Championships SP 6 StSq4 3.90   2.10 6.00 2.889 2017/3/30
16-17 World Team Trophy SP 6 StSq4 3.90   2.10 6.00 2.889 2017/4/20
17-18 Autumn Classic SP 1 4S 10.50   3.00 13.50 3.000 2017/9/22
17-18 Autumn Classic SP 3 CSSp4 3.00   1.50 4.50 2.857 2017/9/22
17-18 Autumn Classic SP 4 3A 9.35 x 3.00 12.35 3.000 2017/9/22
17-18 Rostelecom Cup SP 4 3A 9.35 x 3.00 12.35 3.000 2017/10/20
17-18 Rostelecom Cup FS 12 ChSq1 2.00   2.10 4.10 2.889 2017/10/21
17-18 Olympic Games SP 4 3A 9.35 x 3.00 12.35 3.000 2018/2/16
17-18 Olympic Games SP 6 StSq4 3.90   2.10 6.00 2.889 2018/2/16
17-18 Olympic Games FS 1 4S 10.50   3.00 13.50 2.889 2018/2/17
17-18 Olympic Games FS 2 4T 10.30   3.00 13.30 2.889 2018/2/17
19-20 Skate Canada SP 2 3A 8.00   4.00 12.00 4.889 2019/10/25
21-22 全日本選手権 SP 6 StSq4 3.90   1.95 5.85 5.000 2021/12/24
21-22 全日本選手権 FS 6 StSq4 3.90   1.95 5.85 4.889 2021/12/26
21-22 全日本選手権 FS 10 ChSq1 3.00   2.50 5.50 5.000 2021/12/26

多数の要素で評価満点を得ているのがよくわかります。ジャッジのうち1人以外が満点の場合もスコア上は満点が付きます。最初の満点は13年の全日本でショートプログラム、1.1倍のところにあるトリプルアクセルが全ジャッジ満点評価でした。国際大会でも14年の中国杯ショートでトリプルアクセルが満点付きました。15-16シーズンの満点が極めて多く目立ちます。ここがキャリアのピークだったんでしょうかやはり。オリンピックシーズンではないところにキャリアのピークが来ているのにオリンピックで2連覇している。なかなか考えられないことです。

ジャンプ、ステップの満点が多いですが、1例だけですがスピンの満点もあります。バランスよくどの要素もこなせる選手であったことがこのあたりからも見て取れます。

 

グランプリシリーズ出場 19回 歴代12位タイ 日本人歴代3位タイ

グランプリシリーズ優勝 8回 歴代5位タイ 日本人歴代1位タイ

グランプリ表彰台 15回 歴代4位 日本人歴代1位

グランプリファイナル出場 7回 歴代3位タイ 日本人歴代1位タイ

グランプリファイナル優勝 4回 歴代1位タイ 日本人歴代1位

グランプリファイナル表彰台 6回 歴代2位 日本人歴代1位

オリンピック2連覇  歴代4人 今世紀ただ一人

世界選手権優勝2回  日本人歴代1位

スーパースラム  歴代1人