日本スケート連盟 2018年6月期決算

先日、日本スケート連盟の昨年度の決算報告書が公開されました。

スケート連盟の年度は、7月1日始まりの6月30日終わりとなっています

これはスケートのシーズンそのものですね

その一年間の決算です

 

上場企業なんかだと、決算日から45日以内に決算発表しないといけないんですが、財団法人であるスケート連盟にはそういったルールの縛りはなく、丸三カ月たった10月1日段階でウェブ上に公表されました。

もうちょっと早くてもいいんじゃ・・・、と思ったりもしますが、財団法人だとこれくらいの時間がかかるのがたぶん相場なのでしょう

 

さて、普通の企業だと損益計算書、というものが出てくるのですが、財団法人だと損とか得とかそういうことではなく、だいたい得したい、稼ぎたい、という団体ではないので、財産がどうなりましたよ、というのを公表するという意味でなのか「正味財産増減計算書」というものが出てきます。

中身の意味合いは損益計算書に近いのですけど名前が違うのと、上場企業が決算短信の中で出す損益計算書なんかと比べると、割と詳しく科目が分かれて記載されています。

 

さて、では2017年7月1日~2018年6月30日の、スケート連盟の正味財産増減計算書を見てみましょう。

 

経常収益:3,231,265,483

経常費用:2,717,080,68

当期計上増減額:514,184,797

 

経常収益は売上に相当して、経常費用の方は売上原価+販管費に相当するもの。当期計上増減額は営業利益に相当するものになります

 

すなわち、スケート連盟は32.3億円の売上があって、5.14億円の営業黒字でした、という結果です。

そこから経常外損益がまあいくらかあるのですが、それでも5億円を超える経常黒字相当の結果で、さらに法人税等の税金が1.14億円ほど引かれて、一般正味財産増減額としては、3.95億円のプラス、となっていました。

すなわち、3.95億円の純利益を得た、に相当する一年間であったということになります。

 

一方、貸借対照表を見てみると、上記の3.95億円を上乗せした正味財産は、26.59億円となりました。この正味財産というのは、一般企業でいえば純資産に相当するものです。

 

これって普通の企業で考えるとどれくらいの規模なの? というのはちょっと難しい部分がありますが、東証二部上場の基準に、純資産の額が10億円以上、というのがあるので、まずそれを満たしていると。

また、利益の額が、最近2年で総額5億円以上であること、というのもあるので、一年間分ですが3.95億円の純利益を稼いでいるということは、それに準じる状態であると言えます。

また、上場時見込みで時価総額が20億円以上、というのも課せられていますが、純資産が26.6億円あって黒字4億円の企業なら、これくらいの時価総額は問題なく満たせるでしょう

ただ、一部上場は時価総額250億円以上の見込みが求められるので、ちょっと厳しい水準かもしれません

 

というわけで、スケート連盟の規模は、おおざっぱには東証2部上場の企業くらい、という風に見えます。

巨大企業と比べれば見劣りしますが、2部とはいえ上場される会社と同程度の規模の事業を運営している組織なんだ、ということがおそらく言えるでしょう。

 

さて、では収益の中身を見てみましょうか

 

32.3億円の売り上げというか収益というか、のうち27.8億円が事業収益としてカウントされています。その中で13.1億円が特別事業収益とされていて、これは、NHK杯、全日本フィギュア、GPファイナルの3大会の収益です。(収入部分だけで費用は別途かかります)。

残りの14.7億円は一般事業収益です。

その中ではマーケティング事業収益というのが11.9億円を占めていて、それ以外で大きいのは放映権料の2.23億円です。放映権料はフィギュアから1.94億円、スピードから2,862万円得ています。フィギュアの方が7倍程度の規模の放映権料を稼いでいるわけです。

それら以外で大きい収益源としては、補助金が3.94億円ありました。

 

f:id:yumegenjitsu:20181003235115j:plain

  

比率を見てみるとこんな円グラフになります。補助金収益比率がだいぶ小さく済んでますね。

 

さて、では費用の方はどうでしょうか

大きいものとしては特別事業の費用10.85億円。これは上記の特別事業収益の裏返しで、NHK杯、全日本フィギュア、GPファイナルにかかった費用です。すなわちこの3大会の運営は、合計で2.25億円ほどの黒字を生み出した、ということになります。

なお、個別に見ると、NHK杯が4,253万円、全日本フィギュアが1.13億円、GPファイナルが6,900万円のそれぞれ黒字でした。全日本の黒字が一番多いのがちょっと意外ですが、NHK杯GPファイナルは費用が結構掛かるんですね。全日本にはない、ISU役員の旅費や、選手団の旅費、さらには賞金、というものが計上されていて、そのあたりが重いようです。一方の全日本は、賞金はないどころか、選手が出場費3万円を払っていたりしますので、費用面で相対的に軽くなっていました。ただ、入場料自体も三つの大会の中では全日本が一番大きくて、稼ぐ力自体も全日本はあるようです。三つの大会の中では、大会が始まる段階で羽生選手が出場しないことが分かっていなかったのはNHK杯だけなのですが、NHK杯の黒字額が一番小さいんですね。浅田真央さんが辞めたらどうなるんだ? 羽生選手がいなくなったらどうなるんだ? とか言われていたフィギュア界ですが、今のところ、収益力はそれなりに保っているようです。ただ、全日本もGPファイナルも、羽生選手が出る前提で、先行でチケットを買っていた人、というのが多数いるでしょうから本当に不在でどうなのかは、今年のNHK杯でわかることなのかもしれません。

 

またマーケティング事業にあてた費用も4.22億円とかなりの額ですが、これにより上記のマーケティング事業収益11.9億円がうみだされていて、マーケティング事業は7.7億円近い黒字を生み出していることになります。

そして、これこそが目的とも言える、強化費にもかなりの額が費やされています。これはどの科目が強化費に相当するか? というのをどう読むかで変わってきそうですが、おそらくこれは強化にあたるだろうというものを足し上げると7.25億円になりました。うちわけとして、フィギュアが2.86億円、スピードに3.20億円、ショートが1.20億円となっています。

強化費はフィギュアよりスピードの方が手厚いんですね。この辺は競技種目数の影響がおそらくあるのでしょう。

それ以外の管理費とされるものや、事業費用だけど給料とかそういう運営する人たちにかかる費用なのだろうと読み取れるものが2.46億円ほどあります

 

印象として、得られた収益を結構しっかり強化に使えているんだな、という感じはしますかね

あと、補助金が3.94億円ありましたけど、この金額というのが、当期計上増減額の5.14億円より小さい。すなわち、補助金無くてもこの1年やっていけてた、という計算になります。

たぶん、こういう競技団体ってなかなかないんじゃないでしょうか。

 

この決算期は、平昌オリンピックがあった一年でした

したがって、様々な面でお金を集めやすかった一年であったと思われます

その辺のこともあるので、今度は過去からの時系列で振り返って、スケート連盟の財務状態を見てみたいと思います

 

 

関連エントリー

日本スケート連盟の財務状況 時系列

日本スケート連盟主催試合の収益性

冬競技の財政状況比較