チャレンジャーシリーズ18 男子シングル

女子は前回で終わって今度は男子です

 

まず、大会によらず点数上位を並べてみたいと思います。

250点で切ろうと思ったら少なかったので230点以上を並べます

ついでに、点数関係なく日本人選手も並べました

 

 

宇野昌磨 276.20(104.15(57.65,46.50) 172.05(83.75,89.30) 優勝 ロンバルディア

Mikhail Kolyada 274.37(96.82(52.52,44.30) 177.55(87.05,91.50) 優勝 オンドレイネペラ杯

羽生結弦 263.65(97.74(52.34,45.40) 165.91(79.01,87.90) 優勝 オータムクラシック

Junhwan Cha 259.78(90.56(52.21,38.35) 169.22(87.62,81.60) 2位 オータムクラシック

Keegan Messing 257.16(90.63(49.03,41.60) 166.53(82.23,84.30) 優勝 ネーベルホルン杯

Mikhail Kolyada 250.58(85.20(43.45,42.75) 165.38(75.10,90.28) 優勝 フィンランディア杯

Dmitri Aliev 250.55(86.57(46.47,41.10) 163.98(80.78,83.20) 2位 ロンバルディア

Andrei Lazukin243.45(87.92(50.27,37.65) 155.63(76.23,79.30) 3位 ロンバルディア

Sergei Voronov 239.73(81.77(42.82,38.95) 157.96(78.56,79.40) 2位 オンドレイネペラ杯

Junhwan Cha 239.19(84.67(46.25,38.42) 154.52(74.88,81.64) 2位 フィンランディア杯

Roman Sadovsky 233.86(78.14(41.69,37.45) 155.72(79.92,77.80) 3位 オータムクラシック

Jason Brown 233.23(88.90(44.80,44.10) 144.33(60.63,83.70) 4位 オータムクラシック

Morisi Kvitelashvili231.19(77.52(41.76,35.76) 153.67(79.41,75.26) 3位 フィンランディア杯

田中刑事 221.92(77.53(37.83,39.70) 144.39(64.09,80.30) 3位 オンドレイネペラ杯

友野一希 216.74(75.47(39.07,37.40) 141.27(70.07,72.20) 5位 ロンバルディア

本草太 205.79(72.16(37.07,35.09) 133.63(62.71,70.92) 9位 フィンランディア杯

日野龍樹 205.15(70.92(37.79,33.13) 134.23(67.15,67.08) 10位 フィンランディア杯

本草太 198.92(57.92(25.37,32.55) 141.00(70.40,70.60) 優勝 アジアンオープン

須本光希 182.39(63.65(30.10,33.55) 118.74(51.64,68.10) 4位 アジアンオープン

佐藤洸彬 176.30(56.34(27.89,32.45) 119.96(53.06,66,90) 6位 USインターナショナル

 

 

並べてみて恐ろしいのは、ザキトワ選手の出した238.43というスコアを上回っているのは8選手、10例しかない、ということです。男子と女子ではプレゼンテーションスコアの係数が異なります。ザキトワ選手のプレゼンテーションスコアの係数を男子と同等、と仮定して補正を加えるとショート89.03、フリー177.24の合計266.27となります。これを上回っているのは、宇野選手とロシアのコリヤダの二人だけ、ということになります

フリーの177.24という計算値を上回るのは、コリヤダのフリーの177.55しかありません

ザキトワのスコアはとてつもないスコアである、ということが男子の結果を見ることでよくわかったりします

 

これはつまり、四回転もトリプルアクセルなしでも、そこまで出すことは可能である、ということです。今の水準であれば、四回転、トリプルアクセルなしでも勝機がある、という計算になります

実際には、男子のトップ選手でトリプルアクセルも無し、ということはないですから、きっちりノーミス演技をして、各要素で加点をつけて、プレゼンテーションスコアで高得点を出せば、四回転なしでも、チャレンジャーシリーズ段階のスコアなら勝負ができる、ということになります

 

チャレンジャーシリーズの結果だけを見る限りにおいては、今回のルール変更は男子への影響が女子と比べてかなり大きいように見えます。実際、ジャンプの数が減る、時間が短くなる、という男子だけの変更もある、ということもありますが、ジャンプ基礎点の減少とGOE幅の変更、ということだけでも男子への影響が大きそうです

何が理由か、というと、女子はノーミスに近い滑りをする選手が多い中での加点をどこまで引き出せるか比べ、というところに至っていたのに対し、男子は四回転ばくちでダメならダメ、飛べれば高得点、というハイリスクハイリターン型構成でした。今回のルール変更は、このハイリスクハイリターン型へのダメージが大きくて、全体的に点数が下がっている印象です

 

男子の有力選手ではネイサンチェン、ビンセント・ゾーといったアメリカ勢や中国のボーヤンジンあたりはチャレンジャーシリーズに出ませんでした。スペインのハビエル・フェルナンデス選手もいませんが、これはグランプリシリーズのエントリーもないですし、1シーズン休むか、後半のヨーロッパ選手権、世界選手権に出てくるかはわかりません

その辺なしだと、上位に来るのは、日本の二人と、男子でもロシアがかなりの数を占めるようになってきました。

意外なのは、韓国のチャ・ジュンファン。オリンピックでも15位に終わっていて、まだまだかと思っていましたが、チャレンジャーシリーズ2試合では好成績を上げてきました

 

ただ、まだまだ、全員、ノーミスの演技というのは出来ていません。ルール変更に戸惑った状態のまま、まだ新ルールへの対応が手探り状態という中で試合に臨んでいるようにみえます。

フリーでの4回転の回数は宇野選手が4回、羽生選手は3回になってますが、単独のダブルトーループは4回転にしたかったのだと思うので4回の構成かと思います。コリヤダはトーループ2本の2回、チャ・ジュンファンはサルコウトーループで2回、キーガンメッシングはトーループ1回だけ。3種類4本、なんて構成を選んでいるのは日本のトップ2人だけですいまのところ。ネイサン・チェンやボーヤンジンがどんな構成で来るのかは興味深いところ

昨シーズンは四回転ルッツにチャレンジし始めた選手がかなりの数いた印象ですが、今シーズンはその傾向は抑えられそうで、2年くらい時計を巻き戻した時期の構成になりそうな感じです。つまり、限られた選手だけが4回転を3種類以上こなすけれど、ほとんどの選手はやってサルコウトーループの二種類で2回。あるいは得意な方の1種類で2回。

そんな構成になりそうです

 

今回のルール改正では、そういった形で、少しジャンプの難易度を下げさせても、全体の完成度を上げさせよう、という主催側の意志が感じられますが、いまのところ、まだシーズン序盤であることもあって完成度は全体的に低い中での争いとなっています。フリーの最高点はコリヤダ選手の177.55で、まだ180点に乗った選手すらいません。コリヤダ選手も4回転トーループで転倒しています。フリースコア二番目の宇野選手は172.05ですが、こちらの演技は本人基準ではボロボロといっていいレベルでした。羽生選手も同様です

 

上位の選手は、顔見せに出てきました。怪我無くあるいはケガから回復して元気にやってます、新ルール対応中です、という感じのチャレンジャーシリーズだったかと思います。

 

 

さて、日本人の三番手以下の選手たちを見ていきたいと思います。

今回のチャレンジャーシリーズには、特別強化選手と、強化選手Aでシニアの大会への出場を希望した選手が出たように見えます。男子は強化Bからの出場はなし

 

三番手以下で一番高得点だったのは、オリンピックにも出た田中刑事選手でした。

ただ、スコアは221点台で、出来もかなり悪いです。フリーではサルコウトーループで2つ四回転のつもりだったのかと思いますが、どちらも3回転になりました。ルッツも2回転になっています。コンビネーションジャンプも一つ入らず。GOEで+4のジャッジがいる要素がコレオシークエンスのみ。スピンのレベルが4,3,2一つづつ、ステップのレベルが3

相対的に他の日本人選手より上に行きましたが、ぱっとしないシーズンインでした。まあ、男子は上から下までほとんど全員がそんな感じなので、特別心配ということもなく、だれがはやく新ルールになれてしっかりした演技をしてくるか? という争いになっていて、その中で今は普通の位置にいる、という感じかもしれません

 

世界選手権5位の友野一希選手もそれほどいい出だしではなく、ロンバルディア杯で216.74の5位

友野選手はフリーの4回転はサルコウで2回の構成なようですが、1本目が転倒、2本目は2回転になり、点が伸びませんでした。ただ、他の要素は減点なし。スピンステップすべてレベル4 序盤悪い入りながらもそこから立て直して大崩れしなかった、という形でした

4回転サルコウ以外の課題として、GOEのプラス幅が小さい、というのがありそうです。ショートフリー合わせて、+4以上がついたものが、すべての要素すべてのジャッジで一つもありません。+3も、ステップではショートフリー共に半分くらいのジャッジが付けていますが、それ以外の要素ではトリプルアクセルが絡む要素で+3をつけたジャッジがそれぞれいるくらいです。普通の3回転ジャンプで、あるいはスピンで、+3をもらうことができておらず、+2あるいは+1にとどまってしまう。

この辺がこの先上位で戦うためのポイントになりそうに見えます

 

本草太選手は国際試合の復帰シーズンになるんですが、実は国際試合のシニアデビューシーズンだったりもします実質的に。そういう意味で、点は伸びないながらアジアンオープンにフィギュアで優勝できたのは大きくて、これでランキングポイントを何とか稼ぐことが出来ました。

まだジャンプはトリプルアクセルまで。アジアンオープンフィギュアのフリーで久しぶりに加点付きのトリプルアクセルを飛びました。フィンランディア杯ではおそらくフリーで2回トリプルアクセル、という構成にまで上げたのだと思いますがこれは不発でした。

彼がジュニア時代に戦っていた、宇野昌磨、ボーヤンジン、ネイサンチェン、と言ったところは、今や世界の頂点を争う選手になっています。スコア的にはまだまだですが、立て続けの大きなけがを乗り越えつつあって、どこまで行ってくれるのか楽しみでもあります。今シーズンの段階でも3番手としての世界選手権出場、というのはありえるかもしれません。

 

チャレンジャーシリーズ出場組の中では須本選手だけはジュニアカテゴリーの選手で、今シーズンもジュニアグランプリシリーズに参戦しています。チャレンジャーシリーズのアジアンオープンフィギュアでは冴えない結果に終わりましたが、ジュニアグランプリの初戦、スロバキアでは210.31のスコアを出して2位に入っています。

今シーズンはジュニアカテゴリーで世界を目指し、世界ジュニアでの表彰台や、3枠奪取という目標の方に進むことになりますが、田中選手、友野選手の出来次第では、全日本で表彰台に乗ってくる、という可能性もあるスコアを持っています。四回転がない、というのが今の大きな弱点。これを克服すると、次代の中心選手になってくるんですけど、どうでしょう。

 

 

今シーズンはルールが大きく変わったこともあり、シーズン序盤はほぼ全員が、まだバタバタした感じになっていることが否めません。

シーズン終盤には、それぞれの完成度が上がっていって、四回転で勝負する人、四回転はないけれど加点要素で、見栄えで勝負する人、それぞれの個性が生きる展開になっていってもらえたらと思います