今年の全日本選手権は面白かったですねえ
男女ともトップ選手が今年初戦という異例の状態で迎えた試合でしたが、昨年と比べて全体の出来が良かったように感じました
実際、点数も特に女子は高かったですし
そんな全日本選手権のレビュー
数値編はたぶん後でやりますが、とりあえず文章羅列型の感想編
まずは男子シングルです
一応、結果も載せておきます
●全日本選手権20 男子シングル結果
Pl | Name | Total | SP | FS |
1 | 羽 生 結 弦 | 319.36 | 103.53 | 215.83 |
2 | 宇 野 昌 磨 | 284.81 | 94.22 | 190.59 |
3 | 鍵 山 優 真 | 278.79 | 98.60 | 180.19 |
4 | 田 中 刑 事 | 238.83 | 83.61 | 155.22 |
5 | 佐 藤 駿 | 236.52 | 83.31 | 153.21 |
6 | 友 野 一 希 | 223.16 | 81.72 | 141.44 |
7 | 三 浦 佳 生 | 221.26 | 67.61 | 153.65 |
8 | 島 田 高志郎 | 220.94 | 71.88 | 149.06 |
9 | 山 本 草 太 | 217.34 | 82.60 | 134.74 |
10 | 三 宅 星 南 | 213.53 | 79.09 | 134.44 |
11 | 日 野 龍 樹 | 202.13 | 69.79 | 132.34 |
12 | 森 口 澄 士 | 196.10 | 66.18 | 129.92 |
13 | 本 田 ルーカス剛史 | 194.03 | 67.52 | 126.51 |
14 | 須 本 光 希 | 193.37 | 67.15 | 126.22 |
15 | 中 野 紘 輔 | 187.06 | 66.47 | 120.59 |
16 | 櫛 田 一 樹 | 184.81 | 71.23 | 113.58 |
17 | 中 村 俊 介 | 184.01 | 63.97 | 120.04 |
18 | 大 島 光 翔 | 178.45 | 62.34 | 116.11 |
19 | 本 田 太 一 | 177.87 | 67.86 | 110.01 |
20 | 長谷川 一 輝 | 175.24 | 63.59 | 111.65 |
21 | 木 科 雄 登 | 174.30 | 61.38 | 112.92 |
22 | 小 林 建 斗 | 172.41 | 60.88 | 111.53 |
23 | 小 林 諒 真 | 168.94 | 63.91 | 105.03 |
24 | 國 方 勇 樹 | 159.29 | 60.08 | 99.21 |
25 | 杉 山 匠 海 | 59.22 | 59.22 | |
26 | 山 隈 太一朗 | 57.51 | 57.51 | |
27 | 山 田 耕 新 | 56.56 | 56.56 | |
28 | 唐 川 常 人 | 54.51 | 54.51 | |
29 | 石 塚 玲 雄 | 50.29 | 50.29 | |
30 | 古 家 龍 磨 | 47.09 | 47.09 |
羽生結弦選手圧勝。最近勝ててない全日本で特に昨年は実際に出て負けている。なので今回は、なんだかんだ言いつつ、このタイトルを取り戻したい、というような意志があって出てくるのかな、と思っていたのですが、あんまりそういう口ぶりではなかったでしょうか
今シーズンの国際大会のベストスコアはスケートアメリカのネイサンチェン選手299.15なので、それを大きく上回った、ということに計算上なってますけど、そこはあんまり参考にはならないかな
結果的に圧勝でしたが、実際にはそんなにかけ離れた差があるようには感じませんでした。なんというか、二シーズン前の世界選手権でネイサンチェン選手と羽生選手が、結果的に点差は大差だけどそんなにかけ離れた差があるようには感じない、というのと同じ程度に。
実際、計算上はもっと点が出るポテンシャルが羽生選手にありますし。スピンノーバリュー事件はちょっと横に置くとして、構成ももっと基礎点高くできるはずです。ショートフリー通じて、フリップもルッツもなしで4種類のジャンプだけの構成になってます。そうすることでジャンプの練習負荷が減って四回転アクセルに時間を回せる? その辺はよくわかりませんが。鍵山選手が3Lz-3Loのコンビネーションをやってますが、羽生選手こそ子のコンビネーション入れるといいと思うんですけどねえ。まあ、フリーのトリプルループはあの流れであの場所で飛べるジャンプは単独ループしかないですし、きれいな流れなのでプログラム的には好きだから変えてほしくない気もしますけれど。
コーチがいない影響は、スピンノーバリュー事件に出てるんでしょうか。審判に四の五の言われないはっきりしたレベルカウント、というのをコーチがいればたぶん練習時に指摘していたように感じます。特にオーサー先生は、そういう審判団からどう得点を引き出すか、というのに長けている人ですし。一方で、精神的な面ではコーチがいないことの影響が見た目感じられませんでした。昨シーズンの宇野選手なんかも思い起こすと、あの立場の選手がコーチ不在で一人でもしっかり精神的に安定していられるというのはものすごいことだな、と思いました
宇野選手二位。五連覇ならず。ショートノーミスで106点の首位スタートなら面白かったのですが、羽生選手から9点ビハインドの3位でフリー、というところからの逆転はなかなか厳しい。四回転はフリップ2本にサルコウも決まったのに、トーループの安定感のなさはなんなのでしょう? フリーではリカバリーで後半4回転トーループ2本となってましたが、2本目というか通算3本目の方はやはりクリーンに決まらず。もうフリーは四回転フリップ2本にしたらどうです? と思ったりもしました。
宇野選手はショートフリー通じてルッツとループが無しの4種類のジャンプ構成です。実際にはルッツはある予定でリカバリーしたら消えた、ということではあるはずですけれど、不思議なものでトップ2選手がジャンプの種類が少なくなる。4回転3種類の選手に起きる現象なのですが、こういうのを見ていると、6種類コンプリートボーナスとかあってもいいかなと思ってしまいます
ノーミスのGreat Splitを世界選手権ではお待ちしております
鍵山選手3位。昨年と同じ順位ですが感覚的にはずいぶん違う。昨年は大健闘三位という感じでしたが、今年は、みんな3位だと予想してたでしょ? の3位。先輩、今季初戦っすよねえ、流石にノーミスされると勝てないですけど、ツーミスくらいしたら食いますよ? という感じで挑んでいって、宇野選手を食いかけた3位。3連続をきれいに決めてたらたぶん2位でした。技術点だけなら2位でしたし。世界選手権表彰台あるかも、な勢いを感じます。フリーは、まだ、個人的には昨シーズンのタッカーの方が好きで、アバターってもうちょっと重くなかったっけ? と思う部分もあり、今の勢いには合うんだか合わないんだか。
四回転二種類持ち選手の限界近い構成になってきています。ルッツループまで組み込んでいるので、あとは1.1倍ボーナスをハードにしていくくらいしか基礎点上げていくすべはない。PCSがまだ伸び切っていないので、そこの伸びとスピンステップレベルをしっかりとったノーミスなら300点までは行けそうですが、その上、320点超えて頂点を目指すには四回転3種類目も必要そう。オリンピックまでに3種類目を入れる練習をしていくのかどうか?
ちょっと上位3人とその下の差が開いてしまいました。NHK杯時点で見えていた現実ではありますけれど。来年のオリンピック代表選考がちょっとつまらなくなってきてます・・・
逆転があるとすれば、ジュニア2年抜けでシニアに殴り込みをかけて大化けした三浦佳生選手あたりでしょうか。
三浦選手はまだ難しいジャンプ発表会という感じがあってPCSが伸びてないですしスピンステップも点が取れてないです。それでも中学3年生ですし、世界ジュニア見たかったんですけどねえ。グランプリファイナルはシリーズがああなった時点でさっさと中止でいいと思うけど、世界ジュニアは何とかやろうとしてほしかったなあ。
佐藤駿選手はシニア1年目の今年も5位 世界ジュニアがあれば、迷って迷って3枠目は彼に回す(四大陸が回らなければ)、というのがありえた5位という位置、でしょうか。フリーはロミオとジュリエットに戻してました。表現力系の選手ではないですが、佐藤選手のロミオ結構好きだったのでこれはこれであり、と思ってました。来シーズンもロミオでオリンピック選考会に挑む、なんてあってくれてもいいなあ。ライバル鍵山選手と得点的には少し差が出てしまっていますが、来シーズン、一発勝負の全日本で四回転四種類五本+トリプルアクセル二本のスーパー構成でひっくり返す、なんて展開があったりしても面白いです。
シニアで上位をうかがっていた選手、友野一希選手、山本草太選手、島田高志郎選手、あまり伸びませんでした。この中だと友野選手のフリーのムーランルージュは好きなんですけどねえ。昔のエキシビジョン、犬のおまわりさんの運命と並ぶ代表作になりそうないいプログラムだと思うのですが。山本選手もそうなのですが、トップ3に勝たないとオリンピックがない、ということで四回転2種類の高難度構成をショートもフリーも入れて、こなしきれずに点が伸びてこない。気持ちはわかるし、オリンピックを狙うにはそれしかないというか最低限そこのクリアが必要というのはわかるのですけど、ただ見ているだけの外野としては、この二人の、少し難度を落としてもいいから完成したノーミス演技というのを見たい、と思ってしまう部分があります。
田中刑事選手は4位。4期連続の世界選手権代表でしたが今季は代表落ちとなりました。例年なら4位だと四大陸選手権は回って来るのですが今シーズンは中止。何もなしの4位、というのはちょっと悲しい。フリーは四回転二本降りて、流石これは全日本に合わせてきたのか、間に合ったのか? と一瞬思ったのですが後半、コンビネーションが入らず伸びませんでした。シャーロックホームズと言えば田中刑事を思い浮かべるようになりたい、というようなことを述べていたようでしたが、最後のポーズとか二シーズン見てると、この曲と言えば田中刑事、というイメージには私の中ではなってます。むしろ三シーズンくらいやっているような印象でした。
中位以下だと今シーズンで引退、という選手も毎年それなりにいるのですが、今シーズンは特に学生選手権が中止になってしまっているので全日本の重みが重かったかなあ。
その代表格が今年は本田太一選手でしょうか。フリーの出来は正直良くなかった、というかひどかったに近いものだったかもしれません。大学四年生を過ぎても続けられるのは限られたごくごく一部の選手、というのが今のフィギュアスケート界の現実。立ち位置的にいろいろと大変なスケート人生だったのだろうと思うのですが、お疲れさまでしたと言いたいです。
大会後でしたし大学4年生ではないですが日野龍樹選手も引退と述べていました。こちらは羽生結弦世代。いつかのNHK杯で、日野選手もっと来いや、と羽生選手が言っていたのが記憶に残っています。世界のトップまで引けませんでしたがグランプリシリーズまではたどり着いた選手。全日本も最高位4位、ISU公認試合ではないですがユニバーシアードで6位にまでなったこともあります。
こういう選手が一人一人辞めていく。残念ですが、毎年全日本で見られる光景でもありました。これが30歳とかならいいんですけど、22歳とか、伸びても25歳とかで辞めていく。フィギュアスケート界の構造的な問題なように感じています。
次の試合、今シーズンあるかな?
以上、全日本フィギュア、男子シングルの感想でした