全日本選手権21 男子レビュー1

女子シングルに続いて男子シングル。今回も点数はあまり追わずに感想的なものになります。

 

○男子シングル最終結

Pl Name 所属 Total SP FS
1 羽  生  結  弦 ANA 322.36 111.31 211.05
2 宇  野  昌  磨 トヨタ自動車 295.82 101.88 193.94
3 鍵  山  優  真 オリエンタルバイオ/星槎 292.41 95.15 197.26
4 三  浦  佳  生 目黒日本大学高等学校 276.16 92.81 183.35
5 友  野  一  希 セントラルスポーツ 263.67 87.79 175.88
6 三  宅  星  南 関西大学 252.82 90.52 162.30
7 佐  藤      駿 フジ・コーポレーション 252.13 87.27 164.86
8 山  本  草  太 中京大学 240.18 93.79 146.39
9 壷  井  達  也 神戸大学 235.21 77.31 157.90
10 島  田  高志郎 木下グループ 233.67 86.76 146.91
11 田  中  刑  事 国際学園 232.42 84.10 148.32
12 本  田  ルーカス剛史 木下アカデミー 225.22 78.53 146.69
13 森  口  澄  士 木下アカデミー 201.30 76.14 125.16
14 片伊勢      武 神戸クラブ 199.65 69.32 130.33
15 須  本  光  希 関西大学 199.62 68.55 131.07
16 大  島  光  翔 明治大学 195.04 65.86 129.18
17 櫛  田  一  樹 関西学院大学 186.99 72.37 114.62
18 石  塚  玲  雄 早稲田大学 178.01 57.06 120.95
19 杉  山  匠  海 岡山大学 174.70 65.34 109.36
20 吉  岡      希 西宮甲英高等学院 170.57 72.94 97.63
21 山  隈  太一朗 明治大学 170.56 55.11 115.45
22 長谷川  一  輝 東京理科大学 161.92 56.86 105.06
23 鈴  木  零  偉 広島スケートクラブ 158.69 53.45 105.24
24 鈴  木  楽  人 法政大学 152.85 55.00 97.85
25 中  村  俊  介 木下アカデミー 52.78 52.78  
26 辻  村  岳  也 同志社大学 50.03 50.03  
27 古  家  龍  磨 九州工業大学 46.59 46.59  
28 古  庄  優  雅 日本大学 45.99 45.99  
29 木  科  雄  登 関西大学 45.92 45.92  
30 和  田  龍  京 中京大学 42.34 42.34  
31 早  川  晃太郎 国際医療福祉大学 38.52 38.52  
32 堀  義  正 明治大学 35.83 35.83  

男子は上位12人とその下の落差、フリーの前半と後半の落差が非常に大きいなあ、というのを感じました。上は極限まで強いのだけど中間層の厚みがない。各地方大会で枠が埋まらず東日本や西日本に全員進出できる地域が多い。男子と女子の競技人口の差を強く感じます。その中でよく上はこんな突き抜けた選手が何人も出てくるなあ・・。

 

優勝したのは今季初戦の羽生結弦選手。四回転アクセルは惜しいとか残念とかじゃなくて、ただただ、ケガしなくてよかった、としか今のところ思えなかったりします。四回転ではなくてダブルアクセルとかでも子供たちは転びながら覚えていく、とか言われても、あの四回半回って降りてくるエネルギーが、十分な体勢でないままに右足に直撃することを何度も何度も繰り返す。見ていて怖すぎる。とにかく怪我無く終えてよかったですけど、これからも画面に映らないだけでそういう練習の日々が続いていくのだろうなあ・・・。怖い。怪我無くオリンピックの日を迎えていただければ、というか今後の競技生活を続けて行ったいただければ幸いです。

 

2位争いを制したのは宇野選手。以前からそうでしたけど、自分より前に滑る選手のスコアは全部把握して、自分がここでこう失敗したら勝てない、これ跳べば勝てる、とか考えながら滑ることができる冷静さはすごいなあ。その冷静さがあるなら二本目の4回転のあとに根性でもなんでも1回転付ければリピートにならないとかも頭に入ってそうなものなのだけど、それをつける余裕はなかったでしょうか。4回転4種類5本構成。シーズンが進んでだんだんと完成に近づいている感じがします。今回は4本着氷。セカンドトリプルをショートフリーで付けてのノーミスなら上二人とも戦えるスコアになっているのでオリンピックに期待。

 

鍵山選手は3位。グランプリのトリノでもそうでしたが、追い込まれた状況でのフリーグラディエーターというのはなんだか似合います。今回、スコア的には大差で表彰台に乗ってますけど、ショートで転倒した4回転トーループをフリーでも2回転倒したら表彰台はアウトだったわけでそんなに余裕はなかった。そこで決めてくるグラディエーター。高校3年生でオリンピック。男子では長野オリンピック本田武史さん以来の高校生でのオリンピック出場かと思います。お父様以来だったら面白かったのですが、お父様のオリンピック出場一回目は二十歳の時でした。

 

三浦佳生選手が4位にまで入ってきました。四大陸券ゲット。さすがに日本の男子で高校一年生のオリンピックは厳しかったですが、すごい点数です。四大陸、世界ジュニアと続けて勝っていくこともあり得るスコア。世界ジュニアはまさかの最強の敵は日本から、みたいな展開になりましたが宇野昌磨選手以来7年ぶりの日本人選手の優勝を期待したいです。

 

友野一希選手は5位。いいところまで来た感じはあるのですけど上が強すぎました。オリンピックは補欠。これでオリンピックも補欠から出たら補欠コンプリートかと思うのですがさすがにその展開はなさそう。ノーミスすれば280点までは出るんだなあ、というのは見えました。四大陸優勝チャンスあるし、表彰台までは高確率で行けそう。最後のコレオすごかったなあ。いろいろ滑った中で私はグランプリデビュー戦のNHK杯チゴイネルワイゼンが好きだったのですが、今回のラ・ラ・ランドはそれを超えたかも。

 

三宅星南選手が6位に躍進。男女とも6位に予想されていなかった選手が入ってきました。島田高志郎選手に勝ったの久しぶりじゃないですか? ジュニア初期のライバル関係からずいぶん差がついてしまったなあ、と思っていましたが今回覚醒しました。国際大会のパーソナルベストはまだ214.87 めぐってきた四大陸選手権。全日本と同じスコアを出せればシーズンベストも20位前後にまで入ってきて来シーズンのグランプリシリーズチャンスが来ます(オリンピック、世界選手権で抜かれる可能性は結構あるけど)。チャンスを生かしてほしいなあ。

 

佐藤駿選手は7位。ショートフリー共にベストの滑りは出来ず。4回転4本まで決めたのに後半に3回転のジャンプで崩れる。4回転飛んでるジャンプで同じ種類の3回転を飛ぶの難しいんですよ、という本人の言葉がそのまま出てしまったトリプルフリップという感じでした。四大陸かあ、と思っていたら6位に入れず世界ジュニアへ回ることに。ただ、ここで出戻り世界ジュニアすることでスーパースラムの可能性を取り戻したとも言えます。世界ジュニア最大のライバルは三浦佳生選手? 久しぶりに直接対決でこの全日本では負けたということになりますが、世界ジュニアではどうかな? 私はロミオとジュリエットよりオペラ座の怪人の方が好きだな、と思いました。

 

ショート4位だった山本草太選手が8位。いいところまで行ったんですけど、何もなしかあ・・・。四大陸の補欠は入ってますが。ショートは全要素全ジャッジプラスでよかったんですけど、2本そろわない。ここで四大陸が入れば世界ランキングが維持できて24位以内グランプリ券1枚が入りそうだったのですが、それがないとちょっと厳しいかも。B級大会の派遣はたぶんあってそこで優勝ポイントくらいまでは取れるかもしれませんが。何とか来期もグランプリ1戦、なぜか縁のあるNHK杯でいいんで入ってもらえたらなあ。2本そろえばグランプリ表彰台くらいまではあると思うのだけど。山本草太選手がこれからも僕はいるよ、という楽曲をフリーに選ばれると、いろいろと考えてしまいます。

 

9位に壷井達也選手。国立大学受験を終え競技に復帰。神戸に進学して中野組にいたのね。名古屋大学じゃいけなかったんだろうか、とか思ったり思わなかったり。狙い通りの世界ジュニア確保。日本勢が強いので235点だと表彰台は厳しくなりますが、ジュニアグランプリを見ると2番目相当のスコア。ジュニアルール換算するともう少し低くなりますがそれでも上位で戦える位置にいます。世界ランキング、ポイントゼロなのですがどこまで世界ジュニアで稼げるか。壺井選手が頑張ると男子は表彰台独占の可能性もなくはなくて、それが出来れば来期のグランプリ1枠まで取れるので、3人の中では一番壷井選手がこの先のスケート人生にとって大事な大会になると思います。

 

島田高志郎選手が10位 二桁順位になりました。成人してのチャップリン。当然昔より上手になってはいるのですが、正直な感想としては14歳のチャップリンインパクトには負けるかなあ、といった感じでした。10位だと何もなし。B級大会派遣くらいはあるかな。ランキングもシーズンベストも低いので来期のグランプリ枠も多分ないです。ここ2,3年苦労している感じがしますが、来年再来年くらいにその苦労が報われてくれるといいなあ。

 

田中刑事選手は11位でした。今シーズンは結局あまりいい滑りが出来なかったように感じます。シン・エヴァンゲリオン、割といい感じだとは思うのですがジャンプ決まらないとしっくりこないのもまた現実。27歳。そろそろ去就が気にされる年齢にもなってきています。今後はまだ決めていないと本人はいっていますがどうなるでしょう。今シーズングランプリでポイントが取れなかったので、このままB級大会も出ないと来シーズンはランキングポイントゼロからスタートになります。オリンピックにまで行った選手がゼロからやり直す、という選択をするかどうか。どうなるでしょう。

 

本田ルーカス剛史選手が12位でした。世界ジュニアまわりかな、と思っていたら、佐藤駿選手が7位になって四大陸が取れずに世界ジュニアに回ってきたことのあおりを食って世界ジュニアもなくなってしまいました。ジュニアグランプリファイナルのワイルドカードももらっていたのに大会自体が中止とか、昨年全日本ジュニア勝ったのに世界ジュニアに出られず来年には成人してしまうとか、何かと運がないです。日本のトップに上がってきてころから世界がコロナに包まれて、国際経験が積めていないんですよね。19歳20歳あたりに、島田高志郎選手、三宅星南選手、壷井達也選手といった中堅上位層が固まっていて、高校生の3人に先にその上を行かれたという構図になっているのですが、そのあたりが何となく昔の、村主荒川恩田、世界のトップで戦う上位勢に浅田安藤年下が先に追いついた中で間に挟まれる中野友加里さんや鈴木明子さんが遅れて後から上がってきたという構図が想起されます。そんな風に一人二人、下の世代にもう一度追いつく、というのがあってほしいなあと思ったりします。

 

男子は以上で。次回からはデータを追っていく形になると思います。