フィンランディア杯 強い韓国勢

チャレンジャーシリーズも5戦目まで来ました。フィンランディア杯です。日本からの派遣はなし。コロナ以前はたいてい誰かが出ている試合だったのですが、方針変わったのでしょうか? 

 

○女子シングル 上位12名

Pl Name Nation Total SP FS
1 Yelim KIM KOR 213.97 71.88 142.09
2 Chaeyeon KIM KOR 205.51 67.84 137.67
3 Anastasiia GUBANOVA GEO 197.56 68.03 129.53
4 Haein LEE KOR 195.72 66.00 129.72
5 Alexia PAGANINI SUI 165.71 57.09 108.62
6 Lindsay THORNGREN USA 165.09 52.86 112.23
7 Lindsay van ZUNDERT NED 164.81 59.22 105.59
8 Josefin TALJEGARD SWE 163.76 59.51 104.25
9 Olga MIKUTINA AUT 160.43 52.81 107.62
10 Janna JYRKINEN FIN 157.64 53.75 103.89
11 Linnea CEDER FIN 155.95 56.19 99.76
12 Eva-Lotta KIIBUS EST 153.35 53.17 100.18

女子は韓国勢が上位を席巻しました。

キムイェリム選手が優勝。213.97はここまでのチャレンジャーシリーズでは渡辺倫果選手を上回ってトップのスコアになります。パーソナルベスト更新。韓国女子の210点台は歴代で3人目になるようです。チャレンジャーシリーズを今期2戦2勝。あまり誰も気にしていませんが、チャレンジャーシリーズの今シーズンのランクトップに立ってきています。

2位も韓国からキムチェヨン選手。こちらはジュニアグランプリのグダンスクからの連戦で205.51を出してパーソナルベスト更新です。そして来週はジュニアグランプリのエーニャで2位以内に入ればファイナル進出という試合に臨むことになります。吉田陽菜選手、千葉百音選手、二人のどちらかに勝たないといけないのですが、シニアルールとはいえ205.51まで出してきていてチャンスがありそうです。

3位にはジョージアのグバノワ選手が入りました。元ロシア、今でも練習はロシアでしてるんじゃないかと思いましたが、活動に支障は出てないのでしょうか? 昨シーズン世界選手権6位。今シーズンはヨーロッパのタイトルを目指したいというところですが、197.56はまずまずのスタートかと思います。今季は初グランプリシリーズとなり、4戦目のイギリスと6戦目のフィンランドにエントリーです。

韓国からもう一人、イ・ヘイン選手が4位でした。フリーは3位。フリーだけなら上位3位までを韓国勢が占めた形になりました。前週のネペラメモリアルに次いでの連戦です。スコアは160点台からだいぶ上げてきました。昨シーズンは四大陸と世界選手権に出場後、4月にも2試合出ていたり、たくさん試合に出て何かを掴んでいこうというタイプなようです。グランプリシリーズは初戦のスケートアメリカから登場でもう1戦は3戦目のフランスになります。

以下、5位にスイスのパガニーニ選手、7位にオランダのズンデルト選手、8位はスウェーデンのタイガード選手、9位にオーストリアのミクティーナ選手とオリンピックに出場したヨーロッパ勢が続いていますがいずれも160点台にとどまっています。

 

○キムイェリム選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T   10.10   1.77 11.87 3.000
2 2A   3.30   0.99 4.29 2.875
3 3Lo   4.90   -0.08 4.82 0.000
4 3F   5.30   0.35 5.65 0.875
5 CCoSp4   3.50   0.82 4.32 2.375
6 3F+2A+SEQ   9.46 x 1.59 11.05 3.000
7 3Lz+2T+2Lo   9.79 x 0.98 10.77 1.625
8 3S   4.73 x 1.22 5.95 2.750
9 FCSp4   3.20   0.85 4.05 2.625
10 StSq2   2.60   0.69 3.29 2.750
11 ChSq1   3.00   1.08 4.08 2.375
12 FCCoSp4   3.50   0.82 4.32 2.375
  TES   63.38   11.08 74.46  

基礎点63.38は高難度ジャンプがない中ではかなり高い領域までもってきています。ただ、ステップがレベル2なので、これが4に持っていけると64.68まで伸ばせることになります。2回飛ぶジャンプはルッツとフリップです。セカンド3Tを1つにすることで余ってくる2Aをシークエンスに入れる新ルール対応をしっかりしてきています。

最近では珍しいように感じる、ステップからコレオを要素として連続させて長い時間滑りを見せる構成を組んでいます。

フリーで稼いだGOEは11.08と二桁に乗りました。ショートフリーをあわせてジャンプで稼いだGOEが10.91あり、これは今シーズンのシニアではこれまでで最大のものです。安定した美しい滑り。昨シーズンはあまり滑りに感情が乗っていないように見えるのが残念な感じがしていたのですが、今回は以前よりはステップ、コレオのところでは感情がついていたように感じます。

グランプリシリーズは3戦目のフランスと5戦目のNHK杯にエントリーです。ファイナルの有力候補になってきました。

 

○キムチェヨン選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T   10.10   1.57 11.67 2.750
2 3Lo   4.90   1.39 6.29 2.875
3 3S   4.30   1.00 5.30 2.250
4 2A   3.30   0.61 3.91 1.750
5 FCCoSp3   3.00   0.90 3.90 3.000
6 FCSp4   3.20   0.69 3.89 2.250
7 3F+2Aq+SEQ q 9.46 x -0.35 9.11 -0.750
8 3Lz+2T+2Lo   9.79 x 1.18 10.97 2.125
9 3F   5.83 x 1.33 7.16 2.500
10 StSq4   3.90   0.85 4.75 2.125
11 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
12 ChSq1   3.00   0.75 3.75 1.375
  TES   64.28   10.97 75.25  

キムチェヨン選手はジュニアグランプリ最終戦でファイナル進出を賭けて吉田陽菜選手、千葉百音選手と戦うことになります。ジュニアの構成とはコレオの位置にステップを入れて、最後のスピンの後にコレオを付け足すという組み換えになっています。

基礎点64.28は今大会トップのものです。今シーズンこれより高い基礎点を組んだ選手は全員トリプルアクセルか4回転を構成に入れています。高難度ジャンプ無しの構成ではこれがトップの基礎点になっています。スピンのレベル3が1つあり、これをレベル4に出来れば64.78まで基礎点を上げることができます。ステップ抜きのジュニアルールでは60.88まで出る形です

2回飛ぶジャンプはルッツとフリップ。シークエンスにダブルアクセルを入れる新ルールにも対応していてこのあたりはキムイェリム選手と同様です。ジュニアルールではステップが入りませんが、単純にステップのスコアを引いても技術点で70点を超え、トータルスコアも200点を超えるところまで出しました。

前週のジュニアグランプリと比べると、ステップ抜きの技術点はフリーでは2.35上がり、PCSが2.72上がっています。技術点はシークエンスのダブルアクセルがアンダーローテーションだったものがqにまで改善されたことが効いていますがPCSの方はジャッジの差、ジュニアとシニアの見方の差、になるのでしょうか。

いずれにしても2週間続けて安定した演技をしてきていますので、ジュニアグランプリ最終戦でも200点前後のスコアを出してくると予想され、吉田選手千葉選手が勝つにはそれを上回るスコアを出してくる必要がありそうです。

 

○男子シングル 上位12人

Pl Name Nation Total SP FS
1 Junhwan CHA KOR 253.20 91.06 162.14
2 Morisi KVITELASHVILI GEO 231.30 80.16 151.14
3 Andreas NORDEBACK SWE 229.88 78.92 150.96
4 Mihhail SELEVKO EST 220.33 79.79 140.54
5 Lukas BRITSCHGI SUI 216.42 66.62 149.80
6 Ivan SHMURATKO UKR 216.25 72.18 144.07
7 Nikolaj MAJOROV SWE 202.89 67.94 134.95
8 Mikhail SHAIDOROV KAZ 201.52 69.19 132.33
9 Jaeseok KYEONG KOR 200.53 68.65 131.88
10 Arlet LEVANDI EST 197.28 65.97 131.31
11 Conrad ORZEL CAN 193.15 71.58 121.57
12 Hyungyeom KIM KOR 192.98 63.87 129.11

優勝は韓国のチャジュンファン選手でした。男女とも韓国勢が優勝です。まさかのチャレンジャーシリーズ2連戦。先週は226.32で2位に終わっていたのですがフィンランディアではスコアをまずまず伸ばしてきました。

2位にはクビテラシビリ選手。実績のある選手が順当に2位に続いています。ただスコア的には伸びておらず231.30と平凡。ミスも目立っています。こちらは今季初戦。まだまだ調整段階でしょうか。グランプリシリーズは4戦目のイギリスと6戦目のフィンランドです。メンバー的には割と薄いところに入った感があるのでその気になればファイナルがある立ち位置ですが狙ってくるかどうか。ヨーロッパ選手権が獲れそうにも見えるので年内は調整で年明けてから本番、みたいなことになるかもしれません。

3位にはスウェーデンのノルデバック選手。ジュニアグランプリのオストラバで3位に入っている選手です。初のシニアの国際大会でパーソナルベストを出して3位表彰台に立ちました。次週、ジュニアグランプリ最終戦でファイナル進出を賭けて中村俊介選手や片伊勢武アミン選手らと戦うことになります。

 

○チャジュンファン選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4S   9.70   3.23 12.93 3.375
2 4T   9.50   0.79 10.29 0.875
3 3Lz   5.90   1.28 7.18 2.250
4 3F   5.30   1.50 6.80 2.750
5 FCSp4   3.20   0.69 3.89 2.250
6 CCoSp4   3.50   0.64 4.14 1.875
7 StSq3   3.30   0.88 4.18 2.625
8 3A<+1Eu+3S< 11.37 x -2.24 9.13 -3.500
9 A   0.00 x 0.00 0.00  
10 3Lzq+3Lo< 10.80 x -2.26 8.54 -3.875
11 FCCoSp4   3.50   0.76 4.26 2.125
12 ChSq1   3.00   1.92 4.92 3.750
  TES   69.07   7.19 76.26  

4回転は2種類2本。2回飛ぶジャンプは結果的には1回になってますがトリプルアクセルトリプルルッツでした。

序盤は良かったけれど後半崩れたというフリーです。ネペラメモリアルでもそうでしたが後半のトリプルアクセルが決まってきません。ショートも4回転決まったけれどトリプルアクセルはGOEマイナス。アクセルが課題になっています。

基礎点は69.07 アクセル1つ零点の他回転不足で基礎点削られたのが3つあると70点を下回ってしまいます。1,1倍にコンビネーションはすべてつぎ込むということを狙っているようなのでそれが決まってくると4回転2本ながら基礎点は80点台後半まで出ます。ルッツループ持ちなのでコンビネーション入れても2回転1つもないという構成が組めるのも大きいです。

なお、ダブルアクセルが丸々余るので、3連続は3A+1Eu+3Sよりも3A+2A+2Aの方が1.1倍時で1.98基礎点は高くできます。

まだまだ本番はこれから、という感じの立ち位置なはずですが、ブライアンオーサー先生が試合に帯同していました。羽生結弦さんが抜け、ジェイソンブラウン選手が試合に出ないと、意外に男子のトップ選手は減っていて、クリケットクラブの中でもチャジュンファン選手が中心的な位置になっていたりするのでしょうか。

グランプリシリーズは初戦のスケートアメリカと5戦目にNHK杯で来日予定です。

 

アンドレアスノルデバック選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A+3T   12.20   1.33 13.53 1.625
2 3A   8.00   0.80 8.80 1.000
3 3F   5.30   0.71 6.01 1.250
4 3Lo   4.90   0.57 5.47 1.125
5 FCSp3   2.80   0.42 3.22 1.500
6 StSq3   3.30   0.72 4.02 2.125
7 3Lz+1Eu+3S< 10.82 x -0.69 10.13 -1.125
8 3Lz+2A+SEQ   10.12 x 0.39 10.51 0.625
9 CSSp4   3.00   0.65 3.65 2.125
10 ChSq1   3.00   1.00 4.00 2.000
11 2A   3.63 x -0.33 3.30 -0.875
12 CCoSp3   3.00   0.25 3.25 0.875
  TES   70.07   5.82 75.89  

ジュニアグランプリ最終戦に出てくるノルデバック選手。フリーではトリプルアクセルトリプルルッツを2本飛びます。今回はルッツからの3連続で3つ目が回転不足で基礎点から削られました。

基礎点は70.07と70点に乗りました。ステップ抜きでも66.77とジュニアグランプリの時より2.30ほど高い基礎点です。ジュニアグランプリでは3連続が冒頭にあり後半のコンビネーションでトーループが2回転になっていましたが、今回は冒頭でセカンド3回転を決めて基礎点を上げています。

単独ダブルアクセルが最後に入るという構成ですが、3連続を3Lz+2A+2Aのシークエンスにして、3Lz+2Tのコンビネーションで最後は3Sと組み替えると1Euの代替に2Tを入れることが出来て0.88基礎点を上げることができます。

ジュニアグランプリではファイナル進出には2位以内が必要な立場で、中村選手、片伊勢選手のどちらかに勝たないといけないのですが、今回の演技が出来るとチャンスがあります。中村選手も片伊勢選手も4位でもファイナルなので、ノルデバック選手に負けても問題はないのですが、なかなかの強敵になりそうなことは確かです。

 

チャレンジャーシリーズは特に女子は今季は韓国勢が強いです。ここまで5戦で2勝、表彰台延べ6人。ジュニアグランプリもそうですが、ロシア不在でアメリカがメンバー交代期にある今シーズンは日韓決戦みたいな構図が随所に見られることになりそうです。

チャレンジャーシリーズも来週6戦目があります。日本ではあまりなじみがない感じがしますがブダペスト開催。男子ではフランスのエイモズ選手、イタリアのメモラ選手やリッツォ選手、女子はスイスのパガニーニ選手やドイツのニコルショット選手などがエントリーしています。