スケートアメリカ 新時代の幕開け

今年もグランプリシリーズが開幕しました。久しぶりに普通に各大会で普通に観客が入っていくグランプリシリーズ。ロシアや中国開催がないというのは普通ではないですが、比較的ノーマルに近い状態にようやく世界が戻りつつあります。それにしてもスケートアメリカ、例年こんなに盛り上がっていたでしょうか? 割と会場は閑散としていたように記憶していますが、今年のスケートアメリカは観衆の盛り上がりが印象的でした。

 

○男子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Ilia MALININ USA 280.37 86.08 194.29
2 Kao MIURA JPN 273.19 94.96 178.23
3 Junhwan CHA KOR 264.05 94.44 169.61
4 Daniel GRASSL ITA 257.68 88.43 169.25
5 Roman SADOVSKY CAN 225.41 78.15 147.26
6 Wesley CHIU CAN 219.90 71.58 148.32
7 Liam KAPEIKIS USA 219.50 74.29 145.21
8 Sena MIYAKE JPN 215.74 77.87 137.87
9 Koshiro SHIMADA JPN 215.12 62.54 152.58
10 Dinh TRAN USA 199.68 64.99 134.69
11 Mihhail SELEVKO EST 191.80 75.75 116.05
12 Donovan CARRILLO MEX 188.28 69.18 119.10

グランプリデビュー戦のマリニン選手が逆転優勝しました。ショートで出遅れているので点差としてはそれほど開きませんでしたがフリーのインパクトは圧倒的でした。4回転アクセルというインパクトだけでなく、平昌~北京の主役たちが退場しているなか、その次の世代ではなく次の次くらいの世代として一気に出てきたあたりのインパクトも強いです。

2位には三浦佳生選手。グランプリ初優勝には届きませんでしたが表彰台を確保しました。ショートフリー合わせて6本の4回転のうち5本で加点付き着氷。これが6本加点付き着氷なら優勝に届いていました。惜しいと言えば惜しいですが、素晴らしいと言えば素晴らしいとも言えます。

3位にチャジュンファン選手。順当に表彰台は確保です。2戦目のNHK杯で2位に入れば高確率でファイナルに進めそうという位置に付けました。

イタリアのグラスル選手は4位で表彰台に届かず。今シーズンはイタリア開催のグランプリファイナル。ジュニアだけでなくシニアのシングルでもイタリア勢にファイナル進出してほしいわけですが、グラスル選手は2戦目で優勝が欲しいという情勢になりました。4戦目のイギリスにエントリー。メンバー的には十分チャンスはあります。

上位4人が強かったですが、日本勢のあと二人、5位あたりには入ってきてほしいところでした。三宅星南選手は8位。フリーが2転倒でスコア伸ばせませんでした。島田高志郎選手は9位。こちらはショートが2転倒で12位スタートが痛すぎました。9位だとランキングポイントがゼロなのも痛いです。来期もグランプリに2戦出る選手でいられるためには、それぞれ2戦目で好結果が欲しいところです。

 

○イリアマリニン選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4A   12.50   4.11 16.61 3.222
2 4T   9.50   3.12 12.62 3.333
3 4Lz   11.50   1.81 13.31 1.444
4 4S   9.70   2.63 12.33 2.778
5 CCSp4   3.20   0.78 3.98 2.333
6 StSq3   3.30   0.66 3.96 2.000
7 4Lz<+1Eu+3S< F 14.45 x -4.60 9.85 -5.000
8 3F+3T   10.45 x 0.53 10.98 1.111
9 3Lz+3A+SEQ   15.29 x 1.37 16.66 1.667
10 FSSp4   3.00   0.34 3.34 1.111
11 ChSq1   3.00   1.07 4.07 2.222
12 CCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.556
  TES   99.39   13.02 112.41  

フリーはアクセル含む4回転5本。そこにコンビネーションはすべて1.1倍につぎ込むという構成です。2回飛ぶジャンプは4回転ルッツ。3連続で基礎点削られましたがそれでも99.39の合計基礎点がありました。4回転アクセルもすごいのですが、4回転のルッツが2本というのも大きいです。この構成でノーミスの場合は4.08基礎点が上がって103.47にまでなります。

この構成だとトリプルアクセルが余るので3F+3Tを3A+3Tにすることで基礎点を上げることができるのですが、それはそれで負担なのでしょうか? 1つのプログラムで回転数の違う同じジャンプを1つ目のジャンプとして飛ぶのは辛い、というコメントが選手から聞かれることがありますが、4回転アクセルとトリプルアクセルの間でもそういうことがあるのかもしれません。

 

○三浦佳生選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4Lo F 10.50   -5.25 5.25 -4.889
2 4T+3T   13.70   3.26 16.96 3.444
3 4S   9.70   3.19 12.89 3.222
4 FCSp3   2.80   0.52 3.32 1.889
5 3A   8.00   -1.94 6.06 -2.222
6 StSq2   2.60   0.74 3.34 2.889
7 4T   10.45 x 1.49 11.94 1.556
8 3A+2A+SEQ   12.43 x 1.71 14.14 2.111
9 3F+1Eu+3S   11.11 x 0.08 11.19 0.111
10 CSSp2   2.30   0.26 2.56 1.222
11 ChSq1   3.00   1.00 4.00 2.111
12 CCoSp4V   2.63   0.53 3.16 1.889
  TES   89.22   5.59 94.81  

フリーは4回転3種類4本構成でした。基礎点は89.22 ジャンプの基礎点はすべて満額入っているのですがスピンステップのレベルが全然取れていません。スピンステップすべてレベル4に出来れば基礎点が3.23上がって92.45にまでなります。マリニン選手との基礎点差はノーミス時比でおおよそ10点ということになります。

2回飛ぶジャンプは4回転のトーループトリプルアクセル。基礎点をここから上げるには、3A+3Aというシークエンスを後半に作って、単独3Lzを入れると3.07基礎点を上げられるのですが、ルッツが苦手ですかね三浦選手。国際大会でジュニア時代からルッツジャンプでGOEプラスをもらったことがありません。ルッツではなく単独3Loだと2.07しか基礎点が上がらないので、3A+3Aを入れていくリスクとは見合わないでしょうか。そうなると4種類目の4回転が求められて、ルッツが苦手ならフリップが入って来ることになります。

フリップであっても4回転4種類5本構成であれば、今回のマリニン選手のノーミス基礎点と5~6点程度の差になってきますので、あとは出来栄え勝負で対応可能な領域に入ってきます。ただし、出来栄え勝負というからにはスピンステップでもしっかり点を取ることが求められます。

 

○ショートフリー合わせた要素別スコア(上位9人)

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Ilia MALININ 280.37 123.15 117.39 5.73 23.11 12.99
2 Kao MIURA 273.19 125.57 108.24 10.89 18.81 11.68
3 Junhwan CHA 264.05 132.15 89.35 3.61 24.85 15.09
4 Daniel GRASSL 257.68 122.99 100.97 1.27 22.10 11.35
5 Roman SADOVSKY 225.41 122.28 75.17 -7.66 25.46 12.16
6 Wesley CHIU 219.90 106.70 75.53 2.32 21.93 13.42
7 Liam KAPEIKIS 219.50 107.60 83.86 -6.01 22.22 11.83
8 Sena MIYAKE 215.74 113.86 88.57 -12.74 18.63 11.42
9 Koshiro SHIMADA 215.12 111.14 78.45 -6.00 22.91 10.62

要素別のスコアを見てみます。トータル3位だったチャジュンファン選手がPCSではトップでした。三浦佳生選手が2位でマリニン選手が3位です。

ジャンプの基礎点はマリニン選手が当然のようにトップですが、三浦佳生選手も9.15差で印象ほどの差はありません。グラスル選手も3桁の基礎点でした。三宅星南選手は順位は8位でしたが3位に入ったチャジュンファン選手とジャンプの基礎点はほぼ差がありません。全体の出来の差でこれだけの差になったという形です。

ジャンプの加点は三浦選手がトップ。マリニン選手はショートフリー1ミスづつでGOEはそれほど伸びませんでした。

スピンはカナダのサドフスキー選手がトップです。三浦選手がここの要素で全体11位。伸ばせていません。

ステップ系要素はチャジュンファン選手がトップ。ここはマリニン選手も三浦選手も伸びませんでした。

マリニン選手と三浦選手の差は今回はジャンプで得たスコアはそれほど大きくなく、3.99差でした。それよりもスピンの差4.30の方が大きかったりします。スピンステップで合計5.61負けています。ここで4回転1本増やすくらいの差になってきています。

 

○女子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Kaori SAKAMOTO JPN 217.61 71.72 145.89
2 Isabeau LEVITO USA 206.66 71.30 135.36
3 Amber GLENN USA 197.61 68.42 129.19
4 Haein LEE KOR 179.50 66.24 113.26
5 Ekaterina KURAKOVA POL 178.68 63.65 115.03
6 Gracie GOLD USA 174.09 64.18 109.91
7 Nicole SCHOTT GER 160.35 56.47 103.88
8 Yeonjeong PARK KOR 158.58 60.04 98.54
9 Ahsun YUN KOR 156.70 47.98 108.72
10 Eliska BREZINOVA CZE 153.57 56.65 96.92
11 Marilena KITROMILIS CYP 135.48 46.01 89.47
  Rino MATSUIKE JPN 59.50 59.50  

女子は現世界チャンピオンの坂本花織選手が優勝です。平昌オリンピック以降のISU公認のグランプリシリーズの女子シングルでは、実は最年長優勝だったりします。なかなか20代が勝てない女子のグランプリシリーズになっています。

2位にはアメリカのレビト選手。ロシアがいない今シーズンはジュニア上がりの目玉は世界ジュニアで勝ったこの人です。ショートでは世界チャンピオンに肉薄しましたがフリーでは届かず。これで国際大会ではフリーで6試合連続で130点台。安定していると見るか壁を破り切れないと見るか。2戦目はイギリスにエントリー。2位以内でほぼファイナル確定しますがメンバー的にはチャンスはかなりありそうです。

3位にアンバーグレン選手が入りました。グランプリシリーズ参戦5年目。初のグランプリ表彰台となります。2人を残して点が出て首位に立ち表彰台確定。非常にうれしそうでした。今シーズンのチャンピオンシップのアメリカ代表争い、十分チャンスのある位置につけてきました。

韓国のイ・ヘイン選手、ポーランドのクラコワ選手、200点を出せる実力者がいたのですがスコア伸びず170点台にとどまっています。その次、6位にグレーシーゴールド選手が入ってきました。ISU公認のグランプリシリーズでショートフリー通じて滑ったのは6シーズンぶりです。ショートもフリーも3Lz+3Tを決めてきました。難しいことができるところまで力は戻っています。あとは、体力が課題なんでしょうか。フリーの後半はちょっと滑れてなかったなあ、という感じはどうしてもありました。今シーズンのアメリカでも世界選手権はちょっと厳しいかと思いますが、4大陸代表くらいまではあるかもしれない、というところまで来ているように感じられます。

日本からもう一人、松生理乃選手はショート終わったところで体調不良ということで棄権しました。順当にいけば表彰台争いができる試合だったのですが残念です。ジュニアの頃からちょっと試合運の無い選手だなあ、というところが気になります。

 

○坂本花織選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   1.41 4.71 4.333
2 3Lz   5.90   1.77 7.67 3.111
3 3S   4.30   1.17 5.47 2.778
4 CCoSp4   3.50   0.90 4.40 2.556
5 3F+2T   6.60   1.59 8.19 3.000
6 StSq3   3.30   1.04 4.34 3.111
7 3F+3T   10.45 x 1.44 11.89 2.556
8 FSSp4   3.00   0.73 3.73 2.333
9 2A+3T< 7.33 x -0.91 6.42 -2.667
10 ChSq1   3.00   1.64 4.64 3.333
11 3Lo   5.39 x 1.40 6.79 2.778
12 FCCoSp4   3.50   0.90 4.40 2.667
  TES   59.57   13.08 72.65  

いつもの構成です。9番目の要素が本当は3連続のはずでした。ここでミスが出ていて基礎点が60点を欠いています。基礎点で圧倒するタイプではないので、結果的に楽勝であっても、後半のジャンプのあたりまではどうなるかわからない怖さがあります。今回も3連続が入らなかったところでヒヤッとしました。ステップもレベル3ですしまだまだ万全ではありません。

基本的に昨シーズンと戦い方は変わらないようです。同じ構成の中でどこまでできるか、ということになります。

 

○ショートフリー合わせての要素別スコア(上位8人)

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Kaori SAKAMOTO 217.61 108.06 59.73 11.44 24.05 14.33
2 Isabeau LEVITO 206.66 101.63 62.07 4.42 24.30 14.24
3 Amber GLENN 197.61 96.88 62.30 4.81 20.15 13.47
4 Haein LEE 179.50 93.14 54.17 -2.07 22.85 12.41
5 Ekaterina KURAKOVA 178.68 88.99 56.38 -1.72 22.42 13.61
6 Gracie GOLD 174.09 90.68 46.01 2.76 24.06 12.58
7 Nicole SCHOTT 160.35 83.02 46.32 -0.74 21.17 10.58
8 Yeonjeong PARK 158.58 83.90 43.78 -2.88 23.01 11.77

要素別でみると世界チャンピオン坂本花織選手がやはりPCSトップでした。シニア1年目のレビト選手が早くも100点を超えて2位です。

ジャンプの基礎点は回転不足ながらもトリプルアクセルを入れたアンバーグレン選手がトップでした。加点は坂本花織選手がトップ。ここで稼ぐのが坂本スタイルです。

スピンはレビト選手がトップ。グレーシーゴールド選手が2位でした。

ステップ系要素は坂本選手、レビト選手の二人が14点台を出しています。

 

次週はスケートカナダです。男子は2週連続の三浦佳生選手がファイナル進出を賭けます。優勝で確定、2位でもほぼ確実、3位でも割と有力に残るという位置です。日本からはもう一人宇野選手、世界王者の初戦です。カナダからメッシング選手、中国のボーヤンジン選手、イタリアのリッツォ選手、ラトビアのバシリエフス選手と実力者が他にも顔を連ねます。

女子は紀平梨花選手の国際舞台復帰戦です。渡辺倫果選手はグランプリデビュー戦、そして横井ゆは菜選手は国際舞台での生き残りをある種賭けた試合になります。海外勢では韓国のユヨン選手が初優勝を目指し、カナダからはシーザス選手などが登場です。