グランプリフランス ハイレベルと低レベル

グランプリシリーズ3戦目、フランスです。男子は2戦目で早くもマリニン選手がファイナルを決めていますが、女子でもこのあたりからファイナル決定者が出始めてきます。

 

○女子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Amber GLENN USA 210.44 78.14 132.30
2 Wakaba HIGUCHI JPN 206.08 66.98 139.10
3 Rion SUMIYOSHI JPN 201.35 66.88 134.47
4 Chaeyeon KIM KOR 199.99 70.90 129.09
5 Sarah EVERHARDT USA 196.94 66.95 129.99
6 Nina PINZARRONE BEL 184.67 62.72 121.95
7 Mai MIHARA JPN 174.93 61.12 113.81
8 Anastasiia GUBANOVA GEO 173.21 56.77 116.44
9 Livia KAISER SUI 168.27 58.35 109.92
10 Lorine SCHILD FRA 164.32 56.51 107.81
11 Lea SERNA FRA 160.91 54.78 106.13
12 Clemence MAYINDU FRA 121.43 44.64 76.79

今季好調のアンバーグレン選手がグランプリシリーズ初優勝を飾りました。ショートで78.14とパーソナルベストであり、今期のこれまでの全選手の最高スコアでもあります。フリーではミスもありましたがショートのリードで逃げ切りました。

2位には樋口新葉選手。グランプリファイナル進出第一号です。フリーは素晴らしい出来でした。

住吉りをん選手は3位。ショート5位から逆転表彰台です。

ショート2位のキムチェヨン選手は4位。グランプリシリーズ初優勝を狙う試合でしたがフリーで崩れて4位に終わりました。安定して好成績を上げているのですが、優勝はまだチャレンジャーシリーズまでで、グランプリシリーズやチャンピオンシップ、ナショナルでも優勝はありません。立場的にわかりやすいタイトルがそろそろほしいころだろうなあ、と思われるのですが、今大会は届きませんでした。初戦4位があるので2戦目優勝でファイナルのチャンスがありますが、次戦は最終6戦目の中国杯です。メンバー的にはなかなかハイレベルな展開が予想されます。

日本からもう1人三原舞依選手は7位となりました。

 

○アンバーグレン選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A   8.00   -2.86 5.14 -3.556
2 3F+3T   9.50   1.67 11.17 3.111
3 3Lz+2T   7.20   0.67 7.87 1.111
4 3S   4.30   1.04 5.34 2.333
5 FSSp4   3.00   0.56 3.56 1.889
6 3Lo+2A+SEQ   9.02 x 1.40 10.42 2.778
7 3F F 5.83 x -2.65 3.18 -5.000
8 CCoSp3   3.00   0.64 3.64 2.111
9 3Lo   5.39 x -1.33 4.06 -2.778
10 StSq3   3.30   0.61 3.91 1.889
11 ChSq1   3.00   1.29 4.29 2.556
12 LSp4   2.70   0.69 3.39 2.556
  TES   64.24   1.73 65.97  

いま一番トリプルアクセルが決まる選手がアンバーグレン選手。今大会もショートではクリーンに決めていましたが、フリーは久しぶりにミスとなりました。それでも5.14取れれば十分。残念だったのは後半のフリップ。この転倒で優勝が多少危ういものになりました。とは言え、昨季のような、トリプルアクセルは決まるのだけど、以降のジャンプがねえ…、みたいなことは無くなっていて全体しっかりまとまったプログラムになってきています。

また、3連続が入らない、というのがグレン選手のずっと続く悩みです。一応ループの後にダブルアクセル2つ続ける予定構成を出していますが、ダブルアクセルが1つしかつかずに今回も終わっています。世界選手権で優勝争いするにはそのあたりも重要になってくる可能性があります。

そんなこともあり、トリプルアクセル入っているにもかかわらず、基礎点は64.24 トリプルアクセル無しでも出せる基礎点になっています。スピンステップオールレベル4だと65.34になるので、ここまで来ると、トリプルアクセル無しではほぼ見られない基礎点になります。とはいえ、トリプルアクセルを活かすなら、3連続もしっかり入れたいところです。

グランプリシリーズは2017年の中国杯が初出場。苦節7年、出場10回目、ついに初優勝を果たしました。

次戦は6戦目の中国杯、ファイナルが懸かる試合となります。今大会にも出場した住吉りをん選手、キムチェヨン選手に、初戦2位を持つ渡辺倫果選手、昨季ワールド7位の千葉百音選手、ワールド5位のキミーレポンド選手といった面々との試合となります。以前の大崩れ癖のあるグレン選手だと、初戦優勝を持っていても危ない可能性があるのですが、安定感を備えてきた今シーズンのグレン選手、果たして初のファイナルなるでしょうか。

 

樋口新葉選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   0.99 4.29 3.000
2 3Lz+3Tq q 10.10   -0.51 9.59 -0.778
3 3Lo   4.90   1.05 5.95 2.222
4 CCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.556
5 3Sq q 4.30   -0.25 4.05 -0.667
6 ChSq1   3.00   1.14 4.14 2.333
7 3Lz+2A+2T+SEQ   11.55 x 1.35 12.90 2.333
8 3Lo+2T   6.82 x 1.19 8.01 2.222
9 3F! ! 5.83 x -0.15 5.68 -0.222
10 FCSp4   3.20   0.59 3.79 1.889
11 StSq3   3.30   1.27 4.57 3.778
12 SSp4   2.50   0.61 3.11 2.444
  TES   62.30   8.23 70.53  

復活を印象付ける演技だったかと思います。2回飛ぶジャンプはルッツとループ。ジャンプ2つにqとフリップ!がついていますが、ほぼミスが無く滑り切りました。ステップレベル3が少しもったいなかったですが基礎点62.30 ステップレベル4で62.90になる構成です。

2シーズン前はほぼ休養。昨季も結果が残せていませんでした。今期も結果が出ないと来期のグランプリの枠もなくなるのではないかという心配もあったのですが、優勝と2位でファイナル進出と誰も文句のつけようのない結果を出しました。これで今季の日本国内の代表争いでもファイナル進出で1項目まず前進し、シーズンベスト206.08でシニア中1位に上がり、2試合平均も201.51と200点を超えて優位に立ちました。後はシーズンランキングもファイナルが決まっていますのでおそらく上位3人には残ると思われます。世界ランキングはちょっと厳しいかと思いますが、他の項目では選考条件に入ってくると思われますので、因縁のある、オリンピック枠取り世界選手権の代表になってくる可能性もかなり出てきました。

1戦目3戦目と早い2試合は大変だったかもしれませんが、これでファイナルまで少し時間が空いて、全日本までのスケジューリングとしては悪くない形となったでしょうか。

 

○住吉りをん選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A+3T   7.50   1.38 8.88 3.222
2 4T<< <<  4.20   -2.10 2.10 -4.889
3 CCoSp4   3.50   0.85 4.35 2.444
4 3Lo   4.90   0.84 5.74 1.667
5 3S   4.30   1.23 5.53 2.778
6 ChSq1   3.00   1.43 4.43 2.889
7 3Lz+3T< 10.19 x -1.01 9.18 -1.667
8 3Fq q 5.83 x -2.50 3.33 -4.667
9 FCCoSp4   3.50   0.90 4.40 2.667
10 3F+2A+2T+SEQ   10.89 x 0.68 11.57 1.222
11 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.333
12 LSp4   2.70   0.81 3.51 2.778
  TES   64.41   3.79 68.20  

ほぼ大きなミスは無く滑りました。4回転のダウングレードはミスじゃない。想定の範囲内かと思われます。3-3のセカンドアンダーとフリップは少しもったいないと言えばもったいなかったですがこれも許容範囲内だったかと思います。スピンステップオールレベル4 ここまでグランプリシリーズ4試合ですべて190点台だったところから、ついに初の200点到達です。2回飛ぶジャンプはフリップとトーループ。基礎点は4回転のダウングレードあっても64.41になります。コンビネーションのセカンドが基礎点満額取れれば0.92基礎点上がって65.33になります。4回転入れば70点超えの基礎点構成です。

グランプリシリーズ3シーズン目。これで5戦して5表彰台。表彰台率100%です。ただ優勝はまだなし。3位が4回に2位が1回となります。シーズンベストが201.35となり、日本のシニア中3位となり選考基準に入ってきました。鍵は次の2戦目。中国杯。今回、かなり強い3位を取ったので、おそらく2位以内でファイナルは可能と思われます。ただ、メンバー的にはかなり厳しい。ファイナル争いもありますが、ワールド代表争いとして千葉選手、渡辺選手との直接対決にもなりますし、この2人を抑えて自分がファイナルに出られるとシーズン後半につながっていきそうです。一方で、6戦目に出た選手がファイナルにも出てその後全日本となると、スケジュール的にかなりハードというのもあります。全日本は最高位8位であまり結果が残せていません。世界ジュニア経験はありますが、4大陸も世界選手権も代表経験はまだありません。この先2カ月、年内の2試合あるいは3試合がものすごく大事になってきそうです。

 

三原舞依選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+2T+2Lo   8.90   1.10 10.00 1.889
2 3F<< <<  1.80   -0.90 0.90 -4.889
3 3S   4.30   0.80 5.10 1.778
4 2A   3.30   0.61 3.91 1.778
5 CCoSp4   3.50   0.80 4.30 2.222
6 ChSq1   3.00   0.86 3.86 1.667
7 FSSp4   3.00   0.47 3.47 1.556
8 3Lzq+2A<+SEQ q|< 9.39 x -2.95 6.44 -5.000
9 3F<+2T 6.09 x -0.85 5.24 -2.000
10 StSq3   3.30   0.66 3.96 2.000
11 2Lo   1.87 x 0.10 1.97 0.556
12 FCCoSp4   3.50   0.70 4.20 2.111
  TES   51.95   1.40 53.35  

今一つジャンプがしっくり決まってきませんでした。ルッツとフリップを2本づつ入れた構成なのですが、ダウングレード1つにアンダーローテーション2つ。抜け2回転もあり、また、セカンド3回転もなし。冒頭に3連続持ってきたあたりで、あまり状態はよくないのかな、という雰囲気は出てきていました。ただ、冒頭のルッツは久しぶりに何もマーク付かずの成功。そこは良かったかと思います。一方、フリップがショートフリーで3本飛んで1つも決まらず。ルッツもフリップもどちらも今一つうまくいっていない状態でショートフリー3本づつ入れているわけで、なかなか難しいことになっています。

ちょっと昨季に続いて今期も苦しいなあ、という状況のようで、初戦7位ですからファイナルはありません。国際大会2戦続けて170点台。近畿選手権も170点台でした。グランプリ組の中でスコアは一番低いです。日本女子はレベルが高く、グランプリシリーズの枠は全体の72枠の中ではなくて、日本の18枠の中で争わないといけない状態で今期は18枠埋まっている。来期は今期200点超えを持っている中井亜美選手が間違いなくシニアに上がって来る。という中で、来期の枠をもらえるかどうか微妙な状態になってきてしまっているように見えます。次戦はフィンランディア杯。日本からは吉田陽菜選手、松生理乃選手といったファイナルを争う試合になる2人と、アメリカのレビト選手やサラエバーハート選手がいて、さらに今のところヘンドリックス選手のエントリーも入っています。ここでなんとか190点台くらいまでスコアを上げてきてほしいところですが、2週間でどこまで状態あがってくるでしょうか。

 

○女子シングル ショートフリー合わせた要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Amber GLENN 210.44 101.12 72.13 2.80 22.06 13.33
2 Wakaba HIGUCHI 206.08 101.45 65.19 2.81 22.63 14.00
3 Rion SUMIYOSHI 201.35 98.08 65.87 -1.06 23.61 14.85
4 Chaeyeon KIM 199.99 99.99 63.17 0.90 25.00 11.93
5 Sarah EVERHARDT 196.94 92.67 65.00 5.31 22.11 11.85
6 Nina PINZARRONE 184.67 94.00 61.81 -7.09 22.77 14.18
7 Mai MIHARA 174.93 92.00 49.05 -2.77 23.70 12.95
8 Anastasiia GUBANOVA 173.21 87.95 62.09 -4.25 19.30 9.12
9 Livia KAISER 168.27 81.73 63.53 2.05 12.03 8.93
10 Lorine SCHILD 164.32 82.04 58.11 -5.05 20.07 10.15
11 Lea SERNA 160.91 82.15 58.05 -4.32 16.55 10.48
12 Clemence MAYINDU 121.43 67.10 48.52 -13.26 14.45 7.62

PCSは樋口選手とグレン選手が100点超えです。キムチェヨン選手が99.99という際どいスコアをもらっていますが、これは本人の過去最高点になります。住吉選手の98.08も自身の過去最高値です。

ジャンプの基礎点はトリプルアクセルがショートフリーと入っているグレン選手がやはり高く1位です。住吉選手が2番目ですが、樋口選手、サラエバーハート選手も同じ65点台で続きます。三原選手は49.05とかなり低い値になりました。ちょっとこの状態だと上位で戦うのは苦しいです。

加点の方はエバーハート選手が5.31で1位です。樋口選手、グレン選手は2点台とわずかな加点に留まっています。住吉選手はマイナスです。三原選手もマイナスとなっています。

スピンはキムチェヨン選手が25.00で1位です。2番目は三原舞依選手です。この辺はジャンプがうまくいかなくてもしっかり演じようというのが垣間見えます。

ステップ系要素は住吉選手が14.85で1位でした。この値は本人の自己最高点です。住吉選手の初200点はジャンプで引き寄せたわけでもなく、総合力でその領域に達しました、ということのようです。

 

○男子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Adam SIAO HIM FA FRA 246.58 74.90 171.68
2 Koshiro SHIMADA JPN 233.84 80.42 153.42
3 Andrew TORGASHEV USA 233.64 81.54 152.10
4 Mikhail SHAIDOROV KAZ 231.86 79.89 151.97
5 Kazuki TOMONO JPN 231.48 83.45 148.03
6 Nikolaj MEMOLA ITA 227.62 68.71 158.91
7 Aleksandr SELEVKO EST 226.11 85.73 140.38
8 Boyang JIN CHN 219.05 88.12 130.93
9 Lukas BRITSCHGI SUI 212.94 77.09 135.85
10 Luc ECONOMIDES FRA 205.55 69.66 135.89
11 Camden PULKINEN USA 193.60 64.48 129.12
12 Francois PITOT FRA 183.17 48.94 134.23

アダムシャオイムファ選手逆転優勝。ショート8位からの大逆転は世界選手権をほうふつとさせる、と言いたいところですが、そこまで彷彿とはせず、ちょっと意外感ある逆転優勝でした。ショート終わった時点で、15点差無いし逆転優勝も無くはないな、とは思いましたが、逆にフリー滑り終わった時点で、流石に優勝まではこれは届かないな、表彰台ラインあたりはありそうだけど、と思っていたら、まさかそのまま優勝してしまいました。次戦は中国杯となります。

島田高志郎選手が2位。初のグランプリ表彰台です。こちらもショート終わった時点では表彰台のチャンスも、と思いましたがフリー滑り終わってダメだったか、からの2位残り表彰台となりました。

3位はアメリカのトルガシェフ選手。こちらも、せっかくチャンスだったのにフリー自己ベストくらい出せれば表彰台も・・・、と思ったらそこまで行かずに表彰台に乗りました。グランプリシリーズ初表彰台です。

友野選手は僅差で5位。優勝のチャンスもある試合でしたが、体調もいまいちで5位でも僥倖という部分もあったようですが、2位まで2.36差だともったいなかったようにも見えました。

ショート2位のセレフコ選手はフリーで崩れて7位。ショート首位のボーヤンジン選手はさらにフリーで崩れて8位。昨季ワールド5位でシードのブリッチギー選手は9位。

ちょっと全体的にスコアが伸びない試合でした

 

○島田高志郎選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz   5.90   1.60 7.50 2.556
2 4T   9.50   1.63 11.13 1.556
3 3A   8.00   -2.74 5.26 -3.444
4 3F!+3T ! 9.50   -2.04 7.46 -3.889
5 CCoSp4   3.50   0.55 4.05 1.444
6 StSq3   3.30   0.57 3.87 1.667
7 3A+1Eu+2S   10.78 x -1.14 9.64 -1.222
8 3Lz+2A+SEQ   10.12 x 0.34 10.46 0.556
9 3Lo   5.39 x -0.91 4.48 -1.667
10 CSSp4   3.00   0.60 3.60 1.889
11 ChSq1   3.00   1.21 4.21 2.222
12 FCSp4   3.20   0.41 3.61 1.333
  TES   75.19   0.08 75.27  

上位のメンバーを見ると、崩れ癖がある選手も多いので、フリーは4回転1本でもノーミスすれば表彰台チャンス、と思っていたのですが、ジャンプで細かいミスが並んでしまっていて、ちょっと足りないなあ・・・、というのが滑り終わった時点の感想でもあり、点が出た時点での感想でもあり、大魚を逸した、もったいない、と思っていました。

4回転サルコウは回避。今回は納得の上で外したように見えました。トーループ決めたので行けるか、と思ったのですが、以降の5つのジャンプのうち4つでGOEがマイナス。3連続も3つ目が2回転に。大きなミスまでは出ていないのですが、細かいミスが多くて点が伸びず。ただ、結果的には大きなミスにならなかったことが2位表彰台につながりました。

うれしいグランプリ初表彰台なのですが、滑り自体はそれほどいいわけではなかったと言わざるを得ないと思います。死の舞踏、チャップリンとは別の方向性で結構あっているプログラムで、雰囲気は出ていたと思いますけど、ジャンプの細かいミスがこれだけ出ると、ちょっとまだ完成したものには見えません。完成形をどこかで見たいです。今回は、これまでずっと頑張ってきたご褒美として、際どい点差の中で神の采配として2位を回してもらえた、というように見えました。

ただ、これで来期には繋がったように感じます。233.84はシーズンベスト20位。これはシーズン終わるまでに抜かれていくとは思うのですが、まずまず上位にあります。世界ランキングは23位に上昇。これも抜かれていきそうではありますが、グランプリ表彰台には乗りましたし、少なくても36人はグランプリシリーズに出られるわけで、男子は日本内奪い合いまでは達していませんし、来期も少なくとも1枠はもらえそうには思います。グランプリ枠があれば、オリンピック代表争いをする一員と言えます。現在の5強に挑戦する立場は変わらず守ることが出来た試合になった、と言えそうです。

次は全日本。現実的には世界選手権の代表争いは難しいと思いますが、4大陸ならチャンスはあるかもしれません。アジア大会の翌週に4大陸があり、鍵山選手と佐藤駿選手はアジア大会の代表になっています。この2人が4大陸に来ないとなれば、あとのメンバーとの代表争い。何とかそれをつかみ取っていきたい全日本となります。

 

友野一希選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4T< F< 7.60   -3.80 3.80 -5.000
2 3T+2T   5.50   0.72 6.22 1.778
3 4Sq Fq 9.70   -4.85 4.85 -5.000
4 3Lo   4.90   -0.35 4.55 -0.667
5 FCSp4   3.20   0.46 3.66 1.444
6 ChSq1   3.00   0.86 3.86 1.667
7 3A+1Eu+2S   10.78 x 1.26 12.04 1.556
8 3F+2A+SEQ   9.46 x 0.23 9.69 0.556
9 3A   8.80 x 1.71 10.51 2.111
10 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.333
11 CSSp4   3.00   0.60 3.60 1.889
12 CCoSp2   2.50   0.46 2.96 1.778
  TES   72.34   -1.42 70.92  

ケガで状態よくないながらも4回転3本を入れようとしてきました。結局3本とも成功なし。1.1倍の3つのジャンプをしっかり決めてきたのはさすがでその立て直しにより5位には残りました。ただ、最後のスピンがレベル2で、これがレベル3なら4位で、4位なら2戦目に優勝すればファイナルというチャンスをいくらか大きく残すことが出来ました。

こんな中でもステップはレベル4で平均GOE+3.333 これは今大会1のステップの評価でした。このあたりはさすがです。

まあ、今回は出来がどうのこうのという試合ではなかったのだろうと思います。次戦はフィンランディア杯です。一応、5位と1位だとファイナルの可能性というのはありますが、あまりそういう意識ではなく、おそらく、全日本に向けていかに調整していくか、という方に目が向いていそうに感じます。フィンランドなので、一緒に行く山本草太選手とサウナして帰って来るのがいいと思います、とか勝手なこと言うと、ファイナル懸かっている山本選手に怒られるでしょうか。

 

○歴代のセカンド4回転要素

Event Name   Elements   Base   Scores AvGOE Date
Grand Prix de France Mikhail SHAIDOROV 2 3A+4T   17.50   18.72 1.222 2024/11/2
World Team Trophy Shoma UNO 1 3A+4T< 15.60   11.60 -5.000 2021/4/16
World Team Trophy Shoma UNO 8 3A+4T   19.25 x 14.50 -4.444 2019/4/12

今大会、セカンドジャンプに4回転を入れるという、なかなか見ない要素の実施がありました。

4位に入ったカザフスタンのシャイドロフ選手。フリーの2つ目の要素にトリプルアクセルから入れて成功です。GOEプラスの成功ジャンプとしては初になります。

以前に宇野昌磨選手が国別対抗戦で実施を試みたことはありましたが成功はしていませんでした。国別対抗戦なのでいわばお祭り試合。グランプリシリーズのような勝ち負けをある程度意識するような試合での投入は、宇野選手も結局一度もありませんでした(全日本でダブルアクセルから、というのもあるにはありましたが)。

いつかだれかやるとは思っていましたが、ここで来ましたか。上位の選手にとっては、セカンドジャンプでどうしてもダブルアクセルが入って、構成的に緩くなりすぎるみたいな問題がたぶんあったのですが、4回転をセカンドに持ってくれば、コンビネーション3つの基礎点を上げていくことができます。とはいえそれを活かすには、他の要素もかなり高難度な構成にすることが必要で、今回のシャイドロフ選手は結局コンビネーション1つ余っていますし、これを活かすことは出来なかったわけですが、先に向けての1つの進化ではありました。

なお、3A+4Tの次は4T+4Tが来るはずですが、フリーでこれを入れても3A+4Tと比べてあまり利点はなさそうです。利点があるとすればショートで入れられればというところなのですが、現在のルールだとショートのコンビネーションは3-2,3-3,4-2,4-3までであって、4回転-4回転の組み合わせは認められていません。5回転の解禁の前に、ショートでの4回転-4回転の解禁というのが先に来ると思われます。

 

○男子シングル ショートフリー合わせた要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Adam SIAO HIM FA 246.58 122.95 95.74 -0.06 16.63 13.32
2 Koshiro SHIMADA 233.84 116.16 87.80 -3.50 22.34 12.04
3 Andrew TORGASHEV 233.64 114.12 90.30 2.29 15.86 12.07
4 Mikhail SHAIDOROV 231.86 112.86 101.47 -8.99 17.82 9.70
5 Kazuki TOMONO 231.48 119.67 86.04 -5.39 19.78 13.38
6 Nikolaj MEMOLA 227.62 111.49 87.43 1.99 15.02 11.69
7 Aleksandr SELEVKO 226.11 121.22 82.25 -8.57 20.08 13.13
8 Boyang JIN 219.05 112.16 79.67 -4.96 22.39 10.79
9 Lukas BRITSCHGI 212.94 115.18 81.24 -10.28 20.66 11.14
10 Luc ECONOMIDES 205.55 110.10 68.75 -7.22 21.55 12.37
11 Camden PULKINEN 193.60 107.93 65.55 -6.61 17.29 10.44
12 Francois PITOT 183.17 102.88 68.92 -13.74 19.18 8.93

PCSはアダムシャオイムファ選手が1位ですが、122.95というのは本人比ではかなり低いです。2位は昨季のヨーロッパ選手権2位のセレフコ選手。こちらはいつも並みのPCSを得ました。友野選手が3番目。ただ、友野選手もいつもと比べて低いPCSでした。

ジャンプの基礎点はシャイドロフ選手が100点超えで1位です。2位はアダムシャオイムファ選手で3番目にトルガシェフ選手がいます。加点の方はトルガシェフ選手が+2.29で1位、メモラ選手が+1.99で2位。プラスを得たのは2人だけでした。全体的に加点が得られておらず、これが全体の印象の悪さに通じています。

スピンはボーヤンジン選手が22.39で1位。島田選手が22.34で2位です。22点台はそれほどいいわけではないですが、それでもしっかり取ったとは言える水準です。このスピンの差が2位から5位の際どい勝負の中で2位を確保した運命の分かれ目でした。友野選手は19.78 ここをしっかり獲れば2位まであって、次戦にファイナル進出を賭けられたわけで、もったいないといえばもったいないところでした。

ステップ系要素は友野選手が1位です。この辺はさすがですが13点台は本人比で特に高いわけではありません。

 

フランス大会は女子は3試合目にして表彰台が200点超えで揃い、高いレベルの試合となった一方で、男子は、なんだこれは・・・という低いスコアが並びました。そんな中で3A+4Tという、これもまたなんだこれは・・・、という要素が入ったり、見どころはいろいろとある試合でした。

さて、次戦はいよいよNHK杯です。男子は鍵山選手が初戦。ファイナルを決めたい三浦選手に、来期へつながる結果を何とか残したい壷井達也選手の3人が日本からはエントリー。海外からはイタリアからリッツォ選手にフランジパーニ選手とグラスル選手と3人名を連ね、アメリカのジェイソンブラウン選手なども登場してきます。女子は坂本花織選手の2戦目に、今期はグランプリシリーズでも結果を残したい千葉百音選手、さらに来期へつなげていきたい青木祐奈選手の3人がエントリー。アメリカからアリサリウ選手とブレイディテネル選手、さらにソーングレン選手が着て、韓国のキムイェリム選手などもエントリーしてきています。ペアには三浦/木原組の他、長岡/森口組もエントリーして上位を目指しますし、アイスダンスも田中/西山組に吉田/森田組と2組エントリー。アイスダンスは世界選手権の出場権1枠を争う第2ラウンドといったところ。先週の東日本では吉田/森田組が勝っています。