フィンランディア杯 大混戦

グランプリシリーズ5戦目はもはやレギュラー化したフィンランド。今期はフィンランディア杯という伝統ある名がグランプリシリーズの試合に引き継がれています。女子は予想通りの大混戦、男子はまさかの大接戦となりました。

 

○女子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Hana YOSHIDA JPN 199.46 67.87 131.59
2 Rino MATSUIKE JPN 199.20 64.82 134.38
3 Lara Naki GUTMANN ITA 198.49 67.06 131.43
4 Sarah EVERHARDT USA 191.17 66.28 124.89
5 Ahsun YUN KOR 187.68 63.16 124.52
6 Lorine SCHILD FRA 182.36 59.22 123.14
7 Niina PETROKINA EST 178.66 53.76 124.90
8 Mai MIHARA JPN 174.74 59.56 115.18
9 Lindsay THORNGREN USA 170.64 57.37 113.27
10 Janna JYRKINEN FIN 157.44 55.30 102.14
11 Nella PELKONEN FIN 155.22 52.14 103.08
12 Olivia LISKO FIN 153.67 54.68 98.99

際どい勝負でしたが吉田陽菜選手が僅差で逃げ切って優勝となりました。グランプリシリーズ通算2勝目。これで3位と1位でファイナル進出確定です。

松生理乃選手は2位。非常に惜しい試合でした。0.26差。あとわずかで200点。ファイナル確定はお預けです。

ララナキグットマン選手が3位表彰台です。グランプリシリーズ初表彰台。イタリア女子のグランプリシリーズ表彰台は2017年のNHK杯で2位に入ったカロリーナコストナーさん以来7年ぶりとなります。同じ会場にいたはずのコストナーさんも喜んでいたことだろうと思います。198.49は大幅パーソナルベスト更新。昨季まで170点台がベストスコアだった選手が200点近くまで出してきました。ここまで出せれば、イタリア、オリンピックで2枠を狙えるかもしれません。

サラエバーハート選手が4位。フランス大会の5位から順位を上げましたが表彰台には届かず。今期国際大会4試合で200点台1つに190点台3つ。高い水準で安定しています。グランプリ表彰台は得られませんでしたが、ナショナル表彰台からチャンピオンシップの切符を得られる芽もありそうです。

韓国のユンアソン選手が5位に入りました。3シーズン前には世界ジュニア4位。将来を嘱望されていた選手ですがシニアに上がってからは残念ながらさっぱりと言わざるを得ない状況でした。そこから今シーズンはチャレンジャーシリーズ2試合に出て180点台まで復活。1つ優勝して、グランプリシリーズの代役枠を手に入れ今回5位。韓国シニア勢でシーズンベスト2位を確保しています。世界選手権の代表争い、ナショナルでしっかり勝負できる位置に戻ってきています。

日本からもう1人、三原選手はショート6位でフリーは後半グループに入りましたが、総合8位に終わりました。

 

○吉田陽菜選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A< F< 6.40   -3.20 3.20 -5.000
2 3F! ! 5.30   0.38 5.68 0.778
3 2A+3T   7.50   1.14 8.64 2.778
4 3Loq q 4.90   -0.84 4.06 -1.667
5 ChSq1   3.00   1.14 4.14 2.222
6 FCCoSp4   3.50   0.70 4.20 1.889
7 3Lz+2T   7.92 x 0.84 8.76 1.444
8 3Lz   6.49 x 1.43 7.92 2.333
9 3S+2A+2T+SEQ   9.79 x 0.43 10.22 1.000
10 CCoSp4   3.50   0.70 4.20 2.000
11 StSq4   3.90   1.00 4.90 2.556
12 SSp4   2.50   0.68 3.18 2.667
  TES   64.70   4.40 69.10  

トリプルアクセルはアンダーローテーションの転倒となりました。転倒にならずに耐えきるか、転倒でも回転十分で基礎点満額あれば200点に届いていました。2回飛ぶジャンプはルッツとトーループ予定ですが、セカンド3回転は1つになりました。アクセル転倒はある程度織り込み済みかと思いますので、それよりもセカンド3回転が1つになったことの方が痛かったかと思います。とはいえ、1.1倍の3つのジャンプをすべて加点で決めていき、その後のスピンステップをしっかりレベル4 僅差の試合では大変重要なことで、仮にステップがレベル3になっただけでも2位に、レベル2だと3位でファイナルはほぼありません、みたいな結果になるところでした。薄氷を踏むような勝利です。勝負強い、と言っていいのでしょうか。昨季から際どい勝負を勝ち抜いていっているように見えます。

今期は国際大会3試合、190点台が続いています。200点には今回もわずかに届きませんでした。グランプリファイナルで表彰台争いするにはトリプルアクセルが欲しいです。決めて加点で10点くらい取れるのが最高ですが、そうでなくても降りて軽いGOEマイナスの6点くらいまでは欲しいです。アンダーローテーションの転倒は実質2.20点になり、さらにPCSも痛むので、こうなると他の持ち札での勝負となって、加点やPCSが最上位で争うにはわずかに弱い現状があるので、トリプルアクセルが欲しくなります。

次戦はグランプリファイナル。ファイナルは最低でも日本勢が4人出ることまでは確定、おそらく5人は出そうな展開をしていますので、出ただけでは世界選手権代表争いで優位には立っていません。今年も表彰台が欲しい試合となってきます。

 

○松生理乃選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lo   4.90   1.19 6.09 2.444
2 3Lz+3T+2T   11.40   1.18 12.58 2.000
3 3F   5.30   1.29 6.59 2.444
4 ChSq1   3.00   1.07 4.07 2.222
5 2A   3.30   0.90 4.20 2.667
6 FCCoSp4   3.50   1.05 4.55 2.889
7 3Lz+2T   7.92 x 1.10 9.02 1.889
8 3Fq+2A+SEQ q 9.46 x 0.08 9.54 0.111
9 2S   1.43 x 0.13 1.56 0.889
10 StSq3   3.30   1.04 4.34 3.111
11 CCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.667
12 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.111
  TES   59.71   11.14 70.85  

2回飛ぶジャンプはルッツとフリップ。ノーミスコースだったのですが最後のサルコウが抜けて2回転になりました。これが3回転になっていれば200点に乗って優勝。あるいは次のステップがレベル4取れていても優勝。さらにはタイムオーバーの1点が無ければ優勝。非常に僅差の勝負でした。グランプリシリーズ初優勝には届かず。それでも3回目の表彰台、2大会連続2位でファイナル進出には大きく前進です。従来、26ポイント取ってファイナルに進めなかった選手というのはいないのですが、今期は最終戦の展開次第でまだ割とあり得るケースになっていて、わかりません。

基礎点はサルコウで3.30削られて、ステップレベル4との差が0.60あるので、63.61が理想基礎点でした。これが出せたのがスケートカナダでした。今回の199.20は日本のシニア勢でシーズンベストランク6位。4大陸の選考基準には入ってきますが世界選手権では入ってきません。グランプリファイナルでもうワンチャンス欲しいのですが、チャンスは回って来るか。条件はいろいろあるのですが、中国杯で日本勢が優勝しなければファイナルが決まりますので、グレン選手、キムチェヨン選手、頑張れ、みたいなことになっています。

松生選手はアジア大会の補欠3に入っていました。そういったことからすると、おそらくワールドユニバーシティゲームズへの派遣も希望している選手なのではないかと思われます。国際大会の派遣メンバーを全部まとめるかどの程度かばらけさせるか、よくわからないのですが、坂本選手、樋口選手が対象にはなれないワールドユニバーシティゲームズは、松生選手にとっては、世界選手権や4大陸を獲り逃したとしても、代表になるチャンスが大きくありそうな展開になってきているように見えます。

 

三原舞依選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lzq+3T< q|< 9.26   -2.70 6.56 -4.556
2 3F   5.30   0.61 5.91 1.222
3 2S   1.30   0.00 1.30 0.111
4 FSSp4   3.00   0.43 3.43 1.444
5 3Lo   4.90   -1.54 3.36 -3.111
6 CCoSp4   3.50   0.65 4.15 1.889
7 2A+2Aq+SEQ q 7.26 x -0.14 7.12 -0.444
8 2F+2T+2Loq q 5.28 x -0.54 4.74 -3.000
9 3Lzq q 6.49 x -0.67 5.82 -1.222
10 StSq4   3.90   0.89 4.79 2.222
11 ChSq1   3.00   1.07 4.07 2.111
12 FCCoSp4   3.50   0.65 4.15 1.889
  TES   56.69   -1.29 55.40  

ジャンプ決まらずスコア伸びませんでした。すっきり決まったのは2つ目のフリップだけとなっています。スピンステップはさすがのショートフリーすべてレベル4 こういったあたりがある程度のスコアはしっかり出してくる所以です。

ただ、今の日本女子はある程度のスコアだと通用しない、という現実があります。今期は国際大会3試合とも170点台。グランプリシリーズ2戦は7位と8位。日本女子9人のうちただ一人、表彰台無しで終わりました。昨季も国際舞台ではNHK杯8位に4大陸7位止まりです。それでも国際大会で8位以内に入ってくることでポイントは稼いでいるので、普通なら、72枠あるグランプリシリーズの枠には、来期も2枠もらえそうなのですが、日本女子の場合は72枠からではなく自国の18枠の中で争わないといけません。今期は8人が表彰台に乗りました。来期は中井亜美選手がシニアに上がってきます。ここ2シーズン国際大会で結果が出せていない三原選手にグランプリシリーズの枠が回って来るかどうかは微妙な状態です。現在、世界ランキングが日本勢の中で5番目ですので、4大陸選手権の代表選考基準としてはこの項目でおそらくグランプリファイナルまで終わっても残っているはずです。世界選手権の代表争いを考えると厳しいですが、全日本で好成績を出せば4大陸には昨季のように選ばれる可能性がかなりありますので、そこから来期へつなげていけるコースが目指されることになると思います。

 

○女子シングル ショートフリー合わせた要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Hana YOSHIDA 199.46 95.26 67.09 1.40 22.66 14.05
2 Rino MATSUIKE 199.20 94.94 63.42 5.34 24.19 13.31
3 Lara Naki GUTMANN 198.49 94.59 62.47 5.11 22.33 13.99
4 Sarah EVERHARDT 191.17 89.27 65.00 2.75 22.47 11.68
5 Ahsun YUN 187.68 85.84 61.08 6.25 22.13 12.38
6 Lorine SCHILD 182.36 84.94 65.39 -0.33 20.21 12.15
7 Niina PETROKINA 178.66 89.66 51.71 2.34 22.02 12.93
8 Mai MIHARA 174.74 90.37 50.29 -3.51 23.60 13.99
9 Lindsay THORNGREN 170.64 86.04 55.76 -6.44 24.50 11.78
10 Janna JYRKINEN 157.44 78.78 54.24 -5.72 19.17 10.97
11 Nella PELKONEN 155.22 78.39 53.05 -5.39 19.36 9.81
12 Olivia LISKO 153.67 77.21 50.99 -3.31 18.92 9.86

PCSは吉田選手松生選手、ララナキグッドマン選手と3人、94点を少し超えるあたりのスコアになりました。吉田選手が松生選手に僅差で勝った要因はPCSのわずかな差も上げられます。技術点は松生選手が全体1位でした。PCSは滑走順もかなり効いていたように感じますので、これまで稼いできたポイントで決まるショート、ショートの順位で決まるフリー、その日の滑りの前に蓄積してきたものの差も出たかもしれません。

ジャンプの基礎点はアンダーローテーションながらトリプルアクセルを入れた吉田陽菜選手が1位です。フリーでいい演技を見せたフランスのシルト選手が2位。エバーハート選手が3番目です。三原選手は全体12位。ジャンプがしっかり入ることが立て直しの必須条件であり、逆にそれさえできればまた200点にも戻りそうに感じます。

加点はユンアソン選手が+6.25で1位でした。ルッツが1つ1回転になったぶん基礎点削られましたが、全体的にミスが少なくジャンプの加点は稼ぎました。松生選手が2番目、グットマン選手が3番目で5点台稼いでいます。吉田選手はトリプルアクセル転倒分がかなり効いて、わずかなプラスに留まりました。

スピンはソーングレン選手が1位。松生選手が2番目で2人は24点台あります。吉田選手はスピンオールレベル4なのですが、基礎点低いシットスピンが入るなど、基礎点面でほかの選手にやや劣り、22点台にとどまりますが、シニアに上がってからのISU公認試合の中では今大会が最高スコアとなりました。

ステップ系要素は吉田選手がただ一人14点台を出して1位です。国際大会初14点台。もともと得意だったジャンプではなく、スピンステップの成長が僅差で逃げ切ったポイントに今回はなりました。三原選手もここは13.99を出して2番目。このあたりはさすがの力を見せていました。

 

○男子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Yuma KAGIYAMA JPN 263.09 103.97 159.12
2 Kevin AYMOZ FRA 259.15 85.13 174.02
3 Daniel GRASSL ITA 258.55 77.91 180.64
4 Sota YAMAMOTO JPN 249.91 82.43 167.48
5 Lukas BRITSCHGI SUI 246.70 80.44 166.26
6 Kazuki TOMONO JPN 238.41 90.78 147.63
7 Aleksandr SELEVKO EST 214.15 66.36 147.79
8 Vladimir SAMOILOV POL 205.47 65.46 140.01
9 Camden PULKINEN USA 195.18 64.34 130.84
10 Makar SUNTSEV FIN 180.48 59.58 120.90
11 Valtter VIRTANEN FIN 166.25 57.28 108.97
  Junhwan CHA KOR 77.33 77.33  

鍵山優真選手が最後危なくなりましたがしっかり優勝しました。グランプリシリーズ通算5勝目。今期は2戦2勝でファイナル進出決定です。

ケビンエイモズ選手が2位。ショートフリー共に転倒が1つ。スケートアメリカほどの出来ではありませんでしたが、それでもしっかり滑り切って際どく2位確保。2戦して2位2つということでファイナル進出が確定しました。3回目のグランプリファイナル。昨季とは違う姿を見せてくれることを期待します。

鍵山選手同様先週からの連戦となったグラスル選手が3位です。今回もショート失敗からのフリー大逆転コース。今回はショートで、コンビネーションも入らない失敗まで凹んだことが痛く、3位までに留まりました。ファイナル確定は出来ませんでしたが、かなりの確率で残りそうに見えます。イタリアは来期のオリンピックへ向けて、3枠を確保したいわけですが、グラスル選手の今期の復活により、その可能性がだいぶ広がってきたようにも見えます。

優勝すればほぼファイナル、2位でも可能性が感じられた山本草太選手でしたが4位。チャンスのある展開だったのですが届きませんでした。

フランスで210点台と低調なスコアを出していたブリッチギー選手が今回は246.70まで出して5位。だいぶ復調してきました。国内にライバルがいる選手ではないので、年が明けてヨーロッパ選手権に合わせていくのだろうと思いますが、そこでの表彰台チャンスもしっかりありそうです。

ショート2位だった友野一希選手は6位となりました。また、初戦3位でこの試合次第でファイナルの可能性もあったチャジュンファン選手でしたが、ショートのあと棄権となりました。

 

○鍵山優真選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2F<< <<  0.50   -0.25 0.25 -5.000
2 4S   9.70   -2.22 7.48 -2.222
3 4T+3T   13.70   2.99 16.69 3.222
4 3A   8.00   -2.86 5.14 -3.667
5 FCSSp4   3.00   0.64 3.64 2.111
6 4T   10.45 x 2.85 13.30 3.000
7 3A+REP   6.16 x -1.60 4.56 -1.889
8 3F+2T   7.26 x 0.76 8.02 1.444
9 StSq4   3.90   1.39 5.29 3.556
10 ChSq1   3.00   1.43 4.43 2.889
11 CCoSp4   3.50   0.20 3.70 0.556
12 FCCoSp4V   2.63   0.60 3.23 2.333
  TES   71.80   3.93 75.73  

どうしちゃったんですか? というフリーでした。冒頭のフリップが抜けたのはある程度そんなこともある、と想定されたのですが、得意のサルコウがしっかり入り切らず。次のコンビネーションこそ決まったもののトリプルアクセルもステップアウト。後半も4回転トーループこそ入ったものの、アクセルがステップアウトで単独になりリピートに。最後のフリップはセカンドをダブルトーループにしました。これ、結果的に、予定通りセカンドに3回転ループを付けに行って転倒でもした場合は優勝を逃していた可能性もありました。事前に周りの点数を把握していて、ここまでの自分の展開からここは安全策でダブルトーループにしたのだとしたら、すごい冷静さなのですが、実際どうだったのかはわかりません。

フリーで160点を割ったのはシニアの国際大会としては初です。ショート首位から勝ち切れなかった世界ジュニア以来のフリー160点割れ。それでも勝ち切れるリードをショートで稼ぎました。これがこの時期の試合に出て、それでも勝てたというのは僥倖でしょうか。

次はグランプリファイナルです。出場権を掴んだのは3回目。出場は2回目。おそらく、昨季の世界選手権表彰台3人の勝負になるのだろうと思いますがどんな展開になるか。3人とも1試合は本人比でいまいち、というスコアを出しています。

 

○山本草太選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lo   4.90   1.05 5.95 2.222
2 4S   9.70   -1.11 8.59 -1.222
3 4T+3T   13.70   1.63 15.33 1.667
4 3A+1Eu+3S   12.80   1.37 14.17 1.556
5 ChSq1   3.00   1.14 4.14 2.222
6 FCSp4   3.20   0.82 4.02 2.444
7 3A< F< 7.04 x -3.20 3.84 -5.000
8 4T   10.45 x 0.14 10.59 0.222
9 3Fq+2A+SEQ q 9.46 x -1.06 8.40 -2.111
10 StSq3   3.30   0.85 4.15 2.556
11 CSSp4   3.00   0.69 3.69 2.222
12 CCoSp4   3.50   0.75 4.25 2.111
  TES   84.05   3.07 87.12  

今回はトリプルアクセルに泣いた試合でした。4回転はショートフリー共にサルコウで減点有りますがそれでも降りています。トーループは問題なし。ただ、トリプルアクセルがショートフリーで転倒。1位とは13.18差。2位とは9.24差。ショートフリー、トリプルアクセルをしっかり決めていれば2位は間違えなく確保できましたし、優勝もある、という結果でした。スケートカナダでは4回転の2種類がうまくいかず、トリプルアクセルは何とかなっていたのですが、今回は逆に出ました。どちらかの試合で両方揃っていればファイナルのチャンスも残っていたと思うのですが、4位が2回という結果になりましたので、ファイナルはありません。

シーズンベストは日本勢中4位。2試合平均も4位です。世界ランキングも日本人中4位。シーズンランキングは今のところ2位。佐藤駿選手が上へ行っても3位で世界選手権の選考基準には残りますが、インパクトとしては、今のところ4番手と言えると思います。

宇野選手の引退で日本男子は5強というか、鍵山選手が少し抜けていて1+4の5人で代表の椅子を争う、みたいな構図がありそうなのですが、ここのところの展開は、1+2+2になりかけているように見えます。ここで結果を出してファイナルに進めれば、1+3+1で真ん中の3に入れそうに感じたのですが、ちょっと3枠を争うには一歩下がった位置になってきているように感じられます。

ファイナルがないので次は全日本です。世界選手権の代表を争う試合となるかと思います。

 

友野一希選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4T+2T   10.80   2.44 13.24 2.556
2 4T   9.50   2.31 11.81 2.444
3 2S   1.30   0.02 1.32 0.222
4 3Lo   4.90   0.91 5.81 1.889
5 FCSp4   3.20   0.69 3.89 2.111
6 ChSq1   3.00   0.86 3.86 1.667
7 3A F 8.80 x -4.00 4.80 -5.000
8 3F+2A+SEQ   9.46 x 0.76 10.22 1.333
9 1A   1.21 x -0.03 1.18 -0.333
10 StSq4   3.90   1.23 5.13 3.111
11 CSSp3   2.60   0.26 2.86 1.000
12 CCoSp1   2.00   -0.14 1.86 -0.778
  TES   60.67   5.31 65.98  

冒頭4回転2本を決め、これは久しぶりの表彰台が届くか、とも思ったのですが、以降のジャンプが決まってきませんでした。トリプルアクセルが転倒と1回転半になったこと自体も痛いですが、3連続が入らなかったのも大きいですし、ずっと続いている課題ですが、セカンドで3回転が入ってこないというのも痛いです。総合的にジャンプがうまくいきませんでした。

ただ、2週間前のフランスの時と比べるとだいぶ状態はよさそうです。4回転トーループはセカンドこそ2回転になっていますが、ショートフリーで3本降りています。サルコウもショートは決めました。トリプルアクセルの転倒というのはいついらいなんだ? というくらいめったにないもの。次は普通に決まる可能性が高い。高難度ジャンプはあとは確率の問題なのだろうと思います。問題は、セカンド3回転が入らいないこと。ショートフリー合わせて6点近くこれでロスすることになります。この差は大きいです。

日本勢の中で今期のシーズンベストは6番目です。今期および昨季の成績は上位4人と少し差がついています。世界選手権の出場経験はありますが、日本のトップ5人の中でグランプリファイナルの出場経験が無いのは友野選手だけです。絶望的な差ではないのですが、オリンピックの代表3枠に入るためには、少し苦しい位置になってきました。

次は全日本で世界選手権の代表争いとなりますが、今の時点で選考項目は1つも満たしていませんので、全日本は高得点での上位成績が求められることになります。

 

○男子シングル ショートフリー合わせた要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Yuma KAGIYAMA 263.09 129.01 87.97 9.26 21.89 14.96
2 Kevin AYMOZ 259.15 133.36 83.73 3.44 24.92 15.70
3 Daniel GRASSL 258.55 118.96 101.66 4.28 22.97 11.68
4 Sota YAMAMOTO 249.91 121.03 100.25 -6.20 23.58 13.25
5 Lukas BRITSCHGI 246.70 122.37 82.34 3.62 24.77 13.60
6 Kazuki TOMONO 238.41 124.58 75.27 6.24 19.04 14.28
7 Aleksandr SELEVKO 214.15 118.16 70.73 -7.69 20.60 14.35
8 Vladimir SAMOILOV 205.47 105.89 71.70 1.15 17.55 10.18
9 Camden PULKINEN 195.18 109.35 65.05 -7.46 18.63 11.61
10 Makar SUNTSEV 180.48 103.40 54.44 -6.22 18.43 11.43
11 Valtter VIRTANEN 166.25 97.48 49.05 -8.75 18.62 10.85

PCSはエイモズ選手が1位です。鍵山選手が130点を割るのはなかなか珍しいですが、フリーはPCSもだいぶ削られました。3番目は友野選手です。このあたりの評価はやはり友野選手は保っています。

ジャンプの基礎点はグラスル選手が1位で山本草太選手が2位。この2人は100点を超えています。加点の方はなんだかんだで鍵山選手が1位に残りました。友野選手が2番目。友野選手はGOEを削られるタイプのミスよりも、抜けてしまって基礎点から削られるミスが多かったです。山本選手は逆で、基礎点しっかり取れているのだけど転倒2回などGOEが削られるジャンプが多かったです。

スピンはエイモズ選手が24.92で1位でした。ブリッチギー選手も24点台を出して2位。山本草太選手が23点台で3番目です。鍵山選手は珍しく21.点台とスピンも乱れました。シニアに上がって以降のワースト。22点台すら出したことが無く、23点台も前週のNHK杯だけで、他は24点台以上が並んでいた鍵山選手です。スピンで点を取ることは年々難しくなっていっているとはいえ、今回の出来はなかなかひどかったと言わざるを得ません。友野選手も2試合続けての19点台はいただけませんでした。

ステップ系要素はエイモズ選手がさすがの15.70で1位です。鍵山選手が14.96で2番目。グラスル選手はステップがなかなか稼げず11点台です。スピンステップPCSはエイモズ選手と大きな差がありました。

 

グランプリシリーズ5戦終わりました。今大会はペアで長岡/森口ペアが急遽出場したのですが6位に入りました。ショートは8組中8位でやっぱり厳しいなあ、という情勢だったのですがフリーは何と3位で総合6位です。世界選手権が見えてきました。ただ、ショートはやらかしていまして、これは世界選手権でフリーへ進むためにはちょっと難しいスコアになってきますので、フリー巻き返し型ではなく、しっかりフリーへ進めるスコアをショートで稼げるところへもっていっていただけると、オリンピックが見えてくると思います。

 

今大会終わって女子はファイナル進出者3名が決定です。残りの3枠は26ポイント取って松生理乃選手が待ちつつ、最終戦出場6選手にまでチャンスがあります。初戦優勝のグレン選手は3位以内でファイナル確定。初戦2位の千葉選手は優勝か2位で178.82以上なら確定ですので実質2位以内でOKです。同じく初戦2位の渡辺倫果選手も優勝か、2位の場合196.15以上が必要です。初戦3位の住吉りをん選手は優勝すれば確定で2位の場合は周りの選手次第です。初戦4位のキムチェヨン選手、キミ―レポンド選手は優勝すればチャンスがあります。結果待ちの松生理乃選手は、グレン選手が3位で、日本勢3人の誰かが優勝し、千葉百音選手が178.82以上の2位か、渡辺倫果選手が196.15以上の2位の場合にファイナルに手が届きません。なので、日本勢以外の優勝者が出たり、逆に日本勢が表彰台独占したりするとファイナルが決まります。千葉百音選手優勝、渡辺倫果201.00で2位、アンバーグレン選手3位とか、普通にありそうな展開なので、まだまだわかりません。

男子は3人がファイナル決定済みで、グラスル選手が24ポイントをもって結果待ちという情勢です。そこに初戦優勝のアダムシャオイムファ選手、初戦2位の佐藤駿選手に初戦4位のニカエガーゼ選手とシャイドロフ選手までが絡んできます。シャオイムファ選手は4位位以内で確定、5位でもエガーゼ選手やシャイドロフ選手が優勝しなければ高確率で残れます。佐藤駿選手は表彰台で確定、4位でもエガーゼ選手やシャイドロフ選手が3位以下ならファイナルに残れます。この2人が2位の時は得点勝負ですが、エガーゼ選手は初戦のスコアが佐藤駿選手より上なので、佐藤選手が負けます。シャイドロフ選手なら29.69差以内なら佐藤選手の勝ちです。エガーゼ選手とシャイドロフ選手は優勝すればファイナル、2位だと佐藤駿選手の結果次第になる可能性が高いです。結果待ちのグラスル選手は優勝がしエガーゼ選手かシャイドロフ選手でなければその時点でファイナルが決まります。理論上初戦5位のバシリエフス選手やリッツォ選手もチャンスはありますが、優勝したうえで様々な条件がクリアされる必要があるので、確率的には極めて低くなっています。

また、可能性は極めて低いですが、初戦3位の壷井選手が、今から補欠枠回ってきて2戦目をもらえたら、ファイナルに進む目というのもあります。