中国杯 ステップは大事です

グランプリシリーズ、今期の最終6戦目は中国杯です。ファイナル進出者が男女とも3名まで決まっていて残り3枠。結果待ち1人と今大会に可能性を残す5~6人による椅子取りゲームと、今大会自体の優勝・表彰台を争うという視点と、同時並行でなかなか楽しめる試合になりました。

 

○女子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Amber GLENN USA 215.54 70.84 144.70
2 Mone CHIBA JPN 211.91 70.86 141.05
3 Chaeyeon KIM KOR 208.47 69.27 139.20
4 Rion SUMIYOSHI JPN 202.45 70.48 131.97
5 Rinka WATANABE JPN 196.95 69.08 127.87
6 Kimmy REPOND SUI 195.91 67.71 128.20
7 Madeline SCHIZAS CAN 180.77 61.10 119.67
8 Anastasiia GUBANOVA GEO 177.34 52.11 125.23
9 Yi ZHU CHN 166.04 58.36 107.68
10 Xiangyi AN CHN 163.74 60.10 103.64
11 Minchae KIM KOR 154.39 62.94 91.45
12 Hongyi CHEN CHN 139.57 45.81 93.76

圧巻のフリー後半グループでした。今回はフリーを時系列で振り返ります。

前半終わってシザス選手が180.77で首位に残っていますが、後半グループの選手にとっては問題なく届くターゲットスコアです。

1番手はワールド5位のレポンド選手。4大陸選手権に紛れ込んでゲスト参加しましたみたいな状況です。長身の映える演技。ジャンプでqや!による減点が付きますが、遠目にはミスが無く見える演技で128.20 トータル195.91でまず表彰台ラインの線を一本引きます。優勝でファイナルの芽があるのですが、ちょっとそこまでは届かないかな、でも初の表彰台の可能性はある、というスコアです。

続いて渡辺倫果選手。ファイナルに残るには優勝が欲しい。冒頭、構えが長いのでトリプル行くか、と思われたジャンプはトリプルアクセル。これはq付きましたがしっかり降ります。前半良かったので久しぶりの140点台で逆転ファイナルあるか、と思われたのですが後半まさかの2転倒。非常にもったいなかったです。フリー127.87でトータル196.95 何とか首位に残って後続を待ちます。2試合合計は松生選手を超えたので、最終的に2位に残ればファイナルへ進めるというチャンスは残しました。

続いてキムチェヨン選手。ファイナルには優勝が欲しい立場です。フランスでは転倒があった後半のコンビネーション、今回は1つ目のルッツがうまくいかずセカンドつかず。次でリカバリーして最後にシークエンスをスライドしてことでほぼミスなく滑りました。139.20はセカンドベストでトータル208.47 パーソナルベスト更新で首位に立ちます。レポンド選手がファイナル争いで可能性が消えました。

続いてショート3位の住吉りをん選手。ファイナルには優勝が欲しいです。2位でもチャンスは残りますがキムチェヨン選手が優勝での2位だとかなり厳しくなりますので首位に出たい場面ですがそのためには138.00という過去最高が求められます。4回転は回避。ただ、その回避した場所に入れたルッツが乱れ、その後ループで転倒。これでかなり苦しくなりました。それでも後半何とかまとめて131.97 トータル202.45のパーソナルベストで2位には残ります。2試合合計は渡辺選手を上回るので可能性が残り、逆に渡辺倫果選手のファイナルがここでなくなります。一方。結果待ちの松生理乃選手はこの時点でファイナル進出が決まりました。

残り2人、アンバーグレン選手が出てきます。ここまでの展開によりグレン選手は4位でもキムチェヨン選手の2試合合計を上回ればファイナルは決まるので127.18以上でファイナルがきまります。そんな中で冒頭トリプルアクセル、クリーンに決めてきました。昨シーズンの問題はこの後だったのですが、コンビネーション2つも問題なく決め後半へ。最後のループがヒヤッとしましたがなんとか降り、結局ほぼノーミス。フリー144.70は初の140点台でパーソナルベスト更新。トータル215.54でファイナル進出確定。住吉選手は脱落です。

ファイナルは残り1枠、千葉百音選手かキムチェヨン選手かですが、千葉選手は3位か、4位でキムチェヨン選手の2試合合計を上回ればファイナルとなります。ターゲットスコアは195.92ですが、4位に入るには渡辺選手の196.95を超えないといけないですので、滑走開始時点で4位に入ればファイナルというシチュエーションになります。フリーで必要なスコアは126.10 少し楽になった展開ですが、おそらく本人はそのスコアは頭になく、あるとしたら優勝するためには144.69が必要、というところだったと思います。

このフリー、いい出来でした。ルッツで2つ!が付きましたがこれは定常運転で織り込み済み。ジャンプすべて決まった時点で、僅差で逃げ切り優勝かな、と思ったのですがステップでまさかの転倒。これで少し足りなくなりそう、どうだろう? というキスアンドクライ。結果は141.05と2戦連続のフリー140点台、トータル210点台ですが届かず2位。初優勝はなりませんでしたが初ファイナルを決めました。

 

○アンバーグレン選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A   8.00   1.37 9.37 1.667
2 3F!+3T ! 9.50   0.23 9.73 0.444
3 3Lz+2T   7.20   0.84 8.04 1.444
4 3S   4.30   0.80 5.10 1.889
5 FSSp4   3.00   0.69 3.69 2.333
6 3Lo+2A+2A+SEQ   12.65 x 1.26 13.91 2.667
7 3F!q !|q 5.83 x -0.91 4.92 -1.778
8 CCoSp3   3.00   0.73 3.73 2.444
9 3Lo   5.39 x 0.42 5.81 0.889
10 StSq3   3.30   0.75 4.05 2.333
11 ChSq1   3.00   1.21 4.21 2.444
12 LSp4   2.70   0.77 3.47 2.778
  TES   67.87   8.16 76.03  

トリプルアクセル成功。GOEプラスを今季すでに4回目です。トリプルアクセル成功最年長記録まであと50日。4大陸選手権で成功させれば浅田真央さんの最年長記録を更新となります。

2回飛ぶジャンプはフリップとループ。スピンレベル3が1つ、ステップレベル3で基礎点67.87となりました。自己最高基礎点となります。これは今期のシニアの最高基礎点です。スピンステップオールレベル4にまで出来ると68.97の基礎点を作り上げることができます。

2戦2勝でファイナルへ。今期は3戦してすべて210点台という高いレベルでの安定感を示しています。215.54は今期のシニアで2番目のスコア。グランプリファイナルではまごうことなき表彰台候補ですし、優勝候補でもあります。昨季はトリプルアクセルが決まっても他のジャンプが今一つだったのですが、今期はトリプルアクセルを決め、他のジャンプも決め、ということで手が付けられなくなってきています。日本vsグレン、というファイナルになりましたが、蚊帳の外ということはなく主役として臨むことになりそうです。

 

○千葉百音選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F+3T   9.50   1.51 11.01 2.778
2 3S   4.30   1.11 5.41 2.444
3 3Lo   4.90   1.26 6.16 2.556
4 2A   3.30   0.71 4.01 2.222
5 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.111
6 FCCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.667
7 3Lz!+2A+SEQ ! 10.12 x 0.34 10.46 0.556
8 3Lz!+2T+2Lo ! 9.79 x 0.00 9.79 0.000
9 3F   5.83 x 0.98 6.81 1.778
10 StSq4 F 3.90   -1.50 2.40 -3.889
11 LSp4   2.70   1.00 3.70 3.667
12 CCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.556
  TES   64.34   9.06 73.40  

ルッツ2本、フリップ2本の構成ですべてジャンプを降り、スピンステップオールレベル4 ノーミスで基礎点64.34を高難度ジャンプ無しでたたき出したのですが、まさかのステップ転倒でした。ステップ転倒込みでも技術点73.40 優勝したグレン選手とのスコア差は3.63 減点マイナス1あるのでステップのスコアとして5.04あれば優勝していた計算です。平均GOEで+2.92付けばいいわけですが、NHK杯のフリーでは平均GOE+3.000 ステップ転倒していなければ・・・、というフリーでした。

それでも2戦続けて210点台を出してきました。210点台2戦で優勝出来ていないというのがあんまりではありますが、今期も十分に力は見せてきています。全日本2位は伊達じゃない、ということで日本勢の中でシーズンベストが今期も2位で来ています。ファイナルは表彰台候補。展開次第では優勝もある、という立ち位置になりそうです。また、シーズンベスト、2試合平均共に日本シニア勢2番目です。シーズンランキング、世界ランキング及びファイナルの成績の3つが、ファイナルで日本勢2番手になれば2番目になり、世界選手権の代表争いで当確に近いところまで行けます。2年連続の世界選手権代表選へ向けてもファイナルは大事な試合になってきます。

 

○住吉りをん選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A+3T   7.50   0.90 8.40 2.111
2 3Lz   5.90   -2.11 3.79 -3.556
3 CCoSp3   3.00   0.81 3.81 2.667
4 3Lo F 4.90   -2.45 2.45 -5.000
5 3S   4.30   0.98 5.28 2.333
6 ChSq1   3.00   1.36 4.36 2.556
7 3Lz+2T   7.92 x 0.00 7.92 0.000
8 3Fq+2A+2T+SEQ q 10.89 x -0.68 10.21 -1.333
9 FCCoSp4   3.50   0.80 4.30 2.222
10 3F   5.83 x 0.98 6.81 1.889
11 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.556
12 LSp4   2.70   0.85 3.55 3.111
  TES   63.34   2.89 66.23  

今シーズンは昨シーズンと異なり、フリーに必ず4回転ということはなく、試合ごとに4回転を入れる時と標準構成の時とありました。今回は勝負が大事ということでの4回転回避だったでしょうか。結果的にはそこに入れたルッツでミスが出ていますので、4回転入れていた方がよかった可能性はあります。2回飛ぶジャンプはルッツとフリップ。スピンでレベル3が1つありますが、ジャンプで基礎点削られることは無く63.34となりました。スピンレベル4に出来れば63.84まで出ます。ノーミス出来ても2位まではちょっと届かなかったかな、という点計算になりますが、3位にまでは届きました。これまでグランプリシリーズ5戦して5表彰台だったのですが、6戦目にして初めて表彰台に上れない形となりました。ちょっとメンバーが厳しかったです。

ただ、それでも2戦連続の200点超えでパーソナルベストを更新。2ミスしても200点を超える力が付いてきました。現状、2試合平均が3番手で世界選手権の代表選考基準に乗ってきています。ファイナルに進めなかったことでやや不利になってきていますが、まだ可能性はあります。とりあえず、ワールドユニバーシティゲームズの代表にまず選ばれました。まだシニアのチャンピオンシップの出場経験が無いのですが、そのあたりすべて全日本次第となります。

 

○渡辺倫果選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Aq q 8.00   -1.26 6.74 -1.444
2 3Lo+3Tq q 9.10   -0.42 8.68 -0.889
3 3F! ! 5.30   -0.08 5.22 -0.111
4 3Lz+2A+SEQ   9.20   0.93 10.13 1.667
5 FCSp4   3.20   0.69 3.89 2.333
6 3Lz F 6.49 x -2.95 3.54 -5.000
7 2A+1Eu+3S   8.91 x 0.74 9.65 1.778
8 3Lo< F< 4.31 x -1.96 2.35 -5.000
9 ChSq1   3.00   1.21 4.21 2.556
10 StSq2   2.60   0.48 3.08 1.889
11 FSSp4   3.00   0.64 3.64 2.222
12 CCoSp4   3.50   0.60 4.10 1.778
  TES   66.61   -1.38 65.23  

トリプルアクセル着氷。回転でqが付きましたが6.74スコアが入れば十分です。その後もqと!がついてますが前半は大きな問題ではないです。問題は後半。ルッツとループで2転倒は痛すぎました。2回飛ぶジャンプはルッツとループ。ステップレベル2で基礎点66.61です。今期のシニアの中では2番目の基礎点となります。後半がもったいなかったですね。順調に行ければ10点くらいプラスがありました。それでも今大会だと表彰台に上がれたかどうかというレベルで、おそらくファイナルには届いていないのですが、面白いところまで行けるはずでした。また地味に伸びていないのがステップ。今季まだレベル4がありません。レベル2だと基礎点で1.3違い、GOE含めると1.5以上変わってきます。ショートフリー合わせると3点前後スコアが下がるわけで、順位が1つ2つかわってくるくらいの影響があります。

2期ぶりのファイナル進出はならず。それでも3期続けてどちらかで表彰台に乗ることは出来ました。ただ200点突破はまだ無し。世界選手権の代表選考基準の中では、今は世界ランキングで3番目に残っていますが、おそらくファイナル終わった時点で千葉選手に抜かれ、1つも引っかかってこない状態になります。世界選手権の代表争いでは少し不利な状態に追い込まれましたが、まだチャンスは残っています。ワールドユニバーシティゲームズも補欠。シーズン後半何もなしにならないように、全日本が大事になってきます。

 

○女子シングル ショートフリー合わせた要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Amber GLENN 215.54 101.74 75.76 2.73 21.98 13.33
2 Mone CHIBA 211.91 101.92 66.97 7.15 24.90 11.97
3 Chaeyeon KIM 208.47 99.53 65.79 4.28 25.11 13.76
4 Rion SUMIYOSHI 202.45 98.33 66.47 0.38 23.43 14.84
5 Rinka WATANABE 196.95 97.56 70.52 -3.88 23.03 11.72
6 Kimmy REPOND 195.91 94.35 64.73 1.77 21.15 13.91
7 Madeline SCHIZAS 180.77 90.60 54.79 4.15 21.43 9.80
8 Anastasiia GUBANOVA 177.34 88.38 60.83 -2.43 20.66 10.90
9 Yi ZHU 166.04 80.47 58.22 -0.59 19.74 10.20
10 Xiangyi AN 163.74 79.68 55.30 -0.51 20.33 8.94
11 Minchae KIM 154.39 82.64 49.00 -1.25 17.43 10.57
12 Hongyi CHEN 139.57 72.72 48.58 -7.64 19.72 9.19

PCSは千葉選手がグレン選手をわずかに上回りました。NHK杯を0.01上回って千葉選手の過去最高PCSです。住吉選手は今大会で4番目ですが98.33は自己最高PCSになります。じわじわとしたPCSの伸びが住吉選手の今期の200点到達を支えています。

ジャンプの基礎点はショートフリーでトリプルアクセルを入れたグレン選手が75.76で1位。自己最高基礎点であり、今期のシニアの最高基礎点になります。フリーでトリプルアクセルを入れた渡辺選手が70.52で2番目です。これも自己最高基礎点です。2転倒ありましたが基礎点は削られておらず、あとは立っていればかなりのスコアが出ていました。

加点は千葉選手の7.15が最高です。グレン選手はショートフリーでフリップ絡みでGOEがだいぶ削られました。渡辺選手は2転倒でGOEは大きくマイナスです。

スピンはキムチェヨン選手が25.11で1位。シニアに上がってからの最高スピンスコアです。千葉選手の24.90もシニアに上がってからの最高スピンスコアタイになります。グレン選手は21点台。スピンはそれほど得意な要素とは言えません。

ステップ系要素は住吉選手が14.84で1位でした。フランスで14.85を出していましたが、それに次ぐ自身2番目の高いスコアです。今期のISU公認では住吉選手は全体2位のステップ系要素の評価となります。渡辺選手はショートレベル3、フリーレベル2でこの要素のスコアは伸びていませんでした。

 

○男子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Shun SATO JPN 278.48 98.75 179.73
2 Mikhail SHAIDOROV KAZ 276.17 93.21 182.96
3 Adam SIAO HIM FA FRA 252.53 91.22 161.31
4 Nika EGADZE GEO 247.54 87.73 159.81
5 Matteo RIZZO ITA 243.82 84.92 158.90
6 Daiwei DAI CHN 237.35 82.96 154.39
7 Deniss VASILJEVS LAT 234.67 75.75 158.92
8 Boyang JIN CHN 231.89 83.66 148.23
9 Hyungyeom KIM KOR 216.64 67.76 148.88
10 Nikolaj MEMOLA ITA 214.77 68.87 145.90
11 Yudong CHEN CHN 182.60 77.73 104.87

佐藤駿選手がグランプリシリーズ初優勝。ショート1位から最終滑走。際どい勝負になりましたが勝ち切ることが出来ました。ファイナル進出決定です。

2位はミハイルシャイドロフ選手。優勝すればファイナル、という条件でショート2位からフリーもパーソナルベスト。最後は際どい勝負でしたが2位。初ファイナルには届きませんでした。

アダムシャオイムファ選手は3位。怪我の影響があるようで今シーズンはパッとしませんが、それでもファイナルに進みました。2週間でどこまで戻してくるでしょうか。

優勝すればファイナルがあったニカエガーゼ選手が4位。これでここ2シーズンのグランプリシリーズ4戦連続4位です。届きそうで届かない表彰台。友好国中国にエテリ先生普通に付いてきてましたが、今回も表彰台には手が届きませんでした。

優勝すればファイナルの芽もあったリッツォ選手は5位。2戦とも5位でファイナルは届きませんでしたが、イタリアはやはりこの人、というのは見せてくれました。フランジパーニ選手、メモラ選手と伸びてきていますが、イタリアの来期の枠取りのためにはリッツォ選手は必要になりそうです。

 

○佐藤駿選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4Lz   11.50   2.14 13.64 1.778
2 2F! ! 1.80   -0.62 1.18 -3.444
3 4T+3T   13.70   2.44 16.14 2.444
4 FCSp3   2.80   0.52 3.32 1.889
5 4T   9.50   2.44 11.94 2.556
6 3A+1Eu+3S   14.08 x 0.00 14.08 -0.222
7 3A+2A+SEQ   12.43 x 1.26 13.69 1.556
8 3Lo   5.39 x 0.35 5.74 0.778
9 CSSp4   3.00   0.39 3.39 1.333
10 StSq4   3.90   1.11 5.01 2.778
11 ChSq1   3.00   1.36 4.36 2.556
12 CCoSp4   3.50   0.85 4.35 2.444
  TES   84.60   12.24 96.84  

4回転3種類4本構成ですが、今回はフリップが2回転になりました。後はジャンプ成功。基礎点は84.60あります。フリップが入れば9.20基礎点上がって93.80になります。スピンレベル4揃えられれば94.20にまで出来ます。今期のマリニン選手は今までのところ人間界に降りてきた基礎点構成ですので、94.20の構成が出来れば、基礎点としては勝負可能な水準にまでなります。

今回のフリーは153.79以上出せば2位に入ってファイナルが決まるというシチュエーションでした。このスコアは比較的余裕があります。しかし優勝には177.43以上が必要でこれまでの実績を考えると出せるかどうかは五分五分という勝負でした。フリップ2回転になったところでこれは危ういかなと思ったのですが、以降ノーミスでの優勝は見事でした。

ファイナルはシーズンベスト3番目で臨むこととなります。つまり、表彰台のチャンスがある。ぜひとも取っておきたいメダルかと思います。また、グランプリファイナルで日本勢上位2人に入ることが確定。シーズンベスト順位も2番目以内が確定。世界選手権の代表争いもかなり優位に立っています。ワールドユニバーシティゲームズとアジア大会の代表を先に決めていますが、初の世界選手権の代表も見えてきました。

 

○ミハイルシャイドロフ選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4Lz   11.50   3.29 14.79 2.889
2 3A+4T   17.50   1.49 18.99 1.556
3 4Fq q 11.00   -0.16 10.84 -0.222
4 3Lo   4.90   1.05 5.95 2.111
5 FCSp3   2.80   0.40 3.20 1.444
6 CSSp4   3.00   0.47 3.47 1.556
7 4T+1Eu+3S   15.73 x 2.04 17.77 2.111
8 3Aq+2A+SEQ q 12.43 x -0.11 12.32 -0.222
9 3Lz   6.49 x 0.93 7.42 1.667
10 StSq4   3.90   1.11 5.01 2.667
11 ChSq1 F 3.00   -2.14 0.86 -4.222
12 CCoSp4   3.50   0.65 4.15 1.889
  TES   95.75   9.02 104.77  

シャイドロフ選手、やれることはほぼやりました。4回転は3種類4本。フリップでqが付きましたが減点はそれだけ。トリプルアクセル2本を含めジャンプはほぼミスなく滑りました。問題はコレオの転倒扱い。優勝した佐藤選手との点差は2.31 転倒のマイナス1のほか、コレオが-2.14されているので、コレオで加点0でも転倒しなければ優勝していた、ということでした。小さなミスに見えたのですが高くついたミスになりました。初優勝とグランプリファイナルがこのコレオの転倒でこぼれていった形です。ただ、ファイナル惜しい残念、というには今大会ではなくてフランス大会でのスコアの伸びなさの方がもったいなかったと思います。

今回も3A+4Tというコンビネーションを見せました。構成をしっかり見てみると、このコンビネーション、あまり価値が無いです。3A+4Tは4T+3Aのシークエンスと基礎点は同じ。シークエンスで3A+2Aを使っているので、2つシークエンスは使えないので3A+4Tにした意味があるようには見えるのですが、セカンド3回転を使っていないので3A+3Tにすればいい話で、あまりセカンド4回転が価値を生めていない構成になっています。3A+3Tにして3連続を4T+2A+2Aにでもすると意味が出てきますし、さらにいれば4T+3A+2Aにして3Lz+3Tでも入れるとさらに基礎点あがります。3A+4Tは普通に決められるようですので、せっかくなのでそれを活かせる構成に出来ていくとさらに高いスコアを出せていけるように見えます。今回の95.75でも今季2位の基礎点ですし、グランプリシリーズ6戦だけで見れば今季1位の基礎点となっています。

 

○男子シングル ショートフリー合わせた要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Shun SATO 278.48 125.30 102.40 16.09 22.90 12.79
2 Mikhail SHAIDOROV 276.17 117.90 113.70 14.17 20.79 10.61
3 Adam SIAO HIM FA 252.53 124.40 90.52 -0.24 24.75 14.10
4 Nika EGADZE 247.54 112.64 103.71 0.54 20.93 10.72
5 Matteo RIZZO 243.82 121.01 87.88 2.04 21.48 12.41
6 Daiwei DAI 237.35 109.52 91.23 4.11 22.81 11.68
7 Deniss VASILJEVS 234.67 123.10 72.46 -0.35 24.63 14.83
8 Boyang JIN 231.89 110.92 89.73 -2.66 21.91 11.99
9 Hyungyeom KIM 216.64 99.14 88.10 -0.71 19.04 11.07
10 Nikolaj MEMOLA 214.77 108.10 89.38 -11.45 18.24 11.50
11 Yudong CHEN 182.60 96.47 71.00 -13.22 20.73 9.62

PCSは佐藤駿選手が125.30で1位です。1位としては少し低いPCSでしょうか。アダムシャオイムファ選手も124.40であまり伸びていません。シャイドロフ選手は117.90 これは自己最高のPCSです。ただ、それでも佐藤選手と7.40差がありました。技術点はシャイドロフ選手が1位です。

ジャンプの基礎点はシャイドロフ選手が113.70で1位。今期2位のジャンプの基礎点で、グランプリシリーズだけで見ればマリニン選手を超えて1位の基礎点になっています。エガーゼ選手、佐藤選手まで100点超えです。

加点の方は佐藤駿選手が16.09もらって1位でした。シャイドロフ選手も14.17をもらって高評価。本人最高の加点です。今大会素晴らしい出来でした。

スピンはアダムシャオイムファ選手が24.75で1位。バシリエフス選手が24.63で2位です。

ステップ系要素はバシリエフス選手が14.83で1位。ジャンプで稼げませんがスピンステップはさすがに魅せてくれるバシリエフス選手です。アダムシャオイムファ選手も14点台で2位でした。佐藤選手はショートレベル2があって12.79 もう少し欲しいでしょうか。ショートはタイムオーバーもありましたが、ステップレベル4取れていれば100点に届いていた、という点でも残念な部分ではありました。

 

 

グランプリ6戦終了。女子はすでにファイナル進出が決まっていたのが坂本花織選手、樋口新葉選手、吉田陽菜選手。そこにアンバーグレン選手と千葉百音選手が加わり、結果待ちだった松生理乃選手と合わせて6人決まりました。結果的には2戦表彰台に乗った選手6人が残る、ということでわかりやすい結果になりました。日本勢が5人。たった一人アメリカからのグレン選手が優勝をさらっていくという芽も十分にあります。

男子はイリアマリニン選手、鍵山優真選手にケビンエイモズ選手の3人がすでに決まっていて、佐藤駿選手とアダムシャオイムファ選手が加わり、結果待ちだったダニエルグラスル選手と合わせて6人です。こちらも2戦表彰台の6人で決まりました。今大会欠場が出ていましたので、せっかくなら初戦3位をもっている壷井選手にチャンスを回してほしかったなあ、とも思いました。

男子は日本2フランス2にアメリカイタリアが1 1人だけのアメリカが持っていくかもというのは男子も同じです。アメリカはすべて1づつですがペアもアイスダンスも含め、全種目にファイナリストを出しています。ペアが強くなった日本ですがアイスダンスはファイナルは遠いです。次のオリンピックの団体戦を考えると、アメリカはグレン選手が伸びたのが非常に大きく、日本は団体戦で勝つにはアイスダンスがもう少し伸びないと苦しいでしょうか。

 

グランプリファイナルは1週空いて12月6日から競技は開始されます。