ゴールデンスピン ここでもアメリカ

グランプリファイナルの裏で毎年行われるゴールデンスピンが今シーズンもチャレンジャーシリーズ最終戦として行われました。どうもこの大会は映像があまり出てこないので、ほぼ見えていません。今回はスコアシート見てだけの記事になります

 

○女子シングル 上位12名

Pl Name Nation Total SP FS
1 Alysa LIU USA 197.71 68.06 129.65
2 Nina PINZARRONE BEL 193.49 65.20 128.29
3 Bradie TENNELL USA 191.10 68.32 122.78
4 Lea SERNA FRA 181.55 64.81 116.74
5 Seoyoung KIM KOR 171.95 58.73 113.22
6 Mariia SENIUK ISR 168.30 59.08 109.22
7 Livia KAISER SUI 161.30 45.35 115.95
8 Niki WORIES NED 159.65 50.01 109.64
9 Stefanie PESENDORFER AUT 153.20 56.53 96.67
10 Eva-Lotta KIIBUS EST 150.02 49.50 100.52
11 Carlotta Maria GARDINI ITA 149.97 53.14 96.83
12 Jogaile AGLINSKYTE LTU 147.51 43.02 104.49

アリサリウ選手が優勝しました。チャレンジャーシリーズ2勝目。グランプリシリーズでは表彰台に届きませんでしたが、チャレンジャーシリーズくらいだとしっかり勝ってきます。

2位にはベルギーのピンツァローネ選手が入りました。昨季に続いての2シーズン連続のファイナル進出はならなかったものの、これで今シーズンも190点台が3試合目。ヨーロッパ選手権で優勝争いができる準備が整ってきているように感じます。

ベテランのブレイディテネル選手が3位に入りました。こちらは今季4試合すべて190点台です。序盤に結果を残したアメリカ勢が今期多く、シーズンベスト順位で見るとやや低い位置になりますが、それでもしっかり準備を整えて全米選手権へ臨んで代表争いをすることになります。

 

○アリサリウ選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F! ! 5.30   0.21 5.51 0.429
2 3Lz+3Tq q 10.10   -0.59 9.51 -1.143
3 3S   4.30   0.95 5.25 2.286
4 CCoSp3   3.00   0.66 3.66 2.286
5 3Lo   4.90   0.98 5.88 2.143
6 FCSp4   3.20   0.64 3.84 2.143
7 3Lz+2A+2T+SEQ   11.55 x 0.94 12.49 1.571
8 3F!<+2T !|< 6.09 x -1.02 5.07 -2.429
9 2A   3.63 x 0.40 4.03 1.286
10 StSq4   3.90   0.55 4.45 1.571
11 ChSq1   3.00   1.00 4.00 1.714
12 LSp4   2.70   0.65 3.35 2.429
  TES   61.67   5.37 67.04  

今期のフリーの標準構成です。基礎点は61.67で今季初めて60点を超えました。後半のフリップがアンダーローテーションで、スピンが1つレベル3 基礎点削られたのは2か所だけでした。満額基礎点は63.34になります。

2回飛ぶジャンプはルッツとフリップなのですが、今回フリップはショートフリーで3回飛んですべて!が付きました。今期はフリップであまりスコアが稼げていないです。

今大会の197.71 フリーの129.65はシーズンベストです。シーズンベスト順位はアメリカ勢の中で5番目。まだ、世界選手権の代表争いの中では有利な位置にはいませんが、全米選手権で十分勝負できるくらいの位置には来ました。アメリカ勢ではちょっと今期はグレン選手が抜けていますが、その下は5人で残り2枠を争う状況です。実力は折り紙付き。あとは、全米で結果を出せるかどうか、ということになるかと思います。

 

○ショートフリー合わせた要素別のスコア 上位12名

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Alysa LIU 197.71 94.52 65.16 2.74 22.75 12.54
2 Nina PINZARRONE 193.49 94.34 61.56 -1.95 24.93 14.61
3 Bradie TENNELL 191.10 96.67 62.02 -2.81 22.69 13.53
4 Lea SERNA 181.55 86.74 57.27 1.36 23.41 12.77
5 Seoyoung KIM 171.95 81.75 56.61 -1.91 23.66 12.84
6 Mariia SENIUK 168.30 81.21 59.14 -2.47 20.34 10.08
7 Livia KAISER 161.30 77.08 56.58 -0.37 17.16 11.85
8 Niki WORIES 159.65 77.28 55.07 -3.26 19.41 12.15
9 Stefanie PESENDORFER 153.20 76.52 49.69 -3.47 19.44 11.02
10 Eva-Lotta KIIBUS 150.02 74.46 50.90 -3.23 17.80 11.09
11 Carlotta Maria GARDINI 149.97 77.26 46.69 -4.24 20.09 10.17
12 Jogaile AGLINSKYTE 147.51 73.20 49.64 -3.23 19.91 9.99

PCSはテネル選手が96点台、1項目平均8点台をもらいました。グランプリ2戦では98点台でしたので、少しそれよりは落ちています。リウ選手とピンツァローネ選手は94点台。2人は本人比で普通くらいです。

ジャンプの基礎点がリウ選手は65.16ありました。今季4試合でこれまでは62点台が最高でした。回転不足がこれまでの3試合より少なかったです。

ジャンプの加点はリウ選手はプラスでしたがピンツァローネ選手、テネル選手はマイナスです。

スピンはピンツァローネ選手が24点台あります。リウ選手は22点台が今季3試合。以前は25点台が出せていました。レベルを取るのが以前より難しくなってきていることと、GOEも以前ほど稼げていないこと、両方あります。

ステップ系要素もピンツァローネ選手は14点台と稼ぎました。14.61はシーズンベストです。テネル選手は13点台。今季初めてステップでレベル4を取って今季最高の評価ですが、昨季までは14点台を普通に出していましたのでもっと取れます。リウ選手は今季4試合とも12点台。レベル4はショートフリーの片方で取れていることが多いのですが、まだ加点を大きくもらえるステップになっていません。復帰して、まだそこまで力が回っていないことが感じられます。

 

○男子シングル 上位12名

Pl Name Nation Total SP FS
1 Mihhail SELEVKO EST 245.06 86.20 158.86
2 Aleksandr SELEVKO EST 234.56 83.39 151.17
3 Francois PITOT FRA 229.44 73.72 155.72
4 Nika EGADZE GEO 217.01 75.18 141.83
5 Arlet LEVANDI EST 213.79 75.71 138.08
6 Vladimir SAMOILOV POL 207.75 75.99 131.76
7 Mark GORODNITSKY ISR 199.86 72.55 127.31
8 Lev VINOKUR ISR 199.83 69.04 130.79
9 Maurizio ZANDRON AUT 198.83 70.32 128.51
10 Yu-Hsiang LI TPE 198.36 64.11 134.25
11 Tomoki HIWATASHI USA 192.86 71.66 121.20
12 Davide LEWTON BRAIN MON 179.58 68.27 111.31

男子はエストニアのセレフコ兄弟が1,2フィニッシュとなりました。勝ったのは弟、ミハイル選手です。ショートフリー共に1位、しっかり勝ちました。チャレンジャーシリーズは5年ぶり2度目の優勝となります。

兄のアレクサンデル選手が2位。こちらは今期グランプリ2戦出ていたのですが結果を残せず。昨季のヨーロッパ選手権2位の跡が続いていない状態でした。チャレンジャーシリーズの2位はそれほど特別な結果ではないですが、次へつなげていけるか。来週エストニア選手権で兄弟決戦の予定ですが、ヨーロッパ選手権の代表は2枠あるはずですので、兄弟げんかにはならないはずですが、今大会5位のレバンディ選手も代表を狙ってきているはずですので、2人で代表になれるかはわからないです

3位にはフランスのピトー選手が入りました。229.44はパーソナルベスト更新です。昨季は世界ジュニアに出て5位。今期シニアに本格参戦したものの、グランプリシリーズは11位と12位。結果が残せずにいましたがここで一矢報いた形です。フランス選手権は一週空いて、日本と同じ時期の開催となります。

ジョージアのエガーゼ選手は4位。グランプリシリーズで4位が続いているエガーゼ選手ですが、ここでもまた4位ですか、という感じです。261.71のシーズンベストを持っているエガーゼ選手からしたら、このスコアは今一つです。ショートフリー共に4回転トーループを転倒。スコアを伸ばせませんでした。

 

○ミハイルセレフコ選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lo   4.90   1.27 6.17 2.571
2 4T+3T   13.70   2.85 16.55 3.143
3 3A   8.00   2.40 10.40 3.000
4 3F+2T   6.60   1.06 7.66 2.143
5 FCCoSp4   3.50   0.42 3.92 1.286
6 ChSq1   3.00   1.10 4.10 2.143
7 3F   5.83 x 0.85 6.68 1.571
8 1A+1Eu+2S   3.19 x 0.05 3.24 0.429
9 3Lz   6.49 x 1.18 7.67 2.000
10 CCSp4   3.20   0.64 3.84 2.000
11 StSq4   3.90   1.01 4.91 2.571
12 CCoSp4   3.50   0.63 4.13 1.857
  TES   65.81   13.46 79.27  

今季ほとんど決まっていなかった4回転トーループですが、今大会ではショートフリー共に降りました。今季ここまで2試合はフリーで2本入れていましたが、今回は1本にしたようです。後半のトリプルアクセルがシングルアクセルになりましたが、ミスが出たのはその3連続のところだけでした。

今大会、ショートの86.20がパーソナルベスト。フリーの158.86もパーソナルベストでトータル245.06も当然パーソナルベスト更新です。4回転1本の安全運転でしたが、昨季はトーループ2本にサルコウまで入れた3本構成を組んでいました。それほど確率はどちらもよくはなかったので、結果を出すには安全の1本構成がよさそうではありますが、240点台だとまだヨーロッパ選手権で表彰台争いをするには至らないので、構成を上げたいところもあります。何を求めていくか次第でしょうか。

次週、エストニア選手権を経て、来月のヨーロッパ選手権へと進んでいくことになると思いますが、年齢的にはワールドユニバーシティゲームズもありえるのかもしれません。 

 

○ショートフリー合わせた要素別のスコア 上位12名

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Mihhail SELEVKO 245.06 119.08 76.51 12.30 23.09 14.08
2 Aleksandr SELEVKO 234.56 120.99 83.29 -4.73 23.10 13.91
3 Francois PITOT 229.44 109.00 84.08 2.11 22.50 11.75
4 Nika EGADZE 217.01 103.83 102.46 -14.33 17.33 10.72
5 Arlet LEVANDI 213.79 111.34 72.90 -7.29 22.37 14.47
6 Vladimir SAMOILOV 207.75 107.00 76.16 -7.33 20.26 11.66
7 Mark GORODNITSKY 199.86 101.59 64.70 0.79 20.85 11.93
8 Lev VINOKUR 199.83 89.92 89.40 -4.63 16.58 8.56
9 Maurizio ZANDRON 198.83 98.43 73.72 -5.72 21.67 11.73
10 Yu-Hsiang LI 198.36 93.00 73.80 1.49 20.80 9.27
11 Tomoki HIWATASHI 192.86 99.43 79.61 -13.78 18.57 11.03
12 Davide LEWTON BRAIN 179.58 97.77 56.91 -6.77 20.30 11.37

PCSはミハイル選手よりアレクサンデル選手の方が上でした。ここは兄の勝ち。3番目もレバンディ選手で、エストニアの3人がPCSの評価が良かったということになりました。

ジャンプの基礎点はエガーゼ選手が100点超えで突出しています。構成的には突出しています。一方、加点はエガーゼ選手は二桁のマイナスです。ショートフリー共にジャンプボロボロですが、基礎点は取れていたということでGOEで大きなマイナス付きました。ミハイルセレフコ選手は逆に構成はそれほど高くない中で、ミスは回転が抜けて基礎点が削られる形になったことで、加点は大きく稼ぎました。このジャンプの基礎点で25.95の差がある2人ですが、ジャンプで得たスコアはほぼ同じで、わずかにミハイル選手の方が上、という面白い結果になりました。

スピンは兄のアレクサンドル選手が0.01差で弟のミハイル選手を上回っています。エガーゼ選手は17点台とかなり沈みました。

ステップ系要素はレバンディ選手が14.47で1位。ステップ系要素もエストニアの3人の評価が高いという形になっていました。

 

チャレンジャーシリーズもこれで終了です。チャレンジャーシリーズにもシリーズ全体の順位というのがあるのですが、男子はグラスル選手が1位でした。ゴールデンスピンで優勝したミハイルセレフコ選手が2位。今回は4位でしたがニカエガーゼ選手が3位です。シリーズには3試合まで出場することが出来て、その中で得点の高い2試合の合計で順位が付きます。日本勢は、基本的に1試合しか出ないのでまともな順位に入ってきません。

女子はネーベルホルン杯であっと言わせたエリスリングレーシー選手が1位。ロンバルディア杯で驚かされたサラエバーハート選手が2位、グランプリシリーズは欠場してしまったのですが9月10月は元気だったレビト選手が3位となっています。アメリカ勢がこんなところでも上位を占めました。

チャレンジャーシリーズは、本来は、グランプリシリーズに出られるかどうか以下くらいのレベルの選手が、ISU公認スコアを得るのにちょうどいい試合です。日本からはグランプリシリーズに向けての調整試合になっていて、そのレベルの選手が出てきません。ミニマムスコアとるだけならISU公認である必要はないので2月3月のB級大会でもいいのですが、グランプリシリーズに出られないシニアの選手が、グランプリシリーズに出られるようになるには、チャレンジャーシリーズでISU公認のシーズンベストを高く出していく、というのが早道なんですよね。その道を、中堅選手に残してあげると、二十歳を過ぎてから伸びてくるような選手、というのが増えてきて、さらに面白くなるのではないか、と思っていたりします。