グランプリシリーズを終え、次は全日本選手権。全日本の結果次第で、シーズン後半のチャンピオンシップの代表が決まっていきます。その代表選考は全日本次第ではあるものの、代表選考基準にはそれ以前の試合の結果がかなりかかわってきます。
今回から3回に分けて、その代表選考の展望を見ていきます。
まず初回はカップル競技です
●アイスダンス
○国際大会の結果
Event | Pl | Name | Total | RD | FD |
Nebelhorn Trophy | 5 | Utana YOSHIDA / Masaya MORITA | 171.59 | 68.94 | 102.65 |
NHK Trophy | 9 | Utana YOSHIDA / Masaya MORITA | 161.36 | 64.30 | 97.06 |
NHK Trophy | 10 | Azusa TANAKA / Shingo NISHIYAMA | 151.27 | 59.15 | 92.12 |
JGP Wuxi | 6 | Sara KISHIMOTO / Atsuhiko TAMURA | 139.97 | 58.59 | 81.38 |
JGP Bankok | 7 | Sara KISHIMOTO / Atsuhiko TAMURA | 132.04 | 51.58 | 80.46 |
JGP Ostrava | 6 | Kaho YAMASHITA / Yuto NAGATA | 128.80 | 51.24 | 77.56 |
JGP Riga | 8 | Sumire YOSHIDA / Ibuki OGAHARA | 125.51 | 50.65 | 74.86 |
JGP Ljubljana | 12 | Kaho YAMASHITA / Yuto NAGATA | 121.73 | 48.98 | 72.75 |
○東日本選手権と全日本ジュニア
J/S | Event | Pl | Name | Total | RD | FD |
S | 東日本選手権 | 1 | 吉田 唄菜 / 森田 真沙也 | 174.47 | 70.77 | 103.70 |
S | 東日本選手権 | 2 | 田中 梓沙 / 西山 真瑚 | 163.99 | 67.33 | 96.66 |
J | 全日本ジュニア | 1 | 岸本 彩良 / 田村 篤彦 | 146.17 | 58.73 | 87.44 |
J | 東日本選手権 | 1 | 岸本 彩良 / 田村 篤彦 | 144.37 | 58.21 | 86.16 |
J | 全日本ジュニア | 2 | 吉田 菫 / 小河原 泉颯 | 139.91 | 57.04 | 82.87 |
J | 全日本ジュニア | 3 | 山下 珂歩 / 永田 裕人 | 137.22 | 54.97 | 82.25 |
S | 東日本選手権 | 3 | 佐々木 彩乃 / 池田 喜充 | 133.83 | 51.95 | 81.88 |
J | 全日本ジュニア | 4 | 柴山 歩 / 木村 智貴 | 133.38 | 52.28 | 81.10 |
J | 東日本選手権 | 2 | 吉田 菫 / 小河原 泉颯 | 132.69 | 54.52 | 78.17 |
J | 東日本選手権 | 3 | 柴山 歩 / 木村 智貴 | 131.93 | 51.07 | 80.86 |
J | 東日本選手権 | 4 | 山下 珂歩 / 永田 裕人 | 128.95 | 49.16 | 79.79 |
J | 全日本ジュニア | 5 | 中島 未英 / 熊野 英輔 | 103.55 | 40.24 | 63.31 |
S | 東日本選手権 | 4 | 久根下 未暁 / ルーシェ 聖夜 アレック | 103.06 | 38.43 | 64.63 |
J | 東日本選手権 | 5 | 中島 未英 / 熊野 英輔 | 99.38 | 42.22 | 57.16 |
1.世界フィギュアスケート選手権大会
A) 全日本選手権優勝組、2位、3位の組 未定
B) 全日本選手権終了時点でのISUワールドスタンディング最上位組
(岸本 彩良 / 田村 篤彦 56位) 吉田 唄菜 / 森田 真沙也 62位 / 田中 梓沙 / 西山 真瑚 94位
C) 全日本選手権終了時点でのISUシーズンベストスコアの最上位組
吉田 唄菜 / 森田 真沙也 171.59 / 田中 梓沙 / 西山 真瑚 151.27
(国際大会がまだ残っているので、全日本選手権前に世界ランキングは変わる可能性がありますが、日本勢の出場は無いので、日本勢同士の順位の上下関係は変わりません)
アイスダンスの世界選手権枠は1つ。その1つを昨季は3組で争って、全日本では決められずというなかなか見ない展開をしたのですが、今期は事実上2組の争いです。
アイスダンスの選考項目は3つ。全日本の表彰台は当然まだ未定です。世界ランキングは、ジュニアのカップルが1番上だったというちょっと驚きの結果がありますが、シニアの中では吉田/森田組が上です。シーズンベストも20点ほどの差で吉田/森田組が上です。田中梓沙選手のケガもあるようで田中/西山組は少し苦しい情勢になっています。
今期はオリンピックの枠が決まる大事な世界選手権になります。アイスダンスは現実的には、何枠取るかというのではなく、何とか1枠を確保してくること、というのが至上命題ということになるかと思います。世界選手権で決まるのは19枠まで。151.27ではこれに全然届きませんので、国際大会の今期の実績を考えると、全日本で田中/西山組が勝っても、それほど差が無ければ、吉田/森田組の実績を考えてこちらを選ぶ展開もありそうに見えます。
2.四大陸フィギュアスケート選手権大会
国際的な競技力を考慮し総合的に判断して選考する。
身も蓋もの無い選考基準です。アイスダンスで今シーズン国際大会に出場しているシニアのカップルは2組。4大陸選手権の出場枠は3あります。おそらく、怪我・辞退が無ければ、この2組は選ばれるのではないかと思われます。
問題は3枠目をどうするか。東日本選手権では佐々木 彩乃/池田 喜充組が3位に入りましたがスコアは133.83でした。ただ、国際経験がありませんので4大陸選手権のミニマムスコアを持っていません。今期は4大陸選手権の開催が結構遅い時期になっているため、全日本後にミニマムを獲りに行っても時間的には間に合います。ただ、東日本の時のスコアではミニマムに全然届きません。4大陸のミニマムスコアは、技術点でリズム、フリー合計85点。東日本の時はこれが77.35でした。これを85点にかなり近づけていかないと、3枠目は使われないのではないかと推測されます。
また、アジア大会と4大陸選手権がスケジュール的にはかなり近いです。この両方を兼ねるかどうか? というのがアイスダンスに限らず各種目注目されます。アイスダンスのアジア大会代表は、後日発表と日本スケート連盟からは出ていたのですが、日本オリンピック委員会のエントリーリストには、森田真沙也、西山真瑚、吉田唄菜、田中梓沙、と個人名で4つ入っています。事実上この2組が代表、ということかと思いますが、スケート連盟は代表として発表していないので、エントリーは期日が来たので候補としてしたけれど、代表は1組だけ、とする可能性があったりするんでしょうか? わかりませんが。
いずれにしても、アジア大会を優先して、時期が近いから4大陸に出ない、という可能性はゼロではありません。大会の格としては4大陸の方が明らかに上ですが、タイトルが獲れる可能性はアジア大会の方が高くて、人生の中で得られる肩書としては、アジア大会のチャンピオン、というのは意味があると思います。でも、その感覚があったとしても、アジア大会の方が先なので、出られるなら4大陸に出るとは思われます。
3.世界ジュニアフィギュアスケート選手権大会
国際的な競技力を考慮し総合的に判断して選考する。
こちらも身も蓋も無い選考基準です。
世界ジュニアのアイスダンスの代表枠は1つ。アイスダンスの場合はジュニア組の全日本出場が無いので、事実上選考レースは終わっていて、代表発表を全日本後に待つだけ、となります。
全日本ジュニア優勝は岸本 彩良 / 田村 篤彦組。ISUシーズンベストも10点以上の差をつけてSara KISHIMOTO / Atsuhiko TAMURA組 世界ランキングはシニアを超えて日本勢1位が岸本/田村組。事実上、世界ジュニアの代表は岸本/田村組でほぼ決まりと思われます。昨季の世界ジュニアは12位。ぜひとも、今期はトップ10に入って、来期2枠を持ち帰ってきてくれることを期待したいです。
補欠は、全日本ジュニアで2位の吉田/小河原組を選ぶか、ISUシーズンベストが上の山下/永田組を選ぶか、微妙な情勢です。
●ペア
○国際大会の結果
J/S | Event | Pl | Name | Total | SP | FS |
S | Skate America | 1 | Riku MIURA / Ryuichi KIHARA | 214.23 | 77.79 | 136.44 |
S | NHK Trophy | 2 | Riku MIURA / Ryuichi KIHARA | 209.45 | 71.90 | 137.55 |
S | Grand Prix Final | 2 | Riku MIURA / Ryuichi KIHARA | 206.71 | 76.27 | 130.44 |
S | Lombardia Trophy | 2 | Riku MIURA / Ryuichi KIHARA | 199.55 | 73.53 | 126.02 |
S | NHK Trophy | 7 | Yuna NAGAOKA / Sumitada MORIGUCHI | 172.47 | 60.32 | 112.15 |
S | Finlandia Trophy | 6 | Yuna NAGAOKA / Sumitada MORIGUCHI | 171.80 | 51.75 | 120.05 |
S | John Nicks International | 8 | Yuna NAGAOKA / Sumitada MORIGUCHI | 158.90 | 55.92 | 102.98 |
J | JGP Final | 5 | Sae SHIMIZU / Lucas Tsuyoshi HONDA | 145.66 | 50.20 | 95.46 |
J | JGP Ankara | 3 | Sae SHIMIZU / Lucas Tsuyoshi HONDA | 140.19 | 48.04 | 92.15 |
J | JGP Ostrava | 4 | Sae SHIMIZU / Lucas Tsuyoshi HONDA | 136.29 | 44.96 | 91.33 |
○西日本選手権と全日本ジュニア
J/S | Event | Pl | Name | Total | SP | FS |
S | 西日本選手権 | 1 | 長岡 柚奈 / 森口 澄士 | 174.20 | 57.54 | 116.66 |
S | 西日本選手権 | 2 | 柚木 心結 / トリスティン テイラー | 138.80 | 50.59 | 88.21 |
J | 全日本ジュニア | 1 | 清水 咲衣 / 本田 ルーカス剛史 | 132.83 | 48.51 | 84.32 |
1.世界フィギュアスケート選手権大会
A) 全日本選手権優勝組、2位、3位の組 未定
B) 全日本選手権終了時点でのISUワールドスタンディング最上位組
三浦璃来/木原龍一 3位 / 長岡 柚奈 / 森口 澄士 40位 清水 咲衣 / 本田 ルーカス剛史 56位
C) 全日本選手権終了時点でのISUシーズンベストスコアの最上位組
三浦璃来/木原龍一 214,23 / 長岡 柚奈 / 森口 澄士 172.47 清水 咲衣 / 本田 ルーカス剛史 145.66
ペアは、世界選手権の代表枠は3枠あります。今期国際大会で活動しているカップルはシニアでは2組しかありません。3年連続世界選手権表彰台の三浦/木原組は言うまでも無く、長岡/森口組も問題なく代表に選ばれるはずです。昨季と異なりミニマムスコアもしっかりクリア済みです。問題は3枠目。国内では柚木/テイラー組がシニアで活動していますし、ジュニアで清水/本田組がいます。これを代表に選ぶかどうか? どちらもミニマムを持っていないだけでなく、今のスコアからすると、これから取得しようとしてもちょっと遠い、という現実がありますので、全日本でよほど高いスコアを出さないと、世界選手権は3枠あるけれど2枠しか使わない、ということになるかと思われます。どちらかというと、シニアで試合に出ている柚木/テイラー組の方が、ミニマム取れれば世界選手権出てもいいよ、という注釈付き代表にする可能性は相対比較としては高いかな、と一見思われました。ただ、問題があってテイラー選手は日本国籍ではありません。カナダから日本への移籍。国籍はそのままですが所属が変わっているので1年間国際大会に出られません。直近の出場国際大会は23年のジョンニックスペアチャレンジなので1年経っているのですが、24年のカナダナショナルの出場から1年経っていません。これ、厳密にこのルール分かっていないのですが、ナショナルに出ているということは、まだその時点では明らかにカナダの所属なわけで、そこから1年経たないといけないのか、ナショナルは国際大会ではないからカウント外なのかがはっきりしていません。ただ、近い実績で、サリナヨース選手がスイスからイタリアへ移籍した際、スイスナショナルから1年経たずに、国際大会実績から1年経った時期に、イタリアの代表として国際大会に出ていましたので、おそらく、カナダナショナルはカウント外でいいと思われます。ナショナルが1年の起点となっても、ミニマムを取りに行く国際大会には間に合うので、全日本で好成績を収めれば代表3枠目に選んでもらえる可能性はあります。
清水/本田組は世界ジュニアの代表になった場合、すでにアジア大会の代表も決まっていますので、シニアのミニマムを獲りに行こうとすると、ちょっとあわただしいスケジュールになりそうですし、世界ジュニアと世界選手権のダブル代表はなさそうに感じます。
2.四大陸フィギュアスケート選手権大会
国際的な競技力を考慮し総合的に判断して選考する。
はい、ペアもアイスダンス同様、四大陸選手権の代表選考は身もふたもない基準となっています。
4大陸選手権も3枠ありますので、三浦/木原組は考えるまでもなく、長岡/森口組も当然のように代表に選出されると思われます。ただ、4大陸選手権の真裏のスケジュールで、ミラノオリンピックのプレ大会が行われます。4大陸のタイトルは持っている三浦/木原ペアはプレ大会の出場を希望して4大陸は回避する可能性もあるかと思います。
三浦/木原ペアが出るにしろ出ないにしろ、残りの枠がどうなるかが問題。ただ、今期は、世界ジュニアと4大陸の代表兼任は認めない、との注釈がついていますので、今シーズンジュニアで活躍している清水/本田組は、世界ジュニアを優先させた場合、4大陸の代表にはなれません。清水/本田組は現在シニアのミニマムは何も持っていません。これまでの流れからすると、おそらく世界ジュニアを選ぶのではないかと思われます。
その場合、全日本にエントリーしている残りの1組、柚木/テイラー組にチャンスは回ってきますが、世界選手権の項で書いたように、テイラー選手の移籍問題というのが引っかかってきます。国際大会出場実績基準で1年でいいなら、4大陸の代表はありえそうです。ただ、カナダナショナル基準だと、4大陸は1年経つので理論上出られますが、ミニマム取得時期が間に合わないので、結局4大陸の代表にはなれない、となります。4大陸のミニマムスコアは75.00 柚木/テイラー組は西日本選手権で73.87のスコアを出しています。全日本で何点取れるか? それをもって、4大陸選手権の準備としてミニマム取得のための国際大会の派遣するか否か? が判断されることになるのではないかと思われます。ペアが3組出る4大陸を見てみたいと思います。
3.世界ジュニアフィギュアスケート選手権大会
国際的な競技力を考慮し総合的に判断して選考する。
こちらも身もふたもない選考基準ですが、日本で活動しているジュニアのペアは事実上清水/本田組しかいまはありません。世界ジュニアのミニマムスコアもすでに取得しています。そのまま代表の1枠に収まるものと思われます。ただ、柚木/テイラー組は年齢計算からすると世界ジュニアに出場可能です。ついでに長岡/森口組も計算上は出場可能です。しかしながら、長岡/森口組はジュニアのミニマムを持っていないですし、今からジュニアのミニマムを獲りに行くくらいなら、4大陸選手権を優先させると思われます。問題は柚木/テイラー組が、4大陸のミニマムを取るには厳しいけれど、世界ジュニアのミニマムなら獲れそうで、かつ、清水/本田組を全日本で大差で上回った場合にどうするか? というのはあるかもしれません。まあ、非常にレアケースなので、その場合、柚木/テイラー組は4大陸のミニマム挑戦頑張れ、というコースになりそうに思われます。
ペアの代表選考は、柚木/テイラー組がどこにどう絡むか? 以外は、事実上ほぼ全部決まっているように見えます。あとは三浦/木原組が4大陸を選ぶか、プレ大会を選ぶか、というのも気になるところです。