日本スケート連盟2025年6月期決算

日本スケート連盟の昨年度の決算報告が、10月頭頃に出ていました。少し時間が経ってしまっていますが、今回はそのお話です。ブロック大会のど真ん中で出されると、なかなか四出られないんですよね。まあ、6月決算なのでその時期に出るのは仕方ないんですけど

スケート連盟の決算は、スケートのシーズンと合わせて6月が期末となっていて、今回は2024年7月1日から2025年6月30日までのものとなります。

 

○2025年6月期決算

 

2025年6月期

経常収益

2,380,716,559

経常費用

2,815,022,473

当期計上増減額

-434,305,914

当期一般正味財産増減額

-437,106,583

法人税・住民税及び事業税

183,100

一般正味財産増減額

-437,289,683

経常収益はいわゆる売上、当期計上増減額が営業利益、一般正味財産増減額が純利益、にそれぞれ相当するもの、と考えてよいと思います。

この決算は、一言で言えば、4.37億円という結構大きな赤字があった、という風に読み取れます。昨年、決算を取り上げられなかったのですが、実は去年も同じくらいの赤字をだしています。それを含めて、ちょっと時系列的に見てみましょう。

 

日本スケート連盟 一般正味財産増減額推移

一般正味財産増減額は、黒字ならプラス、赤字ならマイナス、と思ってください。

2008年6月期から、だいぶ長く見ていきますが、実は近年は赤字の年の方が多いです。2008年から13年あたりまでは安定した黒字でした。14年に大きく稼いだ後、15・16・17と赤字。18・19・20は黒字ですが、21年6月期にまた赤字になり、22年に一旦黒字になるも、23年以降赤字が続いています。

 

日本スケート連盟 正味財産期末残高推移

赤字が3年続いていますが、累積黒字が結構あるので、手持ちの資産はまだ十分あります。ピークは2022年でこの年34.5億円まであったのが、25年6月末には24.7億円ということで、3年で10億円減少したことになります。それでも14-17年頃あたりの水準はまだある、とも言えますし、このペースで行くと10年と持たない、とも言えます。

 

赤字になる理由というのは、大きく分けると2つ。当たり前ですが、1つは収益が少ないことで、もう1つは支出が多いことです。当たり前すぎますけど。

まず収益の方を見てみます。

 

日本スケート連盟 放映権料推移

この辺の細かい科目別の収益、支出は2013年以降しか拾えていません。ここでは放映権料の推移を見ました。24年から25年にかけて、フィギュアの部の放映権料が減少しています。具体的には1.76億円ほどで、2,200万円ほど前年より減っています。赤字額と比べると小さい現象ですが、痛いと言えば痛いです。とはいえこれでも2017年以前と比べて同じ程度の水準ではあります。放映権料の減少というのは、一般人気の減退を象徴するものであり、金額以上に嫌なものはあります。なお、決算資料に具体的な記述はありませんが、この放映権料はほぼフジテレビによるものと思われます。テレビ朝日はグランプリシリーズなので、放映権料は日本スケート連盟へは行かず、国際スケート連盟の方へ行きますね。なので、フィギュアスケートの放送上の価値をアピールして日本スケート連盟の収入を増やすには、ファンによるFODの視聴が欠かせない、といったところでしょうか。フジテレビはちょっとやらかしがあって、収益面で苦しんでいることもあり、次期の放映権料がどうなるか心配なところもあるわけですが、何とか下落はさせずに維持はしてほしいところです。

なお、スピードスケートの放映権料は3,350万円ほどで、フィギュアスケートの部の2割弱となっています。じわじわと増加傾向ではあるのですが、オリンピックで毎回メダリスト、それも金メダリストをしっかり生んでいますので、それを活かしてもう少し稼いでほしいですね。人気商売の負担をスピードスケートの方ももう少し背負ってほしいところ。

 

日本スケート連盟 資産運用益推移

資産運用益は、放映権料などと比べて、縦軸が2桁小さいです。

2023年までは、全くとるに足らない金額で、良くて数十万円といったところだったのですが、24年25年と金額が一気に増えてきました。25年6月期は基本財産、特定資産、合わせて646万円の運用益がありました。これは完全に金利上昇の影響です。そして、その金利上昇および、これまでの累積黒字で貯めてきた資産を使って本格的な運用をこの25年6月期に、連盟は初めています。

具体的には、1億円ある基本財産を、従来は定期預金に入れていたのですが、この期の途中に9,900万円余りを国債購入に充てています。ピッタリ1億円ではないのは、購入単位の問題でしょう。また、特定資産として16億円近い預金があったのですが、こちらも10億円弱を国債購入に充てています。

こういった連盟が資産運用に力を注ぐのは賛否あるのかと思いますが、基本的に満期保有目的で購入する国債には、リスクはほぼありません。まあ、国が破綻する、ということが起きればスケートどころではないのでどちらにしても一緒なわけです。そして国債は定期預金よりも一般的に金利は高い。金利の上昇は、一般市民にとって得か損かはわかりませんが、こういったまとまった資産を持つ連盟にとっては、収益面でははっきり得になります(

物価の上昇などによる運営費の増加はまた別の話として)。買った国債金利が把握できていないのですが、放映権料のマイナスを、この資産運用益である程度は補っていけるのではないかと思われます。

 

日本スケート連盟 強化・派遣費推移

次に、支出の方を見てみます。これは強化・派遣費です。2013年以降で数字が拾えていますが、16年まではスピードスケートの中にショートトラックが含まれていて16年からスピードスケートとショートトラックが分離しました。

ここ数年の強化・派遣費の水準が依然と比べて高いのが見て取れます。20年21年に一旦減少しているのは、明らかにコロナの影響でしょう。なので、22年に急に伸びたというよりは、本来は18年くらいの水準があって、そこからの増加なわけですが、それでもこの4年、結構高い水準です。18年6月期比で25年6月期は約1億円多いです。以前と比べて高水準になってきているのがフィギュアスケートです。スピードスケートは意外と伸びていない。23年と25年はフィギュアスケートの方がスピードスケートよりも強化費派遣費が多くなりました。それでもショートトラックを含めた全体の中の5割にまでは達していません。

この強化費・派遣費の伸び、というのが財政を圧迫している部分はあります。とはいえ、これはむしろ稼いだ金を使う目的の部分なので、赤字だからこれを減らそう、とは簡単に言えない部分、というか、それって本末転倒、みたいなことになる部分になります。

 

次に、収益と支出を別々に見るのではなくて、あるまとまりの中での収支の推移として見てみます。

 

日本スケート連盟 主催大会収支

これは2008年以降の日本スケート連盟がかかわった主な大会運営の収支です。プラスはその大会が黒字だった、マイナスは赤字だったということになります。

2008年以降、毎年必ず入ってきているのは2つ、NHK杯と全日本フィギュアです。この2つに関しては後述します。それ以外で明らかに目立つのは青、これは世界フィギュアです。この世界フィギュアが2014年、2019年、2023年と行われているのですが、ここで大きな黒字を稼いでいます。2014年には5.22億円、2019年は6.44億円という巨額の黒字を1大会で稼ぎだしました。ところが2023年は1.92億円。2億円近いので十分大きな額ではありますが、14年19年と比べると明らかに小さい額です。2023年というと、羽生結弦さんの引退が確定した次の年、ということで、その影響が明らかに感じ取れます。

他に微妙にプラス側で見えるのは灰色や黄色。灰色はグランプリファイナル、黄色は4大陸フィギュアです。2013年の4大陸フィギュアは5,500万円ほどの黒字。グランプリファイナルは上記の会計年度の前半なので、14年の灰色は13年開催のファイナルとなって6,000万円黒字、18年の灰色は17年末開催のもので6,900万円、やはり黒字です。22年、つまり21年末のファイナルは赤字側にありますが、これは開催中止なので仕方ないでしょう。それでも中止の補助金をもらっていて赤字は1,800万円ほどに抑えられていました。

世界選手権と比べて、グランプリファイナルは出場選手が厳選されすぎていて、お気に入りの選手が出場しないことも多く、集客力的にはどうしても落ちるでしょうか。それでも今期のグランプリファイナルでどれだけの収益を上げることができるかは、連盟にとって大変重要です。

 

また、運営大会で赤字(0より下側に棒グラフが伸びているもの)が多いのも目につきます。25年6月期で見ると、スピードスケートのワールドカップと、同じく4大陸選手権が赤字です。4大陸選手権という区分はアイススケート界独自の区分ですが、フィギュア界だけでなくスピードスケートとショートトラックにも近年はあります。しかし、赤字運営となっています。25年のスピードスケートのワールドカップは長野で行われましたが入場料収入が256万円、ということで、なかなか苦しい運営です。4大陸スピードに至っては、入場料収入はゼロで収益のほとんどが補助金でした。結果としてワールドカップスピードは6,200万円の赤字、4大陸スピードは1,200万円赤字です。この辺のフィギュアスケート以外の大会運営は、基本的に赤字が続いています。

なお、フィギュアスケートでも、ジュニアグランプリシリーズは赤字運営の試合で、23年(上記グラフでは24年会計期)の大阪で行われた試合は2,900万円の赤字です。入場料収入608万円では苦しかった。グラフにある13年以降でジュニアグランプリシリーズは3回行われていますがすべて赤字でした。そう考えると、今期の木下グループ杯の収支がどうなっているか? というのは心配ではあります。

 

日本スケート連盟 大会毎の収支推移

毎年必ず行われるNHK杯と全日本フィギュアだけを並べたのがこのグラフになります。全日本は2008年と10年のデータが欠落していますけど。これは会計期で並べているので、開催年で見るとすべて1つ前の数字、つまり2025は2024年の試合、となります。

この2つの大会は常時黒字です。人気選手の引退に伴い、このあたりの試合の収益も心配されていましたが、黒字は保っています。全日本は2014と2022、すなわち2013年と2021年開催の試合が巨額の黒字となっていますが、この2試合はさいたまスーパーアリーナでの開催です。オリンピックシーズンにさいたまスーパーアリーナで開催して、集客力をフルに生かせばこれだけの巨額の黒字を得ることが出来ていた、ということが言えます。逆に言うと、それ以外の年は、持っている集客力を生かしきることができない会場で開催されていた、とも言えます。まあ、公益法人による運営の試合なので、普及、という観点で全国各地で行う必要はあるでしょうから、金稼ぐために人気のうちはさいたまスーパーアリーナで毎年、というわけにはいかなかったのでしょう。従って、元々が振り切っているところまで集客力があったので、多少集客力が落ちても、これらの大会はある程度しっかり稼ぐことができる、ということではあります。

 

日本スケート連盟 入場料収入推移

これだけ、会計年度ではなく開催年でのグラフとなりますが、入場料収入だけを見たものです。NHK杯フィギュアは昨年2024年、初の2億円越えで、この記録のある直近10年の間での最大の入場料収入を稼ぎだしています。NHK杯は少なくともしっかり稼ぐ力を維持しています。全日本は、21年の、さいたまスーパーアリーナで行われた羽生結弦さん最後の全日本を上回るのは、インフレで物価が3倍くらいになる時代まで無理なんじゃないか、という気もしますが、18年の2億円くらいは売り上げてほしいところです。

ちなみに、17年開催のグランプリファイナルは2.92億円の入場料収入がありました。今回もその時と同じ名古屋ですが、今回はIGアリーナ、17年は日本ガイシホール、ということで場所は違います。今年の方が収容人数は多いようです。さすがに当時と同じ選手は来ないかな、と思ったら、アイスダンスのチョック/ベイツ組は当時も今回も来ます。さすがアイスダンス、選手寿命が長い。

 

日本スケート連盟 マーケティング収支推移

次に、マーケティング部門の収支を見ます。ここでは、単純に、マーケティング事業収益、と名のついている収益から、マーケティング事業補助金と名のついた費用を差し引いた額で表しています。実際には、マーケティング事業にかかわる人の報酬など、他の費用も掛かっていて、それらも加味したものをマーケティング事業収支として表すこともできるのですが、ここではそれはやっていません。ただ、傾向としては同じになります。

これはもう顕著に傾向が表れています。2014,2018,2022の3年の収支が明らかに巨額です。オリンピックのある会計期ですね。オリンピックシーズンは大きく稼ぐことができる、というのが如実に表れています。

 

さて、ここで、最初の方に出した、一般正味財産増減額、という各年の黒字赤字を表すグラフを思い出してください。大きな黒字を出した年というのは会計年度で見ると、2014,2018,2019,2022の4年間でした。これは、オリンピックの開催があった年と、世界選手権で大きく稼いだ年、の重ね合わせです。そのどちらも無い年、というのは、以前から大きな黒字は稼げていませんでした。2015,2016,2017あたりは赤字です。従って、従来から日本スケート連盟は、オリンピックと世界選手権に依存した収益構造であり、そこで大きく稼ぐ前提でお金を使っていた、と言えそうです。なので、あまり単年会計だけ見ても仕方ないのかな、と思います。4年単位で見る必要がある。

その観点で見ると、24,25と赤字だったことは、まあある程度想定の範囲内であるのですが、23年開催の世界選手権で、思ったほど稼ぐことが出来なかったのが痛かった、というのはあります。

その上で、今期はオリンピックがあります。このオリンピックシーズンにどれだけ稼げるのか? というのが非常に重要で、それが目論見通り入って来るでしょうか?

 

また、各大会でどれだけ稼げるかは常に大事です。今期は事業計画を見ると、スピードスケートやショートトラックの国際大会の予定は入っていません。赤字が出るとすると、木下グループ杯です。そして、4年に1度のグランプリファイナルでどれだけ稼げるか? 全日本をさいたまスーパーアリーナで行う自信はなかったようですが、代々木第一でどれだけ稼げるか?

全日本は割と順調にチケット出ているようですが、グランプリファイナルはまだ残数結構あるのかな? まあ木曜日金曜日、平日の売れ行きがちょっと厳しいのは仕方ないとは思いますが、ぜひ、足をお運びいただければと思います。

 

というわけで、2年連続大幅赤字だけど、大事なのは今期どうなるか? であって、今期稼げないと本格的に危ないよ、今期しっかり稼げれば、まあ、想定の範囲内だったのね、という感じの日本スケート連盟決算でした。