23-24 アヴァマリージーグラー

2006年2月28日生まれ

シニア2シーズン目

シーズン獲得賞金:$25,000

世界ランキング:20位

シーズンランキング:10位

シーズンベストスコア 201.19(13位) 4大陸選手権

ショートプログラムシーズンベスト 68.25 4大陸選手権

フリーシーズンベスト 138.46 NHK杯

スピンレベル4率 25/30 = 83.3%

ステップレベル4率 5/10 = 50.0%

スピンオールレベル4 2/5

スピンステップオールレベル4 0/5

ジャンプ回転不足率 5/50 = 10.0%

ジャンプ回転不足なし 1/5

スピンステップオールレベル4ジャンプ回転不足なし 0/5

 

○23-24シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
IC Cranberry International 2 183.79 68.12 115.67
CS Lombardia Trophy 6 157.39 60.26 97.13
CS Finlandia Trophy 5 173.60 65.07 108.53
GP NHK Trophy 1 200.50 62.04 138.46
4CC Four Continents 4 201.19 68.25 132.94

アヴァマリージーグラー選手は昨シーズンシニアデビュー。全く無名でしたがチャレンジャーシリーズのブダベスト杯で優勝。渡辺倫果選手と同じように、そのチャレンジャー優勝からグランプリシリーズ補欠枠を獲得し、スケートカナダの出場権を得ます。そこで優勝とはいきませんでしたが4位に入り今シーズンに繋げました。

 

今期は国際大会開幕戦、8月のクランベリーインターナショナルから登場です。日本でもげんさんサマーカップとかこうやってB級大会化すればいいのに、と思ったりもしますが運営大変になるんでしょうね。初戦のショートからノーミスオールレベル4で68.12という自己ベスト相当のスコアを出してきます。フリー伸びませんでしたが183.79で2位。ランキングポイントを確保します。

 

まだまだ主戦場はチャレンジャーシリーズかな、という立ち位置。9月に入ってチャレンジャーシリーズ開幕戦のロンバルディア杯に登場。ここはショートフリー共にさえない出来で157.39 6位に終わります。

10月にフィンランディア杯。3回転-3回転は苦手です、ということでこの試合もショートフリー共に決まらず。スコアは173.60と低調でした。

 

最初のアサイン発表時には名前が入っていなかった今期のグランプリシリーズ。これが欠場が出て最終6戦目のNHK杯にエントリーが入りました。イ・ヘイン選手がいるものの今期は不調。三原選手は初戦欠場でここに出てくるかどうかも怪しい、ということでシード勢が今一つ。キムイェリム選手、グバノワ選手などはいるものの、混戦模様が予想される試合です。ショートは前半の5番滑走。大きなミスなくいい滑りに見えたのですがコンビネーションはアンダーローテーションを付けられます。ただ、全体的に厳しい判定で全体のスコアが伸びず62.04は5位スタート。3位まで0.89差、1位まででも6.89差。表彰台は射程圏にありますが3位と9位で点差が6.08差という大混戦なので全く読めません。

フリーは後半グループの2番滑走。これまでと構成を大きく変えて、3-3は無しで3連続にアクセル2つ入れ、あとのコンボは3-2で済ませつつ3つ目の要素まででコンビネーションを終わらせるという形にしました。これが大成功。冒頭の3F+2A+2Aは+平均GOE+3.111と高評価。全体で!が1つ付いただけでスピンステップもオールレベル4 全要素プラス評価をもらって技術点は74.97まで出し、フリー138.46は当然パーソナルベスト。トータル200.50と190点にも乗せたことが無かった選手が一気に200点を超えて首位に立ち、残り4人を待ちます。最後まで読めない試合でしたが、結局このまま首位に残り、グランプリシリーズ初優勝。驚きの初タイトルとなりました。

 

さて全米、いきなりワールド代表候補になってきた、と思ったのですがこれを欠場。ナショナルスキップしての4大陸選手権という意外な選択をします。確かに全米選手権と4大陸選手権は時期が近すぎて連戦するには厳しい。チャンピオンシップとして4大陸を重視するならナショナルスキップしたい、というのはわかります。一方で、それは今期の世界選手権代表をあきらめることでもあり、難しい選択だったのではないかとも思いました。

 

その勝負をかけた4大陸選手権。第4グループの最終滑走という位置で出てきます。直前に千葉選手が71.10を出していました。その流れを受けてか、NHK杯で自信を付けたか、このショートもしっかり滑って68.25とパーソナルベスト更新。3位スタートとなってチャンピオンシップのスモールメダル獲得です。4位と1.03差、逃げ切るのも結構大変、1位とは2.85差、逆転も無くはない。フリーは最終滑走の1人前で出てきます。首位に出るには136.44、表彰台確定には133.93が必要です。あの厳しい判定のNHK杯でフリーは138.46を出しています。それを再現できれば、というところでいい演技でした。ほぼミスはなかった。残念だったのは後半の単独ルッツ。ステップアウトも残念ですが、その前にエッジがe判定。他にミスは無く132.94まで出したのですがトータル201.19は1人残して3位。最終滑走終わって結局4位。表彰台まではわずか0.98差、2位までは3.49差。ルッツのe判定が入らなければ表彰台、ルッツをクリーンに決めていれば2位、という非常に惜しい試合でしたが、チャンピオンシップの4位はしっかり存在感を見せた、という試合でもありました。

世界選手権はないのでここでシーズン終了となりました。

 

○要素別スコア

Event Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Cranberry International 183.79 97.52 88.27 64.64 -1.51 22.80 11.59
Lombardia Trophy 157.39 81.26 80.13 57.28 -6.50 21.18 9.30
Finlandia Trophy 173.60 87.50 88.10 59.99 -5.44 19.33 13.62
NHK Trophy 200.50 107.16 93.34 64.73 5.84 23.33 13.26
Four Continents 201.19 104.42 96.77 64.27 4.50 22.70 12.95

トータルスコアはチャレンジャーシリーズ2戦では伸びなかったのですがNHK杯で覚醒。一発のフロックではなく実力なことを4大陸でも示して2戦200点突破です。

技術点はその2試合で100点台。NHK杯の107.16は今期全選手中14位、ISU公認で13位にあたります。PCSの方はNHK杯よりも4大陸で伸ばして96.77と8点平均に達しました。このスコアで今期全選手中15位、ISU公認で14位のスコアになります。

ジャンプの基礎点は3試合で64点台あります。極めて高い、という水準ではないですが、70点超える選手は数人という中で64点台あれば出来栄えで勝負できます。

加点の方は200点超えの2試合は5点前後ありました。着氷が乱れるというよりもエッジの判定でGOE削られるケースが多いです。

スピンは22点台から23点台。23.33あれば悪くは無いです。

ステップ系要素の方は13点台まで。13.62も悪くは無いです。

 

○要素別偏差値

Event Total J Base J GOE Spin Step PCS
Cranberry International 59.30 64.18 52.52 60.24 52.16 57.13
Lombardia Trophy 49.58 56.31 42.30 53.71 40.93 50.42
Finlandia Trophy 55.54 59.21 44.47 46.25 62.11 56.99
NHK Trophy 65.45 64.27 67.58 62.38 60.34 61.30
Four Continents 65.70 63.78 64.84 59.84 58.82 64.13

偏差値で見るとトータルスコアは200点に乗った2試合で65まで出しています。ジャンプの基礎点も60台中盤の偏差値です。加点の方はチャレンジャーシリーズ2試合でひどかったですが、NHK杯以降やはり60台中盤。

スピン、ステップはいい時で60台前半までです。PCSも同様。

ややジャンプで点を取る傾向ですが、スピンステップPCSもそれに近い水準の点が取れるようになっています。

 

アヴァマリージーグラー選手の要素別偏差値レーダーチャート23-24

レーダーチャートを見ると、良かった2試合はバランス型に見えます。突出した何かがあるわけではないのですが、全体的にしっかり点を取って200点に達する、という形になっているようです。

 

●シーズン最高の基礎点構成

クランベリーインターナショナル ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F+3T   9.50   0.80 10.30 1.167
2 3Lz   5.90   1.33 7.23 2.333
3 CSp4   2.60   0.78 3.38 3.000
4 FSSp4   3.00   0.83 3.83 2.833
5 StSq4   3.90   0.88 4.78 2.333
6 2A   3.63 x 0.91 4.54 2.500
7 CCoSp4   3.50   0.53 4.03 1.333
  TES   32.03   6.06 38.09  

ショートプログラムの最高基礎点は初戦のクランベリーインターナショナルでした。フリップからのコンビネーション、もう1つはルッツを飛んで1.1倍にはダブルアクセル。スピンステップオールレベル4で32.03です。1.1倍がダブルアクセルなのは弱く、これをルッツに替えられれば0.26基礎点が上がります。

ジーグラー選手は基礎点を稼ぐよりも、早めに難しいジャンプは終わらせる、というのを優先して構成を組んでいるように見えます。基礎点上げていくよりも、3-3の確率を上げていく、エッジ判定を取られないようにする、というところの方が点数を伸ばす際の優先従二として上にあるものと思われます。

 

NHK杯 フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F+2A+2A+SEQ   11.90   1.59 13.49 3.111
2 3Lz!+2T ! 7.20   0.34 7.54 0.556
3 3Lo+2T   6.20   1.40 7.60 2.778
4 3S   4.30   0.86 5.16 1.889
5 FCCoSp4   3.50   0.80 4.30 2.222
6 ChSq1   3.00   1.21 4.21 2.444
7 3Lz   6.49 X 0.84 7.33 1.444
8 3F   5.83 X 1.14 6.97 2.222
9 3T   4.62 X 0.54 5.16 1.333
10 StSq4   3.90   1.00 4.90 2.556
11 CCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.556
12 FSSp4   3.00   0.86 3.86 2.889
  TES   63.44   11.53 74.97  

フリーは63.44の基礎点がありました。高難度ジャンプ無しでは65点を超えませんので、ダブルアクセル組としては十分高い基礎点があります。

3連続を最初に入れて、3-3は無しでコンビネーションは3つ目の要素までで終わらせる。シークエンスでアクセル2本。最後には単独トーループも入るという珍しい構成ですが、2回飛ぶジャンプがルッツとフリップなので基礎点はしっかり出せるというものです。

こんなやり方もあるんだな、と思わされました。これだとセカンド3回転無しで7トリプルが構成出来た上でダブルアクセル2本も使えています。コンビネーションを1.1倍につぎ込んでいけば、セカンド3回転無しでも64点台の基礎点構成を作れる計算です。

 

○平均GOE2.500以上

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Four Continents FS 11 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.333
NHK Trophy FS 1 3F+2A+2A+SEQ   11.90   1.59 13.49 3.111
Finlandia Trophy SP 3 CSp4   2.60   0.78 3.38 3.000
NHK Trophy SP 3 CSp4   2.60   0.78 3.38 3.000
Cranberry International SP 3 CSp4   2.60   0.78 3.38 3.000
NHK Trophy FS 12 FSSp4   3.00   0.86 3.86 2.889
Finlandia Trophy SP 6 2A   3.63 x 0.99 4.62 2.875
Cranberry International SP 4 FSSp4   3.00   0.83 3.83 2.833
NHK Trophy FS 3 3Lo+2T   6.20   1.40 7.60 2.778
Lombardia Trophy SP 3 CSp4   2.60   0.68 3.28 2.714
Four Continents SP 5 StSq4   3.90   1.00 4.90 2.667
NHK Trophy SP 5 StSq3   3.30   0.85 4.15 2.556
NHK Trophy FS 10 StSq4   3.90   1.00 4.90 2.556
NHK Trophy FS 11 CCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.556
Four Continents SP 3 CSp3   2.30   0.56 2.86 2.556
Cranberry International SP 6 2A   3.63 x 0.91 4.54 2.500

ジーグラー選手はスピンの評価が高めですが、その中に3連続ジャンプが混ざりました。NHK杯で+3.111 これは3連続ジャンプとして今期の全選手中3位、3回転で始まる3連続として1位の非常に高い評価でした。

試合数少なく、いい結果が出たのが2試合だけなこともありますが、ジャンプの高評価が単発でしか見当たりません。これが安定的に+2台後半を出してくるようになると、200点台の常連として、ワールド表彰台候補の一角、というような存在になってきそうです。

 

○3回転-3回転

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Cranberry International SP 1 3F+3T   9.50   0.80 10.30 1.167
Cranberry International FS 1 3F+3T< F 8.66   -2.65 6.01 -5.000
Lombardia Trophy SP 1 3F!+3Tq ! 9.50   -2.12 7.38 -3.857
Lombardia Trophy FS 1 3F+3T<< F 6.60   -2.65 3.95 -5.000
Finlandia Trophy SP 1 3Lz+3T< 9.26   -2.07 7.19 -3.500
Finlandia Trophy FS 1 3F+3T< F 8.66   -2.65 6.01 -5.000
NHK Trophy SP 1 3Lz!+3T< ! 9.26   -1.52 7.74 -2.667
Four Continents SP 1 3Lz!+3T ! 10.10   0.08 10.18 0.111

ジーグラー選手は3回転-3回転は苦手に見えます。今期は序盤はショートでフリップから、中盤以降はルッツから。フリーは序盤はフリップから入れていましたが中盤以降は3-3をフリーに入れることはやめていました。

8本飛んで転倒4回、!が3つついてアンダーローテーションも1つ。GOEがプラスになったのは2回だけ。成功率25% これは、確かにフリーで3-3を入れたくなくなるのもわかります。とはいえ、ショートでは3-3無いと苦しい。今後重要になってくる要素と思われます。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Cranberry International FS 2 3Lz+2A+2T+SEQ   10.50   1.03 11.53 1.667
Lombardia Trophy FS 2 1Lz+2A+2T+SEQ   5.20   0.00 5.20 0.143
Finlandia Trophy FS 7 3Lz!+2A+2T+SEQ ! 11.55 x -0.59 10.96 -1.000
NHK Trophy FS 1 3F+2A+2A+SEQ   11.90   1.59 13.49 3.111
Four Continents FS 1 3F+2A+2A+SEQ   11.90   0.83 12.73 1.556

3連続ジャンプはNHK杯から冒頭に入れる形に変えてきました。これが功を奏してNHK杯で優勝を勝ち取ったようにも見えますし、4大陸でも結果を出しました。3連続で+3.111はものすごいことですし+1.556もなかなか難しいです。これだけの評価を受けられるなら冒頭に持ってきた価値が非常にあったように感じます。

 

○ルッツで始まる要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Cranberry International SP 2 3Lz   5.90   1.33 7.23 2.333
Cranberry International FS 2 3Lz+2A+2T+SEQ   10.50   1.03 11.53 1.667
Cranberry International FS 7 3Lz F 6.49 x -2.95 3.54 -5.000
Lombardia Trophy SP 2 3Lz   5.90   -0.47 5.43 -0.571
Lombardia Trophy FS 2 1Lz+2A+2T+SEQ   5.20   0.00 5.20 0.143
Lombardia Trophy FS 7 3Lz   6.49 x 0.35 6.84 0.714
Finlandia Trophy SP 1 3Lz+3T< 9.26   -2.07 7.19 -3.500
Finlandia Trophy FS 2 3Lz! ! 5.90   -1.97 3.93 -3.500
Finlandia Trophy FS 7 3Lz!+2A+2T+SEQ ! 11.55 x -0.59 10.96 -1.000
NHK Trophy SP 1 3Lz!+3T< ! 9.26   -1.52 7.74 -2.667
NHK Trophy FS 2 3Lz!+2T ! 7.20   0.34 7.54 0.556
NHK Trophy FS 7 3Lz   6.49 X 0.84 7.33 1.444
Four Continents SP 1 3Lz!+3T ! 10.10   0.08 10.18 0.111
Four Continents FS 2 3Lz!+2T ! 7.20   -0.08 7.12 -0.111
Four Continents FS 7 3Lze e 5.19 x -1.89 3.30 -4.000

ジーグラー選手はルッツが課題になっています。ショートフリーで3回飛ぶのですが、転倒こそ1度だけですが、エッジの判定で苦しむことが多い。フィンランディア杯以降ではほぼ!以上取られています。4大陸選手権ではここでeを取られたことが表彰台に乗れない致命傷となりました。

ルッツのエッジの改善だけで1試合3本あると3点4点変わってきますので、今後のポイントになるのかと思われます。

 

ジュニア時代はほぼ無名だったところから、ここ2シーズンで一気に上がってきて200点スコアラーの仲間入り。グランプリシリーズのタイトルも獲りました。

今期は枠が最初は無かったグランプリシリーズも、おそらく来期は今期の実績から2枠最初から入るでしょう。そして、来期のアメリカはワールド3枠があります。アメリカ勢の中で今季のシーズンベストは2位。世界選手権デビューから、オリンピックへ。更なる飛躍のシーズンが待っています。