お久しぶりのアジアンオープンフィギュア

開催時期が毎年動いて、いつやるんだろう? という感覚がなかなかついてこないアジアンオープンフィギュア。今年は9月頭、それも2日から5日という平日期間に行われました。一時期はチャレンジャーシリーズにもなっていましたが最近は普通のB級大会扱い。今期もそうなっています。

日本からの派遣はコロナからの回復シーズンだった21年以来3年ぶりです。以前はジュニアやノービスの派遣も見られましたが、今期はシニアだけとなりました。

 

○女子シングルシニア

Pl Name Nation Total SP FS
1 Xiangyi AN CHN 187.45 64.61 122.84
2 Mako YAMASHITA JPN 186.13 54.69 131.44
3 Mai MIHARA JPN 177.34 61.49 115.85
4 Seoyoung KIM KOR 157.60 53.97 103.63
5 Jiaying CHENG CHN 157.53 56.51 101.02
6 Siwoo SONG KOR 153.83 58.06 95.77
7 Hiu Yau CHOW HKG 109.05 39.98 69.07
8 Ashley COLLIVER AUS 87.66 30.57 57.09
9 Afrina DIYANAH MAS 76.35 24.34 52.01
10 Charmaine Skye CHUA PHI 76.18 23.02 53.16
11 Fayrena Azlia KEISHA INA 74.19 25.77 48.42
12 Tasya PUTRI INA 70.40 22.09 48.31

中国のアンシャンイー選手が2連覇を果たしました。187.45は本人の国際大会最高スコアです。昨季はグランプリシリーズ2試合に出て9位と11位と結果を残せませんでした。今期は今のところ中国杯のみのエントリー。この勢いで中国勢として久しぶりにグランプリでも上位進出を目指したいところかと思います。

2位には山下真瑚選手が入りました。ショートはコンビネーション転倒で出遅れましたがフリーは1位。国際大会初優勝は逃しましたが、1つ結果を残しました。

三原舞依選手は3位。昨年のケガが心配でしたが、この時期のB級大会にわざわざ出てきた、ということでそこはある程度心配ないんだろうな、と感じ取れたのは良かったです。結果はあまりよくなかったですが、これまでの実績、ランキングなど考えると、ただの調整試合で結果は二の次という立場ですし問題は無いんだろうと思われます

 

○山下真瑚選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T   10.10   1.38 11.48 2.400
2 3F! ! 5.30   0.00 5.30 0.200
3 3Lo   4.90   1.31 6.21 2.400
4 2A   3.30   0.33 3.63 1.200
5 FCSp3   2.80   0.28 3.08 0.800
6 SSp4   2.50   0.50 3.00 1.800
7 3Lz+3Tq q 11.11 x -0.39 10.72 -0.600
8 2A+2T+2T   6.49 x 0.33 6.82 1.200
9 3S   4.73 x 0.86 5.59 2.200
10 ChSq1   3.00   1.83 4.83 3.600
11 CCoSp4   3.50   0.58 4.08 1.600
12 StSq4   3.90   1.17 5.07 2.800
  TES   61.63   8.18 69.81  

そうそう、山下真瑚選手と言えばこのルッツからの3-3ですよ、という冒頭のコンビネーションを決めて波に乗ってほぼノーミスなフリーでした。国際大会では5年9カ月ぶりのフリー130点台です。昨季のタリンクホステルズカップのスコアでは微妙に足りていなかった今期の世界選手権のミニマムスコアをこの試合で確保しました。

2回飛ぶジャンプはルッツとトーループ。3Lz+3Tの2回使いですが、2つ目はqがついてわずかにGOEマイナスでした。スピンが1つレベル3なので、これをレベル4にすると62.03の基礎点は作れます。構成的には3Lz+3Tではなく2A+3T+2Tにしても合計基礎点変わらずに少し楽が出来そうなのですが、3Lz+3Tは個性のアピールなのかと思います。

山下選手はグランプリエントリーがありません。なので国際大会に派遣するならここではなくてチャレンジャーシリーズにしてISUのシーズンベストに登録されてほしいところでした。そうすれば来期につながる可能性もあったので残念です。ただ、ここで三原選手に直接対決で勝ちました。これで2試合平均で上位、という4大陸やアジア大会の評価基準の1つでやや上位に来やすくなりました。また、今期はワールドユニバーシティゲームズもあり、大学4年生の山下選手は権利はあります。この試合のスコアも選考対象となっていて、186.13は上位6人に入るか微妙なところですが可能性は残しました。

次戦は、おそらく中部選手権となるかと思われます。

 

三原舞依選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F   5.30   -0.53 4.77 -1.000
2 3Lz!q+2T !|q 7.20   -1.77 5.43 -3.000
3 3S   4.30   0.86 5.16 2.200
4 2A   3.30   0.66 3.96 2.000
5 CCoSp4   3.50   0.82 4.32 2.200
6 ChSq1   3.00   1.17 4.17 2.200
7 FSSp4   3.00   0.80 3.80 2.600
8 3F+2T+2Lo   9.13 x -0.18 8.95 -0.600
9 2Lz!+1A+SEQ ! 3.52 x -0.21 3.31 -1.000
10 StSq3   3.30   0.77 4.07 2.400
11 3Loq q 5.39 x -0.65 4.74 -1.400
12 FCCoSp4   3.50   0.93 4.43 2.600
  TES   54.44   2.67 57.11  

三原選手はジャンプがすっきり決まらずスコアを伸ばせませんでした。2回飛ぶジャンプはルッツとフリップだったはずですが、2回目のルッツが2回転になっています。セカンド3回転が入らず3-3がありませんでした。シークエンスも1回転半になっていて基礎点が伸びていません。

昨季はケガもあってスコアを伸ばせておらず、今期の世界選手権のミニマムがまだ取れていない、という状態だったのですが、このフリーでも昨季のショートとの合計でミニマムは確保しました。

今期のフリーは定番曲の恋のアランフェス。まだジャンプ決まらず完成形ではないですが、雰囲気はさすが、かなり出ていました。完成形がどこで見られるか? グランプリシリーズは3戦目のフランスからですので、まずその前に次戦は近畿選手権になるはずです。

 

○男子シングルシニア

Pl Name Nation Total SP FS
1 Sihyeong LEE KOR 234.08 86.49 147.59
2 Daiwei DAI CHN 231.73 81.37 150.36
3 Nozomu YOSHIOKA JPN 218.88 69.42 149.46
4 Hyungyeom KIM KOR 218.01 77.36 140.65
5 Tatsuya TSUBOI JPN 204.98 82.37 122.61
6 Donovan CARRILLO MEX 204.42 65.96 138.46
7 Semen DANILIANTS ARM 201.97 79.55 122.42
8 Yu-Hsiang LI TPE 195.04 69.03 126.01
9 Dias JIRENBAYEV KAZ 186.27 68.43 117.84
10 Douglas GERBER AUS 157.62 62.45 95.17
11 Paolo BORROMEO PHI 143.67 52.27 91.40
12 Lap Kan Lincoln YUEN HKG 141.03 50.36 90.67
13 Ze Zeng FANG MAS 129.88 53.65 76.23
14 Kwun Hung LEUNG HKG 119.14 41.84 77.30
15 Heung Lai Jarke ZHAO HKG 103.31 34.41 68.90

男子は北京オリンピックにも出場経験のある韓国のイシヒョン選手が勝ちました。国際大会初優勝になります。ショートフリー共に4回転トーループを決めて逃げ切り優勝です。イシヒョン選手は今期は今のところグランプリシリーズのエントリーはありません。

2位には昨季優勝のダイダイウェイ選手が入りました。順位は昨季より下がりましたがスコアは初めての200点超えと大幅躍進。ショートフリーで初めてトリプルアクセル3本をすべてGOEプラスで決めてきました。グランプリシリーズは中国杯にエントリー。昨季は4大陸選手権20位という選手なのですが、この滑りができると4大陸で上位に絡んできそうです。

3位には日本から吉岡希選手が入っています。ショートうまくいきませんでしたがフリーで巻き返しました。

4位は韓国のキムヒョンギョム選手。昨季ユースオリンピックを勝った期待の18歳。4回転はショートフリー共に降りたのですが、トリプルアクセルからのコンビネーションを転倒。期待ほどスコアは伸びず表彰台に届かない形になりました。今期は中国杯にエントリーがあります。

壷井達也選手は5位でした。ショート2位に付けたのですがフリーで崩れました。

 

○吉岡希選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4T+3T   13.70   -2.85 10.85 -3.000
2 4T   9.50   0.32 9.82 0.400
3 3Lz   5.90   0.79 6.69 1.200
4 3A   8.00   1.87 9.87 2.400
5 FSSp4   3.00   0.50 3.50 1.600
6 3A+1Eu+3S   14.08 x -2.40 11.68 -2.800
7 3Lo   5.39 x 0.65 6.04 1.400
8 3F!+2A+SEQ ! 9.46 x -1.59 7.87 -3.000
9 ChSq1   3.00   0.50 3.50 1.000
10 StSq2   2.60   0.52 3.12 2.000
11 CCSp2   2.30   0.08 2.38 0.600
12 CCoSp4   3.50   -0.12 3.38 -0.200
  TES   80.43   -1.73 78.70  

4回転2本降りましたがGOEは稼げず。後半のコンビネーション2つもGOEマイナスということで、派手なミスはでなかったのですが期待よりスコアは伸びなかった形です。順位としてはフリーで巻き返したのですが、本人比ではそれほど満足のいく出来ではなかったと思われます。

2回飛ぶジャンプは4回転トーループトリプルアクセル。2種類目の4回転が欲しい時期ですが実装には至っていないようです。今期は国内戦もまだ出ておらずこれが初戦。まだまだ調整段階といったところでしょうか。この後は東京選手権を挟んでスケートアメリカに向かうスケジュールになるはずです。グランプリシリーズが今期は1戦のみ。来期にチャンスを繋ぐには大事な試合になるはずです。

 

○壷井達也選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4T< F< 7.60   -3.80 3.80 -5.000
2 2S+2T   2.60   -0.13 2.47 -1.200
3 4S< F< 7.76   -3.88 3.88 -5.000
4 FSSp3   2.60   0.35 2.95 1.200
5 StSq1   1.80   0.12 1.92 0.800
6 3A F 8.00   -4.00 4.00 -5.000
7 3A+2T   10.23 x 1.33 11.56 1.400
8 3Lz!+3T ! 11.11 x -0.59 10.52 -0.800
9 CCoSp4   3.50   0.58 4.08 1.400
10 ChSq1   3.00   0.67 3.67 1.200
11 3F   5.83 x 0.00 5.83 0.000
12 FCCoSp3   3.00   0.10 3.10 0.400
  TES   67.03   -9.25 57.78  

ショートは良かったのですがフリーは3転倒と大崩れしてしまいました。今期から投入の4回転トーループがアンダーローテーションで転倒。そこから標準装備だった4回転サルコウも2回転になり、次はアンダーローテーションで転倒。ことごとくうまくいきませんでした。サマーカップでも4回転トーループは入れていましたが、そこでもすべて転倒。まだ回転足りて基礎点満額もらったこともありません。。細切れ映像しか見ることが出来ていないのですが、この未完成の4回転トーループの投入によって無理が懸かって全体が崩れてしまっているようにも感じます。

一方で、この先うえで勝負するには2種類目の4回転が必要なのも確か。この8月9月に全体のバランスが崩れても実戦投入していく必要性はあったのだろうと思います。

今期グランプリの枠は無かったのですがNHK杯の地元枠が回ってきました。NHK杯までは2カ月あります。そこまでに4回転トーループを完成させられるか。あるいはいったん横に置いて手持ちのカードで勝負するか。来期につながるISUシーズンベストを得るためにどういう選択をするかも注目です。

スケジュール的にはNHK杯の前に、近畿選手権があります。西日本選手権はスケジュール免除がもらえるはずですが、丸被りではないので出場可能。2戦平均のスコアを上げて各種選考ラインに入っていくには、西日本選手権を使いたいのでそこをどうするかも気になるところです。

 

アジアンオープンフィギュア自体がチャレンジャーシリーズであることが理想的だったのですが、最近は普通のB級大会になっています。今回日本から派遣された4選手は、三原選手以外はISUのシーズンベストに公認される試合への出場が少なく、9月10月に派遣されるならチャレンジャーシリーズの方へ出たいところでした。全日本の順位などで上の方が優先的にチャレンジャーシリーズに回る、という形かもしれませんが、上位の選手の方がむしろチャレンジャーシリーズもB級大会も、別にどちらでも大差ないという立場になります。結果的に男子の2人はスコア伸びませんでしたが、それでもチャンスとしてはISU公認スコアが出る試合を回してあげたかったなと思います。

 

シニアカテゴリーでは次週、チャレンジャーシリーズのロンバルディア杯があります。男子は鍵山優真選手、三浦佳生選手、佐藤駿選手と3人そろい踏み。この3人で国際大会は初ではないでしょうか。女子は坂本花織選手に渡辺倫果選手が出場します。ペアの三浦璃来選手、木原龍一選手もエントリーです。