23-24 ルナヘンドリックス

1999年11月5日生まれ

シニア8シーズン目

シーズン獲得賞金:$85,000

世界ランキング:3位

シーズンランキング:5位

シーズンベストスコア 221.28(2位) スケートアメリカ

ショートプログラムシーズンベスト 76.98 世界選手権

フリーシーズンベスト 145.36 スケートアメリカ

スピンレベル4率 23/33 = 69.7%

ステップレベル4率 7/11 = 63.6%

スピンオールレベル4 2/5

スピンステップオールレベル4 2/5

ジャンプ回転不足率 7/57 = 12.3%

ジャンプ回転不足なし 1/5

スピンステップオールレベル4ジャンプ回転不足なし 0/5

 

○23-24シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
Others Japan Open 2 140.31   140.31
GP Skate America 1 221.28 75.92 145.36
GP Cup of China 3 201.49 70.65 130.84
GPF Grand Prix Final 2 203.36 73.25 130.11
EC European Championships 1 213.25 74.66 138.59
WC World Championships 4 200.25 76.98 123.27

昨季はグランプリファイナル3位、ヨーロッパ選手権2位、世界選手権3位。主要大会すべて表彰台に乗ったもののあと一歩頂点には届かない。ということで今シーズンこそは! というシーズンになっていました。

今期はチャレンジャーシリーズには出場せず、初戦はジャパンオープンとなりました。参考記録ですが初戦からフリー140点台を出してきます。

グランプリシリーズは初戦のスケートアメリカから。シードは他にレビト選手がいて、それ以外もグレン選手に千葉百音選手、吉田陽菜選手、さらにエストニアのペトロキナ選手もいるという、今振り返って見ると豪華メンバーな試合。そんな中で最終滑走で出てきて75.92 2位と4.47差。フリーの基礎点低いヘンドリックス選手なので安全圏ではないですが優位に試合を進めます。フリーも最終滑走。優勝するには132.24が必要という中でほぼノーミスの滑りで145.36 グランプリ初戦からトータル221.28と220点台に乗せて豪華メンバーの中圧勝。グランプリシリーズ2勝目を上げます。

次はグランプリ4戦目の中国杯です。ここには吉田陽菜選手、渡辺倫果選手といったトリプルアクセル勢、韓国からキムイェリム選手、エストニアのペトロキナ選手といったところがいます。やはりショートから最終滑走。今回はアクセルが1回転半になって零点扱いに。それでも70.65が出て2位に5.56差をつけて首位で折り返します。フリーは最終滑走で133.33出れば優勝ということで十分可能な領域だったのですが、アンダーローテーションが2つ付いて、スピンステップのレベルも獲り切れず。130.84でトータル201.49 2.48差で3位。吉田陽菜選手のグランプリ初優勝を許す形になりましたが、ファイナル進出を決めました。

翌週にナショナルがあったのですが体調が優れないとのことで欠場。次戦はグランプリファイナルとなります。ファイナルですので当然豪華メンバー。坂本選手、レビト選手と言ったシード組との今季初対戦となります。この試合は6人中の4番滑走。冒頭のフリップこそオーバーターンになったものの、あとはミスなく滑り73.25 2人残して首位に立ちますが、最終滑走坂本選手が77.35で上へ行きます。基礎点で劣るのでフリーでの逆転はなかなか苦しいのですが、それでもハイスコアを出してプレッシャーを掛けたい5番滑走。体調不良にケガもあってショートは持ちこたえてもフリーの長さは厳しかったでしょうか。序盤よかったものの後半に入ってルッツが2回転に。次の3連続もフリップにqが付いて加点が得られず。技術点が61.73止まりでフリーは130.11 トータル203.36は際どく0.20差で1人残して首位には立ちましたが、最終滑走坂本花織選手ははるかかなたのスコアを出していき結局2位。前年よりも1つ順位は上げましたが栄冠をつかむことは出来ませんでした。

 

年が明けて次はヨーロッパ選手権です。昨季は2位。今年こそ、という試合で今年も当然大本命。ショートは2人残して登場。軽くqが1つ付いたくらいでしっかり滑って74.66 2位に4.96差をつけて首位に立ちます。ヨーロッパ選手権はしっかり抽選をするので首位でも最終滑走にならないフリー。最終グループ4番滑走。今期こそ、というプレッシャーのかかる局面でしたが、後半で3連続が付けられなかったくらいであとはミスなく滑りました。フリーは138.59 トータル213.25で首位に立って残り2人を待ちます。直後に滑ったグバノワ選手も自己ベストを出して迫ってきますが届かず。ヘンドリックス選手がヨーロッパ選手権初優勝。念願のチャンピオンシップのタイトルを獲得しました。

 

さらにもう1つ、と目指して世界選手権へ。ショートプログラムは最後から2番目の登場。直前にレビト選手がいい演技をして場が温まっていました。このショートが今季最高の演技。見事なパーフェクト演技で全要素全ジャッジプラス評価、76.98のパーソナルベストをマーク。2位に3.25差をつけて首位に立ちます。フリーは最後から2番目。先に滑った坂本選手がトータル222.96まで出しているのでその上へ出るには145.99が必要。パーソナルベストは145.53 シーズンベストも145.36を持っています。ノーミス出来れば出せる水準ですが、ここまでの滑走で見ると割と厳しめ判定側かなあ、という印象の試合になっていました。冒頭のコンビネーションが3-2になったのは後半3-3にする上積みを狙ったのか、セカンドに3回転入れられなかったのか。微妙な雰囲気で本心はわからなかったですが前半はしっかり滑っていきます。今期は後半のジャンプでやや苦しんでいる印象でしたが、結局この試合でもそれが出てしまいました。ルッツが2回転になったところで優勝が手元からこぼれていき、コンビネーションのセカンドがダウングレードなところで2位も遠ざかり。次のフリップで転倒したところで表彰台から落ちた形になりました。フリーは伸びずに123.27 トータルは200.25 最終的に4位ということになりました。

 

○要素別スコア

Event Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Japan Open 140.31 69.31 71.00 41.84 5.24 12.89 9.34
Skate America 221.28 112.34 108.94 62.57 8.40 26.11 15.26
Cup of China 201.49 95.69 105.80 57.19 1.60 22.81 14.09
Grand Prix Final 203.36 100.07 103.29 59.31 4.30 22.66 13.80
European Championships 213.25 107.39 105.86 60.45 5.15 26.19 15.60
World Championships 200.25 96.07 105.18 53.42 3.89 24.38 14.38

今期は5試合全試合で200点超えとなりました。スケートアメリカの221.28が最高。今シーズン全選手の中で2位です。

技術点はスケートアメリカで112.34まで出しました。世界選手権は残念な96.07です。技術点のイメージの選手ではないですが、112.34は全選手中5位にあたるスコアでした。

PCSはすべて100点台。スケートアメリカの108.94が最高で坂本選手に次ぐ2位のスコアです。

ジャンプの基礎点は60点前後でこれもスケートアメリカが最高値。62.57ありました。ただ、流石にこれはそれほど高いとは言えません。トリプルアクセル以上のジャンプがあると70点台の基礎点になる選手が何人もいますし、高難度ジャンプ無しでも67点台までは出ます。坂本選手で65.40の試合がありますので3点近くビハインドがあります。

ジャンプの加点もスケートアメリカの8.40が最高です。マイナスになった試合はありませんが、それほど伸びていない試合も多いです。この8.40は今シーズンの全選手の中で7位相当、ISU公認のみなら6位にあたります。

スピンは26点台を普通に叩きだしてきますが22点台と伸びない試合もありました。ヨーロッパ選手権の26.19が最高。全体2位の高評価です。

ステップ系要素も15点台を出す力があり、ヨーロッパ選手権の15.60が最高でした。これが今シーズンの全選手中最高評価になります。

ジャンプ・・・、ジャンプさえ決められれば・・、というヘンドリックス選手です。

 

○要素別偏差値

Event Total J Base J GOE Spin Step PCS
Skate America 73.10 61.97 72.83 73.59 70.15 74.15
Cup of China 65.81 56.22 58.89 60.28 64.41 71.57
Grand Prix Final 66.50 58.48 64.43 59.68 62.99 69.50
European Championships 70.14 59.70 66.17 73.91 71.81 71.61
World Championships 65.36 52.19 63.59 66.61 65.83 71.05

偏差値で見るとトータルスコアは60台半ば以上は必ず出ます。スケートアメリカは70台中盤に近いところまで来ました。

ジャンプの基礎点は良い時で60台に乗りますが、5試合中4試合は60に届かず。平凡な範疇になります。加点の方は60台が標準でいい時に70を超える力があります。

スピンはばらつきありますがいい時は70台をしっかり出してきます。

ステップも同様で70台の力があり、PCSは70台標準です。

やはりジャンプの評価が他の要素と比べてはっきり落ちますが、他の要素は超一流という水準になっています。

 

 

 

ルナヘンドリックス 23-24シーズン要素別偏差値

レーダーチャートで表すと右側が凹む形。ジャンプがどうしても凹みます。ただ、下も左下もばらつきが大きいです。スピンのレベル4率が60%台とトップ選手の中では意外と低いです。昨季は95.6%のスピンレベル4率でしたので今期著しく悪化していました。その辺がこのばらつきに出ていそうです。

 

●シーズン最高の基礎点構成

ヨーロッパ選手権 ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F   5.30   1.44 6.74 2.778
2 2A   3.30   0.85 4.15 2.444
3 CCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.667
4 3Lzq+3T q 11.11 x -0.51 10.60 -0.889
5 StSq4   3.90   1.56 5.46 3.889
6 FCSp4   3.20   1.01 4.21 3.111
7 LSp4   2.70   1.27 3.97 4.667
  TES   33.01   6.92 39.93  

ショートプログラムの最高基礎点はヨーロッパ選手権の33.01でした。今期全選手中3位、ISU公認大会だけで見れば2位にあたる高い基礎点です。基礎点が高くなる印象の無い選手ですが、ショートはルッツとフリップ飛べれば基礎点はしっかり確保できます。1.1倍に3-3で持ってきてスピンステップオールレベル4 これより上を出すにはトリプルアクセル投入か、セカンドループを持ってくるしかありません。

フリーは基礎点で劣るので、ショートでこの構成をしっかりこなしてリードを確保したい、という選手になります。

 

スケートアメリカ フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3Tq q 10.10   -0.08 10.02 -0.111
2 2A   3.30   0.75 4.05 2.333
3 3F   5.30   1.44 6.74 2.667
4 2A   3.30   0.85 4.15 2.556
5 CCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.333
6 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.000
7 3Lz+2T   7.92 x 1.35 9.27 2.333
8 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.68 9.81 1.444
9 3S   4.73 x 0.92 5.65 2.111
10 FCCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
11 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.333
12 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.667
  TES   60.38   12.04 72.42  

フリーは最高基礎点が60.38でした。このスコアは本人がもくろんでいる構成をすべてしっかりこなして出したスコアです。

2回飛ぶジャンプはルッツとフリップ。高い基礎点が出そうな組み合わせなのですが、トリプルループが構成に入っていない6トリプル構成です。そのため基礎点はそれほど高くなっていません。トリプルアクセルを入れると60点台後半で70点近いところまで出ますし、さらに4回転まで入ると70点を超えてくるので基礎点で10点ほどのビハインドを負うことになります。高難度ジャンプが無くても例えばキムチェヨン選手は64.68まで出してきますので、基礎点で4点ほどの差がついてきます。坂本花織選手で62.65がありますので2点以上の差が付きます。もう少し欲しいところだと思いますが、ループなしだとこれ以上基礎点を上げるのはセカンド3回転を後半に持ってくる、くらいしかありません。

基礎点ビハインドがあるのでノーミスしないといけない。他の選手とは出来栄え勝負でいけるけれど、坂本選手と出来栄え勝負するとなかなか苦しい中で基礎点もビハインドがある。出来栄えを上げていくか、ループを習得するか。前者を選んでいるわけですが、どうしてもノーミス勝負すると苦しい。あと2シーズン、次のオリンピックまでどうしていくでしょうか。

 

○平均GOE3.800以上

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
European Championships SP 7 LSp4   2.70   1.27 3.97 4.667
Skate America SP 7 LSp4   2.70   1.23 3.93 4.556
European Championships FS 12 LSp4   2.70   1.16 3.86 4.333
World Championships SP 5 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.222
Japan Open FS 12 LSp3   2.40   1.04 3.44 4.200
Skate America SP 5 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
World Championships FS 12 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
World Championships SP 3 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
European Championships FS 5 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
European Championships SP 5 StSq4   3.90   1.56 5.46 3.889
Grand Prix Final SP 5 StSq4   3.90   1.56 5.46 3.889
Cup of China SP 7 LSp3   2.40   0.93 3.33 3.889
Japan Open FS 5 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 3.800
Cup of China SP 3 CCoSp3   3.00   1.11 4.11 3.778
Skate America SP 3 CCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.778
World Championships SP 7 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.778
European Championships SP 3 CCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.667
Cup of China SP 5 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.667
European Championships FS 6 ChSq1   3.00   1.79 4.79 3.667
European Championships FS 11 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.667
Skate America FS 12 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.667
Skate America SP 6 FCSp4   3.20   1.19 4.39 3.667
Japan Open FS 11 StSq3   3.30   1.21 4.51 3.600

ヘンドリックス選手が高評価を得ている要素はスピンとステップです。コレオも1つ入っていますが傾向としては中盤で入ってくるコレオより演技終盤に入るステップの方が評価が高くなっています。

ジャンプは1つも高評価リストに乗ってきません。ジャンプの最高評価は平均GOE+3.111のショートプログラム冒頭のフリップというのが2回ありました。

ヨーロッパ選手権のレイバックスピンでもらった+4.667という評価は、今シーズンの全レイバックスピンの中の最高評価でした。

 

○3回転-3回転

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Japan Open FS 1 3Lz+3T< 9.26   -0.39 8.87 -0.600
Skate America SP 4 3Lz+3T< 10.19 x -0.08 10.11 -0.111
Skate America FS 1 3Lz+3Tq q 10.10   -0.08 10.02 -0.111
Cup of China SP 4 3Lz+3Tq q 11.11 x 0.08 11.19 0.000
Cup of China FS 1 3Lz+3T< 9.26   -1.94 7.32 -3.222
Grand Prix Final SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.52 12.63 2.444
Grand Prix Final FS 1 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.444
European Championships SP 4 3Lzq+3T q 11.11 x -0.51 10.60 -0.889
European Championships FS 1 3Lz+3T   10.10   1.26 11.36 2.111
World Championships SP 1 3F+3T   9.50   1.44 10.94 2.556
World Championships FS 7 2Lz+3T<< <<  3.74 x -0.66 3.08 -3.222

3回転-3回転はショートは1.1倍のところで、フリーは冒頭でルッツから飛んできます。世界選手権だけ安全策だったのでしょうか、ショートでフリップから飛んだものがあります。

今シーズンは11回構成にいれて、1つ目が2回転になったのが1つ、セカンドのアンダーローテーションが3つ、qが3つでクリアに飛べたのは4回でした。成功率はそれほど高くないですが、シーズン中盤以降、大事な試合では決まっていました。それだけに世界選手権のフリーは残念でした。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Japan Open FS 8 3S+2T+2Lo   8.03 X 0.86 8.89 1.800
Skate America FS 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.68 9.81 1.444
Cup of China FS 8 3F<+2T+2Loq 7.96 x -1.21 6.75 -2.889
Grand Prix Final FS 8 3Fq+2T+2Lo q 9.13 x -1.44 7.69 -2.778
World Championships FS 9 3Sq+2T+2Lo q 8.03 x -0.80 7.23 -1.778

3連続ジャンプは今シーズンは8番目の要素として入れています。基本はフリップからですが、世界選手権ではそこで入らずに最後のサルコウからリカバリーで入れていました。

これが6試合で5回入ってGOEプラスは2回。大事な方の試合3つで決まらなかったという形になっています。

 

○ステップの要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Japan Open FS 11 StSq3   3.30   1.21 4.51 3.600
Skate America SP 5 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
Skate America FS 11 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.333
Cup of China SP 5 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.667
Cup of China FS 11 StSq3   3.30   1.08 4.38 3.222
Grand Prix Final SP 5 StSq4   3.90   1.56 5.46 3.889
Grand Prix Final FS 11 StSq3   3.30   0.75 4.05 2.222
European Championships SP 5 StSq4   3.90   1.56 5.46 3.889
European Championships FS 11 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.667
World Championships SP 5 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.222
World Championships FS 11 StSq3   3.30   0.99 4.29 3.000

ステップは非常に高評価の選手です。世界選手権ショートの+4.222は今季の全体の最高評価ステップでした。他の選手の最高が+3.889ですので、それ以上の評価をヘンドリックス選手は4回も今期受けているということになります。ステップの評価はとにかく高いです。昨季もステップの最高評価はヘンドリックス選手。ステップ2連覇、なんてタイトルはありませんが、今期も素晴らしいステップでした。

 

今期、ついに、ヨーロッパ選手権を制しました。ジュニア時代は全く無名。ジュニアグランプリシリーズの表彰台経験もなければ、世界ジュニアの出場経験もありません。そんなところから24歳にしてついにチャンピオンシップを制覇。花を咲かせることが出来ました。

まだ、もう1つ上、世界選手権、さらに上、オリンピックがあります。来期はグランプリファイナル、世界選手権、坂本花織選手を破って、タイトルを獲りたいというシーズンになるのだろうと思われます。

 

23-24 坂本花織

2000年4月9日生まれ

シニア7シーズン目

シーズン獲得賞金:$125,000

世界ランキング:1位

シーズンランキング:1位

シーズンベストスコア 226.13(1位) スケートカナダ

ショートプログラムシーズンベスト 77.35 グランプリファイナル

フリーシーズンベスト 151.00 スケートカナダ

スピンレベル4率 54/63 = 85.7%(国際大会:35/39 = 89.7%)

ステップレベル4率 12/21 = 57.1%(国際大会:8/13 = 61.5%)

スピンオールレベル4 5/10 (国際大会:4/6)

スピンステップオールレベル4 1/10(国際大会1/5)

ジャンプ回転不足率 5/107 = 4.67%(国際大会:3/67 = 4.48%)

ジャンプ回転不足なし 7/10(国際大会:4/6)

スピンステップオールレベル4ジャンプ回転不足なし 1/10(国際大会:1/5)

 

○23-24シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
DL げんさんサマーカップ 3 187.62 67.28 120.34
CS Autumn Classic 1 203.20 75.62 127.58
Others Japan Open 1 149.59   149.59
DL 全兵庫選手権 1 222.39 78.15 144.24
GP Skate Canada 1 226.13 75.13 151.00
GP Grand Prix Espoo 1 205.21 69.69 135.52
GPF Grand Prix Final 1 225.70 77.35 148.35
NC 全日本選手権 1 233.12 78.78 154.34
NG 国民体育大会 1 225.02 79.66 145.36
IC Challenge Cup 1 212.43 67.76 144.67
WC World Championships 1 222.96 73.29 149.67

坂本選手は世界選手権3連覇のかかるシーズンでした。

初戦はげんさんサマーカップから出てきます。187.62で3位。吉田陽菜選手と住吉りをん選手に敗れました。あれ? という感じではありますが、まあ初戦です。

国際大会は9月に入ってチャレンジャーシリーズのオータムクラシックから。ここでは200点に乗せた203.20 周りにスコアが伸びる選手がいなかったこともあって圧勝です。ちょっと意外ですが、チャレンジャーシリーズとしては2017年のアジアンオープンフィギュア以来6年ぶりの優勝。いつもはあまりシーズン序盤から点が伸びる選手ではないのですが、今期は早い仕上がりでした。

 

ジャパンオープンをこなして、翌週には地元兵庫のローカル大会。参考記録すぎますが10月時点で早くも220点台を出します。10月3戦目でスケートカナダです。こんな連戦して大丈夫?? とも思われますが、この時期の連戦は坂本選手にはよくあるスケジューリングです。キムチェヨン選手、渡辺倫果選手、松生理乃選手あたりが相手となる試合。ショートから最終滑走で出てきて75.13 ルッツでアテンションついたりと完ぺきではないのですがこのスコア。5点近いリードを持ってのフリーは全要素全ジャッジプラス2以上で151.00 結果的に今シーズンのフリーのベストとなるスコアを出して圧勝。グランプリ通算3勝目となりました。

2戦目はレギュラー化してきたフィンランドエスポー。表彰台でファイナル確定ですが、そうじゃなくて連勝したいというところ。また今回もキムチェヨン選手がいて、他に住吉選手やアンバーグレン選手がいます。そういった力関係の中でショートはフリップが2回転になってセカンドはちゃんと3回転を付けノーバリューは回避。69.69とスコア伸びませんでしたがそれでも首位に立ちます。1.04差とはいえショートから首位に立てばフリーは強い。やや辛め判定の試合の中で坂本選手もルッツでeが付き、サルコウはアンダーローテーション取られましたがそれでも135.52出してトータル205.21を出せば2位に15点差つけての勝利。グランプリシリーズ連勝で通算4勝目。ファイナル進出を問題なく決めました。

 

実はまだ勝ったことのないグランプリファイナル。何なら表彰台にも乗ったことがありません。ジュニアグランプリファイナルも世界ジュニアも表彰台に乗っていますので、主要大会で持っていないメダルはこれだけです(ユースオリンピックも6位でメダル無いけど)。

ここでもまたショートから最終滑走で出てきて全要素全ジャッジ+2以上、77.35というシーズンベストなだけでなく、結果的に今シーズン全体のショートの最高スコアを出してトップに立ちます。ただ、ショート1位なのまでは昨季と同じ。フリーで崩れると昨年と同じ轍を踏むことになります。フリーはまたも最終滑走。優勝へのターゲットスコアは126.02 これは余裕のある試合展開になりました。中盤フリップでミスが出てコンビネーション入らなかったものの、最後のループに2Tを付けてリカバリー。148.35を出して結果的には20点以上の大差をつけて問題なく優勝。これでオリンピック以外のシニアのビッグタイトルを揃えたことになりました。

 

間1週おいて3連覇がかかる全日本選手権です。久しぶりに最終滑走でもなく最終グループ1番滑走で出てきます。強豪ぞろいの全日本。今季一番難易度が高い試合になる可能性もあったのですが、全要素全ジャッジプラス評価を得て78.78 2位に8.86の大差をつけており、意外と楽な展開に。フリーはやっぱり最終滑走に収まって優勝へのターゲットスコアは130.50 フリーはスピンでV2つ取られるといういまいちな部分こそありましたが、ジャッジの評価は全要素プラスで154.34まで出してトータル233.12 2位とは23.85差。問題なく3年連続4度目の全日本制覇を果たしました。

 

年が明けて1月は国体に登場。子供の喧嘩に親が出る状態で当然優勝。2月は調整試合チャレンジカップ。ここではショートでルッツが2回転になるミス。67.76では青木祐奈選手に上を行かれまさかの2位。これで久しぶりにフリーを最終滑走を避けることが出来ましたが終盤のループで転倒。ピリッとしない出来ながらも144.67は出してトータル212.43 今シーズン最小の3.06差。何とか逆転優勝は果たしました。

 

そして3連覇のかかる世界選手権。抽選したのにやっぱり最終滑走になる坂本選手。今シーズン、結局ショートは国際大会ではすべて最終滑走でした。レビト選手、イ・ヘイン選手が73点台、その上にヘンドリックス選手が76.98を出してきたところで登場。さすがに首位に立つにはノーミスが必要というところでしたがルッツで!をもらいました。コンビネーションも今一つ、耐えたジャンプで加点はあまりつかず。73.29で4位。これでフリーは最終滑走回避が確定。抽選で最終グループ3番目の登場と決まります。上位3人を残しての登場なのでターゲットスコアは見えません。冒頭ダブルアクセルはいつもの加点を引き出しますが、次のルッツはe判定。ショートのミスが頭に残っていたでしょうか。ただ、以降は文句のつけようのない滑り。149.67まで出してトータル222.96 首位に立って残り3人を待ちます。直後のレビト選手がいい滑りをしますが届かず2位。残り2人はスコアを伸ばせず、坂本選手の3連覇が決まりました。

 

○要素別スコア

Event Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
げんさんサマーカップ 187.62 90.88 98.74 58.73 2.97 19.59 9.59
Autumn Classic 203.20 96.73 106.47 52.29 7.13 23.90 13.41
Japan Open 149.59 77.26 72.33 45.62 10.16 11.58 9.90
全兵庫選手権 222.39 112.47 109.92 61.42 13.72 22.73 14.60
Skate Canada 226.13 117.52 108.61 65.27 13.07 23.68 15.50
Grand Prix Espoo 205.21 102.63 103.58 59.38 5.09 24.17 13.99
Grand Prix Final 225.70 116.20 109.50 65.40 11.02 24.37 15.41
全日本選手権 233.12 119.05 114.07 65.27 16.22 21.70 15.86
国民体育大会 225.02 112.36 112.66 60.65 12.58 24.77 14.36
Challenge Cup 212.43 108.55 104.88 59.37 9.88 24.30 15.00
World Championships 222.96 112.79 110.17 64.09 10.26 24.95 13.49

坂本選手は初戦のげんさんサマーカップこそ180点台でしたが他の試合はすべて200点超えです。国際大会の最低が203.20 国際大会での220点台が3試合ありました。全日本は230点台。他を寄せ付けない強さでした。

技術点は100点台から110点台。スケートカナダの117.52が最高です。今期全選手中2位にあたる技術点です。

PCSは100点台後半くらいまで普通に出して、世界選手権では110.17と今期の全選手中唯一の110点台です。国内参考ですが全日本では114.07という驚異的な評価を受けています。

ジャンプの基礎点は時折50点台に沈むこともありますが基本は60点台あります。グランプリファイナルの65.40が最高。それほど高くないと言えば高くないですが、トリプルアクセル以上のジャンプが無い場合、せいぜい67点台までしか出ませんので、それほど差は無いです。世界チャンピオンの坂本選手相手にリードを奪うにはトリプルアクセル以上のジャンプが欲しい、という構図にはなっています。

ジャンプの加点は二桁を普通に出してきます。最高はスケートカナダの13.07 この値は今季の全選手中2位でした。全日本で16.22もらっていますが、これなら全選手中1位相当ですが国内参考記録です。ジャンプの基礎点と加点を合わせたスコアではスケートカナダで78.34まで出していて、今シーズンの全選手中3位にあたります。シニアの中では1位。ジャンプで稼げないわけではないです。

スピンは24点台を出します。最高で世界選手権の24.95がありました。今期の全選手中、B級大会まで含めて8位にあたります。

ステップ系要素は15点台が普通に出てきます。スケートカナダで15.50がありました。これは今季の全選手中2位にあたります。

全体的に穴が無い。ジャンプの基礎点は低いですが加点で稼ぐのでジャンプのスコアが低いわけではないです。スコア的にはスピンが一番本人比で低い順位になってきます。坂本選手に勝つには高難度ジャンプを入れて基礎点でかなりの優位を築いたうえで、それをしっかり決めて逃げ切る、というのが一番わかりやすい形になるのだろうと思います。

 

○要素別偏差値

Event Total J Base J GOE Spin Step PCS
げんさんサマーカップ 60.71 57.86 61.70 47.30 42.35 65.75
Autumn Classic 66.44 50.98 70.23 64.68 61.08 72.12
全兵庫選手権 73.51 60.74 83.73 59.96 66.91 74.96
Skate Canada 74.89 64.85 82.40 63.79 71.32 73.88
Grand Prix Espoo 67.18 58.56 66.05 65.77 63.92 69.74
Grand Prix Final 74.73 64.99 78.20 66.57 70.88 74.61
全日本選手権 77.46 64.85 88.85 55.81 73.09 78.38
国民体育大会 74.48 59.91 81.39 68.19 65.74 77.22
Challenge Cup 69.84 58.55 75.86 66.29 68.87 70.81
World Championships 73.72 63.59 76.64 68.91 61.47 75.16

偏差値で見るとトータルスコアは普通に70を超えてきて70台中盤まで出します。

ジャンプの基礎点はやはりやや低めで60前後。基礎点満額得た高い時で60台中盤までです。

ジャンプの加点の方は70台は普通に出していていい時は80台まで達します。偏差値80超えというのは異常値扱いされるくらいの水準です。

スピンは60台が標準でいい時は60台後半まで出ます。

ステップ系要素は60台中盤は多くの場合あって、いい時は70台に乗せます。

PCSは70台。国内参考記録は70台後半まで出ますが、国際大会では75.16まででした。

やはり偏差値で見るとジャンプの基礎点が本人の中では低い側にあって、スピンもやや低い側。一方、ジャンプの加点は異常値レベルで高い、というのが見て取れます。

 

 

坂本花織選手の23-24シーズン要素別偏差値

レーダーチャートで表すとこうなります。右下に飛び出した形。ジャンプの加点がある種生命線です。ステップは、レベルが取れない試合も結構あることで少し凹んで見えることもあります。ステップのレベル4率は60%前後になっています。

 

●シーズン最高の基礎点構成

○グランプリファイナル ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   1.32 4.62 3.889
2 3Lz   5.90   1.77 7.67 2.889
3 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.000
4 3F+3T   10.45 x 1.59 12.04 3.111
5 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.111
6 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.778
7 CCoSp3   3.00   0.81 3.81 2.778
  TES   32.45   8.71 41.16  

ショートプログラムは32.45が最高基礎点でした。1.1倍にコンビネーションを入れていて基礎点を高めているのですが、最後のスピンがレベル3でした。オールレベル4を作れれば32.95まで基礎点を出せます。今シーズンはショートでそのノーミス基礎点を出した試合はありませんでした。

この32.45は今期の全選手の中で10位にあたる数値です。トリプルアクセル無しでもセカンドループで33.23まで出せますし、セカンドループもなしでも33.01までは基礎点でますので、32.45くらいならそれより上の基礎点の選手は普通にいます。ただ、トリプルアクセル組以外ならそれほど差は無いので出来栄え勝負になってきます。

基礎点をここから上げるのはスピンをオールレベル4にすること。それ以上は1.1倍のコンビネーションをルッツからにすることで0.06上げることは出来ますが、ルッツが得意ではない坂本選手にとっては現実的ではないと思います。トリプルアクセルを入れる気が無ければ、今以上に各要素の出来栄えを磨いていくこと、という道になるのだろうと思いますが、すでにすべての要素で+2以上、平均すると+3以上のGOEを得ているので、なかなか大変だろうと思います。

 

○グランプリファイナル フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   1.32 4.62 4.000
2 3Lz   5.90   1.77 7.67 3.111
3 3S   4.30   1.29 5.59 3.000
4 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
5 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.667
6 3F   5.30   -2.04 3.26 -3.889
7 FSSp4   3.00   0.69 3.69 2.333
8 3F+3T   10.45 x 1.59 12.04 3.000
9 2A+3T+2T   9.68 x 1.08 10.76 2.556
10 ChSq1   3.00   1.71 4.71 3.444
11 3Lo+2T   6.82 x 1.33 8.15 2.667
12 FCCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.222
  TES   62.65   12.39 75.04  

フリーの最高基礎点は62.65でした。これは本来の構成ではなく、1つ目のフリップでコンビネーションを入れるつもりが入らず、最後にリカバリーで付けたことで結果的に0.13想定より基礎点が上がりました。本来は62.52がベストの構成です。想定基礎点より上がっていますが、フリップのGOEが大きくマイナスですので結果オーライでもないです。実際、基礎点はこの試合が最高ですが、フリーのスコア、フリーの技術点は62.52が基礎点のスケートカナダでした。この62.65の基礎点で出した技術点75.04は今シーズン全選手中4位にあたります。これより上にいるのはすべて日本人選手というのもなかなか恐ろしい。スケートカナダで出した77.87なら全選手中3位にあたりました。

2回飛ぶジャンプはフリップとトーループ。これはここ数シーズン変わっていません。ジャンプの順番も昨シーズンと変わっておらず、スピンやステップとジャンプの順番がいくつか入れ替わっているというくらいです。

この62.65は今季のフリーとしては全選手中15位ですが、実際にはステップが1つ入らないジュニアの選手で、ステップを入れればこれより上に行く基礎点構成を持った選手、というのが他に何人もいます。

ここから基礎点を上げるには、現在練習中という4回転ループを入れる、ということになるのだろうと思います。高難度ジャンプが入ると多くの選手は単独ダブルアクセルというのが入らなくなるのですが、そこが一つの見せ場な坂本選手は構成どうするのでしょう。実際にはまだそれを悩むほどのところまで4回転ループは仕上がっていなさそうですが、楽しみです。

 

○平均GOE4.000以上(国際大会+全日本選手権)

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
全日本選手権 FS 1 2A   3.30   1.60 4.90 4.778
Japan Open FS 1 2A   3.30   1.54 4.84 4.600
Autumn Classic FS 1 2A   3.30   1.52 4.82 4.571
World Championships SP 1 2A   3.30   1.46 4.76 4.333
全日本選手権 SP 6 StSq4   3.90   1.67 5.57 4.333
全日本選手権 SP 1 2A   3.30   1.41 4.71 4.222
World Championships FS 1 2A   3.30   1.41 4.71 4.222
Challenge Cup FS 1 2A   3.30   1.39 4.69 4.143
Autumn Classic SP 1 2A   3.30   1.32 4.62 4.143
Grand Prix Espoo SP 1 2A   3.30   1.37 4.67 4.111
Skate Canada SP 1 2A   3.30   1.37 4.67 4.111
Grand Prix Final FS 1 2A   3.30   1.32 4.62 4.000
Skate Canada FS 1 2A   3.30   1.32 4.62 4.000
全日本選手権 FS 8 3F+3T   10.45 X 2.12 12.57 4.000
全日本選手権 FS 10 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
Challenge Cup SP 1 2A   3.30   1.32 4.62 4.000

坂本選手の要素の中で評価が高いのはとにかくダブルアクセルです。普通に平均GOE+4.000以上を出してきます。当然全選手中最高評価。ダブルアクセルの要素で坂本選手以外の今シーズンの最高評価が平均GOE+3.571ですから、他に比類ないダブルアクセルと言えます。

他は全日本でのステップやコレオ、コンビネーションジャンプで+4以上が付いていました。

 

○3回転-3回転の要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
げんさんサマーカップ SP 4 3F+3T   10.45 X 1.41 11.86 2.600
げんさんサマーカップ FS 8 3F+3T< 9.53 X -0.71 8.82 -1.200
Autumn Classic SP 4 3F+3T   10.45 x 1.80 12.25 3.429
Japan Open FS 8 3F+3T   10.45 X 1.94 12.39 3.800
全兵庫選手権 SP 4 3F+3T   10.45 X 1.91 12.36 3.600
Skate Canada SP 4 3F+3T   10.45 x 1.29 11.74 2.444
Skate Canada FS 8 3F+3T   10.45 x 1.67 12.12 3.222
Grand Prix Espoo FS 8 3F+3T   10.45 x 1.44 11.89 2.778
Grand Prix Final SP 4 3F+3T   10.45 x 1.59 12.04 3.111
Grand Prix Final FS 8 3F+3T   10.45 x 1.59 12.04 3.000
全日本選手権 SP 4 3F+3T   10.45 X 2.04 12.49 3.778
全日本選手権 FS 8 3F+3T   10.45 X 2.12 12.57 4.000
国民体育大会 SP 4 3F+3T   10.45 X 1.77 12.22 3.400
Challenge Cup SP 4 3F+3T   10.45 x 1.59 12.04 3.000
Challenge Cup FS 8 3F+3T   10.45 x 2.12 12.57 3.714
World Championships SP 4 3F+3T   10.45 x 1.06 11.51 1.889
World Championships FS 8 3F+3T   10.45 x 1.82 12.27 3.444

坂本選手の3-3はすべてフリップからのものです。ショート、フリー共に飛びます。何試合か片方入っていないのがありますが、フリップがダブルになったりで入らなかったものです。3-3を飛んでGOEマイナスになったのは1度だけ。3-3にならなかったことが4回ありますが、ほとんど小さな大会で、グランプリシリーズの試合が1つだけあります。

飛ぶはずだった回数は21回で成功は16回ですので3-3の成功率としてはかなり高いものです。大事な試合での成功率はさらに高い計算になりますので非常に安定していたと言えます。

全日本の+4.000は極端ですが、それ以外でも平均GOEは+3以上のものがほとんどです。

3回転-3回転のジャンプとしては、ジャパンオープンの+3.800 チャレンジカップの+3.714あたりはISU非公認として参考記録にしたとしても、その次の評価になる世界選手権の+3.444でも今期全体で2位にあたるものです。1位は3T-3Tでしたので、フリップ以上の難易度のジャンプからの3-3としては最高評価でした。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
げんさんサマーカップ FS 9 2A+3T<+2T < F 8.76 X -1.68 7.08 -5.000
Japan Open FS 9 2A+3T+2T   9.68 X 1.54 11.22 3.400
全兵庫選手権 FS 9 2A+3T+2T   9.68 X 1.34 11.02 3.200
Skate Canada FS 9 2A+3T+2T   9.68 x 1.38 11.06 3.222
Grand Prix Espoo FS 9 2A+3T+2T   9.68 x 1.32 11.00 3.111
Grand Prix Final FS 9 2A+3T+2T   9.68 x 1.08 10.76 2.556
全日本選手権 FS 9 2A+3T+2T   9.68 X 1.56 11.24 3.778
国民体育大会 FS 9 2A+3T+2T   9.68 X 1.40 11.08 3.400
Challenge Cup FS 9 2A+3T+2T   9.68 x 1.43 11.11 3.571
World Championships FS 9 2A+3T+2T   9.68 x 1.32 11.00 3.111

3連続ジャンプはフリーで必ず入ってくる要素。坂本選手はダブルアクセルからリズムよく、音はめして気持ちよく跳んできます。上記の表で見た目に失敗しているのは1つだけですが、表に乗っていないオータムクラシックは3連続を付けられなかったというものですのでそれもミスの側でカウントされると言えるでしょう。それも含めて11回のうち成功は9回です。ミスした2回はシーズン序盤の重視されていない試合。大事な試合ではすべて決めてきた。それも一番悪くて+2.556 他はすべて+3以上という高評価です。

今期の全選手の3連続ジャンプの中でチャレンジカップの+3.571が最高。ISU公認だけで見てもスケートカナダの+3.222が最高評価になります。

 

○その他高評価要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Grand Prix Final FS 2 3Lz   5.90   1.77 7.67 3.111
全日本選手権 FS 2 3Lz   5.90   1.77 7.67 3.111
全日本選手権 FS 11 3Lo   5.39 X 1.68 7.07 3.556
World Championships FS 11 3Lo   5.39 x 1.68 7.07 3.444
全日本選手権 FS 3 3S   4.30   1.35 5.65 3.111
World Championships FS 3 3S   4.30   1.35 5.65 3.111
Autumn Classic SP 6 StSq3   3.30   1.32 4.62 3.857
Grand Prix Final SP 6 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.778
Skate Canada FS 10 ChSq1   3.00   1.86 4.86 3.667
全日本選手権 FS 10 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000

これはジャンプやステップコレオの中からいくつかピックアウトしてきたものです。

ルッツは本来あまり得意ではない要素なはずですがエッジ判定を取られなければ高い評価を受けることも多く、グランプリファイナルでは+3.111 今季の全選手のルッツの中で3位にあたる評価、シニアの選手だけなら1位の評価です。

ループはもともと得意な要素。世界選手権の+3.444は今季の全選手中最高評価でした。

サルコウも高評価で世界選手権で+3.111をもらっています。3連続の3つ目3Sでこれより高い評価を受けた選手が1人いますが、サルコウで始まるあるいはサルコウ単独の要素としてはこれが最高評価です。

ステップはレベル3ですがオータムクラシックで+3.857 レベル4ではグランプリファイナルで+3.778をもらっています。この+3.778の方でISU公認試合の中では全選手中今期3位の評価になりました。

コレオは全日本で+4.000 スケートカナダで+3.667をもらっています。ISU公認試合としては今季2位タイの評価です。

こうしてみると、ジャンプは何飛んでも高評価で世界のトップ級。ステップコレオも世界の頂点にほど近いところにいます。

 

今期は初戦のげんさんサマーカップこそ3位でしたが、国際大会は全勝。全日本、世界選手権、ダブル3連覇を果たしました。最高のシーズンになった、と言えるのではないでしょうか。

次、目標、何? あとはオリンピックの金メダルというのがあるわけですが、来シーズンはまだオリンピックが来ません。4連覇を目標に練習する? ちょっと難しいかなあ、という気がします。なぜ3連覇なら目標になれたのかと見ると、2連覇のときは最後の世界選手権こそしっかり勝ったものの、シーズン途中が苦しみすぎた、というのがあったので、途中含めてしっかり勝っていくということで目標になりえた。それを今シーズン果たした以上、次は4連覇を目標に、というのは心情的に難しいように感じます。

そこで出てくるのが、4回転。これは練習時の目標としてはわかりやすい。習得出来たらそれこそ鬼に金棒。花織に4回転。ループ得意でしたものねえ。基礎点上げるために最近はフリーで1回だけでしたが、以前はショートフリーで合計3回飛んでいました。坂本選手と言えばダブルアクセルの方が有名ですが、トリプルループも元々評価が高い。これ入って全ノーミスしたら240点が見えてきます。

シーズンオフも、休みのオフよりもアイスショーやテレビ出演など忙しそうですが、来期は4連覇を目指すシーズン。今期の3連覇は56年ぶりでしたが、次の4連覇はキャロルへイスさん(5連覇しています)以来65年ぶりとなります。

 

 

 

 

23-24 選手別 凡例

今年も次回から、選手別に23-24シーズンを振り返っていきます。

実際にはまだシーズンは完全終了しておらず、国内では

昨年の時も付けましたが、その振り返りの前に、その振り返りの時に使ういろいろな略語、言葉の凡例を付けておこうと思います。

 

 

シーズン獲得賞金:ISU公式試合で獲得した賞金の総額です。

世界ランキング:ISUの24年4月時点での世界ランキングです

シーズンランキング:ISUの24年4月時点での23-24シーズンのランキングです

シーズンベストスコア:国際試合でのベストスコア。International Competition いわゆる国際B級試合やユースオリンピックまで含めるので、ISUのシーズンベストスコアとは異なります。また、ここで記す順位も同様で、ISUシーズンベストスコア順位とは異なります。ただし、各国のナショナル選手権や国内のローカル大会は含めません。

 

スピンレベル4率:出場全試合のスピン要素のうち、レベル4を何回獲ったかの確率です。レベル4でもVがついたものはレベル4としてカウントしていません。

ステップレベル4率:スピンと同様にステップでレベル4をどれだけ取ったか? レベル4率の計算と同様、Vがついたものはレベル4としてカウントしていません。

スピンステップオールレベル4:スピンとステップ、ショートフリー合計8要素ですべてレベル4であった試合がどれだけあったか

ジャンプ回転不足率:ジャンプ要素で回転不足だった割合はどれだけか? ジャンプ要素の数として数えるので、コンビネーションジャンプも要素として1つです。コンビネーションジャンプの中で二つ以上回転不足があっても、回転不足要素数1として数えます。また、3回転のつもりが1回転になった、というような、いわゆる“抜ける”という状態は、1回転で回転が足りている場合は回転不足と数えません。また、qは回転不足とはここではカウントしていません。基礎点削られるアンダーローテーションかダウングレードを回転不足としてカウントしています。

 

ジャンプ回転不足なし試合:ジャンプ要素で上記の定義の回転不足が一つもなかった試合の数、割合

スピンステップオールレベル4ジャンプ回転不足なし:そのままの意味で、ショートフリー通じて、スピンとステップがすべてレベル4で、上記の定義でジャンプに回転不足がなかった試合の数、割合

 

 

以下、試合結果、要素別などを記します

これまでも、あまり説明なく使っていましたが、今回簡単に説明しておきます

 

Grade:大会のグレード GP,CS,JGP・・・など

GP:グランプリシリーズ

CS:チャレンジャーシリーズ

JGP:ジュニアグランプリシリーズ

GPF:グランプリファイナル

JGPF:ジュニアグランプリファイナル

EC:ヨーロッパ選手権

4CC:四大陸選手権

WC:世界選手権

WT:国別対抗戦

IC:インターナショナルコンペティション(国際B級大会)

Others:それら以外の国際試合(今期はユースオリンピックと ジャパンオープンです)

NC:ナショナルチャンピオンシップ

NJ:ナショナルジュニア(全日本ジュニア)

RT:地方選手権(中部選手権や西日本選手権など)

CC:日本学生氷上選手権

NG:国民スポーツ大会

IH:インターハイ

IJ:全国中学スケート大会

DL:その他国内ローカル大会

 

Event:大会の名称。国際大会では英語で示します。スペースの関係で省略していることも多いです

 

Pl:その大会の順位

Total:トータルスコア

SP:ショートプログラムスコア

FS:フリープログラムスコア

TSS:トータルセグメントスコア(ショートならショート、フリーならフリーの合計点)

TES:技術点

PCS:演技構成点

 

Jump:ジャンプで得た得点。

J Base:ジャンプの基礎点の合計

J GOE:ジャンプ要素で得た加点(減点)の合計

Spin:スピンで得た得点。

Step:ステップとコレオシークエンスで得た得点。

 

各要素の偏差値:23-24シーズンのグランプリシリーズ(ファイナル含む)、チャレンジャーシリーズ、ヨーロッパ選手権四大陸選手権において、ショートフリーを両方とも滑った選手を母集団として、各要素で平均、標準偏差を計算させ、それを元にして、各選手のそれぞれの要素での偏差値計算をさせたもの。したがって、国際B級試合や国内試合など、偏差値計算用の平均、標準偏差の母集団に含まれないものを計算していることもあり、本来の偏差値の考え方とは少し異なっていることがあります。

(世界選手権を含まないのは、最初にこの計算をしたのが19-20シーズンで世界選手権だけ中止になったシーズンだったためです)

 

偏差値欄のSpin

ショートフリー合わせての、ジャンプ、スピン、それぞれで得た得点から上記条件で計算させた偏差値

偏差値欄のStep

ショートフリー合わせてのステップ系要素について得た得点から、上記条件で計算させた偏差値。ステップ系要素とはステップとコレオシークエンスを合わせたもの。ジュニアカテゴリーにはフリーでステップがないため、ショートのステップで得た得点をフリーでも取ったと仮定した補正を加えて計算させています。

偏差値グラフのJ Base

ショートフリー合わせてのジャンプの基礎点について、上記条件で計算させた偏差値

偏差値グラフのJ GOE

ショートフリー合わせて、ジャンプで得た加点減点の合計について、上記条件で計算させた偏差値

 

シーズン最高の基礎点

基本的には国際大会から持ってきています。特に日本人選手の場合日本国内の試合に多数出ていてそちらの方が高い基礎点を組めた試合が多い場合もありますが、それでも国際大会からを選んでいます。同じ基礎点の試合が複数ある場合は、その中から技術点が高い方の試合を選んでいます。

 

要素別欄のBaseValue:各要素の基礎点。1.1倍時のジャンプは1.1倍された形で表記されます。Baseと略されることもあります

要素別のElements欄の左側の数字:要素の順番を示します。たまに、13番目の要素とか、あり得ない数字が出ることもありますが、記録上、予定の要素が入らず飛ばされ、予定されていない要素が入った時などに、そういう形になることがあります。

GOE:その要素で得た加点あるいは減点です

Score:基礎点と上記GOEを合わせた得点です

AvGOE:ここには-5~+5で表される各ジャッジの各要素の評価のジャッジ全員の平均を計算したものが記されます。得点計算には、一番高い評価と一番低い評価を切り捨てて通常は計算されますが、ここではそれをせず、全ジャッジの平均を記しています。文中で平均GOEと記している場合は、こちらのことを指しています。

世界選手権24 男子シングルレビュー3

前回の続きで男子シングルのレビュー、3回目です。

 

○ショートフリー合わせた要素別のスコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Ilia MALININ 333.76 135.28 127.59 32.62 24.55 13.72
2 Yuma KAGIYAMA 309.65 140.07 104.24 23.75 26.23 16.36
3 Adam SIAO HIM FA 284.39 134.36 104.32 8.84 23.45 16.42
4 Shoma UNO 280.85 136.07 104.16 0.99 25.51 16.12
5 Jason BROWN 274.33 139.90 76.86 13.17 27.62 16.78
6 Lukas BRITSCHGI 274.09 128.97 90.69 14.51 24.75 15.17
7 Deniss VASILJEVS 257.80 131.26 78.20 8.30 25.15 14.89
8 Kao MIURA 254.72 124.24 98.38 1.51 20.99 12.60
9 Nikolaj MEMOLA 253.12 120.11 87.71 11.74 19.79 13.77
10 Junhwan CHA 249.65 124.89 89.05 -1.55 23.66 15.60
11 Aleksandr SELEVKO 247.57 122.18 85.02 3.08 22.89 14.40
12 Mark GORODNITSKY 243.25 116.68 78.82 12.51 21.84 13.40
13 Nika EGADZE 241.55 113.41 97.79 0.20 19.80 12.35
14 Mikhail SHAIDOROV 234.19 108.75 105.33 -9.47 20.51 11.07
15 Donovan CARRILLO 232.67 112.06 86.34 -2.62 23.23 13.66
16 Gabriele FRANGIPANI 231.38 115.02 87.89 -2.27 19.30 12.44
17 Wesley CHIU 227.21 111.84 87.20 -3.29 20.86 10.60
18 Hyungyeom KIM 222.79 101.69 85.32 1.97 21.50 12.31
19 Roman SADOVSKY 221.57 115.29 79.87 -8.65 23.02 12.04
20 Camden PULKINEN 219.86 112.62 84.76 -6.37 19.92 10.93
21 Luc ECONOMIDES 217.10 110.66 78.96 -5.15 20.77 12.86
22 Semen DANILIANTS 213.99 97.65 88.85 -0.31 16.86 10.94
23 Andreas NORDEBACK 211.45 106.49 70.93 -0.09 21.97 12.15
24 Sihyeong LEE 207.59 99.49 86.15 -6.97 20.43 11.49

PCSは鍵山選手が1位の140点超え。今期は自身の4大陸選手権と、その上にグランプリファイナルの宇野昌磨選手のスコアがあります。世界選手権が最高値にならない、というのもちょっと珍しいかもしれないです。2位がジェイソンブラウン選手、3位に宇野昌磨選手。マリニン選手がPCSでも4番目。1位と4.79差。PCSハンデはもうほぼなくなっています。

ジャンプの基礎点はショートフリー合わせてマリニン選手は127.59まで出しています。2位はシャイドロフ選手の105.33でした。3位にアダムシャオイムファ選手で104.32 基礎点だけ高くても上位には来ない、というのは確かですが、マリニン選手はその基礎点の構成をしっかりこなすのでとんでもないことになりました。鍵山選手、宇野選手も104点台。およそ23点のジャンプの基礎点差をどうこれから補っていくか。課題というか難題です。

ジャンプの加点も32.62のマリニン選手が圧倒的な1位。鍵山選手は23.75で2番目に続いています。ブリッチギー選手の14.51が3番目。鍵山選手の23.75でも十分高いのですが、マリニン選手がとびぬけすぎました。一方、宇野選手は+0.99 三浦選手は+1.51 2人とも今大会はとても満足いくような出来とは言えずに終わったようです。

スピンはジェイソンブラウン選手の27.62が1位。27点台は今シーズンただ一人の記録です。鍵山選手がここでも2位。宇野選手が3位です。このあたりは宇野選手もしっかり点を稼いでいます。三浦選手は20.99で鍵山選手と5.24差。大きな差がついています。

ステップ系要素もジェイソンブラウン選手が16.78で1位です。今期シーズン全体で1位。やはりスピンステップはジェイソンブラウン選手が一日の長があります。アダムシャオイムファ選手が2位で鍵山選手が3位です。マリニン選手は13.72 14点台までは出す選手ですから本人比でステップはそれほどいいわけではありませんでした。三浦選手は12.60 ステップ系要素だけで鍵山選手と3.76差があります。スピンステップで9点差。鍵山選手に勝つには、少なくとも鍵山選手より常に4回転を最低1本、できれば2本多くないといけない、というような計算になります。中位なら4回転だけで勝負できますが、上位で勝負するにはスピンステップもある程度点が取れることが最低限必要になってきそうです。

 

以下、個別の要素を見ます

 

○4回転アクセル

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Ilia MALININ 1 4A   12.50   3.93 16.43 3.111

4回転アクセルを飛んだのは当然マリニン選手1人だけです。今期は2回目の成功で平均GOE+3.111は今季最高の出来です。ISU公認試合としては通算6回目のGOEプラスの成功ジャンプとなりました。

 

○4回転ルッツ

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Ilia MALININ 2 4Lz   11.50   4.44 15.94 3.889
FS Ilia MALININ 7 4Lz+1Eu+3F   19.03 x 4.27 23.30 3.778
FS Adam SIAO HIM FA 1 4Lz   11.50   3.61 15.11 3.111
SP Nikolaj MEMOLA 1 4Lz   11.50   3.29 14.79 3.000
SP Ilia MALININ 2 4Lz+3T   15.70   3.29 18.99 2.889
FS Nikolaj MEMOLA 1 4Lz   11.50   0.33 11.83 0.222
SP Mikhail SHAIDOROV 1 4Lz   11.50   -1.15 10.35 -0.889
SP Adam SIAO HIM FA 1 4Lz   11.50   -3.29 8.21 -2.889
FS Mikhail SHAIDOROV 1 4Lz F 11.50   -5.75 5.75 -5.000

4回転ルッツは今大会は4選手が9回飛びました。成功ジャンプは3人で6本です。シャイドロフ選手はショートでわずかなマイナスまで来ましたが、GOEプラスの成功まではありませんでした。

マリニン選手は3本成功。2つはコンビネーション。トリプルルッツ並みの成功率、加点です。フリーの単独ルッツは平均GOE+3.889 これは今シーズンのISU公認試合としては最高評価です。

 

○4回転フリップ

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
SP Shoma UNO 1 4F   11.00   4.56 15.56 4.222
FS Yuma KAGIYAMA 2 4F   11.00   4.56 15.56 4.111
FS Mikhail SHAIDOROV 2 4F! ! 11.00   -0.31 10.69 -0.222
FS Shoma UNO 2 4Fq q 11.00   -5.19 5.81 -4.444

4回転フリップは3選手が飛びました。宇野選手はショートで、鍵山選手はフリーで成功。シャイドロフ選手は!がついてわずかなマイナスでした。

今シーズン4回転フリップでGOEプラスの成功ジャンプをISU公認試合で決めたのは結局この3選手でした。最高評価は宇野選手のこの+4.222です。鍵山選手はこれが初成功ともなりました。

 

○4回転ループ

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Ilia MALININ 3 4Lo   10.50   2.70 13.20 2.556
FS Shoma UNO 1 4Loq F 10.50   -5.25 5.25 -5.000
FS Kao MIURA 1 4Lo<< F 4.90   -2.45 2.45 -5.000

4回転ループは3選手が飛んで、成功した宇野はマリニン選手のみでした。

今期4回転ループをISU公認試合でGOEプラスの成功ジャンプを決めたのは3人だけです。マリニン選手、宇野選手にマッテオリッツォ選手。三浦選手は成功させることができませんでした。

 

○4回転サルコウが入る要素で平均GOEがプラス

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
SP Kao MIURA 1 4S   9.70   4.02 13.72 4.111
FS Yuma KAGIYAMA 1 4S   9.70   3.88 13.58 3.889
SP Yuma KAGIYAMA 1 4S   9.70   3.60 13.30 3.667
FS Adam SIAO HIM FA 4 4S   9.70   3.19 12.89 3.222
FS Ilia MALININ 4 4S   9.70   2.91 12.61 3.111
FS Junhwan CHA 1 4S   9.70   2.49 12.19 2.556
SP Nika EGADZE 1 4S+3T   13.90   2.36 16.26 2.444
SP Roman SADOVSKY 1 4S   9.70   2.08 11.78 2.111
FS Donovan CARRILLO 1 4S   9.70   1.52 11.22 1.556
FS Nika EGADZE 2 4S+2T   11.00   1.52 12.52 1.444
SP Donovan CARRILLO 1 4S   9.70   0.83 10.53 0.778

サルコウになると多くの人が飛んできます。GOEプラスの成功ジャンプは11本ありました。最高評価は三浦佳生選手。ショートの冒頭のサルコウジャンプは素晴らしかったです。平均GOE+4超えは今大会では1人だけでした。鍵山選手がそれに次ぐ評価でショートフリー共に冒頭のジャンプを決めています。

他に2本決めたのがメキシコのカリーヨ選手。メキシコ史上最高の選手と言ってよいかと思います。

 

○4回転トーループが入る要素で平均GOE+2.000以上

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Yuma KAGIYAMA 3 4T+1Eu+3S   14.30   3.66 17.96 3.889
SP Ilia MALININ 1 4T   9.50   3.66 13.16 3.889
SP Yuma KAGIYAMA 2 4T+3T   13.70   3.39 17.09 3.556
FS Kao MIURA 7 4T+3T   15.07 x 3.26 18.33 3.333
FS Adam SIAO HIM FA 5 4T   10.45 x 3.26 13.71 3.333
FS Aleksandr SELEVKO 1 4T   9.50   3.12 12.62 3.333
FS Shoma UNO 6 4T   10.45 x 2.99 13.44 3.222
SP Junhwan CHA 2 4T   9.50   2.58 12.08 2.667
FS Lukas BRITSCHGI 1 4T+3T   13.70   2.44 16.14 2.556
FS Adam SIAO HIM FA 2 4T+3T   13.70   2.31 16.01 2.556
SP Nika EGADZE 2 4T   9.50   2.44 11.94 2.556
FS Ilia MALININ 8 4T+3T   15.07 x 2.17 17.24 2.222
FS Nika EGADZE 1 4T   9.50   2.17 11.67 2.222
SP Gabriele FRANGIPANI 1 4T+3T   13.70   2.17 15.87 2.111
FS Mikhail SHAIDOROV 3 4T+3T   13.70   1.90 15.60 2.000

4回転トーループは男子ではもはや標準装備が当たり前くらいの要素になっています。GOEプラス2以上で切っても多数の選手が出してきます。

最高評価はマリニン選手の単独ジャンプもありますが、鍵山選手が3連続で平均GOE+3.889というすごい評価を受けました。ショートの単独トーループも+3.556 やはり鍵山選手のジャンプの質は極めて高いです。この質のまま本数が増えるとすごいてんすうになっていきます。

 

○平均GOE+4.000以上の要素

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
SP Adam SIAO HIM FA 6 StSq4   3.90   1.95 5.85 4.778
FS Jason BROWN 8 StSq4   3.90   1.89 5.79 4.778
FS Jason BROWN 10 ChSq1   3.00   2.36 5.36 4.667
FS Yuma KAGIYAMA 10 StSq4   3.90   1.78 5.68 4.556
FS Jason BROWN 7 CCoSp4   3.50   1.60 5.10 4.556
FS Jason BROWN 12 CCSp4   3.20   1.46 4.66 4.556
SP Yuma KAGIYAMA 6 StSq4   3.90   1.78 5.68 4.444
SP Shoma UNO 5 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
SP Jason BROWN 6 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
FS Shoma UNO 5 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
SP Shoma UNO 1 4F   11.00   4.56 15.56 4.222
FS Adam SIAO HIM FA 7 StSq4   3.90   1.67 5.57 4.222
FS Yuma KAGIYAMA 12 FCCoSp4   3.50   1.55 5.05 4.222
FS Deniss VASILJEVS 12 ChSq1   3.00   2.14 5.14 4.222
FS Yuma KAGIYAMA 2 4F   11.00   4.56 15.56 4.111
SP Kao MIURA 1 4S   9.70   4.02 13.72 4.111
SP Ilia MALININ 4 3A   8.80 x 3.31 12.11 4.111
FS Deniss VASILJEVS 6 StSq3   3.30   1.32 4.62 4.111
SP Junhwan CHA 7 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
SP Jason BROWN 7 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
FS Adam SIAO HIM FA 10 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
FS Yuma KAGIYAMA 8 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
FS Deniss VASILJEVS 11 FSSp4   3.00   1.20 4.20 4.000

今大会は満点が1つ、アダムシャオイムファ選手のショートのステップでありました。ジャンプが壊滅だったので落ち込むキスアンドクライだったのですが、そんな中で満点要素があるという不思議構図です。ただし、1人のジャッジは+3評価だったので平均GOEは+4.778となっています。

上位の要素は鍵山選手、ジェイソンブラウン選手、宇野昌磨選手が目立ちます。スピンやステップ系の要素の方が高い平均GOEを得やすいですが、男子の場合はジャンプでも+4以上を出してきます。意外とマリニン選手は単独トリプルアクセルの1つだけ。まだジャンプの質なら鍵山選手、宇野選手も勝負になります。

 

男子は、新時代が始まりました。女子の坂本選手の3連覇は非常に久しぶりの3連覇という扱い。次々に優勝者が変わるというのが女子の基本構図。一方、男子は1度優勝した選手は基本的に何度も優勝する、という形で今世紀も来ています。マリニン選手は今大会初優勝。19歳で初優勝したら何回優勝するのか? ただ、2位3位、鍵山選手、アダムシャオイムファ選手も全く届かない水準ではない、というところは見せてくれました。オリンピックまであと2年。今の構成では届かないですが、構成上げればないことも無い。

宇野選手は・・・、どうするんですかね。4回転4種類5本を組んでノーミス出来ればまだチャンスは残ると思っているんですが・・・。権利はほぼなかったとはいえ、ソチの代表選考の最終グループで滑っていたわけで、勤続疲労も積もってきているのも見て取れます。

 

これで今シーズンはほぼ終わりです。国際B級大会はまだありますが日本からの派遣は無い模様。国内ローカルはいくつか残っていますが、トップ選手が真剣に滑るレベルの試合はありません。オリンピックの中間年は一番静かに終わります。

来期はオリンピック前シーズン。冒険プログラムはこの辺まででしょうか。今期のプログラム、ノーミスするまでやってほしかった選手も何人かいますが、それはそれ、新しいプログラムも心待ちにしたいと思います。

 

世界選手権24 男子シングルレビュー2

前回の続き、男子フリー編です。

 

○フリーの要素別スコア

Pl Name Nation J Base J GOE Spin Step PCS
1 Ilia MALININ USA 93.59 22.36 12.04 9.19 90.61
2 Adam SIAO HIM FA FRA 77.22 17.42 11.62 10.57 92.07
3 Yuma KAGIYAMA JPN 72.04 14.36 13.61 10.68 93.61
4 Lukas BRITSCHGI SUI 62.50 9.28 12.89 9.93 86.08
5 Jason BROWN USA 52.45 8.32 14.56 11.15 93.98
6 Shoma UNO JPN 70.66 -7.53 12.67 10.49 88.84
7 Kao MIURA JPN 70.23 1.90 9.33 8.31 81.95
8 Deniss VASILJEVS LAT 54.00 4.06 12.91 9.76 87.65
9 Aleksandr SELEVKO EST 56.41 3.04 12.12 9.87 82.05
10 Mark GORODNITSKY ISR 54.83 9.14 11.07 8.50 79.22
11 Junhwan CHA KOR 59.75 -0.99 11.59 10.14 81.95
12 Nikolaj MEMOLA ITA 57.10 4.53 9.19 8.81 80.39
13 Mikhail SHAIDOROV KAZ 70.76 -5.21 10.47 7.49 72.66
14 Donovan CARRILLO MEX 58.45 -2.43 11.83 8.87 75.76
15 Nika EGADZE GEO 65.59 -6.20 9.69 7.56 74.83
16 Wesley CHIU CAN 61.91 -3.98 10.03 7.39 73.86
17 Gabriele FRANGIPANI ITA 55.69 -0.62 9.97 7.59 76.12
18 Hyungyeom KIM KOR 61.39 0.50 10.64 8.40 66.97
19 Luc ECONOMIDES FRA 54.55 -4.37 10.13 8.48 74.29
20 Camden PULKINEN USA 56.15 -4.74 8.93 7.70 73.97
21 Semen DANILIANTS ARM 60.24 0.13 7.63 7.03 65.50
22 Roman SADOVSKY CAN 52.07 -11.22 11.86 7.89 76.69
23 Andreas NORDEBACK SWE 47.00 -0.82 10.31 8.10 70.66
24 Sihyeong LEE KOR 57.54 -4.07 10.26 7.03 64.60

フリーはジャンプの基礎点が1人だけ違うマリニン選手がいます。2位はアダムシャオイムファ選手。1位と2位で16.37差です。鍵山選手が3位でマリニン選手とは21.55差。あまりと言えばあまりな差です。宇野選手、三浦選手は70点台。ミスも出ると基礎点は伸びずマリニン選手との基礎点差が23点台とすごいことになります。

そして、加点の方もマリニン選手が1位になりました。もうこうなると手が付けられません。ジャンプだけで115.95点。スピンステップ零点でもいい、くらいのスコアになってきます。いうまでも無くジャンプの基礎点も加点も今期1位です。アダムシャオイムファ選手、鍵山選手も二桁の加点は得ました。

スピンはジェイソンブラウン選手が14点台。今季1位のスコア。2位の鍵山選手も今期これより上はジェイソンブラウン選手しかいないという素晴らしいスピンでした。三浦選手は9.33で21位。もう少し頑張りましょう、という水準になります。

ステップ系要素もジェイソンブラウン選手が1位です。これも鍵山選手が2位。マリニン選手はステップはそれほどスコアが伸びませんでした。

PCSもジェイソンブラウン選手が1位。スピンステップPCSとブラウン選手が1位です。ジャンプはマリニン選手。アメリカは両極振り切ってます。鍵山選手が2位でアダムシャオイムファ選手が3位。マリニン選手で4位です。これだけPCS稼げるならマリニン選手にとっては十分でしょう。

 

○総合上位6選手のフリーの構成

 

Ilia

MALININ

Yuma

KAGIYAMA

Adam SIAO

HIM FA

Shoma

UNO

Jason

BROWN

Lukas

BRITSCHGI

1 4A 4S 4Lz 4Loq 3A+2A 4T+3T
2 4Lz 4F 4T+3T 4Fq 3A 4T
3 4Lo 4T+1Eu+3S 3A+2A 4T+2T 3Lo 3A+2A
4 4S 3A+2A 4S 3A FCCoSp4 3Lo
5 CCSp4 FCSSp4 4T StSq4 3Lz+3T CCoSp4
6 StSq4 3A 3A 4T 3F+1Eu+3Sq 3A
7 4Lz+1Eu+3F 3Lz+3T StSq4 3A+1Eu+3F CCoSp4 3F+1Eu+2S
8 4T+3T ChSq1 3Lz+1Eu+3S 3S StSq4 3Lz
9 ChSq1 3F FCCoSp4 FCSp4 1A StSq4
10 3Lz+3A StSq4 ChSq1 CSSp4 ChSq1 ChSq1
11 FSSp3 CCoSp4 CCoSp4 ChSq1 3F FCCoSp4
12 CCoSp4 FCCoSp4 CSSp3 CCoSp4 CCSp4 CSSp4
Base 109.79 88.94 93.72 87.26 69.55 79.40
GOE 27.39 21.75 23.11 -0.97 16.93 15.20
PCS 90.61 93.61 92.07 88.84 93.98 86.08
Total 227.79 203.30 206.90 173.13 180.46 180.68

マリニン選手がアクセル込みで4回転5種類6本、アダムシャオイムファ選手と宇野選手が3種類4本、鍵山選手は3種類3本、ブリッチギー選手が1種類2本、ジェイソンブラウン選手が無しです。やはり5種類6本は突出しています。

GOEは3人が20点台。マリニン選手の27.39は素晴らしいですが、鍵山選手も21.75まで稼ぎました。トリプルアクセル転倒込みでこのスコアですので、しっかりトリプルアクセルを降りられればGOEはマリニン選手に追いつけます。フリーのスコア差は24.49 トータルスコアの差は24.11 トリプルアクセル決めれば18点ほどの差に縮まります。鍵山選手が降りたことのある4回転は4種類。今の構成は4回転3本。これを4種類5本にすれば、どういう並びにするかによりますが基礎点を10点ほど上げることは出来、基礎点が上がると同じ出来栄えで得られるGOEも高くなるのでそれにより自然と3点程度同じ出来栄えならスコアは上がります。あと5点ほど。これくらいまでなら出来栄え勝負というところまで行けます。逆に言えば、4種類5本が最低ラインでもあります。宇野選手も同様で、4種類5本を組めるのですが、昨季実績では結局ノーミスは出来なかったという現実はあります。

マリニン選手は後半にコンビネーションをすべてつぎ込んでいる、というのも恐ろしいところです。1,1倍で見ると鍵山選手はやや弱いです。

上位6人は全員スピンで締めています。フリーもやはりスピンで終える選手がほとんどです。ジェイソンブラウン選手以外は冒頭4つジャンプを続けています。ジャンプの難易度が緩いブラウン選手は3つ目まで。この辺、ほとんどの選手が似たような構成になってきます。アダムシャオイムファ選手は6つジャンプを続けるという、これはこれで特徴的な構成ではありました。

 

○総合7~12位の選手のフリーの構成

 

Deniss

VASILJEVS

Kao

MIURA

Nikolaj

MEMOLA

Junhwan

CHA

Aleksandr

SELEVKO

Mark

GORODNITSKY

1 2S 4Lo<< 4Lz 4S 4T 3A
2 3Lz+3T 4T 3A+1Eu+3S 1T 3Lz 3A+2A
3 3A+2A 4S 3Lz 4S<+1T 3Lo 3Lz
4 3Loq FCSp2 3Lo FCSp4 3A+3T 3F+3T
5 FCCoSp4 3A+1Eu+3S FCSp3 3Lz+3Lo CCSp4 FCCoSp4
6 StSq3 StSq3 3A StSq4 StSq4 CSSp4
7 3A 4T+3T 3Lz+REP 3A+2A+2A 3A< 2A+1Eu+3S
8 3Lz+1Eu+3Sq 3A+2A 3F!+2A 3Aq 3F!+2A+2A 3F
9 3F! 3F CSSp3 3F 3S< 3Lo
10 CCoSp3 CSSp4 StSq3 CCoSp4 FSSp4 CCoSp3
11 FSSp4 ChSq1 ChSq1 ChSq1 ChSq1 ChSq1
12 ChSq1 CCoSp3 CCoSp4 FCCoSp3 CCoSp4 StSq3
Base 69.80 84.83 72.30 76.35 73.01 70.63
GOE 10.93 4.94 7.33 4.14 8.43 12.91
PCS 87.65 81.95 80.39 81.95 82.05 79.22
Total 168.38 169.72 160.02 161.44 163.49 162.76

ここの水準だと4回転の本数は少し減ってきます。三浦選手が3種類4本、チャジュンファン選手は2種類3本のつもりが2本になった形、メモラ選手、セレフコ選手は1本、バシリエフス選手は1本入れようとしたけれど0本に、ゴロニツキー選手は最初から予定なしです。4回転3種類持って決められると上位6に入って行ける水準ということになるでしょうか。

基礎点は三浦選手がこの中では1番高いです。4回転3本分の基礎点は確保していますのでさすがにそうなります。他は70点台以下。マリニン選手は当然として、アダムシャオイムファ選手でも90点台の基礎点がありますので、80点に届かない基礎点だとそのあたりと勝負するのは難しい。表彰台争いをしていくにはやはり4回転3本は最低必要ではありそうです。

GOEは4回転の無いゴロニツキー選手とバシリエフス選手が二桁稼ぎました。このあたりの選手たちは出来栄えで稼いだという構図です。三浦選手とチャジュンファン選手は4点台。表彰台争いをしていくには出来が悪すぎたと言わざるを得ません。

ここのあたりの選手も冒頭3つはジャンプです。4回転3本以上入れようとした三浦選手とチャジュンファン選手は4つ目もジャンプ。4回転多い選手の方が序盤のジャンプの数が多い。スピン入れる前に山をほとんど超えておきたい、ということなようです。

最後の要素はやはりスピンが多いですが、4回転の無いバシリエフス選手とゴロニツキー選手はコレオやステップで締めています。こういったところで特徴を出そうとしているのが見て取れます。今期の有力選手の中ではフリーの最後をスピン以外で締めるのは、他にケビンエイモズ選手くらいでした。

 

○フリー上位18人のPCS

Name J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Ilia MALININ 27.25 26.50 28.25 26.75 26.50 27.25 27.00 27.75 27.50
Adam SIAO HIM FA 27.50 27.50 26.75 26.75 27.00 28.50 29.00 27.50 28.50
Yuma KAGIYAMA 27.75 28.25 28.25 28.00 27.75 28.25 28.25 28.00 28.00
Lukas BRITSCHGI 25.25 25.25 25.00 25.25 26.00 26.75 26.00 26.50 26.75
Jason BROWN 27.75 28.25 27.50 28.75 27.25 29.00 27.50 28.25 29.50
Shoma UNO 26.25 27.00 28.00 27.75 26.00 26.25 26.25 26.50 26.75
Kao MIURA 24.75 24.75 24.50 24.25 23.50 25.50 24.75 25.25 24.00
Deniss VASILJEVS 25.75 26.25 26.00 26.00 27.25 27.00 26.25 26.00 26.75
Aleksandr SELEVKO 24.25 24.00 25.25 24.75 25.00 24.25 25.00 25.00 22.75
Mark GORODNITSKY 22.75 23.00 23.75 24.50 24.00 22.75 24.00 24.25 24.75
Junhwan CHA 25.00 24.25 23.50 24.00 25.25 23.25 25.25 25.75 24.25
Nikolaj MEMOLA 24.75 23.25 23.75 24.00 23.00 25.50 24.50 22.75 26.00
Mikhail SHAIDOROV 21.75 23.25 22.50 21.00 23.25 20.75 21.50 21.50 21.25
Donovan CARRILLO 22.00 22.50 23.75 22.75 23.00 22.00 22.50 23.00 23.25
Nika EGADZE 22.00 22.75 25.00 22.25 22.25 21.00 23.75 22.75 20.75
Wesley CHIU 23.25 22.25 22.00 23.00 20.75 22.25 22.00 22.50 21.50
Gabriele FRANGIPANI 22.25 23.75 21.25 23.75 23.75 22.75 22.50 22.75 22.50
Hyungyeom KIM 19.50 21.25 20.00 20.50 19.75 18.50 19.75 22.25 20.00

ジャッジ毎のPCSが男子のフリーは結構ばらつきが小さくなっていました。ショートでは評価が分かれていたマリニン選手。最小で26.50 最大で28.25 その差は1.75に収まっています。9人中6人は平均9点超えと評価しました。ちゃんと滑ればPCSが出る、という選手にマリニン選手もなりました。一度ここまでくれば来シーズン以降もきっと変わらないでしょう。

鍵山選手は安定して高評価。最低で27.75 最高で28.25 誰が見てもいい滑りなようです。

全体の最高では9番ジャッジがジェイソンブラウン選手に29.50を付けました。Composition満点ついています。

 

○フリー上位18人のジャッジ別PCS順位

  J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Ilia MALININ 4 5 1 4 5 4 4 3 4
Adam SIAO HIM FA 3 3 5 4 4 2 1 4 2
Yuma KAGIYAMA 1 1 1 2 1 3 2 2 3
Lukas BRITSCHGI 7 7 8 7 6 6 7 5 5
Jason BROWN 1 1 4 1 2 1 3 1 1
Shoma UNO 5 4 3 3 6 7 5 5 5
Kao MIURA 9 8 10 10 12 8 10 9 11
Deniss VASILJEVS 6 6 6 6 2 5 5 7 5
Aleksandr SELEVKO 11 10 7 8 9 10 9 10 15
Mark GORODNITSKY 13 15 11 9 10 13 13 11 9
Junhwan CHA 8 9 14 11 8 12 8 8 10
Nikolaj MEMOLA 9 13 11 11 15 8 11 15 8
Mikhail SHAIDOROV 19 13 15 21 13 20 18 23 19
Donovan CARRILLO 17 19 11 16 15 17 15 13 14
Nika EGADZE 17 17 8 18 17 18 14 15 21
Wesley CHIU 12 20 16 15 21 16 17 19 18
Gabriele FRANGIPANI 16 11 19 14 11 13 15 15 16
Hyungyeom KIM 22 23 20 22 23 24 22 22 22

ジャッジ毎の順位をづけを見ると、ジェイソンブラウン選手に1位を付けたのが6人と最高で、鍵山選手も4人から1位の評価を受けています。アダムシャオイムファ選手、マリニン選手も1位評価が1人いました。

上位の選手は極端に大きな評価の割れ方はなかったようです。いくらか意見が分かれた、という程度でしょうか。中位以下でジャンプを武器とする選手は評価が分かれやすい。シャイドロフ選手は最高が13位で最低が23位、エガゼ選手も最高の8位と最低の21位、大きな差が出ます。女子と同じ傾向でもありました。

 

 

もう一回続きます。

 

世界選手権24 男子シングルレビュー1

前回まで女子シングルの振り返りをしていましたが今回からは男子シングルです。

女子の時と同じ流れで進みます。

 

ショートプログラム要素別スコア

Pl Name Nation J Base J GOE Spin Step PCS
1 Shoma UNO JPN 33.50 8.52 12.84 5.63 47.23
2 Yuma KAGIYAMA JPN 32.20 9.39 12.62 5.68 46.46
3 Ilia MALININ USA 34.00 10.26 12.51 4.53 44.67
4 Jason BROWN USA 24.41 4.85 13.06 5.63 45.92
5 Lukas BRITSCHGI SUI 28.19 5.23 11.86 5.24 42.89
6 Nikolaj MEMOLA ITA 30.61 7.21 10.60 4.96 39.72
7 Nika EGADZE GEO 32.20 6.40 10.11 4.79 38.58
8 Deniss VASILJEVS LAT 24.20 4.24 12.24 5.13 43.61
9 Junhwan CHA KOR 29.30 -0.56 12.07 5.46 42.94
10 Kao MIURA JPN 28.15 -0.39 11.66 4.29 42.29
11 Roman SADOVSKY CAN 27.80 2.57 11.16 4.15 38.60
12 Aleksandr SELEVKO EST 28.61 0.04 10.77 4.53 40.13
13 Gabriele FRANGIPANI ITA 32.20 -1.65 9.33 4.85 38.90
14 Mark GORODNITSKY ISR 23.99 3.37 10.77 4.90 37.46
15 Donovan CARRILLO MEX 27.89 -0.19 11.40 4.79 36.30
16 Mikhail SHAIDOROV KAZ 34.57 -4.26 10.04 3.58 36.09
17 Camden PULKINEN USA 28.61 -1.63 10.99 3.23 38.65
18 Wesley CHIU CAN 25.29 0.69 10.83 3.21 37.98
19 Adam SIAO HIM FA FRA 27.10 -8.58 11.83 5.85 42.29
20 Andreas NORDEBACK SWE 23.93 0.73 11.66 4.05 35.83
21 Hyungyeom KIM KOR 23.93 1.47 10.86 3.91 34.72
22 Luc ECONOMIDES FRA 24.41 -0.78 10.64 4.38 36.37
23 Semen DANILIANTS ARM 28.61 -0.44 9.23 3.91 32.15
24 Sihyeong LEE KOR 28.61 -2.90 10.17 4.46 34.89
25 Vladimir LITVINTSEV AZE 27.95 -3.91 10.90 3.08 35.14
26 Davide LEWTON BRAIN MON 18.30 3.00 11.60 3.96 34.72
27 Maurizio ZANDRON AUT 24.01 0.42 9.38 3.58 32.20
28 Tomas-Llorenc GUARINO SABATE ESP 21.13 0.27 10.26 3.82 32.87
29 Jari KESSLER CRO 17.65 0.60 11.55 4.68 33.84
30 Burak DEMIRBOGA TUR 23.93 -1.19 9.74 3.72 31.98
31 Vladimir SAMOILOV POL 28.81 -5.34 9.77 2.11 32.46
32 Nikita STAROSTIN GER 19.23 -0.45 10.99 4.46 33.11
33 Ivan SHMURATKO UKR 20.13 -0.47 10.78 3.82 33.64
34 Valtter VIRTANEN FIN 17.93 0.41 11.00 4.51 33.70
35 Adam HAGARA SVK 23.99 -1.53 6.06 3.63 33.22
36 Georgii RESHTENKO CZE 18.80 1.22 9.71 3.77 31.85
37 Alexander ZLATKOV BUL 18.63 1.68 10.74 2.90 30.82
38 Edward APPLEBY GBR 21.09 -5.64 9.54 3.49 32.03
39 Boyang JIN CHN 10.10 -1.68 9.84 4.96 35.31
40 Aleksandr VLASENKO HUN 14.70 -1.74 8.63 2.64 27.27

多いよ40人。フリー進出ラインは72.23でした。昨シーズンは70.29でしたので幾分上がりました。

ジャンプの基礎点は軒並み30点を男子は超えてきます。1位はマリニン選手、ではなくてシャイドロフ選手でした。4回転ルッツがありつつ、後半に4-3を入れたのが大きかったのですが、基礎点取れたもののステップアウトで点は伸びずに上位進出はならずという構図でした。2番目にマリニン選手がいて宇野選手が3番目です。ジェイソンブラウン選手は24.41でシャイドロフ選手とは10.16の差がジャンプの基礎点だけでありますが、スコアははるかに上回りました。基礎点だけあってもダメ、ということです。

ジャンプのGOEはマリニン選手が1位です。結果としてジャンプのスコアはやはりマリニン選手が1位でした。GOEは鍵山選手が2位で宇野選手が3位。出来が良くないと上位には来ません。アダムシャオイムファ選手は-8.58で全選手中最下位。これだと優勝争いからは脱落です。ジェイソンブラウン選手は加点はしっかり取っていて、ジャンプのスコアとしては全体10位です。4回転が無いというだけで、ジャンプで点が取れないということでもないです。さすがに優勝争いは厳しいですが表彰台争いくらいまでは展開次第で来るわけです。

そんなジェイソンブラウン選手がスピンはただ一人13点台で1位。今期の男子でショートのスピン1位のスコアになります。宇野選手が2位で鍵山選手が3位。マリニン選手も4番目で続きます。ジャンプがすごい、ステップも見せ場がある、というのはわかりやすいですがマリニン選手にとってスピンも穴の要素ではなくなっています。

ステップはアダムシャオイムファ選手が満点で1位でした。2位に鍵山選手、3位に宇野選手とジェイソンブラウン選手です。マリニン選手はレベル3だったことでややスコアが落ちます。

PCSは宇野選手が1位、鍵山選手が2位でジェイソンブラウン選手が3位です。ショートのPCS差として宇野選手とマリニン選手は2.56 鍵山選手とマリニン選手だと1.79 ジャンプで負けてもPCS差で賄う、というにはもう小さな差しかありませんが、ショートだけで見るなら、ルッツとサルコウの基礎点差よりはPCS差がありますので、まだなんとかなるとも言えます。結果、ショートはこの順位の並びになりました。三浦選手は42.29なので宇野選手と4.94の差があります。これだけあると技術点で補うには少し苦しくなるので、こちらのスコアももう少し上げないと最上層で戦うには少し苦しそうです。

 

○総合上位6選手のショートプログラム構成

 

Ilia

MALININ

Yuma

KAGIYAMA

Adam SIAO

HIM FA

Shoma

UNO

Jason

BROWN

Lukas

BRITSCHGI

1 4T 4S 4Lz 4F 3F 4T+3T
2 4Lz+3T 4T+3T 3A 4T+3T 3A 3A
3 CCSp4 CCSp4 4T<+COMBO FCSp4 FSSp4 CSSp4
4 3A 3A FCSp4 3A 3Lz+3T 3Lz
5 FSSp4 FSSp4 CCoSp3 StSq4 CCSp4 FCSp4
6 StSq3 StSq4 StSq4 CSSp4 StSq4 StSq4
7 CCoSp4 CCoSp4 CSSp4 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp3
Base 47.00 45.80 40.20 47.10 38.01 41.29
GOE 14.30 14.09 -4.00 13.39 9.94 9.23
PCS 44.67 46.46 42.29 47.23 45.92 42.89
Total 105.97 106.35 77.49 107.72 93.87 93.41

上位4選手は4回転2本構成。ルッツとトーループがマリニン選手とアダムシャオイムファ選手、宇野選手はフリップとトーループ、鍵山選手はサルコウトーループです。ジェイソンブラウン選手は4回転無し。ブリッチギー選手はトーループ1本構成です。

ステップでレベル3だったマリニン選手はショートプログラム全体の基礎点としては宇野選手にわずかに劣りました。

1.1倍に4回転を入れる選手はこの中にはいませんでした。アダムシャオイムファ選手は最後のジャンプが4回転からのコンビネーションですが、これは前半に入っていて1.1倍になりません。今回たまたまタイミングが早くて後半に入らなかった、というものではなく、常時前半になっています。他の選手は最初に2つジャンプを飛んで、3つ目にスピンを入れて、後半の時間帯になる4つ目の要素で最後のジャンプを飛ぶ。4回転2本の選手はここにトリプルアクセルが来がち。構成の均質化がやはり見られます。

最後は全員スピンで締める。足替えのコンビネーションスピン。アダムシャオイムファ選手だけ足替えのシットスピンです。女子もそうですが、みんなスピンで終わる傾向がどうしてもあります。

スピンはマリニン選手、鍵山選手、宇野選手、ジェイソンブラウン選手はすべてレベル4 ステップはマリニン選手以外レベル4です。

GOEはマリニン選手が最も稼ぎました。アダムシャオイムファ選手は厳しいショートでした。ジェイソンブラウン選手、ブリッチギー選手も10点近い加点。これくらい稼げると90点台までは4回転2本入れなくても持っていけます。

PCSは45点くらいまでもってくると、その上の幅が小さいので差が付きにくい。マリニン選手もその領域まで入ってきました。宇野選手の47.23は今大会の1位というだけでなく今シーズン1位のショートPCSです。宇野選手は今期全体でこの世界選手権、グランプリファイナル、NHK杯の3試合で今シーズン全体のショートPCSの1位2位3位となっていました。PCS評価は今季も宇野選手が王者です。

 

○総合7~12位の選手のショートプログラム構成

 

Deniss

VASILJEVS

Kao

MIURA

Nikolaj

MEMOLA

Junhwan

CHA

Aleksandr

SELEVKO

Mark

GORODNITSKY

1 3Lz+3T 4S 4Lz 4S+3T<< 4Tq 3A
2 3F! 3A 3A 4T 3A 3F+3T
3 CCSp4 FCSp3 FCSp4 FCSp4 CCSp4 FCSp4
4 3A 4T+COMBO 3Lz+3T 3A 3Lz+3T 3Lz!
5 StSq4 StSq3 StSq4 CSSp4 StSq3 StSq4
6 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 FSSp4 CCoSp3
7 FSSp4 CSSp4 CSSp4 StSq4 CCoSp3 CSSp4
Base 37.80 40.75 44.21 42.90 41.11 37.09
GOE 8.01 2.96 9.17 3.37 2.84 5.94
PCS 43.61 42.29 39.72 42.94 40.13 37.46
Total 89.42 85.00 93.10 88.21 84.08 80.49

三浦選手、チャジュンファン選手といった上位を狙った選手はサルコウトーループで4回転2本。メモラ選手はルッツの1本、セレフコ選手はトーループ1本、バシリエフス選手とゴロニツキー選手は4回転無しです。

後半に4回転を入れ込んだのは三浦選手。得意のトーループだったはずですがこれが転倒、裏目に出ます。このトーループ転倒がこの試合の勝負の分かれ目でした。

4回転2本入れてミスをするよりも、ルッツで基礎点高いこともありますが4回転1本のメモラ選手の方が基礎点が高くなりました。4回転無しの2選手は37点台の基礎点。この基礎点差で上位へ行くには相当な加点が求められます。

ここもスピンで締める選手が多いですがチャジュンファン選手はステップで締めます。今期ステップで締めるショートプログラムを組んでいるのは有力選手ではチャジュンファン選手の他にはケビンエイモズ選手がいるくらいでした。なかなか特徴的です。

メモラ選手とバシリエフス選手は二桁近い加点を得ました。チャジュンファン選手、三浦選手、転倒が出るとやはり加点は伸びません。

PCSは40点前後。バシリエフス選手は43.61と40点台中盤に近いところまで出しました。4回転持たずに上位へ行くにはこれくらいのPCSは欲しそうです。

 

ショートプログラム上位20人のPCS

Name J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Shoma UNO 28.00 27.50 29.00 28.25 28.50 28.50 28.75 27.50 28.50
Yuma KAGIYAMA 27.75 27.25 29.00 27.75 27.75 29.00 27.50 27.00 28.00
Ilia MALININ 27.75 26.75 27.00 26.50 29.00 24.00 27.50 26.50 25.25
Jason BROWN 27.25 27.75 27.75 27.25 26.25 28.50 29.25 27.50 26.00
Lukas BRITSCHGI 25.50 26.00 25.50 25.25 26.50 25.25 26.00 25.75 25.50
Nikolaj MEMOLA 23.75 24.75 23.00 23.00 24.00 22.75 25.25 26.50 22.25
Nika EGADZE 24.25 24.50 23.75 21.75 25.50 22.00 22.00 23.25 21.50
Deniss VASILJEVS 25.25 26.25 25.75 25.75 27.25 25.75 27.25 26.00 26.25
Junhwan CHA 25.75 26.00 27.25 25.50 27.50 25.50 25.25 24.25 24.75
Kao MIURA 25.75 25.25 25.25 24.00 27.25 26.25 26.00 24.00 24.50
Roman SADOVSKY 21.75 22.75 24.50 23.25 22.25 23.00 25.75 24.25 21.25
Aleksandr SELEVKO 25.00 23.75 24.50 23.50 23.75 24.50 21.25 23.25 25.50
Gabriele FRANGIPANI 24.50 23.50 23.25 23.25 24.25 23.50 22.25 22.25 23.00
Mark GORODNITSKY 22.00 20.00 22.50 22.75 20.75 21.75 23.75 23.50 24.00
Donovan CARRILLO 22.00 21.75 22.25 21.00 21.25 20.75 24.25 22.50 20.75
Mikhail SHAIDOROV 21.75 21.50 22.00 21.25 22.00 21.00 20.50 21.75 22.50
Camden PULKINEN 22.75 21.25 22.50 23.25 24.50 22.00 25.00 25.50 22.25
Wesley CHIU 23.75 23.00 23.00 21.50 22.75 24.00 22.00 22.75 22.25
Adam SIAO HIM FA 26.25 26.00 26.00 24.25 26.00 24.75 24.75 25.25 24.00
Andreas NORDEBACK 21.25 20.00 22.75 21.00 21.75 21.75 21.25 21.00 22.25

PCSのスコアが高い選手は比較的ジャッジ毎の評価差が小さい傾向はあったかもしれません。その辺は上限が近いのでキャップされている影響かとも思います。

そんな中でジャッジ毎の差が大きかったのがマリニン選手。最高は29.00までつけたジャッジもいた一方で、最低は24.00がいます。係数掛けるまで5点。係数掛けると8.35もの差が出ます。ジャンプはともかく滑りはまだまだだ、と見るジャッジと、滑りももう世界の頂点の水準だ、と見るジャッジそれぞれいるようです。

他にも、メモラ選手、エガゼ選手、サドフスキー選手、セレフコ選手あたりはジャッジ毎の差が大きいです。ジャンプ型の選手がいい演技をしたとき、PCS評価が分かれがちなのかもしれません。

 

ショートプログラム上位20人のジャッジ別PCS順位

Name J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Shoma UNO 1 2 1 1 2 2 2 1 1
Yuma KAGIYAMA 2 3 1 2 3 1 3 3 2
Ilia MALININ 2 4 5 4 1 10 3 4 7
Jason BROWN 4 1 3 3 8 2 1 1 4
Lukas BRITSCHGI 8 6 8 7 7 7 6 7 5
Nikolaj MEMOLA 13 10 14 14 13 14 9 4 14
Nika EGADZE 12 11 12 17 10 15 17 14 19
Deniss VASILJEVS 9 5 7 5 5 5 5 6 3
Junhwan CHA 6 6 4 6 4 6 9 10 8
Kao MIURA 6 9 9 9 5 4 6 12 9
Roman SADOVSKY 18 15 10 11 16 13 8 10 21
Aleksandr SELEVKO 10 12 10 10 14 9 20 14 5
Gabriele FRANGIPANI 11 13 13 11 12 12 16 19 12
Mark GORODNITSKY 16 25 17 15 27 18 14 13 10
Donovan CARRILLO 16 17 19 21 22 26 13 17 26
Mikhail SHAIDOROV 18 18 20 19 17 24 25 20 13
Camden PULKINEN 15 20 17 11 11 15 11 8 14
Wesley CHIU 13 14 14 18 15 10 17 16 14
Adam SIAO HIM FA 5 6 6 8 9 8 12 9 10
Andreas NORDEBACK 22 25 16 21 19 18 20 23 14

ジャッジ毎にその選手をPCSで全体の何位と付けたか? を見ています。宇野選手を1位と付けたジャッジが5人、ジェイソンブラウン選手を1位としたジャッジが3人、鍵山選手1位が2人、マリニン選手1位が1人います。同点1位もあります。

宇野選手は全ジャッジが1以下2位、鍵山選手も1位から3位までですが、ジェイソンブラウン選手は1位から8位まで割れます。マリニン選手は1位から10位まで評価が分かれます。

意外とジャッジ毎の差がついていないのがブリッチギー選手。5位から8位までの間に収まっています。ちょっと不思議な傾向です。

こうやって眺めると、このジャッジは他と傾向が違う、みたいなことがあるわけでもなく、どのジャッジもなぜかこの選手の順位が高いとか低いとかがそれぞれある、というように見えます。強いて言うなら、6番ジャッジは日本が好き? と思ったりはしました。

 

 

次回フリーへ続きます。

世界選手権24 女子シングルレビュー3

前回からの続きです。

 

○ショートフリー合わせた要素別のスコア(ショート通過24選手)

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Kaori SAKAMOTO 222.96 110.17 64.09 10.26 24.95 13.49
2 Isabeau LEVITO 212.16 105.26 64.35 5.23 23.16 14.16
3 Chaeyeon KIM 203.59 95.84 65.97 4.54 23.08 14.16
4 Loena HENDRICKX 200.25 105.18 53.42 3.89 24.38 14.38
5 Kimmy REPOND 196.02 93.58 65.00 2.46 22.61 13.37
6 Haein LEE 195.48 98.74 59.14 -0.17 24.13 13.64
7 Mone CHIBA 195.46 95.08 57.34 5.48 24.04 13.52
8 Hana YOSHIDA 194.93 94.41 68.69 -1.18 22.02 11.99
9 Livia KAISER 187.24 85.94 66.34 4.61 19.38 10.97
10 Amber GLENN 186.53 97.68 52.91 2.92 21.98 12.04
11 Ekaterina KURAKOVA 184.76 89.08 59.80 -0.08 22.57 13.39
12 Young YOU 183.35 91.65 53.28 3.38 23.88 12.16
13 Anastasiia GUBANOVA 182.42 91.80 61.23 -1.58 20.26 10.71
14 Olga MIKUTINA 177.76 88.21 53.41 0.25 22.12 13.77
15 Nina PINZARRONE 177.46 90.73 57.49 -5.59 23.79 12.04
16 Niina PETROKINA 176.53 91.83 54.27 -4.05 22.88 12.60
17 Lorine SCHILD 172.90 82.37 63.55 -4.02 20.48 11.52
18 Madeline SCHIZAS 171.78 88.75 48.75 4.72 20.50 9.06
19 Josefin TALJEGARD 167.47 87.68 46.05 -2.56 22.56 13.74
20 Sarina JOOS 167.04 81.48 60.26 -7.64 20.82 12.12
21 Nataly LANGERBAUR 159.55 79.32 51.15 -1.75 19.41 11.42
22 Tzu-Han TING 157.83 79.47 51.86 -6.67 21.23 11.94
23 Mia RISA GOMEZ 147.13 71.30 54.65 -7.25 19.59 10.84
24 Nella PELKONEN 145.45 78.01 41.56 -2.16 18.29 10.75

PCSは坂本選手が110点に到達しました。当然、これが今季の全演技の中で1位になります。レビト選手とヘンドリックス選手が105点台。その下は98点台のイ・ヘイン選手まで離れます。3位表彰台に乗ったキムチェヨン選手は95.84 キムチェヨン選手は技術点ならレビト選手を上回ったのですが、PCSで大差あってこれだけ点差離れての3位となりました。

ジャンプの基礎点は吉田陽菜選手が1位でした。ただ、本人比では今シーズンだけ見ても大していいスコアでもなかったです。75点台まで出したこともあります。スイスのカイザー選手が2位、キムチェヨン選手が3位。ミスなく上位へ出た選手がジャンプの基礎点は高かったです。坂本選手は6位ですが、それほど差が付きませんでした。千葉選手は抜け2本あって57.34ということで割と平凡でした。

ジャンプの加点は坂本選手が1位。ただ一人二桁加点。さすがです。2位が千葉選手。抜けミスありましたが、飛べたジャンプはきっちり加点を稼ぎました。イ・ヘイン選手はマイナス。吉田陽菜選手もマイナス。ジャンプでもう少し点を取りたいところでした。

スピンは坂本選手が1位です。2位にヘンドリックス選手。3位はイ・ヘイン選手。ただ、今回は25点台がいません。全体的にそれほどスピンのスコアが伸びませんでした。

ステップ系要素はヘンドリックス選手が1位。レビト選手とキムチェヨン選手が2番目で続きます。ただ、14点台なのでそれほどいいわけでもありませんでした。坂本選手は珍しく13点台。ショートもフリーもレベル3ということでスコア伸びませんでした。吉田選手は11点台。ここをしっかりとっていれば5位まではあったのですが、もったいなかったとも思います。

 

以下、個別の要素を見ます

 

トリプルアクセル

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Amber GLENN 1 3A   8.00   1.60 9.60 2.000
FS Hana YOSHIDA 1 3Aq q 8.00   -0.34 7.66 -0.444

今大会でトリプルアクセルを飛んだのは2人。二人ともきれいに着氷しましたが、吉田陽菜選手はqがついてGOEはわずかにマイナスになりました。アンバーグレン選手はこれで今季ISU公認のトリプルアクセル成功が3回目。島田選手を上回って今期の成功回数1位となりました。

 

○3連続ジャンプで平均GOEがプラス

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Kaori SAKAMOTO 9 2A+3T+2T   9.68 x 1.32 11.00 3.111
FS Hana YOSHIDA 9 3S+2A+2T   9.79 x 0.74 10.53 1.667
FS Nina PINZARRONE 6 3Lo+2A+2T   10.45 x 0.49 10.94 0.889
FS Mone CHIBA 7 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.38 9.51 0.556
FS Anastasiia GUBANOVA 8 3F+2T+2T   8.69 x 0.30 8.99 0.556
FS Kimmy REPOND 7 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.23 9.36 0.444
FS Mia RISA GOMEZ 6 2A+1Eu+3S   8.91 x 0.12 9.03 0.222

3連続ジャンプでGOEプラスの評価をもらったのは7人いました。坂本選手の評価は突出しています。日本勢は3人ともプラス評価です。

3連続ジャンプは1.1倍に入れる選手が多いです。疲れているところでの3連続。そこでプラス評価をもらえるようなジャンプをするのはなかなか難しいようです。

 

○セカンド3回転で平均GOEが+2.000を超えるジャンプ

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Kaori SAKAMOTO 8 3F+3T   10.45 x 1.82 12.27 3.444
FS Kaori SAKAMOTO 9 2A+3T+2T   9.68 x 1.32 11.00 3.111
FS Amber GLENN 2 3F+3T   9.50   1.51 11.01 2.889
SP Haein LEE 1 3Lz+3T   10.10   1.60 11.70 2.556
FS Young YOU 1 3Lz+3T   10.10   1.52 11.62 2.556
SP Loena HENDRICKX 1 3F+3T   9.50   1.44 10.94 2.556
FS Chaeyeon KIM 2 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.444
SP Mone CHIBA 1 3F+3T   9.50   1.36 10.86 2.444
FS Madeline SCHIZAS 1 3Lz+3T   10.10   1.35 11.45 2.333
SP Young YOU 1 3Lz+3T   10.10   1.35 11.45 2.222
SP Amber GLENN 1 3F+3T   9.50   1.29 10.79 2.222
FS Mone CHIBA 1 3F+3T   9.50   1.14 10.64 2.222
FS Olga MIKUTINA 1 3Lz+3T   10.10   1.18 11.28 2.000

セカンド3回転は女子では1つの鍵になるジャンプです。これも最高評価は坂本花織選手でした。+3超えは坂本選手のみです。上位の選手はほとんどここに名を連ねていますがレビト選手がいません。セカンド3回転苦手でセカンドループにしてみたりと苦慮していますがそれがこの辺にも出ています。また、吉田陽菜選手も名前が無く、余りコンビネーションで加点を稼げませんでした。

 

○ステップで平均GOE+3.000以上

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
SP Loena HENDRICKX 5 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.222
SP Haein LEE 7 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.889
SP Isabeau LEVITO 6 StSq3   3.30   1.23 4.53 3.778
FS Kaori SAKAMOTO 5 StSq3   3.30   1.13 4.43 3.444
SP Josefin TALJEGARD 6 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.333
SP Chaeyeon KIM 6 StSq4   3.90   1.23 5.13 3.222
SP Amber GLENN 6 StSq3   3.30   1.08 4.38 3.222
FS Haein LEE 11 StSq3   3.30   1.08 4.38 3.222
FS Isabeau LEVITO 11 StSq4   3.90   1.23 5.13 3.111
SP Niina PETROKINA 6 StSq3   3.30   1.04 4.34 3.111
FS Loena HENDRICKX 11 StSq3   3.30   0.99 4.29 3.000

ステップはGOEとレベルがいまいち相関しない要素です。+4超えがヘンドリックス選手。平均GOE+4.222は今期全体で最高の評価です。今シーズン+4.000を超えるステップはヘンドリックス選手しか出すことができませんでした。

これも上位の選手が軒並み名を連ねている一方、下位の方からスウェーデンのタイガード選手が入ってきています。タイガード選手はステップが得意で今シーズン他の試合でもこれより高い評価を複数回受けています。

 

○コレオで平均GOE+2.600以上

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Kaori SAKAMOTO 10 ChSq1   3.00   1.86 4.86 3.556
FS Olga MIKUTINA 11 ChSq1   3.00   1.71 4.71 3.333
FS Loena HENDRICKX 6 ChSq1   3.00   1.57 4.57 3.111
FS Isabeau LEVITO 7 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.000
FS Amber GLENN 10 ChSq1   3.00   1.43 4.43 2.889
FS Anastasiia GUBANOVA 6 ChSq1   3.00   1.36 4.36 2.778
FS Mone CHIBA 6 ChSq1   3.00   1.36 4.36 2.667
FS Josefin TALJEGARD 6 ChSq1   3.00   1.36 4.36 2.667

コレオは全体的にステップよりも評価が低めでした。ここでも最高評価は坂本花織選手です。2番目にミクティナ選手がいます。ヨーロッパ選手権でも+3.111まで出していましたし、+3台は普通に出してくる選手です。

 

○平均GOE+3.400以上の要素

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Mone CHIBA 12 LSp4   2.70   1.23 3.93 4.556
SP Kaori SAKAMOTO 1 2A   3.30   1.46 4.76 4.333
SP Loena HENDRICKX 5 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.222
FS Kaori SAKAMOTO 1 2A   3.30   1.41 4.71 4.222
SP Loena HENDRICKX 3 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
FS Loena HENDRICKX 12 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
SP Haein LEE 7 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.889
SP Mone CHIBA 7 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.889
FS Isabeau LEVITO 5 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.778
SP Isabeau LEVITO 6 StSq3   3.30   1.23 4.53 3.778
SP Loena HENDRICKX 7 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.778
SP Nina PINZARRONE 7 LSp4   2.70   1.00 3.70 3.778
FS Kaori SAKAMOTO 10 ChSq1   3.00   1.86 4.86 3.556
FS Loena HENDRICKX 5 CCoSp3   3.00   1.07 4.07 3.556
FS Kaori SAKAMOTO 8 3F+3T   10.45 x 1.82 12.27 3.444
FS Kaori SAKAMOTO 11 3Lo   5.39 x 1.68 7.07 3.444
FS Kaori SAKAMOTO 5 StSq3   3.30   1.13 4.43 3.444
SP Isabeau LEVITO 3 FCSp4   3.20   1.14 4.34 3.444
SP Isabeau LEVITO 7 LSp4   2.70   0.96 3.66 3.444

今大会のすべての要素の中の最高評価は、千葉百音選手のフリー最後のレイバックスピンでした。平均GOE+4.556です。レイバックスピンはジュニアの頃から得意な要素で、平均GOE+4.556はこれで4度目です。

坂本花織選手のダブルアクセルがそれに続きます。なかなかジャンプで+4まで出してくる選手は女子ではいません。今期、ジャンプで平均GOE+4.000以上を出したのは坂本選手のみですが、その坂本選手はダブルアクセルジャパンオープンいれると11回の+4.000以上がありました。

他はヘンドリックス選手とレビト選手の名前が目立ちます。

 

前回と比べて全体的にスコアが伸びにくい試合でした。とはいえNHK杯のような理不尽さを感じるような判定でもなく、結構しっかり取りますねえ今回、というくらいな、厳しいというのがいいのかきちんとしているというのがいいのか、際どいところですが結構、エッジ、回転、レベル、チェックされていたように感じました。

日本勢は1位7位8位で来期3枠獲得。千葉選手、吉田選手の2人も、結果を見ると、やはり表彰台まではチャンスあったんだけどなあ、ともったいない思いもあります。初出場だか、まだ若いから、という見立てもあるかもしれませんが、2位と3位の2人は、千葉選手、吉田選手よりも若いです。そして、日本は、1度チャンスを逃すと次のシーズンにまた代表になれるとは限らない。2人は来期も代表になれるでしょうか。

女子は今季は結局主要大会は派遣できないヨーロッパ選手権以外はすべて日本が獲りました。昨季も同様。日本1強、というには結構僅差な試合も多いですがなんだかんだで勝っています。オリンピック以降変わらない構図。来期もこれを続けていけるでしょうか。

 

次回からは男子です。