世界選手権24 男子シングルレビュー3

前回の続きで男子シングルのレビュー、3回目です。

 

○ショートフリー合わせた要素別のスコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Ilia MALININ 333.76 135.28 127.59 32.62 24.55 13.72
2 Yuma KAGIYAMA 309.65 140.07 104.24 23.75 26.23 16.36
3 Adam SIAO HIM FA 284.39 134.36 104.32 8.84 23.45 16.42
4 Shoma UNO 280.85 136.07 104.16 0.99 25.51 16.12
5 Jason BROWN 274.33 139.90 76.86 13.17 27.62 16.78
6 Lukas BRITSCHGI 274.09 128.97 90.69 14.51 24.75 15.17
7 Deniss VASILJEVS 257.80 131.26 78.20 8.30 25.15 14.89
8 Kao MIURA 254.72 124.24 98.38 1.51 20.99 12.60
9 Nikolaj MEMOLA 253.12 120.11 87.71 11.74 19.79 13.77
10 Junhwan CHA 249.65 124.89 89.05 -1.55 23.66 15.60
11 Aleksandr SELEVKO 247.57 122.18 85.02 3.08 22.89 14.40
12 Mark GORODNITSKY 243.25 116.68 78.82 12.51 21.84 13.40
13 Nika EGADZE 241.55 113.41 97.79 0.20 19.80 12.35
14 Mikhail SHAIDOROV 234.19 108.75 105.33 -9.47 20.51 11.07
15 Donovan CARRILLO 232.67 112.06 86.34 -2.62 23.23 13.66
16 Gabriele FRANGIPANI 231.38 115.02 87.89 -2.27 19.30 12.44
17 Wesley CHIU 227.21 111.84 87.20 -3.29 20.86 10.60
18 Hyungyeom KIM 222.79 101.69 85.32 1.97 21.50 12.31
19 Roman SADOVSKY 221.57 115.29 79.87 -8.65 23.02 12.04
20 Camden PULKINEN 219.86 112.62 84.76 -6.37 19.92 10.93
21 Luc ECONOMIDES 217.10 110.66 78.96 -5.15 20.77 12.86
22 Semen DANILIANTS 213.99 97.65 88.85 -0.31 16.86 10.94
23 Andreas NORDEBACK 211.45 106.49 70.93 -0.09 21.97 12.15
24 Sihyeong LEE 207.59 99.49 86.15 -6.97 20.43 11.49

PCSは鍵山選手が1位の140点超え。今期は自身の4大陸選手権と、その上にグランプリファイナルの宇野昌磨選手のスコアがあります。世界選手権が最高値にならない、というのもちょっと珍しいかもしれないです。2位がジェイソンブラウン選手、3位に宇野昌磨選手。マリニン選手がPCSでも4番目。1位と4.79差。PCSハンデはもうほぼなくなっています。

ジャンプの基礎点はショートフリー合わせてマリニン選手は127.59まで出しています。2位はシャイドロフ選手の105.33でした。3位にアダムシャオイムファ選手で104.32 基礎点だけ高くても上位には来ない、というのは確かですが、マリニン選手はその基礎点の構成をしっかりこなすのでとんでもないことになりました。鍵山選手、宇野選手も104点台。およそ23点のジャンプの基礎点差をどうこれから補っていくか。課題というか難題です。

ジャンプの加点も32.62のマリニン選手が圧倒的な1位。鍵山選手は23.75で2番目に続いています。ブリッチギー選手の14.51が3番目。鍵山選手の23.75でも十分高いのですが、マリニン選手がとびぬけすぎました。一方、宇野選手は+0.99 三浦選手は+1.51 2人とも今大会はとても満足いくような出来とは言えずに終わったようです。

スピンはジェイソンブラウン選手の27.62が1位。27点台は今シーズンただ一人の記録です。鍵山選手がここでも2位。宇野選手が3位です。このあたりは宇野選手もしっかり点を稼いでいます。三浦選手は20.99で鍵山選手と5.24差。大きな差がついています。

ステップ系要素もジェイソンブラウン選手が16.78で1位です。今期シーズン全体で1位。やはりスピンステップはジェイソンブラウン選手が一日の長があります。アダムシャオイムファ選手が2位で鍵山選手が3位です。マリニン選手は13.72 14点台までは出す選手ですから本人比でステップはそれほどいいわけではありませんでした。三浦選手は12.60 ステップ系要素だけで鍵山選手と3.76差があります。スピンステップで9点差。鍵山選手に勝つには、少なくとも鍵山選手より常に4回転を最低1本、できれば2本多くないといけない、というような計算になります。中位なら4回転だけで勝負できますが、上位で勝負するにはスピンステップもある程度点が取れることが最低限必要になってきそうです。

 

以下、個別の要素を見ます

 

○4回転アクセル

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Ilia MALININ 1 4A   12.50   3.93 16.43 3.111

4回転アクセルを飛んだのは当然マリニン選手1人だけです。今期は2回目の成功で平均GOE+3.111は今季最高の出来です。ISU公認試合としては通算6回目のGOEプラスの成功ジャンプとなりました。

 

○4回転ルッツ

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Ilia MALININ 2 4Lz   11.50   4.44 15.94 3.889
FS Ilia MALININ 7 4Lz+1Eu+3F   19.03 x 4.27 23.30 3.778
FS Adam SIAO HIM FA 1 4Lz   11.50   3.61 15.11 3.111
SP Nikolaj MEMOLA 1 4Lz   11.50   3.29 14.79 3.000
SP Ilia MALININ 2 4Lz+3T   15.70   3.29 18.99 2.889
FS Nikolaj MEMOLA 1 4Lz   11.50   0.33 11.83 0.222
SP Mikhail SHAIDOROV 1 4Lz   11.50   -1.15 10.35 -0.889
SP Adam SIAO HIM FA 1 4Lz   11.50   -3.29 8.21 -2.889
FS Mikhail SHAIDOROV 1 4Lz F 11.50   -5.75 5.75 -5.000

4回転ルッツは今大会は4選手が9回飛びました。成功ジャンプは3人で6本です。シャイドロフ選手はショートでわずかなマイナスまで来ましたが、GOEプラスの成功まではありませんでした。

マリニン選手は3本成功。2つはコンビネーション。トリプルルッツ並みの成功率、加点です。フリーの単独ルッツは平均GOE+3.889 これは今シーズンのISU公認試合としては最高評価です。

 

○4回転フリップ

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
SP Shoma UNO 1 4F   11.00   4.56 15.56 4.222
FS Yuma KAGIYAMA 2 4F   11.00   4.56 15.56 4.111
FS Mikhail SHAIDOROV 2 4F! ! 11.00   -0.31 10.69 -0.222
FS Shoma UNO 2 4Fq q 11.00   -5.19 5.81 -4.444

4回転フリップは3選手が飛びました。宇野選手はショートで、鍵山選手はフリーで成功。シャイドロフ選手は!がついてわずかなマイナスでした。

今シーズン4回転フリップでGOEプラスの成功ジャンプをISU公認試合で決めたのは結局この3選手でした。最高評価は宇野選手のこの+4.222です。鍵山選手はこれが初成功ともなりました。

 

○4回転ループ

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Ilia MALININ 3 4Lo   10.50   2.70 13.20 2.556
FS Shoma UNO 1 4Loq F 10.50   -5.25 5.25 -5.000
FS Kao MIURA 1 4Lo<< F 4.90   -2.45 2.45 -5.000

4回転ループは3選手が飛んで、成功した宇野はマリニン選手のみでした。

今期4回転ループをISU公認試合でGOEプラスの成功ジャンプを決めたのは3人だけです。マリニン選手、宇野選手にマッテオリッツォ選手。三浦選手は成功させることができませんでした。

 

○4回転サルコウが入る要素で平均GOEがプラス

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
SP Kao MIURA 1 4S   9.70   4.02 13.72 4.111
FS Yuma KAGIYAMA 1 4S   9.70   3.88 13.58 3.889
SP Yuma KAGIYAMA 1 4S   9.70   3.60 13.30 3.667
FS Adam SIAO HIM FA 4 4S   9.70   3.19 12.89 3.222
FS Ilia MALININ 4 4S   9.70   2.91 12.61 3.111
FS Junhwan CHA 1 4S   9.70   2.49 12.19 2.556
SP Nika EGADZE 1 4S+3T   13.90   2.36 16.26 2.444
SP Roman SADOVSKY 1 4S   9.70   2.08 11.78 2.111
FS Donovan CARRILLO 1 4S   9.70   1.52 11.22 1.556
FS Nika EGADZE 2 4S+2T   11.00   1.52 12.52 1.444
SP Donovan CARRILLO 1 4S   9.70   0.83 10.53 0.778

サルコウになると多くの人が飛んできます。GOEプラスの成功ジャンプは11本ありました。最高評価は三浦佳生選手。ショートの冒頭のサルコウジャンプは素晴らしかったです。平均GOE+4超えは今大会では1人だけでした。鍵山選手がそれに次ぐ評価でショートフリー共に冒頭のジャンプを決めています。

他に2本決めたのがメキシコのカリーヨ選手。メキシコ史上最高の選手と言ってよいかと思います。

 

○4回転トーループが入る要素で平均GOE+2.000以上

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Yuma KAGIYAMA 3 4T+1Eu+3S   14.30   3.66 17.96 3.889
SP Ilia MALININ 1 4T   9.50   3.66 13.16 3.889
SP Yuma KAGIYAMA 2 4T+3T   13.70   3.39 17.09 3.556
FS Kao MIURA 7 4T+3T   15.07 x 3.26 18.33 3.333
FS Adam SIAO HIM FA 5 4T   10.45 x 3.26 13.71 3.333
FS Aleksandr SELEVKO 1 4T   9.50   3.12 12.62 3.333
FS Shoma UNO 6 4T   10.45 x 2.99 13.44 3.222
SP Junhwan CHA 2 4T   9.50   2.58 12.08 2.667
FS Lukas BRITSCHGI 1 4T+3T   13.70   2.44 16.14 2.556
FS Adam SIAO HIM FA 2 4T+3T   13.70   2.31 16.01 2.556
SP Nika EGADZE 2 4T   9.50   2.44 11.94 2.556
FS Ilia MALININ 8 4T+3T   15.07 x 2.17 17.24 2.222
FS Nika EGADZE 1 4T   9.50   2.17 11.67 2.222
SP Gabriele FRANGIPANI 1 4T+3T   13.70   2.17 15.87 2.111
FS Mikhail SHAIDOROV 3 4T+3T   13.70   1.90 15.60 2.000

4回転トーループは男子ではもはや標準装備が当たり前くらいの要素になっています。GOEプラス2以上で切っても多数の選手が出してきます。

最高評価はマリニン選手の単独ジャンプもありますが、鍵山選手が3連続で平均GOE+3.889というすごい評価を受けました。ショートの単独トーループも+3.556 やはり鍵山選手のジャンプの質は極めて高いです。この質のまま本数が増えるとすごいてんすうになっていきます。

 

○平均GOE+4.000以上の要素

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
SP Adam SIAO HIM FA 6 StSq4   3.90   1.95 5.85 4.778
FS Jason BROWN 8 StSq4   3.90   1.89 5.79 4.778
FS Jason BROWN 10 ChSq1   3.00   2.36 5.36 4.667
FS Yuma KAGIYAMA 10 StSq4   3.90   1.78 5.68 4.556
FS Jason BROWN 7 CCoSp4   3.50   1.60 5.10 4.556
FS Jason BROWN 12 CCSp4   3.20   1.46 4.66 4.556
SP Yuma KAGIYAMA 6 StSq4   3.90   1.78 5.68 4.444
SP Shoma UNO 5 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
SP Jason BROWN 6 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
FS Shoma UNO 5 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
SP Shoma UNO 1 4F   11.00   4.56 15.56 4.222
FS Adam SIAO HIM FA 7 StSq4   3.90   1.67 5.57 4.222
FS Yuma KAGIYAMA 12 FCCoSp4   3.50   1.55 5.05 4.222
FS Deniss VASILJEVS 12 ChSq1   3.00   2.14 5.14 4.222
FS Yuma KAGIYAMA 2 4F   11.00   4.56 15.56 4.111
SP Kao MIURA 1 4S   9.70   4.02 13.72 4.111
SP Ilia MALININ 4 3A   8.80 x 3.31 12.11 4.111
FS Deniss VASILJEVS 6 StSq3   3.30   1.32 4.62 4.111
SP Junhwan CHA 7 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
SP Jason BROWN 7 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
FS Adam SIAO HIM FA 10 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
FS Yuma KAGIYAMA 8 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
FS Deniss VASILJEVS 11 FSSp4   3.00   1.20 4.20 4.000

今大会は満点が1つ、アダムシャオイムファ選手のショートのステップでありました。ジャンプが壊滅だったので落ち込むキスアンドクライだったのですが、そんな中で満点要素があるという不思議構図です。ただし、1人のジャッジは+3評価だったので平均GOEは+4.778となっています。

上位の要素は鍵山選手、ジェイソンブラウン選手、宇野昌磨選手が目立ちます。スピンやステップ系の要素の方が高い平均GOEを得やすいですが、男子の場合はジャンプでも+4以上を出してきます。意外とマリニン選手は単独トリプルアクセルの1つだけ。まだジャンプの質なら鍵山選手、宇野選手も勝負になります。

 

男子は、新時代が始まりました。女子の坂本選手の3連覇は非常に久しぶりの3連覇という扱い。次々に優勝者が変わるというのが女子の基本構図。一方、男子は1度優勝した選手は基本的に何度も優勝する、という形で今世紀も来ています。マリニン選手は今大会初優勝。19歳で初優勝したら何回優勝するのか? ただ、2位3位、鍵山選手、アダムシャオイムファ選手も全く届かない水準ではない、というところは見せてくれました。オリンピックまであと2年。今の構成では届かないですが、構成上げればないことも無い。

宇野選手は・・・、どうするんですかね。4回転4種類5本を組んでノーミス出来ればまだチャンスは残ると思っているんですが・・・。権利はほぼなかったとはいえ、ソチの代表選考の最終グループで滑っていたわけで、勤続疲労も積もってきているのも見て取れます。

 

これで今シーズンはほぼ終わりです。国際B級大会はまだありますが日本からの派遣は無い模様。国内ローカルはいくつか残っていますが、トップ選手が真剣に滑るレベルの試合はありません。オリンピックの中間年は一番静かに終わります。

来期はオリンピック前シーズン。冒険プログラムはこの辺まででしょうか。今期のプログラム、ノーミスするまでやってほしかった選手も何人かいますが、それはそれ、新しいプログラムも心待ちにしたいと思います。