世界選手権24 男子シングルレビュー1

前回まで女子シングルの振り返りをしていましたが今回からは男子シングルです。

女子の時と同じ流れで進みます。

 

ショートプログラム要素別スコア

Pl Name Nation J Base J GOE Spin Step PCS
1 Shoma UNO JPN 33.50 8.52 12.84 5.63 47.23
2 Yuma KAGIYAMA JPN 32.20 9.39 12.62 5.68 46.46
3 Ilia MALININ USA 34.00 10.26 12.51 4.53 44.67
4 Jason BROWN USA 24.41 4.85 13.06 5.63 45.92
5 Lukas BRITSCHGI SUI 28.19 5.23 11.86 5.24 42.89
6 Nikolaj MEMOLA ITA 30.61 7.21 10.60 4.96 39.72
7 Nika EGADZE GEO 32.20 6.40 10.11 4.79 38.58
8 Deniss VASILJEVS LAT 24.20 4.24 12.24 5.13 43.61
9 Junhwan CHA KOR 29.30 -0.56 12.07 5.46 42.94
10 Kao MIURA JPN 28.15 -0.39 11.66 4.29 42.29
11 Roman SADOVSKY CAN 27.80 2.57 11.16 4.15 38.60
12 Aleksandr SELEVKO EST 28.61 0.04 10.77 4.53 40.13
13 Gabriele FRANGIPANI ITA 32.20 -1.65 9.33 4.85 38.90
14 Mark GORODNITSKY ISR 23.99 3.37 10.77 4.90 37.46
15 Donovan CARRILLO MEX 27.89 -0.19 11.40 4.79 36.30
16 Mikhail SHAIDOROV KAZ 34.57 -4.26 10.04 3.58 36.09
17 Camden PULKINEN USA 28.61 -1.63 10.99 3.23 38.65
18 Wesley CHIU CAN 25.29 0.69 10.83 3.21 37.98
19 Adam SIAO HIM FA FRA 27.10 -8.58 11.83 5.85 42.29
20 Andreas NORDEBACK SWE 23.93 0.73 11.66 4.05 35.83
21 Hyungyeom KIM KOR 23.93 1.47 10.86 3.91 34.72
22 Luc ECONOMIDES FRA 24.41 -0.78 10.64 4.38 36.37
23 Semen DANILIANTS ARM 28.61 -0.44 9.23 3.91 32.15
24 Sihyeong LEE KOR 28.61 -2.90 10.17 4.46 34.89
25 Vladimir LITVINTSEV AZE 27.95 -3.91 10.90 3.08 35.14
26 Davide LEWTON BRAIN MON 18.30 3.00 11.60 3.96 34.72
27 Maurizio ZANDRON AUT 24.01 0.42 9.38 3.58 32.20
28 Tomas-Llorenc GUARINO SABATE ESP 21.13 0.27 10.26 3.82 32.87
29 Jari KESSLER CRO 17.65 0.60 11.55 4.68 33.84
30 Burak DEMIRBOGA TUR 23.93 -1.19 9.74 3.72 31.98
31 Vladimir SAMOILOV POL 28.81 -5.34 9.77 2.11 32.46
32 Nikita STAROSTIN GER 19.23 -0.45 10.99 4.46 33.11
33 Ivan SHMURATKO UKR 20.13 -0.47 10.78 3.82 33.64
34 Valtter VIRTANEN FIN 17.93 0.41 11.00 4.51 33.70
35 Adam HAGARA SVK 23.99 -1.53 6.06 3.63 33.22
36 Georgii RESHTENKO CZE 18.80 1.22 9.71 3.77 31.85
37 Alexander ZLATKOV BUL 18.63 1.68 10.74 2.90 30.82
38 Edward APPLEBY GBR 21.09 -5.64 9.54 3.49 32.03
39 Boyang JIN CHN 10.10 -1.68 9.84 4.96 35.31
40 Aleksandr VLASENKO HUN 14.70 -1.74 8.63 2.64 27.27

多いよ40人。フリー進出ラインは72.23でした。昨シーズンは70.29でしたので幾分上がりました。

ジャンプの基礎点は軒並み30点を男子は超えてきます。1位はマリニン選手、ではなくてシャイドロフ選手でした。4回転ルッツがありつつ、後半に4-3を入れたのが大きかったのですが、基礎点取れたもののステップアウトで点は伸びずに上位進出はならずという構図でした。2番目にマリニン選手がいて宇野選手が3番目です。ジェイソンブラウン選手は24.41でシャイドロフ選手とは10.16の差がジャンプの基礎点だけでありますが、スコアははるかに上回りました。基礎点だけあってもダメ、ということです。

ジャンプのGOEはマリニン選手が1位です。結果としてジャンプのスコアはやはりマリニン選手が1位でした。GOEは鍵山選手が2位で宇野選手が3位。出来が良くないと上位には来ません。アダムシャオイムファ選手は-8.58で全選手中最下位。これだと優勝争いからは脱落です。ジェイソンブラウン選手は加点はしっかり取っていて、ジャンプのスコアとしては全体10位です。4回転が無いというだけで、ジャンプで点が取れないということでもないです。さすがに優勝争いは厳しいですが表彰台争いくらいまでは展開次第で来るわけです。

そんなジェイソンブラウン選手がスピンはただ一人13点台で1位。今期の男子でショートのスピン1位のスコアになります。宇野選手が2位で鍵山選手が3位。マリニン選手も4番目で続きます。ジャンプがすごい、ステップも見せ場がある、というのはわかりやすいですがマリニン選手にとってスピンも穴の要素ではなくなっています。

ステップはアダムシャオイムファ選手が満点で1位でした。2位に鍵山選手、3位に宇野選手とジェイソンブラウン選手です。マリニン選手はレベル3だったことでややスコアが落ちます。

PCSは宇野選手が1位、鍵山選手が2位でジェイソンブラウン選手が3位です。ショートのPCS差として宇野選手とマリニン選手は2.56 鍵山選手とマリニン選手だと1.79 ジャンプで負けてもPCS差で賄う、というにはもう小さな差しかありませんが、ショートだけで見るなら、ルッツとサルコウの基礎点差よりはPCS差がありますので、まだなんとかなるとも言えます。結果、ショートはこの順位の並びになりました。三浦選手は42.29なので宇野選手と4.94の差があります。これだけあると技術点で補うには少し苦しくなるので、こちらのスコアももう少し上げないと最上層で戦うには少し苦しそうです。

 

○総合上位6選手のショートプログラム構成

 

Ilia

MALININ

Yuma

KAGIYAMA

Adam SIAO

HIM FA

Shoma

UNO

Jason

BROWN

Lukas

BRITSCHGI

1 4T 4S 4Lz 4F 3F 4T+3T
2 4Lz+3T 4T+3T 3A 4T+3T 3A 3A
3 CCSp4 CCSp4 4T<+COMBO FCSp4 FSSp4 CSSp4
4 3A 3A FCSp4 3A 3Lz+3T 3Lz
5 FSSp4 FSSp4 CCoSp3 StSq4 CCSp4 FCSp4
6 StSq3 StSq4 StSq4 CSSp4 StSq4 StSq4
7 CCoSp4 CCoSp4 CSSp4 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp3
Base 47.00 45.80 40.20 47.10 38.01 41.29
GOE 14.30 14.09 -4.00 13.39 9.94 9.23
PCS 44.67 46.46 42.29 47.23 45.92 42.89
Total 105.97 106.35 77.49 107.72 93.87 93.41

上位4選手は4回転2本構成。ルッツとトーループがマリニン選手とアダムシャオイムファ選手、宇野選手はフリップとトーループ、鍵山選手はサルコウトーループです。ジェイソンブラウン選手は4回転無し。ブリッチギー選手はトーループ1本構成です。

ステップでレベル3だったマリニン選手はショートプログラム全体の基礎点としては宇野選手にわずかに劣りました。

1.1倍に4回転を入れる選手はこの中にはいませんでした。アダムシャオイムファ選手は最後のジャンプが4回転からのコンビネーションですが、これは前半に入っていて1.1倍になりません。今回たまたまタイミングが早くて後半に入らなかった、というものではなく、常時前半になっています。他の選手は最初に2つジャンプを飛んで、3つ目にスピンを入れて、後半の時間帯になる4つ目の要素で最後のジャンプを飛ぶ。4回転2本の選手はここにトリプルアクセルが来がち。構成の均質化がやはり見られます。

最後は全員スピンで締める。足替えのコンビネーションスピン。アダムシャオイムファ選手だけ足替えのシットスピンです。女子もそうですが、みんなスピンで終わる傾向がどうしてもあります。

スピンはマリニン選手、鍵山選手、宇野選手、ジェイソンブラウン選手はすべてレベル4 ステップはマリニン選手以外レベル4です。

GOEはマリニン選手が最も稼ぎました。アダムシャオイムファ選手は厳しいショートでした。ジェイソンブラウン選手、ブリッチギー選手も10点近い加点。これくらい稼げると90点台までは4回転2本入れなくても持っていけます。

PCSは45点くらいまでもってくると、その上の幅が小さいので差が付きにくい。マリニン選手もその領域まで入ってきました。宇野選手の47.23は今大会の1位というだけでなく今シーズン1位のショートPCSです。宇野選手は今期全体でこの世界選手権、グランプリファイナル、NHK杯の3試合で今シーズン全体のショートPCSの1位2位3位となっていました。PCS評価は今季も宇野選手が王者です。

 

○総合7~12位の選手のショートプログラム構成

 

Deniss

VASILJEVS

Kao

MIURA

Nikolaj

MEMOLA

Junhwan

CHA

Aleksandr

SELEVKO

Mark

GORODNITSKY

1 3Lz+3T 4S 4Lz 4S+3T<< 4Tq 3A
2 3F! 3A 3A 4T 3A 3F+3T
3 CCSp4 FCSp3 FCSp4 FCSp4 CCSp4 FCSp4
4 3A 4T+COMBO 3Lz+3T 3A 3Lz+3T 3Lz!
5 StSq4 StSq3 StSq4 CSSp4 StSq3 StSq4
6 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 FSSp4 CCoSp3
7 FSSp4 CSSp4 CSSp4 StSq4 CCoSp3 CSSp4
Base 37.80 40.75 44.21 42.90 41.11 37.09
GOE 8.01 2.96 9.17 3.37 2.84 5.94
PCS 43.61 42.29 39.72 42.94 40.13 37.46
Total 89.42 85.00 93.10 88.21 84.08 80.49

三浦選手、チャジュンファン選手といった上位を狙った選手はサルコウトーループで4回転2本。メモラ選手はルッツの1本、セレフコ選手はトーループ1本、バシリエフス選手とゴロニツキー選手は4回転無しです。

後半に4回転を入れ込んだのは三浦選手。得意のトーループだったはずですがこれが転倒、裏目に出ます。このトーループ転倒がこの試合の勝負の分かれ目でした。

4回転2本入れてミスをするよりも、ルッツで基礎点高いこともありますが4回転1本のメモラ選手の方が基礎点が高くなりました。4回転無しの2選手は37点台の基礎点。この基礎点差で上位へ行くには相当な加点が求められます。

ここもスピンで締める選手が多いですがチャジュンファン選手はステップで締めます。今期ステップで締めるショートプログラムを組んでいるのは有力選手ではチャジュンファン選手の他にはケビンエイモズ選手がいるくらいでした。なかなか特徴的です。

メモラ選手とバシリエフス選手は二桁近い加点を得ました。チャジュンファン選手、三浦選手、転倒が出るとやはり加点は伸びません。

PCSは40点前後。バシリエフス選手は43.61と40点台中盤に近いところまで出しました。4回転持たずに上位へ行くにはこれくらいのPCSは欲しそうです。

 

ショートプログラム上位20人のPCS

Name J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Shoma UNO 28.00 27.50 29.00 28.25 28.50 28.50 28.75 27.50 28.50
Yuma KAGIYAMA 27.75 27.25 29.00 27.75 27.75 29.00 27.50 27.00 28.00
Ilia MALININ 27.75 26.75 27.00 26.50 29.00 24.00 27.50 26.50 25.25
Jason BROWN 27.25 27.75 27.75 27.25 26.25 28.50 29.25 27.50 26.00
Lukas BRITSCHGI 25.50 26.00 25.50 25.25 26.50 25.25 26.00 25.75 25.50
Nikolaj MEMOLA 23.75 24.75 23.00 23.00 24.00 22.75 25.25 26.50 22.25
Nika EGADZE 24.25 24.50 23.75 21.75 25.50 22.00 22.00 23.25 21.50
Deniss VASILJEVS 25.25 26.25 25.75 25.75 27.25 25.75 27.25 26.00 26.25
Junhwan CHA 25.75 26.00 27.25 25.50 27.50 25.50 25.25 24.25 24.75
Kao MIURA 25.75 25.25 25.25 24.00 27.25 26.25 26.00 24.00 24.50
Roman SADOVSKY 21.75 22.75 24.50 23.25 22.25 23.00 25.75 24.25 21.25
Aleksandr SELEVKO 25.00 23.75 24.50 23.50 23.75 24.50 21.25 23.25 25.50
Gabriele FRANGIPANI 24.50 23.50 23.25 23.25 24.25 23.50 22.25 22.25 23.00
Mark GORODNITSKY 22.00 20.00 22.50 22.75 20.75 21.75 23.75 23.50 24.00
Donovan CARRILLO 22.00 21.75 22.25 21.00 21.25 20.75 24.25 22.50 20.75
Mikhail SHAIDOROV 21.75 21.50 22.00 21.25 22.00 21.00 20.50 21.75 22.50
Camden PULKINEN 22.75 21.25 22.50 23.25 24.50 22.00 25.00 25.50 22.25
Wesley CHIU 23.75 23.00 23.00 21.50 22.75 24.00 22.00 22.75 22.25
Adam SIAO HIM FA 26.25 26.00 26.00 24.25 26.00 24.75 24.75 25.25 24.00
Andreas NORDEBACK 21.25 20.00 22.75 21.00 21.75 21.75 21.25 21.00 22.25

PCSのスコアが高い選手は比較的ジャッジ毎の評価差が小さい傾向はあったかもしれません。その辺は上限が近いのでキャップされている影響かとも思います。

そんな中でジャッジ毎の差が大きかったのがマリニン選手。最高は29.00までつけたジャッジもいた一方で、最低は24.00がいます。係数掛けるまで5点。係数掛けると8.35もの差が出ます。ジャンプはともかく滑りはまだまだだ、と見るジャッジと、滑りももう世界の頂点の水準だ、と見るジャッジそれぞれいるようです。

他にも、メモラ選手、エガゼ選手、サドフスキー選手、セレフコ選手あたりはジャッジ毎の差が大きいです。ジャンプ型の選手がいい演技をしたとき、PCS評価が分かれがちなのかもしれません。

 

ショートプログラム上位20人のジャッジ別PCS順位

Name J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Shoma UNO 1 2 1 1 2 2 2 1 1
Yuma KAGIYAMA 2 3 1 2 3 1 3 3 2
Ilia MALININ 2 4 5 4 1 10 3 4 7
Jason BROWN 4 1 3 3 8 2 1 1 4
Lukas BRITSCHGI 8 6 8 7 7 7 6 7 5
Nikolaj MEMOLA 13 10 14 14 13 14 9 4 14
Nika EGADZE 12 11 12 17 10 15 17 14 19
Deniss VASILJEVS 9 5 7 5 5 5 5 6 3
Junhwan CHA 6 6 4 6 4 6 9 10 8
Kao MIURA 6 9 9 9 5 4 6 12 9
Roman SADOVSKY 18 15 10 11 16 13 8 10 21
Aleksandr SELEVKO 10 12 10 10 14 9 20 14 5
Gabriele FRANGIPANI 11 13 13 11 12 12 16 19 12
Mark GORODNITSKY 16 25 17 15 27 18 14 13 10
Donovan CARRILLO 16 17 19 21 22 26 13 17 26
Mikhail SHAIDOROV 18 18 20 19 17 24 25 20 13
Camden PULKINEN 15 20 17 11 11 15 11 8 14
Wesley CHIU 13 14 14 18 15 10 17 16 14
Adam SIAO HIM FA 5 6 6 8 9 8 12 9 10
Andreas NORDEBACK 22 25 16 21 19 18 20 23 14

ジャッジ毎にその選手をPCSで全体の何位と付けたか? を見ています。宇野選手を1位と付けたジャッジが5人、ジェイソンブラウン選手を1位としたジャッジが3人、鍵山選手1位が2人、マリニン選手1位が1人います。同点1位もあります。

宇野選手は全ジャッジが1以下2位、鍵山選手も1位から3位までですが、ジェイソンブラウン選手は1位から8位まで割れます。マリニン選手は1位から10位まで評価が分かれます。

意外とジャッジ毎の差がついていないのがブリッチギー選手。5位から8位までの間に収まっています。ちょっと不思議な傾向です。

こうやって眺めると、このジャッジは他と傾向が違う、みたいなことがあるわけでもなく、どのジャッジもなぜかこの選手の順位が高いとか低いとかがそれぞれある、というように見えます。強いて言うなら、6番ジャッジは日本が好き? と思ったりはしました。

 

 

次回フリーへ続きます。