世界選手権24 男子シングルレビュー2

前回の続き、男子フリー編です。

 

○フリーの要素別スコア

Pl Name Nation J Base J GOE Spin Step PCS
1 Ilia MALININ USA 93.59 22.36 12.04 9.19 90.61
2 Adam SIAO HIM FA FRA 77.22 17.42 11.62 10.57 92.07
3 Yuma KAGIYAMA JPN 72.04 14.36 13.61 10.68 93.61
4 Lukas BRITSCHGI SUI 62.50 9.28 12.89 9.93 86.08
5 Jason BROWN USA 52.45 8.32 14.56 11.15 93.98
6 Shoma UNO JPN 70.66 -7.53 12.67 10.49 88.84
7 Kao MIURA JPN 70.23 1.90 9.33 8.31 81.95
8 Deniss VASILJEVS LAT 54.00 4.06 12.91 9.76 87.65
9 Aleksandr SELEVKO EST 56.41 3.04 12.12 9.87 82.05
10 Mark GORODNITSKY ISR 54.83 9.14 11.07 8.50 79.22
11 Junhwan CHA KOR 59.75 -0.99 11.59 10.14 81.95
12 Nikolaj MEMOLA ITA 57.10 4.53 9.19 8.81 80.39
13 Mikhail SHAIDOROV KAZ 70.76 -5.21 10.47 7.49 72.66
14 Donovan CARRILLO MEX 58.45 -2.43 11.83 8.87 75.76
15 Nika EGADZE GEO 65.59 -6.20 9.69 7.56 74.83
16 Wesley CHIU CAN 61.91 -3.98 10.03 7.39 73.86
17 Gabriele FRANGIPANI ITA 55.69 -0.62 9.97 7.59 76.12
18 Hyungyeom KIM KOR 61.39 0.50 10.64 8.40 66.97
19 Luc ECONOMIDES FRA 54.55 -4.37 10.13 8.48 74.29
20 Camden PULKINEN USA 56.15 -4.74 8.93 7.70 73.97
21 Semen DANILIANTS ARM 60.24 0.13 7.63 7.03 65.50
22 Roman SADOVSKY CAN 52.07 -11.22 11.86 7.89 76.69
23 Andreas NORDEBACK SWE 47.00 -0.82 10.31 8.10 70.66
24 Sihyeong LEE KOR 57.54 -4.07 10.26 7.03 64.60

フリーはジャンプの基礎点が1人だけ違うマリニン選手がいます。2位はアダムシャオイムファ選手。1位と2位で16.37差です。鍵山選手が3位でマリニン選手とは21.55差。あまりと言えばあまりな差です。宇野選手、三浦選手は70点台。ミスも出ると基礎点は伸びずマリニン選手との基礎点差が23点台とすごいことになります。

そして、加点の方もマリニン選手が1位になりました。もうこうなると手が付けられません。ジャンプだけで115.95点。スピンステップ零点でもいい、くらいのスコアになってきます。いうまでも無くジャンプの基礎点も加点も今期1位です。アダムシャオイムファ選手、鍵山選手も二桁の加点は得ました。

スピンはジェイソンブラウン選手が14点台。今季1位のスコア。2位の鍵山選手も今期これより上はジェイソンブラウン選手しかいないという素晴らしいスピンでした。三浦選手は9.33で21位。もう少し頑張りましょう、という水準になります。

ステップ系要素もジェイソンブラウン選手が1位です。これも鍵山選手が2位。マリニン選手はステップはそれほどスコアが伸びませんでした。

PCSもジェイソンブラウン選手が1位。スピンステップPCSとブラウン選手が1位です。ジャンプはマリニン選手。アメリカは両極振り切ってます。鍵山選手が2位でアダムシャオイムファ選手が3位。マリニン選手で4位です。これだけPCS稼げるならマリニン選手にとっては十分でしょう。

 

○総合上位6選手のフリーの構成

 

Ilia

MALININ

Yuma

KAGIYAMA

Adam SIAO

HIM FA

Shoma

UNO

Jason

BROWN

Lukas

BRITSCHGI

1 4A 4S 4Lz 4Loq 3A+2A 4T+3T
2 4Lz 4F 4T+3T 4Fq 3A 4T
3 4Lo 4T+1Eu+3S 3A+2A 4T+2T 3Lo 3A+2A
4 4S 3A+2A 4S 3A FCCoSp4 3Lo
5 CCSp4 FCSSp4 4T StSq4 3Lz+3T CCoSp4
6 StSq4 3A 3A 4T 3F+1Eu+3Sq 3A
7 4Lz+1Eu+3F 3Lz+3T StSq4 3A+1Eu+3F CCoSp4 3F+1Eu+2S
8 4T+3T ChSq1 3Lz+1Eu+3S 3S StSq4 3Lz
9 ChSq1 3F FCCoSp4 FCSp4 1A StSq4
10 3Lz+3A StSq4 ChSq1 CSSp4 ChSq1 ChSq1
11 FSSp3 CCoSp4 CCoSp4 ChSq1 3F FCCoSp4
12 CCoSp4 FCCoSp4 CSSp3 CCoSp4 CCSp4 CSSp4
Base 109.79 88.94 93.72 87.26 69.55 79.40
GOE 27.39 21.75 23.11 -0.97 16.93 15.20
PCS 90.61 93.61 92.07 88.84 93.98 86.08
Total 227.79 203.30 206.90 173.13 180.46 180.68

マリニン選手がアクセル込みで4回転5種類6本、アダムシャオイムファ選手と宇野選手が3種類4本、鍵山選手は3種類3本、ブリッチギー選手が1種類2本、ジェイソンブラウン選手が無しです。やはり5種類6本は突出しています。

GOEは3人が20点台。マリニン選手の27.39は素晴らしいですが、鍵山選手も21.75まで稼ぎました。トリプルアクセル転倒込みでこのスコアですので、しっかりトリプルアクセルを降りられればGOEはマリニン選手に追いつけます。フリーのスコア差は24.49 トータルスコアの差は24.11 トリプルアクセル決めれば18点ほどの差に縮まります。鍵山選手が降りたことのある4回転は4種類。今の構成は4回転3本。これを4種類5本にすれば、どういう並びにするかによりますが基礎点を10点ほど上げることは出来、基礎点が上がると同じ出来栄えで得られるGOEも高くなるのでそれにより自然と3点程度同じ出来栄えならスコアは上がります。あと5点ほど。これくらいまでなら出来栄え勝負というところまで行けます。逆に言えば、4種類5本が最低ラインでもあります。宇野選手も同様で、4種類5本を組めるのですが、昨季実績では結局ノーミスは出来なかったという現実はあります。

マリニン選手は後半にコンビネーションをすべてつぎ込んでいる、というのも恐ろしいところです。1,1倍で見ると鍵山選手はやや弱いです。

上位6人は全員スピンで締めています。フリーもやはりスピンで終える選手がほとんどです。ジェイソンブラウン選手以外は冒頭4つジャンプを続けています。ジャンプの難易度が緩いブラウン選手は3つ目まで。この辺、ほとんどの選手が似たような構成になってきます。アダムシャオイムファ選手は6つジャンプを続けるという、これはこれで特徴的な構成ではありました。

 

○総合7~12位の選手のフリーの構成

 

Deniss

VASILJEVS

Kao

MIURA

Nikolaj

MEMOLA

Junhwan

CHA

Aleksandr

SELEVKO

Mark

GORODNITSKY

1 2S 4Lo<< 4Lz 4S 4T 3A
2 3Lz+3T 4T 3A+1Eu+3S 1T 3Lz 3A+2A
3 3A+2A 4S 3Lz 4S<+1T 3Lo 3Lz
4 3Loq FCSp2 3Lo FCSp4 3A+3T 3F+3T
5 FCCoSp4 3A+1Eu+3S FCSp3 3Lz+3Lo CCSp4 FCCoSp4
6 StSq3 StSq3 3A StSq4 StSq4 CSSp4
7 3A 4T+3T 3Lz+REP 3A+2A+2A 3A< 2A+1Eu+3S
8 3Lz+1Eu+3Sq 3A+2A 3F!+2A 3Aq 3F!+2A+2A 3F
9 3F! 3F CSSp3 3F 3S< 3Lo
10 CCoSp3 CSSp4 StSq3 CCoSp4 FSSp4 CCoSp3
11 FSSp4 ChSq1 ChSq1 ChSq1 ChSq1 ChSq1
12 ChSq1 CCoSp3 CCoSp4 FCCoSp3 CCoSp4 StSq3
Base 69.80 84.83 72.30 76.35 73.01 70.63
GOE 10.93 4.94 7.33 4.14 8.43 12.91
PCS 87.65 81.95 80.39 81.95 82.05 79.22
Total 168.38 169.72 160.02 161.44 163.49 162.76

ここの水準だと4回転の本数は少し減ってきます。三浦選手が3種類4本、チャジュンファン選手は2種類3本のつもりが2本になった形、メモラ選手、セレフコ選手は1本、バシリエフス選手は1本入れようとしたけれど0本に、ゴロニツキー選手は最初から予定なしです。4回転3種類持って決められると上位6に入って行ける水準ということになるでしょうか。

基礎点は三浦選手がこの中では1番高いです。4回転3本分の基礎点は確保していますのでさすがにそうなります。他は70点台以下。マリニン選手は当然として、アダムシャオイムファ選手でも90点台の基礎点がありますので、80点に届かない基礎点だとそのあたりと勝負するのは難しい。表彰台争いをしていくにはやはり4回転3本は最低必要ではありそうです。

GOEは4回転の無いゴロニツキー選手とバシリエフス選手が二桁稼ぎました。このあたりの選手たちは出来栄えで稼いだという構図です。三浦選手とチャジュンファン選手は4点台。表彰台争いをしていくには出来が悪すぎたと言わざるを得ません。

ここのあたりの選手も冒頭3つはジャンプです。4回転3本以上入れようとした三浦選手とチャジュンファン選手は4つ目もジャンプ。4回転多い選手の方が序盤のジャンプの数が多い。スピン入れる前に山をほとんど超えておきたい、ということなようです。

最後の要素はやはりスピンが多いですが、4回転の無いバシリエフス選手とゴロニツキー選手はコレオやステップで締めています。こういったところで特徴を出そうとしているのが見て取れます。今期の有力選手の中ではフリーの最後をスピン以外で締めるのは、他にケビンエイモズ選手くらいでした。

 

○フリー上位18人のPCS

Name J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Ilia MALININ 27.25 26.50 28.25 26.75 26.50 27.25 27.00 27.75 27.50
Adam SIAO HIM FA 27.50 27.50 26.75 26.75 27.00 28.50 29.00 27.50 28.50
Yuma KAGIYAMA 27.75 28.25 28.25 28.00 27.75 28.25 28.25 28.00 28.00
Lukas BRITSCHGI 25.25 25.25 25.00 25.25 26.00 26.75 26.00 26.50 26.75
Jason BROWN 27.75 28.25 27.50 28.75 27.25 29.00 27.50 28.25 29.50
Shoma UNO 26.25 27.00 28.00 27.75 26.00 26.25 26.25 26.50 26.75
Kao MIURA 24.75 24.75 24.50 24.25 23.50 25.50 24.75 25.25 24.00
Deniss VASILJEVS 25.75 26.25 26.00 26.00 27.25 27.00 26.25 26.00 26.75
Aleksandr SELEVKO 24.25 24.00 25.25 24.75 25.00 24.25 25.00 25.00 22.75
Mark GORODNITSKY 22.75 23.00 23.75 24.50 24.00 22.75 24.00 24.25 24.75
Junhwan CHA 25.00 24.25 23.50 24.00 25.25 23.25 25.25 25.75 24.25
Nikolaj MEMOLA 24.75 23.25 23.75 24.00 23.00 25.50 24.50 22.75 26.00
Mikhail SHAIDOROV 21.75 23.25 22.50 21.00 23.25 20.75 21.50 21.50 21.25
Donovan CARRILLO 22.00 22.50 23.75 22.75 23.00 22.00 22.50 23.00 23.25
Nika EGADZE 22.00 22.75 25.00 22.25 22.25 21.00 23.75 22.75 20.75
Wesley CHIU 23.25 22.25 22.00 23.00 20.75 22.25 22.00 22.50 21.50
Gabriele FRANGIPANI 22.25 23.75 21.25 23.75 23.75 22.75 22.50 22.75 22.50
Hyungyeom KIM 19.50 21.25 20.00 20.50 19.75 18.50 19.75 22.25 20.00

ジャッジ毎のPCSが男子のフリーは結構ばらつきが小さくなっていました。ショートでは評価が分かれていたマリニン選手。最小で26.50 最大で28.25 その差は1.75に収まっています。9人中6人は平均9点超えと評価しました。ちゃんと滑ればPCSが出る、という選手にマリニン選手もなりました。一度ここまでくれば来シーズン以降もきっと変わらないでしょう。

鍵山選手は安定して高評価。最低で27.75 最高で28.25 誰が見てもいい滑りなようです。

全体の最高では9番ジャッジがジェイソンブラウン選手に29.50を付けました。Composition満点ついています。

 

○フリー上位18人のジャッジ別PCS順位

  J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Ilia MALININ 4 5 1 4 5 4 4 3 4
Adam SIAO HIM FA 3 3 5 4 4 2 1 4 2
Yuma KAGIYAMA 1 1 1 2 1 3 2 2 3
Lukas BRITSCHGI 7 7 8 7 6 6 7 5 5
Jason BROWN 1 1 4 1 2 1 3 1 1
Shoma UNO 5 4 3 3 6 7 5 5 5
Kao MIURA 9 8 10 10 12 8 10 9 11
Deniss VASILJEVS 6 6 6 6 2 5 5 7 5
Aleksandr SELEVKO 11 10 7 8 9 10 9 10 15
Mark GORODNITSKY 13 15 11 9 10 13 13 11 9
Junhwan CHA 8 9 14 11 8 12 8 8 10
Nikolaj MEMOLA 9 13 11 11 15 8 11 15 8
Mikhail SHAIDOROV 19 13 15 21 13 20 18 23 19
Donovan CARRILLO 17 19 11 16 15 17 15 13 14
Nika EGADZE 17 17 8 18 17 18 14 15 21
Wesley CHIU 12 20 16 15 21 16 17 19 18
Gabriele FRANGIPANI 16 11 19 14 11 13 15 15 16
Hyungyeom KIM 22 23 20 22 23 24 22 22 22

ジャッジ毎の順位をづけを見ると、ジェイソンブラウン選手に1位を付けたのが6人と最高で、鍵山選手も4人から1位の評価を受けています。アダムシャオイムファ選手、マリニン選手も1位評価が1人いました。

上位の選手は極端に大きな評価の割れ方はなかったようです。いくらか意見が分かれた、という程度でしょうか。中位以下でジャンプを武器とする選手は評価が分かれやすい。シャイドロフ選手は最高が13位で最低が23位、エガゼ選手も最高の8位と最低の21位、大きな差が出ます。女子と同じ傾向でもありました。

 

 

もう一回続きます。