フィギュアスケート 世界ランキングの決まり方

世界ランキングで〇〇位 というような言われ方をすることがあります。各試合の順位とは別に、世界ランクが高い人はきっとすごい人なんでしょう、というのは何となく伝わってきます

さて、この、世界ランキング。どうやって決まっているのか、ちゃんと把握している人ってどれくらいいるんでしょうか? こういうものって、ランキング順位だけが提示されて、意外と決め方って付属情報としてちゃんとついてないんですよね

 

というわけで、今回は、フィギュアスケートの世界ランキングの決め方についてのお話です

 

まず、世界ランキング、という言葉ですが、ISU(国際スケート連盟)の表現では「World Standings」となっています。これとは別に「Season World ranking」というものがあります。

ここでは、まず「World Standings」の方を、世界ランキングとして説明します。

 

このルールは結構複雑です。

 ① ランキングを決めるポイントとしてカウントされるのは、今シーズンを含めて直近3シーズンまで

② 大会のグレードで三つに分ける。チャンピオンシップ大会、(ジュニア)グランプリシリーズ、その他 の三つ

➂ ポイントとして考慮されるのは、各シーズンで、チャンピオンシップ大会は1試合、(ジュニア)グランプリシリーズは2試合まで、その他の大会も2試合まで。それぞれのカテゴリーでよい方の成績が選ばれる

④ 今シーズンと昨シーズンは100% 二シーズン前は70%の係数を掛ける

➄ 係数を掛けた後のポイントとして、直近3シーズンの中で、チャンピオンシップ大会は2つ、(ジュニア)グランプリシリーズから4つ、その他大会から4つ、いい成績を選ぶ

⑥ ➄で選んだスコアの合計をランキングポイントとし、そのポイントが高い方からランキングがついていく

 

なお、ペア競技はペアとしての獲得ポイントで計算されます。ペアを組みかえた場合はランキングポイントゼロからリスタートです

ランキングの更新は、大会が行われるごとに不定期に行われます。シーズン前半のグランプリシリーズが行われているころには、グランプリ1試合ごとに更新されますが、後半になると、ヨーロッパ選手権四大陸選手権があれば、すぐに更新されますが、それ以外のいわゆるB級大会の場合は、数試合開催後に更新されたりします。毎週定期的に更新されるようなスタイルではありません。

 

パッと流し読んで、わかるでしょうか?

まず、①は、考慮されるのは直近3シーズンだけですよ、というものです。よくあるタイプの、二年前の今日までとか、二年前の今月まで、というような、時期がスライドしていくものではなくて、今シーズンの間は、ずっと、二シーズン前の結果まで考慮されるので、シーズンの途中にはランキングポイントが減ることはない、ということになります。

次の②はグレード分けをしています。チャンピオンシップ大会というのは、オリンピック、世界(ジュニア)選手権、ヨーロッパ選手権四大陸選手権の5大会を指します。(ジュニア)グランプリシリーズは、(ジュニア)グランプリファイナルを含みます。その他、というのは、ISU公認のシニアの試合を指します。各国のナショナル選手権なんかは含みませんし、ユニバーシアードアジア大会のようなものも含みません。チャレンジャーシリーズはここに含まれます。

さらに➂で試合数の制限がかかります。同じシーズンに、四大陸選手権、オリンピック、世界ジュニアに世界選手権と、チャンピオンシップ大会には理論上最大で4試合出場することができますが、そのうち、最も高いポイントの試合のみがランキングポイントに反映可能です。同じように、グランプリシリーズはファイナル含めて3試合出場が可能ですが、そのうち2試合、その他の試合は理論上何試合でも出場出られますが、2試合分まで、ということになります。

シーズンごとの係数が④で掛けられます。昨シーズンと今シーズンはポイントそのままですが、二シーズン前は70%にする、というだけです

ややこしいのが➄です。➂で同一シーズンの中で絞った後に、さらに➄で直近三シーズンの中から絞る形になります。これがあるので、場合によっては、今シーズンも試合に出ているのに過去のシーズンの結果ばかりがランキングポイントに反映される、ということもありえます。

最後に⑥で順番に並べます。ポイントが並んだ場合は、ランキングの順位としては同じ順位とします。同じポイントの中で優劣はつけません。

 

では次に、大会グレード毎のポイントを示します。

各大会で優勝者のポイントがまず定められていて、一つ順位が下がるごとに90%を掛けていきます。ただ、ゼロを下回るまで掛けて行けるわけではなく、各大会毎にポイントを得られる順位は決まっていて、それを下回るとポイントゼロになります。

 

 

OG:Olympic Games オリンピック

WC:World Championships 世界選手権

EC:Europe Championships ヨーロッパ選手権

FC:Four Continental Championships 四大陸選手権

WJC:World Junior Championships 世界ジュニア選手権

GPF:Grand Prix Final グランプリファイナル

GP:Grand Prix Seiries グランプリシリーズ

順位

OG/WC

EC/FC

WJC

GPF

GP

1位

1200

840

500

800

400

2位

1080

756

450

720

360

3位

972

680

405

648

324

4位

875

612

365

583

292

5位

787

551

328

525

262

6位

709

496

295

472

236

7位

638

446

266

 

213

8位

574

402

239

 

191

9位

517

362

215

 

 

10位

465

325

194

 

 

11位

418

293

174

 

 

12位

377

264

157

 

 

13位

339

237

141

 

 

14位

305

214

127

 

 

15位

275

192

114

 

 

16位

247

173

103

 

 

17位

222

156

93

 

 

18位

200

140

83

 

 

19位

180

126

75

 

 

20位

162

113

68

 

 

21位

146

102

61

 

 

22位

131

92

55

 

 

23位

118

83

49

 

 

24位

106

74

44

 

 

 

チャンピオンシップ大会は24位までランキングポイントが出ます。ただし、これは、フリーに進んだ場合、という条件が付きます。したがって、シングル競技は24位まででよいのですが、ペアは16位、アイスダンスは20位まで、というのが基本となります

グランプリファイナルは6人しか出場できないので、出場すれば6位でもグランプリシリーズの優勝ポイントより高いポイントが得られることになります。

グランプリシリーズは、基本は各試合12名ですが、上位8位までしかポイントが得られません。

 

JGPF:Junior Grand Prix Final ジュニアグランプリファイナル

JGP:Junior Grand Prix Series ジュニアグランプリシリーズ

CS:Challenger Series チャレンジャーシリーズ

IC:International Senior Competition

順位

JGPF

JGP

CS

IC

1位

350

250

300

250

2位

315

225

270

225

3位

284

203

243

203

4位

255

182

219

182

5位

230

164

198

164

6位

207

148

178

 

7位

186

133

160

 

8位

167

120

144

 

9位

 

108

 

 

10位

 

97

 

 

 

ジュニアグランプリファイナルは6人までしか出られないはずなのですが、かつては8人まで出場できたので、システム上8位までの数字が残っています

ジュニアグランプリシリーズはグランプリシリーズよりも多い10人までポイントが得られます。

現在ISUの公式のページの中では記載がないのですが、チャレンジャーシリーズはそれ以外のISU公認試合とは別の計算が適用されています。チャレンジャーシリーズは優勝が300ポイントで、上位8位までランキングポイントを得ることができます。

その他の大会は優勝250ポイントで、上位5位までです。

 

 

〇世界ランキングの影響

 

世界ランキングは以下のものに影響します

  • グランプリシリーズの出場権
  • ショートプログラムの滑走順
  • 国別対抗戦の出場権
  • 日本の場合は、世界選手権などへの代表選考対象になる条件の一つ

 

グランプリシリーズは世界ランキング24位以内の選手に優先的に1試合の出場権が与えられます。

また、世界ランキングで上位の選手が、グランプリシリーズでは後半グループに入りますし、チャンピオンシップ大会では、出場選手中上位12名が、ショートプログラムでは終盤の二グループに入ることになっています

国別対抗戦の出場国の選定には、世界ランキングの策定に使われるのと同じように各大会のポイントが使われます。ただ、これは、世界ランキングそのものとは異なります。

日本の場合、全日本選手権終了後に、四大陸選手権や世界選手権の代表が発表されますが、その選考対象になるには、世界ランキングが日本人選手中上位3番目までに入っていると、一項目満たす、という形になります。決定的要素にはたいていなりませんが、ランキング上位にいると、全日本で失敗しても選考対象として名前は残る、というお札くらいの価値はあります。

 

 

なお、最初に触れた、Season rankingの方は、文字通り、そのシーズンのランキングです。世界ランキングの算出に使うのと同じポイントを各大会で計算して、世界ランキングの決め方の項で記した中の②と➂を用いてランキングポイントを定めます。

シーズンランキングは世界ランキングと比べて影が薄く、影響度も小さいですが、日本代表選考には、一応、項目の一つとして入ってくるので影響がゼロではありません。

ただ、世界ランキング、といった場合にはWorld Standingsの方が基本的にはやはり使われます。シーズンランキングは、一シーズン終わった後に、このシーズン一シーズン通して強かったのはこの人だったんだね、と振り返るのに使える、という程度な位置づけだったりします。

ちなみに、18-19シーズンは、男子シングルはネイサンチェン選手、女子シングルは紀平梨花選手が1位でした。

 

今回はこれくらいにして、次回、ランキングの、あるいはランキングポイントのケーススタディをしようと思います