ワルシャワカップ ポーランドは地元です

チャレンジャーシリーズの開催8戦目、ワルシャワカップも行われました。ポーランドはそれほどフィギュアスケートの印象の強くない国ですが、チャレンジャーシリーズ創設の14年シーズンからワルシャワカップは18年以外はシリーズの一角を占める試合になっていますし、ジュニアグランプリシリーズはグダンスクでほぼ毎年行われています。東アジアや北米ロシアと並ぶのはちょっと難しいですが、ヨーロッパのグランプリシリーズ並みの集客力は感じられる試合でありました。

 

○女子シングル(上位12名)

Pl Name Nation Total SP FS
1 Ekaterina KURAKOVA POL 181.71 57.45 124.26
2 Anna PEZZETTA ITA 179.58 61.25 118.33
3 Elyce LIN-GRACEY USA 177.50 59.85 117.65
4 Lea SERNA FRA 174.59 58.23 116.36
5 Livia KAISER SUI 173.20 65.21 107.99
6 Sara FRANZI SUI 164.65 56.72 107.93
7 Aleksandra GOLOVKINA LTU 158.67 53.11 105.56
8 Emmi PELTONEN FIN 157.50 60.06 97.44
9 Nina POVEY GBR 153.79 53.51 100.28
10 Kristina ISAEV GER 153.02 53.85 99.17
11 Olivia LISKO FIN 149.21 53.89 95.32
12 Vanesa SELMEKOVA SVK 148.43 53.34 95.09

クラコワ選手がショート6位から大逆転2連覇を果たしました。グランプリは2戦出場で7位が2つ。今一つ今シーズンはスコアが伸びてきていなかったのですが、フリーシーズンベストでの逆転優勝です。

2位にはイタリアのペゼッタ選手が入りました。ショートフリー共にパーソナルベスト更新。昨季はヨーロッパユースオリンピックで2位があります。世界ジュニアはショート落ちの27位。今期もジュニアグランプリに1戦のみ出場で11位でした。このスコアが出せれば、世界ジュニアで来期のジュニアグランプリのイタリア枠を増やせそうに見えます。

3位にはアメリカのアリスイングレイシー選手。今期ジュニアグランプリ2戦で2位と4位、惜しくもファイナルに届かなかった、という位置にいる選手です。ここ3試合170点台後半を並べています。今季の目標はおそらく世界ジュニア出場からの上位進出。190点くらいまではぴったりはまれば出してきそうですのでチャンスはありそうに思われます。

 

○エカテリーナクラコワ選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz   5.90   0.94 6.84 1.571
2 3S   4.30   0.60 4.90 1.429
3 3Lo   4.90   0.98 5.88 2.000
4 3T+2T   5.50   0.34 5.84 0.714
5 FCCoSp4   3.50   0.63 4.13 1.857
6 3Lo+2A+SEQ   9.02 x 0.78 9.80 1.571
7 3S+2T+2Loq q 8.03 x -0.86 7.17 -2.000
8 2A   3.63 x 0.26 3.89 0.857
9 LSp4   2.70   0.49 3.19 1.714
10 StSq3   3.30   0.92 4.22 2.571
11 ChSq1   3.00   1.20 4.20 2.429
12 CCoSp4   3.50   0.63 4.13 1.714
  TES   57.28   6.91 64.19  

いつもの冒頭3連続、3つ目フリップは入らず。入らなかったというよりは入れなかったように感じました。セカンド3回転が苦手なもので6トリプル構成になっています。コンビネーションは全部使いきったのですが基礎点は57.28 あまり伸びていません。入っていないのがフリップというのも痛く、2回飛ぶジャンプはループとサルコウ。上位で戦うにはもう少し基礎点の上積みが欲しいかと思いますが、いつもは入っているフリップがショートもフリーもなかったというのは、もしかしたら何らかの足の問題でもかかえていたのかもしれません。

それでもいい滑りだったと思います。地元大会の責任、みたいなものも感じました。

国籍変更後19年に国際大会に出られるようになってから、ワルシャワカップには開催された試合すべてに出場しています。21年は3位でしたが他はすべて優勝。「地元」の選手として大会を盛り上げてきています。グランプリシリーズに2戦出るような選手にとって、この時期のチャレンジャーシリーズというのは出づらいものですが、毎年しっかり出場。今期は中国からの大移動連戦と厳しいスケジュールでしたが欠場せず出てきました。今大会もしっかり盛り上がっていて、ポーランドの観客からも、地元の自国の選手として愛されているように見えました。1つの人生を感じます。ロシアから国籍を変えた選手は、国籍変更後も拠点はモスクワのまま、という選手も多いですが、クラコワ選手は、カナダに行ったりポーランドに来たりとコロナの影響もあって行ったり来たりありますが、いずれにしてもロシア在住のまま、という形ではなくなっています。

グランプリは2戦終わっていますし、チャレンジャーシリーズも3戦でましたので、次はポーランド近隣諸国のナショナルがまとめて行われるフォーナショナルズに出場して、来年のヨーロッパ選手権へ、というスケジュールになるのではないかと思われます。昨季4位のヨーロッパ選手権、ベルギー勢が強いですが、今期こそ、表彰台なるでしょうか。

 

○男子シングル(上位12名)

Pl Name Nation Total SP FS
1 Lukas BRITSCHGI SUI 246.22 91.51 154.71
2 Mark GORODNITSKY ISR 243.29 82.06 161.23
3 Jason BROWN USA 236.75 78.48 158.27
4 Francois PITOT FRA 211.36 78.55 132.81
5 Maurizio ZANDRON AUT 207.59 70.25 137.34
6 Samy HAMMI FRA 207.42 70.23 137.19
7 Gabriel FOLKESSON SWE 205.79 78.44 127.35
8 Adam HAGARA SVK 205.53 66.90 138.63
9 Edward APPLEBY GBR 202.68 71.21 131.47
10 Valtter VIRTANEN FIN 200.55 69.17 131.38
11 Daniel MARTYNOV USA 197.36 68.32 129.04
12 Xan ROLS FRA 197.04 68.14 128.90

ルーカスブリッチギー選手がチャレンジャーシリーズ初優勝。初の90点台をマークしたショートのリードを活かして逃げ切りました。

2位にはイスラエルのゴロニツキー選手。フリーで初の160点越えでパーソナルベスト更新。イスラエルいろいろ大変ですが、生まれはカナダのオンタリオ州イスラエルはそういった、生まれからイスラエル国内ではないです、という選手が多いというかほとんどですかね。

ジェイソンブラウン選手が3位。ジャパンオープン以外でシーズン前半に試合に出てくるのは珍しくなっていたので、今大会もエントリーはあっても出てこないのではないかとも思っていましたが出てきました。スコアは平凡ですし、ジャンプのいまいち感もありますが、それでもさすがのブラウン選手という滑りでした。このスコアでも今のところ今シーズンのアメリカ勢2位のスコアですので、全米選手権にしっかり合わせて世界選手権へ、というのが問題なくありえるコースになっています。

 

○ルーカスブリッチギー選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 1T F 0.40   -0.20 0.20 -5.000
2 4T+3T   13.70   1.52 15.22 1.429
3 3A+2A+SEQ   11.30   -1.92 9.38 -2.429
4 3Lo   4.90   0.78 5.68 1.429
5 CCoSp4   3.50   0.91 4.41 2.571
6 3A   8.80 x -2.56 6.24 -3.286
7 3F+1Eu+2S   7.81 x 0.85 8.66 1.429
8 3Lz   6.49 x 0.94 7.43 1.571
9 StSq4   3.90   1.17 5.07 2.857
10 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.143
11 FCCoSp3   3.00   0.78 3.78 2.571
12 CSSp4   3.00   0.72 3.72 2.429
  TES   69.80   4.49 74.29  

4回転は1本目が入らず1本のみとなりました。トリプルアクセルは2本。3連続は3つ目が2回転になっています。その結果基礎点は69.80 やはり4回転が1本丸々抜けると基礎点的には厳しくなります。フリーのみの順位は3位でした。

ショートは全要素全ジャッジプラス評価の素晴らしい演技で90点台。グランプリシリーズではフリーの素晴らしい演技もありましたので2本そろえば270点が見えるところまで来ています。グランプリシリーズは次週のNHK杯を残していて、初戦4位なので優勝すればファイナルがあります。宇野昌磨選手、鍵山優真選手と厳しい相手がいますが、まだ本調子とはいかない2人が相手なら、270点台出せば優勝は無くはない。連戦で厳しいスケジュールではありますが、チャンスが無くは無いです。

あまり誰も気にしていないと思われますが、この優勝で今期のチャレンジャーシリーズのポイントラインキングで1位に立ちました。残り1戦ありますが、順当にいけばこのまま1位で終わりそうです。

 

チャレンジャーシリーズは残り1戦。最終戦は毎年のことですがグランプリファイナルの裏でクロアチアにて開催、伝統のゴールデンスピンです。

エントリーはまだ発表されておらず未定ですが、日本からアイスダンスの新ペア、吉田唄菜/森田真沙也組、田中梓沙/西山真瑚組の2組が派遣されることが発表されています。

四大陸選手権出場に必要なミニマムポイントを取得していない組については、全日本選手権予選会時に派遣基準点を満たし、かつ強化部による国際競技力を認めた組をミニマムポイント取得競技会に派遣をする。という要項が今期の国際大会派遣選考基準にありますので、それ対応の派遣と推定されます。従って、順位は何でもいいからとにかく4大陸のミニマムをリズム、フリーいずれもにおいて取得すること、が最低限の目標で、それが達成できなければ逆に優勝しても意味がないくらいの試合になるでしょうか。できればついでに世界選手権のミニマムまでも獲っておきたいですし、ISU公認で高いシーズンベストを出して来期のグランプリシリーズにつなげたい、というのもあるかと思います。それぞれのペアとしては国際大会デビュー戦ですが、それぞれ個人としては国際大会経験が複数回以上ありますので、やっとここに戻ってきた、と力を発揮していただけると期待します。