オリンピックの代表になる条件(女子シングル編) 続き

前回からの続きです

オリンピックの日本代表になる選手はどんな実績を持っているか? あるいはこんな実績があってもダメか、みたいな話です

 

○二大会連続出場はそれなりに高確率、三大会連続はなし

 連続出場はハードルがそれなりにあります。

02年は荒川さんが2大会連続ならず。06年は恩田さんは二大会連続にならず、村主さんは連続出場を果たしました。10年は安藤さんが連続出場で村主さんは3大会連続はならず。14年は浅田真央さん、鈴木明子さんが2大会連続で、安藤美姫さんは3大会連続ならず。18年は村上佳菜子さん、浅田真央さんが途中まで連続出場を目指していましたが、17年全日本にまでもたどり着かず結果的に連続出場無しでした。

2大会連続を目指してオリンピックシーズンを現役で迎えたのは6人いて、出場できたのは4例。3大会連続は2人が目指して2人とも達成できていません。

今回は宮原知子選手と坂本花織選手が連続出場を目指します。

 

 

○最高は28歳最年少は17歳

 オリンピック代表の最高年齢は14年ソチの鈴木明子さんで28歳10か月でした。一番若いのは18年平昌の坂本花織選手で17歳10か月です。日本の代表は女子でもそれほど若くはないです。98年長野まで遡れば荒川静香さんの16歳1か月があります。更新不可能ですが、88年カルガリーでは八木沼純子さんが14歳10か月で出場しています。

今回の北京では松生理乃選手は17歳4か月で迎えることになるので、代表になれれば21世紀の最年少記録を下回ることができます。それ以外の有力選手は、すべて今世紀の実績の範囲内に収まります

 

 

○世界選手権出場実績は必要ではない

 世界選手権の代表経験のないままにオリンピックの代表になったのは2例。10年バンクーバー鈴木明子さんと18年平昌の坂本花織選手です。逆に直近の大会で世界選手権の出場実績があってもオリンピック代表になれなかった例は多数あります。

 

○直近3シーズンの世界選手権のメダリストは高確率で代表入り、4シーズン前はあてにならない

 直近3シーズンで世界選手権の表彰台に乗った選手は高確率でオリンピックの代表になっています。06年の村主章枝さん、荒川静香さん、10年は浅田真央さんに安藤美姫さん、14年は浅田真央さんに鈴木明子さん。18年の宮原知子選手もそうでした。例外は11年世界選手権金メダリストの安藤美姫さんが14年に代表になれなかった、という1例だけです。

残念ながら今回はこの条件を満たす選手がいません。

一方、4シーズン前、つまり、前回のオリンピックの直後の世界選手権のメダルはあてになりません。06年は村主章枝さんが02年のメダルを持っていましたが、03年も持っていたので、上の条件に当てはまり代表入り。しかし、村主さんは06年の世界選手権銀メダル持ちですが、10年の代表にはなれませんでした。10年のメダル持ちの浅田真央さんは13年にもメダルを持っているので14年に問題なく代表になっています。しかし、浅田真央さんは14年の金メダルを持っていますが、18年大会の代表選考レースには最終的に参加できませんでした。

今回は、宮原知子選手、樋口新葉選手の二人が、この前回オリンピック直後の世界選手権メダリストにあたります。この条件、そのあとのシーズンでメダルを取っていないと代表になれない、という見方もできます。選手人生のピークが4シーズン前にあって、それ以降そこに到達出来ていなければオリンピックの代表になるのは苦しい、ということでしょうか

 

○前シーズンの世界選手権代表と同じオリンピック代表になったのは2例

 一年経たない間にも代表は入れ替わる、という例です。

ソルトレイクの時は、前年の世界選手権は1枠で村主章枝さんが7位に入り2枠獲得。枠が広がったことで、そこに恩田美栄さんが加わりました。

トリノの06年は前年世界選手権の村主-荒川-安藤三人態勢でそのままオリンピックの代表になっています。

バンクーバーの時は09年の世界選手権代表から村主章枝さんが外れ、鈴木明子さんが加わりました。

ソチでは浅田真央-鈴木明子-村上佳菜子名古屋勢の後期黄金時代三人態勢で世界選手権-オリンピックと続いています。

18年の平昌は大幅入れ替わり。世界選手権が樋口-三原-本郷三選手だったのですが、枠が2つに減ってのオリンピックは総入れ替えで宮原知子選手と坂本花織選手になりました。まあ、実際には宮原知子選手はケガで外れただけで、世界選手権の代表には選出されていたのですけれど。宮原選手が世界選手権に出ていて3枠確保していた、と仮定すると、宮原-樋口-三原三選手から、宮原-坂本-樋口三選手になっていた、という計算になるので、入れ替わったのは一人分だった、という風にも見えます。

 

さて、今回は、紀平-坂本-宮原三人態勢での世界選手権でした。過去は世界選手権代表が翌シーズンにそのままオリンピック代表になったこともありますが、その場合でも全日本の表彰台は入れ替わっています。今回は全日本の表彰台メンバーが変わっても代表は変わらない、というケースは可能性は極めて低いと考えられます(ジュニアやミニマムスコア持たない選手が3位に乗って来るなど)。また、3枠取ったシーズンは、3枠取る原動力となった上位2人は必ずそのまま代表入り、という流れも過去にはありました。1シーズン前の時点で、枠に対して1人以上余裕のある位置に序列がある(3枠なら2番目、2枠なら1番手)と、代表入りはほぼ確実、というようにも感じられます。今回の場合は、紀平梨花選手と坂本花織選手がこれにあたります

 

○直近4年の全日本優勝者で代表になれなかったのは3例あるけど最近は例外ケースのみ

 直近4年というのは、当該シーズン含め4年なので、前回のオリンピックより後の全日本4回分を指します。この期間で優勝して代表になれなかったのは、98年優勝の荒川静香さんと99年優勝の椎名千里さんが02年代表になれず、というのと、10年優勝の安藤美姫さんが14年の代表になれなかった、という3例があります

2002年の頃は、なんというかすでに遠い昔という感じがありますし、14年の安藤美姫さんも出産を間に挟むという超特殊例なので最近は普通にいけば近い時期に優勝経験があれば代表になれる、と思ってよいかと思います

当該シーズンを含まず、その前の3年の中で連覇した選手は全員代表になっている、というのもあります。06年には、03,04年連覇の安藤美姫さん、10年は06,07,08ついでに09と4連覇している浅田真央さん、14年も12,13と連覇の浅田真央さん、18年は、14,15,16さらに17年と連覇した宮原知子選手が代表になりました

今回は19,20と連覇した紀平梨花選手がいます。また、その前の18年は坂本花織選手が優勝しています。

 

○直近4シーズンの全日本表彰台経験はあてにならない

 優勝ではなく、全日本の表彰台に乗るレベルの選手がどの程度オリンピック代表になっているかというと、それほど高確率でもないです。以前は割と高確率だったのですが、18年にその構図が大きく崩れました。

02年は2枠の年で、98年以降で表彰台経験のある5選手が代表になれませんでした。

06年は3枠あって、ここは4年間で表彰台の顔ぶれがあまり変わらなかったせいか、年齢制限の浅田真央さんを除くと、02年2位の恩田美栄さんが代表になれなかったくらいです

10年は3枠あって、村主章枝さんと中野友加里さんが代表になれず

14年も3枠で、前年3位表彰台の宮原知子選手が代表入りできませんでした。

18年が2枠になって大変。本郷理華選手、三原舞依選手に、直近3大会で表彰台に乗っている樋口新葉選手も代表落ち。厳しい試合でした。

優勝実績があれば高確率で代表になっていますので、2位3位の実績しかないと代表になれる確率は5割以下ということになります

今回は、優勝経験者二人の他には、宮原知子選手、川畑和愛選手が表彰台実績をもってオリンピックシーズンに臨みます

 

 

○全日本表彰台経験のない選手が代表になった例は2例

 初表彰台からの逆転代表入り、というのが2例あります。これは、世界選手権選出経験がなくオリンピック代表になった、という2例と同じです。10年の鈴木明子さんと18年の坂本花織選手。この二人は当該シーズンの流れがよくて、鈴木明子さんは、グランプリシリーズ初優勝からのファイナル3位表彰台で全日本に臨んでの2位。坂本花織選手も、シニア1シーズン目でグランプリ2戦目でショートフリー共にパーソナルベストからの2位表彰台で全日本に臨んでの2位表彰台逆転オリンピック。

二人ともある程度昨シーズンまでの実績で上位に顔を出していて、当該シーズンも流れ良く入っての逆転代表入りでした。

今回この流れの可能性があるのは、坂本花織選手コースは松生理乃選手。鈴木明子さんコースは三原舞依選手あたりでしょうか。

 

○全日本ジュニアの表彰台経験は必須

 全日本ジュニアで表彰台に乗った経験のない選手がオリンピック代表になった、というのは今世紀に入ってからありませんし、少なくとも88年カルガリー八木沼純子さんの時代までさかのぼってもありません。

これは世界ジュニアの出場経験とほぼ重なるわけですが、今回の主要メンバーの中では三原舞依選手がこれにあたります。

 

もう一回続きます