今年も全日本が終わり、1年が終わりました。全日本の振り返りは数字追うだけでなくてただの感想から入っていきます。
なんだか日本人だけで世界選手権やっている、みたいな女子シングルでした。全体的なスコアの分布も昨シーズンの世界選手権と似通った形になっています。どこかの国に帰化すればたぶん代表になれますよ、みたいな選手がたくさんいるのですが、ロシアと違って日本はあまりそういうことはしないようです、猫ひろしさん以外は。カップル競技になると実際にパートナーの国で練習もして、縁のある国に国籍を変えるという線もあるようですが、あれは相手があってのこと。シングルではなかなかそういうことは日本の場合はこの先も起こりづらいでしょうか。
いずれにしても、世界選手権を思わせる全体のレベルの高さがあったように感じました。
○女子シングル最終結果
Pl | Name | Nation | Total | SP | FS |
1 | 坂 本 花 織 | シスメックス | 233.05 | 77.79 | 155.26 |
2 | 三 原 舞 依 | シスメックス | 219.93 | 74.70 | 145.23 |
3 | 島 田 麻 央 | 木下アカデミー | 202.79 | 70.28 | 132.51 |
4 | 中 井 亜 美 | MFアカデミー | 201.49 | 64.07 | 137.42 |
5 | 千 葉 百 音 | 東北高校 | 200.12 | 71.06 | 129.06 |
6 | 吉 田 陽 菜 | 木下アカデミー | 197.21 | 59.49 | 137.72 |
7 | 青 木 祐 奈 | 日本大学 | 191.89 | 62.48 | 129.41 |
8 | 櫛 田 育 良 | 木下アカデミー | 190.58 | 63.29 | 127.29 |
9 | 河 辺 愛 菜 | 中京大中京高校 | 190.44 | 64.51 | 125.93 |
10 | 柴 山 歩 | 木下アカデミー | 189.09 | 64.37 | 124.72 |
11 | 紀 平 梨 花 | トヨタ自動車 | 188.62 | 60.43 | 128.19 |
12 | 渡 辺 倫 果 | 法政大学 | 183.99 | 56.23 | 127.76 |
13 | 松 生 理 乃 | 中京大中京高校 | 179.85 | 56.01 | 123.84 |
14 | 住 吉 りをん | オリエンタルバイオ/明治大学 | 178.03 | 57.38 | 120.65 |
15 | 三 宅 咲 綺 | 岡山理科大学 | 175.38 | 66.29 | 109.09 |
16 | 山 下 真 瑚 | 中京大学 | 172.96 | 54.98 | 117.98 |
17 | 村 上 遥 奈 | 木下アカデミー | 163.76 | 59.23 | 104.53 |
18 | 竹 野 比 奈 | 福岡大学 | 163.39 | 56.15 | 107.24 |
19 | 横 井 ゆは菜 | 邦和みなとSC/中京大 | 161.87 | 59.78 | 102.09 |
20 | 大 庭 雅 | 東海東京FH | 159.94 | 59.77 | 100.17 |
21 | 髙 木 謠 | MFアカデミー | 158.86 | 58.87 | 99.99 |
22 | 江 川 マリア | 明治大学 | 158.39 | 52.83 | 105.56 |
23 | 松 原 星 | 明治大学 | 152.22 | 52.45 | 99.77 |
24 | 竹 野 仁 奈 | 筑紫女学園大学 | 152.14 | 55.49 | 96.65 |
25 | 佐 藤 伊 吹 | 明治大学 | 52.27 | 52.27 | |
26 | 本 田 真 凜 | JAL | 51.81 | 51.81 | |
27 | 奥 野 友莉菜 | 駒場学園高校 | 49.29 | 49.29 | |
28 | 三 枝 知香子 | 日本大学 | 46.73 | 46.73 | |
29 | 吉 岡 詩 果 | 山梨学院大学 | 44.75 | 44.75 |
坂本花織選手が2連覇で3回目の優勝となりました。オリンピックの次のシーズンは、初優勝だと時代が変わり、優勝経験者がまた勝った場合は次の4年もほぼ時代が維持されるという傾向があり、そのサイクルは8年おき、という風に見えます。4年前は坂本花織選手の初優勝で宮原知子時代からの変化が起こりました。次の4年は2番手3番手は多少入れ替わりながらも基本線は継続となっていく感じでしょうか。
そんな坂本選手、年明けの学生選手権エントリーしてますが、本気ですか?
三原舞依選手が自己最高位の2位。表彰台に乗ったのは6年ぶりです。世界選手権も6年ぶり。オリンピック翌シーズンに初優勝が出ると時代が変わる理論は、三原選手が優勝した場合はどうなるんだろう、とか思っていましたが届きませんでした。ノーミス勝負だと坂本選手が上、というのが今の力関係になっているでしょうか。次戦はワールドユニバーシティーゲームズです。一応間は2週間ありますが。いい加減休みをあげてくださいと思いましたが、これは志願で代表になっているのでそうもいかない。まあ、試合よりも大学生の祭典という意味の方を楽しんできていただけるとよいのではないかと思います。
島田麻央選手が3位表彰台。これも代替予想された立ち位置で、だいぶ荒れたように見える全日本ですが、結果的に表彰台3人は順番含め戦前に予想された位置に収まったようにも見えます。トリプルアクセルはショートで回避。あの振付だと2番目に入れたままアクセルをトリプルにしないといけないようにも見えるので振付との関係でこの1試合だけトリプルアクセルにするみたいなことはしづらかったかもしれません。フリーは2本転倒。トリプルアクセルはともかく4回転の確率が以前と比べて極端に低くなっているのが気になっています。アクセルと併用しているからが理由ならまだよいのですが普通に練習から確率落ちているようだと心配です。全体的に硬かった印象。1人だけ代表選考なにも掛らない気楽な立ち位置みたいなことを書きましたが、それでも緊張するのが全日本ということでしょうか。よく考えると、あの人数の観衆の前で試合をするのは初めてだったのだろうとも思います。
中井亜美選手が4位に入ってきました。世界ジュニア最後の1枠は直接対決で勝って文句なしにもぎ取っていきました。ただ、まさかの最後のダブルアクセル跳び忘れ。これちゃんと飛んでいれば基礎点が5.58プラスされますので、GOEが多少減るくらいだとしても表彰台に乗っていました。ルッツ降りた後、さあシークエンスという形に見えたのですが、あれ、飛ばない????? ?が5つくらい頭の上に湧きました。戻ってきて中庭先生に最初に声かけられたところもその話をしていたように見えます。本人全くわかっていないという・・。序盤のトリプルアクセル2本決めたのが気持ち良すぎたでしょうか。あのダブルアクセル跳び忘れがあってもフリーの技術点は島田麻央選手より上であり、フリーのジャンプで取った点数は全体トップ。島田選手が高難度1本決めてもノーミスすれば上回れるのがはっきり見えました。それはつまり、世界ジュニアで優勝するチャンスが十分ある、ということかと思います。
千葉百音選手は届かず5位。冒頭ルッツ転倒が結局そのまま致命傷でした。決まっていれば表彰台。ショートがシンドラーのリストでフリーはバタフライラバーズ。そういう方向で攻めるのが似合う選手に見えます。そのタイプの選手はどうしてもノーミスが求められる。本人もそれがわかっていると思うのですが、その中で冒頭転倒すると、ああ、終わった、みたいな感覚になって崩れていきがちなところ、あとよく立て直したなあ、という印象でした。演技終わった時点で、これは表彰台に残ったかも、と思ったのですが、PCSが足りずに5位に終わりました。世界ジュニアならずも四大陸ゲット。3位表彰台に乗ってたら代表選考どうなるんだろう? と思っていましたが、5位だと世界選手権には選びにくいですね。何気に四大陸はいきなり優勝の可能性もあるかとも思います。
ショート14位から大逆転を賭けた吉田陽菜選手は6位まで来ました。フリーだけなら3位。大逆転表彰台までは5.58足りず。トリプルアクセルステップアウトとシットスピンのレベル3、3連続のq それこそシンパーフェクトなら表彰台に届くところまでは来ていました。逆襲のレイア姫。表彰台乗ってたら世界選手権の選考どうなっていたんだ? という。こちらは昨シーズンまでの実績は大差ないですし今シーズンもシーズンベストは大差ないですよ、ジュニアだけどファイナルまで出ましたよ、技術点なんか勝ってますよ、トリプルアクセルと将来性? という話で、それはそれは難しいことになっていたかと思います。こちらも四大陸で優勝のチャンスがあります。
過去最高14位。国内ベストスコア175.34だった青木祐奈選手が大学3年生になって7位にまで浮上してきました。ノービスAで優勝経験がある一方、同期の本田真凜選手、白岩優奈選手がジュニアからシニア初期に国際舞台で活躍する中いまいち光り切れてなかった青木選手がここにきて大復活。すごいなMFアカデミーの再生力。シニアエントリーの中で4番目ですよ。これくらいの順位だと四大陸代表に選んであげたいところでしたがミニマムスコアを持っていません。四大陸より前にB級大会は存在しますが、確か21日前以前に取得する必要があり、それに間に合う試合はない。2月3月のB級大会で国際舞台復帰は確実だと思いますが、来シーズンのチャレンジャーシリーズ、さらにはNHK杯地元枠で大学4年生にしてのグランプリデビューなんてのを期待してしまったりします。
ジュニア組から櫛田育良選手が8位。国内参考でパーソナルベスト相当の更新です。サムソンとデリラでノーミス。ノーミスなので130点台に乗せてあげたいところでしたけどPCSがなかなか出ませんでした。確かに上位と比べると少し落ちるかなという印象が無くはないですが、惜しかったなあ。ジュニアグランプリの2戦目がもらえなかった後、少し調子を落としていた感じがありましたが、全日本ジュニア以降は復調して国内参考パーソナルベスト。年明けたら全中~国際B級ジュニアという流れかと思いますが、全中表彰台くらいまではありそうです。
オリンピアンの河辺愛菜選手が9位でした。この年代は1年でずいぶんいろいろなことが変わるなあ、と思います。昨シーズンは完全にジャンプの河辺愛菜、という扱いでしたし、実際の点の入り方もそうでしたが、今シーズンはジャンプ以外でしっかり稼ぎますよ、という風に変化してきています。樋口先生とコーチとしても振付師としても相性がいいのでしょうか。今季初のトリプルアクセル挑戦はアンダーローテーションの転倒でしたが、そこはおそらく織り込み済み。残念なのはフリップの転倒。これをクリーンに決めていれば吉田陽菜選手の上の6位まではあったわけで、そうなると代表選考でずいぶん違う立ち位置になっていました。
ジュニア組から柴山歩選手が10位。国内参考でパーソナルベスト相当更新。最近は櫛田選手と際どい勝負を繰り返す立ち位置に収まっています。ほぼノーミスなのですが、ノーミスなのに124点台しか出ないのが逆に苦しいところ。どうしてもまわりのジュニアと比べてもPCSが伸びずにフリー55点台はつらいです。トゥーランドットを荒川静香さんに解説させるというなかなかのシチュエーションでしたが、かわいらしすぎて冷たさが足りない。たぶんジュニア向け矯正プログラムとして与えられたものだと思いますが、そのあたりはこれからの選手なのでしょう。ノーミスに見える演技でも120点台なところが逆につらいなあ・・。以前飛ぼうとしていたトリプルアクセルはどうなったでしょうか。それが入れば同世代で上にいるジュニア勢に追いつけます。
紀平梨花選手は11位に終わりました。結果的には無理しない方がよかったんじゃ・・・、みたいな今シーズンになっています。来期グランプリ枠2枠残るかどうか。千葉選手や吉田選手が2枠持っていくと結構危ないです。今季のプログラムはフィンランドの試合で難易度は落としているのである種の完成形だったかもしれませんが、大きな試合で構成上げての完成形が見たいので来シーズンも継続してほしいかなあ、と思います。
今期ブレイクの渡辺倫果選手は12位。もう少し上なら世界選手権選びやすかったのですが、12位まで落ちて選ばれると物議をかもす・・・。結果的に男子の紛糾ぶりが大きすぎて普通にスルーされていますが・・・。ショートももったいないはもったいないですが、フリーは序盤良かっただけに後半がもっともったいない。最後のルッツは今シーズンも成功率が異様に低く、おそらく体力面が課題で、いくらか予想された結果ではあるのですが、その前の3連続は安定したもの。ここで転倒してしまうと大逆転が潰えます。吉田陽菜選手までは13.22差なのでちょっと届かないですが、その下、7位なら7.90差でしたから十分に届くところでした。個人的には12位だとちょっと選ばれないと思っていましたが代表選出。それもシングルではただ一人四大陸とのダブル選出であり、日本勢ではただ一人のファイナル、全日本、四大陸、世界選手権とフルコース味わう選手になります。ノーマークだと強いけれど、欲をかくと勝ち切れない、この1年そんな感じになっているようにも見えます。
グランプリ組の松生理乃選手、住吉りをん選手が13位14位と続きます。グランプリ表彰台に乗っていても14位に沈んでしまうという恐ろしい全日本。松生選手は来期のグランプリ枠が残るかどうか。昨シーズン4大陸で4位、B級大会とはいえ220点超えるスコアも出しているのですが、今シーズン結果が残せず。何か巡り合わせが悪いのですが、どこかでピタッと合わせて、大事な大会でいい結果というのを出してもらいたいところです。住吉選手はワールドユニバーシティーゲームズの代表を全日本のはるかに前から内定済み。坂本選手、三原選手という、場違いオーバースペック2選手がいるので大変ですが、表彰台に乗って帰ってきていただければと思います。
中野組に加入した三宅咲綺選手はフリー最終グループ入りでしたがトータルは15位。175.38はパーソナルベストにあたります。さすがにいきなり最終グループに放り込まれると経験不足が出てしまったところはあったようですが、ショートが素晴らしかったからこそそれが体験できたわけで。15位はちょっと微妙な順位ですが、ジュニア組が上位に多いので、B級大会派遣くらいはもらえるかな? どうかな? 来期以降のためにミニマムスコアは持たせておいた方がいい選手だと思います。
実績のある山下真瑚選手は16位、横井ゆは菜選手は19位。ちょっと近年中京勢が振るわない女子シングルです。MFアカデミーの再生力を見ると名古屋にもアカデミーが欲しくなります。LYSアカデミーでどうでしょう樋口先生。山下選手も力はあるのでB級大会やチャレンジャーシリーズには送って、ランキングやシーズンベストを作って繋げておくといいと思うのですが、なかなか制度の立て付けとしてそうはなっていないようで。横井選手は引退表明。横井家の姉妹全日本は結局成し遂げられずに終わりました。国際B級大会とは言え214点まで出した選手。もう少し大きな結果を残せる選手だったと思うのですが、残念な思いがあります。公式戦では決められませんでしたが、全日本ジュニアの6分間練習で決めたトリプルアクセルが鮮明に思い出されます。最後の要素に2A+3T+2Tを入れてくる構成、好きでした。今回も最後に決めてほしかったなあ。
竹野姉妹は姉18位妹24位。姉妹で出る全日本は姉の全勝で終わったようです。スピンの竹野姉妹。昨年に続いてショートフリー2人そろってスピンオールレベル4 さすがです。竹野姉妹はこれで最後と表明されているようですが、横井家も姉が引退となるので、この先しばらく姉妹全日本は出てこないでしょうか。
ベテラン大庭雅選手は20位。11回目の全日本。昔はよくわからないですが近年は鈴木明子さんの13回、浅田真央さんの14回、村主章枝さんの16回というのがあるわけですが、そこにどこまで迫っていけるでしょう。西日本はレベルが高いので勝ち上がるのが大変なのですが、何とか頑張ってほしいところ。安藤美姫さんが来てましたね。
東日本勢で江川マリア選手が22位、松原星選手が23位。東日本勝った江川選手は枠取りに貢献しないといけない立場でしたがスコア伸びませんでした。今季好調に見えたのですが全日本は難しい。国際舞台も未経験ですしあの観衆の前で滑るのは初めてで大変かと思います。松原選手はこれで最後の全日本と聞きます。最高位は11位。全日本常連でこれくらいの位置で滑り続けるのもなかなか大変だったと思いますがお疲れさまでした。
ジュニア組では村上遥奈選手の17位、髙木謠選手の21位というのもありました。村上選手はペアとの両立。思いがけず14歳にして全日本制覇してしまったペア。シングルはシングルでレベル高いので、来期はジュニアグランプリ派遣があったりしますかね。世界ジュニアが終わったらしばらくはペアで試合に出られないようですがシングルだけでも十分戦っていける。どうするんでしょう将来的に。髙木選手はMFアカデミーのジュニア2番手。フリーの99.99を中庭先生に笑われていましたが、明るいなあ中庭先生。ジャンプのミスが続いてどう見ても満足いく出来ではなかったのですが。あの辺が再生力の秘訣だったりするのでしょうか。サルコウが苦手なようでなぜかフリーの構成に入っていないのですが、その辺の確度も上げて来期は中井選手と二人でジュニアグランプリで活躍していただければと思います。
ミスがどうしても出るのでスコア的には伸びない部分もありましたが、全体のレベルはやはり高いなあという日本の女子シングル。少しのミスの差で順位がすぐに変わります。ロシアという変な国はありますがそれを除くと上位だけでなく中位以下でこれだけのレベルの選手が揃う国はありません。世界選手権や四大陸の枠が拡がらないのはどうしようもない部分もありますが、B級大会やチャレンジャーシリーズの派遣はもう少し増やしてほしいなあと思います。
あとは、大舞台で強い選手が増えるとさらに面白くなるなあ、とも思いました。