ジュニアグランプリが2戦目。日本勢の活躍が続いています。今週はチェコのオストラバで行われました。
○女子シングル 上位12人
Pl | Name | Nation | Total | SP | FS |
1 | Mao SHIMADA | JPN | 212.65 | 71.49 | 141.16 |
2 | Minsol KWON | KOR | 189.37 | 62.73 | 126.64 |
3 | Ikura KUSHIDA | JPN | 177.02 | 55.67 | 121.35 |
4 | Mia KALIN | USA | 175.85 | 59.24 | 116.61 |
5 | Heesue HAN | KOR | 170.00 | 57.06 | 112.94 |
6 | Lorine SCHILD | FRA | 165.82 | 58.07 | 107.75 |
7 | Sarina JOOS | SUI | 157.35 | 54.72 | 102.63 |
8 | Elyce LIN-GRACEY | USA | 152.88 | 56.15 | 96.73 |
9 | Nataly LANGERBAUR | EST | 152.54 | 56.00 | 96.54 |
10 | Jiaying CHENG | CHN | 144.98 | 49.67 | 95.31 |
11 | Sara-Maude DUPUIS | CAN | 143.17 | 51.11 | 92.06 |
12 | Vivien PAPP | HUN | 143.04 | 54.22 | 88.82 |
島田麻央ジュニアデビュー戦。試合としては楽勝でした。212.65 日本ジュニア最高得点をジュニアデビュー戦で出してしまいました。日本女子としてISU公認の200点突破は現役選手としては先週の吉田陽菜選手に続いて10人目。これが210点突破になると5人目にまで絞られます。ご存じの通り新ルールで島田麻央選手は次回のオリンピックには出られなくなりました。オリンピックに出られるチャンスは7年半後です。これまでのスケート人生と同じくらいの長さをこれからのスケート人生で経てからのオリンピックになります。それまでこの能力を維持、そして進化していけるかどうか。まずは長いジュニア生活、前人未到の世界ジュニア4連覇を目指すことになるのかと思われます。
2位には韓国のクォンミンソル選手が入りました。2009年生まれの13歳で島田麻央選手と同じくこれがジュニアデビュー戦でした。フリーは猫型髪型で出てきてのキャッツ。あざといようでそんな感じもなく似合うプログラム。韓国ジュニアも激戦でこの200点弱のところに選手が多数いますが、世界ジュニアに出てこられるでしょうか?
3位に日本からもう一人、櫛田育良選手が入りました。ショートはループで転倒し8位と出遅れ。そこからフリーでルッツに!がつくなどはありましたが見た目にはクリーンな演技で逆転の3位表彰台を掴みました。
○島田麻央選手のフリーの構成
Elements | BaseValue | GOE | Scores | AvGOE | |||
1 | 3A | 8.00 | 1.37 | 9.37 | 1.778 | ||
2 | 4T< | F | 7.60 | -3.80 | 3.80 | -5.000 | |
3 | 3Lz+3T | 10.10 | 1.35 | 11.45 | 2.333 | ||
4 | FSSp4 | 3.00 | 1.03 | 4.03 | 3.444 | ||
5 | 3F+2A+SEQ | 8.60 | 1.29 | 9.89 | 2.444 | ||
6 | ChSq1 | 3.00 | 1.50 | 4.50 | 3.111 | ||
7 | 3S+3T+2T | 10.78 | x | 1.23 | 12.01 | 2.667 | |
8 | 3Lo | 5.39 | x | 1.40 | 6.79 | 2.889 | |
9 | 3Lz | 6.49 | x | 2.02 | 8.51 | 3.444 | |
10 | CCoSp4 | 3.50 | 1.70 | 5.20 | 4.778 | ||
11 | LSp4 | 2.70 | 1.20 | 3.90 | 4.444 | ||
TES | 69.16 | 10.29 | 79.45 |
トリプルアクセルと4回転トーループの両立。日本勢初の試みでしたがそれは成功しませんでした。基礎点は69.16 昨シーズンの日本勢の最高基礎点が吉田陽菜選手の67.73 ISU公認では樋口新葉選手の66.42がありますが、それを早くも超えています。これ、ジュニアルールですのでステップが入っていません。ショートでステップがレベル4でしたので同じようにレベル4を取れるとすると基礎点は3.9上がって73.06となります。昨シーズン73点以上の基礎点を出したのはロシア勢しかいません。
4回転トーループが回転不足でしたがこれが回転足りると基礎点は1.9上がって74.96まで出ます。ここまで来ると、昨シーズンでもこれより上は、トゥルソワ、ワリエワ、シェルバコワ、アカチエワの4選手だけになります。そこから基礎点を上げるにはコンビネーションの組み換えで3連続に2Aを2本入れるシークエンスにして、3F+3Tを前半に持ってくる、ということで可能で基礎点がさらに2.11上げられて77.07になります。現状の持ち手の組み合わせで行けるのはそのあたりまでかと思います。その上はトリプルアクセルか4回転の2本目投入ということになっていきます。女子のトリプルアクセルや4回転持ちはダブルアクセルが余って来るのですが、これをルール改正でシークエンスに使えるようになったことで基礎点を上げやすくなっています。
ジャンプがすごすぎて目立っていませんが、スピンも高い水準にあります。CCoSpは平均GOE+4.778 9人のジャッジのうち7人が+5を付けました。それも含め今大会のスピンのスコアは26.14 昨シーズンの日本勢の最高は坂本花織選手の25.85 過去遡っても確認できた範囲では日本勢初のスピン26点台ということになりそうです。
基礎点77.07でノーミスすると日本勢初の技術点90点越えが現実的に見えてきます。これが出せると多少PCSがジュニア扱いされても全日本勝ってしまう水準になります。
なお、余計なことを言っておくと、ルールが多少異なりますが、2019年8月、カミラワリエワ選手のジュニアグランプリデビュー戦のスコアは200.71 フリーは基礎点63.81で138.40というスコアでした(ショートのコンビネーションで転倒しています)。
○櫛田育良選手のフリーの構成
Elements | BaseValue | GOE | Scores | AvGOE | |||
1 | 3Lz!+3Tq | ! | 10.10 | -1.26 | 8.84 | -2.111 | |
2 | 3S+3T | 8.50 | 1.17 | 9.67 | 2.556 | ||
3 | 2A | 3.30 | 0.66 | 3.96 | 2.000 | ||
4 | FSSp3 | 2.60 | 0.67 | 3.27 | 2.667 | ||
5 | 3Lz!q | ! | 5.90 | -1.18 | 4.72 | -2.000 | |
6 | 3F | 5.83 | x | 1.29 | 7.12 | 2.444 | |
7 | ChSq1 | 3.00 | 1.71 | 4.71 | 3.556 | ||
8 | LSp4 | 2.70 | 0.77 | 3.47 | 3.000 | ||
9 | 3Lo | 5.39 | x | 1.19 | 6.58 | 2.333 | |
10 | 2A+2T+2Lo | 6.93 | x | 0.52 | 7.45 | 1.667 | |
11 | CCoSp4 | 3.50 | 0.85 | 4.35 | 2.111 | ||
TES | 57.75 | 6.39 | 64.14 |
櫛田育良選手は冒頭からセカンド3回転2本立てという構成でした。最初から最後までクリーンに滑ったように見えたのですが、ルッツからみで!とqが出て減点されています。ただ最終的な順位にはこの辺は影響しなかったと思います。
2回飛ぶジャンプはルッツとトーループ。2回飛ぶルッツで!が2つはちょっと痛いです。ショートと合わせて3つすべて!判定。国内の試合では今年に入って13回とんで1回しか!をもらっていなかったのですがこの辺は国際大会の緊張で癖が出てしまったか、国際審判員との基準の差か、どちらでしょう。
基礎点は57.75 ステップは1度だけレベル4を取れたことがありますが、今大会のショートもレベル3でしたのでまだレベル3が標準とすると、シニアルールなら基礎点が3.3上がって61.05にまではなります。スピンのレベル3を4に出来れば61.40までなります。シニア上位の普通くらいの基礎点です。そこからさらに基礎点を上げるには1.1倍のジャンプ構成が弱いのでここにセカンド3回転やルッツジャンプなどを入れていく必要がありそうです。
櫛田選手はJGP2戦目が決まっていません。残りの枠が3つありますが、今大会3位なので2位と持っている柴山選手より優先順位はおそらく低くなります。表彰台には乗ったのでJGP0戦のサブのメンバーよりは優先順位は上になるでしょうか? 残りの中井亜美選手、千葉百音選手次第で2戦目あるかないか変わってきそうです。
この先、どれだけ強い選手でも4年間ジュニアに残留することになるので、JGPの枠詰まり問題が生じてきそうです。
○男子シングル 上位12名
Pl | Name | Nation | Total | SP | FS |
1 | Nozomu YOSHIOKA | JPN | 219.68 | 72.03 | 147.65 |
2 | Nikolaj MEMOLA | ITA | 214.11 | 71.56 | 142.55 |
3 | Andreas NORDEBACK | SWE | 212.37 | 72.01 | 140.36 |
4 | Minkyu SEO | KOR | 209.59 | 74.39 | 135.20 |
5 | Maxim ZHARKOV | USA | 193.48 | 71.04 | 122.44 |
6 | Kai KOVAR | USA | 191.65 | 69.11 | 122.54 |
7 | Aleksa RAKIC | CAN | 182.82 | 65.33 | 117.49 |
8 | Haru KAKIUCHI | JPN | 178.01 | 64.58 | 113.43 |
9 | Lukas VACLAVIK | SVK | 176.46 | 59.89 | 116.57 |
10 | Tonghe TIAN | CHN | 166.56 | 59.12 | 107.44 |
11 | Aleksandr VLASENKO | HUN | 164.85 | 57.08 | 107.77 |
12 | David SEDEJ | SLO | 146.27 | 49.64 | 96.63 |
ジュニア最終シーズンにしてジュニアグランプリ初出場となった吉岡希選手がショート2位から逆転優勝を果たしました。ショートは最終グループ6人が5.28の差の中に並ぶ大混戦。そのなかでただ一人フリー4回転を決め抜け出しました。国内でも8月のげんさんサマーカップで優勝した時の197.73がベストスコアだったのですが、それをはるかに上回る219.68での優勝。ジュニアルール初のショート70点台ですし、フリーは昨シーズンまで120点台前半がやっとだった選手が一気に150点近いところまで来ました。吉岡選手は5戦目のグダンスクが決まっていますのでそこでファイナル進出を賭けることになります。
2位にはイタリアのメモラ選手が入りました。2003年生まれの18歳で吉岡選手同様ジュニア最終シーズンです。グラスル選手リッツォ選手に次ぐイタリアの三番手を争う位置にいる選手です。昨シーズンはヨーロッパ選手権15位でした。4回転がまだないのですが今大会はフリーで2本のトリプルアクセルをクリーンに決めて初表彰台となっています。
3位はスウェーデンのノルデバック選手。こちらも2004年3月生まれでジュニア最終シーズンとなっています。昨シーズン世界ジュニア10位。212.37はそのスコアを上回るパーソナルベスト。ショート3位を守り切ってジュニアグランプリ初表彰台となりました。
ショート首位の韓国ソミンキュ選手はフリーで伸びず4位。トリプルアクセル無しでショート首位に立ち驚かされましたが、さすがにフリーでトリプルアクセル無し構成は男子では辛く大学生たちに逆転されました。まだ13歳のジュニア1年目ですが今大会ショートフリーいずれもPCSではトップでした。また、スピン、ステップ系要素のスコアも全体トップです。年齢を重ねて高難度ジャンプが入ってきたら明らかにトップまで行く逸材な感じがあります。ただし、島田麻央選手同様ミラノオリンピックには出られません。
日本から派遣のもう一人、垣内珀琉選手は8位でした。国際大会は4年半ぶり。178.01というスコアはげんさんサマーカップの183.47を下回り本人比でも普通でしたが、それでも世界ジュニアのミニマムスコアは獲りましたし、8位はぎりぎり世界ランキングポイントも入りますし、久しぶりの国際大会は一定の成果を得たと思います。
○吉岡希選手のフリーの構成
Elements | BaseValue | GOE | Scores | AvGOE | |||
1 | 4T+2T | 10.80 | 1.49 | 12.29 | 1.667 | ||
2 | 3F | 5.30 | 1.06 | 6.36 | 2.000 | ||
3 | 3A | 8.00 | 1.26 | 9.26 | 1.556 | ||
4 | FCSp2 | 2.30 | 0.13 | 2.43 | 0.556 | ||
5 | 3Lo | 4.90 | 0.77 | 5.67 | 1.556 | ||
6 | 4T | 10.45 | x | 2.44 | 12.89 | 2.556 | |
7 | 3A+1Eu<<+2S | << | 10.23 | x | -3.20 | 7.03 | -4.000 |
8 | ChSq1 | 3.00 | 1.36 | 4.36 | 2.667 | ||
9 | 3Lz+2A+SEQ | 10.12 | x | -0.93 | 9.19 | -1.333 | |
10 | CSSp4 | 3.00 | -0.13 | 2.87 | -0.556 | ||
11 | CCoSp3 | 3.00 | 0.47 | 3.47 | 1.556 | ||
TES | 71.10 | 4.72 | 75.82 |
4回転2本成功。4回転成功は初めてではないですが、1つのフリーで2本成功はこれが初です。2回飛ぶジャンプは回転トーループにトリプルアクセル。結果的にセカンド3回転が入らず、3Tと3Sが余った形になりました。そのあたりとスピンには伸びしろがはっきり見られます。ステップはレベル4経験がまだないのでレベル3としてシニアルールで足されると基礎点は3.3上がって74.40 ここに2回転になったトーループとサルコウが3回転に出来てオイラーもちゃんと回った場合6.75基礎点が上がって81.15になるので基礎点80点台到達です。スピンのレベルも取れると82.55になります。これがまず目指すところになりそうで、そこまで行くと日本のシニア上位とも戦えて、シニアのグランプリシリーズの枠に入ってこられる可能性もありそうです。
その辺の細かいいろいろはありますが、今回はとにかく4回転2本が決まったことが大きかったと思われます。
○垣内珀琉選手のフリーの構成
Elements | BaseValue | GOE | Scores | AvGOE | |||
1 | 3Lz+3T | 10.10 | 1.43 | 11.53 | 2.333 | ||
2 | 3Lo | 4.90 | 0.77 | 5.67 | 1.667 | ||
3 | 4T< | F | 7.60 | -3.80 | 3.80 | -5.000 | |
4 | CSSp4 | 3.00 | -0.34 | 2.66 | -1.222 | ||
5 | 3F! | ! | 5.30 | -0.98 | 4.32 | -1.778 | |
6 | 3S+2T+2Lo | 8.03 | x | 0.00 | 8.03 | 0.000 | |
7 | 2A+2T<< | << | 4.07 | x | -1.56 | 2.51 | -4.667 |
8 | ChSq1 | 3.00 | 0.64 | 3.64 | 1.222 | ||
9 | 3Lz | 6.49 | x | 0.59 | 7.08 | 1.000 | |
10 | FCSp2 | 2.30 | 0.00 | 2.30 | 0.000 | ||
11 | CCoSp3 | 3.00 | -0.04 | 2.96 | -0.111 | ||
TES | 57.79 | -3.29 | 54.50 |
垣内選手は4回転トーループに挑みましたが回転不足で転倒となりました。まだこれまで4回転トーループの着氷はありません。一度だけげんさんサマーカップで回転が足りて基礎点満額入ったことはありますがその時も転倒でした。また、トリプルアクセルが構成にありません。これまで試合でトリプルアクセルが要素として入ったこともありません。現在16歳の高校2年生。そろそろ高難度ジャンプが欲しい時期ではあると思います。
次戦はJGP3戦目、ラトビアのリガ開催です。日本からは男子シングルで中田璃士選手と周藤集選手。女子シングルに中井亜美選手が出場します。