JGP エーニャ ファイナルメンバー決定

ジュニアグランプリの最終戦がイタリアのエーニャで行われました。エーニャスプリングトロフィーでおなじみのエーニャです。日本からは女子2名男子3名の派遣。この試合でファイナル進出メンバーが確定します。

 

○女子シングル 上位12名

Pl Name Nation Total SP FS
1 Hana YOSHIDA JPN 208.31 66.89 141.42
2 Chaeyeon KIM KOR 203.94 70.29 133.65
3 Inga GURGENIDZE GEO 190.52 63.04 127.48
4 Mone CHIBA JPN 185.73 64.07 121.66
5 Phattaratida KANESHIGE THA 175.41 61.42 113.99
6 Sherry ZHANG USA 171.88 57.85 114.03
7 Soho LEE USA 165.50 61.73 103.77
8 Minchae KIM KOR 161.45 43.16 118.29
9 Iida KARHUNEN FIN 159.99 55.88 104.11
10 Mariia SENIUK ISR 156.26 51.62 104.64
11 Ginevra Lavinia NEGRELLO ITA 149.49 56.56 92.93
12 Amalia ZELENJAK EST 145.78 50.61 95.17

吉田陽菜選手、逆転でジュニアグランプリ2連勝。ファイナル進出を決めました。4位でもファイナル、110点出せばいいというそちらの面では楽な状況で出てきましたが、逆転優勝のためにはミスは出来ないというそちらから見ると難しい状況。そんな中でほぼミスのない演技で140点に乗せパーソナルベストのスコアを出しています。吉田選手にとってエーニャはISU非公認ではありますが210.77のハイスコアを出した地。縁起のいい街ということにこれで完全になりました。街ではなくイタリアという国単位で縁起が良ければミラノオリンピックで素晴らしい結果につながることになるのですが、それはまだ先の話。

2位にはキムチェヨン選手。ジュニアグランプリ-チャレンジャーシリーズ-ジュニアグランプリの3連戦。これを3位2位2位、200点台2回で乗り切りファイナル進出です。203.94は先週のフィンランディア杯より1.57低いスコアになりますが、シニア-ジュニアのルール差があるので実質的にはパーソナルベスト相当の出来だったと言えます。今大会のスピンのスコアは25.83で全体トップ。ジュニアグランプリ全体でも島田麻央選手がオストラバで出した26.14に次ぐ2番目のスコアでした。

ジョージアのグルゲニゼ選手が3位表彰台。今シーズン日本、韓国以外での表彰台はアメリカのソーホーリー選手に次いでやっと2人目です。初戦のリガからスコアを10点ほど伸ばしてきました。冒頭のトリプルアクセルはアンダーローテーションで転倒。他の要素はすべてプラス評価でまとめています。2009年4月生まれの13歳。次回のオリンピックはありませんが、今後、島田麻央世代として強力なライバルになっていく可能性がある選手です。

千葉百音選手は4位でした。3位表彰台との差は4.79 これがファイナル進出との差でもありました。ショートフリー、1つづつミスが出てそのミスがあまりにも大きく響きました。

5位にはフィギュアスケートではあまり聞かないタイからファタラティダカネシゲ選手が入りました。国際大会はクランベリーカップに次いで2戦目。スコアを上げてきました。クランベリーカップと同様にフリーの2つ目の要素にトリプルアクセルを入れてきましたがアンダーローテーションの転倒に終わっています。こちらも2009年生まれの13歳です。ホームタウンはバンコクとされていますが練習拠点はアメリカのコロラドアメリカ在住の模様。タイのフィギュアスケートの歴史を変えるというかほぼゼロから作っていく、今後に期待される選手となります。

 

○吉田陽菜選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A   8.00   2.63 10.63 3.333
2 2A+3T   7.50   1.32 8.82 3.222
3 3Lo   4.90   1.47 6.37 3.000
4 CCoSp4   3.50   0.80 4.30 2.333
5 SSp4   2.50   0.86 3.36 3.333
6 3F! ! 5.30   0.38 5.68 0.667
7 3Lz+3T   11.11 x 0.93 12.04 1.556
8 FCCoSp4   3.50   0.75 4.25 2.000
9 3Lz   6.49 x 1.10 7.59 1.889
10 ChSq1   3.00   1.79 4.79 3.444
11 3S+2A+2T<+SEQ 9.50 x -0.18 9.32 -0.444
  TES   65.30   11.85 77.15  

現代のレイア姫トリプルアクセルを飛びます。今回は平均GOE+3.333という高い評価を得ました。今シーズンこれまで国際大会でトリプルアクセルは4人が5回、GOEプラスの評価で成功させていますが、この+3.333が最高評価です。

ヒヤッとしたのは単独のトリプルルッツだったかなと思いました。ショートのトリプルルッツも危なかったのですがこれも危なかった。それでも決めてきています。減点出たのは最後の3連続。3つ目の2Tは回転足りてませんでした。ジャンプ要素の最後と言うだけでなく、コレオも終わらせて全要素の最後に3連続を持ってくるのはなかなか難易度高いと思うのですがしっかり降りています。

フリップに!が付く課題はクールシュベルの時と同様。ショートではルッツで!がついていましたが、吉田選手はルッツもフリップもどちらも!が付きがちです。踏切の跳び分けが課題。

2回飛ぶジャンプはルッツとトーループで基礎点65.30 クールシュベルの65.59からダブルトーループの回転不足分下がりました。

トリプルアクセルの成功率の高さ、成功とまで行かないときにも丸2年転倒もせず回転不足もqまでで基礎点が削られることはないという驚異的な安定感。トリプルアクセル2本構成もあるのではないかと思うのですが、どこかで入れてくるでしょうか? 年内は西日本選手権を経て全日本ジュニア(国内ではシニアコースでした)-ジュニアグランプリファイナル-全日本と続きます。やってみるなら西日本選手権が試しどころ。昨年は近畿選手権でトリプルアクセル2本構成を成功させた実績があります。

 

○千葉百音選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz!+3T< 9.26   -0.93 8.33 -1.444
2 2A   3.30   0.90 4.20 2.667
3 3S   4.30   0.86 5.16 2.000
4 FCCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
5 3F   5.30   1.59 6.89 3.000
6 3Lo   5.39 x 1.12 6.51 2.444
7 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.111
8 3F+2A+SEQ   9.46 x 1.14 10.60 2.222
9 3Lz!< F 5.19 x -2.36 2.83 -4.889
10 ChSq1   3.00   1.64 4.64 3.222
11 LSp4   2.70   1.23 3.93 4.556
  TES   54.90   7.29 62.19  

126.46以上を出せば表彰台確定、すなわちファイナル確定という状態でリンクに上がった千葉百音選手。冒頭のセカンドジャンプ以外は順調に各要素をこなしていきましたが最後のジャンプで大きなミスが出ました。ルッツからの3連続。1つ目のルッツで回転不足の転倒という最悪の展開となりました。これを立って3連続ついていれば表彰台でした。

2回飛ぶジャンプはルッツとフリップなのですが、このルッツが課題。ショートフリーの3つのルッツすべてに!が付きました。グダンスクの時も3つのうち2つに!がついています。

ルッツからのコンビネーションが2つあるのですから本来は得意なのかもしれませんが、結果的には3連続はループからつけて最後のルッツは単独にすれば基礎点変わらずにリカバリーも可能にできます。ただ、将来的なことを考えてルッツのコンビネーションを常に飛ぶプログラムにして課題克服の糧にしているようにも感じます。

ショートでスピンが零点になるミスもありました。ミスの数が多いわけではないのですが、1つのミスが大きなダメージになっていたのが今回の千葉百音選手でした。残念ながらファイナル進出がなりませんでしたので、東日本ジュニアから全日本ジュニアを経て全日本へ出て世界ジュニアを目指すというコースになります。その間に、夏に一度試していた4回転を習得して全日本で披露なんてしてきたら面白いです。

 

○男子シングル 上位13名

Pl Name Nation Total SP FS
1 Lucas BROUSSARD USA 211.14 74.79 136.35
2 Shunsuke NAKAMURA JPN 211.01 73.61 137.40
3 Takeru Amine KATAISE JPN 201.35 65.56 135.79
4 Naoki ROSSI SUI 198.63 71.71 126.92
5 Aleksa RAKIC CAN 197.56 71.50 126.06
6 Jaekeun LEE KOR 196.93 69.47 127.46
7 Andreas NORDEBACK SWE 190.33 62.62 127.71
8 Daniel MARTYNOV USA 187.91 72.35 115.56
9 Dias JIRENBAYEV KAZ 186.71 60.35 126.36
10 Lev VINOKUR ISR 179.49 60.95 118.54
11 Rakhat BRALIN KAZ 177.40 62.93 114.47
12 Matias LINDFORS FIN 168.15 58.46 109.69
13 Tsudoi SUTO JPN 164.18 55.35 108.83

これまでの優勝者が3人顔を並べた男子の優勝はアメリカのブルサード選手でした。2戦2勝でファイナル進出となります。2戦ともトリプルアクセルもクリーンに決められていないのですが、トータルの出来の良さで勝ち切りました。

2位には中村俊介選手。初戦のクールシュベルで優勝した後、大会の中止などもあり間がだいぶ空きました。ショート2位から逆転優勝を狙ってのフリー。4回転は決まらず転倒。以降はしっかりまとめてフリーだけなら1位だったのですがトータルスコアはわずかに届かず2位。それでもファイナル進出を決めました。

片伊勢武アミン選手が3位。こちらも大会中止のあおりを食って連戦になりました。ショートは出遅れて7位。最終グループに入れずこのままだとファイナルが消えるというプレッシャーのかかるフリー。冒頭のトリプルアクセルもダウングレードになりフリーもダメか、と心配されましたが以降立て直して200点に乗せ表彰台。いろいろミスもありましたがショートフリーを通じてのスピンのスコアは全体トップでした。ファイナル進出確定です。

日本からはもう一人須藤集選手が出場し13位でした。

 

中村俊介選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4Tq F 9.50   -4.75 4.75 -5.000
2 3A   8.00   1.83 9.83 2.222
3 CSSp4   3.00   0.56 3.56 1.778
4 3Lz+3T   10.10   -0.76 9.34 -1.222
5 3F   5.30   0.53 5.83 1.111
6 3A+1T   9.24 x -0.46 8.78 -0.556
7 ChSq1   3.00   0.07 3.07 0.000
8 FCSp3   2.80   0.12 2.92 0.333
9 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 0.93 12.70 1.667
10 3Lo   5.39 x 0.84 6.23 1.778
11 CCoSp3   3.00   0.26 3.26 0.889
  TES   71.10   -0.83 70.27  

冒頭4回転は転倒でした。最終的に点差は0.13でしたので安全策を取っていれば勝っていた可能性は高いです。それでも飛びたい4回転。目の前の小さい勝ちよりも1つの経験を積むことの方が価値はあったのかもしれません。細かいこと言えば、トリプルアクセルのコンビネーションが2回転に出来ていたり、スピンのレベルをもう1つレベル4に出来ていたりしていれば勝ちでした。

2回飛ぶジャンプはトリプルアクセルトリプルルッツトリプルアクセルはジュニアグランプリ2戦で6本飛んで、一番悪いのが今回のコンビネーションの平均GOE-0.556 成功率はかなり高くなっています。

前回はトリプルルッツを3回飛んだりザヤックルールに引っ掛かって基礎点欠けていましたが今回は71.10と70点台に乗せました。スピンレベル4にしてノーミスならば1.89基礎点が上がって72.99になります。基礎点を上げるにはダブルアクセルが2本丸々余っているので、3連続を3Lz+2A+2Aにすると基礎点を1.98上げることが出来るので73.97にまでできる計算です。シニアルールなら70点台後半の基礎点になります。

 

○片伊勢武アミン選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A<< <<  3.30   -1.60 1.70 -4.778
2 3Aq+3T q 12.20   -0.23 11.97 -0.222
3 3F   5.30   1.21 6.51 2.222
4 CCoSp4   3.50   0.85 4.35 2.556
5 3Lo   4.90   -1.75 3.15 -3.444
6 3Lz   6.49 x 1.18 7.67 2.000
7 2A+3T   8.25 x -0.36 7.89 -0.667
8 3S+2A+2T+SEQ   9.79 x 0.61 10.40 1.333
9 CSSp3   2.60   0.74 3.34 2.778
10 ChSq1   3.00   0.71 3.71 1.222
11 FCCoSp4   3.50   0.70 4.20 2.000
  TES   62.83   2.06 64.89  

片伊勢選手は4回転無しでトリプルアクセルとトリプルトーループを2本飛ぶ構成です。前回と比べると冒頭のトリプルアクセルがダウングレードになったことでかなり基礎点が削られました。2試合連続ノーミスはどうしても難しい。特に片伊勢選手は先週今週2連戦を強いられていました。今回はショートのトリプルアクセルも転倒となっています。

前週の234.24は結局ジュニアグランプリシリーズ6戦の最高得点となりました。しかしながら今回の201.35ではファイナルでは上位に届かない。ファイナルであるいは全日本ジュニアで表彰台を目指すにはトリプルアクセル2本は必須になって来るのだろうと思われます。

 

○周藤集選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A+2T   9.30   1.14 10.44 1.444
2 1Lz! ! 0.60   -0.08 0.52 -1.333
3 3Aq F 8.00   -4.00 4.00 -5.000
4 CSSp3   2.60   0.56 3.16 2.222
5 3Lo   4.90   -1.33 3.57 -2.778
6 FCSp4   3.20   0.64 3.84 1.778
7 3Lz!+2T ! 7.92 x -0.84 7.08 -1.444
8 2A+1Eu+3S   8.91 x -1.29 7.62 -3.000
9 CCoSp3V   2.25   0.29 2.54 1.222
10 3F F 5.83 x -2.65 3.18 -5.000
11 ChSq1   3.00   1.21 4.21 2.222
  TES   56.51   -6.35 50.16  

周藤選手もジュニアグランプリ2戦目。残念ながら初戦よりスコアを落としています。フリーでは3転倒。スコア的にもかなり痛かったです。

2回飛ぶジャンプはトリプルアクセル。気持ちの上ではトリプルルッツを2回飛ぶはずだったと思いますが1つ目は1回転になりました。

今回はショートのトリプルアクセルも決まりませんでした。まずは安定したトリプルアクセルというのが求められそうです。

 

ジュニアグランプリシリーズはこれで終了しました。ファイナル進出は女子は日本3の韓国3。日本からは島田麻央選手、吉田陽菜選手、中井亜美選手となります。優勝は日本5の韓国1だったのですが結果的にこういう形になりました。補欠が千葉百音選手、ついで柴山歩選手とここにも日本勢が並びます。このあたりはアルメニア大会の中止がかなり影響していたようにも感じます。予定通りアルメニアでも試合があり7戦行われていたら千葉選手、柴山選手の命運も違うものになっていたかもしれません。スコアランクで言えば千葉選手も4番目で4番目までが日本勢でした。

男子は日本3アメリカ2イタリア1 ここでも日本勢が最多です。中村俊介選手、片伊勢武アミン選手、吉岡希選手の3人。スコアランクトップは片伊勢武アミン選手。ただし2戦目のスコアは伸びていません。女子と比べると1戦目と2戦目のスコアがだいぶ異なる選手が多く、一発勝負のファイナルで誰が上に出るかはわかりにくいです。

 

ジュニアグランプリファイナルは12月8日から、シニアのグランプリファイナルと同時開催になります。それまでジュニアはしばらくお休み。シニアのグランプリシリーズが始まっていくことになります。