全日本選手権21 男子レビュー2

前回に引き続いて男子シングルの上位選手の構成要素を見てみます。

 

○上位6人のショートプログラムの構成

  羽生結弦 宇野昌磨 鍵山優真 三浦佳生 友野一希 三宅星南
1 4S 4F 4S+3T 4S+3T 4T+2T 4S
2 4T+3T 4T+2T 4T 3A 4S 3A
3 FCSp4 FCSp4 CCSp4 FCSp4 CSSp4 FCSp4
4 3A 3A 3A 4T 3A CSSp4
5 CSSp4 CSSp4 FSSp4 CSSp4 FCSp4 3Lz+3T
6 StSq4 StSq4 StSq4 StSq3 StSq4 StSq4
7 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp3 CCoSp4 CCoSp4
Base 45.80 44.20 45.80 44.85 42.90 42.41
GOE 16.48 11.28 5.35 9.45 3.86 7.79
PCS 49.03 46.40 45.00 38.51 41.03 40.32
TSS 111.31 101.88 95.15 92.81 87.79 90.52

上位選手はショートプログラムから4回転を2本入れてきます。基礎点トップは羽生選手と鍵山選手。サルコウトーループの2種類の4回転で1.1倍にはトリプルアクセルを入れるという構成で45.80になります。狙っていた構成がこれより上だったのは三浦佳生選手。1.1倍に4回転を入れました。ただ、スピンステップにレベル3があり基礎点は44.85まで。すべてレベル4に出来れば45.95の基礎点になるはずでした。そのもう一段階上がありえたのは宇野昌磨選手。近年入っていないセカンド3回転がつけば基礎点47.10まで行きます。ただ一人ショートプログラムから4回転のフリップが入っているためです。サルコウトーループの2種類でセカンドに3回転が付けられないと友野一希選手の42.90という基礎点になります。これは4回転1種類で1.1倍に3回転-3回転を持ってきた三宅星南選手と0.49しか基礎点が変わらないという構成です。セカンド3回転が付けられないと4回転を2種類にするリスクに、リターンがちょっと見合っていない感じはします。

加点は当然のように羽生選手がトップ。7つしか要素のないショートプログラムで16.48という加点を叩きだしています。宇野昌磨選手も二桁加点。100点に乗せるには二桁加点が欲しいでしょうか。三浦佳生選手も二桁に近いところまで加点を得ました。

PCSは平均9点越えが3人。ショートでトップとPCSで10点以上差が付けられるのは三浦選手ちょっと辛いですが、PCSは年齢との相関が高いのでやがて上がってくるのでしょう。

最後二つの要素が上位陣は全員同じでステップから足替えのコンビネーションスピンという流れになっています。

 

○総合7位から12位の選手のショートプログラム構成

  佐藤駿 本草 壷井達也 島田高志郎 田中刑事 本田ルーカス剛史
1 3Lz 4S 3A 4S 4S 3A
2 4T+3T 3A 3F 3Lz+3T 3F+3T 3F!
3 CSSp4 FCSp4 CCSp4 CSSp4 FCSp4 CCoSp4
4 FCSp3 3F+3T 3Lz!+3T FCSp4 2A 3Lz+3T
5 3A CSSp4 CCoSp4 3A CSSp4 CSSp4
6 StSq3 StSq4 FSSp4 StSq3 StSq3 StSq4
7 CCoSp4 CCoSp4 StSq3 CCoSp4 CCoSp4 FCSp4
Base 41.00 41.75 37.41 41.60 35.83 38.01
GOE 6.84 10.39 4.97 5.26 7.06 3.80
PCS 39.43 41.65 34.93 39.90 41.21 36.72
TSS 87.27 93.79 77.31 86.76 84.10 78.53

中位の選手のショートプログラムは4回転1本のケースが多いです。佐藤駿選手は4回転ルッツを想定していたと思いますが結果的に3回転になりました。またこの辺の選手は4回転無しという構成もあります。4回転1本で41点程度、4回転無しだと30点台後半までになって、田中刑事選手のようにトリプルアクセルが抜けるなど基礎点が削られるミスが出ると30点台半ばまで基礎点が落ちます。

GOEで大きく稼いだのが山本草太選手で、これが原動力となってショート4位スタートとなりました。男子はフリーではGOE合計マイナスというのもよく見る光景ですがショートではさすがにそうはならずに全員プラスは確保しています。

PCSは世界ジュニアを目指して今シーズンに臨んでいた二人は30点台半ばと伸びていません。

最後の要素は中位の選手もやはりスピンが多いですが、壺井選手のみステップで締める構成になっています。

 

○総合上位6人のフリーの構成

  羽生結弦 宇野昌磨 鍵山優真 三浦佳生 友野一希 三宅星南
1 4A<< 4Lo 4S 4Lo 4T+2T 4S+2T
2 4S 4S 3Lz 4S 4S 4S
3 3A+2T 4F 4T+3T 4T 4T 3A+1Eu+2S
4 3Lo 3A 3A+1Eu+2S FCSp4 3Lo FCSp4
5 FCCoSp4 FCSp4 CSSp4 3A+2T StSq3 3A
6 StSq4 ChSq1 StSq3 ChSq1 FSSp4 ChSq1
7 4T+3T 4T 4T 4T+3T 3A+1Eu+2S 3Lz+3T
8 4T+1Eu+3S 4T+REP 3F+3Lo 3A 3A 3F
9 3A 3A+1Eu+3F 3A CSSp3 3F+2T 3Lo
10 ChSq1 FCCoSp4V ChSq1 StSq3 FCCoSp4 StSq4
11 FCSSp4 CCoSp4 CCoSp4 2A+1Eu+3S CCoSp4 CSSp4
12 CCoSp4 StSq3 FCCoSp4 CCoSp3 ChSq1 CCoSp4
Base 88.40 87.78 85.87 86.88 78.04 77.43
GOE 25.85 13.86 19.81 12.97 12.50 4.29
PCS 96.80 93.30 91.58 83.50 85.34 81.58
TSS 211.05 193.94 197.26 183.35 175.88 162.30

フリーの基礎点も跳びぬけた選手はいない構図です。一応羽生選手が88.40で最も高い基礎点ですが、宇野選手とは0.62差、三浦佳生選手とも1.52差とほとんど差がありません。三浦佳生選手は最後のジャンプがトリプルアクセルで入っていれば基礎点が90点に乗ってトップになるところでした。宇野選手はコンビネーションが1つしか入っていませんので、やはりコンビネーションをしっかり3つ入れれば基礎点はトップになる構成です。鍵山優真選手は3連続の最後のサルコウを3回転にすると90点近いところまで来ます。全員ノーミスな場合は、羽生選手が4回転アクセルの基礎点を満額もらっても、セカンド3Tをコンビネーションで付けられれば宇野選手の基礎点が一番高くなるはずです。

友野選手は4回転3本にトリプルアクセル2本ありながら基礎点が80点に届いていません。コンビネーションで3回転がゼロというのが響いています。三宅選手は4回転2本。3連続のサルコウを3回転に出来れば基礎点80点に乗せられました。

差がついたのは結局出来栄えです。4回転アクセルの減点がありながらも羽生選手はGOEで25.85を稼いでいます。鍵山選手も20点近く稼ぎました。宇野選手がここが10点台前半まで。オリンピックまでに完成度を上げていければ200点までは見えている位置にいるようです。三宅星南選手はここでやはり上位との差がありました。

PCSは90点台後半まで出した羽生選手がやはり高いですが、宇野選手鍵山選手も90点台。遜色ないとは言えませんが絶望的な差ではない範囲に収まっています。三浦佳生選手はフリーでは各要素8点台平均を超えて83.50まで出してきています。これが90点まで来たときにトップで戦える選手になるのだと思いますが、それは来シーズンのお楽しみで今シーズンは世界ジュニアを取りに行くということになります。その三浦選手を友野一希選手はPCSでは上回りました。三宅選手も80点台に乗せています。

 

○総合7位から12位の選手のフリーの構成要素

  佐藤駿 本草 壷井達也 島田高志郎 田中刑事 本田ルーカス剛史
1 4Lz 4T 4S 2T 3S 4T<
2 4F! 4S<< 3A+2T 4S 2S 3A+2T
3 4T+2T 1A 3A 3A+2T 3A 3F
4 FCCoSp4 3A+1Eu+3S CSSp3 3Lo 2Lz+3T FSSp4
5 4T FCSp4 3Lo StSq3 FCSp4 3Aq
6 3A+1T StSq3 ChSq1 FSSp4 StSq3 StSq4
7 FSSp4 2A 3F+3T 3A+1Eu+2S 3A+REP 3Lz+3T
8 3F 3F+3T 3Lz!+1Eu+3S ChSq1 3F+1Eu+3S 2A+1Eu+3S
9 3A 3Lz+2T 3F 3T 3Lo ChSq1
10 StSq3 CSSp4 FCCoSp4 3Lz CSSp4 3Lz
11 ChSq1 ChSq1 StSq3 CCoSp4 ChSq1 CCoSp4
12 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp3V FCCoSp4 CCoSp4 FCCoSp3
Base 82.97 65.70 74.60 63.39 58.56 73.11
GOE 4.17 1.45 10.66 5.96 9.26 1.08
PCS 78.72 80.24 72.64 77.56 80.50 73.50
TSS 164.86 146.39 157.90 146.91 148.32 146.69

この領域の選手で基礎点80点台に乗せたのは佐藤駿選手のみでした。4回転のルッツ、フリップを決めて合計4回転は4本。トリプルアクセルも2本あります。ただコンビネーションがうまくいかせず3連続なし。コンビネーションが想定通りに入っていれば90点を超える構成に出来るはずでした。

4回転を1本決めた壷井選手が70点台半ばの基礎点。上位がすごすぎるので高い基礎点とは言いがたいですが、この構成でミスなくまとめてGOEは二桁。これが世界ジュニアにつながったと言えそうです。本田ルーカス剛史選手は4回転回転不足。ただ、それでも壺井選手との全体の基礎点差はほとんどありません。世界ジュニアの争いという点では4回転の有り無しよりも内容の差で負けたという形です。

本草太選手は序盤のジャンプがほとんどうまく入らず基礎点が60点台になりました。それでもPCSは80点に乗せています。田中刑事選手も4回転が1つも入りませんでしたがPCSは80点台に乗せました。

フリーもスピンで締める選手が多いです。フリー進出24選手中、コレオで締めたのが友野一希選手と総合15位の須本光毅選手。ステップで締めたのが宇野昌磨選手と総合21位の山隈太一郎選手。残りの20人はスピンで締める構成でした。

 

男女とももう一回づつ数値編が続きます。