JGP リガ 3戦連続表彰台

ジュニアグランプリの3戦目がラトビアのリガにて行われました。初戦、2戦目と木下アカデミー勢が席巻してましたが、今回は木下アカデミーからの派遣はなしです。今回はMFアカデミー勢が派遣されて健闘しました

 

○女子シングル 上位12人

Pl Name Nation Total SP FS
1 Jia SHIN KOR 194.68 70.41 124.27
2 Soho LEE USA 185.92 64.06 121.86
3 Ami NAKAI JPN 185.62 63.87 121.75
4 Inga GURGENIDZE GEO 180.28 58.80 121.48
5 Nikola FOMCHENKOVA LAT 169.07 55.79 113.28
6 Kimmy REPOND SUI 168.96 58.88 110.08
7 Jihyun HWANG KOR 166.61 58.01 108.60
8 Justine MICLETTE CAN 150.77 57.85 92.92
9 Hannah HERRERA USA 145.30 49.30 96.00
10 Valentina ANDRIANOVA GER 142.13 45.33 96.80
11 Nella PELKONEN FIN 140.94 53.74 87.20
12 Sofja STEPCENKO LAT 139.99 43.24 96.75

昨シーズンの世界ジュニア2位、韓国のシンジア選手が優勝しました。日本勢3連勝を阻止、力を発揮しました。ショート1番滑走のフリー最終滑走。シンジアに始まりシンジアに終わる、比喩でも比喩ではない意味でも、という試合になりました。トリノオリンピック高橋大輔選手が確かそんな形でしたが、その形でしかも優勝してしまうという非常に珍しいものになりました。

2位にはアメリカからソーホーリー選手。ここまで2試合日韓で占められていた表彰台に3試合目にしてアメリカから割って入りましたが、韓国系の選手ですね。ショートノクターン、フリーくるみ割り人形浅田真央さんの若いころのプログラムだったりしますが、たまたまなのか憧れリスペクトがあるのか。ショート2位からのフリー、見た目ノーミス、逆転優勝有るか? という演技でしたがqが並んでスコア伸びず、逆に何とか踏みとどまって僅差で2位を確保した、という試合になりました。 2009年2月生まれ。島田麻央選手同様、ミラノオリンピックには出られず、最短オリンピックは21歳という世代になります。

日本から派遣の中井亜美選手が3位でした。これで日本から派遣の女子選手は3大会連続で5人全員表彰台確保を継続してきています。ショートはマイナス要素無しのいい演技で63.87、国内参考含めても自己ベストのスコアで3位につけてのフリー。衣装はアオザイ風なんでしょうか、足首まで伸ばしたらベトナムで歩いてそうにも見えるミスサイゴン。ジャンプの抜け2つがありながらも120点台までスコアをのばして2人を残して首位、表彰台を確定させました。ショートはアイガッドリズム、フリーはミスサイゴン。曲名聞いただけで全日本4連覇経験のある2人の顔が浮かぶ曲をショートフリーで並べるのはなかなか勇気がいるんじゃないかと思います。

 

○中井亜美選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A< 6.40   -1.10 5.30 -1.667
2 3Lz+3T   10.10   1.52 11.62 2.556
3 1Lo   0.50   -0.18 0.32 -3.556
4 FSSp4   3.00   0.69 3.69 2.333
5 3Lo+2A+SEQ   8.20   1.05 9.25 2.222
6 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.21 12.32 2.222
7 CCoSp4   3.50   1.00 4.50 2.778
8 1A   1.21 x -0.41 0.80 -3.667
9 3Lz   6.49 x 1.52 8.01 2.667
10 LSp4   2.70   0.73 3.43 2.667
11 ChSq1   3.00   1.36 4.36 2.778
  TES   56.21   7.39 63.60  

冒頭のトリプルアクセルは回転不足で基礎点から減点となりました。ただ、それでも5.30を得ているのでダブルアクセル比ではおつりが来ます。今シーズンこれで3本目のトリプルアクセルですが回転不足はあっても転倒はありません。転倒しなければアンダーローテーションまでならダブルアクセル比で高いスコアになりつつ、余ったダブルアクセルを後でシークエンスで使えますので十分です。

問題は2つのジャンプの抜け、ループとアクセル。優勝したシンジア選手との点差は9.06 2つのジャンプをしっかり飛んで、平均GOE+2を得ていれば9.05これよりスコアが上がります。トリプルアクセル以外ノーミスで優勝が見えるところにいました。これまで国内の試合でループジャンプが抜けて1回転になったことも、アクセルジャンプが1回転になったことも記録上ありません。冒頭二つの難しいジャンプを下りて少し硬くなったんでしょうか? とはいえフリーの合計121.75は国内の試合で出せてことの無い高いスコアですし、海外に弱いとか大事な試合に弱いとかそういうことではなさそうです。

2回飛ぶジャンプは結果的にルッツだけでしたがループが本来もう一つあったのでしょう。試合前の予定構成ではトリプルアクセル2本で提出していましたが勝負が懸かっていたからかそれには挑みませんでした。

基礎点は56.21と結果的に低めです。ジャンプ2本抜ければこうなります。ループとアクセルがしっかり入っていれば7.41基礎点が上がるので63.62になります。ジュニアルールでこの領域はトリプルアクセル以上のジャンプがないと出ません。

ノーミスでフリー130点が見えています。トリプルアクセル込みでノーミスなら135点まで出ます。ショートフリーノーミスで200点が見えるところまで来ました。

 

中井亜美選手、3位表彰台で2戦目をもらえるかどうか。同じ3位の櫛田選手よりスコアは上です。ただ外国人選手で負けた人数は中井選手の方が2人で多い。7戦目もらえると、6戦目でつぶしあいがあってややメンバー的に薄くなる可能性もあり、優勝でファイナルへ、という道も見えるのですが、どうなるでしょうか。

 

○男子シングル 上位12名

Pl Name Nation Total SP FS
1 Nikolaj MEMOLA ITA 225.76 83.04 142.72
2 Rio NAKATA JPN 200.17 68.91 131.26
3 Rakhat BRALIN KAZ 199.38 68.66 130.72
4 Robert YAMPOLSKY USA 196.67 65.05 131.62
5 Makar SUNTSEV FIN 189.03 67.11 121.92
6 Tsudoi SUTO JPN 183.30 69.64 113.66
7 Konstantin SUPATASHVILI GEO 176.09 57.11 118.98
8 Casper JOHANSSON SWE 175.05 57.39 117.66
9 Kyrylo MARSAK UKR 174.10 58.94 115.16
10 Nikita KOVALENKO ISR 173.58 59.06 114.52
11 Noah BODENSTEIN SUI 172.22 55.10 117.12
12 Grayson LONG CAN 167.60 55.08 112.52

男子は先週のオストラバからの連戦となったイタリアのメモラ選手が力の差を見せつける演技で圧勝しました。ショートもフリーも他を寄せ付けない点差です。オストラバでは214.11だったスコアが225.76まで伸ばし、ここまで3試合の全体の最高スコアになっています。2戦で2位と優勝。ジュニアグランプリは7戦あるので、1位2位はファイナル確定ではないのですが、実質的にはほぼ確定です。

2位に日本から派遣の中田璃士選手が入りました。2位争いは今大会混戦でしたが際どい中で抜け出しました。ショート3位で残り2人でのフリーだったため、スコアが出た瞬間暫定トップで表彰台確定、MFアカデミーから二人続けての滑走だったため独りぼっちのキスアンドクライでしたが歓喜&涙となりました。国際大会は初挑戦。昨シーズン全日本ノービスAで優勝という実績はありますが、国内でのベストスコアも166.59という選手。それが初国際大会で200点に乗せての表彰台となりました。

3位にはカザフスタンからラハトブラリン選手が入りました。ショートフリー通じてトリプルアクセル無しという構成でしたが滑りの良さが目立ち得点を伸ばしての逆転表彰台。カザフスタンはデニステン選手に続く選手がなかなかいなかったのですが、昨シーズン四大陸選手権で5位に入ったシャイドロフ選手と並んで将来が期待されます。

日本から、そしてMFアカデミーからもう一人派遣の周藤集選手はショート2位からフリーで伸びずに6位となりました。本人は大変悔しそうでしたが、ショートもフリーも国内の試合のスコアと比べてもベストスコアでした。

 

○中田璃士選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A   8.00   -0.69 7.31 -0.778
2 3T+3T   8.40   0.72 9.12 1.667
3 FCSp4   3.20   0.64 3.84 2.111
4 2Lz   2.10   0.09 2.19 0.556
5 3F   5.30   0.91 6.21 1.667
6 2A+1Eu+2S   5.61 x 0.14 5.75 0.444
7 CSSp3   2.60   0.11 2.71 0.444
8 3Lo+2A+SEQ   9.02 x 0.49 9.51 1.000
9 ChSq1   3.00   1.14 4.14 2.222
10 3S   4.73 x 0.80 5.53 1.778
11 CCoSp4   3.50   0.45 3.95 1.222
  TES   55.46   4.80 60.26  

今シーズンから実戦投入しているトリプルアクセルを初めてショートフリー2本とも着氷しました。2本飛ぶジャンプは結果的にトーループだけになっています。本来は3連続の3つ目が3回転サルコウになってサルコウも2回飛ぶ予定なはずでした。

ルッツが2回転になったのも含め、2つのジャンプが2回転になってしまいました。セカンド3回転がトーループトーループで入っています。構成的にはちょっともったいないところです。3つ目サルコウダブルアクセルからなので、まだセカンドサードで3回転を付けるには1つ目のジャンプを楽なものにしないとできない、ということなようですが、その辺が次の課題になって来るのだろうと思います。そこにトリプルアクセル2本目が組み込めるようになっていくと、自然と基礎点が上がって、全日本ジュニアで優勝争いできるところまで行けるのだろうと思います。幸か不幸か、中田選手も次のオリンピックは年齢制限で出られない世代となってしまったので、シニアに上がるまで4年、オリンピックまで8年あります。

 

○周藤集選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A+2T   9.30   0.91 10.21 1.222
2 3Lz!+2T ! 7.20   -0.34 6.86 -0.556
3 3Aq q 8.00   -3.54 4.46 -4.333
4 CSSp3   2.60   0.52 3.12 2.000
5 3Loq F 4.90   -2.45 2.45 -5.000
6 FCSp4   3.20   0.78 3.98 2.556
7 2Lz   2.31 x -0.09 2.22 -0.333
8 2A+1Eu+2S F 5.61 x -1.65 3.96 -5.000
9 CCoSp3   3.00   0.43 3.43 1.444
10 3F!< F 4.66 x -2.12 2.54 -5.000
11 ChSq1   3.00   0.07 3.07 0.111
  TES   53.78   -7.48 46.30  

周藤選手はトリプルアクセルを2本投入してきました。2本目は大きな減点入っていますが転倒はしていません。ショートフリー通じて3本転倒せずに着氷したのが初になります。フリーで2本降りたのも初です。フリーは中盤以降、はっきり言えばよれよれに見えるところがあったのですがそのあたりはこの初めてトリプルアクセル2本降りたというのが影響していたようにも感じます。2本飛ぶジャンプはそのトリプルアクセルとルッツなはずでしたがルッツの2本目は2回転になりました。

3転倒はやはり痛くGOEは著しいマイナスになっています。セカンド3回転無し、3連続も3回転付けたいところでしたが3つ目は2回転にとどまっています。

というわけで課題もいろいろあるわけですが、今回はとにかくこのシーズン序盤にトリプルアクセルを初めて2本転倒せずに降りたというのが大きかったと思います。トリプルアクセル2本飛ぶと体力的にこうなるんだというのを実地に感じ取ることができ、一番難しいところをこなせたことで、あとは、単発で飛ぶだけならきっとできるのであろう3回転のジャンプをしっかり飛んでいくだけになるのだろうと思います。

 

次戦は1週飛んで4戦目のアルメニアになります。女子はファイナルが懸かる吉田陽菜選手と、木下でもMFでもアカデミーでもないけれど荒川静香羽生結弦二人の金メダリストの高校の後輩千葉百音選手の2人、男子もファイナルが懸かる中村俊介選手と大学生になった片伊勢武アミン選手が出場予定です。吉田選手と中村選手は優勝でファイナル確定、2位でも実質的にはほぼ確定、3位でも高確率でファイナルへ進めそうな情勢です。