JGP クールシュベル 3年ぶり派遣の日本勢ダブル優勝

ジュニアグランプリシリーズが始まりました。一昨年は全試合中止。昨シーズンはシリーズは行われましたが日本からの派遣は中止となり、日本勢のジュニアグランプリ派遣は3年ぶりとなります。ロシア勢もいない今シーズン。3年前とは様変わりしているジュニアの勢力図ですがシーズン序盤から日本勢の活躍が楽しめる展開になっています。

 

○女子シングル 上位12人

Pl Name Nation Total SP FS
1 Hana YOSHIDA JPN 203.52 66.56 136.96
2 Ayumi SHIBAYAMA JPN 188.39 67.09 121.30
3 Yujae KIM KOR 185.67 60.87 124.80
4 Maria Eliise KALJUVERE EST 169.32 54.06 115.26
5 Clare SEO USA 168.34 54.23 114.11
6 Lia PEREIRA CAN 154.59 50.63 103.96
7 Nella PELKONEN FIN 153.98 58.42 95.56
8 Ella CHEN ISR 150.07 53.14 96.93
9 Seojin YOUN KOR 146.86 49.34 97.52
10 Sarah EVERHARDT USA 144.13 52.93 91.20
11 Carla Anthea GRADINARU SUI 139.57 50.90 88.67
12 Lola GHOZALI FRA 134.93 46.27 88.66

ジュニア4年目にして初のジュニアグランプリ出場になった吉田陽菜選手が200点超えでショート2位から逆転の初優勝を飾りました。日本女子の現役選手でISU公認200点超えは9人目。ジュニアカテゴリーでの200点突破は本田真凜選手以来2人目です。年齢的にもシニアでいい選手ではあるのですが、2シーズンJGP派遣無しや昨シーズン世界ジュニアへ出損なっていることもあり、シニアに上がってもグランプリの枠がない、ということでだと思いますが、ジュニアグランプリへ回ってきて、しっかりここで優勝しました。こうなるとファイナルへ進みたいところ。次のエントリーは4戦目のアルメニアです。最大の敵はコロナでしょうか。おそらく吉田陽菜選手と島田麻央選手を最初から2戦エントリーにして、しかも6戦目7戦目はエントリー者未定にしたのは、この2人はコロナにあたって1戦出られなくても6戦目7戦目でリカバリーできるように、との連盟の思惑なような気がしますが、いずれにしてもファイナルへ進出して、来シーズンのシニアのグランプリ枠獲得へつなげていってほしいです。

2位も日本から柴山歩選手、ということで日本のワンツーです。ショートは首位。フリーのトゥーランドットはミスがありましたが2位表彰台を確保しました。ISU公式試合は初めての出場ですので1も2もなくパーソナルベストなわけですが、ISU公認試合以外でも国内外試合含めてこの188.39はベストスコアになっています。昨シーズンは伸び悩んだ印象でしたが今シーズンは最初から国際大会で一つ結果を出した形になりました。ジュニアグランプリ2戦目は確定していませんが、1戦目がこの結果なら2戦目をもらえそうにも感じます。

3位は韓国からキムユジェ選手が入りました。フリーでトリプルアクセルを着氷。追い上げを見せました。2009年6月生まれの13歳。現在のジュニアカテゴリーでは最年少の位置になります。昨シーズンの世界ジュニアで2位4位5位を占めた韓国ジュニアは層が厚いです。

 

○吉田陽菜選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A   8.00   -1.37 6.63 -1.556
2 2A+3T   7.50   1.14 8.64 2.778
3 3Lo   4.90   1.26 6.16 2.556
4 CCoSp4   3.50   0.90 4.40 2.556
5 SSp4   2.50   0.71 3.21 2.889
6 3F! ! 5.30   0.30 5.60 0.556
7 3Lzq+3T q 11.11 x -0.34 10.77 -0.444
8 FCCoSp4   3.50   0.85 4.35 2.444
9 3Lz   6.49 x 1.18 7.67 2.000
10 ChSq1   3.00   1.93 4.93 3.778
11 3S+2A+2T+SEQ   9.79 x 0.92 10.71 2.111
  TES   65.59   7.48 73.07  

吉田陽菜選手はフリー冒頭でトリプルアクセルを着氷。ただしステップアウトで減点されOEはマイナスとなりました。ただ、極めて転倒率が低いトリプルアクセルであり、ダブルアクセル比で十分におつりの来る得点を吉田陽菜選手はほとんどの場合に取れています。

スピンオールレベル4 これはショートでもそうでしたしそれだけでなく、今年に入ってからのすべての国際試合でレベル4です。

課題はルッツからのコンビネーションなんでしょうか。ショートでも1つ目も2つ目もqが付き、フリーもルッツでqが付きました。

トリプルアクセルを持つ吉田陽菜選手はダブルアクセルジャンプが旧ルールでは1つあまります。シークエンスの1.0倍化に伴い、3連続にダブアクセル入りのシークエンスを付けました。これにより以前の3S+2T+2Loと比べて1.76基礎点が上がっています。欲張ってトリプルアクセル2本構成にすると2A+3Tが3A+2Tになり基礎点が1.80上がって、さらにダブルアクセルが1つ余るので3S+2A+2Tを3S+2A+2Aに替えて基礎点をさらに2.20上げることができます。トリプルアクセル2本目投入の価値が、シークエンス1.0倍化ルールで上がっていますので、先々そういった構成になっていくかもしれません。

コンビネーションを完璧に決めてトリプルアクセルもしっかりした着氷をすればもうあと5点ほど上へ行けますし、ショートで5.29を得たステップ要素も入るシニアルールなら技術点80点を楽に超えてくることができる、というのが見えました。ショートからトリプルアクセルのはいるシニアルールで2本ノーミス揃えたら220点台まで乗せることができる計算です。そこまで行くと全日本表彰台まであります。世界ジュニア狙いのはずが世界選手権に回る、なんて芽があるかどうか。

 

○柴山歩選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   0.57 3.87 1.778
2 3Lz   5.90   0.34 6.24 0.778
3 FSSp3   2.60   0.56 3.16 2.000
4 3Lo   4.90   0.91 5.81 2.000
5 3S   4.30   0.80 5.10 1.889
6 ChSq1   3.00   1.21 4.21 2.333
7 3Lz+3T   11.11 x 1.01 12.12 1.778
8 CCoSp4   3.50   0.85 4.35 2.556
9 1A   1.21 x 0.00 1.21 0.000
10 3F+3T   10.45 x 1.21 11.66 2.333
11 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
  TES   52.97   8.54 61.51  

柴山選手は冒頭に単独のダブルアクセルがいます。これは完成形ではトリプルアクセルを入れたい、という意志の表れかと思います。昨シーズンも近畿選手権まではトリプルアクセルを構成に入れていましたが、すべてダウングレード扱いになっていました。おそらく現在もトリプルアクセル習得を目指しているのだろうと思われます。

当初の予定構成では2つ目の要素でコンビメーションが入るはずでした。少し着氷が乱れて2つ目を飛ばなかったようにも見えましたがあるいは最初から1.1倍にコンビネーションをすべてつぎ込むことが頭にあったかどうか。1.1倍で3連続予定のところが3Lz+3Tにしました。そうなるとダブルアクセルから3連続にするかな? といったところでしたがこれがミス。最後に3F+3Tをリカバリーで入れます。結果的に2A+2T+2Loが1Aに置き換わったという形になり、基礎点6.93が1.21になった計算になります。結局ノーミスでも優勝には届かなかったわけですが、それでも最大限攻めていって何とか勝を得たいというものを感じました。

最後のジャンプでリカバリーでコンビネーションにして3Tを付けたのは大きな意味がありました。これが単独ジャンプであったり、あるいは安全に2Tを付けただけだったりした場合、スコア的に足りずに3位になるところでした。この3Tが入ったことで2位を得ています。このリカバリー3Tがもしかしたらファイナルへつなげた、みたいなことに最終的になる可能性もあります。

ノーミスならフリーの技術点はもうあと6.5点ほど上へ行けますし、ショートではステップレベル4で4.96のスコアを得ていました。シニアルールノーミスなら200点が見えた、ということになるかと思います。

柴山選手はあと3シーズンジュニアが続く形になりますがミラノオリンピックシーズンにはシニア解禁です。ジュニアを4シーズンやってシニアに上がった年にオリンピックシーズン、というのは坂本花織選手と同じ星回り。同じ展開でオリンピックを掴む未来があるでしょうか。

 

○男子シングル 上位12名

Pl Name Nation Total SP FS
1 Shunsuke NAKAMURA JPN 219.65 77.68 141.97
2 Younghyun CHA KOR 196.15 70.25 125.90
3 Ryoga MORIMOTO JPN 188.66 69.46 119.20
4 Noah BODENSTEIN SUI 184.42 61.26 123.16
5 Michael XIE USA 180.95 66.08 114.87
6 Ian VAUCLIN FRA 175.44 61.49 113.95
7 Adam HAGARA SVK 174.70 56.09 118.61
8 Lucius KAZANECKI USA 167.85 55.45 112.40
9 Jean MEDARD FRA 155.10 56.81 98.29
10 David LI CAN 154.74 51.27 103.47
11 Makar SUNTSEV FIN 147.30 52.93 94.37
12 Tommaso BARISON ITA 142.13 51.89 90.24

優勝は中村俊介選手。ジュニアグランプリデビュー戦初優勝。これで日本勢のダブル優勝木下アカデミーダブル優勝です。2005年8月6日生まれの17歳。年齢も吉田陽菜選手と同じです。全日本ジュニアで2年連続6位ですし、昨シーズンあたりからジュニアグランプリ派遣があってもよかったのですが、コロナのせいで今回が初出場となりました。スコア的には楽勝。ただ、今シーズン国内ですでに出ている3試合ではフリーで120点前後であり、そのままのスコアだと負けるところでした。結果的に出来が良かったので楽勝に見えただけでノープレッシャーで楽勝、と最初から思えるような試合ではなかったようです。ISU公認試合は初めてでしたので最初のパーソナルベストにこれがなるわけですが、国内の試合をすべて含めても、ショート、フリー、トータル、すべてベストスコアでした。初の200点突破になります。JGP次戦は4戦目のアルメニア、吉田陽菜選手と同じスケジュールになります。

2位には韓国からチャヨンヒョン選手が入ってきました。ショート2位を守り切っての2位です。2003年9月生まれの18歳。ジュニア最後のシーズンで初のジュニアグランプリ表彰台となっています。

3位に森本涼雅選手が入りました。2007年2月生まれの15歳。3年前の全日本ノービスA優勝者。展開次第では今回の遠征で自分だけ表彰台に乗らずに帰ることになるかも、という変なプレッシャーがかかるフリーでしたがしっかり乗り切って表彰台を確保しました。森本選手は2戦目がまだ固まっていませんが、未定の残り2枠に入れてもらえるかどうか? 微妙なところでしょうか。

 

中村俊介選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4T F 9.50   -4.75 4.75 -5.000
2 3A   8.00   2.40 10.40 2.778
3 CSSp4   3.00   0.81 3.81 2.556
4 3Lz+3T   10.10   0.51 10.61 0.889
5 3F   5.30   1.06 6.36 2.111
6 3A+3T   13.42 x 2.06 15.48 2.556
7 ChSq1   3.00   1.00 4.00 1.889
8 FCSp2   2.30   -0.46 1.84 -2.000
9 3Lz*+1Eu+3S   5.28 x 0.25 5.53 0.556
10 3Loq q 5.39 x -0.70 4.69 -1.333
11 CCoSp4   3.50   0.40 3.90 1.111
  TES   68.79   2.58 71.37  

中村俊介選手は4回転トーループに挑んでいますが今回は転倒でした。げんさんサマーカップでは転倒はしないけれどGOEは大きくマイナス、というところまで来ています。今シーズンは国内で3戦こなしてこれが4戦目ですが、4回転トーループはq以上の回転で基礎点は満額入るところまで来ています。後はきれいに降りるだけ。

トリプルアクセルを2回、トリプルトーループを2回飛んだあと、トリプルルッツを飛んでザヤックルールで弾かれ基礎点無しに。トリプルアクセルのコンビネーションで、あまりにきれいに決まったばかりにトーループを思わず3回転にしてしまったんでしょうか。これを2回転にしておけば基礎点は3.30上がって72.09になり、フリーのスコアが140点台でトータル220点に乗るところでした。

 

○森本涼雅選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   0.61 3.91 1.778
2 3Lz+3T   10.10   0.00 10.10 0.000
3 3Fe+2T e 5.54   -0.60 4.94 -1.556
4 FCSp4   3.20   0.64 3.84 2.000
5 3Lo   4.90   0.70 5.60 1.333
6 FCSSp4   3.00   0.69 3.69 2.111
7 2A+1Eu<<+3Sq <<  8.36 x -2.15 6.21 -5.000
8 3Fe e 4.66 x -2.06 2.60 -4.778
9 3Lz   6.49 x 0.67 7.16 1.111
10 CCoSp4   3.50   0.45 3.95 1.000
11 ChSq1   3.00   0.93 3.93 1.444
  TES   56.05   -0.12 55.93  

森本選手は構成にまだ4回転は無いですしトリプルアクセルも無いです。今年5月のレイクカップからトリプルアクセルに試合で挑んでいますが、これまで3試合いずれもダウングレードに終わっています。今回は冒頭ダブルアクセルで回避です。表彰台を確保する現実的な判断だったかもしれません。

2回飛ぶジャンプは3回転のルッツとフリップ。このフリップが2つともeが付きました。課題になるジャンプです。

スピンはオールレベル4 ショートもそうでした。木下トロフィーではショートフリーの6回のうち1つしかレベル4がなかったところから一気に改善されていました。

この構成でこのスコアなのでトリプルアクセルが入ればすぐに200点が見えますし、入らなくてもノーミスなら200点くらいまでは行けそうに感じます。

 

次週はチェコのオストラバで2戦目。日本からはこの試合で4種目フルエントリー。男子シングルに吉岡希選手と垣内珀琉選手。女子シングルはついにジュニアデビューの島田麻央選手と櫛田育良選手の2人。ペアで村上遥奈&森口澄士組、アイスダンスに来田奈央&森田真沙也組となります。