世界フィギュア19 男子シングル3

男子シングル編の最後

今回は、要素ごとの高評価者を見ていきます

 

左から、ショートorフリー、名前、国、要素順、要素名、回転不足などの情報、基礎点、1.1倍ボーナスタイムなら*が付く、加点としてのGOE、得点、ときて、一番右の列は、9人のジャッジが付けた+5~-5のGOE評価が入ります。右から三列目のGOEは実際に増減される点数であり、一番右の者とは意味が異なります。

 

 

四回転ルッツ 全選手

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Nathan CHEN USA 1 4Lz   11.50   4.76 16.26 4.222
FS Vincent ZHOU USA 1 4Lz+3T   15.70   3.94 19.64 3.444
FS Alexander SAMARIN RUS 1 4Lz+3T   15.70   3.61 19.31 3.222
SP Vincent ZHOU USA 1 4Lz+3T   15.70   3.12 18.82 2.444
SP Nathan CHEN USA 2 4Lz   11.50   2.63 14.13 2.222
FS Boyang JIN CHN 1 4Lz   11.50   2.46 13.96 2.111
SP Boyang JIN CHN 1 4Lz   11.50   -5.75 5.75 -4.778

今大会、四回円ルッツを試みたのは4人で7回。コンビネーションで入れたつわものも二人で3回あります。

最高評価はフリーでネイサンチェン選手が飛んだもの。GOE平均4.222を四回転ルッツで出す、というのはとてつもないことです。これ以外でも、今大会は4人で6回、四回転ルッツの成功ジャンプがありました。基本的には冒頭に飛ぶジャンプとなっていまうが、ネイサンチェン選手のみ、ショートプログラムで2つ目の要素に入れています。

 

四回転フリップ 全選手

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Nathan CHEN USA 2 4F   11.00   2.04 13.04 1.889
SP Alexander SAMARIN RUS 2 4F+2T   12.30   0.00 12.30 0.000
FS Shoma UNO JPN 2 4F< < 8.25   -4.13 4.12 -4.889
SP Shoma UNO JPN 1 4F< < 8.25   -4.13 4.12 -5.000

四回転フリップはルッツより少なくて3人で4回。成功ジャンプは2つでした。これもネイサンチェン選手が評価トップです。宇野選手は2回試みて2回とも回転不足、ショートでは転倒。フリーも転倒カウントはされなかったですが、減点は満額されてしまいました。

 

四回転ループ 全選手 

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Yuzuru HANYU JPN 1 4Lo   10.50   3.45 13.95 3.222

四回転ループはフリーの羽生選手のみ。十分な加点をもらっての成功でした。これが入ったことで、今大会は二大会ぶりに、五種類の成功四回転が揃った大会となりました。

 

四回転サルコウ 平均GOEがプラス 

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Vincent ZHOU USA 2 4S   9.70   3.19 12.89 3.333
FS Nam NGUYEN CAN 2 4S   9.70   3.33 13.03 3.333
FS Nam NGUYEN CAN 1 4S+3T   13.90   2.77 16.67 2.889
FS Michal BREZINA CZE 1 4S+2T   11.00   2.63 13.63 2.667
FS Keiji TANAKA JPN 1 4S+2T   11.00   2.36 13.36 2.333
SP Nam NGUYEN CAN 1 4S+3T   13.90   1.94 15.84 2.000
SP Michal BREZINA CZE 1 4S+2T   11.00   0.69 11.69 0.667

四回転サルコウは延べ16選手が要素に入れていて、加点が付いたのは上記7名でした。要素に入れたというのは、エレメント表に4Sと入っているものであり、回転不足の<や<<が入っていても含みますが、本人は4Sに挑んだつもりでも、回転が抜けて3Sになった2Sになった、というものは含みません。以下、すべての要素で同じです

4Sの最高評価は表彰台に乗ったビンセントゾー選手と、上位には上がってこられなかったですがナムグエン選手が入っています。ナムグエン選手は4Sからのコンビネーションジャンプとしても最高評価ですし、ショートフリーで合計3回跳んだすべてで平均GOEが2.0以上と、クリーンな四回転サルコウを飛びました。

今シーズン好調だったブレジナ選手もショートフリーのコンビネーションジャンプ2回とも成功。上位進出はなりませんでしたが、田中選手もフリーのコンビネーションはクリーンに入れていました

 

四回転トーループ 平均GOE2.5以上

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Yuzuru HANYU JPN 6 4T   9.50   3.80 13.30 4.000
FS Nathan CHEN USA 3 4T   9.50   3.39 12.89 3.667
FS Nathan CHEN USA 7 4T+3T   15.07 x 3.39 18.46 3.556
FS Shoma UNO JPN 3 4T   9.50   3.26 12.76 3.444
FS Yuzuru HANYU JPN 7 4T+3A+SEQ   15.40 x 3.12 18.52 3.222
FS Mikhail KOLYADA RUS 1 4T+3T   13.70   2.99 16.69 3.222
FS Andrei LAZUKIN RUS 1 4T+3T   13.70   2.99 16.69 3.222
SP Matteo RIZZO ITA 1 4T   9.50   2.85 12.35 3.000
SP Yuzuru HANYU JPN 3 4T+3T   15.07 x 2.71 17.78 2.889
SP Shoma UNO JPN 2 4T+2T   10.80   2.71 13.51 2.889
FS Vladimir LITVINTSEV AZE 1 4T   9.50   2.58 12.08 2.667
SP Kevin AYMOZ FRA 1 4T   9.50   2.58 12.08 2.556
FS Brendan KERRY AUS 1 4T   9.50   2.58 12.08 2.556

四回転トーループに挑んだのはショートフリー合わせて延べ41人です。

最高評価は羽生選手のフリーの単独ジャンプ。平均GOE4.0を叩き出しました。上位には羽生選手ネイサンチェン選手宇野選手あたりの名前が並びます。羽生選手の4T-3Aというオリジナルな高難度コンビネーションは、平均GOE3.222をもらった素晴らしいものではあったのですが、スコアとしてはネイサンチェン選手の4T-3Tとほぼ変わらなくなってしまっています。シークエンスであることの不利さ、というのが効いていまして、シークエンスは基礎点0.8倍というルールはどうなんだ、と少し考えさせられる部分です。

上位選手は、この四回転トーループを演技後半に入れて1.1倍、しかもコンビネーションで入れてきたりしています。四回転トーループというのはトップ選手にとってはそれくらい普通のジャンプになってきているようです。以前、宇野選手が全日本選手権で、2A-4Tというものを申請要素として入れていたことがありましたが、コンビネーションの二つ目に4Tが入ってくるような時代が来るんでしょうか。

 

トリプルアクセル 平均GOE3.0以上

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP Yuzuru HANYU JPN 2 3A   8.00   3.43 11.43 4.333
SP Shoma UNO JPN 4 3A   8.80 x 3.09 11.89 3.889
FS Nathan CHEN USA 4 3A   8.00   2.97 10.97 3.778
FS Mikhail KOLYADA RUS 7 3A   8.80 x 3.20 12.00 3.778
SP Mikhail KOLYADA RUS 4 3A   8.80 x 2.97 11.77 3.556
SP Nathan CHEN USA 1 3A   8.00   2.74 10.74 3.333
FS Kevin AYMOZ FRA 3 3A   8.00   2.63 10.63 3.333
SP Boyang JIN CHN 4 3A   8.80 x 2.51 11.31 3.222
SP Jason BROWN USA 2 3A   8.00   2.51 10.51 3.111
SP Matteo RIZZO ITA 2 3A   8.00   2.51 10.51 3.111
SP Keegan MESSING CAN 3 3A   8.00   2.51 10.51 3.111
FS Shoma UNO JPN 9 3A+1Eu+3F   15.18 x 2.40 17.58 3.000
FS Michal BREZINA CZE 8 3A   8.80 x 2.40 11.20 3.000

トリプルアクセルを要素に入れたのは、シークエンスの二つ目に入れたという羽生選手のものまで含めて、ショートフリー合計で延べ76人でした。上記は、羽生選手のシークエンスは除いて、一つ目のジャンプで3Aが入っている要素の中から、GOE平均3.0以上のものを抜き出しています。

3Aの評価トップは羽生選手。ここでも一人だけ4.0を超えてきています。2位が宇野選手ですが、三番目にトリプルアクセルが苦手とされてきたネイサンチェン選手が入ってきています。ネイサンチェン選手は2回跳んだトリプルアクセルがどちらも平均GOE3.0を上回っていて、もはや弱点とはとても言い難い出来になっていました。

高難度ジャンプが苦手とされるジェイソンブラウン選手も、ショートプログラムでは平均GOE3.111と大きな加点をもらい、ショート2位スタートの一つの要因となっていました。

3Aからのコンビネーションでは、宇野選手の三連続が最高点です。今シーズンこの3連続が今一つうまく決まっていませんでしたし、今大会ジャンプが今一つ決まらず表彰台に乗れなかった宇野選手ですが、見せ場の三連続はしっかり決めてくれました

トップテン選手以外では、フランスのケビンエイモス選手が4Tに続いて3Aでも入ってきています。この辺の高難度ジャンプを成功させたことで、11位まで順位を持ってこられたことが見て取れます。ブライアンジュベール選手を生んだフランスの次のトップ選手として、高難度ジャンプ大会に参入していってもらえると、上位選手のバリエーションが広がって、それも楽しいな、と思えます。

 

3連続ジャンプ 平均GOE2.0以上 

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Shoma UNO JPN 9 3A+1Eu+3F   15.18 x 2.40 17.58 3.000
FS Yuzuru HANYU JPN 9 3A+1Eu+3S   14.08 x 2.17 16.25 2.667
FS Mikhail KOLYADA RUS 8 3S+1Eu+2S   6.71 x 1.17 7.88 2.667
FS Matteo RIZZO ITA 8 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.29 12.40 2.333
FS Kevin AYMOZ FRA 8 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.21 12.32 2.333
FS Deniss VASILJEVS LAT 7 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.43 13.20 2.333
FS Jason BROWN USA 9 3Lz+3T+2Lo   12.98 x 1.43 14.41 2.222
FS Morisi KVITELASHVILI GEO 3 3F+1Eu+3S   10.10   1.14 11.24 2.111

3連続ジャンプはフリーの重要要素なので、試みた勝った人は24人いるはずなのですが、実際に要素に入ったのは19人でした。

最高評価は3Aのところで上げましたが宇野選手。二番手も羽生選手で日本人選手が並び、コリヤダ選手も羽生選手と同評価でした。ただ、コリヤダ選手は難度が極端に低いですけど・・・。

3連続ジャンプは1.1倍ボーナスタイムに入れる選手が多いです。意外とここには、高難度ジャンパーの名前が入ってきていなくて、ネイサンチェン選手は0.667、ビンセントゾー選手は3つ目の3Fが回転不足で-0.222、ボーヤンジン選手は3A起点で序盤に入れてきたものの1.556にとどまりました。難しいジャンプを飛ぶ、というのとコンビネーションで3っつしっかり飛ぶ、というのは、また少し違う技術だったりするんでしょうか。でも2連続のコンビネーションは4Lzからでも決めてきたりするんですけどね。

 

 

CCoSp レベル4で平均GOE3.5以上 

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Nathan CHEN USA 12 CCoSp4   3.50   1.50 5.00 4.111
FS Yuzuru HANYU JPN 12 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.111
SP Jason BROWN USA 4 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
SP Shoma UNO JPN 7 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.000
SP Keegan MESSING CAN 7 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
FS Jason BROWN USA 12 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
SP Nathan CHEN USA 7 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.889
SP Yuzuru HANYU JPN 7 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.889
FS Shoma UNO JPN 12 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 3.889
FS Keegan MESSING CAN 12 CCoSp4   3.50   1.25 4.75 3.667

CCoSp チェンジフットコンビネーションスピン。ショートフリーで述べ58選手が試みて45選手がレベル4獲得。最高評価はネイサンチェン選手と羽生結弦選手。この二人はこういうところでもしっかり強いですねえ。ジェイソンブラウン選手はショートフリー共に平均GOE4.0以上で揃えてきました。各要素のGOEの高さがジェイソンブラウン選手の勝負ポイントです。今大会上位進出できませんでしたが、キーガンメッシング選手もショート、フリー共にGOEが3.5以上で、美しいスピンを見せてくれました

CCoSpはショートもフリーも、プログラムの最後に入れる選手が多いですね。

 

 

CCSp レベル4で平均GOE3.0以上 

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP Jason BROWN USA 6 CCSp4   3.20   1.42 4.62 4.333
FS Nathan CHEN USA 5 CCSp4   3.20   1.23 4.43 3.778
FS Mikhail KOLYADA RUS 11 CCSp4   3.20   1.19 4.39 3.778
SP Mikhail KOLYADA RUS 3 CCSp4   3.20   1.10 4.30 3.333
FS Kevin AYMOZ FRA 5 CCSp4   3.20   0.96 4.16 3.000

CCSp チェンジフットキャメルスピン。ショートフリー合わせて延べ14選手が試みて、レベル4は12選手が得ました。

最高点はジェイソンブラウン選手。フリーでジェイソンブラウン選手の名前がありませんが、これは加点が少なかったのではなく、フリーではこのスピンは入れていないためです。

コリヤダ選手の名前がショートフリー共にあります。

 

CSSp レベル4で平均GOE2.5以上 

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP Yuzuru HANYU JPN 5 CSSp4   3.00   1.24 4.24 4.222
FS Vincent ZHOU USA 12 CSSp4   3.00   0.86 3.86 2.889
SP Keegan MESSING CAN 5 CSSp4   3.00   0.77 3.77 2.667

CSSp チェンジフットシットスピン。ショートフリーで延べ35人が試み、延べ24人がレベル4。最高評価は羽生選手で、突出して高いです。一人だけ平均GOE4.0以上。3.0以上も羽生選手のみです。実は宇野選手がショートでこのスピンを入れていて平均GOE3.556なのですが、レベルを取りこぼして3だったりしました。フリーでは羽生選手はこのスピンは構成に入れていません。

 

FCoSp レベル4で平均GOE2.5以上 

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Nathan CHEN USA 11 FCCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.778
FS Yuzuru HANYU JPN 3 FCCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.222
FS Shoma UNO JPN 5 FCCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.222
FS Vincent ZHOU USA 9 FCCoSp4   3.50   1.00 4.50 2.889

FCoSp フライングコンビネーションスピン フリーで12人が試みて7人がレベル4

面白いことに、総合の上位4選手がそのままこのスピンでも上四人として名前が並んでいます。トップはネイサンチェン選手。FCoSpとしての平均GOEはジェイソンブラウン選手の3.889というのが実はGOEとしてはトップだったのですが、レベル3という取りこぼしがあり残念でした。ジェイソンブラウン選手は、ここのレベルの取りこぼし分だけで、今回9位だった総合成績が、8位に出来るところでした

 

FCSp レベル4で平均GOE3.0以上 

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Jason BROWN USA 4 FCSp4   3.20   1.33 4.53 4.111
FS Shoma UNO JPN 4 FCSp4   3.20   1.19 4.39 3.667
SP Yuzuru HANYU JPN 4 FCSp4   3.20   1.14 4.34 3.556
SP Keegan MESSING CAN 2 FCSp4   3.20   1.10 4.30 3.444
SP Shoma UNO JPN 3 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.111

FCSp フライングキャメルスピン。ショートフリーで述べ39人が試み、29人がレベル4でした。評価トップはジェイソンブラウン選手。ブラウン選手は評価の高い要素が多いです。キーガンメッシング選手の名前もまた出てきました。今大会は15位に終わりましたが、一つ一つの要素では高評価を得たものが多い選手です。

 

FCSSp 全選手 

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Yuzuru HANYU JPN 11 FCSSp4   3.00   1.11 4.11 3.778

FCSSp フライングチェンジフットシットスピン。今大会でこれが要素に入っていたのは羽生選手のみでした。こういうところのユニーク性、というのはもう少し取り上げられていい部分かもしれないとも思います。

 

 

FSSp レベル4で平均GOE3.0以上 

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Keegan MESSING CAN 4 FSSp4   3.00   1.11 4.11 3.667
FS Mikhail KOLYADA RUS 4 FSSp4   3.00   1.07 4.07 3.556
SP Nathan CHEN USA 5 FSSp4   3.00   1.03 4.03 3.444
FS Kevin AYMOZ FRA 10 FSSp4   3.00   0.94 3.94 3.222
SP Jason BROWN USA 3 FSSp4   3.00   0.94 3.94 3.111
SP Mikhail KOLYADA RUS 6 FSSp4   3.00   0.94 3.94 3.111
SP Michal BREZINA CZE 4 FSSp4   3.00   0.90 3.90 3.000
FS Michal BREZINA CZE 4 FSSp4   3.00   0.90 3.90 3.000

FSSp フライングシットスピン。 ショートフリーで18選手が試み、14選手がレベル4

評価トップはキーガンメッシング選手。メッシング選手はスピンの高評価が多いです。ジェイソンブラウン選手もやはり名前を連ねてきていますが、むしろ平均GOE3点台前半というのは、ブラウン選手にしては低い、とも言えそうです。羽生選手、宇野選手はこのスピンを要素として入れていません。

 

 

 

ステップ レベル4 で平均GOE3.5以上 

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP Nathan CHEN USA 6 StSq4   3.90   1.84 5.74 4.556
SP Jason BROWN USA 7 StSq4   3.90   1.67 5.57 4.222
SP Yuzuru HANYU JPN 6 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.222
FS Nathan CHEN USA 6 StSq4   3.90   1.67 5.57 4.222
FS Kevin AYMOZ FRA 12 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
FS Shoma UNO JPN 11 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.889
SP Shoma UNO JPN 6 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.778
FS Michal BREZINA CZE 5 StSq4   3.90   1.39 5.29 3.667
SP Mikhail KOLYADA RUS 5 StSq4   3.90   1.39 5.29 3.556
FS Matteo RIZZO ITA 11 StSq4   3.90   1.39 5.29 3.556

ステップはショートフリー共に全選手の必須要素です。延べ59選手が試みて21選手がレベル4となっています。

最高評価はネイサンチェン選手のショートプログラム。ネイサンチェン選手はショートフリー共に平均GOEが4点台となっています。羽生選手とブラウン選手はショートでは高評価、フリーでも平均GO4.0と評価は良かったのですがレベル3になっています。ステップは上位選手でもレベルの取りこぼしが多い要素です。ステップでレベル4だったのがうれしい、というコメントはよく聞かれますね。

 

コレオシークエンス 平均GOE3.5以上

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Jason BROWN USA 5 ChSq1   3.00   2.21 5.21 4.444
FS Yuzuru HANYU JPN 10 ChSq1   3.00   2.21 5.21 4.333
FS Michal BREZINA CZE 11 ChSq1   3.00   2.21 5.21 4.333
FS Nathan CHEN USA 10 ChSq1   3.00   2.14 5.14 4.111
FS Shoma UNO JPN 6 ChSq1   3.00   1.93 4.93 3.889
FS Keegan MESSING CAN 11 ChSq1   3.00   1.93 4.93 3.889

コレオシークエンスはフリーの必須要素です。レベルの判定はありません。最高評価はブラウン選手。4人のジャッジが+5をつけています。キーガンメッシング選手も高評価で名前を連ねてきました。ブレジナ選手も含め、こういった選手が上位に入ってきてくれると、ジャンプ派と演技派のバランスが取れて面白いんだけどなあ、と思う部分はあります。

 

 

全要素から平均GOE4.0以上 

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP Nathan CHEN USA 6 StSq4   3.90   1.84 5.74 4.556
SP Jason BROWN USA 1 3F   5.30   2.35 7.65 4.444
FS Jason BROWN USA 5 ChSq1   3.00   2.21 5.21 4.444
SP Jason BROWN USA 6 CCSp4   3.20   1.42 4.62 4.333
SP Yuzuru HANYU JPN 2 3A   8.00   3.43 11.43 4.333
FS Yuzuru HANYU JPN 10 ChSq1   3.00   2.21 5.21 4.333
FS Michal BREZINA CZE 11 ChSq1   3.00   2.21 5.21 4.333
SP Jason BROWN USA 7 StSq4   3.90   1.67 5.57 4.222
SP Yuzuru HANYU JPN 5 CSSp4   3.00   1.24 4.24 4.222
SP Yuzuru HANYU JPN 6 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.222
FS Nathan CHEN USA 1 4Lz   11.50   4.76 16.26 4.222
FS Nathan CHEN USA 6 StSq4   3.90   1.67 5.57 4.222
FS Nathan CHEN USA 10 ChSq1   3.00   2.14 5.14 4.111
FS Nathan CHEN USA 12 CCoSp4   3.50   1.50 5.00 4.111
FS Yuzuru HANYU JPN 12 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.111
FS Jason BROWN USA 4 FCSp4   3.20   1.33 4.53 4.111
SP Jason BROWN USA 4 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
SP Jason BROWN USA 5 3Lz+3T   11.11 x 2.36 13.47 4.000
SP Shoma UNO JPN 7 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.000
SP Keegan MESSING CAN 7 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
FS Yuzuru HANYU JPN 4 StSq3   3.30   1.32 4.62 4.000
FS Yuzuru HANYU JPN 6 4T   9.50   3.80 13.30 4.000
FS Kevin AYMOZ FRA 12 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
FS Jason BROWN USA 11 StSq3   3.30   1.32 4.62 4.000
FS Jason BROWN USA 12 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
FS Keegan MESSING CAN 1 3Lz   5.90   2.36 8.26 4.000

全要素での最高評価は、ネイサンチェン選手のショートプログラムのステップでした。その下にジェイソンブラウン選手の名前が三つ、羽生選手の名前が二つ並びます。ショートフリー、二つ滑った選手は全部で19の要素をこなします。その中で、平均GOEが4.0以上の要素として、ジェイソンブラウン選手は9つと最多、羽生結弦選手が7つ、ネイサンチェン選手が5つ、名前を連ねています。平均GOEが4.0以上の要素があった選手は7人だけ。いかにこの3人の各要素の質が高いかがうかがわれます。これだけ、各要素の質の高さを備えながら、総合9位に終わったジェイソンブラウン選手。現代フィギュアスケートで、いかに4回転ジャンプの影響度が大きいか。それが如実に現れた結果、と言えるでしょうか。

 

 

 

 

世界フィギュア19 男子シングル2

今回は男子シングルの2回目として、各選手がどんな傾向の点の取り方をしたのかというのを見ていきます。女子シングル2と同じ流れです

 

ショートプログラム

 

Jump

基礎点

Jump

GOE

Spin

基礎点

Spin

GOE

Step

基礎点

Step

GOE

PCS 減点
Nathan CHEN 34.57 7.68 9.70 3.29 3.90 1.84 46.42 0.00
Jason BROWN 24.41 7.22 9.70 3.76 3.90 1.67 46.15 0.00
Yuzuru HANYU 23.07 6.14 9.70 3.73 3.90 1.62 46.71 0.00
Vincent ZHOU 31.78 3.99 9.70 1.84 3.90 1.28 41.68 0.00
Matteo RIZZO 28.61 6.96 9.70 2.13 3.90 1.11 40.96 0.00
Shoma UNO 27.85 1.67 9.30 3.34 3.90 1.45 44.89 1.00
Kevin AYMOZ 28.40 2.92 9.70 1.83 3.90 1.34 40.15 0.00
Michal BREZINA 25.10 2.97 9.70 2.44 3.90 1.28 41.57 0.00
Boyang JIN 31.10 -1.61 9.70 2.08 3.30 0.80 39.89 1.00
Mikhail KOLYADA 20.20 2.77 9.70 3.19 3.90 1.39 43.08 0.00

まず目につくのは、羽生選手のジャンプの基礎点の低さ。四回転ジャンプが一つ抜けて零点になる、というのはこういうことなわけです。

逆に、ルッツまで含めてジャンプをすべて決めるとネイサンチェンの基礎点になります。その差11.5 これがもうあまりにも大きすぎました。

そして、宇野選手の回転不足×転倒に、3T→2T というのはGOEまで考えると、四回転サルコウが一つ消えるよりさらに大きな痛手になっています。

宇野選手はもう一つ問題があって、上位10選手中、ただ一人、スピンのレベル取りこぼしがありました。

ジェイソンブラウン選手はスピンの加点、ステップの加点で最高点です。さらにジャンプも基礎点が低いにもかかわらず加点がネイサンチェンに次ぐ二番目。ショートプログラムの完成度の高さは驚異的でした

 

 

  Jump Spin Step PCS 減点
Nathan CHEN 42.25 12.99 5.74 46.42 0.00
Jason BROWN 31.63 13.46 5.57 46.15 0.00
Yuzuru HANYU 29.21 13.43 5.52 46.71 0.00
Vincent ZHOU 35.77 11.54 5.18 41.68 0.00
Matteo RIZZO 35.57 11.83 5.01 40.96 0.00
Shoma UNO 29.52 12.64 5.35 44.89 1.00
Kevin AYMOZ 31.32 11.53 5.24 40.15 0.00
Michal BREZINA 28.07 12.14 5.18 41.57 0.00
Boyang JIN 29.49 11.78 4.10 39.89 1.00
Mikhail KOLYADA 22.97 12.89 5.29 43.08 0.00

基礎点とGOEを合わせるとこうなります

ショートプログラムの得点としては、ネイサンチェン選手は突出していましたが、ジャンプ以外の得点はそうでもないことが見て取れます。ショートの点差はとにかくジャンプの点差でした。ただ、2番手以下の争いの中では、ジャンプで点が取れなかった羽生選手が、スピンステップPCS、特にPCSトップなことに救われて3位に入ってきている、という姿も見えます。羽生選手のスピンステップPCSを考えると、ジャンプは難易度をやや下げても100点までは楽に届くのですが、そういう計算をする選手、ではないですね。

 

 

フリープログラム

 

Jump

基礎点

Jump

GOE

Spin

基礎点

Spin

GOE

Step

基礎点

Step

GOE

PCS 減点
Nathan CHEN 77.29 18.96 10.20 4.08 6.90 3.81 94.78 0.00
Yuzuru HANYU 72.11 14.61 10.00 3.71 6.30 3.53 95.84 0.00
Vincent ZHOU 68.28 10.16 9.70 2.55 6.30 2.72 87.28 0.00
Shoma UNO 65.01 0.62 10.20 3.74 6.90 3.43 89.02 0.00
Boyang JIN 67.97 7.00 9.70 2.23 6.30 2.61 82.64 0.00
Mikhail KOLYADA 58.48 8.79 9.20 3.33 6.30 2.77 89.34 0.00
Alexander SAMARIN 65.27 3.06 8.90 2.06 6.30 2.06 81.30 1.00
Michal BREZINA 49.77 8.90 9.13 2.68 6.90 3.60 87.34 1.00
Andrei LAZUKIN 59.12 7.09 9.70 1.71 6.30 2.21 78.56 0.00
Matteo RIZZO 60.33 2.25 9.20 2.17 6.90 2.46 81.98 1.00

続いてフリー。

フリーではすべてにわたってネイサンチェン選手の強さが目立ちました。

ジャンプの基礎点、GOE、スピンの基礎点GOE、ステップの基礎点GOEとすべてトップです。かろうじてPCSだけは羽生選手が上を行っていますが、1点程度の差で2番目です。

羽生選手はジャンプはある程度仕方ないにしても、スピンステップでネイサンチェン選手に後れを取った、というのは残念な結果でした。この辺は、ケガで滑り込みが出来ていなかったことに由来する部分があるようにも感じます。やっぱり、来年の枠が二つになってでも、出場権与えずに、強制的に休ませた方が選手寿命考えるとよかったんじゃ・・・、という気がしたりしなかったり。

宇野選手はジャンプのGOEが上位選手中最低の数値です。今大会、ジャンプの精度が悪すぎました。勝ちたい、と言い始めて最初の大会で勝てるほど世の中甘くはなかった、ということでしょうか。

ショートで出遅れたコリヤダ選手がフリーで挽回してきましたが、採点を見ると、ジャンプはやっぱり抜けちゃって稼げていない、という姿が見えます。ジャンプ基礎点が上位10選手中9番目。PCSが宇野選手より上に行って3位なあたりに救われて、6位にまで入ってきましたが、ジャンプの構成が今一つだったでしょうか。ラズキン選手もジャンプの基礎点が低め。二人とも4回転2本入っているにもかかわらず、こうなってしまうのは、コンビネーションジャンプの入れ方が今一つな構成なために見えます。その辺をもう少しうまく出来たら、6位と10位ではなく、5位と8位くらいにはすぐなれたポイント差ですので、ロシアは来年3枠取れたかもしれないのになあ、と残念な部分ではあります

 

また、スピンのレベル4率、ステップのレベル4率が女子と比べると低くなっています。男子の方が、高難度ジャンプの習得に時間を取られ、スピンステップのレベルへ向ける力が削がれがちなところがあるんでしょうか

 

  

  Jump Spin Step PCS 減点
Nathan CHEN 96.25 14.28 10.71 94.78 0.00
Yuzuru HANYU 86.72 13.71 9.83 95.84 0.00
Vincent ZHOU 78.44 12.25 9.02 87.28 0.00
Shoma UNO 65.63 13.94 10.33 89.02 0.00
Boyang JIN 74.97 11.93 8.91 82.64 0.00
Mikhail KOLYADA 67.27 12.53 9.07 89.34 0.00
Alexander SAMARIN 68.33 10.96 8.36 81.30 1.00
Michal BREZINA 58.67 11.81 10.50 87.34 1.00
Andrei LAZUKIN 66.21 11.41 8.51 78.56 0.00
Matteo RIZZO 62.58 11.37 9.36 81.98 1.00

基礎点とGOEを合わせるとこんな感じです。スピンの2番目は宇野選手、ステップの2番目はブレジナ選手でした。ブレジナ選手は4回転にトリプルアクセルまではうまく飛んだのに、3回転のコンビネーションジャンプがきめられず、ジャンプの点を大きく減らしてしまったのが大変痛かったです。そこさえ決まれば5位までは入ってこられる点数でした。

 

 

Jump

基礎点

Jump

GOE

Spin

基礎点

Spin

GOE

Step

基礎点

Step

GOE

PCS 減点
Nathan CHEN 111.86 26.64 19.90 7.37 10.80 5.65 141.20 0.00
Yuzuru HANYU 95.18 20.75 19.70 7.44 10.20 5.15 142.55 0.00
Vincent ZHOU 100.06 14.15 19.40 4.39 10.20 4.00 128.96 0.00
Shoma UNO 92.86 2.29 19.50 7.08 10.80 4.88 133.91 -1.00
Boyang JIN 99.07 5.39 19.40 4.31 9.60 3.41 122.53 -1.00
Mikhail KOLYADA 78.68 11.56 18.90 6.52 10.20 4.16 132.42 0.00
Matteo RIZZO 88.94 9.21 18.90 4.30 10.80 3.57 122.94 -1.00
Michal BREZINA 74.87 11.87 18.83 5.12 10.80 4.88 128.91 -1.00
Jason BROWN 70.55 7.50 19.40 7.65 10.20 5.20 134.65 -1.00
Andrei LAZUKIN 87.07 11.28 19.40 3.34 9.60 2.96 115.09 0.00

総合の上位10選手の、ショート、フリー合わせたそれぞれのスコアです

ジャンプの基礎点だけで100点を超えている選手が二人。ボーヤンジン選手もほぼ100点です。羽生選手はジャンプの基礎点が全体の四番目。宇野選手はジャンプの基礎点で5番目な上に、GOEがほとんど稼げなかったのですから、さすがに苦しい展開となりました。

スピンを、ショートフリーすべてレベル4でしっかり揃えた選手、というのが5人だけで、上位10選手の中でも半分しかいません。また、ステップでショートフリーレベル4を並べたのは4人でさらに減ります。

男子は女子と比べてレベルの取りこぼしが目立ちました

 

  Jump Spin Step PCS 減点 Total Scores
Nathan CHEN 138.50 27.27 16.45 141.20 0.00 323.42
Yuzuru HANYU 115.93 27.14 15.35 142.55 0.00 300.97
Vincent ZHOU 114.21 23.79 14.20 128.96 0.00 281.16
Shoma UNO 95.15 26.58 15.68 133.91 -1.00 270.32
Boyang JIN 104.46 23.71 13.01 122.53 -1.00 262.71
Mikhail KOLYADA 90.24 25.42 14.36 132.42 0.00 262.44
Matteo RIZZO 98.15 23.20 14.37 122.94 -1.00 257.66
Michal BREZINA 86.74 23.95 15.68 128.91 -1.00 254.28
Jason BROWN 78.05 27.05 15.40 134.65 -1.00 254.15
Andrei LAZUKIN 98.35 22.74 12.56 115.09 0.00 248.74

基礎点とGOEを合わせるとこうなります。ジャンプだけで100点を超えたのは四人。その中でもネイサンチェン選手は突出しています。

ジャンプスピンステップとネイサンチェン選手が一位。PCSのみ羽生選手が一位です。PCSの三位はジェイソンブラウン選手。四回転とはいわないので、トリプルアクセルまででいいので、三本しっかり決めてくれれば、表彰台争いができるチャンスくらいまでは今回あったんですけどねえ。

 

  Jump Spin Step PCS 減点 順位
Nathan CHEN 1 1 1 2 1 1
Yuzuru HANYU 2 2 5 1 1 2
Vincent ZHOU 3 7 8 6 1 3
Shoma UNO 7 4 2 4 6 4
Boyang JIN 4 8 9 9 6 5
Mikhail KOLYADA 8 5 7 5 1 6
Matteo RIZZO 6 9 6 8 6 7
Michal BREZINA 9 6 2 7 6 8
Jason BROWN 10 3 4 3 6 9
Andrei LAZUKIN 5 10 10 10 1 10

要素グループ別に上位10選手内で順位をつけたもの。

宇野選手はジャンプの失敗をスピンステップPCSで何とかカバーしたものの、上位3人との差は大きくて4位に留まった、というところでしょうか。ボーヤンジン選手は本人比ではジャンプも満足がいく水準ではありませんでしたが、それなりには点が出て全体の4番目。ただ、スピンステップPCSが伸びずに表彰台争いとはだいぶ離れた五番目で終わっていました。

ステップで2位のスコアを上げているのはブレジナ選手。ショートフリー共にレベル4で加点も十分も取った結果こうなりました。ステップで点が取れる選手は見ていて映えます。

 

  Jump Spin Step PCS 減点  
Nathan CHEN 60.45 4.53 3.89 26.11 1.00 95.98
Yuzuru HANYU 37.88 4.40 2.79 27.46 1.00 73.53
Vincent ZHOU 36.16 1.05 1.64 13.87 1.00 53.72
Shoma UNO 17.10 3.84 3.12 18.82 0.00 42.88
Boyang JIN 26.41 0.97 0.45 7.44 0.00 35.27
Mikhail KOLYADA 12.19 2.68 1.80 17.33 1.00 35.00
Matteo RIZZO 20.10 0.46 1.81 7.85 0.00 30.22
Michal BREZINA 8.69 1.21 3.12 13.82 0.00 26.84
Jason BROWN 0.00 4.31 2.84 19.56 0.00 26.71
Andrei LAZUKIN 20.30 0.00 0.00 0.00 1.00 21.30

各要素グループで、上位10選手中10位の選手と、自分の得点との差を並べたのがこの表です。

ジャンプだけで60点もの大差がついているのが分かります。それに対して、スピンは最大で4.53、ステップは3.89と、それほど差が付きません。PCSでも27.46までです。ジャンプでいかに差が付くか、というのが分かります。

女子と比べても、男子のジャンプ大会色は色濃いなあ、というのが感じられる結果でした。

 

 

世界フィギュア19 女子シングル3

今回は女子シングルの最終

各要素ごとの高得点者を見ていきます。

 

すべて共通で、左端にショートプログラムかフリーか、2列目が名前、3列目国籍、4列目は要素の順番。5列目は要素名、6列目は回転不足やエッジ不正などのマークが配置されます。7列目は基礎点、8列目はジャンプの1.1倍のところにはXマークが付きます。9列目がGOEでこれは点数としてのGOEです。10列目はスコア、基礎点+GOEが入ります。

11列目、一番右端は-5から+5までのGOEの採点が入ります。9列目のGOEは加点減点の点数そのものですが、一番右側のGOEは加点減点する際の係数にあたるものです。

以下、GOE〇〇以上、という表記が頻繁に出てきますが、そのGOEはこの右端の列の数値を意味します。

 

トリプルアクセル以上の高難度ジャンプ

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Rika KIHIRA JPN 1 3A+3T   12.20   2.86 15.06 3.556
FS Rika KIHIRA JPN 2 3A   8.00   -3.66 4.34 -4.444
FS Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 1 4S   9.70   1.11 10.81 1.111

紀平選手のトリプルアクセルとトゥルシンバエワ選手の四回転サルコウ。紀平選手の成功した方のジャンプはすごい加点が付いています。この要素が今大会の単独要素での最高点となっています。

トゥルシンバエワ選手の四回転サルコウは、回転が足りていただけでなく、回転が足りて転倒しなかっただけでなく、GOEもプラスになっていて、本当の意味での成功ジャンプでの四回転認定となりました

 

三回転-三回転で平均GOE3.5以上

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP Alina ZAGITOVA RUS 1 3Lz+3Lo   10.80   2.44 13.24 4.222
SP Gabrielle DALEMAN CAN 1 3T+3T   8.40   1.80 10.20 4.222
SP Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 4 3S+3T   9.35 x 1.78 11.13 4.111
SP Kaori SAKAMOTO JPN 1 3F+3T   9.50   2.12 11.62 3.889
FS Alina ZAGITOVA RUS 2 3Lz+3T   10.10   2.28 12.38 3.889
FS Evgenia MEDVEDEVA RUS 2 3S+3Lo   9.20   1.82 11.02 3.667
FS Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 7 3S+3T   9.35 x 1.54 10.89 3.667
FS Kaori SAKAMOTO JPN 1 3F+3T   9.50   1.89 11.39 3.667
FS Rika KIHIRA JPN 1 3A+3T   12.20   2.86 15.06 3.556


恐ろしいことにここに3A-3Tが入っているという・・・

名前が二つあるのは、ザギトワ、トゥルシンバエワ、坂本花織。トゥルシンバエワ選手は3S-3Tと、やや難度は低めではありますが、二つとも1.1倍ボーナスタイムのものです

トップはザギトワ選手のルッツループ。最高難度のコンビネーションがGOEも最高というのがすごい。また、デールマン選手の代名詞、3T-3TもGOEは全体トップで並んでいます。

 

3連続ジャンプで平均GOE2.0以上

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Kaori SAKAMOTO JPN 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.62 11.30 3.889
FS Rika KIHIRA JPN 9 3Lz+2T+2Lo   9.79 x 1.77 11.56 3.000
FS Alina ZAGITOVA RUS 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 1.36 10.49 2.556
FS Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 9 2A+1Eu+3S   8.91 x 1.04 9.95 2.444
FS Evgenia MEDVEDEVA RUS 3 3F+2T+2T   7.90   1.21 9.11 2.222
FS Eunsoo LIM KOR 7 3S+2T+2Lo   8.03 x 0.86 8.89 2.000

3-3-2や、3-1-3みたいな3連続はいないんですね。3連続は坂本選手のGOEが突出していましたが、2Aスタートなので加点の絶対値やスコアでは3Lz起点の紀平選手の方が上です

 

単独のトリプルルッツ 平均GOE2.5以上

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP Rika KIHIRA JPN 4 3Lz   6.49 x 2.28 8.77 3.889
FS Evgenia MEDVEDEVA RUS 1 3Lz   5.90   2.11 8.01 3.667
SP Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 1 3Lz   5.90   2.19 8.09 3.556
FS Kaori SAKAMOTO JPN 3 3Lz   5.90   1.60 7.50 2.778
FS Eunsoo LIM KOR 1 3Lz   5.90   1.52 7.42 2.556

実は3Lz-3Loのザギトワ選手のGOEの方が、単独3Lzの最高点の紀平選手より上だったりします。

坂本選手はショートフリー合わせて3Lzは一本しかなく、苦手なジャンプなのだろうと推察されるのですが、平均GOEは4位でそんなに悪くはありません

 

 

 

単独のトリプルフリップ 平均GOE3.0以上

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP Alina ZAGITOVA RUS 6 3F   5.83 x 2.20 8.03 4.000
SP Eunsoo LIM KOR 4 3F   5.30   1.97 7.27 3.667
FS Rika KIHIRA JPN 7 3F   5.83 x 1.89 7.72 3.556
FS Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 3 3F   5.30   1.74 7.04 3.222
SP Mariah BELL USA 5 3F   5.83 x 1.67 7.50 3.111
FS Evgenia MEDVEDEVA RUS 8 3F   5.83 x 1.59 7.42 3.000
FS Mariah BELL USA 9 3F   5.83 x 1.59 7.42 3.000

単独ルッツよりも飛ぶ選手が多く、また平均GOEも高め。

1.1倍ボーナスタイムに飛んでGOEも高め、という選手が多いですね。

 

単独のダブルアクセル 平均GOE3.0以上

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP Kaori SAKAMOTO JPN 2 2A   3.30   1.27 4.57 3.889
FS Kaori SAKAMOTO JPN 2 2A   3.30   1.27 4.57 3.889
SP Alina ZAGITOVA RUS 4 2A   3.30   1.13 4.43 3.556
SP Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 2 2A   3.30   1.13 4.43 3.444
SP Evgenia MEDVEDEVA RUS 2 2A   3.30   1.08 4.38 3.444
FS Alina ZAGITOVA RUS 1 2A   3.30   1.13 4.43 3.444
FS Bradie TENNELL USA 1 2A   3.30   1.13 4.43 3.444
SP Bradie TENNELL USA 4 2A   3.30   1.04 4.34 3.333
FS Alina ZAGITOVA RUS 4 2A   3.30   1.08 4.38 3.333
SP Anita OSTLUND SWE 1 2A   3.30   0.99 4.29 3.000

単独のダブルアクセルは、全選手の中で紀平選手だけが飛んでいません。逆に言えば、それ以外の選手には必ず入っている要素ですし、選手によってはショートフリー合わせて3本入っていることもあります。

そういった要素で、坂本選手が上から二つを占めています。ザギトワ選手は飛んだ3回全部入っています。高難度のコンビネーションを飛ぶ一方で、フリーでは単独2Aが2本もはいっています。これは、高難度コンビネーションがありつつ、3A以上のジャンプがないことで、飛ぶジャンプが足りずに2Aを単独で2回跳ぶという形になるためかと思われます。GOEを考えると、2A-3Tを入れたりする方がお得な部分もあるのですが、そういう作戦は現状選ばれていません

また、ダブルアクセルで高いGOEを出せる選手は、誰も1.1倍ボーナスタイムに単独ダブルアクセルを入れたりしない、というのも見て取れます。

 

 

全ジャンプ要素で平均GOE3.5以上のもの

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP Kaori SAKAMOTO JPN 5 3Lo   5.39 x 2.38 7.77 4.667
SP Alina ZAGITOVA RUS 1 3Lz+3Lo   10.80   2.44 13.24 4.222
SP Gabrielle DALEMAN CAN 1 3T+3T   8.40   1.80 10.20 4.222
SP Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 4 3S+3T   9.35 x 1.78 11.13 4.111
SP Alina ZAGITOVA RUS 6 3F   5.83 x 2.20 8.03 4.000
SP Evgenia MEDVEDEVA RUS 4 3Lo   5.39 x 1.96 7.35 4.000
SP Kaori SAKAMOTO JPN 1 3F+3T   9.50   2.12 11.62 3.889
SP Kaori SAKAMOTO JPN 2 2A   3.30   1.27 4.57 3.889
SP Rika KIHIRA JPN 4 3Lz   6.49 x 2.28 8.77 3.889
FS Alina ZAGITOVA RUS 2 3Lz+3T   10.10   2.28 12.38 3.889
FS Kaori SAKAMOTO JPN 2 2A   3.30   1.27 4.57 3.889
FS Kaori SAKAMOTO JPN 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.62 11.30 3.889
SP Eunsoo LIM KOR 4 3F   5.30   1.97 7.27 3.667
FS Evgenia MEDVEDEVA RUS 1 3Lz   5.90   2.11 8.01 3.667
FS Evgenia MEDVEDEVA RUS 2 3S+3Lo   9.20   1.82 11.02 3.667
FS Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 7 3S+3T   9.35 x 1.54 10.89 3.667
FS Kaori SAKAMOTO JPN 1 3F+3T   9.50   1.89 11.39 3.667
SP Alina ZAGITOVA RUS 4 2A   3.30   1.13 4.43 3.556
SP Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 1 3Lz   5.90   2.19 8.09 3.556
FS Alina ZAGITOVA RUS 3 3S   4.30   1.47 5.77 3.556
FS Rika KIHIRA JPN 1 3A+3T   12.20   2.86 15.06 3.556
FS Rika KIHIRA JPN 7 3F   5.83 x 1.89 7.72 3.556

ジャンプ要素で平均GOE最高値は、坂本選手のショートプログラムの単独トリプルループでした。9人のジャッジのうち7人が+5を付けた素晴らしいジャンプです。

この中に、坂本選手は6つ、ザギトワ選手5つが含まれます。紀平選手、トゥルシンバエワ選手、メドベージェワ選手は3つづつです。上位5選手はジャンプの加点をしっかりもらえていることが垣間見えます。

一方で、宮原選手の名前が一つも入ってきていない、というあたりが、今回6位に留まったことの大きな要因に見えます。ヨーロッパ選手権を勝ったサムドゥロワ選手も名前がありませんし、上位を狙ったテネル選手もいません。ジャンプで加点を取れないと、表彰台を争うのは難しい、ということの表れかと思われます

 

CCoSp レベル4で平均GOE3.5以上

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP Alina ZAGITOVA RUS 7 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.111
FS Bradie TENNELL USA 12 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.111
SP Bradie TENNELL USA 7 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
SP Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 3 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.889
SP Evgenia MEDVEDEVA RUS 6 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.778
SP Rika KIHIRA JPN 5 CCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.778
FS Loena HENDRICKX BEL 5 CCoSp4   3.50   1.25 4.75 3.556

チェンジフットコンビネーションスピンCCoSpは、ショートフリー合わせて延べ60人が実施しました。ショートフリー合わせて延べ64人ですから、ほとんどの選手が要素に入れています。

こういうところでもザギトワ選手が一番上に来ます。ただ、ショートだけで、フリーの平均GOEは+2台でした。ショートフリー共に+4以上を並べたのはテネル選手です

 

CSp 全選手

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP Evgenia MEDVEDEVA RUS 5 CSp4   2.60   0.85 3.45 3.333
SP Natasha MCKAY GBR 4 CSp4   2.60   0.59 3.19 2.333
SP Dasa GRM SLO 3 CSp4   2.60   0.56 3.16 2.111
SP Julia SAUTER ROU 5 CSp4   2.60   0.48 3.08 1.778
FS Natasha MCKAY GBR 5 CSp4   2.60   0.30 2.90 1.222

キャメルスピンCSpは延べ5選手が実施。少ないので全選手上げておきます。全選手レベル4で、メドベージェワ選手が平均GOEトップでした。レベル4でも基礎点が2.60なので、あまり選ばれないスピンなのですが、メドベージェワ選手がなぜか要素として入れています

 

FCCoSp レベル4で平均GOE3.0以上

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Alina ZAGITOVA RUS 12 FCCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
FS Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 12 FCCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
FS Kaori SAKAMOTO JPN 12 FCCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
FS Bradie TENNELL USA 11 FCCoSp4   3.50   1.25 4.75 3.667
FS Evgenia MEDVEDEVA RUS 10 FCCoSp4   3.50   1.10 4.60 3.000

フライングチェンジフットコンビネーションスピンFCCoSpは16人が実施し、レベル4を13人が取りました。ここのトップはザギトワ、トゥルシンバエワ、坂本花織と+4.0を持っています。最後の要素としてこれを持ってきている選手が多いです。

 

FCSp レベル4で平均GOE3.0以上

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP Alina ZAGITOVA RUS 2 FCSp4   3.20   1.37 4.57 4.333
FS Alina ZAGITOVA RUS 5 FCSp4   3.20   1.28 4.48 4.111
SP Kaori SAKAMOTO JPN 6 FCSp4   3.20   1.14 4.34 3.444
SP Eunsoo LIM KOR 2 FCSp4   3.20   1.10 4.30 3.444
SP Bradie TENNELL USA 2 FCSp4   3.20   1.05 4.25 3.333
FS Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 5 FCSp4   3.20   1.10 4.30 3.333

フライングキャメルスピンFCSpは延べ31選手が試みて30選手がレベル4でした。

ここでもトップはザギトワ選手。ショートフリー共に平均GOE4.0超えです。

 

 

FCSSp 全選手

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Alaine CHARTRAND CAN 11 FCSSp4   3.00   0.73 3.73 2.444
FS Eliska BREZINOVA CZE 10 FCSSp3   2.60   0.15 2.75 0.556

フライングチェンジフットシットスピンFCSSpは2人が要素として入れて1人がレベル4でした。チャートランド選手がレベル4になっています

 

FSSp レベル4で平均GOE2.5以上

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Kaori SAKAMOTO JPN 4 FSSp4   3.00   1.03 4.03 3.333
SP Evgenia MEDVEDEVA RUS 3 FSSp4   3.00   0.90 3.90 3.111
FS Rika KIHIRA JPN 10 FSSp4   3.00   0.90 3.90 3.000
SP Mariah BELL USA 4 FSSp4   3.00   0.86 3.86 2.889
FS Sofia SAMODUROVA RUS 5 FSSp4   3.00   0.77 3.77 2.667
SP Rika KIHIRA JPN 3 FSSp4   3.00   0.73 3.73 2.556

フライングシットスピンFSSpは延べ23人が要素として入れて22人がレベル4

多数の選手が要素として入れているにもかかわらず、GOEが+4に到達した選手はいませんでした。上位選手の中では、ザギトワ選手、トゥルシンバエワ選手に宮原選手はこのスピンを要素として入れていません。

 

LSp レベル4でGOE平均3.5以上

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Satoko MIYAHARA JPN 12 LSp4   2.70   1.27 3.97 4.667
SP Satoko MIYAHARA JPN 7 LSp4   2.70   1.20 3.90 4.444
SP Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 7 LSp4   2.70   1.16 3.86 4.333
SP Alina ZAGITOVA RUS 5 LSp4   2.70   1.12 3.82 4.111
SP Rika KIHIRA JPN 7 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.889
SP Bradie TENNELL USA 6 LSp4   2.70   1.08 3.78 3.889
FS Loena HENDRICKX BEL 10 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.889
FS Rika KIHIRA JPN 8 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.778
FS Bradie TENNELL USA 5 LSp4   2.70   1.00 3.70 3.778
SP Mariah BELL USA 6 LSp4   2.70   0.96 3.66 3.667
SP Loena HENDRICKX BEL 7 LSp4   2.70   0.96 3.66 3.667

レイバックスピンLSpは延べ49選手が試みて41選手がレベル4取得

レイバックスピンと言えば宮原選手。今回は満点こそ出せませんでしたが、ショート、フリー、どちらも最高点でした。ただ、スピンの中では基礎点が低いんですよねレイバックスピン・・・。

 

SSp 全選手

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Alexandra FEIGIN BUL 12 SSp4   2.50   0.50 3.00 1.889
SP Sophia SCHALLER AUT 6 SSp4   2.50   0.07 2.57 0.333

シットスピンSSpは2選手が実施し二人ともレベル4でした

 

 

全スピン要素 平均GOE4.0以上

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Satoko MIYAHARA JPN 12 LSp4   2.70   1.27 3.97 4.667
SP Satoko MIYAHARA JPN 7 LSp4   2.70   1.20 3.90 4.444
SP Alina ZAGITOVA RUS 2 FCSp4   3.20   1.37 4.57 4.333
SP Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 7 LSp4   2.70   1.16 3.86 4.333
SP Alina ZAGITOVA RUS 5 LSp4   2.70   1.12 3.82 4.111
SP Alina ZAGITOVA RUS 7 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.111
FS Alina ZAGITOVA RUS 5 FCSp4   3.20   1.28 4.48 4.111
FS Bradie TENNELL USA 12 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.111
SP Bradie TENNELL USA 7 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
FS Alina ZAGITOVA RUS 12 FCCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
FS Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 12 FCCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
FS Kaori SAKAMOTO JPN 12 FCCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000

 スピンの中で最高GOEなのは宮原選手のレイバックスピン。ただ、基礎点が低いという弱点があり、スピン要素での最高点は、ザギトワ選手、テネル選手のチェンジフットコンビネーションスピンでした。

スピンはショートフリー通じて合計6回実施される要素ですが、ザギトワ選手はそのうち5つで平均GOE4.0以上ということでここに乗ってきています。意外なのは、メドベージェワ選手は一つもここに入ってきませんでした。紀平選手も無し。サムドゥロワ選手もいません。

 

ステップ レベル4でGOE平均3.5以上

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP Alina ZAGITOVA RUS 3 StSq4   3.90   1.78 5.68 4.556
SP Evgenia MEDVEDEVA RUS 7 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
SP Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 6 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.889
FS Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 11 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.889
FS Kaori SAKAMOTO JPN 5 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.889
SP Satoko MIYAHARA JPN 6 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.778
SP Kaori SAKAMOTO JPN 4 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.667
FS Alina ZAGITOVA RUS 11 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.556
FS Evgenia MEDVEDEVA RUS 11 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.556

 
ステップはショートフリー共に全選手が実施しますので、延べ64人が行い、レベル4は35選手。レベル4を取るのが割と難しいとされてきたステップで今大会はレベル4率が50%を超えました。

最高点はザギトワ選手のショートプログラム。ついでメドベージェワ選手までが4.0を超えています。四回転を飛んだ跳んだと騒がれたトゥルシンバエワ選手ですが、実はフリーの中ではステップ最高点です。ショートもフリーもステップで大きな加点を出していまして、4回転を飛んだというだけで表彰台に乗ったわけではありません。

坂本選手もショートフリー共に名前が入ってきていて、ステップでちゃんと5点台半ばの点を取っています

今回は紀平選手がここでも名前が入ってきませんでした

 

 

コレオシークエンス GOE平均3.0以上

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Kaori SAKAMOTO JPN 10 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
FS Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 6 ChSq1   3.00   1.79 4.79 3.667
FS Satoko MIYAHARA JPN 9 ChSq1   3.00   1.86 4.86 3.667
FS Mariah BELL USA 11 ChSq1   3.00   1.86 4.86 3.667
FS Alina ZAGITOVA RUS 6 ChSq1   3.00   1.71 4.71 3.444
FS Bradie TENNELL USA 10 ChSq1   3.00   1.64 4.64 3.333
FS Rika KIHIRA JPN 11 ChSq1   3.00   1.64 4.64 3.222
FS Gabrielle DALEMAN CAN 11 ChSq1   3.00   1.57 4.57 3.111

コレオシークエンスはフリーにのみある要素で全24選手が実施です。

最高点は坂本選手でした。坂本選手は、ステップ2つとコレオという踊るパートがすべて5点以上の要素となりました。二番目はトゥルシンバエワ選手に宮原選手とマライアベル選手。トゥルシンバエワ選手はステップと並んでここでも上位に名前があり、四回転サルコウだけではない、ということがしっかりと表れています。

意外なのはメドベージェワ選手の名前がないあたりでしょうか。メドベージェワ選手のコレオはGOE平均2.444 全選手の中で10番目とあまり高くありませんでした。

上位選手ではほかにサムドゥロワ選手も名前がありません。サムドゥロワ選手は、ステップでもスピンでもジャンプでも名前が出てこず、全体的に今大会は加点が得られない滑りとなっていました。

 

平均GOE4.0以上の全要素

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Satoko MIYAHARA JPN 12 LSp4   2.70   1.27 3.97 4.667
SP Kaori SAKAMOTO JPN 5 3Lo   5.39 x 2.38 7.77 4.667
SP Alina ZAGITOVA RUS 3 StSq4   3.90   1.78 5.68 4.556
SP Satoko MIYAHARA JPN 7 LSp4   2.70   1.20 3.90 4.444
SP Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 7 LSp4   2.70   1.16 3.86 4.333
SP Alina ZAGITOVA RUS 2 FCSp4   3.20   1.37 4.57 4.333
SP Gabrielle DALEMAN CAN 1 3T+3T   8.40   1.80 10.20 4.222
SP Alina ZAGITOVA RUS 1 3Lz+3Lo   10.80   2.44 13.24 4.222
SP Evgenia MEDVEDEVA RUS 7 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
SP Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 4 3S+3T   9.35 x 1.78 11.13 4.111
FS Bradie TENNELL USA 12 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.111
SP Alina ZAGITOVA RUS 5 LSp4   2.70   1.12 3.82 4.111
SP Alina ZAGITOVA RUS 7 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.111
FS Alina ZAGITOVA RUS 5 FCSp4   3.20   1.28 4.48 4.111
FS Kaori SAKAMOTO JPN 10 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
FS Kaori SAKAMOTO JPN 12 FCCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
SP Evgenia MEDVEDEVA RUS 4 3Lo   5.39 x 1.96 7.35 4.000
FS Elizabet TURSYNBAEVA KAZ 12 FCCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
SP Bradie TENNELL USA 7 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
SP Alina ZAGITOVA RUS 6 3F   5.83 x 2.20 8.03 4.000
FS Alina ZAGITOVA RUS 12 FCCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000

全要素の中で最高のGOEを得たのは、坂本選手の単独トリプルループと宮原選手のレイバックスピンでした。

ショートとフリー合わせると、各選手は19の要素をこなすわけですが、その中でザギトワ選手は8要素でGOEの平均が4.0以上、トゥルシンバエワ選手と坂本選手が3要素で4以上、メドベージェワ、宮原、テネルの三選手は2要素で4以上となっていました。

ザギトワ選手の洗練さが突出しているのが分かります。また、坂本選手が+4以上になった要素は、ジャンプ、スピン、コレオと、タイプの違う三つになっていて、様々な要素で点が取れる選手になってきた、というのが見て取れます。

 

紀平選手が、GOE4以上の要素、というのが一つもありませんでした。この辺が、最終的に表彰台に乗れなかった僅差の中では大きく響いている部分ですし、また、トリプルアクセルが入らないとザギトワ選手との差が大きい、ということが明確に表れてしまった部分になります

 

 

世界フィギュア19 女子シングル2

世界フィギュアのレビュー1ではジャッジ毎の採点のぶれ、のようなものを見ましたが、ここからはちゃんと、というべきでしょうか、ちゃんと、ジャッジではなく選手を主役にして、選手のそれぞれの点の取り方、というところを見ていきます。

  

ショートプログラム 要素別基礎点-GOE

 

Jump

基礎点

Jump

GOE

Spin

基礎点

Spin

GOE

Step

基礎点

Step

GOE

PCS 減点
Alina ZAGITOVA 19.93 5.77 9.40 3.94 3.90 1.78 37.36 0.00
Kaori SAKAMOTO 18.19 5.77 9.40 3.27 3.90 1.45 34.88 0.00
Elizabet TURSYNBAEVA 18.55 5.10 9.40 3.33 3.90 1.50 34.18 0.00
Evgenia MEDVEDEVA 17.14 2.74 9.10 3.10 3.90 1.62 36.63 0.00
Eunsoo LIM 19.03 4.68 9.40 2.98 3.30 1.04 32.48 0.00
Mariah BELL 19.23 2.78 9.20 2.77 3.90 1.23 32.15 0.00
Rika KIHIRA 15.99 3.42 9.20 3.07 3.90 1.34 33.98 0.00
Satoko MIYAHARA 17.74 0.91 9.40 2.92 3.90 1.50 34.23 0.00
Sofia SAMODUROVA 18.03 3.59 9.40 2.73 3.90 1.06 31.71 0.00
Bradie TENNELL 18.18 0.64 9.40 3.53 3.30 1.04 33.41 0.00

パッと目につくのは紀平選手のジャンプの基礎点が一番低いこと。トリプルアクセルをふかしてゼロなので、まあ、こうなりますね。基礎点の段階でザギトワ選手とは3.94の差が付きました。そこにGOEの差が2.35加わります。まあこの辺はジャンプが一つ少ないので、可能な加点量は減ってしまうわけで仕方ない部分はありますが、ザギトワ選手のルッツループがジャッジ平均で+4を超えるスコアを出してきていますので、一つ一つのジャンプの差も実際にあった、ということになります。さらにスピン、ステップでもGOEで差をつけられ、さらにPCSでは3.38の差。勝ってる要素が一つもない、となると、ショートプログラムから大きな差が付くことになります。

ザギトワ選手は紀平選手との比較、ということではなく、全体見てもどの部分でも1位でした。

坂本選手はジャンプの基礎点では5番目ながらGOEはザギトワ選手と並んでトップ。基礎点が低い方が加点の上限は低くなるので、GOEが同じということは質は坂本選手の方が勝った、ということになります。

宮原選手はジャンプで回転不足もあり基礎点から伸びませんでしたが、それでもメドベージェワ選手よりは高い基礎点を持ちました。しかしながらGOEが9番目で質的にもあまりいいジャンプではなく、そのあたりが響いてショートは出遅れた形です

上位10選手でスピンでレベル4を取りこぼしたのは一つもなし。ここには乗せてませんが、ショートプログラムでは19位のルカヴァリエ選手まではすべてスピンがレベル4で取りこぼしなしでした。今大会のレベルの高さがうかがわれます。また、上位選手に転倒なし。まあ、転倒してたら上位に出てこれない、という意味も含まれますが、転倒の少なさも、この大会のレベルの高さを表していたように思えます。

 

ショートプログラム 要素別 

  Jump Spin Step PCS
Alina ZAGITOVA 25.70 13.34 5.68 37.36
Kaori SAKAMOTO 23.96 12.67 5.35 34.88
Elizabet TURSYNBAEVA 23.65 12.73 5.40 34.18
Evgenia MEDVEDEVA 19.88 12.20 5.52 36.63
Eunsoo LIM 23.71 12.38 4.34 32.48
Mariah BELL 22.01 11.97 5.13 32.15
Rika KIHIRA 19.41 12.27 5.24 33.98
Satoko MIYAHARA 18.65 12.32 5.40 34.23
Sofia SAMODUROVA 21.62 12.13 4.96 31.71
Bradie TENNELL 18.82 12.93 4.34 33.41

 
基礎点とGOEを合わせるとこんな感じになります。上位10選手中宮原選手はジャンプの得点が最下位。ジャンプの矯正シーズンということでしたが、1シーズンで作り切れなかったでしょうか。全日本ではジャンプは伸びなかったものの、スピンステップPCSは誰にも負けません、という形でしたが、さすがに世界選手権ではそうはいかず、スピンでも6番目、ステップは3位タイ、PCSも4位ということで、上位進出ならず

坂本選手がジャンプ2番目のみならず、スピン3位、ステップ5位にPCSも3位とバランスよく点を稼いでの2位スタートとなりました

メドベージェワ選手は今大会で復活をアピールしたわけですが、採点表を見るとショートの段階ではジャンプ7位、スピン2位、ステップ5位にPCSで2位。PCSでは大きく稼いでいますが、他はそれほどでもという形で、やはりかつての強さと比べるとまだまだ、という風に見えます。

ジャンプ、スピン、ステップ、PCS、すべてザギトワ選手が1位でした。

 

 

 

フリー 要素別基礎点-GOE

 

Jump

基礎点

Jump

GOE

Spin

基礎点

Spin

GOE

Step

基礎点

Step

GOE

PCS 減点
Alina ZAGITOVA 47.84 9.54 10.20 3.63 6.90 3.05 74.26 0.00
Rika KIHIRA 52.65 7.82 9.20 3.14 6.90 2.92 70.96 1.00
Evgenia MEDVEDEVA 44.71 9.26 10.20 2.98 6.90 2.55 72.97 0.00
Elizabet TURSYNBAEVA 47.69 7.19 10.20 3.70 6.90 3.29 69.83 0.00
Kaori SAKAMOTO 40.05 8.68 10.00 3.58 6.90 3.50 73.26 0.00
Satoko MIYAHARA 46.21 6.15 9.40 3.38 6.90 3.14 70.17 0.00
Bradie TENNELL 46.53 6.05 9.70 3.70 6.90 2.81 68.28 0.00
Sofia SAMODUROVA 44.29 7.25 9.20 2.31 6.90 1.92 66.29 0.00
Mariah BELL 44.41 4.84 8.08 1.95 6.90 2.97 67.66 0.00
Eunsoo LIM 45.89 2.02 9.10 2.05 6.30 2.35 65.95 1.00

フリーの「ステップ」の記述にはコレオシークエンスを含みます。

フリーではトリプルアクセル2本を回り切った紀平選手がジャンプの基礎点はトップです。ザギトワ選手との基礎点の差は4.81 意外と差が小さいなという印象です。これは基礎点なので、ジャンプは回りきっていれば転倒だろうと完ぺきだろうと同じ点数です。なので、この差の小ささは、トリプルアクセル以外のジャンプの構成の差により縮まったものです。ザギトワ選手は1.1倍ボーナスタイムにルッツループを入れるなど、トリプルアクセルなしでの限界にかなり近い構成をしてきているので、こういった差になっています。

ジャンプ基礎点が一番低いのが坂本選手。フリップが一本抜けたからなあ、というのは確かにあるのですが、仮にあのフリップが3回転できちっと入っていたとしても増える基礎点は5.28ポイントであり、ジャンプ基礎点合計は45.33にまでしかなりません。これだと上位10選手中で8番目。宮原選手より基礎点段階で低い、ということになります。ダイナミックなジャンプが売り、ということでジュニアのころからやってきた坂本選手、かと思いますが、現段階ではジャンプの構成は世界のトップの中では弱い方、という位置づけです。これは、ルッツが一本、という構成なためです。来シーズンにはトリプルアクセルを飛ぶ、ということになっていますが、トリプルアクセルが一本入っても、ルッツが一本だけだと、紀平選手の構成とはまだだいぶ差があります。

 

その坂本選手ですが、ステップ系要素の加点が3.50とトップでした。今大会の坂本選手の採点表は、彼女の従来のイメージと大分かけ離れたものになっています。PCSもメドベージェワ選手より上を行っての二位。73.26まで伸びるとは驚きでした。フリップが痛かった・・・

ジャンプ系要素のGOEは、1位坂本花織、2位トゥルシンバエワ、3位宮原知子。何とも意外な並び順になっています。こういうところで強そうなメドベージェワ選手が8番目。やっぱり今シーズンは、まだまだな出来、と見ていいと思います。

 

 フリー要素別

  Jump Spin Step PCS 減点
Alina ZAGITOVA 57.38 13.83 9.95 74.26 0.00
Rika KIHIRA 60.47 12.34 9.82 70.96 1.00
Evgenia MEDVEDEVA 53.97 13.18 9.45 72.97 0.00
Elizabet TURSYNBAEVA 54.88 13.90 10.19 69.83 0.00
Kaori SAKAMOTO 48.73 13.58 10.40 73.26 0.00
Satoko MIYAHARA 52.36 12.78 10.04 70.17 0.00
Bradie TENNELL 52.58 13.40 9.71 68.28 0.00
Sofia SAMODUROVA 51.54 11.51 8.82 66.29 0.00
Mariah BELL 49.25 10.03 9.87 67.66 0.00
Eunsoo LIM 47.91 11.15 8.65 65.95 1.00

基礎点とGOEを合わせるとこんな感じ。トリプルアクセル一本失敗して転倒しても紀平選手がジャンプのスコアははっきりとトップです。四回転を飛んだトゥルシンバエワ選手は3番目。四回転を飛んでもコンビネーションが一つ入らないとこうなります。なお、コンビネーションジャンプをしっかり飛んだとしても、GOE満点近くないと紀平選手のジャンプのスコアには届きません。四回転一本が相手なら、トリプルアクセル二本で一本転倒しても十分戦える、という意味でもあります

スピンのトップスコアはトゥルシンバエワ選手。四回転飛んで二位、ということになってますが、あの僅差の勝負の中ではスピンで稼いだこの点数がしっかり意味を持ちました。世界一のレイバックスピンを持つ宮原選手なんですが、他のスピンでは点を伸ばしきれておらず、スピンの合計スコアだと全体の中でも平凡な位置になってしまっています。

ヨーロッパ選手権を勝ったサムドゥロワ選手、演技終了後にはガッツポーズも見せていましたが、こうして採点表を見ると上位陣と比べてどれも今一つです。PCSで66点台というのは、上位の選手とジャンプ一本分程度の差がついてしまっていますので、なかなか苦しいところ。普通は大陸選手権で優勝したりなんかするとPCSはもっと伸びそうなものですが、ちょっとフロック扱いされてしまっている部分があるかもしれません。

 

 

 ショートフリー合計 要素別基礎点+GOE

 

Jump

基礎点

Jump

GOE

Spin

基礎点

Spin

GOE

Step

基礎点

Step

GOE

PCS 減点
Alina ZAGITOVA 67.77 15.31 19.60 7.57 10.80 4.83 111.62 0.00
Elizabet TURSYNBAEVA 66.24 12.29 19.60 7.03 10.80 4.79 104.01 0.00
Evgenia MEDVEDEVA 61.85 12.00 19.30 6.08 10.80 4.17 109.60 0.00
Rika KIHIRA 68.64 11.24 18.40 6.21 10.80 4.26 104.94 -1.00
Kaori SAKAMOTO 58.24 14.45 19.40 6.85 10.80 4.95 108.14 0.00
Satoko MIYAHARA 63.95 7.06 18.80 6.30 10.80 4.64 104.40 0.00
Bradie TENNELL 64.71 6.69 19.10 7.23 10.20 3.85 101.69 0.00
Sofia SAMODUROVA 62.32 10.84 18.60 5.04 10.80 2.98 98.00 0.00
Mariah BELL 63.64 7.62 17.28 4.72 10.80 4.20 99.81 0.00
Eunsoo LIM 64.92 6.70 18.50 5.03 9.60 3.39 98.43 -1.00

紀平選手はショート冒頭のジャンプが抜けて零点スタートでしたが、フリーでトリプルアクセル二本を回りきったことで、ジャンプの基礎点はトップになりました。坂本選手が基礎点最下位。ショートフリー合わせてルッツが一本だけ、という構成がこの辺に効いてきます。紀平選手との基礎点の差は10.40  仮に坂本選手がフリーのフリップをちゃんと三回転できたとしても、紀平選手がショートでトリプルアクセルを回り切れば差がさらに広がります。ジャンプの基礎点段階で13点近い差があったら、ちょっと勝負はなかなか厳しいでしょうか。

四回転を飛んだトゥルシンバエワ選手を、ザギトワ選手はジャンプの基礎点で上回りました。四回転一本なら、コンビネーション一つ抜けてしまうとジャンプの基礎点段階から逆転ンされてしまう程度のアドバンテージしかないので、それほど怖くはない、ということを意味しますでしょうか。

スピンのGOEトップはザギトワ選手で二番目がテネル選手でした。テネル選手はスピンで稼いだ点とPCSの差でサムドゥロワ選手の上に入りました。

ステップのGOEトップが坂本選手。そしてPCSもザギトワ、メドベージェワに次ぐ3番目でした。ブノワ先生との長い練習がここにはっきり生きたように見えます。

日本人選手の中では圧倒的なPCSを誇っていた宮原選手ですが、今大会では坂本選手、紀平選手の後塵を拝す形となりました。パーフェクトなザギトワと勝負するレベルにはちょっと厳しいですが、今大会の2位~5位の団子の中に入るくらいの力は十分あったのですけど、ジャンプだけでなく、少しづつ他の要素でも、ベストな滑りではなく、少しづつ点を取りこぼしていたように見えます

 

ショートフリー合計 要素別

  Jump Spin Step PCS 減点 Total Scores
Alina ZAGITOVA 83.08 27.17 15.63 111.62 0.00 237.5
Elizabet TURSYNBAEVA 78.53 26.63 15.59 104.01 0.00 224.8
Evgenia MEDVEDEVA 73.85 25.38 14.97 109.60 0.00 223.8
Rika KIHIRA 79.88 24.61 15.06 104.94 1.00 223.5
Kaori SAKAMOTO 72.69 26.25 15.75 108.14 0.00 222.8
Satoko MIYAHARA 71.01 25.10 15.44 104.40 0.00 216.0
Bradie TENNELL 71.40 26.33 14.05 101.69 0.00 213.5
Sofia SAMODUROVA 73.16 23.64 13.78 98.00 0.00 208.6
Mariah BELL 71.26 22.00 15.00 99.81 0.00 208.1
Eunsoo LIM 71.62 23.53 12.99 98.43 1.00 205.6

基礎点とGOEをまとめるとこんな形です

トリプルアクセルを備えていても、一本抜けて一本転倒で一本成功、というくらいだと、ルッツループ後半、などの3回転の限界鬼構成のパーフェクトには負ける、という形になりました。

 

 

要素別順位

 

Jump

基礎点

Jump

GOE

Spin

基礎点

Spin

GOE

Step

基礎点

Step

GOE

PCS 減点 順位
Alina ZAGITOVA 2 1 1 1 1 2 1 1 1
Elizabet TURSYNBAEVA 3 3 1 3 1 3 6 1 2
Evgenia MEDVEDEVA 9 4 4 7 1 7 2 1 3
Rika KIHIRA 1 5 9 6 1 5 4 9 4
Kaori SAKAMOTO 10 2 3 4 1 1 3 1 5
Satoko MIYAHARA 6 8 6 5 1 4 5 1 6
Bradie TENNELL 5 10 5 2 9 8 7 1 7
Sofia SAMODUROVA 8 6 7 8 1 10 10 1 8
Mariah BELL 7 7 10 10 1 6 8 1 9
Eunsoo LIM 4 9 8 9 10 9 9 9 10

各要素を上位10人の中で順位付けするとこうなります

宮原選手は、やはりジャンプが足を引っ張っている形なんですが、他も伸ばしきれませんでした。

ジャンプが売りだった坂本選手は、ジャンプの順位がほかの要素の順位よりも低い、という従来のイメージから大分かけ離れた形です。

ザギトワ選手がステップだけは坂本選手に負けていますが、他はすべて1位でした。

紀平選手はジャンプだけじゃない、総合力があってトータルパッケージの選手だ、ということになっていて、それに異論も感じていなかったのですが、今大会の結果では、やはりジャンプの選手で他の部分は世界のトップの中ではまだトップではない、という形なようです

 

要素別点差

  Jump Spin Step PCS 減点  
Alina ZAGITOVA 12.07 5.17 2.64 13.62 1.00 34.50
Elizabet TURSYNBAEVA 7.52 4.63 2.60 6.01 1.00 21.76
Evgenia MEDVEDEVA 2.84 3.38 1.98 11.60 1.00 20.80
Rika KIHIRA 8.87 2.61 2.07 6.94 0.00 20.49
Kaori SAKAMOTO 1.68 4.25 2.76 10.14 1.00 19.83
Satoko MIYAHARA 0.00 3.10 2.45 6.40 1.00 12.95
Bradie TENNELL 0.39 4.33 1.06 3.69 1.00 10.47
Sofia SAMODUROVA 2.15 1.64 0.79 0.00 1.00 5.58
Mariah BELL 0.25 0.00 2.01 1.81 1.00 5.07
Eunsoo LIM 0.61 1.53 0.00 0.43 0.00 2.57

 

最後に、各要素で上位10選手中一番悪い選手の点数との差を現したのが上記の表です。一番右端は合計値です

これを見ると、どこで大きく稼いでいるのかがわかります。

ステップというのは要素数が少ないこともあって、決定的な差にはなりにくいんですね。スピンは要素数が6あるので、全部合わせると4点5点の差がついてきたりします。ただ、やはり、大きなところはジャンプとPCSで決まってくる、という構図でしょうか。

 

 

 

世界フィギュア19 男子シングル1

女子シングル編で、ジャッジ毎の差ってかなり大きいのね、という話をしましたので、同じものを男子シングルでも見てみることにします。

 

  J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Nathan CHEN 105.01 109.95 108.45 102.58 102.60 107.03 108.34 110.13 109.88
Jason BROWN 96.15 92.31 92.79 99.56 96.47 95.86 100.00 100.32 95.52
Yuzuru HANYU 95.41 94.01 95.15 93.91 95.39 94.76 94.99 96.23 94.04
Vincent ZHOU 93.56 90.82 94.03 92.28 88.65 96.67 96.51 96.23 93.16
Matteo RIZZO 91.43 94.75 95.16 87.22 91.42 94.06 98.14 97.24 89.51
Shoma UNO 90.50 90.85 93.15 90.89 91.07 92.13 92.51 91.40 91.69
Kevin AYMOZ 86.44 82.58 89.83 85.10 87.14 90.50 90.29 89.24 88.86
Michal BREZINA 88.07 78.74 86.69 83.25 85.23 93.13 89.14 91.08 84.62
Boyang JIN 85.33 83.73 81.93 82.78 80.45 91.85 89.38 83.88 82.65
Mikhail KOLYADA 84.75 85.72 86.89 76.10 83.19 85.53 85.22 85.80 81.83

というわけで、GOEとPCSを判定するジャッジ9人のジャッジ毎の採点を見ます。まずはショートプログラムの上位10人。女子シングルの時もそうでしたが、転倒などによる減点は別の審判が判定する領域なのですが、話がややこしくなるので、転倒による減点を加味した形で上記は計算されています。

 

ショート1位のネイサンチェン選手は、J8は110.13と110点を超えるスコアだとみていました。2位のジェイソンブラウン選手は四回転なしでしたが、J7,J8と二人のジャッジは100点に乗る点数を出しています。四回転なしでも100点まで出すことは可能なわけです。

ネイサンチェン選手についた最低点は、ほかのどの選手の一番高い点よりも上、ということで、どこをどうひっくり返してもネイサンチェン選手が一位、というのがショートプログラムの結果でした。

羽生選手と宇野選手は、上位選手の中ではジャッジ毎の点差が少ない、という結果が出ています。これはおそらく、基礎点が高くGOEの幅が出そうな要素で、ノーバリューで零点とか、転倒による-5、というのが出ると、その部分は誰が付けようと同じ点数に強制的になったことが効いていると思われます。

 

  J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Nathan CHEN 1 1 1 1 1 1 1 1 1
Jason BROWN 2 4 6 2 2 3 2 2 2
Yuzuru HANYU 3 3 3 3 3 4 5 4 3
Vincent ZHOU 4 6 4 4 6 2 4 4 4
Matteo RIZZO 5 2 2 6 4 5 3 3 6
Shoma UNO 6 5 5 5 5 7 6 6 5
Kevin AYMOZ 8 9 7 7 7 9 7 8 7
Michal BREZINA 7 10 9 8 8 6 9 7 8
Boyang JIN 9 8 10 9 10 8 8 10 9
Mikhail KOLYADA 10 7 8 10 9 10 10 9 10

ジャッジ毎の順位を出すと、ネイサンチェン選手は誰が見ても1位となっていますが、2位以下は混沌としています。ジェイソンブラウン選手に2位をつけたジャッジは6人いますが、ヴィンセントゾー選手が2位というのが1人、マテオリッツォ選手が2位と見たのが2人います。羽生選手は2位と見たジャッジはおらず、むしろ、3位も6人だけで、4位や5位と見たジャッジが複数いるという形でした。

こうしてみると、宇野選手の下に一本線が引かれている感じです。ここの間で90点台に乗るか乗らないか、という差もあるのですが、それ以上に、どのジャッジが見ても、7位以下の選手は6位以上の選手と比べて劣った、と見えるような差があったんだな、と見て取れます。

  J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Nathan CHEN 7 2 4 9 8 6 5 1 3
Jason BROWN 5 9 8 3 4 6 2 1 7
Yuzuru HANYU 2 8 4 9 3 6 5 1 7
Vincent ZHOU 5 8 4 7 9 1 2 3 6
Matteo RIZZO 6 4 3 9 7 5 1 2 8
Shoma UNO 9 8 1 7 6 3 2 5 4
Kevin AYMOZ 7 9 3 8 6 1 2 4 5
Michal BREZINA 4 9 5 8 6 1 3 2 7
Boyang JIN 3 5 8 6 9 1 2 4 7
Mikhail KOLYADA 6 3 1 9 7 4 5 2 8

 これは、女子シングルの時には出しませんでしたが、各選手に出した点数の中でどのジャッジの点が高かったか低かったか、というのを示したものです。ジャッジは9人いますので、各選手の中の1が入っているジャッジはその選手に一番高い点をつけたジャッジ、9が入っていれば、その選手に一番低い点をつけたジャッジ、ということになります。

これを見るとJ8は全体的に甘く、J2,4,5あたりは割と厳しめ、というのが見て取れます。厳しめなJ2がネイサンチェン選手にだけ全体で2番目の点数をつけていたり、J4はジェイソンブラウン選手には甘かったり、なんでかなあ? と思うところもあるわけですが、こういうのを長期的に追っていくといろいろと面白いこともあるのかもしれません

 

  J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Nathan CHEN 212.52 216.19 218.33 217.67 211.61 226.57 211.74 217.27 211.48
Yuzuru HANYU 202.29 205.85 201.37 211.98 205.21 211.26 207.68 206.14 201.40
Vincent ZHOU 181.66 196.50 190.69 186.36 188.59 198.21 181.77 181.98 178.12
Shoma UNO 176.82 177.56 176.89 179.14 181.71 178.31 183.52 180.58 177.55
Boyang JIN 172.14 181.82 185.68 180.43 183.32 177.97 176.66 172.58 172.91
Mikhail KOLYADA 176.66 177.69 174.96 182.48 174.57 179.75 180.24 175.03 179.96
Alexander SAMARIN 164.68 174.02 170.15 169.50 162.29 165.97 173.73 163.18 168.31
Michal BREZINA 168.92 169.69 167.57 164.81 170.13 170.94 166.25 162.60 165.78
Andrei LAZUKIN 163.41 165.94 168.42 161.38 168.57 173.28 165.14 156.60 161.93
Matteo RIZZO 161.65 167.42 165.91 165.29 160.98 174.00 162.74 161.17 161.37

次はフリーの上位10人です

ネイサンチェン選手が1位なのは誰が付けても変わりませんでした。ショートフリー、全ジャッジが1位とつけた完全優勝です。全ジャッジ210点越え。最高点は226.57という異次元スコアです。ただ、かろうじて、ネイサンチェン選手に就いた最低点211.74は、羽生結弦選手についた最高点の211.98よりは低い数値になっていました。

羽生選手も全ジャッジ200点越え。

逆に3位のヴィンセントゾー選手以下は、どのジャッジでも200点には届きませんでした。四位の宇野選手は上位10選手の中で、ジャッジ毎の点差の幅が一番小さくなっています。四回転ジャンプの二度の明確な失敗、というのがそこに影響していそうです。逆にヴィンセントゾー選手はジャッジ間の点数の差が最大で20.09もありました。四回転を飛びまくったけれど、質的には評価が分かれる、ということで差が大きくなったようです。

  J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Nathan CHEN 1 1 1 1 1 1 1 1 1
Yuzuru HANYU 2 2 2 2 2 2 2 2 2
Vincent ZHOU 3 3 3 3 3 3 4 3 4
Shoma UNO 4 6 5 6 5 5 3 4 5
Boyang JIN 6 4 4 5 4 6 6 6 6
Mikhail KOLYADA 5 5 6 4 6 4 5 5 3
Alexander SAMARIN 8 7 7 7 9 10 7 7 7
Michal BREZINA 7 8 9 9 7 9 8 8 8
Andrei LAZUKIN 9 10 8 10 8 8 9 10 9
Matteo RIZZO 10 9 10 8 10 7 10 9 10

 フリーのジャッジ毎の順位はこんな感じ。

女子と違って男子は、そんなに混戦ではなく、上位3人は誰が付けてもほとんど変わらず、という形。ネイサンチェン選手は全ジャッジ一位。羽生選手は全ジャッジ二位。ヴィンセントゾー選手は7人が3位で2人4位です。宇野選手は4位になりましたが、5位につけたジャッジが4人で最多、6位も二人、ということで、この4~6位のあたりは混戦で評価が分かれている形でした。

 

  J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Nathan CHEN 6 5 2 3 8 1 7 4 9
Jason BROWN 7 5 9 1 6 2 3 4 8
Yuzuru HANYU 8 2 3 5 4 1 7 6 9
Vincent ZHOU 9 6 8 4 2 5 1 3 7
Matteo RIZZO 9 3 1 4 2 5 6 8 7
Shoma UNO 6 5 8 1 9 4 2 7 3
Kevin AYMOZ 7 1 3 4 9 6 2 8 5
Michal BREZINA 4 3 5 8 2 1 6 9 7
Boyang JIN 6 4 3 8 2 1 5 9 7
Mikhail KOLYADA 6 2 3 4 9 1 5 8 7

今度はジャッジ間順位。フリーはJ9が大分厳しめですが、宇野選手には甘かったようですね。J5は甘い選手と厳しい選手で二分しています。J3もそんな感じです。J6は比較的甘いでしょうか。J9やJ6のように、割と統一的に全員に厳しいとか甘いというのは、最終的な成績にあまり影響しませんが、J3や5のように、選手によって評価が甘かったり厳しかったりするジャッジは、成績に影響しやすくなりそうです。

 

  

  J1-4 J2-6 J3-9 J4-7 J9-5 最小 最大
Nathan CHEN 322.68 336.52 319.93 314.32 321.49 314.32 336.52 22.20
Yuzuru HANYU 307.39 305.27 296.55 301.59 299.25 296.55 307.39 10.84
Vincent ZHOU 279.92 289.03 272.15 274.05 281.75 272.15 289.03 16.88
Shoma UNO 269.64 269.16 270.70 274.41 273.40 269.16 274.41 5.25
Boyang JIN 265.76 261.70 254.84 259.44 265.97 254.84 265.97 11.13
Mikhail KOLYADA 267.23 265.47 266.85 256.34 256.40 256.34 267.23 10.89
Matteo RIZZO 256.72 268.75 256.53 249.96 250.49 249.96 268.75 18.79
Michal BREZINA 252.88 249.68 252.47 249.50 254.75 249.50 254.75 5.25
Jason BROWN 257.78 250.40 246.84 259.91 250.97 246.84 259.91 13.07
Andrei LAZUKIN 244.09 254.41 247.73 244.86 254.38 244.09 254.41 10.32

男子も9人中5人はショートとフリーで同じジャッジが入っていますので、この5人については、ショートとフリーを合計した総合得点を、総合上位10選手について出してみました。

たかだか5人しかいないのに採点にはだいぶ差がありまして、ネイサンチェン選手は最高と最低で22.20も差が出ました。まあ、女子と比べて点数自体が高いですので、差は当然大きくなりやすいはなりやすいのですけど。J2-6は336.52というお化けスコアが出ていたんですね。J2-6の採点で見ると、ネイサンチェン選手と羽生結弦選手の間には、31.25ポイントの大差がついていた、という見立てになっています。

羽生選手は5人中3人は300点台としていますが、2人は300点を下回る採点になっています。公式スコアも300.97でぎりぎり300点というところでしたので当然と言えば当然なのですが、ジャッジの顔ぶれが少し違えば、それだけで300点に乗っていない可能性もあったわけです

 

  J1-4 J2-6 J3-9 J4-7 J9-5
Nathan CHEN 1 1 1 1 1
Yuzuru HANYU 2 2 2 2 2
Vincent ZHOU 3 3 3 4 3
Shoma UNO 4 4 4 3 4
Boyang JIN 6 7 7 6 5
Mikhail KOLYADA 5 6 5 7 6
Matteo RIZZO 8 5 6 8 10
Michal BREZINA 9 10 8 9 7
Jason BROWN 7 9 10 5 9
Andrei LAZUKIN 10 8 9 10 8

5人のつけた点数から順位を見ると、ネイサンチェン選手は全員一位、羽生結弦選手も全員二位で、まぎれる要素はありませんでした。ヴィンセントゾー選手と宇野選手のところは一人のジャッジは順位が逆転しています。こうしてみると、結果的には三強の戦い、ではなくて、二強の戦いでネイサンチェン圧勝! という見立てだったんだな、ということになるでしょうか。四位の宇野選手の下にも一本線が引かれていて、そこから下はジャッジ次第でまたそれぞれ順位が入れ替わるよ、という風に見えます。

 

こうしてみると、男子も、10点くらいはジャッジによって簡単に違ってくるんだな、というのが感じられます。でも、誰がどう見てもネイサンチェン選手は強かった。羽生結弦選手はそれに続いた。この二人は誰がどう見ても抜けていた、というのもわかりました。

 

採点競技の宿命なのでしょうが、きわどい勝負になってくると、最後はジャッジ運による、ということでしょうか。

見ている方はそれも含めて楽しめばいい、ということではあるのですが、場合によってはやりきれない気分になること、というのもあるのかもしれません

 

 

 

世界フィギュア19 女子シングル1

女子シングルはオリンピックチャンピオンのザギトワが優勝、日本勢は4位5位6位という、それはそれですごいような気がするんですけど、でも、「まけた」と最後につぶやく結果となりました

 

 

さて、採点表からいろいろ見ていきたいわけですが、今回は、ジャッジごとの採点、というものを見てみたいと思います

ジャッジにもいろいろあるのですが、今回はGOE(Grade of Execution:加点減点とPCS(演技構成点)を決めるジャッジの採点を見てみます。

GOEとPCSを決めるジャッジは同じジャッジです。人数は大会ごとに異なりますが、世界選手権レベルの大会では9人います。大陸選手権、グランプリシリーズあたりまでは9人です。チャレンジャーシリーズ格の大会になると7人なことが多いですし、国内のローカル大会、インターハイなどだと5人になります

回転不足やスピンステップのレベルの判定、減点の判定などは、別の審判が判定します

 

ジャッジはショートとフリーでだいぶ入れ替わりますが、同じ人がやることもあります。今回の女子シングルでは9人中5人がショートもフリーも担当して入れ後の4人は入れ変わった、という形でした。

GOEとPCSを決めるジャッジは、技の判定はしませんが、判定された技に対しての加点減点を決め、さらに演技構成点を決めることができるので、実質的に、このジャッジはこの選手に対して何点という点数をつけた、というのを計算することができます。今大会の上位10選手に対して、ショート、フリー、それぞれで、各ジャッジが何点つけた、というのを見てみました。

  J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Alina ZAGITOVA 83.54 82.79 80.73 83.94 81.09 82.71 81.62 83.23 78.69
Kaori SAKAMOTO 75.38 77.63 78.10 74.70 77.76 80.03 78.19 74.19 74.45
Elizabet TURSYNBAEVA 78.30 77.94 71.95 74.81 76.98 76.20 76.52 74.18 74.98
Evgenia MEDVEDEVA 73.80 75.21 72.84 76.87 74.86 75.68 74.40 72.57 72.58
Eunsoo LIM 72.81 72.74 70.54 71.53 74.43 75.36 72.75 72.69 73.27
Mariah BELL 69.33 72.94 71.02 72.50 71.44 71.66 71.46 69.71 71.22
Rika KIHIRA 70.33 76.06 70.46 69.21 70.29 71.47 72.08 71.34 68.56
Satoko MIYAHARA 66.48 72.72 71.94 67.49 69.35 73.94 70.98 70.74 71.45
Sofia SAMODUROVA 72.19 70.70 70.77 73.21 69.31 65.64 67.30 73.19 69.32
Bradie TENNELL 70.91 69.03 71.84 70.52 67.72 69.98 68.04 70.02 66.10

まずはショートプログラム
こうしてみるとジャッジごとのばらつきがかなり大きいのが分かります。ショート1位のザギトワ選手は、公式スコアは82.08でしたが、J9は78.69と80点を下回るスコアとしてみています。2位の坂本選手はJ6は80.03と80点に乗っていたとみていますし、J3ザギトワ選手と2.63ポイント差であり差はそれほど大きくはない、という見立てでした。まずはショートプログラム。平均は9人の平均、公式は最終的な公式スコアです

また、紀平選手、宮原選手はジャッジ毎の点差が激しくなっています。紀平選手は最大で76.06をつけたジャッジがいる一方で、68.56と60点台のジャッジもいます。宮原選手も最大が73.94に対して最低は66.48。この二人は最大と最小で7.5程度も差があります。

  J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9 平均
Alina ZAGITOVA 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
Kaori SAKAMOTO 3 3 2 4 2 2 2 2 3 2
Elizabet TURSYNBAEVA 2 2 4 3 3 3 3 3 2 3
Evgenia MEDVEDEVA 4 5 3 2 4 4 4 6 5 4
Eunsoo LIM 5 7 9 7 5 5 5 5 4 5
Mariah BELL 9 6 7 6 6 7 7 10 7 6
Rika KIHIRA 8 4 10 9 7 8 6 7 9 7
Satoko MIYAHARA 10 8 5 10 8 6 8 8 6 8
Sofia SAMODUROVA 6 9 8 5 9 10 10 4 8 9
Bradie TENNELL 7 10 6 8 10 9 9 9 10 10

ジャッジ毎の順位を見たのが上記の表です。これは上位10人だけで見た順位なのでこうなっていますが、11位以下の選手も比較に入れるとさらに下の順位になる選手も出てきます。

度のジャッジもザギトワ選手1位というのは一致していますが、2位に坂本選手を持ってきたのは5人であり、3人はトゥルシンバエワ、1人はメドベージェワが2位と見ていました。紀平選手は一番良く見れば4位である一方、悪く見ると10位扱いです。紀平選手を10位と見た同じジャッジは宮原選手を5位と最も押していますが、複数のジャッジから宮原選手は10位と見られています。

9人のジャッジの平均スコアは最終的な順位と一致していますので、ジャッジ毎の採点の偏り、というのは最終的には解消された形にはなっているのですが、ことほど左様に、ジャッジ毎の点数というのはバラバラなわけです

  J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Alina ZAGITOVA 149.93 156.55 161.32 153.57 162.25 155.40 155.46 152.26 153.71
Rika KIHIRA 145.83 156.19 156.78 151.75 151.54 152.03 151.55 150.23 157.23
Evgenia MEDVEDEVA 142.25 151.76 152.90 153.85 145.56 150.07 147.67 147.07 154.40
Elizabet TURSYNBAEVA 143.86 157.25 144.65 145.09 153.47 149.42 147.01 146.48 152.52
Kaori SAKAMOTO 146.36 148.27 147.46 154.02 141.32 146.02 144.30 142.10 144.83
Satoko MIYAHARA 145.79 150.50 145.37 154.97 142.26 142.26 141.07 142.28 146.25
Bradie TENNELL 138.27 141.88 146.62 145.94 148.00 148.32 140.02 145.27 142.52
Sofia SAMODUROVA 132.57 141.39 136.01 140.03 143.49 133.62 136.53 137.04 141.03
Mariah BELL 132.15 138.94 136.00 137.13 126.96 136.94 139.60 136.65 147.70
Eunsoo LIM 128.82 132.56 135.00 132.49 130.35 133.26 129.54 135.35 135.03

 次の表は、フリーの上位10人のジャッジ毎のスコアを見たものです。実際には、転倒の減点1は、GOEやPCSをつけるジャッジとは別のジャッジが付けているので、上記の採点のJ1からJ9の中には入ってこない部分なのですが、話がややこしくなるので、J1からJ9に記している点数には減点分も加味しています。

フリーでもザギトワ選手が1位で155.42というスコアが出ていましたが、ジャッジ9人の採点は割れていて、最も高い点をつけたJ3は161.32という160点を超える高スコアをつけました。一方、J1は149.93と150点に届いていない、という見立てです。公式スコアで150点を超えたのは2位の紀平選手までですが、ジャッジごとの採点を見ると、6位の宮原選手までは、150点以上の点数である、と見なしたジャッジが存在しています。

ジャッジ毎の点差が極めて大きく出たのがフリー9位のマライアベル選手。最高点をつけたのはJ9で147.70ありますが、最低点のJ5では126.96しかなく、その差は20.74という極めて大きなものです。逆に10位のイムウンス選手は、最大と最低で6.53点差と、それほど大きな差が出ませんでした。この二人以外は10~14点くらいの差がジャッジ毎に出ています。おおよそ全体の点数の1割弱のぶれがジャッジ毎に出ているわけです

 

  J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9 平均
Alina ZAGITOVA 1 2 1 4 1 1 1 1 3 1
Rika KIHIRA 3 3 2 5 3 2 2 2 1 2
Evgenia MEDVEDEVA 6 4 3 3 5 3 3 3 2 3
Elizabet TURSYNBAEVA 5 1 7 7 2 4 4 4 4 4
Kaori SAKAMOTO 2 6 4 2 8 6 5 7 7 5
Satoko MIYAHARA 4 5 6 1 7 7 6 6 6 6
Bradie TENNELL 7 7 5 6 4 5 7 5 8 7
Sofia SAMODUROVA 8 8 8 8 6 9 9 8 9 8
Mariah BELL 9 9 9 9 10 8 8 9 5 9
Eunsoo LIM 10 10 10 10 9 10 10 10 10 10

ジャッジ毎に着けた点数の順位を出すとこんな感じ。ザギトワ選手を1位としたのは6人です。残りは紀平選手やトゥルシンバエワ選手に着けたりしています。一番面白いのはJ4 一位は宮原知子、二位坂本花織、三位メドベージェワ、四位ザギトワ、という並びです。このJ4が日本人だったりしたら物議をかもすところですが、実際にはスロベニア人です。まあ、日本人選手が特別好き、というわけではなく、坂本選手のPCSに76.80相当の点数、9.75が2つに9.50を3つというお化けスコアをつけた一方で、紀平選手のPCSは68.00でジャッジ9人中8番目の点数だったりします。

 

 

さて、今回、ショートフリー各9人のジャッジのうち、5人はどちらも判定していた、と述べました。この5人のつけた合計スコアというのを見てみます。

 

  J1-5 J2-4 J5-2 J7-7 J9-1 最小 最大
Alina ZAGITOVA 245.79 236.36 237.64 237.08 228.62 228.62 245.79 17.17
Elizabet TURSYNBAEVA 231.77 223.03 234.23 223.53 218.84 218.84 234.23 15.39
Evgenia MEDVEDEVA 219.36 229.06 226.62 222.07 214.83 214.83 229.06 14.23
Rika KIHIRA 220.87 226.81 225.48 222.63 213.39 213.39 226.81 13.42
Kaori SAKAMOTO 216.70 231.65 226.03 222.49 220.81 216.70 231.65 14.95
Satoko MIYAHARA 208.74 227.69 219.85 212.05 217.24 208.74 227.69 18.95
Bradie TENNELL 218.91 214.97 209.60 208.06 204.37 204.37 218.91 14.54
Sofia SAMODUROVA 215.68 210.73 210.70 203.83 201.89 201.89 215.68 13.79
Mariah BELL 196.29 210.07 210.38 211.06 203.37 196.29 211.06 14.77
Eunsoo LIM 202.16 204.23 205.99 201.29 201.09 201.09 205.99 4.90

ジャッジナンバーのJ1-5というのは、最初の数字がショートプログラムのジャッジ番号、あとの数字はフリーのジャッジ番号です

こうしてみると5人のジャッジのスコアのばらばらさが目立ちます。優勝したザギトワ選手は最高点をつけたJ1-5は240点をはるかに上回る245.79と見なしていますが、最低点をつけたJ9-1では228.62で230点を下回ります。たった5人しかいないジャッジの間で17.17ポイントも差が出ました。点差最大は宮原選手で18.95もあります。繰り返しますが、たった5人の中でこれだけ大きな差が出ているわけです

 

 

  J1-5 J2-4 J5-2 J7-7 J9-1
Alina ZAGITOVA 1 1 1 1 1
Elizabet TURSYNBAEVA 2 6 2 2 3
Evgenia MEDVEDEVA 4 3 3 5 5
Rika KIHIRA 3 5 5 3 6
Kaori SAKAMOTO 6 2 4 4 2
Satoko MIYAHARA 8 4 6 6 4
Bradie TENNELL 5 7 9 8 7
Sofia SAMODUROVA 7 8 7 9 9
Mariah BELL 10 9 8 7 8
Eunsoo LIM 9 10 10 10 10

5人のつけた点数から順位を見てみると、さすがにザギトワ選手が1位になっていない採点はありませんでした。しかしながら2位以下はかなり混沌としていて、実際の2位のトゥルシンバエワ選手が2位になっている採点は5人中3人だけです。実際の順位が5位だった坂本選手に5人中2人のジャッジが2位の点数をつけています。紀平選手も3位でつけたジャッジが2人。実際の順位の2位から5位は点数的にはかなりの僅差だったわけですが、こうしてみるとジャッジ毎の見立てもかなり割れていたわけです。また、宮原選手はどのジャッジも3位以内に入ってくる点数はつけていませんが、紀平選手より上、とつけたジャッジは二人います。

 

ジャッジは9人いて、各項目で最高点最低点は切られて計算されますので、一人のジャッジの影響により点数が全然違う、ということはありません。実際今大会でも、ジャッジ9人の平均点順位と実際の順位は一致しました。ただ、世に多数いる中でどのジャッジがこの試合で席に着くか、というのは影響してくると言わざるを得ないでしょう。たかだか5人の中で点数が15点前後、各選手、幅が出るわけですから、違うジャッジだったら数点の差は逆転してしまうわけです

 

今回、2位から5位は極めて僅差でした。日本人選手が表彰台に乗れなかった敗因は? トリプルアクセルが決まらなかったから? トリプルフリップが抜けてしまったから? トリプルルッツの不安定さと全日本に続いてトリプルフリップからの三連続がしっかり決まらなかったから? 選手がそう考えて反省して改善して次の試合に臨もうとするのはそれでいいと思うのですが、実際には、もう、今回のジャッジがこういう人選だったから、という運によるもの、という部分がかなり大きな要素を占める差でしかない、という風に、数字上は見えます。

 

 

 

 

 

 

世界フィギュア19プレビュー4

世界フィギュアのプレビューも4話目になりましたが、これが最終です

プレビュー2で女子シングルに関してみたのと同じように、ここでは男子シングルで、今シーズンのプロところなんかを見ながら考えていきます

 

まずは、羽生結弦選手から.

例によって、左から三列目は要素の順番、一番右はジャッジのつけた+5~-5の平均値です

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic SP 6 StSq4   3.90   1.64 5.54 4.143
Autumn Classic FS 2 4T   9.50   3.99 13.49 4.286
GP Helsinki SP 1 4S   9.70   4.30 14.00 4.333
GP Helsinki SP 6 StSq3   3.30   1.51 4.81 4.444
GP Helsinki SP 7 CCoSp4   3.50   1.60 5.10 4.556
Rostelecom Cup SP 1 4S   9.70   4.30 14.00 4.333
Rostelecom Cup SP 2 3A   8.00   3.31 11.31 4.111
Rostelecom Cup SP 6 StSq4   3.90   1.67 5.57 4.222
Rostelecom Cup SP 7 CCoSp4   3.50   1.50 5.00 4.333
Rostelecom Cup FS 2 4T   9.50   4.34 13.84 4.444

羽生選手は今シーズン3試合しか出ていないのですが、GOEが平均4.0を超えた要素が10個もありました。ジャンプで5つ、スピンで2つ、ステップで3つ

出場は3試合だけですので、要素数は57 GOEが+4以上の要素率が17.5%もある、というのはとてつもないことかと思います。

特にジャンプでGOE+4以上というのは難しく、それも4回転で出しているのですが、今シーズン4Tを含む要素でGOE+4以上を出したのは全選手の中で羽生結弦選手の2回だけ、4Sを含む要素でGOE+4以上を出したのも、やはり全選手の中で羽生結弦選手の2回だけです。もっと言ってしまえば、4回転を含む要素でGOEが+4を超えたのは、羽生結弦選手の4回だけになります。

ジャンプだけが得意な選手、ということであれば、それもまだわかるのですが、スピンでもきっちり点を取り、さらにステップでも3回GOE+4を超えるスコアを出しています。スピンは3試合で6回ですから、確率5割でGOEが+4以上になるわけです。そのうえでPCSまで高いわけですから、もう非の打ちようがありません

強いて言えば、今シーズン、まだ万全のフリー演技というのは見ることができていないな、というのはあるでしょうか。上記のGOEが+4を超える要素というのはほとんどがショートプログラムのものになっています。完成したフリー演技が見られたら、もう誰も太刀打ちできないところまで行ってしまうでしょうか

 

 

次は宇野選手。宇野選手は、ちょっと変なデータがありまして。宇野選手は今シーズン、3A以上の難易度のジャンプを含まないジャンプ要素、つまり3回転以下のジャンプだけで構成される要素がほとんどありません。5試合で7回しかありませんでした。ところが、この、3回転以下のジャンプのみで構成される要素、つまり、宇野選手のジャンプ要素の中で最も難易度が低そうなこの要素の成功率が低いんです

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy FS 10 3S+3T   9.35 x 0.34 9.69 0.857
Skate Canada FS 10 3S+3T   9.35 x -2.15 7.20 -4.889
NHK Trophy FS 10 3S   4.73 x -1.17 3.56 -2.778
Grand Prix Final FS 10 3S+3T   9.35 x -0.31 9.04 -0.667
Four Continents  SP 2 3S+3T   8.50   -0.86 7.64 -1.889
Four Continents  FS 3 3Lo   4.90   0.91 5.81 1.889
Four Continents FS 10 3S+3T   9.35 x 0.49 9.84 1.111

通常の試合ではフリーで一本だけ、ケガで悩まされた四大陸選手権だけショートで1本、フリーで2本、そういった構成が入ってきているのですが、これが七分の四で失敗ジャンプになっています。成功した場合でも、加点が小さい。

あれだけ難しいジャンプをバンバン決めておいて、なぜこれが飛べない・・・、という感じではあるのですが、こういうジャンプはあまり練習をしていない、というのが一つ理由としてあるんでしょうかね。また、最後のジャンプ要素、というのは体力的に厳しい部分もあるのかもしれません

 

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy FS 9 3A+1Eu+3F 15.18 x -0.16 15.02 -0.143
Skate Canada FS 9 3A+1Eu+3F 15.18 x -2.74 12.44 -3.444
NHK Trophy FS 9 3A+1Eu+3F 15.18 x 2.17 17.35 2.667
Grand Prix Final FS 9 3A+1Eu+3F 15.18 x -1.26 13.92 -1.667
Four Continents FS 9 3A+1Eu+3F 15.18 x -1.03 14.15 -1.000

また、宇野選手のフリーの大きな見せ場として、3A-1Eu-3Fという三連続のコンビネーション、というのが以前からよく見られました。これの成功率も今シーズン低くて五分の一しかありません。これがきれいに決まると非常に印象がいいのですが、今シーズンあまりよくない。

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy FS 1 4S   9.70   -2.13 7.57 -2.143
Skate Canada FS 1 4S< 7.28   -0.10 7.18 -0.222
NHK Trophy FS 1 4S< 7.28   -0.63 6.65 -0.778
Grand Prix Final FS 1 4S<< <<  4.30   -2.15 2.15 -5.000

さらに、四回転の中で確か一番最後に取り入れたジャンプだったと思うので、あまり得意ではない種類なのかもしれないですが、四回転サルコウの成功率が今シーズンの国際大会ではゼロです。

なんだかひどいところばかり取り上げてしまっている感じですが、宇野選手はこんな状態の中で、今シーズン5試合、最低点でも275点を出しています。今シーズンの最低スコアが最も高いのが宇野選手です。この宇野選手が、すべてを揃えたときにどんな演技になるのか、どんな点数が出るのか、楽しみです

 

 

次はネイサンチェン選手。ネイサンチェン選手は4回転を何でも飛ぶというイメージですが、今シーズンの国際試合3試合で飛んだ4回転は3種類だけです。ルッツフリップにトーループ。3試合で四回転が入る要素は15回あり成功は9回と6割ありました。

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Skate America SP 2 4F< ! 8.25   -3.07 5.18 -3.667
Skate America FS 2 4Lz   11.50   0.49 11.99 0.222
Skate America FS 7 4T+3T   15.07 x 1.22 16.29 1.333
Skate America FS 8 4T+2T+2Lo   13.75 x 2.31 16.06 2.222
France de Patinage SP 2 4F< ! 8.25   -4.13 4.12 -5.000
France de Patinage SP 4 4T+3T   15.07 x 2.04 17.11 2.111
France de Patinage FS 1 4F ! 11.00   1.89 12.89 1.556
France de Patinage FS 2 4T   9.50   3.53 13.03 3.778
France de Patinage FS 7 4T+3T< 13.92 x -0.54 13.38 -0.444
Grand Prix Final SP 2 4F   11.00   3.77 14.77 3.444
Grand Prix Final SP 4 4T+COMBO 10.45 x -4.75 5.70 -5.000
Grand Prix Final FS 1 4F   11.00   4.40 15.40 3.889
Grand Prix Final FS 2 4Lz< 8.63   -4.32 4.31 -5.000
Grand Prix Final FS 3 4T   9.50   -2.44 7.06 -2.667
Grand Prix Final FS 7 4T+3T   15.07 x 3.26 18.33 3.333

15回のうち、ルッツが2回、フリップが5回、あとはトーループで8回です。

ルッツの成功率は二分の一、フリップは五分の三ですがエッジ不正の!が付きながらギリギリ加点、というのが一つ含まれるので本当の成功は二回です。トーループは八分の六成功しています。グランプリファイナルは優勝こそしましたが、ショートで大きなミスはありましたしフリーも万全の演技ではありませんでした。全米選手権ではお化けスコアが出てまして、まあ、演技としていいものだったのは確かではあるものの、さすがに国内参考記録感はあります。

世界選手権、というのはすでに持っているタイトルであるという現実はありますが、羽生選手に勝って取ったものではない、という部分もある。そういった条件下でどこまでこの試合へのモチベーションがあるか?合わせてきているでしょうか?

 

 

ベストスコア4番手はロシアのミヒャルコリアダ選手。波の激しい選手なのですが、それはつまりいい演技をした時の点はすごく出る、ということではあります

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Ondrej Nepela Trophy SP 4 3A   8.80 x 0.64 9.44 0.857
Ondrej Nepela Trophy FS 3 3A   8.00   3.20 11.20 4.143
Finlandia Trophy SP 4 3A   8.80 x 0.67 9.47 0.750
Finlandia Trophy FS 3 3A   8.00   3.60 11.60 4.500
GP Helsinki SP 4 3A   8.80 x 3.43 12.23 4.222
GP Helsinki FS 6 3A   8.00   1.14 9.14 1.556
GOLDEN SPIN SP 4 3A   8.80 x 2.56 11.36 3.143
Europe Championships SP 4 3A   8.80 x 1.37 10.17 1.667
Europe Championships FS 3 3A   8.00   -4.00 4.00 -5.000

コリアダ選手のうまく決まった3Aは素晴らしいものがあります。フィンランディア杯のフリーで飛んだ単独のトリプルアクセルでついたGOEは+4.5 これは、トリプルアクセルでついたGOEとしては全選手中最高です。またGOEで+4以上をトリプルアクセルで3回出しているのはコリヤダ選手のみです。

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Ondrej Nepela Trophy SP 1 4T+3T   13.70   3.42 17.12 3.571
Ondrej Nepela Trophy FS 1 4T+3T   13.70   2.85 16.55 3.000
Ondrej Nepela Trophy FS 7 4T   10.45 x -4.56 5.89 -4.714
Finlandia Trophy SP 1 4T   9.50   -3.96 5.54 -4.125
Finlandia Trophy FS 1 4T   9.50   0.32 9.82 0.625
GP Helsinki SP 1 4T   9.50   -1.76 7.74 -1.889
GP Helsinki FS 2 4T   9.50   -4.21 5.29 -4.333
Rostelecom Cup FS 2 4T+3T   13.70   2.99 16.69 3.000
GOLDEN SPIN SP 1 4T+2T   10.80   2.85 13.65 3.000
GOLDEN SPIN FS 2 4T+3T   13.70   3.23 16.93 3.429
Europe Championships SP 1 4T+3T   13.70   2.99 16.69 3.000
Europe Championships FS 2 4T   9.50   3.12 12.62 3.222

もう一つ、4T-3Tのコンビネーションジャンプを飛ぶ、という選手は今やかなりの数いますが、そのなかで、オンドレイネペラ杯のショートプログラムコリヤダ選手が出したGOE+3.571というのは、4回転を含むコンビネーションジャンプについたGOEとして全選手中最高です。

決まればいい点出るんです。でも、なかなか決まらない。それも、大きな大会では今一つ決まらない。今大会はどうでしょう?

 

 

ベストスコア5番目はISU非公認ですがユニバーシアードで270点台をたたき出したマテオリッツォ選手

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Lombardia Trophy FS 1 4T   9.50   -4.75 4.75 -5.000
Finlandia Trophy FS 1 4T<< <<  4.20   -2.10 2.10 -5.000
Skate America FS 1 4T< 7.13   -2.34 4.79 -3.222
NHK Trophy FS 1 4T< 7.13   -3.57 3.56 -5.000
Europe Championships FS 1 4T   9.50   3.26 12.76 3.222
UNIVERSIADE SP 1 4T   9.50   2.28 11.78 2.429
UNIVERSIADE FS 1 4T   9.50   2.85 12.35 3.000

リッツォ選手は、まだ四回転はトーループを一種類だけです。それも、シーズン前半はフリーの冒頭に一本入れるだけでかつ成功はなし。それがシーズン後半になって四大陸選手権でようやく成功。さらにユニバーシアードではショートフリーと一本づつ入れてどちらも成功しました。これがシーズン後半になって上位に顔を出すようになってきた原動力です。世界選手権でも上位に入ってくるには、ショートフリーどちらも4回転を決めること、が最低必要条件になってくるかと思われます

 

Event   Name Nation Elements  BaseValue GOE Scores
Finlandia Trophy FS Mikhail KOLYADA RUS TES 59.96 15.14 75.10
Skate America FS Nathan CHEN USA TES 84.01 15.04 99.05
Skate Canada FS Shoma UNO JPN TES 87.91 13.83 101.74
Skate Canada FS Keegan MESSING CAN TES 69.04 14.86 83.90
NHK Trophy FS Shoma UNO JPN TES 79.74 14.44 94.18
France de Patinage FS Jason BROWN USA TES 56.34 13.94 70.28
GOLDEN SPIN FS Jason BROWN USA TES 64.14 14.38 78.52
Four Continents FS Shoma UNO JPN TES 86.63 17.85 104.48
Four Continents  FS Keegan MESSING CAN TES 75.43 15.66 91.09
UNIVERSIADE FS Matteo RIZZO ITA TES 76.20 18.86 95.06

今シーズンのフリー演技で加点の合計が高い方から10件を今大会エントリー選手から上げたものが上記の表ですが、マテオリッツォ選手のユニバーシアードの演技が加点最大でした。まあ、ちょっと、採点基準の甘さ、というのがないとは言いませんが、それだけの演技ができる選手ではあるので、もう一段階大きな舞台で、再びその演技をしてもらえたらなと思います。

 

 

 

ボーヤンジン選手は四大陸選手権で今シーズンのベストスコアを出しています

ここでは、四大陸選手権のジャンプ要素を全て並べました

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Four Continents SP 1 4Lz   11.50   -2.46 9.04 -2.111
Four Continents SP 2 4T+2T   10.80   1.49 12.29 1.556
Four Continents SP 4 3A   8.80 x 2.29 11.09 2.889
Four Continents FS 1 4Lz   11.50   -2.14 9.36 -1.889
Four Continents FS 2 4T+2T   10.80   0.81 11.61 0.889
Four Continents FS 3 3A+1Eu+3S   12.80   1.60 14.40 1.889
Four Continents FS 6 4T   9.50   1.76 11.26 1.889
Four Continents FS 7 3A   8.80 x 2.40 11.20 3.111
Four Continents FS 8 3Lz+3T   11.11 x 0.67 11.78 1.111
Four Continents FS 9 3F   5.83 x 0.76 6.59 1.444

ジャンプ要素のうち最も簡単という扱いなのはフリーの最後に入るトリプルフリップですが、それ以外は3回転-3回転、あるいはトリプルアクセル以上の難度となっています。ボーヤンジン選手は4回転の種類はここにあるルッツとトーループだけではなくサルコウも本来飛べます。ただ、今シーズンはグランプリヘルシンキで1本跳んで転倒したのみで、あとは構成に入れていません。これを3Fの代わりに入れるようなことをしてきた場合、上記のリストでいえば4Lzのミスを小さく抑えたらジャンプ要素がすべて10点以上のスコアに出来る、という計算になります。4回転を3種類入れれば原理的にはボーヤンジン選手だけでなく他の選手も当然可能です。

フリーのすべてのジャンプ要素で10点以上、というのは平昌オリンピックでネイサンチェン選手が成し遂げていますが、ショートフリーすべてにおいて10点以上、というのはまだいないはずです。

 

 

ヴィンセントゾー選手も四大陸選手権でベストスコアを出しました

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Four Continents SP 1 4Lz+3T   15.70   3.78 19.48 3.222
Four Continents SP 2 4S   9.70   1.94 11.64 2.000
Four Continents SP 4 3A   8.80 x 1.71 10.51 2.111
Four Continents FS 1 4Lz+3T< 14.65   0.49 15.14 0.444
Four Continents FS 2 4S< 7.28   -0.52 6.76 -0.778
Four Continents FS 3 3F   5.30   1.36 6.66 2.556
Four Continents FS 4 4T< 7.13   -0.51 6.62 -0.778
Four Continents FS 6 3A+2T   10.23 x -1.37 8.86 -1.778
Four Continents FS 7 3A   8.80 x 2.06 10.86 2.556
Four Continents FS 10 3Lz+1Eu+3F   12.87 x 0.34 13.21 0.444

ヴィンセントゾー選手もボーヤンジン選手と同じで、ショートフリー合わせて最も簡単とされるジャンプ要素が3Fであり、他のジャンプは3Lzからのコンビネーションか3A以上となっています。ゾー選手は四大陸選手権の時点で4回転は3種類組み込んでいます。フリーで4回転をどれか一つ複数回にして3Fをなくすか、コンビネーションを4Lz-3Tと入れずに3F-3Tにでもすれば、理論的にはショートフリー、すべてのジャンプ要素で10点以上、ということを行えるチャンスがあります。

 

 

270点以下のベストスコアの選手の中から一人、ジェイソンブラウン選手を取り上げます。

ジェイソンブラウン選手は今シーズン5試合合計20の要素でGOE+4.0以上の評価を受けました。これは全選手中最多ですし、1試合当たり4つもGOE+4.0以上の要素がある、というのも最多です。

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic SP 1 3F   5.30   2.33 7.63 4.286
Autumn Classic SP 6 CCSp4   3.20   1.41 4.61 4.286
Skate Canada SP 1 3F   5.30   2.12 7.42 4.000
Skate Canada SP 6 CCSp4   3.20   1.37 4.57 4.333
France de Patinage SP 1 3F   5.30   2.50 7.80 4.556
France de Patinage SP 6 CCSp4   3.20   1.37 4.57 4.333
France de Patinage SP 7 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
France de Patinage FS 4 FCSp4   3.20   1.33 4.53 4.111
France de Patinage FS 5 ChSq1   3.00   2.36 5.36 4.667
GOLDEN SPIN SP 1 3F   5.30   2.12 7.42 4.000
GOLDEN SPIN SP 6 CCSp4   3.20   1.54 4.74 4.714
GOLDEN SPIN SP 7 StSq4   3.90   1.64 5.54 4.143
GOLDEN SPIN FS 4 FCSp4   3.20   1.34 4.54 4.286
GOLDEN SPIN FS 5 ChSq1   3.00   2.20 5.20 4.429
GOLDEN SPIN FS 11 StSq3   3.30   1.39 4.69 4.286
GOLDEN SPIN FS 12 CCoSp4   3.50   1.54 5.04 4.429
Four Continents Championships SP 1 3F   5.30   2.12 7.42 4.000
Four Continents Championships SP 6 CCSp4   3.20   1.42 4.62 4.444
Four Continents Championships SP 7 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
Four Continents Championships FS 5 ChSq1   3.00   2.21 5.21 4.222

ジャンプが苦手、という印象があるのですが、意外にもショートプログラム冒頭の3Fでは5試合すべてで+4.0以上の評価を受けています。フランス杯で得た3Fの平均GOE+4.556というのは、これまでの全選手のジャンプ要素の中で最高評価となっています

同じフランス杯ではコレオシークエンスでGOE+4.667を得ていますが、これも全選手のコレオシークエンスの中でこれまでの最高評価です。全選手のコレオシークエンスの中で2番目の評価は、ゴールデンスピンでのジェイソンブラウン選手の+4.429ですし、コレオシークエンスのジェイソンブラウン選手の評価は極めて高いものになっています

さらに、ステップシークエンスで4回、GOE+4以上を出していて、その中でもフランス杯のショートプログラムではレベル4でGOE平均+4.333を叩き出しました。これは、レベル4のステップとしてはネイサンチェン選手のグランプリファイナルのショートプログラムのスコアと並んで、全選手中最高値です

また、スピンでも3種類すべてで1度以上はGOE+4以上を出しています。

これだけあれもこれもそろっているのに、なかなか上位に出てこられなくなってしまっているジェイソンブラウン選手。足りないのはあとは高難度ジャンプだけです。四回転が、四回転サルコウがきまってくれれば、と言いたいところなのですが、実はさらにその一つ手前、トリプルアクセルの成功率も今一つ高くなく、四大陸選手権でも3本のうち2本は回転不足でした。ブライアンオーサー先生の下で、なんとか高難度ジャンプを身に着けてもらって、上位に顔をのぞかせてもらえたらと思います

 

 

以上、今シーズンの上位選手のプロトコルから見た、今大会の見どころでした