世界フィギュア19 男子シングル2

今回は男子シングルの2回目として、各選手がどんな傾向の点の取り方をしたのかというのを見ていきます。女子シングル2と同じ流れです

 

ショートプログラム

 

Jump

基礎点

Jump

GOE

Spin

基礎点

Spin

GOE

Step

基礎点

Step

GOE

PCS 減点
Nathan CHEN 34.57 7.68 9.70 3.29 3.90 1.84 46.42 0.00
Jason BROWN 24.41 7.22 9.70 3.76 3.90 1.67 46.15 0.00
Yuzuru HANYU 23.07 6.14 9.70 3.73 3.90 1.62 46.71 0.00
Vincent ZHOU 31.78 3.99 9.70 1.84 3.90 1.28 41.68 0.00
Matteo RIZZO 28.61 6.96 9.70 2.13 3.90 1.11 40.96 0.00
Shoma UNO 27.85 1.67 9.30 3.34 3.90 1.45 44.89 1.00
Kevin AYMOZ 28.40 2.92 9.70 1.83 3.90 1.34 40.15 0.00
Michal BREZINA 25.10 2.97 9.70 2.44 3.90 1.28 41.57 0.00
Boyang JIN 31.10 -1.61 9.70 2.08 3.30 0.80 39.89 1.00
Mikhail KOLYADA 20.20 2.77 9.70 3.19 3.90 1.39 43.08 0.00

まず目につくのは、羽生選手のジャンプの基礎点の低さ。四回転ジャンプが一つ抜けて零点になる、というのはこういうことなわけです。

逆に、ルッツまで含めてジャンプをすべて決めるとネイサンチェンの基礎点になります。その差11.5 これがもうあまりにも大きすぎました。

そして、宇野選手の回転不足×転倒に、3T→2T というのはGOEまで考えると、四回転サルコウが一つ消えるよりさらに大きな痛手になっています。

宇野選手はもう一つ問題があって、上位10選手中、ただ一人、スピンのレベル取りこぼしがありました。

ジェイソンブラウン選手はスピンの加点、ステップの加点で最高点です。さらにジャンプも基礎点が低いにもかかわらず加点がネイサンチェンに次ぐ二番目。ショートプログラムの完成度の高さは驚異的でした

 

 

  Jump Spin Step PCS 減点
Nathan CHEN 42.25 12.99 5.74 46.42 0.00
Jason BROWN 31.63 13.46 5.57 46.15 0.00
Yuzuru HANYU 29.21 13.43 5.52 46.71 0.00
Vincent ZHOU 35.77 11.54 5.18 41.68 0.00
Matteo RIZZO 35.57 11.83 5.01 40.96 0.00
Shoma UNO 29.52 12.64 5.35 44.89 1.00
Kevin AYMOZ 31.32 11.53 5.24 40.15 0.00
Michal BREZINA 28.07 12.14 5.18 41.57 0.00
Boyang JIN 29.49 11.78 4.10 39.89 1.00
Mikhail KOLYADA 22.97 12.89 5.29 43.08 0.00

基礎点とGOEを合わせるとこうなります

ショートプログラムの得点としては、ネイサンチェン選手は突出していましたが、ジャンプ以外の得点はそうでもないことが見て取れます。ショートの点差はとにかくジャンプの点差でした。ただ、2番手以下の争いの中では、ジャンプで点が取れなかった羽生選手が、スピンステップPCS、特にPCSトップなことに救われて3位に入ってきている、という姿も見えます。羽生選手のスピンステップPCSを考えると、ジャンプは難易度をやや下げても100点までは楽に届くのですが、そういう計算をする選手、ではないですね。

 

 

フリープログラム

 

Jump

基礎点

Jump

GOE

Spin

基礎点

Spin

GOE

Step

基礎点

Step

GOE

PCS 減点
Nathan CHEN 77.29 18.96 10.20 4.08 6.90 3.81 94.78 0.00
Yuzuru HANYU 72.11 14.61 10.00 3.71 6.30 3.53 95.84 0.00
Vincent ZHOU 68.28 10.16 9.70 2.55 6.30 2.72 87.28 0.00
Shoma UNO 65.01 0.62 10.20 3.74 6.90 3.43 89.02 0.00
Boyang JIN 67.97 7.00 9.70 2.23 6.30 2.61 82.64 0.00
Mikhail KOLYADA 58.48 8.79 9.20 3.33 6.30 2.77 89.34 0.00
Alexander SAMARIN 65.27 3.06 8.90 2.06 6.30 2.06 81.30 1.00
Michal BREZINA 49.77 8.90 9.13 2.68 6.90 3.60 87.34 1.00
Andrei LAZUKIN 59.12 7.09 9.70 1.71 6.30 2.21 78.56 0.00
Matteo RIZZO 60.33 2.25 9.20 2.17 6.90 2.46 81.98 1.00

続いてフリー。

フリーではすべてにわたってネイサンチェン選手の強さが目立ちました。

ジャンプの基礎点、GOE、スピンの基礎点GOE、ステップの基礎点GOEとすべてトップです。かろうじてPCSだけは羽生選手が上を行っていますが、1点程度の差で2番目です。

羽生選手はジャンプはある程度仕方ないにしても、スピンステップでネイサンチェン選手に後れを取った、というのは残念な結果でした。この辺は、ケガで滑り込みが出来ていなかったことに由来する部分があるようにも感じます。やっぱり、来年の枠が二つになってでも、出場権与えずに、強制的に休ませた方が選手寿命考えるとよかったんじゃ・・・、という気がしたりしなかったり。

宇野選手はジャンプのGOEが上位選手中最低の数値です。今大会、ジャンプの精度が悪すぎました。勝ちたい、と言い始めて最初の大会で勝てるほど世の中甘くはなかった、ということでしょうか。

ショートで出遅れたコリヤダ選手がフリーで挽回してきましたが、採点を見ると、ジャンプはやっぱり抜けちゃって稼げていない、という姿が見えます。ジャンプ基礎点が上位10選手中9番目。PCSが宇野選手より上に行って3位なあたりに救われて、6位にまで入ってきましたが、ジャンプの構成が今一つだったでしょうか。ラズキン選手もジャンプの基礎点が低め。二人とも4回転2本入っているにもかかわらず、こうなってしまうのは、コンビネーションジャンプの入れ方が今一つな構成なために見えます。その辺をもう少しうまく出来たら、6位と10位ではなく、5位と8位くらいにはすぐなれたポイント差ですので、ロシアは来年3枠取れたかもしれないのになあ、と残念な部分ではあります

 

また、スピンのレベル4率、ステップのレベル4率が女子と比べると低くなっています。男子の方が、高難度ジャンプの習得に時間を取られ、スピンステップのレベルへ向ける力が削がれがちなところがあるんでしょうか

 

  

  Jump Spin Step PCS 減点
Nathan CHEN 96.25 14.28 10.71 94.78 0.00
Yuzuru HANYU 86.72 13.71 9.83 95.84 0.00
Vincent ZHOU 78.44 12.25 9.02 87.28 0.00
Shoma UNO 65.63 13.94 10.33 89.02 0.00
Boyang JIN 74.97 11.93 8.91 82.64 0.00
Mikhail KOLYADA 67.27 12.53 9.07 89.34 0.00
Alexander SAMARIN 68.33 10.96 8.36 81.30 1.00
Michal BREZINA 58.67 11.81 10.50 87.34 1.00
Andrei LAZUKIN 66.21 11.41 8.51 78.56 0.00
Matteo RIZZO 62.58 11.37 9.36 81.98 1.00

基礎点とGOEを合わせるとこんな感じです。スピンの2番目は宇野選手、ステップの2番目はブレジナ選手でした。ブレジナ選手は4回転にトリプルアクセルまではうまく飛んだのに、3回転のコンビネーションジャンプがきめられず、ジャンプの点を大きく減らしてしまったのが大変痛かったです。そこさえ決まれば5位までは入ってこられる点数でした。

 

 

Jump

基礎点

Jump

GOE

Spin

基礎点

Spin

GOE

Step

基礎点

Step

GOE

PCS 減点
Nathan CHEN 111.86 26.64 19.90 7.37 10.80 5.65 141.20 0.00
Yuzuru HANYU 95.18 20.75 19.70 7.44 10.20 5.15 142.55 0.00
Vincent ZHOU 100.06 14.15 19.40 4.39 10.20 4.00 128.96 0.00
Shoma UNO 92.86 2.29 19.50 7.08 10.80 4.88 133.91 -1.00
Boyang JIN 99.07 5.39 19.40 4.31 9.60 3.41 122.53 -1.00
Mikhail KOLYADA 78.68 11.56 18.90 6.52 10.20 4.16 132.42 0.00
Matteo RIZZO 88.94 9.21 18.90 4.30 10.80 3.57 122.94 -1.00
Michal BREZINA 74.87 11.87 18.83 5.12 10.80 4.88 128.91 -1.00
Jason BROWN 70.55 7.50 19.40 7.65 10.20 5.20 134.65 -1.00
Andrei LAZUKIN 87.07 11.28 19.40 3.34 9.60 2.96 115.09 0.00

総合の上位10選手の、ショート、フリー合わせたそれぞれのスコアです

ジャンプの基礎点だけで100点を超えている選手が二人。ボーヤンジン選手もほぼ100点です。羽生選手はジャンプの基礎点が全体の四番目。宇野選手はジャンプの基礎点で5番目な上に、GOEがほとんど稼げなかったのですから、さすがに苦しい展開となりました。

スピンを、ショートフリーすべてレベル4でしっかり揃えた選手、というのが5人だけで、上位10選手の中でも半分しかいません。また、ステップでショートフリーレベル4を並べたのは4人でさらに減ります。

男子は女子と比べてレベルの取りこぼしが目立ちました

 

  Jump Spin Step PCS 減点 Total Scores
Nathan CHEN 138.50 27.27 16.45 141.20 0.00 323.42
Yuzuru HANYU 115.93 27.14 15.35 142.55 0.00 300.97
Vincent ZHOU 114.21 23.79 14.20 128.96 0.00 281.16
Shoma UNO 95.15 26.58 15.68 133.91 -1.00 270.32
Boyang JIN 104.46 23.71 13.01 122.53 -1.00 262.71
Mikhail KOLYADA 90.24 25.42 14.36 132.42 0.00 262.44
Matteo RIZZO 98.15 23.20 14.37 122.94 -1.00 257.66
Michal BREZINA 86.74 23.95 15.68 128.91 -1.00 254.28
Jason BROWN 78.05 27.05 15.40 134.65 -1.00 254.15
Andrei LAZUKIN 98.35 22.74 12.56 115.09 0.00 248.74

基礎点とGOEを合わせるとこうなります。ジャンプだけで100点を超えたのは四人。その中でもネイサンチェン選手は突出しています。

ジャンプスピンステップとネイサンチェン選手が一位。PCSのみ羽生選手が一位です。PCSの三位はジェイソンブラウン選手。四回転とはいわないので、トリプルアクセルまででいいので、三本しっかり決めてくれれば、表彰台争いができるチャンスくらいまでは今回あったんですけどねえ。

 

  Jump Spin Step PCS 減点 順位
Nathan CHEN 1 1 1 2 1 1
Yuzuru HANYU 2 2 5 1 1 2
Vincent ZHOU 3 7 8 6 1 3
Shoma UNO 7 4 2 4 6 4
Boyang JIN 4 8 9 9 6 5
Mikhail KOLYADA 8 5 7 5 1 6
Matteo RIZZO 6 9 6 8 6 7
Michal BREZINA 9 6 2 7 6 8
Jason BROWN 10 3 4 3 6 9
Andrei LAZUKIN 5 10 10 10 1 10

要素グループ別に上位10選手内で順位をつけたもの。

宇野選手はジャンプの失敗をスピンステップPCSで何とかカバーしたものの、上位3人との差は大きくて4位に留まった、というところでしょうか。ボーヤンジン選手は本人比ではジャンプも満足がいく水準ではありませんでしたが、それなりには点が出て全体の4番目。ただ、スピンステップPCSが伸びずに表彰台争いとはだいぶ離れた五番目で終わっていました。

ステップで2位のスコアを上げているのはブレジナ選手。ショートフリー共にレベル4で加点も十分も取った結果こうなりました。ステップで点が取れる選手は見ていて映えます。

 

  Jump Spin Step PCS 減点  
Nathan CHEN 60.45 4.53 3.89 26.11 1.00 95.98
Yuzuru HANYU 37.88 4.40 2.79 27.46 1.00 73.53
Vincent ZHOU 36.16 1.05 1.64 13.87 1.00 53.72
Shoma UNO 17.10 3.84 3.12 18.82 0.00 42.88
Boyang JIN 26.41 0.97 0.45 7.44 0.00 35.27
Mikhail KOLYADA 12.19 2.68 1.80 17.33 1.00 35.00
Matteo RIZZO 20.10 0.46 1.81 7.85 0.00 30.22
Michal BREZINA 8.69 1.21 3.12 13.82 0.00 26.84
Jason BROWN 0.00 4.31 2.84 19.56 0.00 26.71
Andrei LAZUKIN 20.30 0.00 0.00 0.00 1.00 21.30

各要素グループで、上位10選手中10位の選手と、自分の得点との差を並べたのがこの表です。

ジャンプだけで60点もの大差がついているのが分かります。それに対して、スピンは最大で4.53、ステップは3.89と、それほど差が付きません。PCSでも27.46までです。ジャンプでいかに差が付くか、というのが分かります。

女子と比べても、男子のジャンプ大会色は色濃いなあ、というのが感じられる結果でした。