エーニャスプリングトロフィー トリプルアクセル祭り

4月に入っても国際大会は残っています。世界ジュニアというイベントもありますが、その前B級大会でエーニャスプリングトロフィーが入りました。コロナでここ2シーズン国際大会派遣が滞っていたからか、日本勢が7人もエントリーしました。

 

○女子シングルシニア

Pl Name Nation Total SP FS
1 Hana YOSHIDA JPN 210.77 73.04 137.73
2 Haein LEE KOR 182.32 60.99 121.33
3 Mone CHIBA JPN 178.60 67.78 110.82
4 Marina PIREDDA ITA 152.57 57.20 95.37
5 Maé-Bérénice MÉITÉ FRA 142.13 53.15 88.98
6 Roberta RODEGHIERO ITA 132.46 49.31 83.15
7 Emma KARJALAINEN FIN 120.47 49.78 70.69
8 Frida Turiddotter BERGE NOR 109.96 43.85 66.11
9 Ester SCHWARZ ITA 103.41 41.90 61.51

女子シングルシニアは4月のB級大会としては意外に知名度ある選手もエントリーしてきていました。それら世界選手権経験者たちを抑えて、シニアの国際大会初出場の吉田陽菜選手が210点を超えるスコアで圧勝しました。世界選手権なら4位相当のスコアでした。本人比で国内でも出したことのない極めて高いスコアです。

2位は韓国イ・ヘイン選手。世界選手権7位から間を置かずに登場。韓国なので同姓同名別人? というのを演技見るまでは疑ったのですが、間違いなく世界選手権7位、四大陸2位のイ・ヘイン選手でした。さすがにノーミスというわけにはいかず、それほど良い出来ではありませんでした。

千葉百音選手が3位。ショートはいい出来で2位スタートでしたがフリーは2転倒で残念ながらスコアが伸びませんでした。それでも国際大会シニアデビュー戦で3位。203ポイントを得て世界ランキング152位に名を連ねました。フリーも悪いながらも技術点55.09は取っていて、これは世界選手権のミニマムスコア51.00を上回ります。これで来シーズン、全日本でいい成績を上げさえすれば、あとはどの大会にも出られます。

4位にイタリアのピレッダ選手。世界選手権に出場経験のある選手です。5位にはフランスのメイテ選手。大ベテラン。ケガで試合に出ていなかったようですが、ぎりぎり今シーズン最後に試合を1つ入れられるくらいに回復したようです。6位のイタリア、ロデギエーロ選手も世界選手権のかつての常連で、4月のB級大会とは思えない面々が顔を連ねていました。

 

○吉田陽菜選手のショートプログラム構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3A   8.00   2.40 10.40 3.200
2 3Lz+3T   10.10   1.38 11.48 2.400
3 FSSp4   3.00   0.60 3.60 2.200
4 CSp4   2.60   0.52 3.12 1.600
5 3Lo< 4.31 x -0.52 3.79 -1.400
6 StSq4   3.90   0.91 4.81 2.400
7 CCoSp4   3.50   1.28 4.78 3.600
  TES   35.41   6.57 41.98  

出ました、技術点41.98のショートプログラム。今シーズン国内でも今一つうまくいっていなかったショートプログラムで素晴らしい結果を出しました。トリプルアクセルは平均GOE+3.200という高評価。今シーズン、国際大会のトリプルアクセルでこれより高い評価を得た選手は、ワリエワ選手しかいません。

残念だったのがループジャンプ。回転不足で基礎点削られました。ここをしっかり飛べていれば基礎点にして1.08 出来栄えも含めて2.5程度良い点に出来ていたと思われます。パーフェクトなら75点台が見えていたくらいの位置にいます。

 

○吉田陽菜選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3Aq q 8.00   -1.33 6.67 -1.600
2 2A+3T   7.50   1.12 8.62 2.600
3 3F   5.30   1.59 6.89 2.800
4 ChSq1   3.00   1.00 4.00 2.200
5 3Lo   4.90   0.98 5.88 2.000
6 CCoSp4   3.50   0.82 4.32 2.400
7 3Lz!q+3T ! 11.11 x -1.38 9.73 -2.400
8 3Lz   6.49 x 1.18 7.67 2.200
9 3S+2T+2Lo   8.03 x 0.72 8.75 1.600
10 StSq4   3.90   0.91 4.81 2.400
11 SSp4   2.50   0.75 3.25 3.200
12 FCCoSp4   3.50   0.70 4.20 2.200
  TES   67.73   7.06 74.79  

フリーのトリプルアクセルはしっかり着氷しましたがqがついてGOEはマイナスとなりました。吉田陽菜選手はこれで国際大会2試合でトリプルアクセルを3回飛びすべて着氷でしたがこのフリーだけqがついています。吉田選手のすごいところは国内の大会でも今シーズン11回飛んですべて回転十分で着氷しているところ。全日本ジュニアのフリーだけ、ジャンプが抜けて1回転アクセルになりましたが、それ以外はすべて基礎点満額で転倒なしという実績です。吉田陽菜選手のトリプルアクセルの安定感は日本でトップではなく、世界でも今シーズンはトップと言えます。

この試合でもう一つ減点があったのは後半のコンビネーション、ルッツジャンプで!がつきqもついてGOEマイナスとなりました。

スピンステップはすべてレベル4 しっかりと稼ぎました。

素晴らしい210点に乗せての優勝。世界ジュニアに出れば優勝争いもできる水準ですが、残念ながら補欠です。世界ジュニアの日本の補欠は、トリプルアクセル持ちで210点を超えた吉田陽菜選手と、直近で220点を超えるスコアを出した松生理乃選手という恐ろしいメンバーになっています。

 

吉田陽菜選手は2005年8月生まれの16歳。同じ2005年8月生まれにはアリサリュウさんがいます。二人は二人は4年前、チャレンジカップのアドバンスドノービス部門で戦い僅差で吉田陽菜選手が勝った、ということがありました。4年経って二人の道は分かれ、アリサリュウさんはシニアに上がり世界選手権で表彰台に上がり、さらには引退まで表明してしまいました。一方、吉田選手はいまだジュニアカテゴリー。来シーズンはどうするか? 力的にはシニアで十分にやっていけるとは思うのですが、世界ランキングも低く、ISU公認スコアももっていないのでグランプリシリーズの枠がもらいにくい。ジュニアなら、世界ジュニアの結果次第ですが、7試合×2枠を勝ち取ってくれば、JGP2試合とファイナルまで行けそうな気もしています。前半はその流れで行って後半はうまくいけば四大陸も視野に入れつつ世界ジュニアへ、というコースで翌シーズンのシニアを目指すのが良いのではないかと個人的には思うのですが、濱田先生はNHK杯地元枠前提でシニアに上げそうな気もします。

 

○男子シングル シニア

Pl Name Nation Total SP FS
1 Gabriele FRANGIPANI ITA 250.51 85.57 164.94
2 Sena MIYAKE JPN 222.21 81.48 140.73
3 Liam KAPEIKIS USA 219.81 71.52 148.29
4 Emanuele INDELICATO ITA 175.59 65.57 110.02
5 Ken FITTERER GBR 162.28 55.70 106.58
6 Valentin  EISENBAUER AUT 140.01 51.03 88.98

男子シングルは最終的に6人になってしまいました。せっかく遠征したのにランキングポイントが得られないかと思いましたが、エントリー人数は多数いたためか上位選手にポイントはきちんと入っているようです。

優勝は地元イタリアからフランジパーニ選手。ヨーロッパ選手権で9位になっている選手です。

三宅星南選手は2位に入りました。スコア222.21は平凡。四大陸選手権では240点まで出してましたが、まあ、その辺は試合のグレードの違いってものかと思います。ショートフリーで4回転サルコウを3本飛びましたが決まったのは1本だけ。この試合にピークを持ってきているということも多分なく、平凡な結果に終わりました。ただこれで225ポイントを得たようで合計1065ポイントで世界ランクは43位まで上がりました。来期のグランプリシリーズ、おそらく今の情勢だとロシア勢の枠が丸々空くことが予想されます。その関係でおそらく1枠は少なくとも三宅選手にも回って来るのではないかと予想されます。2枠行けるか? はちょっとどうでしょう?

 

○女子シングルジュニア 上位10選手

Pl Name Nation Total SP FS
1 Anna PEZZETTA ITA 172.96 55.11 117.85
2 Hannah HERRERA USA 154.28 54.60 99.68
3 Fiona BOMBARDIER CAN 151.82 49.79 102.03
4 Azusa TANAKA JPN 144.38 51.35 93.03
5 Barbora VRANKOVA CZE 142.80 49.11 93.69
6 Abbie BALTZER CAN 140.96 49.88 91.08
7 Sarah EVERHARDT USA 139.94 42.90 97.04
8 Sara FRANZI SUI 139.49 50.76 88.73
9 Oda Tonnesen HAVGAR NOR 131.33 42.76 88.57
10 Ida Eline VAMNES NOR 130.29 48.23 82.06

女子シングルのジュニアも地元イタリアからペゼッタ選手が優勝でした。

日本からは田中梓選手がエントリー。ショート3位フリー6位で総合4位に終わりました。それでもショートの技術点25.67 フリーの技術点38.63 今シーズンの世界ジュニアのミニマムスコアがショート23.00 フリー38.00なので、かろうじて超えています。来シーズンどう設定されるか微妙ですが、今シーズン設定から上げられなければ、なんとかミニマム確保できたかな、という、最低限の結果は残せたのではないかと思われます。

 

○男子シングル ジュニア 

Pl Name Nation Total SP FS
1 Takeru KATAISE JPN 226.14 82.94 143.20
2 Naoki ROSSI SUI 211.46 68.44 143.02
3 Nozomu YOSHIOKA JPN 187.36 67.82 119.54
4 Kai KOVAR USA 186.12 65.13 120.99
5 David SHTEYNGART CAN 167.65 65.81 101.84
6 Grayson LONG CAN 162.44 54.12 108.32
7 Tommaso BARISON ITA 153.21 49.00 104.21
8 Lucas FITTERER GBR 141.13 52.62 88.51
9 Antonio MONACO USA 130.29 44.30 85.99
10 Nicolas van de VIJVER RSA 113.65 43.34 70.31

男子シングルのジュニアは日本から派遣の片伊勢選手が優勝しました。片伊勢選手は今シーズン全日本ジュニアで188.37で4位、シーズンベストは209.03 という選手。それが国際大会で226.14という高いスコアを出してきました。4回転無しの構成ですが特にショートでよい出来でした。

もう一人日本から派遣の吉岡希選手は3位。フリーでは4回転を1本決めましたが2本目は不発。世界ジュニアの補欠でもあり、代替大会としてのこの試合だったでしょうか。おそらく本人としてはもう少しスコアが欲しかったのだろうと思います。

 

○女子シングル アドバンスドノービス 上位10人

Pl Name Nation Total SP FS
1 Mao SHIMADA JPN 160.68 52.93 107.75
2 Hetty SHI CAN 128.05 42.96 85.09
3 Amanda GHEZZO ITA 118.33 43.43 74.90
4 Kara YUN CAN 117.97 43.87 74.10
5 Luana STEIN USA 117.92 41.90 76.02
6 Chiara MINIGHINI ITA 110.29 36.16 74.13
7 Sofia BEZKOROVAINAYA USA 109.71 42.74 66.97
8 Lulu LIN CAN 104.83 37.05 67.78
9 Anita MAPELLI ITA 90.96 36.14 54.82
10 Giulia OTTONELLI ITA 87.91 34.22 53.69

アドバンスドノービス女子では島田麻央選手圧勝。スコアが出たときに本人は、喜んでいいのかよくわからないんだけど、みたいな困惑したような表情に見えました。アドバンスドノービスの国際ルールは日本のノービスとも違いますし、ジュニア以上とも違いますし、出た点数がいいのか悪いのか本人にもよくわからないんですよね。島田麻央選手はこれが国際大会デビュー戦。とりあえず、飛行機がだめで海外だと活躍できないとか、そういうことはなさそうです、ということはまず証明されました。

 

○島田麻央選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3Aqb b 8.00   -1.07 7.93 -1.400
2 3Lzb+3T b 10.10   1.57 12.67 2.600
3 3F   5.30   1.24 6.54 2.400
4 CCoSp3   3.00   1.00 4.00 3.400
5 3Lo   4.90   1.47 6.37 2.800
6 2Ab+3T+2T b 8.80   1.26 11.06 3.000
7 3Lz   5.90   1.77 7.67 3.200
8 StSq3   3.30   0.88 4.18 2.600
9 FSSp3   2.60   0.87 3.47 3.200
  TES   51.90   8.99 63.89  

アドバンスドノービスのフリーは要素9つです。ジャンプは6つでコンビネーションは2つまで。1.1倍ボーナスタイムはありません。その代わり、3回転のジャンプが2つまで、さらにダブルアクセルにボーナス点1がそれぞれ付けられます。また、スピンステップのレベルは最高で3となっています。そのうえ、PCSは5項目ではなく4項目で係数は同じ1.6となります。そんな風にルールが全然違うので、パッと見て出た点数がいいのか悪いのかよくわかりません。

構成を見ると今回冒頭はトリプルアクセルが入りました。qマーク付きながら着氷。先月京都府選手権ではq無しで着氷していました。これでトリプルアクセルもある程度計算できるジャンプになってきたのかな、と思います。次は4回転とトリプルアクセルの両立。そこまで行けるか。今シーズン国際大会でトリプルアクセルを基礎点満額で着氷した日本勢はこれで5人目、跳んだ順に樋口新葉、河辺愛菜、吉田陽菜、中井亜美、島田麻央、となります。ただ、ほかの4人はGOEプラスがありますが、島田選手はまだGOEをプラスにすることは出来ていません。

トリプルアクセル以外の要素はすべてGOEプラスで一番低いジャッジの評価でも+2でした。回転不足などもなし。スピンステップすべてレベル3。セカンド3回転も2つ入って、ルッツ2本入りで各要素の評価もいいですので、いい出来だったと言ってよいはずです。ジュニアに換算して何点? とか聞かれると難しいですが。

PCSがまだ伸びておらず6点台が中心なので総合点でトップと争うのは難しいですが、技術点は上位と争っても遜色ないところまで来ているといってよいと思います。

 

さて、日本から派遣のB級大会は今シーズンこれで終わりのはずです。

後は世界ジュニアがあります。男子はマリニン選手vs三浦佳生選手でしょうか。ケガ大丈夫? いずれにしても枠取りはあまり心配していない。女子は、ロシアがおらず大混戦。アメリカのレビト選手が中心になると思いますが、アメリカ勢、韓国勢相手に日本勢がどこまで絡んでいけるか? 来季の3枠確保、というのもありますがそれよりもなによりも、ジュニアグランプリの来期枠を7試合×2人、獲ってきてもらえたらと思います。

 

 

世界選手権22 男子シングルレビュー3

前回まで世界選手権男子シングルの振り返りをしてきました。今回はその最終になります。

 

○要素別のスコア

Pl Name Nation Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Shoma UNO JPN 312.48 142.41 102.86 24.30 27.01 15.90
2 KAGIYAMA JPN 297.60 140.45 92.70 21.80 26.87 15.78
3 Vincent ZHOU USA 277.38 131.75 104.36 1.85 24.29 15.13
4 KVITELASHVILI GEO 272.03 127.79 96.59 9.02 24.08 14.55
5 PULKINEN USA 271.69 125.45 92.06 18.08 21.67 14.43
6 TOMONO JPN 269.37 131.02 99.19 1.24 24.01 14.91
7 Daniel GRASSL ITA 266.66 127.01 101.13 1.21 24.73 13.58
8 SIAO HIM FA FRA 266.12 128.13 87.84 13.18 22.07 15.90
9 Ilia MALININ USA 263.79 124.32 87.47 15.71 24.52 12.77
10 Matteo RIZZO ITA 255.75 127.24 92.60 -1.66 23.28 15.29
11 Kevin AYMOZ FRA 245.46 129.66 68.73 6.69 25.23 16.15
12 SADOVSKY CAN 245.36 122.12 88.16 -3.52 25.32 13.28
13 VASILJEVS LAT 243.00 128.99 76.42 -2.05 25.87 15.77
14 MESSING CAN 235.03 126.31 80.27 -7.48 25.82 14.11
15 SELEVKO EST 234.72 112.62 83.86 4.04 22.80 11.40
16 LITVINTSEV AZE 233.62 115.87 88.02 -1.61 21.64 11.70
17 ZANDRON AUT 228.27 115.08 78.18 0.65 20.83 13.53
18 Sihyeong LEE KOR 224.05 113.01 84.75 -6.17 23.26 11.20
19 MAJOROV SWE 216.45 114.06 66.38 2.65 22.47 12.89
20 NEWBERRY GBR 210.40 108.29 72.35 -2.86 22.36 11.26
21 GUARINO SABATE ESP 208.95 106.99 73.36 -2.26 19.34 11.52
22 STAROSTIN GER 205.72 106.10 76.47 -10.39 23.02 11.52
23 SHMURATKO UKR 196.65 109.05 54.57 0.82 20.81 12.40

フリーまで滑り切った23選手のショートフリー合わせての要素別スコアを見てみます。

PCSは宇野選手と鍵山選手が140点台までもらっています。その下はヴィンセントジョウ選手と友野一希選手が131点台。PCSだけでおおよそ10点ほどの差が上二人とは付くわけです。

ジャンプの基礎点はヴィンセントジョウ選手がトップで宇野選手が2番目、3番目のグラスル選手までが100点超えです。上位の選手は90点台までは出してきています。80点台ではアダムシャオヒムファ選手の総合8位が一番高い順位となります。上位で勝負するには90点以上は欲しい、という風に見えます。

ジャンプの加点は宇野選手と鍵山選手が20点台あります。一方ヴィンセントジョウ選手は1.80 ほぼ加点が得られていません。この差が大きいです。フリーで大躍進したプルキネン選手も18.08と大きな加点を得ました。ジャンプの加点というのは極めて差がつきやすく、また、同じ選手でも試合によって違いが出やすい要素になります。

スピンは27.01の宇野選手がトップ。鍵山選手が26.87まで出して2番目です。25点台でバシリエフス選手、キーガンメッシング選手、サドフスキー選手、ケヴィンエイモズ選手といったあたりが続きます。友野選手は24.01と割と平凡。これが宇野選手並みに27点出せていれば総合4位までは来ていました。

ステップ系要素はケヴィンエイモズ選手が16.15でトップでした。アダムシャオヒムファ選手と宇野選手が15.90で2番目、その下に鍵山選手、バシリエフス選手、と続きます。鍵山選手はオリンピックの時と比べてトータルスコアは伸ばせなかったのですが、スピン、ステップのスコアは上昇させることが出来ています。逆に宇野選手は他の項目はすべてオリンピックの時よりスコアが高いのですが、ステップのみはオリンピックより低いスコアとなりました。

 

以下、個別の要素を見ます

 

○4回転ルッツを含む要素

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP MALININ 1 4Lz   11.50   4.11 15.61 3.667
FS MALININ 1 4Lz   11.50   4.11 15.61 3.556
FS ZHOU 1 4Lz   11.50   2.96 14.46 2.667
SP GRASSL 1 4Lz   11.50   3.12 14.62 2.444
SP ZHOU 1 4Lzq+3T q 15.70   -0.49 15.21 -0.333
FS GRASSL 1 4Lzq q 11.50   -5.75 5.75 -5.000
FS MESSING 1 4Lz< < 9.20   -4.60 4.60 -5.000

4回転ルッツを今回プログラムに入れたのは4人で7回です。全員が冒頭のジャンプとして入れていました。GOEプラス

成功ジャンプは3人で4かい。マリニン選手が最高評価となっています。4回転ルッツは単独で飛んでGOEで+3.5程度の評価になると、コンビネーションでセカンドに3回転トーループを付けてGOE0程度の時と同じくらいのスコアになるのですね。また、回転不足で転倒するとスコア4.60で減点1がつくのに対し、出来がよくGOE+3.5程度の評価だと15.61のスコアが入り、このジャンプの成否で12点くらい差が出ることになります。ハイリスクハイリターン・・・。

 

○4回転フリップを含む要素

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS UNO 7 4F   12.10 x 3.93 16.03 3.667
SP UNO 1 4F   11.00   3.46 14.46 3.111
FS GRASSL 2 4F< < 8.80   -1.01 7.79 -1.000

4回転フリップを入れたのは2人で3回。4回転フリップと言えば宇野昌磨選手。ショートもフリーも成功させました。フリーは1.1倍フリップということで、ジャンプ1つで16.03を得ました。

 

○4回転ループを含む要素

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS UNO 1 4Lo   10.50   4.05 14.55 3.889
FS GRASSL 3 4Loq+1Eu+3S q 15.30   -0.75 14.55 -0.667
FS KAGIYAMA 2 4Lo<< << 4.90   -2.38 2.52 -4.667

4回転ループは最難関4回転なような気がしますが、基礎点は3番目でルッツより1,0下です。今回は3人がフリーで入れてGOEプラスは宇野選手のみでした。4回転ループは日本のジャンプでしょうか。グラスル選手は3連続のコンビネーションで入れて平均GOEはマイナス。単独ジャンプで取んだ宇野選手と1つの要素としてのスコアは同じ、という形になりました。鍵山選手はダウングレードの転倒。これは痛かったです。

 

○4回転サルコウを含む平均GOEがプラスの要素

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP KAGIYAMA 1 4S   9.70   4.57 14.27 4.667
FS KAGIYAMA 1 4S   9.70   4.16 13.86 4.222
FS SADOVSKY 1 4S   9.70   3.19 12.89 3.333
FS UNO 2 4S   9.70   3.19 12.89 3.222
FS SIAO HIM FA 3 4S   9.70   3.05 12.75 3.222
FS ZHOU 2 4S   9.70   3.05 12.75 3.111
SP SADOVSKY 1 4S   9.70   2.91 12.61 3.000
SP TOMONO 2 4S   9.70   2.77 12.47 2.778
FS KVITELASHVILI 1 4S+3T   13.90   2.08 15.98 2.111
SP Sihyeong LEE 1 4S   9.70   0.97 10.67 1.000

4回転サルコウは鍵山選手のジャンプ、という感じになってきています。今回はショートフリーで冒頭に飛んでどちらも平均GOEが+4を超えました。平均GOE3点台にはサドフスキー選手やアダムシャオヒムファ選手といった、ジャンプのイメージではない選手も入ってきています。4回転もサルコウくらいまでは普通のジャンプ化してきているようです。ただ、それでも、1.1倍に入れて平均GOEプラスという選手はいませんでした。

 

○4回転トーループを含んで平均GOEが+2.000以上の要素

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS MALININ 2 4T   9.50   4.21 13.71 4.333
FS KAGIYAMA 3 4T   9.50   4.07 13.57 4.222
FS KAGIYAMA 7 4T+1Eu+3S   15.73 x 3.66 19.39 3.778
SP KAGIYAMA 2 4T+3T   13.70   3.53 17.23 3.667
SP UNO 2 4T+3T   13.70   3.39 17.09 3.556
SP TOMONO 1 4T+3T   13.70   3.39 17.09 3.444
FS SIAO HIM FA 1 4T+2T   10.80   3.12 13.92 3.333
FS PULKINEN 1 4T+3T   13.70   2.71 16.41 2.889
SP MALININ 2 4T+3T   13.70   2.58 16.28 2.778
FS PULKINEN 2 4T   9.50   2.58 12.08 2.778
FS LITVINTSEV 1 4T   9.50   2.44 11.94 2.667
FS KVITELASHVILI 7 4T   10.45 x 2.44 12.89 2.444
SP SIAO HIM FA 1 4T   9.50   2.44 11.94 2.444
SP LITVINTSEV 1 4T   9.50   2.04 11.54 2.222
FS KVITELASHVILI 3 4T+2T   10.80   2.04 12.84 2.000

4回転トーループサルコウよりさらに構成へ入れている選手、数が多くなります。

最高評価はマリニン選手のフリーのもので平均GOE+4.333 このトーループを見た時点でマリニン選手の表彰台をほとんど確信しました。外れましたけど。

その下に鍵山選手のショートフリーの3要素が続きます。サルコウは最高評価、トーループも高評価。なんでこれで勝てないんだってループとトリプルアクセルでやらかしたからですが、非常に残念だったなあ、と感じます。3連続の1.1倍で平均GOE3.778なのですから非常に驚異的なスコアではありまっした。

 

トリプルアクセルを含む平均GOE+3.000以上の要素

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP UNO 4 3A   8.80 x 3.43 12.23 4.222
FS UNO 4 3A   8.00   3.09 11.09 3.889
FS KAGIYAMA 4 3A+3T   12.20   2.97 15.17 3.778
SP  TOMONO 4 3A   8.80 x 2.74 11.54 3.556
SP ZHOU 4 3A   8.80 x 2.74 11.54 3.444
SP PULKINEN 2 3A   8.00   2.86 10.86 3.444
FS MALININ 3 3A   8.00   2.63 10.63 3.222
FS RIZZO 9 3A   8.80 x 2.40 11.20 3.111
FS AYMOZ 6 3A+2T   10.23 x 2.40 12.63 3.000
SP GRASSL 4 3A   8.80 x 2.40 11.20 3.000
SP RIZZO 4 3A   8.80 x 2.40 11.20 3.000
FS PULKINEN 7 3A   8.80 x 2.40 11.20 3.000

トリプルアクセルは男子にとってはショートでほとんど必須の要素になっています。

最高評価はショートの宇野選手で平均GOE+4.222 +4超えは宇野選手一人でした。男子にとっては4回転に意識が行って、疲れを感じながら飛ぶジャンプという感じになっていますでしょうか。上位は鍵山選手、友野選手と日本勢が並びます。トリプルアクセルは日本のジャンプです。

 

○3連続ジャンプでGOEがプラス

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS KAGIYAMA 7 4T+1Eu+3S   15.73 x 3.66 19.39 3.778
FS AYMOZ 8 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.59 12.70 2.889
FS KVITELASHVILI 8 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.44 12.55 2.778
FS SELEVKO 4 3A+1Eu+3S   12.80   1.94 14.74 2.444
FS PULKINEN 3 3A+1Eu+3S   12.80   1.83 14.63 2.000
FS LITVINTSEV 8 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.06 12.17 1.889
FS ZHOU 10 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.01 12.78 1.778
FS SIAO HIM FA 8 3F+1Eu+2S   7.81 x 0.91 8.72 1.667
FS Sihyeong LEE 8 2A+1Eu+3S   8.91 x 0.68 9.59 1.444
FS UNO 9 3A+1Eu+1F   9.90 x 0.57 10.47 0.667
FS MAJOROV 7 2A+1Eu+3S   8.91 x 0.25 9.16 0.667

3連続ジャンプは1.1倍に入れられることが多いジャンプで、そのため高評価を得るのが難しいジャンプになっています。難易度は選手によってかなり違います。

最高評価は鍵山選手。4回転起点で最高難度に近い3連続にもかかわらず、ただ一人平均GOE+3.000を大きく超えました。難易度はやや落としていますが、ケヴィンエイモズ選手が評価2番目です。

 

○平均GOE+4.000以上の要素

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP KAGIYAMA 1 4S   9.70   4.57 14.27 4.667
SP VASILJEVS 7 StSq4   3.90   1.84 5.74 4.667
FS UNO 12 StSq4   3.90   1.84 5.74 4.667
FS TOMONO 12 ChSq1   3.00   2.29 5.29 4.444
SP MESSING 7 CCoSp4   3.50   1.55 5.05 4.444
FS MALININ 2 4T   9.50   4.21 13.71 4.333
FS KAGIYAMA 12 FCCoSp4   3.50   1.55 5.05 4.333
FS KAGIYAMA 1 4S   9.70   4.16 13.86 4.222
FS KAGIYAMA 3 4T   9.50   4.07 13.57 4.222
SP UNO 4 3A   8.80 x 3.43 12.23 4.222
SP AYMOZ 7 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.222
SP UNO 7 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.222
SP SIAO HIM FA 6 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
FS AYMOZ 12 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
FS MESSING 11 ChSq1   3.00   2.14 5.14 4.111
SP KAGIYAMA 7 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.111
FS UNO 11 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.111
SP UNO 6 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.000
FS SIAO HIM FA 10 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.000
SP KAGIYAMA 6 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
SP RIZZO 6 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
FS KAGIYAMA 6 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
FS AYMOZ 9 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
SP MALININ 7 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000

男子は割と多くの要素で平均GOE+4.000に達する要素が出ています。

最高評価は6人のジャッジが満点をつけた平均GOE+4.667の3つ。鍵山選手のショート冒頭の4回転トーループ、バシリエフス選手のショート締めくくりのステップ、宇野選手のフリー締めくくり世界チャンピオン戴冠を祝うステップ、の3つでした。

平均GOE+4.000以上の要素が鍵山選手は7つ、宇野選手が5つあり、二人とも、ジャンプ、スピン、ステップ、すべてのタイプの要素で出しています。やはり偏りがなく、満遍なく何でもできて評価が高い、というのが世界で頂点を争うのに必要なことなようです。

 

ついに頂点に立った宇野選手。シルバーコレクター化してきた鍵山選手。銅メダルはオリンピックのリベンジってことでいいのかヴィンセントジョウ選手。3人の表彰台になりました。男子は上位に入った選手は全員来シーズンも残ると思われます。あとは今回欠場した両巨頭がどうするか。ネイサンチェン選手は学業を本格的になんて言っているので1シーズン休むんでしょうか。引退雰囲気はないですが。羽生選手はどうされるんでしょうか。一番注目されるここがまだ見えていません。

何はともあれ世界選手権は終了。シニアのトップ選手たちはこれでシーズン終了し一休み・・・、せずにすぐにアイスショーでてますが・・・、大丈夫皆さん?

オリンピックシーズンが終わり4年周期が一区切りしました。いろいろなことがあった4年間が終了。世代交代するのか? ルールも変わるのか? 新シーズンをゆっくり待つ、前に世界ジュニアもありますが、来シーズンのプログラム準備あたりの情報を聞きながら、ゆっくり待ちたいと思います。

 

世界選手権22 男子シングルレビュー2

前回に続いて世界選手権男子シングルの振り返り。

今回はフリー編です。

 

○フリーの要素別スコア

Pl Name Nation J Base J GOE Spin Step PCS
1 Shoma UNO JPN 69.36 14.02 13.95 10.38 95.14
2 KAGIYAMA JPN 60.50 14.04 13.67 10.32 93.38
3 PULKINEN USA 63.45 13.61 11.13 9.42 84.58
4 Vincent ZHOU USA 72.10 0.16 11.86 9.84 87.58
5 KVITELASHVILI GEO 63.82 7.86 12.20 9.54 86.00
6 SIAO HIM FA FRA 59.23 10.22 10.32 10.38 86.00
7 Daniel GRASSL ITA 70.73 -5.57 12.31 8.51 84.06
8 Kazuki TOMONO JPN 66.99 -7.66 12.11 10.53 87.28
9 SADOVSKY CAN 61.80 -0.76 12.91 8.43 82.44
10 Matteo RIZZO ITA 64.20 -4.95 11.64 9.83 84.36
11 Ilia MALININ USA 53.47 7.19 11.95 8.72 83.30
12 Kevin AYMOZ FRA 49.13 3.27 12.52 10.52 85.76
13 SELEVKO EST 59.45 3.25 11.09 6.94 75.14
14 VASILJEVS LAT 52.01 -5.18 12.83 10.03 84.36
15 LITVINTSEV AZE 60.07 -3.84 9.79 6.91 76.86
16 ZANDRON AUT 54.17 -3.18 9.50 8.68 76.00
17 Keegan MESSING CAN 54.98 -11.09 12.61 9.15 82.20
18 Sihyeong LEE KOR 56.95 -9.56 11.94 6.58 74.80
19 Tomas-Llorenc GUARINO SABATE ESP 50.55 -0.94 9.98 7.06 70.88
20 Nikolaj MAJOROV SWE 42.45 2.10 11.02 7.82 74.70
21 Graham NEWBERRY GBR 49.35 -3.39 10.76 7.54 72.22
22 Nikita STAROSTIN GER 52.54 -8.12 11.31 6.56 69.64
23 Ivan SHMURATKO UKR 30.64 2.85 9.53 7.44 72.20

ジャンプの基礎点トップはヴィンセントジョウ選手でした。2位がグラスル選手。どちらもジャンプのイメージの強い選手。回転不足や転倒でスコアを稼ぎきれませんでしたが抜けはなく基礎点はある程度しっかり稼いでいました。宇野選手は3位ですが鍵山選手は9位。結果的にジャンプの基礎点は平凡な位置になってしまっています。一方友野選手は4位。クリーンな着氷が出来ないまでも、何とか耐えて居り続けたことで基礎点は十分高い水準に残り6位入賞につながったようです。

ジャンプの加点は鍵山選手がトップでした。決まったジャンプは良かった。でも2つが基礎点から削られるミスになった。そんな形でした。宇野選手が2位でプルキネン選手が3位。プルキネン選手のフリーは素晴らしい滑りでした。ジャンプの基礎点はそれほど高くないアダムシャオヒムファ選手が出来栄え加点は二桁稼いで4位。こちらもいい滑りでした。友野選手はここが-7.66と苦しみました。

スピンのトップは宇野選手、2位が鍵山選手です。その下に12点台後半でサドフスキー選手が3番目、バシリエフス選手が4番目と続きます。総合順位は上位にまでは入れませんでしたが特定要素で力は見せてくれました。

ステップ系要素のトップは友野一希選手。ラ・ラ・ランドの評価は世界でも高くいただけたようです。2番目にケビンエイモズ選手がいます。3番目が宇野選手とアダムシャオヒムファ選手。フランス勢はステップで会場を沸かせました。

PCSは宇野選手が95点に達し5項目平均9.5を達成、鍵山選手までの二人が平均9点越えです。

 

○総合上位6選手のフリーの構成

  Shoma UNO Yuma KAGIYAMA Vincent ZHOU Morisi KVITELASHVILI Camden PULKINEN Kazuki TOMONO
1 4Lo 4S 4Lz 4S+3T 4T+3T 4T+3T
2 4S 4Lo<< 4S 3A 4T 4S
3 4T+2T 4T 3A 4T+2T 3A+1Eu+3S 4T
4 3A 3A+3T 4Tq 3Lo 3Lo 3Lo
5 FCSp4 CSSp4 ChSq1 FCSp4 StSq4 StSq4
6 ChSq1 StSq4 4S<+2T StSq4 FCCoSp4 FSSp4
7 4F 4T+1Eu+3S 3A<+3Tq 4T 3A 3A+1Eu+3S<
8 4T< 3F+2T FCSp4 3F+1Eu+3S FSSp3 3A
9 3A+1Eu+1F 1A CSSp3 3F< 3F+2T 3F+2T
10 FCCoSp4 ChSq1 3Lz+1Eu+3S FCCoSp3 3Lz FCCoSp4
11 CCoSp4 CCoSp4 StSq4 ChSq1 ChSq1 CCoSp4
12 StSq4 FCCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 ChSq1
Base 86.46 77.40 88.30 80.42 79.95 83.89
GOE 21.25 21.13 5.66 13.00 17.66 -1.92
PCS 95.14 93.38 87.58 86.00 84.58 87.28
Total 202.85 191.91 181.54 179.42 182.19 168.25
平均GOE 2.741 2.787 1.093 1.889 2.407 0.574

宇野選手が4回転5本、ヴィンセントジョウ選手が4本、鍵山選手も4本で1つダウングレード、クビテラシビリ選手と友野選手は3本、プルキネン選手は2本という構成です。宇野選手は4回転が5本あってもコンビネーションが1つ入らず、3連続も最後が1回転になったことで、予定より3回転2本分削られた形になり基礎点ではヴィンセントジョウ選手に劣りました。鍵山選手はループのダウングレードとトリプルアクセルが1回転になり、セカンドループが2回転トーループになったことで基礎点は70点台になっています。セカンドジャンプをとっさに2回転にするというのはよく聞きますが、とっさにループからトーループに変えるなんてこともできるのですね。

GOEは宇野選手と鍵山選手が20点以上稼ぎました。プルキネン選手も高評価です。ヴィンセントジョウ選手はアンダーローテーション2つとq2つで加点を伸ばしきれませんでした。友野選手は着氷がすべて厳しくGOEトータルがマイナスです。

平均GOEは鍵山選手が宇野選手をわずかですが上回りました。決めた要素の出来は負けてなかった。プルキネン選手も平均GOEを2点台中盤まで出しています。

 

○総合7~12位の選手のフリーの構成

  Daniel GRASSL Adam SIAO HIM FA Ilia MALININ Matteo RIZZO Kevin AYMOZ Roman SADOVSKY
1 4Lzq 4T+2T 4Lz 4Tq+3T 3T 4S
2 4F< 3A 4T 4Tq 4T<< 3F+3T
3 4Loq+1Eu+3S 4S 3A 3Lo 3Aq 3Aq
4 3A 4T 4S<< 3F 3Lo 3Lo
5 CSSp4 CSSp3 FCCoSp4 CCoSp4 CCSp4 StSq4
6 3Lz+3T 2Lz StSq3 ChSq1 3A+2T 4Sq+1Eu+3Sq
7 3F+3T< 3Lz+3T 4T<<+REP 3A+1Eu+3Sq 3Lz 3Lz+2T
8 3Lz 3F+1Eu+2S 3F+3T 3Lz+2T 3F+1Eu+3S 3F
9 FCCoSp4 FCCoSp4 3Lz 3A ChSq1 FCCoSp4
10 StSq3 StSq4 FSSp4 CCSp3 FSSp4 CCSp4
11 ChSq1 ChSq1 ChSq1 StSq4 CCoSp4 ChSq1
12 CCoSp4 CCoSp3 CCoSp3 FSSp4 StSq4 CCoSp4
Base 87.03 75.23 69.27 80.40 65.73 78.90
GOE -1.05 14.92 12.06 0.32 9.71 3.48
PCS 84.06 86.00 83.30 84.36 85.76 82.44
Total 169.04 175.15 163.63 164.08 160.20 164.82
平均GOE 0.713 1.963 1.278 0.972 1.880 1.056

この領域ではマリニン選手が4回転4本、グラスル選手、シャオヒムファ選手が3本、リッツォ選手とサドフスキー選手が2本でエイモズ選手は2本のつもりが1つ回転になって1本でした。

グラスル選手は4回転3本ながらルッツフリップループという基礎点高い組み合わせで基礎点は全体2位です。トリプルアクセルも1本なのですがセカンド3回転を2本にして構成の中から2回転をなくしていたり、うまく基礎点を稼いでいる感じがします。

加点はアダムシャオヒムファ選手とマリニン選手が二桁稼ぎました。マリニン選手は後半ジャンプで崩れたので印象は良くなくトータルスコアも伸びていないのですが、序盤の出来が素晴らしかった。また、ジャンプのミスはダウングレードで基礎点が大きく削られた形になっていてGOEのマイナス点はその分小さい幅になっていたというのもあります。

平均GOEはシャオヒムファ選手とエイモズ選手が1点台後半までありました。スピンステップで出来が良いとトータルスコアは伸びなくても要素の評価の平均取ると高くなりました。

 

○フリー上位12人のPCS

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Shoma UNO 47.57 47.25 47.00 46.75 48.00 48.00 47.25 48.25 47.25 48.50
KAGIYAMA 46.69 46.25 45.50 47.50 45.00 47.50 46.25 47.50 47.00 47.25
PULKINEN 42.29 42.50 42.50 42.00 43.25 41.75 42.25 42.50 39.00 43.00
Vincent ZHOU 43.79 44.75 43.50 44.00 43.25 45.75 42.75 45.50 41.75 43.25
KVITELASHVILI 43.00 42.25 43.25 41.25 47.25 42.25 40.50 44.50 43.75 43.75
SIAO HIM FA 43.00 41.50 42.25 41.25 43.50 44.25 44.00 44.25 42.50 43.50
GRASSL 42.03 42.75 43.00 41.25 42.25 44.25 42.00 40.75 40.25 42.25
TOMONO 43.64 43.25 43.00 44.00 44.25 45.00 44.00 40.75 42.75 44.50
SADOVSKY 41.22 41.75 41.50 42.50 40.25 41.00 40.25 41.00 41.00 41.50
Matteo RIZZO 42.18 41.75 42.50 42.50 43.25 40.75 43.00 40.50 41.50 43.00
Ilia MALININ 41.65 40.75 39.75 41.75 41.75 44.75 38.75 42.50 42.50 42.50
Kevin AYMOZ 42.88 42.00 45.00 42.50 43.50 41.50 44.00 43.50 41.75 43.25

係数2.0を掛ける前の演技構成点5項目の合計点をジャッジ毎に並べています。

宇野選手鍵山選手は全ジャッジで45点以上、平均9.0以上の評価を得ていました。それ以外ではヴィンセントジョウ選手、友野一希選手が1人づつ45.00以上の評価を受けていました。

1番甘いのは4番ジャッジ、1番厳しいのは7番ジャッジだったのですが、宇野選手、鍵山選手といったところは7番ジャッジからも高い評価になっていて、鍵山選手は4番ジャッジからの評価が一番低いという、またよくわからない構図になっています。

 

○フリー上位12人のジャッジ別PCS順位

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Shoma UNO 1 1 1 2 1 1 1 1 1 1
KAGIYAMA 2 2 2 1 3 2 2 2 2 2
PULKINEN 8 6 9 9 8 9 8 7 14 8
Vincent ZHOU 3 3 5 3 8 3 7 3 7 6
KVITELASHVILI 5 7 6 11 2 8 12 4 3 4
SIAO HIM FA 5 12 11 11 6 6 3 5 5 5
Daniel GRASSL 11 5 7 11 11 6 9 11 13 12
 TOMONO 4 4 7 3 4 4 3 11 4 3
SADOVSKY 13 10 13 6 15 12 13 10 12 13
Matteo RIZZO 9 10 9 6 8 13 6 13 9 8
Ilia MALININ 12 13 15 10 12 5 15 7 5 10
Kevin AYMOZ 7 9 4 6 6 10 3 6 7 6

ジャッジ毎にPCSの順位を付けたらどうなっているか、というものです。

宇野選手が1位としたジャッジは8人いて、鍵山選手1位が1人です。2位は鍵山選手が多いですが、4番ジャッジだけクビテラシビリ選手に2位を付けています。

友野選手はショートではPCS順位7位でジャッジ毎の評価も割れていたのですが、フリーではPCS順位4位で7番ジャッジから厳しい評価ですが後は3位と4位という高い評価になっています。今大会でPCSを高くつけていい選手、みたいな見られ方になったでしょうか、あるいは滑走順によるものか。それがわかるのは来シーズンということになりそうです。

 

もう一回続きます。

 

世界選手権22 男子シングルレビュー1

前回までで女子シングルが終わりましたので今回は男子シングルです。

女子の時と同じようにショートプログラムから見ていきます。

 

ショートプログラム要素別スコア

Pl Name Nation J Base J GOE Spin Step TES PCS
1 Shoma UNO JPN 33.50 10.28 13.06 5.52 62.36 47.27
2 Yuma KAGIYAMA JPN 32.20 7.76 13.20 5.46 58.62 47.07
3 Kazuki TOMONO JPN 32.20 8.90 11.90 4.38 57.38 43.74
4 Ilia MALININ USA 34.00 8.52 12.57 4.05 59.14 41.02
5 Daniel GRASSL ITA 30.40 6.78 12.42 5.07 54.67 42.95
6 Vincent ZHOU USA 32.26 1.69 12.43 5.29 51.67 44.17
7 Morisi KVITELASHVILI GEO 32.77 1.16 11.88 5.01 50.82 41.79
8 Matteo RIZZO ITA 28.40 3.29 11.64 5.46 48.79 42.88
9 Keegan MESSING CAN 25.29 3.61 13.21 4.96 47.07 44.11
10 Adam SIAO HIM FA FRA 28.61 2.96 11.75 5.52 48.84 42.13
11 Deniss VASILJEVS LAT 24.41 3.13 13.04 5.74 46.32 44.63
12 Camden PULKINEN USA 28.61 4.47 10.54 5.01 48.63 40.87
13 Vladimir LITVINTSEV AZE 27.95 2.23 11.85 4.79 46.82 39.01
14 Sihyeong LEE KOR 27.80 3.39 11.32 4.62 47.13 38.21
15 Kevin AYMOZ FRA 19.60 3.42 12.71 5.63 41.36 43.90
16 Maurizio ZANDRON AUT 24.01 3.83 11.33 4.85 44.02 39.08
17 Junhwan CHA KOR 27.36 -4.65 12.40 5.29 40.40 43.03
18 Roman SADOVSKY CAN 26.36 -2.76 12.41 4.85 40.86 39.68
19 Nikolaj MAJOROV SWE 23.93 0.55 11.45 5.07 41.00 39.36
20 Mihhail SELEVKO EST 24.41 0.79 11.71 4.46 41.37 37.48
21 Graham NEWBERRY GBR 23.00 0.53 11.60 3.72 38.85 36.07
22 Ivan SHMURATKO UKR 23.93 -2.03 11.28 4.96 38.14 36.85
23 Nikita STAROSTIN GER 23.93 -2.27 11.71 4.96 38.33 36.46
24 Tomas-Llorenc GUARINO SABATE ESP 22.81 -1.32 9.36 4.46 35.31 36.11
25 Mark GORODNITSKY ISR 18.70 1.97 11.09 3.91 35.67 34.03
26 Adam HAGARA SVK 23.93 -2.36 5.41 2.56 29.54 31.38
27 Vladimir SAMOILOV POL 16.41 0.72 8.36 1.65 27.14 35.57
28 Burak DEMIRBOGA TUR 12.20 -3.47 8.20 3.68 20.61 32.25
29 Aleksandr VLASENKO HUN 11.60 -1.08 9.12 2.60 22.24 28.86

ショートプログラム、ジャンプの基礎点全体トップは17歳のマリニン選手でした。宇野選手の33.50が続きます。二人の0.5差はルッツとフリップの差です。3位のクビテラシビリ選手はサルコウトーループという普通の4回転2種類ですが、コンビネーションを1.1倍に持ってきていることでここまで来ます。

ジャンプの加点は宇野選手がトップでした。基礎点2位で加点も稼げればそれは高得点が出るでしょう。加点2位は友野選手です。ジャンプが得意という印象はそれほどない選手ですが、今回のショートはジャンプ3本きっちり合わせて高加点を得ました。マリニン選手が3番目で鍵山選手が4番目。鍵山選手はここが上位の中で今回はやや劣って、宇野選手との点差になりました。5番目のグラスル選手までがジャンプで大きな加点を得たという構図です。

スピンはキーガンメッシング選手がトップです。0.01差で鍵山選手が2番目。宇野選手、バシリエフス選手と続いてここまでが13点台でした。友野選手は11点台。こういうところで上二人との差が出ています。

ステップトップはバシリエフス選手でした。ジャンプは点が伸びていませんがスピンステップで高い評価を得ています。2位はケビンエイモズ選手。トリプルアクセルが抜けて0点という残念なショートでしたが、それ以外の決まった要素は高評価でした。同じフランスのアダムシャオヒムファ選手と宇野選手がその下5.52で3番目に並んでいます。5番目には鍵山選手とリッツォ選手がいました。

PCSは宇野選手と鍵山選手の二人が抜けていて47点台。9点平均を超えたのはこの二人だけでした。PCS3位はバシリエフス選手。後はジャンプが入れば世界のトップまで来そうです。

 

○総合上位6選手のショートプログラム構成

  Shoma UNO Yuma KAGIYAMA Vincent ZHOU Morisi KVITELASHVILI Camden PULKINEN Kazuki TOMONO
1 4F 4S 4Lzq+3T 4S 4T 4T+3T
2 4T+3T 4T+3T 4S< 3A 3A 4S
3 FCSp4 CCSp4 FCSp4 FCSp4 FCSp4 CSSp4
4 3A 3A 3A 4T+3T 3Lz+3T 3A
5 CSSp4 FSSp4 CSSp4 StSq4 CSSp3 FCSp4
6 StSq4 StSq4 StSq4 CSSp4 StSq4 StSq3
7 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4
Base 47.10 45.80 45.86 46.37 41.81 45.20
GOE 15.26 12.82 5.81 4.45 6.82 12.18
PCS 47.27 47.07 44.17 41.79 40.87 43.74
Total 109.63 105.69 95.84 92.61 89.50 101.12
平均GOE 3.603 3.222 2.000 1.571 1.794 2.794

上位に来る選手はショートから4回転を2本入れるというのが通常の構成になってきています。5位のプルキネン選手は4回転1本でしたがショートは12位でした。

全員、ジャンプは1番目2番目、スピンで時間を使って後半時間にした4つ目の要素で最後のジャンプ、という構成になります。

この中ではヴィンセントジョウ選手だけが回転不足で基礎点削られ、qマークでGOE削られというのがありました。見た目ノーミスもこういったところで点が伸びずにショート6位折り返しとなっています。

平均GOEは宇野選手が3.603で抜けていて鍵山選手までが平均+3.000を超える水準です。4回転が2本入れば、種類の違いでの基礎点差より出来栄えの違いによるGOE差の方が大きくなる、というのがショートプログラムなようです。

 

○総合7~12位の選手のショートプログラム構成

  Daniel GRASSL Adam SIAO HIM FA Ilia MALININ Matteo RIZZO Kevin AYMOZ Roman SADOVSKY
1 4Lz 4T 4Lz 4T 4T+3T 4S
2 3Lz+3T 3A 4T+3T 3Lz+3T 3Lz 3Aq
3 FSSp4 CCoSp4 CCSp4 CCSp4 CCSp4 3F+3T<
4 3A 3Lz+3T 3A 3A 1A* FCSp4
5 StSq4 FCSp4 FSSp4 CCoSp4 FSSp4 CSSp4
6 CCSp4 StSq4 StSq3 StSq4 CCoSp4 StSq4
7 CCoSp4 CSSp4 CCoSp4 FSSp4 StSq4 CCoSp4
Base 44.00 42.21 47.00 42.00 33.20 39.96
GOE 10.67 6.63 12.14 6.79 8.16 0.90
PCS 42.95 42.13 41.02 42.88 43.90 39.68
Total 97.62 90.97 100.16 91.67 85.26 80.54
平均GOE 2.667 1.905 2.810 2.143 2.907 0.825

このあたりの選手は4回転1本が多いです。4回転1本だとルッツ入りでも基礎点は44点まで。トーループだと42点台あたりになります。47点台まである2本構成とは5点近い基礎点差です。出来栄え差で逆転可能な範囲ではありますが、2本でノーミスな上位に食らいつくのはちょっと難しい。

ショート4位のマリニン選手、5位のグラスル選手は平均GOEが2点台後半になりました。その二人より高い全体3位の平均GOEを叩きだしたのはエイモズ選手。アクセル抜けての零点が痛すぎました。

 

ショートプログラム上位12人のPCS

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Shoma UNO 47.27 46.75 47.75 47.75 46.25 47.75 47.75 46.75 46.00 48.25
KAGIYAMA 47.07 46.25 47.50 47.50 47.50 47.75 47.25 46.50 46.25 47.00
TOMONO 43.74 42.75 44.00 46.00 45.00 43.00 42.50 44.25 40.50 45.25
MALININ 41.02 40.50 42.25 40.25 38.25 38.00 42.50 42.75 44.25 40.25
GRASSL 42.95 42.75 45.00 42.50 42.75 43.00 40.75 43.25 43.25 43.25
ZHOU 44.17 43.75 44.00 45.00 44.50 41.75 42.25 44.75 44.75 46.00
KVITELASHVILI 41.79 43.00 42.50 38.75 39.25 41.00 43.25 42.50 43.25 41.50
RIZZO 42.88 43.25 42.75 41.75 43.00 44.00 41.00 44.50 43.00 42.75
MESSING 44.11 43.25 45.25 43.75 43.50 45.25 42.25 44.25 45.75 44.50
SIAO HIM FA 42.13 42.00 42.75 42.50 43.25 40.25 41.50 42.25 42.50 41.75
VASILJEVS 44.63 43.25 45.50 44.25 45.00 45.00 41.75 44.75 47.25 44.75
PULKINEN 40.87 39.25 39.75 42.50 41.75 39.00 38.50 41.50 43.75 42.50

ジャッジ9人のばらつきは女子シングルほどではないですがそれなりにはあります。1番厳しいのはジャッジ5、1番甘いのはジャッジ8 5項目合計の平均で1.8点ほど差があるのですが、面白いことにPCSトップの宇野選手は8番ジャッジから1番低い評価を受けていたりします。

スコアとして5項目平均9点を超えたのは宇野選手と鍵山選手だけですが、ジャッジによっては平均9店合計45点に達している、という選手は他にもバシリエフス選手、メッシング選手、友野選手、ヴィンセントジョウ選手、グラスル選手、といて、順位が低いので表にいませんがエイモズ選手も45点を付けたジャッジがいました。

 

ショートプログラム上位12人のジャッジ別PCS順位

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Shoma UNO 1 1 1 1 2 1 1 1 3 1
Yuma KAGIYAMA 2 2 2 2 1 1 2 2 2 2
Kazuki TOMONO 7 10 7 3 3 8 5 7 17 4
Ilia MALININ 13 14 13 13 18 14 5 11 6 17
Daniel GRASSL 9 10 5 9 11 8 12 9 8 7
Vincent ZHOU 4 3 7 4 6 10 7 3 5 3
Morisi KVITELASHVILI 12 9 12 17 15 11 3 12 8 13
Matteo RIZZO 10 6 10 12 10 5 11 5 10 9
Keegan MESSING 5 6 4 7 7 3 7 7 4 6
Adam SIAO HIM FA 11 12 10 9 9 12 10 13 11 11
Deniss VASILJEVS 3 6 3 6 3 4 9 3 1 5
Camden PULKINEN 14 17 14 9 12 13 16 14 7 10

順位で見ると宇野選手が9人のジャッジのうち7人でトップ評価でした。鍵山選手が1位というのが1人と1位タイで1人。バシリエフス選手を1位としたジャッジが1人いました。鍵山選手は2位評価が7人。基本的には宇野選手鍵山選手で1位2位という評価です。

評価が割れているのが友野選手。3位を付けたジャッジが2人いるのですが、8番ジャッジは17位を付けています。マリニン選手は5位を付けたジャッジがいる一方で18位を付けたジャッジもいます。新星はこういう扱いを受けがちでしょうか。その日の見た目でスコアを付けるか、過去から定着した評価が反映されるか。クビテラシビリ選手も3位を付けたジャッジもいれば17位を付けたジャッジもいて、新星感はないですし予想外のいい出来でも悪い出来でもなかったと思うのですが、これはなんでしょうね?

 

次回フリーへ続きます。

世界選手権22 女子シングルレビュー3

世界選手権の振り返り、女子シングルの数値編3回目。これが最終になります。

 

○要素別のスコア

Pl Name Nation Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 SAKAMOTO JPN 236.09 112.74 65.27 16.08 25.85 16.15
2 HENDRICKX BEL 217.70 106.52 62.17 7.25 26.09 15.67
3 Alysa LIU USA 211.19 99.45 68.83 5.96 24.75 12.20
4 BELL USA 208.66 103.71 60.24 4.40 25.32 14.99
5 Young YOU KOR 204.91 102.17 63.29 0.42 25.13 14.90
6 GUBANOVA GEO 196.61 92.89 65.08 3.78 22.45 13.41
7 Haein LEE KOR 196.55 95.95 60.16 2.85 24.05 13.54
8 Karen CHEN USA 192.51 99.48 53.13 -0.15 25.23 14.82
9 RYABOVA AZE 188.50 90.00 60.88 3.45 22.12 12.05
10 SCHOTT GER 188.42 94.86 52.71 5.29 22.88 12.68
11 HIGUCHI JPN 188.15 97.78 60.96 -6.25 23.29 14.37
12 SCHIZAS CAN 188.14 92.20 60.52 1.87 23.27 11.28
13 KURAKOVA POL 186.43 91.57 59.16 -0.03 23.05 13.68
14 MIKUTINA AUT 182.98 91.58 55.28 0.04 23.26 13.82
15 KAWABE JPN 182.44 91.27 68.07 -11.14 20.57 13.67
16 PETROKINA EST 176.60 86.62 53.19 5.91 20.87 11.01
17 ZUNDERT NED 171.39 82.55 51.63 3.26 22.09 11.86
18 SAUTER ROU 170.31 81.61 50.81 2.56 22.07 13.26
19 PAGANINI SUI 170.02 88.58 52.77 -1.74 20.27 11.14
20  GUTMANN ITA 164.39 81.42 49.52 0.58 20.00 12.87
21 TALJEGARD SWE 163.24 82.64 45.39 0.18 21.79 13.24
22 CRAINE AUS 161.75 79.02 53.55 -1.27 19.95 10.50
23 McKAY GBR 159.27 78.72 49.31 2.29 18.31 10.64
24 Dasa GRM SLO 147.12 77.34 41.20 -1.55 21.75 10.38

フリー進出24人のショートフリー合わせた要素別のスコアを見ていきます。

PCSは坂本選手がトップ。112.74はオリンピックのシェルバコワ選手も上回るスコアになります。100点を超えたのは3人。アリサリュウ選手は99点台で100点に届きませんでした。技術点なら全体2位なのですがPCSでヘンドリックス選手に逆転されています。

ジャンプの基礎点はアリサリュウ選手がトップ。2番目は河辺愛菜選手です。高い基礎点のジャンプ構成は組めているんです。あとはしっかり降りることで、それが出来た全日本とそれが出来なかったオリンピック世界選手権、という構図でした。坂本選手は3番目でした。

ジャンプの加点は坂本選手が圧倒的。2番目にヘンドリックス選手が来ます。ジャンプのイメージの強い選手たちではないのですが、3回転までのジャンプをきっちり成功させて出来栄え点を稼いでいます。3番目にアリサリュウ選手がいてその下は総合16位のペトロキナ選手、5番目に総合10位のニコルショット選手です。

スピントップはヘンドリックス選手でただ一人26点台です。坂本選手は2番目、いつもそれほどスピンで伸びる選手ではないのですが今回はかなり稼ぎました。3番目にマライアベル選手がいます。今シーズンロシア勢以外の最高点26.45を出していたカレンチェン選手は今回は伸びずに25.23で4番目でした。

ステップ系要素は坂本選手がトップで16.15 これはフィンランディア杯のワリエワ選手16.16に次ぐ今シーズン2位のスコアです。ヘンドリックス選手が2番手。3番手以下は14点台になります。

こうしてみると坂本選手はどの要素を見ても上位にいます。ヘンドリックス選手はややジャンプの基礎点は伸びていませんが後は上位にいました。トリプルアクセル以下の闘いの場合はやはりバランスよく穴がなく、満遍なく高い出来栄えを得られる選手が強い、ということでしょうか。

 

以下、個別の要素を見ます

 

トリプルアクセル

  Name   Elements  

Base

Value

  GOE Scores  
FS Alysa LIU 1 3A< < 6.40   -0.64 5.76 -0.889
FS Young YOU 1 3A< < 6.40   -1.65 4.75 -2.556
FS HIGUCHI 1 3Aq q 8.00   -4.00 4.00 -5.000
FS KAWABE 1 3A< < 6.40   -3.02 3.38 -4.556

トリプルアクセルは今回はフリーで4人が挑戦しましたが成功者はなしでした。

基礎点満額得られたのは樋口新葉選手のみですが、樋口選手は転倒です。アリサリュウ選手、ユヨン選手は着氷しましたが回転不足。河辺選手は回転不足の両足でした。

 

○3連続ジャンプでGOEがプラス

トリプルアクセル

  Name   Elements  

Base

Value

  GOE Scores  
FS Young YOU 6 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 2.02 13.79 3.333
FS KURAKOVA 1 3Lz+1Eu+3F   11.70   1.35 13.05 2.222
FS Alysa LIU 7 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.01 12.78 1.778
FS PETROKINA 2 3Lz+1Eu+3S   10.70   1.01 11.71 1.667
FS SAKAMOTO 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.50 11.18 3.556
FS SCHIZAS 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.14 10.82 2.556
FS HENDRICKX 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.83 9.96 1.667

3連続ジャンプはフリーのみの要素ですがプラス評価を得られたのは7人でした。最高評価はダブルアクセル起点ですが坂本選手の平均GOE+3.556 それに次いでルッツ起点で最後サルコウという難しい方の3連続でユヨン選手が平均GOE3.333を得ています。これはオリンピックと同じ構図でした。

 

○セカンド3回転で平均GOEが+2.000を超えるジャンプ

  Name   Elements  

Base

Value

  GOE Scores  
SP SAKAMOTO 4 3F+3T   10.45 x 2.12 12.57 4.000
FS SAKAMOTO 6 3F+3T   10.45 x 1.74 12.19 3.333
FS MIKUTINA 1 3Lz+3T   10.10   1.69 11.79 2.778
FS GUBANOVA 1 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.333
SP HIGUCHI 2 3Lz+3T   10.10   1.35 11.45 2.444
FS SAKAMOTO 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.50 11.18 3.556
FS SCHIZAS 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.14 10.82 2.556
SP MIKUTINA 1 3F+3T   9.50   1.21 10.71 2.333
SP Dasa GRM 2 3T+3T   8.40   0.96 9.36 2.333
FS PETROKINA 1 2A+3T   7.50   0.90 8.40 2.111

セカンド3回転というのもそれほど簡単なジャンプでもなく、これが決まるかどうかがショートの鍵だったりもしました。

最高評価はここでも坂本花織選手。ショートでは平均GOE4.000を叩きだし、80点に乗せる原動力となりました。フリーの3.333も十分に高い評価ですし、基礎点はやや下がりますが3連続も+3.556 平均GOE+3以上を出したのは坂本選手のみで、しかもそれを3つ揃えた形です。圧倒的な強さ。

他は、上位に来ることが出来なかった選手の名前が目立っています。オーストリアのミクティーナ選手はショートもフリーもコンビネーションジャンプで高い評価を得ていました。

 

○平均GOE+4.000以上の要素

  Name   Elements  

Base

Value

  GOE Scores  
SP SAKAMOTO 1 2A   3.30   1.65 4.95 4.889
FS SAKAMOTO 1 2A   3.30   1.60 4.90 4.667
SP SAKAMOTO 6 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
FS SAKAMOTO 8 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
FS HENDRICKX 6 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
SP SAKAMOTO 4 3F+3T   10.45 x 2.12 12.57 4.000
SP HENDRICKX 7 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
SP Alysa LIU 7 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
FS SAKAMOTO 10 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000

要素問わず平均GOEが+4.000以上の高評価なものをリストアップしました。

坂本花織選手のショート冒頭のダブルアクセルが平均GOE+4.889で最高評価。9人のジャッジのうち8人が+5を付け、スコアとしては満点となりました。フリーのダブルアクセルも7人が+5を付けていました。

坂本選手はダブルアクセル2つ、コンビネーションジャンプにステップ2つとコレオ、合計6つの要素で+4.000以上を得ています。

ヘンドリックス選手、アリサリュウ選手といった表彰台に乗った選手も+4の評価を得た要素がありました。

 

世界選手権が終わりシニアの主な競技会は終了しました。シーズン一区切り。オリンピックシーズンの終わりは本当に一区切りという感じがします。この1カ月2カ月だけでもいろいろなことがありました。この1シーズンいろいろなことがありましたし、4年振り返るともう一昔というくらいいろいろなことがありました。

その4年間の締めくくりを坂本花織選手が飾りました。4年サイクルの締めくくりにはふさわしかったでしょうか。4回転時代、と呼ばれるようになったのがこの4年のサイクルでしたが、それがドーピング問題でおかしなことになり、さらには戦乱により壁の向こうへ4回転は去りました。いろいろなプレッシャーがあったと思いますが、今回の坂本選手は強かった。選手の皆さんはこれでしばしのオフ、とはならずにすぐにアイスショーという選手もいます。来シーズンへ向けて新しいプログラムの準備を始める選手。そして、ここで引退、という選手もいるでしょうか。さすがに国別対抗戦は無いですね今年は。

選手の皆さまおつかれさまでした。平和に皆が集まってまた競技ができる日が来ることを祈ります。

 

 

 

世界選手権22 女子シングルレビュー2

前回に引き続いて世界選手権の振り返り、女子シングルの数値編2回目です。今回はフリーになります。

 

○フリーの要素別スコア

Pl Name Nation J Base J GOE Spin Step PCS
1 Kaori SAKAMOTO JPN 45.62 10.62 13.34 10.52 75.67
2 Loena HENDRICKX BEL 42.94 4.08 13.26 10.38 72.04
3 Alysa LIU USA 49.12 2.98 12.48 8.05 66.65
4 Mariah BELL USA 40.95 2.54 13.04 9.75 69.83
5 Anastasiia GUBANOVA GEO 45.37 5.74 11.25 8.56 63.10
6 Young YOU KOR 44.06 -0.53 12.56 9.61 68.13
7 Haein LEE KOR 44.88 1.89 12.39 9.11 64.12
8 Karen CHEN USA 39.73 -1.22 12.49 9.58 65.77
9 Ekaterina KURAKOVA POL 43.87 0.89 11.12 8.72 60.91
10 Madeline SCHIZAS CAN 41.89 1.34 12.17 7.08 62.46
11 Ekaterina RYABOVA AZE 41.65 1.97 11.19 7.43 60.74
12 Wakaba HIGUCHI JPN 42.90 -6.18 11.91 9.19 65.30
13 Olga MIKUTINA AUT 42.48 -1.74 11.29 8.86 60.95
14 Nicole SCHOTT GER 34.68 2.72 11.36 7.89 64.00
15 Mana KAWABE JPN 48.84 -9.90 9.92 8.82 61.08
16 Niina PETROKINA EST 36.86 4.06 11.61 6.22 58.61
17 Lindsay van ZUNDERT NED 35.74 1.77 11.14 8.14 56.11
18 Julia SAUTER ROU 33.88 2.56 11.61 8.75 55.44
19 Alexia PAGANINI SUI 34.14 -2.34 10.17 7.13 58.83
20 Lara Naki GUTMANN ITA 33.39 0.14 10.98 8.25 53.71
21 Josefin TALJEGARD SWE 30.96 -0.13 11.43 8.39 55.07
22 Kailani CRAINE AUS 38.02 -0.93 9.81 6.04 52.17
23 Natasha McKAY GBR 35.51 0.42 8.68 7.01 51.94
24 Dasa GRM SLO 24.60 -0.96 11.23 7.13 50.30

ジャンプの基礎点はアリサリュウ選手がトップ。河辺愛菜選手が2位でした。河辺選手は出来栄えが伸びずジャンプのGOEは最下位ですが、基礎点はトリプルアクセルのアンダーローテーション以外では削られていません。全く無謀な構成だったわけではなかったということなわけです。

坂本花織選手がジャンプの基礎点は3位でした。高難度ジャンプがない、という接頭語でこの半年くらい坂本選手は紹介されていますが、ロシア勢いなければジャンプの基礎点も十分トップにいます。トリプルアクセルが入って他の要素で基礎点が下がるミスがない選手だけが坂本選手の上へ行けます。

ジャンプのGOEは坂本選手が圧倒的です。2番目は前半グループで滑ったグバノワ選手でした。先述しましたが河辺選手が最下位、下から2番目が樋口新葉選手です。3枠確保が危なくなった要因はここにあります。

スピンも坂本選手がトップでした。スピンは本人比ではそれほど得意な要素ではないはずなのですが、今シーズン最高スコアをここで出してきました。ヘンドリックス選手、マライアベル選手が13点台で続きます。

ステップ系要素も坂本選手がトップでした。ヘンドリックス選手が2位でここまでが10点台です。3番目にマライアベル選手。スピンと同じ3人が上位3人となりました。樋口選手は9.19で全体6番目。ステップ系要素の評価は高い選手なのですが、今回はやや伸びませんでした。

 

○総合上位6選手のフリーの構成

  Kaori SAKAMOTO Loena HENDRICKX Alysa LIU Mariah BELL Young YOU Anastasiia GUBANOVA
1 2A 3Lz+3T< 3A< 3F+2A+SEQ 3A< 3Lz+3T
2 3Lz! 2A 3Lo 3Lo 3Lz+3Tq 2A
3 3F+2T 3F 3F CCoSp4 1Lo 3S
4 3S 2A 2A 3T 2A 3Lo
5 FSSp4 CCoSp4 FCCoSp4 2A StSq4 ChSq1
6 3F+3T StSq4 3Lz+3T< StSq4 3Lz+1Eu+3S FCSp4
7 2A+3T+2T 3Lzq+2T 3Lz+1Eu+3S 3F+2T LSp4 3F+3T
8 StSq4 3F+2T+2Lo 3F+2T 3Lz+2T 2A+3T< 3F+2T+2T
9 CCoSp4 3S StSq3 FCCoSp4 3F!< 2A
10 ChSq1 LSp4 ChSq1 3Lzq FCCoSp4 CCoSp4
11 3Lo ChSq1 CCoSp4 ChSq1 ChSq1 StSq4
12 FCCoSp4 FCCoSp4 LSp4 LSp4 CCoSp4 LSp4
Base 62.52 59.54 65.12 57.55 60.66 61.67
GOE 17.58 11.12 7.51 8.73 5.04 9.25
PCS 75.67 72.04 66.65 69.83 68.13 63.10
Total 155.77 142.70 139.28 136.11 132.83 134.02
平均GOE 3.435 2.389 1.704 1.917 1.157 1.796

冒頭に難しいジャンプを持ってきて<マークを付けられる、というケースがよくあるわけですが、アリサリュウ選手、ユヨン選手のトリプルアクセルに、ヘンドリックス選手のセカンド3回転とそのパターンにはまってしまいました。坂本選手は全然違う思想で冒頭ジャンプは単独ダブルアクセル。以前は、トリプルアクセルをいずれ入れたいつもりの構成かなあ、と思ったりしていましたが、そうではなくてインパクトを稼ぐことを狙った構成だったのでしょうか。

マライアベル選手はアリサリュウ選手と2.53ポイント差。ちょっと基礎点の差が大きすぎました。セカンド3回転を1つ入れられれば良かったのですがフリーでは入らず。3連続も入りませんでした。一方、アリサリュウ選手は基礎点高め構成。回転不足2つやステップレベル3といった基礎点から削られる要素もありましたがベースが高かったので表彰台までたどり着きました。

加点を二桁稼いだのは2人だけ。もう少し全体の出来がいい試合が見たかったというのが正直なところですが、オリンピックシーズンの世界選手権としては仕方ないのだろうと思います。坂本花織選手のフリーで平均GOE3.435は驚異的すぎます。オリンピックの出来をさらに上回りました。

上位6選手、全員スピンは3つともレベル4。ショートでもそうでしたから1試合6つのスピンすべてレベル4だったことになります。こうでないと上位にまでは来られないようです。

 

○総合7~12位の選手のフリーの構成

  Haein LEE Karen CHEN Ekaterina RYABOVA Nicole SCHOTT Wakaba HIGUCHI Madeline SCHIZAS
1 3Lz+3Tq 2A+3Tq 3Lz+1Eu+3F 3F+3T< 3Aq 3Lz!+3T
2 3Lo 3F!q 3Lzq 3F 3Lz+3T< 3F
3 2A+3Tq 3S<< 3T 3Lo+2T 3S 2S
4 3S 2A 2A 2A CCoSp4 2A
5 FCCoSp4 StSq4 FCCoSp4 CCoSp4 1A FCSp4
6 3Lz+2T+2Loq FCCoSp4 3Lo+2A+SEQ ChSq1 3Lz+3T< StSq2
7 3Feq 3Lzq+2T+2Lo 3S+2T 2A 3Lo 2A+3T+2T
8 StSq4 3Lz ChSq1 3S+2T 3F!< 3Lo+2T
9 2A CCoSp4 3Loq 2S FCSp4 3Lo
10 ChSq1 ChSq1 CCoSp3 StSq3 StSq4 FCCoSp4
11 FCSp4 3T+2T StSq4 FCSp4 ChSq1 ChSq1
12 CCoSp4 LSp4 LSp4 LSp4 FCCoSp4 CCoSp4
Base 61.98 56.33 59.97 50.38 60.00 57.69
GOE 6.29 4.25 4.63 6.27 -2.18 4.79
PCS 64.12 65.77 60.74 64.00 65.30 62.46
Total 132.39 126.35 122.98 120.65 121.12 123.94
平均GOE 1.315 0.843 1.074 1.444 0.185 1.139

このあたりは自分で期待したような出来ではなかった選手が多いでしょうか、qや<が目立ちます。

イ・ヘイン選手は基礎点61.98で全体3番目。Qは3つつきましたが<にまではならず踏みとどまったのが7位に入るには大きかったですが、eはもったいなく、!で跳べてれば6位でした。

カレンチェン選手はジャンプ苦しみましたがそれでもPCSの高さで踏みとどまった形。リャボワ選手はこの中では数少ない力通り滑った選手かと思います。

ニコルショット選手は3連続が入らずジャンプの抜けもあり基礎点50.38ではちょっと苦しいです。樋口選手も同じように連続無しでジャンプ抜けもありましたが、ベースとなる基礎点の高さがあるので60点の基礎点はありました。ただ、加点は得られず平均GOEもほぼ0に近いところにとどまっています。

オリンピックシーズンの世界選手権の難しさを感じさせられます。

 

○フリー上位12人のPCS

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
SAKAMOTO 47.29 47.50 46.50 48.00 47.50 47.25 47.25 47.25 47.75 46.50
HENDRICKX 45.03 45.50 43.50 44.50 46.00 45.50 45.50 44.00 45.25 45.00
Alysa LIU 41.65 41.50 42.25 41.75 41.75 41.25 42.25 41.50 41.00 41.25
Mariah BELL 43.65 43.50 42.00 44.25 43.50 46.75 43.50 43.25 43.75 43.75
GUBANOVA 39.44 39.00 39.00 39.00 40.75 40.50 42.25 38.00 39.25 38.00
Young YOU 42.58 43.25 43.00 42.00 41.75 43.25 42.75 40.50 42.25 43.50
Haein LEE 40.08 41.50 41.25 41.00 38.75 39.00 40.25 38.75 40.00 40.00
Karen CHEN 41.11 42.00 40.50 40.75 40.25 42.50 41.00 40.50 41.25 41.00
KURAKOVA 38.07 35.25 37.75 38.75 40.75 37.00 38.75 37.25 38.75 38.25
SCHIZAS 39.04 39.25 38.50 39.00 38.00 38.25 38.50 40.50 39.00 40.75
RYABOVA 37.97 36.50 39.00 38.75 39.75 37.25 38.00 37.25 36.75 38.75
HIGUCHI 40.81 42.00 41.50 38.50 40.50 41.25 41.75 41.75 35.50 40.75

5項目10点満点の合計で見たPCSスコアになります。係数1.6は掛けていません。

ショートと比べるとジャッジ毎の差は小さめなようです。ショートでは同じ選手に対して8点前後の差がつくことがありましたがフリーはそこまでの差は出ていません。

 

○フリー上位12人のジャッジ別PCS順位

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
SAKAMOTO 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
HENDRICKX 2 2 2 2 2 3 2 2 2 2
Alysa LIU 5 7 4 5 4 6 5 5 6 6
Mariah BELL 3 3 5 3 3 2 3 3 3 3
GUBANOVA 10 10 10 9 6 9 5 12 9 15
Young YOU 4 4 3 4 4 4 4 6 4 4
Haein LEE 8 7 7 6 12 11 10 10 7 10
Karen CHEN 6 5 9 7 9 5 8 6 5 7
KURAKOVA 14 17 13 11 6 15 11 14 11 14
SCHIZAS 11 9 12 9 14 12 14 6 10 8
RYABOVA 15 16 10 11 10 14 15 14 16 13
HIGUCHI 7 5 6 13 8 6 7 4 18 8

坂本選手に全ジャッジが1位を付けました。どのジャッジも5項目合計で2位以下と1点以上差をつけてますし、はっきりと坂本選手が演技構成はトップである、とだれもが認めた形になりました。

滑走順の早かったグバノワ選手の評価が分かれています。この辺は比較のしにくさによるのでしょうか。滑走順が早いとPCSで損をする説。その辺が出ているようにも見えます。

樋口選手の評価も分かれていて、4位もいれば18位もいるという。ちょっと評価分かれすぎです。

 

もう一回続きます。

世界選手権22 女子シングルレビュー1

前回は感想ということで文章を並べましたが、今回からは数値編になります。

総合順位は感想のところで出しましたので飛ばして、それぞれの中身に最初から入ります。

 

ショートプログラム要素別スコア

Pl Name Nation J Base J GOE Spin Step PCS
1 Kaori SAKAMOTO JPN 19.65 5.46 12.51 5.63 37.07
2 Loena HENDRICKX BEL 19.23 3.17 12.83 5.29 34.48
3 Mariah BELL USA 19.29 1.86 12.28 5.24 33.88
4 Young YOU KOR 19.23 0.95 12.57 5.29 34.04
5 Alysa LIU USA 19.71 2.98 12.27 4.15 32.80
6 Nicole SCHOTT GER 18.03 2.57 11.52 4.79 30.86
7 Wakaba HIGUCHI JPN 18.06 -0.07 11.38 5.18 32.48
8 Karen CHEN USA 13.40 1.07 12.74 5.24 33.71
9 Ekaterina RYABOVA AZE 19.23 1.48 10.93 4.62 29.26
10 Madeline SCHIZAS CAN 18.63 0.53 11.10 4.20 29.74
11 Haein LEE KOR 15.28 0.96 11.66 4.43 31.83
12 Mana KAWABE JPN 19.23 -1.24 10.65 4.85 30.19
13 Alexia PAGANINI SUI 18.63 0.60 10.10 4.01 29.75
14 Anastasiia GUBANOVA GEO 19.71 -1.96 11.20 4.85 29.79
15 Olga MIKUTINA AUT 12.80 1.78 11.97 4.96 30.63
16 Ekaterina KURAKOVA POL 15.29 -0.92 11.93 4.96 30.66
17 Niina PETROKINA EST 16.33 1.85 9.26 4.79 28.01
18 Lindsay van ZUNDERT NED 15.89 1.49 10.95 3.72 26.44
19 Julia SAUTER ROU 16.93 0.00 10.46 4.51 26.17
20 Lara Naki GUTMANN ITA 16.13 0.44 9.02 4.62 27.71
21 Josefin TALJEGARD SWE 14.43 0.31 10.36 4.85 27.57
22 Kailani CRAINE AUS 15.53 -0.34 10.14 4.46 26.85
23 Dasa GRM SLO 16.60 -0.59 10.52 3.25 27.04
24 Natasha McKAY GBR 13.80 1.87 9.63 3.63 26.78
25 Jenni SAARINEN FIN 16.33 -2.35 9.36 4.85 28.11
26 Tzu-Han TING TPE 18.19 -2.70 11.10 3.82 25.83
27 Eliska BREZINOVA CZE 12.50 1.80 10.12 3.25 27.40
28 Alexandra FEIGIN BUL 17.09 -2.06 10.32 3.58 26.08
29 Lea SERNA FRA 18.39 -3.17 10.70 3.63 25.75
30 Marilena KITROMILIS CYP 13.40 1.56 8.52 3.82 26.02
31 Julia LANG HUN 13.51 -3.02 9.88 2.93 25.63
32 Stefanie PESENDORFER AUT 12.48 -1.84 9.77 2.60 24.22
33 Anete LACE LAT 11.23 -3.42 10.04 3.44 24.31

ショートプログラムトリプルアクセルが入ると基礎点が頭一つ抜けることができるのですが、今回は結局誰もショートでは構成に入れてきませんでした。従って、ジャンプの基礎点トップは1.1倍に3Lz-3Tを入れる選手となり、アリサリュウ選手とグバノワ選手でした。アリサリュウ選手は意図的にやってますがグバノワ選手は冒頭フリップ転倒のリカバリーで結果的にこうなった形。ただ、リカバリーのコンビネーションを何とか決めたことがフリーの大逆襲からのエキシビジョン出場ついでにジャスミン化につながりました。坂本選手は3F-3Tの1.1倍なので0.06基礎点が低くなります。カレンチェン選手はループ0点で基礎点が著しく引かれています。これでよく8位に残ったなというところですが、このループ0点が結局最終的にフリーでループなし構成を組ませる決断をさせたのでしょう。基礎点19.23が何人もいますが、これは3Lz-3Tを1つ目に入れて3Fを1.1倍にするとこうなるというもので、ヘンドリックス選手、ユヨン選手、リャボワ選手、河辺愛菜選手と4人います。河辺選手はトリプルアクセル無しでも決して構成は弱くないです。この構成をわずかに上回るのがマライアベル選手。コンビネーションをフリップにして単独をルッツにした方が基礎点を0.06高くできます。樋口選手は19.23構成なのですがフリップがeのため基礎点削られました。

ジャンプの加点は坂本花織選手がトップ。当たり前のようにトップです。ヘンドリックス選手が2位、アリサリュウ選手が3位、意外なところでニコルショット選手が4位にいます。樋口選手はわずかにマイナス、河辺選手は-1.24ではっきりとマイナス。出来栄えでスコアを伸ばせませんでした、

スピンはヘンドリックス選手がトップでカレンチェン選手が2位。スピンに定評がある選手たちが順当に高い評価を得ています。坂本選手は4番目。樋口選手は一つレベル3になりスコアが伸びず、河辺選手も一つレベル3で加点も伸びずに全体平均を下回るスコアになりました。

ステップは坂本選手がトップ。ヘンドリックス選手とユヨン選手が2番目です。ユヨン選手はトリプルアクセルのイメージが強いですが、スピンステップで点が取れるようになっています。カレンチェン選手とマライアベル選手、アメリカ勢が4番目でした。樋口選手はその次で6番目とまずまずくらいでした。

PCSは坂本選手が一人抜けています。ヘンドリックス選手が2番手でユヨン選手が3番目。樋口選手はオリンピックの時ほどは伸ばせずに6番目でした。

 

○総合上位6選手のショートプログラム構成

  Kaori SAKAMOTO Loena HENDRICKX Alysa LIU Mariah BELL Young YOU Anastasiia GUBANOVA
1 2A 3Lz+3T 2A 3F+3Tq 2A 3F
2 3Lz 2A 3F 2A 3Lz+3Tq 2A
3 CCoSp4 CCoSp4 FCSp4 FSSp4 FCSp4 FCSp4
4 3F+3T 3F 3Lz+3T 3Lz LSp4 3Lz+3T
5 FCSp4 FCSp4 CCoSp4 StSq4 3F!q CCoSp4
6 StSq4 StSq4 StSq3 CCoSp4 StSq4 StSq4
7 LSp4 LSp4 LSp4 LSp4 CCoSp4 LSp4
Base 32.95 32.53 32.41 32.39 32.53 33.01
GOE 10.30 7.99 6.70 6.28 5.51 0.79
PCS 37.07 34.48 32.80 33.88 34.04 29.79
Total 80.32 75.00 71.91 72.55 72.08 62.59
平均GOE 3.714 3.032 2.587 2.492 2.444 0.714

総合上位6位までに入った選手のショートプログラム構成ですが、スピンは全員3つともレベル4でした。さすがです。ステップはアリサリュウ選手のみレベル3 こうなると基礎点はジャンプでしか差が付きませんがトリプルアクセルを誰も入れなかったことで、基礎点の差は全員1点以内という僅差になっています。結果として出来栄えGOEとPCSの差がスコアの差となって現れます。

こうなると坂本選手が強いです。ヘンドリックス選手もケガの影響は見られず平均GOE3.000を超える評価を得ました。グバノワ選手は冒頭フリップ転倒があったため加点は伸びていません。

 

○総合7~12位の選手のショートプログラム構成

  Haein LEE Karen CHEN Ekaterina RYABOVA Nicole SCHOTT Wakaba HIGUCHI Madeline SCHIZAS
1 3Lz< 3Lz+3Tq 3Lz+3T 3F+3T 2A 3Lz+3Tq
2 2A 2A 2A 3Lo 3Lz+3T 3Lo
3 FCSp4 CCoSp4 CCoSp4 FCSp4 FCSp4 FCSp4
4 SSp4 1Lo* 3F 2A 3Fe 2A
5 3F+2T FCSp4 StSq4 CCoSp4 CCoSp3 StSq3
6 CCoSp4 StSq4 FCSp4 StSq4 StSq4 CCoSp4
7 StSq3 LSp4 LSp4 LSp4 LSp4 LSp4
Base 27.78 26.70 32.53 31.33 30.86 31.33
GOE 4.55 5.75 3.73 5.58 3.69 3.13
PCS 31.83 33.71 29.26 30.86 32.48 29.74
Total 64.16 66.16 65.52 67.77 67.03 64.20
平均GOE 1.889 2.907 1.349 2.079 1.444 1.333

イ・ヘイン選手、カレンチェン選手は基礎点伸びず。ジャンプの抜けはやはり厳しいですし、セカンド3回転が入らないと世界のトップ10で争うにはなかなか厳しいです。カレンチェン選手は入った要素の平均GOEは+2.907と全体で3番目。このあたりが要素一つ零点になっても上位に何とか残れている要因でもあります。

樋口選手はフリップのeとスピンレベル3で基礎点が上位陣の中では下がっています。EがつくとGOEも下がるので厳しいショートになりました。

リャボワ選手、ショット選手はミスなく滑っているのですがこのあたりの選手はPCSが出ません。その辺が上位と戦うには、特に今回は上位5人と戦うには少し厳しいところでした。

 

ショートプログラム上位12人のPCS

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
SAKAMOTO 46.32 47.00 47.75 47.75 45.75 45.00 45.25 47.25 45.25 45.75
HENDRICKX 43.10 44.75 42.75 45.50 42.25 46.00 41.50 43.00 40.00 42.25
BELL 42.36 43.50 43.75 44.25 42.50 40.25 39.25 41.75 43.75 41.25
Young YOU 42.55 43.25 43.00 44.50 43.75 42.25 39.75 42.00 40.25 43.00
LIU 41.00 41.00 40.75 41.50 40.50 41.00 38.75 42.00 40.75 41.50
SCHOTT 38.57 36.75 40.50 39.50 38.50 39.00 38.00 39.00 36.00 38.75
HIGUCHI 40.61 41.25 40.50 42.75 39.25 38.75 36.75 43.25 39.75 42.00
CHEN 42.14 41.50 42.75 43.25 43.25 41.00 40.50 42.50 42.75 41.00
RYABOVA 36.57 34.50 37.50 39.50 37.50 39.25 31.75 36.50 34.25 36.75
SCHIZAS 37.18 35.50 40.50 36.50 39.75 38.25 35.25 38.25 34.75 36.75
Haein LEE 39.79 38.50 42.50 41.75 42.25 38.75 33.75 39.00 36.50 41.75
KAWABE 37.75 35.25 39.75 40.25 39.25 36.50 32.25 37.25 38.00 38.50

5項目10点満点の合計で見たPCSスコアになります。係数0.8は掛けていません。

ジャッジ毎のばらつきはやはりけっこうあるなあ、というのが見て取れます。33選手全体へのスコアが一番高かったのがジャッジ5で平均37.500 一番低かったのがジャッジ6の平均34.189 平均でこれですからずいぶん差があります。面白いのは、坂本選手はその一番甘いジャッジ5よりも一番厳しいジャッジ6の方が点数が高い、というようなこともあったりしました。

10位前後の選手になると、同じ演技に対してPCSが係数0.8を掛ける前の時点で8点程度の差が最大と最低でついていたりします。

 

ショートプログラム上位12人のジャッジ別PCS順位

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Kaori SAKAMOTO 1 1 1 1 1 2 1 1 1 1
Loena HENDRICKX 2 2 4 2 5 1 2 3 6 3
Mariah BELL 4 3 2 4 4 6 5 7 2 7
Young YOU 3 4 3 3 2 3 4 5 5 2
Alysa LIU 6 7 7 8 7 4 6 5 4 6
Nicole SCHOTT 9 11 8 11 12 10 8 9 13 9
Wakaba HIGUCHI 7 6 8 6 9 12 10 2 7 4
Karen CHEN 5 5 4 5 3 4 3 4 3 8
Ekaterina RYABOVA 16 16 16 11 15 9 24 16 16 15
Madeline SCHIZAS 14 13 8 15 8 15 13 11 15 15
Haein LEE 8 8 6 7 5 12 16 9 12 5
Mana KAWABE 12 14 12 10 9 19 20 13 9 10

PCSの順位をジャッジ毎に見ると、坂本選手が1位というのが8人。一番厳しい甘いジャッジ5はヘンドリックス選手の方が1位としていました。

樋口新葉選手の評価は著しく分かれています。リャボワ選手、河辺愛菜選手あたりもだいぶ評価が分かれました。ジャッジ運でずいぶんスコア変わるなあ、という感じがあります。

 

次回フリーへ続きます。