世界選手権22 女子シングルレビュー2

前回に引き続いて世界選手権の振り返り、女子シングルの数値編2回目です。今回はフリーになります。

 

○フリーの要素別スコア

Pl Name Nation J Base J GOE Spin Step PCS
1 Kaori SAKAMOTO JPN 45.62 10.62 13.34 10.52 75.67
2 Loena HENDRICKX BEL 42.94 4.08 13.26 10.38 72.04
3 Alysa LIU USA 49.12 2.98 12.48 8.05 66.65
4 Mariah BELL USA 40.95 2.54 13.04 9.75 69.83
5 Anastasiia GUBANOVA GEO 45.37 5.74 11.25 8.56 63.10
6 Young YOU KOR 44.06 -0.53 12.56 9.61 68.13
7 Haein LEE KOR 44.88 1.89 12.39 9.11 64.12
8 Karen CHEN USA 39.73 -1.22 12.49 9.58 65.77
9 Ekaterina KURAKOVA POL 43.87 0.89 11.12 8.72 60.91
10 Madeline SCHIZAS CAN 41.89 1.34 12.17 7.08 62.46
11 Ekaterina RYABOVA AZE 41.65 1.97 11.19 7.43 60.74
12 Wakaba HIGUCHI JPN 42.90 -6.18 11.91 9.19 65.30
13 Olga MIKUTINA AUT 42.48 -1.74 11.29 8.86 60.95
14 Nicole SCHOTT GER 34.68 2.72 11.36 7.89 64.00
15 Mana KAWABE JPN 48.84 -9.90 9.92 8.82 61.08
16 Niina PETROKINA EST 36.86 4.06 11.61 6.22 58.61
17 Lindsay van ZUNDERT NED 35.74 1.77 11.14 8.14 56.11
18 Julia SAUTER ROU 33.88 2.56 11.61 8.75 55.44
19 Alexia PAGANINI SUI 34.14 -2.34 10.17 7.13 58.83
20 Lara Naki GUTMANN ITA 33.39 0.14 10.98 8.25 53.71
21 Josefin TALJEGARD SWE 30.96 -0.13 11.43 8.39 55.07
22 Kailani CRAINE AUS 38.02 -0.93 9.81 6.04 52.17
23 Natasha McKAY GBR 35.51 0.42 8.68 7.01 51.94
24 Dasa GRM SLO 24.60 -0.96 11.23 7.13 50.30

ジャンプの基礎点はアリサリュウ選手がトップ。河辺愛菜選手が2位でした。河辺選手は出来栄えが伸びずジャンプのGOEは最下位ですが、基礎点はトリプルアクセルのアンダーローテーション以外では削られていません。全く無謀な構成だったわけではなかったということなわけです。

坂本花織選手がジャンプの基礎点は3位でした。高難度ジャンプがない、という接頭語でこの半年くらい坂本選手は紹介されていますが、ロシア勢いなければジャンプの基礎点も十分トップにいます。トリプルアクセルが入って他の要素で基礎点が下がるミスがない選手だけが坂本選手の上へ行けます。

ジャンプのGOEは坂本選手が圧倒的です。2番目は前半グループで滑ったグバノワ選手でした。先述しましたが河辺選手が最下位、下から2番目が樋口新葉選手です。3枠確保が危なくなった要因はここにあります。

スピンも坂本選手がトップでした。スピンは本人比ではそれほど得意な要素ではないはずなのですが、今シーズン最高スコアをここで出してきました。ヘンドリックス選手、マライアベル選手が13点台で続きます。

ステップ系要素も坂本選手がトップでした。ヘンドリックス選手が2位でここまでが10点台です。3番目にマライアベル選手。スピンと同じ3人が上位3人となりました。樋口選手は9.19で全体6番目。ステップ系要素の評価は高い選手なのですが、今回はやや伸びませんでした。

 

○総合上位6選手のフリーの構成

  Kaori SAKAMOTO Loena HENDRICKX Alysa LIU Mariah BELL Young YOU Anastasiia GUBANOVA
1 2A 3Lz+3T< 3A< 3F+2A+SEQ 3A< 3Lz+3T
2 3Lz! 2A 3Lo 3Lo 3Lz+3Tq 2A
3 3F+2T 3F 3F CCoSp4 1Lo 3S
4 3S 2A 2A 3T 2A 3Lo
5 FSSp4 CCoSp4 FCCoSp4 2A StSq4 ChSq1
6 3F+3T StSq4 3Lz+3T< StSq4 3Lz+1Eu+3S FCSp4
7 2A+3T+2T 3Lzq+2T 3Lz+1Eu+3S 3F+2T LSp4 3F+3T
8 StSq4 3F+2T+2Lo 3F+2T 3Lz+2T 2A+3T< 3F+2T+2T
9 CCoSp4 3S StSq3 FCCoSp4 3F!< 2A
10 ChSq1 LSp4 ChSq1 3Lzq FCCoSp4 CCoSp4
11 3Lo ChSq1 CCoSp4 ChSq1 ChSq1 StSq4
12 FCCoSp4 FCCoSp4 LSp4 LSp4 CCoSp4 LSp4
Base 62.52 59.54 65.12 57.55 60.66 61.67
GOE 17.58 11.12 7.51 8.73 5.04 9.25
PCS 75.67 72.04 66.65 69.83 68.13 63.10
Total 155.77 142.70 139.28 136.11 132.83 134.02
平均GOE 3.435 2.389 1.704 1.917 1.157 1.796

冒頭に難しいジャンプを持ってきて<マークを付けられる、というケースがよくあるわけですが、アリサリュウ選手、ユヨン選手のトリプルアクセルに、ヘンドリックス選手のセカンド3回転とそのパターンにはまってしまいました。坂本選手は全然違う思想で冒頭ジャンプは単独ダブルアクセル。以前は、トリプルアクセルをいずれ入れたいつもりの構成かなあ、と思ったりしていましたが、そうではなくてインパクトを稼ぐことを狙った構成だったのでしょうか。

マライアベル選手はアリサリュウ選手と2.53ポイント差。ちょっと基礎点の差が大きすぎました。セカンド3回転を1つ入れられれば良かったのですがフリーでは入らず。3連続も入りませんでした。一方、アリサリュウ選手は基礎点高め構成。回転不足2つやステップレベル3といった基礎点から削られる要素もありましたがベースが高かったので表彰台までたどり着きました。

加点を二桁稼いだのは2人だけ。もう少し全体の出来がいい試合が見たかったというのが正直なところですが、オリンピックシーズンの世界選手権としては仕方ないのだろうと思います。坂本花織選手のフリーで平均GOE3.435は驚異的すぎます。オリンピックの出来をさらに上回りました。

上位6選手、全員スピンは3つともレベル4。ショートでもそうでしたから1試合6つのスピンすべてレベル4だったことになります。こうでないと上位にまでは来られないようです。

 

○総合7~12位の選手のフリーの構成

  Haein LEE Karen CHEN Ekaterina RYABOVA Nicole SCHOTT Wakaba HIGUCHI Madeline SCHIZAS
1 3Lz+3Tq 2A+3Tq 3Lz+1Eu+3F 3F+3T< 3Aq 3Lz!+3T
2 3Lo 3F!q 3Lzq 3F 3Lz+3T< 3F
3 2A+3Tq 3S<< 3T 3Lo+2T 3S 2S
4 3S 2A 2A 2A CCoSp4 2A
5 FCCoSp4 StSq4 FCCoSp4 CCoSp4 1A FCSp4
6 3Lz+2T+2Loq FCCoSp4 3Lo+2A+SEQ ChSq1 3Lz+3T< StSq2
7 3Feq 3Lzq+2T+2Lo 3S+2T 2A 3Lo 2A+3T+2T
8 StSq4 3Lz ChSq1 3S+2T 3F!< 3Lo+2T
9 2A CCoSp4 3Loq 2S FCSp4 3Lo
10 ChSq1 ChSq1 CCoSp3 StSq3 StSq4 FCCoSp4
11 FCSp4 3T+2T StSq4 FCSp4 ChSq1 ChSq1
12 CCoSp4 LSp4 LSp4 LSp4 FCCoSp4 CCoSp4
Base 61.98 56.33 59.97 50.38 60.00 57.69
GOE 6.29 4.25 4.63 6.27 -2.18 4.79
PCS 64.12 65.77 60.74 64.00 65.30 62.46
Total 132.39 126.35 122.98 120.65 121.12 123.94
平均GOE 1.315 0.843 1.074 1.444 0.185 1.139

このあたりは自分で期待したような出来ではなかった選手が多いでしょうか、qや<が目立ちます。

イ・ヘイン選手は基礎点61.98で全体3番目。Qは3つつきましたが<にまではならず踏みとどまったのが7位に入るには大きかったですが、eはもったいなく、!で跳べてれば6位でした。

カレンチェン選手はジャンプ苦しみましたがそれでもPCSの高さで踏みとどまった形。リャボワ選手はこの中では数少ない力通り滑った選手かと思います。

ニコルショット選手は3連続が入らずジャンプの抜けもあり基礎点50.38ではちょっと苦しいです。樋口選手も同じように連続無しでジャンプ抜けもありましたが、ベースとなる基礎点の高さがあるので60点の基礎点はありました。ただ、加点は得られず平均GOEもほぼ0に近いところにとどまっています。

オリンピックシーズンの世界選手権の難しさを感じさせられます。

 

○フリー上位12人のPCS

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
SAKAMOTO 47.29 47.50 46.50 48.00 47.50 47.25 47.25 47.25 47.75 46.50
HENDRICKX 45.03 45.50 43.50 44.50 46.00 45.50 45.50 44.00 45.25 45.00
Alysa LIU 41.65 41.50 42.25 41.75 41.75 41.25 42.25 41.50 41.00 41.25
Mariah BELL 43.65 43.50 42.00 44.25 43.50 46.75 43.50 43.25 43.75 43.75
GUBANOVA 39.44 39.00 39.00 39.00 40.75 40.50 42.25 38.00 39.25 38.00
Young YOU 42.58 43.25 43.00 42.00 41.75 43.25 42.75 40.50 42.25 43.50
Haein LEE 40.08 41.50 41.25 41.00 38.75 39.00 40.25 38.75 40.00 40.00
Karen CHEN 41.11 42.00 40.50 40.75 40.25 42.50 41.00 40.50 41.25 41.00
KURAKOVA 38.07 35.25 37.75 38.75 40.75 37.00 38.75 37.25 38.75 38.25
SCHIZAS 39.04 39.25 38.50 39.00 38.00 38.25 38.50 40.50 39.00 40.75
RYABOVA 37.97 36.50 39.00 38.75 39.75 37.25 38.00 37.25 36.75 38.75
HIGUCHI 40.81 42.00 41.50 38.50 40.50 41.25 41.75 41.75 35.50 40.75

5項目10点満点の合計で見たPCSスコアになります。係数1.6は掛けていません。

ショートと比べるとジャッジ毎の差は小さめなようです。ショートでは同じ選手に対して8点前後の差がつくことがありましたがフリーはそこまでの差は出ていません。

 

○フリー上位12人のジャッジ別PCS順位

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
SAKAMOTO 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
HENDRICKX 2 2 2 2 2 3 2 2 2 2
Alysa LIU 5 7 4 5 4 6 5 5 6 6
Mariah BELL 3 3 5 3 3 2 3 3 3 3
GUBANOVA 10 10 10 9 6 9 5 12 9 15
Young YOU 4 4 3 4 4 4 4 6 4 4
Haein LEE 8 7 7 6 12 11 10 10 7 10
Karen CHEN 6 5 9 7 9 5 8 6 5 7
KURAKOVA 14 17 13 11 6 15 11 14 11 14
SCHIZAS 11 9 12 9 14 12 14 6 10 8
RYABOVA 15 16 10 11 10 14 15 14 16 13
HIGUCHI 7 5 6 13 8 6 7 4 18 8

坂本選手に全ジャッジが1位を付けました。どのジャッジも5項目合計で2位以下と1点以上差をつけてますし、はっきりと坂本選手が演技構成はトップである、とだれもが認めた形になりました。

滑走順の早かったグバノワ選手の評価が分かれています。この辺は比較のしにくさによるのでしょうか。滑走順が早いとPCSで損をする説。その辺が出ているようにも見えます。

樋口選手の評価も分かれていて、4位もいれば18位もいるという。ちょっと評価分かれすぎです。

 

もう一回続きます。