世界選手権22 女子シングルレビュー3

世界選手権の振り返り、女子シングルの数値編3回目。これが最終になります。

 

○要素別のスコア

Pl Name Nation Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 SAKAMOTO JPN 236.09 112.74 65.27 16.08 25.85 16.15
2 HENDRICKX BEL 217.70 106.52 62.17 7.25 26.09 15.67
3 Alysa LIU USA 211.19 99.45 68.83 5.96 24.75 12.20
4 BELL USA 208.66 103.71 60.24 4.40 25.32 14.99
5 Young YOU KOR 204.91 102.17 63.29 0.42 25.13 14.90
6 GUBANOVA GEO 196.61 92.89 65.08 3.78 22.45 13.41
7 Haein LEE KOR 196.55 95.95 60.16 2.85 24.05 13.54
8 Karen CHEN USA 192.51 99.48 53.13 -0.15 25.23 14.82
9 RYABOVA AZE 188.50 90.00 60.88 3.45 22.12 12.05
10 SCHOTT GER 188.42 94.86 52.71 5.29 22.88 12.68
11 HIGUCHI JPN 188.15 97.78 60.96 -6.25 23.29 14.37
12 SCHIZAS CAN 188.14 92.20 60.52 1.87 23.27 11.28
13 KURAKOVA POL 186.43 91.57 59.16 -0.03 23.05 13.68
14 MIKUTINA AUT 182.98 91.58 55.28 0.04 23.26 13.82
15 KAWABE JPN 182.44 91.27 68.07 -11.14 20.57 13.67
16 PETROKINA EST 176.60 86.62 53.19 5.91 20.87 11.01
17 ZUNDERT NED 171.39 82.55 51.63 3.26 22.09 11.86
18 SAUTER ROU 170.31 81.61 50.81 2.56 22.07 13.26
19 PAGANINI SUI 170.02 88.58 52.77 -1.74 20.27 11.14
20  GUTMANN ITA 164.39 81.42 49.52 0.58 20.00 12.87
21 TALJEGARD SWE 163.24 82.64 45.39 0.18 21.79 13.24
22 CRAINE AUS 161.75 79.02 53.55 -1.27 19.95 10.50
23 McKAY GBR 159.27 78.72 49.31 2.29 18.31 10.64
24 Dasa GRM SLO 147.12 77.34 41.20 -1.55 21.75 10.38

フリー進出24人のショートフリー合わせた要素別のスコアを見ていきます。

PCSは坂本選手がトップ。112.74はオリンピックのシェルバコワ選手も上回るスコアになります。100点を超えたのは3人。アリサリュウ選手は99点台で100点に届きませんでした。技術点なら全体2位なのですがPCSでヘンドリックス選手に逆転されています。

ジャンプの基礎点はアリサリュウ選手がトップ。2番目は河辺愛菜選手です。高い基礎点のジャンプ構成は組めているんです。あとはしっかり降りることで、それが出来た全日本とそれが出来なかったオリンピック世界選手権、という構図でした。坂本選手は3番目でした。

ジャンプの加点は坂本選手が圧倒的。2番目にヘンドリックス選手が来ます。ジャンプのイメージの強い選手たちではないのですが、3回転までのジャンプをきっちり成功させて出来栄え点を稼いでいます。3番目にアリサリュウ選手がいてその下は総合16位のペトロキナ選手、5番目に総合10位のニコルショット選手です。

スピントップはヘンドリックス選手でただ一人26点台です。坂本選手は2番目、いつもそれほどスピンで伸びる選手ではないのですが今回はかなり稼ぎました。3番目にマライアベル選手がいます。今シーズンロシア勢以外の最高点26.45を出していたカレンチェン選手は今回は伸びずに25.23で4番目でした。

ステップ系要素は坂本選手がトップで16.15 これはフィンランディア杯のワリエワ選手16.16に次ぐ今シーズン2位のスコアです。ヘンドリックス選手が2番手。3番手以下は14点台になります。

こうしてみると坂本選手はどの要素を見ても上位にいます。ヘンドリックス選手はややジャンプの基礎点は伸びていませんが後は上位にいました。トリプルアクセル以下の闘いの場合はやはりバランスよく穴がなく、満遍なく高い出来栄えを得られる選手が強い、ということでしょうか。

 

以下、個別の要素を見ます

 

トリプルアクセル

  Name   Elements  

Base

Value

  GOE Scores  
FS Alysa LIU 1 3A< < 6.40   -0.64 5.76 -0.889
FS Young YOU 1 3A< < 6.40   -1.65 4.75 -2.556
FS HIGUCHI 1 3Aq q 8.00   -4.00 4.00 -5.000
FS KAWABE 1 3A< < 6.40   -3.02 3.38 -4.556

トリプルアクセルは今回はフリーで4人が挑戦しましたが成功者はなしでした。

基礎点満額得られたのは樋口新葉選手のみですが、樋口選手は転倒です。アリサリュウ選手、ユヨン選手は着氷しましたが回転不足。河辺選手は回転不足の両足でした。

 

○3連続ジャンプでGOEがプラス

トリプルアクセル

  Name   Elements  

Base

Value

  GOE Scores  
FS Young YOU 6 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 2.02 13.79 3.333
FS KURAKOVA 1 3Lz+1Eu+3F   11.70   1.35 13.05 2.222
FS Alysa LIU 7 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.01 12.78 1.778
FS PETROKINA 2 3Lz+1Eu+3S   10.70   1.01 11.71 1.667
FS SAKAMOTO 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.50 11.18 3.556
FS SCHIZAS 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.14 10.82 2.556
FS HENDRICKX 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.83 9.96 1.667

3連続ジャンプはフリーのみの要素ですがプラス評価を得られたのは7人でした。最高評価はダブルアクセル起点ですが坂本選手の平均GOE+3.556 それに次いでルッツ起点で最後サルコウという難しい方の3連続でユヨン選手が平均GOE3.333を得ています。これはオリンピックと同じ構図でした。

 

○セカンド3回転で平均GOEが+2.000を超えるジャンプ

  Name   Elements  

Base

Value

  GOE Scores  
SP SAKAMOTO 4 3F+3T   10.45 x 2.12 12.57 4.000
FS SAKAMOTO 6 3F+3T   10.45 x 1.74 12.19 3.333
FS MIKUTINA 1 3Lz+3T   10.10   1.69 11.79 2.778
FS GUBANOVA 1 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.333
SP HIGUCHI 2 3Lz+3T   10.10   1.35 11.45 2.444
FS SAKAMOTO 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.50 11.18 3.556
FS SCHIZAS 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.14 10.82 2.556
SP MIKUTINA 1 3F+3T   9.50   1.21 10.71 2.333
SP Dasa GRM 2 3T+3T   8.40   0.96 9.36 2.333
FS PETROKINA 1 2A+3T   7.50   0.90 8.40 2.111

セカンド3回転というのもそれほど簡単なジャンプでもなく、これが決まるかどうかがショートの鍵だったりもしました。

最高評価はここでも坂本花織選手。ショートでは平均GOE4.000を叩きだし、80点に乗せる原動力となりました。フリーの3.333も十分に高い評価ですし、基礎点はやや下がりますが3連続も+3.556 平均GOE+3以上を出したのは坂本選手のみで、しかもそれを3つ揃えた形です。圧倒的な強さ。

他は、上位に来ることが出来なかった選手の名前が目立っています。オーストリアのミクティーナ選手はショートもフリーもコンビネーションジャンプで高い評価を得ていました。

 

○平均GOE+4.000以上の要素

  Name   Elements  

Base

Value

  GOE Scores  
SP SAKAMOTO 1 2A   3.30   1.65 4.95 4.889
FS SAKAMOTO 1 2A   3.30   1.60 4.90 4.667
SP SAKAMOTO 6 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
FS SAKAMOTO 8 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
FS HENDRICKX 6 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
SP SAKAMOTO 4 3F+3T   10.45 x 2.12 12.57 4.000
SP HENDRICKX 7 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
SP Alysa LIU 7 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
FS SAKAMOTO 10 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000

要素問わず平均GOEが+4.000以上の高評価なものをリストアップしました。

坂本花織選手のショート冒頭のダブルアクセルが平均GOE+4.889で最高評価。9人のジャッジのうち8人が+5を付け、スコアとしては満点となりました。フリーのダブルアクセルも7人が+5を付けていました。

坂本選手はダブルアクセル2つ、コンビネーションジャンプにステップ2つとコレオ、合計6つの要素で+4.000以上を得ています。

ヘンドリックス選手、アリサリュウ選手といった表彰台に乗った選手も+4の評価を得た要素がありました。

 

世界選手権が終わりシニアの主な競技会は終了しました。シーズン一区切り。オリンピックシーズンの終わりは本当に一区切りという感じがします。この1カ月2カ月だけでもいろいろなことがありました。この1シーズンいろいろなことがありましたし、4年振り返るともう一昔というくらいいろいろなことがありました。

その4年間の締めくくりを坂本花織選手が飾りました。4年サイクルの締めくくりにはふさわしかったでしょうか。4回転時代、と呼ばれるようになったのがこの4年のサイクルでしたが、それがドーピング問題でおかしなことになり、さらには戦乱により壁の向こうへ4回転は去りました。いろいろなプレッシャーがあったと思いますが、今回の坂本選手は強かった。選手の皆さんはこれでしばしのオフ、とはならずにすぐにアイスショーという選手もいます。来シーズンへ向けて新しいプログラムの準備を始める選手。そして、ここで引退、という選手もいるでしょうか。さすがに国別対抗戦は無いですね今年は。

選手の皆さまおつかれさまでした。平和に皆が集まってまた競技ができる日が来ることを祈ります。