エーニャスプリングトロフィー トリプルアクセル祭り

4月に入っても国際大会は残っています。世界ジュニアというイベントもありますが、その前B級大会でエーニャスプリングトロフィーが入りました。コロナでここ2シーズン国際大会派遣が滞っていたからか、日本勢が7人もエントリーしました。

 

○女子シングルシニア

Pl Name Nation Total SP FS
1 Hana YOSHIDA JPN 210.77 73.04 137.73
2 Haein LEE KOR 182.32 60.99 121.33
3 Mone CHIBA JPN 178.60 67.78 110.82
4 Marina PIREDDA ITA 152.57 57.20 95.37
5 Maé-Bérénice MÉITÉ FRA 142.13 53.15 88.98
6 Roberta RODEGHIERO ITA 132.46 49.31 83.15
7 Emma KARJALAINEN FIN 120.47 49.78 70.69
8 Frida Turiddotter BERGE NOR 109.96 43.85 66.11
9 Ester SCHWARZ ITA 103.41 41.90 61.51

女子シングルシニアは4月のB級大会としては意外に知名度ある選手もエントリーしてきていました。それら世界選手権経験者たちを抑えて、シニアの国際大会初出場の吉田陽菜選手が210点を超えるスコアで圧勝しました。世界選手権なら4位相当のスコアでした。本人比で国内でも出したことのない極めて高いスコアです。

2位は韓国イ・ヘイン選手。世界選手権7位から間を置かずに登場。韓国なので同姓同名別人? というのを演技見るまでは疑ったのですが、間違いなく世界選手権7位、四大陸2位のイ・ヘイン選手でした。さすがにノーミスというわけにはいかず、それほど良い出来ではありませんでした。

千葉百音選手が3位。ショートはいい出来で2位スタートでしたがフリーは2転倒で残念ながらスコアが伸びませんでした。それでも国際大会シニアデビュー戦で3位。203ポイントを得て世界ランキング152位に名を連ねました。フリーも悪いながらも技術点55.09は取っていて、これは世界選手権のミニマムスコア51.00を上回ります。これで来シーズン、全日本でいい成績を上げさえすれば、あとはどの大会にも出られます。

4位にイタリアのピレッダ選手。世界選手権に出場経験のある選手です。5位にはフランスのメイテ選手。大ベテラン。ケガで試合に出ていなかったようですが、ぎりぎり今シーズン最後に試合を1つ入れられるくらいに回復したようです。6位のイタリア、ロデギエーロ選手も世界選手権のかつての常連で、4月のB級大会とは思えない面々が顔を連ねていました。

 

○吉田陽菜選手のショートプログラム構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3A   8.00   2.40 10.40 3.200
2 3Lz+3T   10.10   1.38 11.48 2.400
3 FSSp4   3.00   0.60 3.60 2.200
4 CSp4   2.60   0.52 3.12 1.600
5 3Lo< 4.31 x -0.52 3.79 -1.400
6 StSq4   3.90   0.91 4.81 2.400
7 CCoSp4   3.50   1.28 4.78 3.600
  TES   35.41   6.57 41.98  

出ました、技術点41.98のショートプログラム。今シーズン国内でも今一つうまくいっていなかったショートプログラムで素晴らしい結果を出しました。トリプルアクセルは平均GOE+3.200という高評価。今シーズン、国際大会のトリプルアクセルでこれより高い評価を得た選手は、ワリエワ選手しかいません。

残念だったのがループジャンプ。回転不足で基礎点削られました。ここをしっかり飛べていれば基礎点にして1.08 出来栄えも含めて2.5程度良い点に出来ていたと思われます。パーフェクトなら75点台が見えていたくらいの位置にいます。

 

○吉田陽菜選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3Aq q 8.00   -1.33 6.67 -1.600
2 2A+3T   7.50   1.12 8.62 2.600
3 3F   5.30   1.59 6.89 2.800
4 ChSq1   3.00   1.00 4.00 2.200
5 3Lo   4.90   0.98 5.88 2.000
6 CCoSp4   3.50   0.82 4.32 2.400
7 3Lz!q+3T ! 11.11 x -1.38 9.73 -2.400
8 3Lz   6.49 x 1.18 7.67 2.200
9 3S+2T+2Lo   8.03 x 0.72 8.75 1.600
10 StSq4   3.90   0.91 4.81 2.400
11 SSp4   2.50   0.75 3.25 3.200
12 FCCoSp4   3.50   0.70 4.20 2.200
  TES   67.73   7.06 74.79  

フリーのトリプルアクセルはしっかり着氷しましたがqがついてGOEはマイナスとなりました。吉田陽菜選手はこれで国際大会2試合でトリプルアクセルを3回飛びすべて着氷でしたがこのフリーだけqがついています。吉田選手のすごいところは国内の大会でも今シーズン11回飛んですべて回転十分で着氷しているところ。全日本ジュニアのフリーだけ、ジャンプが抜けて1回転アクセルになりましたが、それ以外はすべて基礎点満額で転倒なしという実績です。吉田陽菜選手のトリプルアクセルの安定感は日本でトップではなく、世界でも今シーズンはトップと言えます。

この試合でもう一つ減点があったのは後半のコンビネーション、ルッツジャンプで!がつきqもついてGOEマイナスとなりました。

スピンステップはすべてレベル4 しっかりと稼ぎました。

素晴らしい210点に乗せての優勝。世界ジュニアに出れば優勝争いもできる水準ですが、残念ながら補欠です。世界ジュニアの日本の補欠は、トリプルアクセル持ちで210点を超えた吉田陽菜選手と、直近で220点を超えるスコアを出した松生理乃選手という恐ろしいメンバーになっています。

 

吉田陽菜選手は2005年8月生まれの16歳。同じ2005年8月生まれにはアリサリュウさんがいます。二人は二人は4年前、チャレンジカップのアドバンスドノービス部門で戦い僅差で吉田陽菜選手が勝った、ということがありました。4年経って二人の道は分かれ、アリサリュウさんはシニアに上がり世界選手権で表彰台に上がり、さらには引退まで表明してしまいました。一方、吉田選手はいまだジュニアカテゴリー。来シーズンはどうするか? 力的にはシニアで十分にやっていけるとは思うのですが、世界ランキングも低く、ISU公認スコアももっていないのでグランプリシリーズの枠がもらいにくい。ジュニアなら、世界ジュニアの結果次第ですが、7試合×2枠を勝ち取ってくれば、JGP2試合とファイナルまで行けそうな気もしています。前半はその流れで行って後半はうまくいけば四大陸も視野に入れつつ世界ジュニアへ、というコースで翌シーズンのシニアを目指すのが良いのではないかと個人的には思うのですが、濱田先生はNHK杯地元枠前提でシニアに上げそうな気もします。

 

○男子シングル シニア

Pl Name Nation Total SP FS
1 Gabriele FRANGIPANI ITA 250.51 85.57 164.94
2 Sena MIYAKE JPN 222.21 81.48 140.73
3 Liam KAPEIKIS USA 219.81 71.52 148.29
4 Emanuele INDELICATO ITA 175.59 65.57 110.02
5 Ken FITTERER GBR 162.28 55.70 106.58
6 Valentin  EISENBAUER AUT 140.01 51.03 88.98

男子シングルは最終的に6人になってしまいました。せっかく遠征したのにランキングポイントが得られないかと思いましたが、エントリー人数は多数いたためか上位選手にポイントはきちんと入っているようです。

優勝は地元イタリアからフランジパーニ選手。ヨーロッパ選手権で9位になっている選手です。

三宅星南選手は2位に入りました。スコア222.21は平凡。四大陸選手権では240点まで出してましたが、まあ、その辺は試合のグレードの違いってものかと思います。ショートフリーで4回転サルコウを3本飛びましたが決まったのは1本だけ。この試合にピークを持ってきているということも多分なく、平凡な結果に終わりました。ただこれで225ポイントを得たようで合計1065ポイントで世界ランクは43位まで上がりました。来期のグランプリシリーズ、おそらく今の情勢だとロシア勢の枠が丸々空くことが予想されます。その関係でおそらく1枠は少なくとも三宅選手にも回って来るのではないかと予想されます。2枠行けるか? はちょっとどうでしょう?

 

○女子シングルジュニア 上位10選手

Pl Name Nation Total SP FS
1 Anna PEZZETTA ITA 172.96 55.11 117.85
2 Hannah HERRERA USA 154.28 54.60 99.68
3 Fiona BOMBARDIER CAN 151.82 49.79 102.03
4 Azusa TANAKA JPN 144.38 51.35 93.03
5 Barbora VRANKOVA CZE 142.80 49.11 93.69
6 Abbie BALTZER CAN 140.96 49.88 91.08
7 Sarah EVERHARDT USA 139.94 42.90 97.04
8 Sara FRANZI SUI 139.49 50.76 88.73
9 Oda Tonnesen HAVGAR NOR 131.33 42.76 88.57
10 Ida Eline VAMNES NOR 130.29 48.23 82.06

女子シングルのジュニアも地元イタリアからペゼッタ選手が優勝でした。

日本からは田中梓選手がエントリー。ショート3位フリー6位で総合4位に終わりました。それでもショートの技術点25.67 フリーの技術点38.63 今シーズンの世界ジュニアのミニマムスコアがショート23.00 フリー38.00なので、かろうじて超えています。来シーズンどう設定されるか微妙ですが、今シーズン設定から上げられなければ、なんとかミニマム確保できたかな、という、最低限の結果は残せたのではないかと思われます。

 

○男子シングル ジュニア 

Pl Name Nation Total SP FS
1 Takeru KATAISE JPN 226.14 82.94 143.20
2 Naoki ROSSI SUI 211.46 68.44 143.02
3 Nozomu YOSHIOKA JPN 187.36 67.82 119.54
4 Kai KOVAR USA 186.12 65.13 120.99
5 David SHTEYNGART CAN 167.65 65.81 101.84
6 Grayson LONG CAN 162.44 54.12 108.32
7 Tommaso BARISON ITA 153.21 49.00 104.21
8 Lucas FITTERER GBR 141.13 52.62 88.51
9 Antonio MONACO USA 130.29 44.30 85.99
10 Nicolas van de VIJVER RSA 113.65 43.34 70.31

男子シングルのジュニアは日本から派遣の片伊勢選手が優勝しました。片伊勢選手は今シーズン全日本ジュニアで188.37で4位、シーズンベストは209.03 という選手。それが国際大会で226.14という高いスコアを出してきました。4回転無しの構成ですが特にショートでよい出来でした。

もう一人日本から派遣の吉岡希選手は3位。フリーでは4回転を1本決めましたが2本目は不発。世界ジュニアの補欠でもあり、代替大会としてのこの試合だったでしょうか。おそらく本人としてはもう少しスコアが欲しかったのだろうと思います。

 

○女子シングル アドバンスドノービス 上位10人

Pl Name Nation Total SP FS
1 Mao SHIMADA JPN 160.68 52.93 107.75
2 Hetty SHI CAN 128.05 42.96 85.09
3 Amanda GHEZZO ITA 118.33 43.43 74.90
4 Kara YUN CAN 117.97 43.87 74.10
5 Luana STEIN USA 117.92 41.90 76.02
6 Chiara MINIGHINI ITA 110.29 36.16 74.13
7 Sofia BEZKOROVAINAYA USA 109.71 42.74 66.97
8 Lulu LIN CAN 104.83 37.05 67.78
9 Anita MAPELLI ITA 90.96 36.14 54.82
10 Giulia OTTONELLI ITA 87.91 34.22 53.69

アドバンスドノービス女子では島田麻央選手圧勝。スコアが出たときに本人は、喜んでいいのかよくわからないんだけど、みたいな困惑したような表情に見えました。アドバンスドノービスの国際ルールは日本のノービスとも違いますし、ジュニア以上とも違いますし、出た点数がいいのか悪いのか本人にもよくわからないんですよね。島田麻央選手はこれが国際大会デビュー戦。とりあえず、飛行機がだめで海外だと活躍できないとか、そういうことはなさそうです、ということはまず証明されました。

 

○島田麻央選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3Aqb b 8.00   -1.07 7.93 -1.400
2 3Lzb+3T b 10.10   1.57 12.67 2.600
3 3F   5.30   1.24 6.54 2.400
4 CCoSp3   3.00   1.00 4.00 3.400
5 3Lo   4.90   1.47 6.37 2.800
6 2Ab+3T+2T b 8.80   1.26 11.06 3.000
7 3Lz   5.90   1.77 7.67 3.200
8 StSq3   3.30   0.88 4.18 2.600
9 FSSp3   2.60   0.87 3.47 3.200
  TES   51.90   8.99 63.89  

アドバンスドノービスのフリーは要素9つです。ジャンプは6つでコンビネーションは2つまで。1.1倍ボーナスタイムはありません。その代わり、3回転のジャンプが2つまで、さらにダブルアクセルにボーナス点1がそれぞれ付けられます。また、スピンステップのレベルは最高で3となっています。そのうえ、PCSは5項目ではなく4項目で係数は同じ1.6となります。そんな風にルールが全然違うので、パッと見て出た点数がいいのか悪いのかよくわかりません。

構成を見ると今回冒頭はトリプルアクセルが入りました。qマーク付きながら着氷。先月京都府選手権ではq無しで着氷していました。これでトリプルアクセルもある程度計算できるジャンプになってきたのかな、と思います。次は4回転とトリプルアクセルの両立。そこまで行けるか。今シーズン国際大会でトリプルアクセルを基礎点満額で着氷した日本勢はこれで5人目、跳んだ順に樋口新葉、河辺愛菜、吉田陽菜、中井亜美、島田麻央、となります。ただ、ほかの4人はGOEプラスがありますが、島田選手はまだGOEをプラスにすることは出来ていません。

トリプルアクセル以外の要素はすべてGOEプラスで一番低いジャッジの評価でも+2でした。回転不足などもなし。スピンステップすべてレベル3。セカンド3回転も2つ入って、ルッツ2本入りで各要素の評価もいいですので、いい出来だったと言ってよいはずです。ジュニアに換算して何点? とか聞かれると難しいですが。

PCSがまだ伸びておらず6点台が中心なので総合点でトップと争うのは難しいですが、技術点は上位と争っても遜色ないところまで来ているといってよいと思います。

 

さて、日本から派遣のB級大会は今シーズンこれで終わりのはずです。

後は世界ジュニアがあります。男子はマリニン選手vs三浦佳生選手でしょうか。ケガ大丈夫? いずれにしても枠取りはあまり心配していない。女子は、ロシアがおらず大混戦。アメリカのレビト選手が中心になると思いますが、アメリカ勢、韓国勢相手に日本勢がどこまで絡んでいけるか? 来季の3枠確保、というのもありますがそれよりもなによりも、ジュニアグランプリの来期枠を7試合×2人、獲ってきてもらえたらと思います。