世界選手権22 男子シングルレビュー2

前回に続いて世界選手権男子シングルの振り返り。

今回はフリー編です。

 

○フリーの要素別スコア

Pl Name Nation J Base J GOE Spin Step PCS
1 Shoma UNO JPN 69.36 14.02 13.95 10.38 95.14
2 KAGIYAMA JPN 60.50 14.04 13.67 10.32 93.38
3 PULKINEN USA 63.45 13.61 11.13 9.42 84.58
4 Vincent ZHOU USA 72.10 0.16 11.86 9.84 87.58
5 KVITELASHVILI GEO 63.82 7.86 12.20 9.54 86.00
6 SIAO HIM FA FRA 59.23 10.22 10.32 10.38 86.00
7 Daniel GRASSL ITA 70.73 -5.57 12.31 8.51 84.06
8 Kazuki TOMONO JPN 66.99 -7.66 12.11 10.53 87.28
9 SADOVSKY CAN 61.80 -0.76 12.91 8.43 82.44
10 Matteo RIZZO ITA 64.20 -4.95 11.64 9.83 84.36
11 Ilia MALININ USA 53.47 7.19 11.95 8.72 83.30
12 Kevin AYMOZ FRA 49.13 3.27 12.52 10.52 85.76
13 SELEVKO EST 59.45 3.25 11.09 6.94 75.14
14 VASILJEVS LAT 52.01 -5.18 12.83 10.03 84.36
15 LITVINTSEV AZE 60.07 -3.84 9.79 6.91 76.86
16 ZANDRON AUT 54.17 -3.18 9.50 8.68 76.00
17 Keegan MESSING CAN 54.98 -11.09 12.61 9.15 82.20
18 Sihyeong LEE KOR 56.95 -9.56 11.94 6.58 74.80
19 Tomas-Llorenc GUARINO SABATE ESP 50.55 -0.94 9.98 7.06 70.88
20 Nikolaj MAJOROV SWE 42.45 2.10 11.02 7.82 74.70
21 Graham NEWBERRY GBR 49.35 -3.39 10.76 7.54 72.22
22 Nikita STAROSTIN GER 52.54 -8.12 11.31 6.56 69.64
23 Ivan SHMURATKO UKR 30.64 2.85 9.53 7.44 72.20

ジャンプの基礎点トップはヴィンセントジョウ選手でした。2位がグラスル選手。どちらもジャンプのイメージの強い選手。回転不足や転倒でスコアを稼ぎきれませんでしたが抜けはなく基礎点はある程度しっかり稼いでいました。宇野選手は3位ですが鍵山選手は9位。結果的にジャンプの基礎点は平凡な位置になってしまっています。一方友野選手は4位。クリーンな着氷が出来ないまでも、何とか耐えて居り続けたことで基礎点は十分高い水準に残り6位入賞につながったようです。

ジャンプの加点は鍵山選手がトップでした。決まったジャンプは良かった。でも2つが基礎点から削られるミスになった。そんな形でした。宇野選手が2位でプルキネン選手が3位。プルキネン選手のフリーは素晴らしい滑りでした。ジャンプの基礎点はそれほど高くないアダムシャオヒムファ選手が出来栄え加点は二桁稼いで4位。こちらもいい滑りでした。友野選手はここが-7.66と苦しみました。

スピンのトップは宇野選手、2位が鍵山選手です。その下に12点台後半でサドフスキー選手が3番目、バシリエフス選手が4番目と続きます。総合順位は上位にまでは入れませんでしたが特定要素で力は見せてくれました。

ステップ系要素のトップは友野一希選手。ラ・ラ・ランドの評価は世界でも高くいただけたようです。2番目にケビンエイモズ選手がいます。3番目が宇野選手とアダムシャオヒムファ選手。フランス勢はステップで会場を沸かせました。

PCSは宇野選手が95点に達し5項目平均9.5を達成、鍵山選手までの二人が平均9点越えです。

 

○総合上位6選手のフリーの構成

  Shoma UNO Yuma KAGIYAMA Vincent ZHOU Morisi KVITELASHVILI Camden PULKINEN Kazuki TOMONO
1 4Lo 4S 4Lz 4S+3T 4T+3T 4T+3T
2 4S 4Lo<< 4S 3A 4T 4S
3 4T+2T 4T 3A 4T+2T 3A+1Eu+3S 4T
4 3A 3A+3T 4Tq 3Lo 3Lo 3Lo
5 FCSp4 CSSp4 ChSq1 FCSp4 StSq4 StSq4
6 ChSq1 StSq4 4S<+2T StSq4 FCCoSp4 FSSp4
7 4F 4T+1Eu+3S 3A<+3Tq 4T 3A 3A+1Eu+3S<
8 4T< 3F+2T FCSp4 3F+1Eu+3S FSSp3 3A
9 3A+1Eu+1F 1A CSSp3 3F< 3F+2T 3F+2T
10 FCCoSp4 ChSq1 3Lz+1Eu+3S FCCoSp3 3Lz FCCoSp4
11 CCoSp4 CCoSp4 StSq4 ChSq1 ChSq1 CCoSp4
12 StSq4 FCCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 ChSq1
Base 86.46 77.40 88.30 80.42 79.95 83.89
GOE 21.25 21.13 5.66 13.00 17.66 -1.92
PCS 95.14 93.38 87.58 86.00 84.58 87.28
Total 202.85 191.91 181.54 179.42 182.19 168.25
平均GOE 2.741 2.787 1.093 1.889 2.407 0.574

宇野選手が4回転5本、ヴィンセントジョウ選手が4本、鍵山選手も4本で1つダウングレード、クビテラシビリ選手と友野選手は3本、プルキネン選手は2本という構成です。宇野選手は4回転が5本あってもコンビネーションが1つ入らず、3連続も最後が1回転になったことで、予定より3回転2本分削られた形になり基礎点ではヴィンセントジョウ選手に劣りました。鍵山選手はループのダウングレードとトリプルアクセルが1回転になり、セカンドループが2回転トーループになったことで基礎点は70点台になっています。セカンドジャンプをとっさに2回転にするというのはよく聞きますが、とっさにループからトーループに変えるなんてこともできるのですね。

GOEは宇野選手と鍵山選手が20点以上稼ぎました。プルキネン選手も高評価です。ヴィンセントジョウ選手はアンダーローテーション2つとq2つで加点を伸ばしきれませんでした。友野選手は着氷がすべて厳しくGOEトータルがマイナスです。

平均GOEは鍵山選手が宇野選手をわずかですが上回りました。決めた要素の出来は負けてなかった。プルキネン選手も平均GOEを2点台中盤まで出しています。

 

○総合7~12位の選手のフリーの構成

  Daniel GRASSL Adam SIAO HIM FA Ilia MALININ Matteo RIZZO Kevin AYMOZ Roman SADOVSKY
1 4Lzq 4T+2T 4Lz 4Tq+3T 3T 4S
2 4F< 3A 4T 4Tq 4T<< 3F+3T
3 4Loq+1Eu+3S 4S 3A 3Lo 3Aq 3Aq
4 3A 4T 4S<< 3F 3Lo 3Lo
5 CSSp4 CSSp3 FCCoSp4 CCoSp4 CCSp4 StSq4
6 3Lz+3T 2Lz StSq3 ChSq1 3A+2T 4Sq+1Eu+3Sq
7 3F+3T< 3Lz+3T 4T<<+REP 3A+1Eu+3Sq 3Lz 3Lz+2T
8 3Lz 3F+1Eu+2S 3F+3T 3Lz+2T 3F+1Eu+3S 3F
9 FCCoSp4 FCCoSp4 3Lz 3A ChSq1 FCCoSp4
10 StSq3 StSq4 FSSp4 CCSp3 FSSp4 CCSp4
11 ChSq1 ChSq1 ChSq1 StSq4 CCoSp4 ChSq1
12 CCoSp4 CCoSp3 CCoSp3 FSSp4 StSq4 CCoSp4
Base 87.03 75.23 69.27 80.40 65.73 78.90
GOE -1.05 14.92 12.06 0.32 9.71 3.48
PCS 84.06 86.00 83.30 84.36 85.76 82.44
Total 169.04 175.15 163.63 164.08 160.20 164.82
平均GOE 0.713 1.963 1.278 0.972 1.880 1.056

この領域ではマリニン選手が4回転4本、グラスル選手、シャオヒムファ選手が3本、リッツォ選手とサドフスキー選手が2本でエイモズ選手は2本のつもりが1つ回転になって1本でした。

グラスル選手は4回転3本ながらルッツフリップループという基礎点高い組み合わせで基礎点は全体2位です。トリプルアクセルも1本なのですがセカンド3回転を2本にして構成の中から2回転をなくしていたり、うまく基礎点を稼いでいる感じがします。

加点はアダムシャオヒムファ選手とマリニン選手が二桁稼ぎました。マリニン選手は後半ジャンプで崩れたので印象は良くなくトータルスコアも伸びていないのですが、序盤の出来が素晴らしかった。また、ジャンプのミスはダウングレードで基礎点が大きく削られた形になっていてGOEのマイナス点はその分小さい幅になっていたというのもあります。

平均GOEはシャオヒムファ選手とエイモズ選手が1点台後半までありました。スピンステップで出来が良いとトータルスコアは伸びなくても要素の評価の平均取ると高くなりました。

 

○フリー上位12人のPCS

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Shoma UNO 47.57 47.25 47.00 46.75 48.00 48.00 47.25 48.25 47.25 48.50
KAGIYAMA 46.69 46.25 45.50 47.50 45.00 47.50 46.25 47.50 47.00 47.25
PULKINEN 42.29 42.50 42.50 42.00 43.25 41.75 42.25 42.50 39.00 43.00
Vincent ZHOU 43.79 44.75 43.50 44.00 43.25 45.75 42.75 45.50 41.75 43.25
KVITELASHVILI 43.00 42.25 43.25 41.25 47.25 42.25 40.50 44.50 43.75 43.75
SIAO HIM FA 43.00 41.50 42.25 41.25 43.50 44.25 44.00 44.25 42.50 43.50
GRASSL 42.03 42.75 43.00 41.25 42.25 44.25 42.00 40.75 40.25 42.25
TOMONO 43.64 43.25 43.00 44.00 44.25 45.00 44.00 40.75 42.75 44.50
SADOVSKY 41.22 41.75 41.50 42.50 40.25 41.00 40.25 41.00 41.00 41.50
Matteo RIZZO 42.18 41.75 42.50 42.50 43.25 40.75 43.00 40.50 41.50 43.00
Ilia MALININ 41.65 40.75 39.75 41.75 41.75 44.75 38.75 42.50 42.50 42.50
Kevin AYMOZ 42.88 42.00 45.00 42.50 43.50 41.50 44.00 43.50 41.75 43.25

係数2.0を掛ける前の演技構成点5項目の合計点をジャッジ毎に並べています。

宇野選手鍵山選手は全ジャッジで45点以上、平均9.0以上の評価を得ていました。それ以外ではヴィンセントジョウ選手、友野一希選手が1人づつ45.00以上の評価を受けていました。

1番甘いのは4番ジャッジ、1番厳しいのは7番ジャッジだったのですが、宇野選手、鍵山選手といったところは7番ジャッジからも高い評価になっていて、鍵山選手は4番ジャッジからの評価が一番低いという、またよくわからない構図になっています。

 

○フリー上位12人のジャッジ別PCS順位

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Shoma UNO 1 1 1 2 1 1 1 1 1 1
KAGIYAMA 2 2 2 1 3 2 2 2 2 2
PULKINEN 8 6 9 9 8 9 8 7 14 8
Vincent ZHOU 3 3 5 3 8 3 7 3 7 6
KVITELASHVILI 5 7 6 11 2 8 12 4 3 4
SIAO HIM FA 5 12 11 11 6 6 3 5 5 5
Daniel GRASSL 11 5 7 11 11 6 9 11 13 12
 TOMONO 4 4 7 3 4 4 3 11 4 3
SADOVSKY 13 10 13 6 15 12 13 10 12 13
Matteo RIZZO 9 10 9 6 8 13 6 13 9 8
Ilia MALININ 12 13 15 10 12 5 15 7 5 10
Kevin AYMOZ 7 9 4 6 6 10 3 6 7 6

ジャッジ毎にPCSの順位を付けたらどうなっているか、というものです。

宇野選手が1位としたジャッジは8人いて、鍵山選手1位が1人です。2位は鍵山選手が多いですが、4番ジャッジだけクビテラシビリ選手に2位を付けています。

友野選手はショートではPCS順位7位でジャッジ毎の評価も割れていたのですが、フリーではPCS順位4位で7番ジャッジから厳しい評価ですが後は3位と4位という高い評価になっています。今大会でPCSを高くつけていい選手、みたいな見られ方になったでしょうか、あるいは滑走順によるものか。それがわかるのは来シーズンということになりそうです。

 

もう一回続きます。