世界選手権24 女子シングルプレビュー

今期も締めくくりの世界選手権にまでたどり着きました。昨年は国別対抗戦が4月にありましたが今季はそれも無し。正真正銘締めくくりです(トリグラフトロフィーなど4月にもB級大会はありますが)。

今期もプレビューとして、エントリー選手の今期の実績を見ていきます。以下、ベストもワーストも、ISU公認試合に限らず国際大会はすべて含みます。ジャパンオープンも含みます。国内大会は日本も含めナショナル選手権のみNational欄で取り上げます。それ以外のベストやワーストにはナショナルは含めません。また、ショート落ちがある選手もいますが、トータルのワーストにはショート落ちの試合は含めていません。

大会開幕ギリギリに棄権からのエントリー変更などもあるかもしれませんが、そこまで考慮できませんのでご了承ください。

 

○今シーズンの戦績

  Name Nation Season best 2nd best Worst National
1 Kaori SAKAMOTO JPN 226.13 225.70 203.20 233.12
2 Loena HENDRICKX BEL 221.28 213.25 201.49  
3 Mone CHIBA JPN 214.98 177.79 160.25 209.27
4 Isabeau LEVITO USA 208.15 203.22 191.86 200.68
5 Anastasiia GUBANOVA GEO 206.52 187.66 179.61  
6 Chaeyeon KIM KOR 204.68 202.26 180.78 205.33
7 Hana YOSHIDA JPN 203.97 203.16 185.45 194.22
8 Nina PINZARRONE BEL 202.29 198.80 155.43 196.63
9 Haein LEE KOR 196.40 191.10 169.38 205.84
10 Livia KAISER SUI 194.72 175.32 137.55 158.07
11 Niina PETROKINA EST 194.55 192.01 156.93  
12 Kimmy REPOND SUI 191.94 180.82 164.63 187.46
13 Madeline SCHIZAS CAN 189.91 188.88 179.58 172.90
14 Amber GLENN USA 189.63 185.39 177.51 210.46
15 Lorine SCHILD FRA 183.86 179.11 155.65 200.00
16 Ekaterina KURAKOVA POL 181.98 181.71 167.63 171.10
17 Sarina JOOS ITA 181.90 180.83 174.73 192.79
18 Young YOU KOR 181.80 168.14 157.36 195.96
19 Nella PELKONEN FIN 179.31 172.88 150.01 179.73
20 Josefin TALJEGARD SWE 176.20 172.63 155.19 181.74
21 Alexandra FEIGIN BUL 176.06 154.01 137.53 162.48
22 Mariia SENIUK ISR 175.75 155.71 148.81  
23 Julia SAUTER ROU 175.74 168.40 163.64  
24 Olga MIKUTINA AUT 173.46 173.05 151.05 172.93
25 Sofja STEPCENKO LAT 171.90 170.76 120.79  
26 Tzu-Han TING TPE 171.87 165.53 146.27 160.16
27 Vanesa SELMEKOVA SVK 168.41 166.84 116.54 157.77
28 Nataly LANGERBAUR EST 165.85 159.74 133.65 157.26
29 Anastasia GOZHVA UKR 163.77 162.61 134.21  
30 Meda VARIAKOJYTE LTU 163.32 157.25 120.51 159.97
31 Nina POVEY GBR 160.32 155.74 147.99 165.76
32 Kristina ISAEV GER 155.28 153.02 131.94 158.73
33 Mia RISA GOMEZ NOR 155.03 146.45 129.53 169.91
34 Anastasia GRACHEVA MDA 146.62 144.98 141.59  
35 Eliska BREZINOVA CZE 145.53 143.09 119.38 144.12

エントリーは35選手。220点超えが2人、210点超えは3人、200点超えが8人います。日本勢韓国勢の勢いが昨季ほどではないので、210点台に多数集まった昨季ほどのインパクトはないです。

優勝争いは、普通にいくと坂本選手とヘンドリックス選手の2人でしょうか。210点以上を今期複数回出しているのはこの2人だけ。220点以上複数回は坂本選手だけです。

千葉選手は4大陸で爆発しましたが、それ以外のシーズン前半の国際大会は惨憺たるものでした。全日本からの好調を維持して世界選手権に入れるか。

安定型のレビト選手は上位がしっかり力を発揮すると下剋上は難しそうですが、自分が210点前後でしっかり待って上位が崩れてくるという絵柄はあるかもしれません。昨季は4位。ワールド初表彰台を目指します。

ヨーロッパ選手権2位のグバノワ選手も爆発力はそれほどなく、むしろ爆発した結果の206点なので、これより上積みは難しいでしょうか。崩れると中位以下に沈む可能性もあります。目標は表彰台、というあたりが現実的に見えます。

韓国勢はシーズンベストはキムチェヨン選手が1番上です。キムチェヨン選手も爆発力はそれほどなく安定的に200点前後を出す選手。210点近いベストを出して上位が崩れて表彰台に乗れるといい、という位置にいます。

むしろ爆発力でいればその下の吉田陽菜選手の方があります。ただ波がありすぎる。大穴優勝も無くはないけど、ショート落ちもそれより高いくらいの確率でありえる、見ていてハラハラする選手です。

ピンツァローネ選手も210点までもっていくのはむずかしいかもしれませんが、ヘンドリックス選手と2人でベルギー3枠は狙えそう。一方、韓国はイ・ヘイン選手が復調しないと来期3枠が危ないです。昨季は220点台をだしての2位、という選手ですので、力を発揮できれば表彰台候補でもありますし、昨季の再現が出来れば上位2人次第で優勝もあり得る力は持っています。ユヨン選手は2期ぶりのチャンピオンシップ復帰ですが、今期も国際大会では結果が出ていません。最低でもナショナルくらいの滑りでトップ10に絡むくらいは欲しいところでしょうか。

スイス勢が2人、トップ10に近いシーズンベストを出してきています。3枠を狙うのは厳しそうですが、来期も2枠を維持できそうに見えます。

 

ショートプログラム シーズンベスト上位24人

  Name Nation Season best 2nd best Worst National
1 Kaori SAKAMOTO JPN 77.35 75.62 67.76 78.78
2 Loena HENDRICKX BEL 75.92 74.66 70.65  
3 Isabeau LEVITO USA 71.83 70.07 56.53 75.38
4 Amber GLENN USA 71.45 63.09 51.61 74.98
5 Mone CHIBA JPN 71.10 64.24 56.59 68.02
6 Chaeyeon KIM KOR 70.31 69.77 63.27 63.36
7 Nina PINZARRONE BEL 69.70 66.72 47.41 66.65
8 Anastasiia GUBANOVA GEO 69.65 68.96 55.80  
9 Haein LEE KOR 69.57 66.30 56.07 68.43
10 Madeline SCHIZAS CAN 67.42 61.57 57.44 63.63
11 Livia KAISER SUI 66.31 65.21 57.72 46.90
12 Niina PETROKINA EST 65.02 62.58 51.57  
13 Hana YOSHIDA JPN 64.65 62.54 59.02 62.73
14 Julia SAUTER ROU 64.18 59.50 54.53  
15 Young YOU KOR 63.88 63.46 56.21 68.96
16 Tzu-Han TING TPE 63.72 59.17 52.16 55.43
17 Olga MIKUTINA AUT 63.71 61.48 57.01 58.62
18 Sarina JOOS ITA 63.59 63.13 57.66 65.27
19 Lorine SCHILD FRA 63.27 61.63 46.62 66.50
20 Josefin TALJEGARD SWE 62.66 62.15 56.88 60.63
21 Nella PELKONEN FIN 62.60 58.78 58.12 59.44
22 Alexandra FEIGIN BUL 62.22 57.41 51.59 62.58
23 Sofja STEPCENKO LAT 62.05 60.01 44.77  
24 Ekaterina KURAKOVA POL 62.00 60.45 49.57 62.04

ショートプログラムのベストは24位でも62点あります。シーズンワーストでこの62点を超えている選手は3人しかいません。3つのジャンプのうち2つミスをするとほとんどの選手はショート落ちの憂き目にあう可能性が高いです。上位のレベルはあまり上がっていなくても、中位下位のレベルが上がってきているので、フリー進出が簡単なハードルではなくなってきました。

とはいえ、上位2人はさすがにそんな世界とは無縁そうです。70点台後半まで今期出しているのは坂本選手とヘンドリックス選手の2人。きっちり滑ればこの2人でショートから上位を占めるのでしょうおそらく。

アメリカ勢がそれに続くシーズンベストを持っています。アンバーグレン選手はトリプルアクセルという選択肢を持っていますが、この71.45はそれなしで出したもの。51.61のワーストもトリプルアクセルを入れたわけではなく、普通に3回転のジャンプ壊滅していました。ここ2シーズントリプルアクセルをショートには入れてきていないので、世界選手権もトリプルアクセルはフリーだけにするのではないかと思われます。

千葉選手、キムチェヨン選手も70点台のシーズンベスト。キムチェヨン選手は数少ない、シーズンワーストでもベスト上位24位よりも高い点を出している選手です。ザ安定感。

日本勢では吉田陽菜選手がシーズンベスト13位。ベストとワーストの差は意外と小さいですが、そもそもトータルスコアと比べてショートのベストスコアが低すぎる。おそらく出場選手中唯一ショートからトリプルアクセルを入れてくるのですが、今季ショートの成功はゼロ。これがショートのスコアが低い原因なわけですが、他の大会と違い世界選手権はジャンプ2ミスでショート落ちがあり得る。ただ、ダブルアクセル構成にしたジュニアルールの国体ではコンビネーション入らなかったり、安全策のタリンホステルカップでもダブルアクセル決めた後ルッツで転倒したりと、アクセル以外のジャンプもミスが目立ちます。さすがにショート落ちは見たくないのですが、安全策でも落ちる可能性があるという、なかなか怖い状態です。

 

○フリー シーズンベスト上位24人

  Name Nation Season best 2nd best Worst National
1 Kaori SAKAMOTO JPN 151.00 149.59 127.58 154.34
2 Loena HENDRICKX BEL 145.36 140.31 130.11  
3 Mone CHIBA JPN 143.88 113.55 102.59 141.25
4 Hana YOSHIDA JPN 142.51 139.32 122.91 131.49
5 Isabeau LEVITO USA 138.08 135.63 129.49 125.30
6 Anastasiia GUBANOVA GEO 137.56 128.52 115.95  
7 Chaeyeon KIM KOR 134.91 134.84 115.23 141.97
8 Amber GLENN USA 133.78 118.18 114.42 135.48
9 Nina PINZARRONE BEL 133.06 132.59 108.02 129.98
10 Madeline SCHIZAS CAN 132.47 124.12 118.05 109.27
11 Niina PETROKINA EST 131.08 129.53 101.72  
12 Kimmy REPOND SUI 130.39 122.63 113.99 122.66
13 Livia KAISER SUI 128.41 111.75 73.94 111.17
14 Haein LEE KOR 126.83 126.02 113.31 137.41
15 Ekaterina KURAKOVA POL 124.26 124.11 111.44 109.06
16 Sarina JOOS ITA 121.01 120.35 115.81 127.52
17 Lorine SCHILD FRA 120.59 120.31 102.52 133.50
18 Nella PELKONEN FIN 120.53 114.76 87.41 120.29
19 Young YOU KOR 117.92 104.68 101.15 127.00
20 Mariia SENIUK ISR 117.47 101.58 92.12  
21 Meda VARIAKOJYTE LTU 114.46 107.46 80.24 106.03
22 Alexandra FEIGIN BUL 113.84 96.60 85.94 99.90
23 Josefin TALJEGARD SWE 113.54 110.48 98.31 121.11
24 Olga MIKUTINA AUT 113.52 112.91 91.97 114.31

フリーのシーズンベスト上位24人がフリーを滑るとは限らない。とはいえショートの上位24人のフリーのベスト、というのを並べてもしかたないので、フリーのベスト上位24人を並べます。

これもショートと同じ1位2位です。坂本選手は150点超え。セカンドベストでもヘンドリックス選手より上のスコアがあります。ヘンドリックス選手はシーズンワーストが全選手中1位です。大崩れはしないです。

140点台に日本選手が2人。千葉選手はショートフリーと4大陸並みをまた出せば表彰台が見えてくるということになります。吉田陽菜選手はまずフリーに進出できるかが課題ですが、進みさえすれば上位進出が見えてきます。

意外と140点台を持っていないレビト選手とグバノワ選手。表彰台争いするには140点は欲しい。キムチェヨン選手はじめ130点台前半に多数います。このあたりの中の選手から、ワールドで一発当てて140点台を出す選手が表彰台に絡んでくるのでしょうか。

ベルギーのピンツァローネ選手、カナダのシザース選手、エストニアのペトロキナ選手。このあたりは、それぞれの国の2枠3枠を確保できるかどうかの際どい位置にいます。130点には乗せたい、そこからどれだけ伸ばせるかで枠取りが変わってきそうです。

枠取りという意味ではレビト選手が上位に行く前提でグレン選手もアメリカ3枠のために130点台後半まで出して上位に行きたい。10番手前後の選手の枠取り争いも熾烈。韓国のイ・ヘイン選手も本来は枠取り云々ではなくて表彰台あるいは優勝争いをしたいわけですが、今回は3枠確保のために1つでも上に、みたいな展開になる可能性もありそうです。

 

○シーズンベスト上位6選手のフリーの技術点シーズンベスト時の構成

  Kaori Loena Mone Isabeau Anastasiia Chaeyeon
SAKAMOTO HENDRICKX CHIBA LEVITO GUBANOVA KIM
1 2A 3Lz+3Tq 3F+3T 3Lz+3T 3F+3T 2A
2 3Lz 2A 2A 2A 3Lo 3Lz+3T
3 3S 3F 3S 3F 3Lz 3Lo
4 CCoSp4 2A CCoSp4 2A 3Sq 3S
5 StSq4 CCoSp4 3Lo CCoSp3 FCSp4 FCCoSp4
6 3F+2T ChSq1 ChSq1 3Lz+1Eu+3S< ChSq1 3F!q+2T+2Loq
7 FSSp3 3Lz+2T 3Fq+2T+2Lo ChSq1 3Lzq+2A 3Lz+2A
8 3F+3T 3F+2T+2Lo 3Lz+2A 3F+2T 3F+2T+2T StSq4
9 2A+3T+2T 3S FCCoSp4 3Loq 2A ChSq1
10 ChSq1 FCCoSp4 3Lz! FCSp4 CCoSp4 3F!<
11 3Lo StSq4 StSq4 StSq4 StSq4 FCSp4
12 FCCoSp4 LSp4 LSp4 FCCoSp4 LSp3 CCoSp4
Base 62.12 60.38 64.34 62.07 63.04 63.61
GOE 15.75 12.04 11.08 8.62 7.69 7.28
PCS 73.13 72.94 68.46 67.39 66.83 63.95
Total 151.00 145.36 143.88 138.08 137.56 134.84

上位6人は高難度ジャンプはありません。この中だと千葉選手の基礎点が高いです。ルッツとフリップの2本使いは千葉選手とレビト選手にグバノワ選手とキムチェヨン選手もそうなのですが、レビト選手とキムチェヨン選手は回転不足で基礎点削られ、グバノワ選手はスピンのレベルと、1.1倍がやや弱い、という差があります。

坂本選手はフリップとトーループの2本使い。スピンのレベルをオールレベル4にしても62.52まででさほど基礎点は高くありません。ヘンドリックス選手はループなしの6トリプルなのでさらに基礎点下がります。

高得点を出すにはこれくらいの基礎点差よりも、GOEでどれだけ稼げるかの差の方が大きく効いてきます。上位3人は二桁加点。表彰台争いにはどんなに少なくとも技術点は70点台、できれば70点台後半まで欲しそう。PCSは上位2人は70点台もらえます。PCS差で5点くらいついてくるとダブルアクセルを1つトリプルアクセルに持っていくくらいしないと差が埋まりません。キムチェヨン選手は経験の浅さがPCSに出てしまっているようで、上位2人とはPCSで10点近い差がある。この差を埋めるのはなかなか大変です。

 

○7-12番手の選手のフリーの技術点シーズンベスト時構成

  Hana Nina Haein Livia Niina Kimmy
YOSHIDA PINZARRONE LEE KAISER PETROKINA REPOND
1 3Aq 3Lz+3T 2A+3T 3Lz+3T 2A+3T 3F+3T
2 2A+3T 3F 3Lz+3T< 3Fq+2A 3Lz+1Eu+3Sq 3Lz
3 3Lo 3S 3Lo 3F 3Fq 3Lo
4 FCCoSp4 3Lz 3S 3S 3Lo 2A
5 3F FCCoSp4 FCSp4 CCoSp4 FCCoSp4 FCCoSp4
6 3Lz+3T 3Lo+2A+2T FCCoSp4 3Lz+2T+2Lo< 3Lz ChSq1
7 ChSq1 3Lo+2T ChSq1 3Lo 3Fq+2T 3Lo+2T+2Lo
8 3Lz 2A 1Lz+2T+2Lo 2A CCoSp4 2A+3T<
9 3S+2A+2T CCoSp4 3F! StSq4 StSq3 3S
10 CCoSp4 ChSq1 2A FSSp4 2A SSp3
11 StSq3 StSq3 StSq4 ChSq1 LSp3 StSq3
12 SSp4 LSp4 CCoSp4 FCCoSp4 ChSq1 CCoSp3
Base 68.89 62.50 56.48 63.64 61.48 59.25
GOE 9.25 10.19 5.44 4.88 7.39 7.06
PCS 64.37 60.37 62.74 59.89 62.21 64.08
Total 142.51 133.06 124.66 128.41 131.08 130.39

下剋上を狙う位置にいる選手たち。吉田陽菜選手が全選手中最高の基礎点を持っています。ここに載っていませんが、アンバーグレン選手もトリプルアクセルを持っていますが、決めた時にはほかのジャンプをミスするという傾向があって基礎点は意外と伸びてきません。吉田選手はステップレベル4に出来れば基礎点は69.49に出来て、これが今のシニアの頂点です。

イ・ヘイン選手は今シーズンまだ全く本領を発揮しておらず、基礎点は50点台にとどまっています。スイスのカイザー選手はグランプリ出場経験が無いもののヨーロッパ選手権4位と急激に伸びてきた選手。ルッツフリップ2本立てで63.64という高難度ジャンプ無しとしては高い基礎点を出しています。

加点はピンツァローネ選手が二桁を持っています。今期も190点台を連発していますし、昨季に続いて一桁順位なるか。

PCSは8点平均に乗せているのは吉田選手とレポンド選手です。イ・ヘイン選手はしっかり滑ればもっと出るはずですが今季はなかなかそれが出来ていません。

 

 

勝ち続けるのが難しい女子の世界フィギュア。坂本選手は3連覇がかかりますが、直近3連覇があったのは1966年から68年のペギーフレミングさんまで遡りますので、達成できれば56年ぶりになります。日本は坂本選手以外の2人は初出場。北京オリンピック以降の3大会で、坂本選手だけ3回続いていますが、あとは各回2人が順次入れ替わっています。4大陸で勝った千葉選手、グランプリファイナルで表彰台に乗った吉田選手。来期につなげるためにはここでも結果が欲しいところです。

 

 

 

 

世界ジュニア24男子シングル2

前回からの続き、男子の数値編です。

 

○ソミンギュ選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A+2T   9.30   1.37 10.67 1.778
2 1A   1.10   -0.05 1.05 -0.333
3 3Lo   4.90   0.98 5.88 1.889
4 FCSp4   3.20   0.87 4.07 2.667
5 ChSq1   3.00   1.79 4.79 3.667
6 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.222
7 3F+3T   9.50   1.29 10.79 2.556
8 3Lz   6.49 x 1.26 7.75 2.111
9 3F+2A+2A+SEQ   13.09 x 1.14 14.23 2.111
10 3S   4.73 x 0.98 5.71 2.444
11 CSSp4   3.00   0.86 3.86 2.889
  TES   61.81   11.64 73.45  

ソミンギュ選手はまだ構成に4回転は入ってきません。トリプルアクセルも今期から。今回は2本目のトリプルアクセルを失敗しましたが、それでも基礎点61.81は自己最高です。そもそも2本入れようとしたのが初めてです。トリプルアクセル入れば68.71まで出せました。

スピンもオールレベル4 コンビネーションはセカンド3回転1つに3連続はアクセル2つ。3連続をサルコウにしてダブルアクセルを単独と2連続の方に入れるとすると、2Tが1Euに置き換わる計算になるので基礎点的には損になりますから、今の手持ちの札ではコンビネーションはこの跳び方が1番良いのかと思われます。2回飛んだジャンプはフリップだけですがトリプルアクセルをもう1本飛びたかったという構成です。基礎点上げていくにはトリプルアクセル2本目をしっかり入れることと、それより上は4回転が必要になって来る、というところです。

基礎点61.81はジュニアと言えども大して高い値ではありません。今大会でもフリー滑った24人のうち15番目です。一方でGOEを二桁稼いだのはソミンギュ選手のみ。結果、技術点としては全体3位の値にまでなりました。1つ1つの要素の出来栄えでスコアをあげて、さらにショートのリードとPCSで最終的に勝った、という試合でした。

ソミンギュ選手も島田麻央選手と同じ2008年10月生まれの15歳。すなわち、ミラノオリンピックに出られない年齢です。今大会は男女とも次のオリンピックに出られない選手が優勝しました。あと2シーズンはジュニアです。中田璃士選手と激闘を繰り広げていくのかと思われます。

 

○中田璃士選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4T   9.50   -3.12 6.38 -3.333
2 3A+3T   12.20   1.03 13.23 1.222
3 FCSp4   3.20   0.55 3.75 1.778
4 3A   8.00   2.51 10.51 3.222
5 3F   5.30   0.68 5.98 1.333
6 3F+1Eu+3S   11.11 x 0.98 12.09 1.889
7 3Lo+2A+SEQ   9.02 x 1.05 10.07 2.222
8 CSSp4   3.00   0.43 3.43 1.444
9 ChSq1   3.00   1.14 4.14 2.333
10 2A   3.63 x 0.57 4.20 1.778
11 CCoSp4   3.50   0.80 4.30 2.222
  TES   71.46   6.62 78.08  

中田璃士選手は4回転1本にトリプルアクセル2本入ります。ジュニアとしては高い構成で、基礎点71.46は今大会1位でした。スピンもすべてレベル4 コンビネーションもセカンド3回転、ダブルアクセル付きに3連3サルコウと高い基礎点得られる組み合わせです。2回飛ぶジャンプはトリプルアクセルトリプルフリップ。最後の単独ダブルアクセルが違和感あって、ルッツが余っています。ルッツは苦手なんです、と書いてある構成。今期のジュニアは強制ルッツでだいぶ苦労していて、特に国内戦ではe連発していましたが、今回のショートではなんとかエッジエラーは回避されていました。ルッツが無い選手としては宇野昌磨選手が有名ですが、中田選手もその方向性でこの先行くのでしょうか。

最終的に1位とは1.44差。4回転トーループをクリーンに降りていれば優勝でした。あるいはルッツ飛べれば優勝でもあったのですが、あまりそこは頭になさそうな気もします。

ここからスコアを上げていくには、次の4回転の投入というのと、1つ1つの要素の出来栄えを上げるというのもあります。この試合では単独のトリプルアクセルで+3を超えるGOEがありましたが、他は+2台、あるいは+1台です。全体を+2台まで引き上げて、得意なものは+3台というところまで行けると、4回転1つ増やすのと同じくらいの得点の引き上げになっていくかと思われます。

中田選手も次のオリンピックには出られない世代です。あと2シーズンのうちに世界ジュニアのタイトルを獲れるか。今期は全日本ジュニアも2位でした。安定感を増せば、タイトルに手が届きそうにも見えます。

 

中村俊介選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4T   9.50   1.90 11.40 2.000
2 3A+2T   9.30   -0.11 9.19 -0.111
3 3Lz   5.90   1.01 6.91 1.667
4 CSSp3   2.60   0.56 3.16 2.111
5 3Aq F 8.00   -4.00 4.00 -5.000
6 3F   5.83 x 1.14 6.97 2.222
7 FCCoSp4   3.50   0.50 4.00 1.444
8 ChSq1   3.00   1.21 4.21 2.333
9 3Lo   5.39 x -0.42 4.97 -0.889
10 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 0.25 12.02 0.444
11 CCoSp4   3.50   0.85 4.35 2.333
  TES   68.29   2.89 71.18  

中村俊介選手も4回転トーループが構成に入っていて、トリプルアクセルも2本あります、もう1つの2回飛ぶジャンプはルッツです。トリプルアクセル転倒が痛かったです。ただ、それよりも目立ちにくいのですが、後半のループが耐えるジャンプになったことでコンビネーションが付かなかったというのが極めて大きかったです。本来はここに3Tが付くことで4.62基礎点が上がるはずでした。また、スピンで1つレベル3があるので、これをレベル4に出来れば基礎点は0.40上げられます。希望構成ノーミスの場合73.31の基礎点になるはずでした。そこから基礎点を上げるには、ダブルアクセルが余っているのでシークエンスで入れて2Tの代替にすることで2.0基礎点を上げることが出来て、そこまで行ければ75.31にまでなります。

3位と10.15差の4位。少し点差がありますが、トリプルアクセルとコンビネーション、2つのミス分でそれくらい埋まりますのでノーミスだったら表彰台の可能性が十分ありました。2005年生まれの18歳。この4月に大学生になります。来期はシニアに上がるのかジュニアに留まるのか。ここで表彰台を持っておけば、シニアのグランプリシリーズの椅子が1つ手に入るはずでした。ここ2年、壷井達也選手、吉岡希選手と続けてそうやってシニアに上がっていったわけですが、中村選手は届かず。シーズンベストや世界ランキング的にはグランプリ枠をもらうのは苦しい。あと1年、ジュニアを続ける選択も可能です。ジュニアグランプリシリーズに出つつ、チャレンジャーシリーズでシニアのポイントを稼ぎ、世界ジュニアで表彰台に乗って翌年シニアへ、というのが現実味のあるコースでしょうか。ただ、ジュニア選手にチャレンジャー派遣を連盟がくれるかどうかはちょっとわからないところはあります。

 

○垣内珀琉選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4Tq F 9.50   -4.75 4.75 -5.000
2 3Lo   4.90   0.07 4.97 0.222
3 3Lz+3T+2T   11.40   0.67 12.07 1.111
4 FCSp4   3.20   0.05 3.25 0.111
5 3F+2A+SEQ   8.60   0.15 8.75 0.222
6 3S   4.73 x 0.37 5.10 0.889
7 2A+3T   8.25 x 0.66 8.91 1.556
8 ChSq1   3.00   0.50 3.50 0.889
9 3Lz   6.49 x 0.93 7.42 1.556
10 CSSp4   3.00   0.17 3.17 0.667
11 CCoSp4   3.50   0.60 4.10 1.667
  TES   66.57   -0.58 65.99  

4回転トーループ決まらず。垣内選手はトリプルアクセルが構成にありません。2回飛ぶジャンプはルッツとトーループで基礎点66.57となりました。スピンオールレベル4 コンビネーションもしっかり使っています。1.1倍がやや弱いので、手持ちのカードで基礎点上げていくには後半にもう少しコンビネーションなど基礎点高めなジャンプ要素を入れていく、というのはありそうです。

垣内選手は2006年生まれの17歳、高校2年生。来期シニアも可能年齢ではありますが、間違いなくジュニア継続と推定されます。来期も世界ジュニアは3枠ありますので再度の出場を目指すことになると思いますが、まずはその前にジュニアグランプリシリーズでの躍進したいところでしょうか。今期も200点超えで1つ表彰台に乗っています。2募ってファイナルへ、が来期の目標になるのかと思われます。

 

○ショートフリー合わせた要素別のスコア(フリー進出24名)

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Minkyu SEO 230.75 112.97 73.46 10.80 23.77 9.75
2 Rio NAKATA 229.31 109.59 82.75 6.38 22.30 8.29
3 Adam HAGARA 225.61 106.34 80.00 9.47 21.96 7.84
4 Shunsuke NAKAMURA 215.46 108.44 79.68 -1.66 22.59 8.41
5 Francois PITOT 214.95 110.90 70.80 3.33 21.60 9.32
6 Jaekeun LEE 212.22 101.98 78.45 0.58 24.39 8.82
7 Arlet LEVANDI 211.98 111.59 59.78 6.45 24.01 10.15
8 Aleksa RAKIC 211.74 104.75 83.56 -3.47 19.40 8.50
9 Edward APPLEBY 205.55 100.51 72.00 5.00 21.36 7.68
10 Jacob SANCHEZ 199.17 107.14 63.74 -2.03 21.86 8.46
11 Jakub LOFEK 199.04 103.50 66.99 1.69 20.31 7.55
12 Yanhao LI 197.47 98.13 69.13 0.32 22.91 7.98
13 Daniel MARTYNOV 195.83 99.22 75.55 -2.89 19.72 6.23
14 Casper JOHANSSON 193.66 89.62 73.25 1.99 21.16 7.64
15 Anthony PARADIS 193.61 108.03 53.63 -0.65 23.49 10.11
16 Yu-Hsiang LI 193.26 91.63 69.44 2.80 21.61 7.78
17 Haru KAKIUCHI 192.82 94.89 70.33 -0.72 21.86 7.46
18 Matteo NALBONE 188.89 86.75 79.21 0.55 16.12 6.26
19 Tamir KUPERMAN 182.83 95.89 62.95 -3.43 20.08 7.34
20 Konstantin SUPATASHVILI 182.68 82.87 71.48 1.03 21.29 6.01
21 Aleksandr VLASENKO 181.85 80.29 74.92 1.31 18.90 6.43
22 Matias LINDFORS 180.80 96.07 57.93 0.65 19.89 7.26
23 Kyrylo MARSAK 180.42 90.82 66.19 -1.37 19.04 5.74
24 Denis KROUGLOV 169.21 86.36 59.83 -4.14 20.94 8.22

PCSは優勝したソミンギュ選手が1位でした。おおよそ7.5平均程度です。2番手にレバンディ選手、3番目にはピトー選手と僅差で続きます。中田選手は4番目。ソミンギュ選手との差は3.38 技術点なら勝っていたのですがPCSで負けました。中村選手も全体5番目と高めなPCSをもらっています。垣内選手は90点台前半ということで1項目平均6点台前半。ここももう少し稼ぎたい要素になります。

ジャンプの基礎点はカナダのラキッチ選手が1位で中田選手は2位でした。中村選手は5番目です。優勝したソミンギュ選手は73.46なので割と平凡な基礎点です。加点の方はソミンギュ選手がただ一人二桁稼ぎ、ハガラ選手も9点台で続きます。中田選手は4番目、ジャンプトータルでもハガラ選手に次いで2番目です。中村選手はGOEマイナス。そのあたりは残念でした。

スピンはイジェクン選手が1位でレバンディ選手が2番目。この二人は24点台です。中田選手は22点台。ソミンギュ選手と1.47差でトータルスコアの差より小さいです。スピンはまだ22点台までしか出せていない中田選手ですが、4回転ではなくてここの差も優勝できなかった一因だったりもします。

ステップ系要素はレバンディ選手が10.15だして1位です。スピンステップPCSでレバンディ選手は上位にいますので、あとはジャンプが飛べればいいのですが、トリプルアクセルも無いのはつらいところ。中村選手、中田選手は8点台、垣内選手は7点台。もう少し欲しいところですが、男子はステップとトータルスコアの相関が低いのもまた事実だったりもします。

 

○4回転を含む要素

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Kyrylo MARSAK 1 4S   9.70   -3.05 6.65 -3.111
FS Shunsuke NAKAMURA 1 4T   9.50   1.90 11.40 2.000
FS Aleksa RAKIC 1 4T   9.50   1.76 11.26 1.778
FS Matteo NALBONE 1 4T   9.50   1.49 10.99 1.556
FS Rio NAKATA 1 4T   9.50   -3.12 6.38 -3.333
FS Haru KAKIUCHI 1 4Tq F 9.50   -4.75 4.75 -5.000
FS Daniel MARTYNOV 1 4T F 9.50   -4.75 4.75 -5.000
FS Casper JOHANSSON 1 4S< < 7.76   -1.44 6.32 -1.889

ジュニアは4回転をショートで飛べませんので、すべてフリーでの要素になります。サルコウを飛ぼうとしたのは2人ですがGOEプラスの成功はなし。ウクライナのマルサク選手はGOEマイナスですが基礎点満額で降りています。

トーループは6人構成に入れて2人転倒。GOEプラスの成功ジャンプは3人です。最高評価は中村俊介選手でした。

 

トリプルアクセルを含む要素で平均GOE+2.000以上

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Rio NAKATA 4 3A   8.00   2.51 10.51 3.222
SP Francois PITOT 1 3A   8.00   2.51 10.51 3.111
SP Adam HAGARA 2 3A   8.00   2.06 10.06 2.667
FS Francois PITOT 1 3A+2T   9.30   1.94 11.24 2.444
SP Edward APPLEBY 1 3A   8.00   1.83 9.83 2.333
SP Daniel MARTYNOV 1 3A   8.00   1.71 9.71 2.222

トリプルアクセルは多くの選手が構成に入れてきます。男子ならそれなりの成功率にはなってきます。平均GOE+2.000以上の高評価を得たのは5人。最高評価は中田璃士選手のフリーのジャンプで+3.222入りました。スコアとしてはフランスのピトー選手のショート冒頭のジャンプも同じだけもらえています。ピトー選手はフリーのコンビネーションも高評価。トリプルアクセルは得意なジャンプと言ってもよさそうです。

 

今回は日本勢男女制覇、とはいきませんでしたが、男女で3人表彰台、金銀銅揃えた形となりました。島田麻央選手は連覇ですが、あとの2人は昨季は出場もしていない選手です。選手が次々入れ替わっても表彰台に乗って来る。やはり日本の男女シングルは強いというか層が厚いです。

ペアの清水本田組は14位、アイスダンスの岸本田村組は12位。カップル競技はまだまだ層が厚いとは言えませんが、それでもようやく例年出場者を送り出せるようにはなってきました。

さて、残るは世界選手権。世界ジュニアからは2週間おいて行われます。世界選手権も4種目しっかり日本勢はエントリー。今シーズンも3種目制覇なるか? ちょっと昨季よりは難易度上がってますが、期待して楽しみたいと思います。

 

 

世界ジュニア24男子シングル1

前回までの女子シングルに続いて、今回は男子シングルです。

同じように初回は試合展開の振り返りです。

 

○男子シングル フリー進出24名

Pl Name Nation Total SP FS
1 Minkyu SEO KOR 230.75 80.58 150.17
2 Rio NAKATA JPN 229.31 77.60 151.71
3 Adam HAGARA SVK 225.61 78.02 147.59
4 Shunsuke NAKAMURA JPN 215.46 72.85 142.61
5 Francois PITOT FRA 214.95 78.79 136.16
6 Jaekeun LEE KOR 212.22 70.15 142.07
7 Arlet LEVANDI EST 211.98 75.43 136.55
8 Aleksa RAKIC CAN 211.74 77.74 134.00
9 Edward APPLEBY GBR 205.55 75.69 129.86
10 Jacob SANCHEZ USA 199.17 73.35 125.82
11 Jakub LOFEK POL 199.04 75.55 123.49
12 Yanhao LI NZL 197.47 62.84 134.63
13 Daniel MARTYNOV USA 195.83 71.69 124.14
14 Casper JOHANSSON SWE 193.66 65.71 127.95
15 Anthony PARADIS CAN 193.61 63.19 130.42
16 Yu-Hsiang LI TPE 193.26 66.53 126.73
17 Haru KAKIUCHI JPN 192.82 65.49 127.33
18 Matteo NALBONE ITA 188.89 65.22 123.67
19 Tamir KUPERMAN ISR 182.83 63.60 119.23
20 Konstantin SUPATASHVILI GEO 182.68 63.99 118.69
21 Aleksandr VLASENKO HUN 181.85 62.12 119.73
22 Matias LINDFORS FIN 180.80 66.06 114.74
23 Kyrylo MARSAK UKR 180.42 64.29 116.13
24 Denis KROUGLOV BEL 169.21 63.09 106.12

ショート終わって首位から12位まで10.43差。下手すると他の大会なら1位と2位の差くらいの差の範囲内で12人います。第3グループからの逆転優勝もあるか? という混戦です。

 

フリー第一グループでは、ユースオリンピック3位表彰台、ニュージーランド史上最高の選手、ヤンハオリー選手が4番滑走で出てきます。まだ成功実績のないトリプルアクセルは転倒しましたが後はミスなし。技術点自己最高で134.63を出しトータル197.47 上位進出が見込めるスコアを出してきます。

第2グループには地元台湾からユーシャンリー選手。台湾はフィギュアが強いとはお世辞にもちょっと言えませんが、男女ともしっかりフリー第2グループには選手を送り込んできています。まだ成功実績のないトリプルアクセルこそダウングレードでしたが他はノーミスで会場を盛り上げ126.73は自己ベスト。トータル193.26 9人滑って4位に付けました。

その次の次にショート16位の垣内珀琉選手。ジュニアグランプリに続いて4回転成功なるか、という冒頭でしたが転倒。以降は非常に印象のいい滑りでしたが、構成にトリプルアクセルが入ってこないので、4回転転倒してしまうと全体として弱構成になってしまい、スコアは127.33と本人比でほどほど。トータル192.82で11人滑って5位。190点台は安定して出してきているのですが、自己ベストの200.82を超えていきたい試合だったかもしれません。

 

第3グループに入ってくると逆転優勝、はさすがに飛び越す人数多すぎて大変かもしれませんが、逆転表彰台くらいはほとんどの選手に普通にチャンスがある領域になってきます。

まずジュニアグランプリファイナルにまで出場したアメリカのマルティノフ選手から。11位からの逆転はノーミスで行きたかったですが冒頭4回転を転倒で苦しくなります。後半もシークエンスでアクセルが1回転になり3つ目付かず。ダブルアクセル1つ余った、と勘違いしたのか最後にもう一度シークエンスアクセル入れて、コンビネーション4回目、シークエンス2回目どちらで見ても跳びすぎキックアウトという珍しいミスも入って124.14ではトータル195.83でこの時点でも2位となり上位進出はならず。

ショート12位で実績も乏しい韓国のイジェクン選手が次に出てきます。上位進出は難しいかな、と思われたのですが、ここで初のトリプルアクセル2本着氷。後半疲れたでしょうかサルコウの転倒がもったいなかったですが、142.07と大幅自己ベスト更新でトータル212.22 ここで200点超えを出して試合のレベルを1つ上げて首位に立ちます。韓国3枠の芽が見えてきました。

続くのが中村俊介選手。上位進出、逆転表彰台を当然目指したい一方、ショートのままの順位だと来期3枠が取れない日本という難しい位置。確率微妙だけど大事な試合で割と決まっている冒頭4回転。これが勝負というこのジャンプを+2もらって成功。次はショートで転倒したトリプルアクセルでしたが何とか降りてコンビネーションもつけます。もったいなかったのは2つ目のトリプルアクセル。ここで転倒してしまいますが後は立て直しての142.61はパーソナルベストトータル215.46で首位に立って残り9人を待ちます。

ここから今期はシニアのグランプリシリーズに出ていたエストニアのレバンディ選手、3回目の世界ジュニアで初めて後半グループに入ってきたポーランドのロフェク選手、ユースオリンピック4位のアメリカのサンチェス選手と続きますが、スコア伸びず。第3グループ終わって中村俊介選手が首位を保ち、韓国のイジェクン選手が2位に付ける構図です。日本と韓国はあと1人残していて、3枠確保の可能性がだいぶ高くなりました。

 

最終グループはカナダナショナル2位に入っているショート4位のラキッチ選手から。4回転トーループをしっかり降り、2つめのサルコウは4回転投入せず3回転で降り、順調に来たのですがトリプルアクセルが転倒。トリプルアクセルは男子にとってもジュニアではまだ難しい。次のループループという割と珍しいコンビネーションを決めて立て直すのですが、終盤2つのスピンが3Vに2Vというもったいない出来でフリー134.00 トータルは211.74で首位の中村選手と3.72差の4位。僅差ですが細かいミスがもったいなかったです。

続いてシニアでの試合経験もすでに豊富なショート6位のイギリスからアップルビー選手。トリプルアクセル2本決めて順調だったのですが最後の2つのジャンプが転倒と抜け2回転。129.86でトータル205.55は4人残して5位。イギリス来期2枠確定ではありますが、ノーミスなら首位で待てたのにというところでもありました。

ここでショート5位の中田璃士選手が出てきます。中村選手がまだ首位にいますので、この時点で6位にはいれば来期日本は3枠確保。ターゲットスコアは121.58はこれは行けるだろうという水準。おそらく本人はそんなところは見ておらず、逆転優勝狙い。少なくとも首位に立つには137.87が必要で、そこにどれだけ上積みできるか。国際大会で失敗無しだった4回転トーループがステップアウトで始まったミッションインポッシブル。以降はトリプルアクセルを決め、コンビネーションもしっかり飛びたい回転分まわり、全要素全ジャッジプラス評価をもらいスピンもオールレベル4 文句のつけようのない演技で151.71 トータル229.31でパーソナルベスト。首位に立ち、日本来期3枠を確定させ、残り3人を待ちます。

ジュニアグランプリファイナル3位表彰台、ショート3位だったハガラ選手が次に出てきます。首位に立つターゲットスコアは151.30 ベストは146.32なので過去最高が必要。冒頭のアクセルのコンビネーションで多少ふらつきましたが後はミスなく滑って147.59 トータル225.61はパーソナルベストまでは出ましたが2位。ここで中田選手の表彰台確定。

続いてショート2位のフランス、ピトー選手。首位に出るには150.53が必要。シニアルールではナショナル含め2回151点台を出していますがジュニアルールでは148.37がベスト。際どい勝負。この場面で2本目のアクセルが1回転半になったのは痛かった。それでも後半にリカバリーアクセルを飛んできたものの、次のルッツで転倒しコンビネーションも1つ余る。僅差でこのミスだと届かず136.16のトータル214.95は1人残して4位。表彰台届かず。

 

最終滑走はショート1位のソミンギュ選手。優勝するには148.74が必要。表彰台には134.89があればよく、逆にこれを下回ると中村俊介選手が表彰台に残ります。ノーミスなら勝ち、というシチュエーションではあるのですが、2つ目のアクセルが1回転半になり微妙な状況に。もう1つミスが出れば負け、というここからはノーミス。滑り終わってもまだ結果は見えない。PCS差とショートのリードで逃げ切るか? 足りないか? どうだ? 際どい? キスアンドクライ、どうだ? フリー150.17 これだけ見ても本人たち他人のスコアまで全部頭に入っていないから結果見えない。トータル230.75 ここまで出て優勝。チャジュンファン選手でも届かなかった、韓国男子初の世界ジュニアのタイトルを勝ち取りました。

2位は中田璃士選手。3位にハガラ選手で、ジュニアグランプリシリーズでそれぞれ結果を出してきた3選手が結局順当に表彰台に乗った形。中村俊介選手は届かず4位でした。

日本韓国は来期3枠が決まり、ジュニアグランプリシリーズの枠も満額手に入りました。

世界ジュニア24女子シングル2

前回の続きで、世界ジュニアの女子シングル、数値編です。

 

○島田麻央選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A   8.00   -1.14 6.86 -1.556
2 4T   9.50   2.31 11.81 2.444
3 3Lz+3T   10.10   1.18 11.28 2.000
4 FCCoSp3   3.00   0.51 3.51 1.778
5 3F+2A+SEQ   8.60   0.53 9.13 1.000
6 3S+3T+2T   10.78 x 0.68 11.46 1.556
7 3Lo   5.39 x 1.33 6.72 2.667
8 ChSq1   3.00   1.29 4.29 2.556
9 3Lz   6.49 x 1.69 8.18 2.778
10 CCoSp4   3.50   1.60 5.10 4.556
11 LSp4   2.70   1.12 3.82 4.111
  TES   71.06   11.10 82.16  

構成は昨季からほぼ変わっていません、コレオの位置とスピンの種類が1つ変わっているくらいです。

トリプルアクセルは今季転倒無し。ステップアウトありましたが6.86のスコアが入れば普通は十分です。ただ、結果的には4回転転倒していたら負けていた、ということでしたので確率高いアクセルの方はきれいに決めておきたいところではありました。そんな追い詰められての4回転ですが平均GOE+2.444つく過去最高のジャンプを決めました。

意外と中盤のGOEが伸びていません。普段は+1台ではなく2台までは出てくるのですが、このあたりが伸びてきていませんでした。

技術点80点超えは今季ただ1人です。基礎点70点超えもただ1人。ジュニアなのでステップ1つ分シニアよりハンデがあるのですが、それでこの状態です。ステップ入れば技術点85点超えてきます。

ここから基礎点上げるには、割と安定感のあるセカンド3回転をもう1つ後半にするとか、ダブルアクセル余っているので3連続にシークエンスでアクセル2つにして、3-3を2つにする、というあたりは比較的容易にできるかもしれません。

今期も国際大会無敗。ジュニア全勝。あと2シーズンジュニア全勝を続けていけるでしょうか。

 

○シンジア選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   1.08 4.38 3.222
2 3Lo   4.90   1.54 6.44 3.111
3 3S   4.30   0.92 5.22 2.222
4 3F+2T+2Lo   8.30   1.06 9.36 1.889
5 CCoSp4   3.50   1.10 4.60 3.111
6 3Lz+3T   11.11 x 1.94 13.05 3.333
7 3F+2A+SEQ   9.46 x 1.51 10.97 2.778
8 3Lz   6.49 x 1.60 8.09 2.667
9 FCSp4   3.20   0.96 4.16 2.889
10 ChSq1   3.00   1.79 4.79 3.667
11 FCCoSp3   3.00   -0.13 2.87 -0.222
  TES   60.56   13.37 73.93  

シンジア選手も昨季から構成変わってきていません。冒頭ダブルアクセルでずっと組んでいるのですが、そのうちこれをトリプルにする可能性はあるのかどうか。

基礎点、技術点、共に島田選手には及びませんが、GOE +13.37はシンジア選手の勝ちでした。今期これより上は坂本花織選手しかいません。基礎点60.56はジュニアで高難度ジャンプ無い構成ではかなり高いものです。ルッツフリップ2本入りで1.1倍も強構成ですのでここまで来ます、スピンレベル4揃えば61.06まで出せて、シニアルールでステップレベル4取ると64.96という基礎点が出せます。

最後のスピンはもったいなかったです。これをしっかり決めていれば技術点は76点近くあったと思われます。ステップ入れば高難度ジャンプ無しでの技術点80点が見えます。

ここ2年の構図だと、シンジア選手と島田麻央選手が宿命のライバル感があるのですが、実際にはたぶんシンジア選手側からするとそうでもない部分が結構あります。まだ来期も2人の勝負をしないといけないわけですが、シンジア選手の方はその次のオリンピックシーズンにはシニアに上がれます。オリンピックで島田選手と対戦することは無く、そこでぶつかるのは坂本花織選手です。点の取り方も坂本選手に近い。あまり人と比べることはしないというような本人談はありますが、韓国チームとしては打倒島田麻央ではなくて、打倒坂本花織としての位置づけにシンジア選手はいそうに見えます。

 

○上薗恋奈選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T   10.10   1.77 11.87 3.000
2 3Lo   4.90   1.05 5.95 2.222
3 3F+2T   6.60   1.06 7.66 2.000
4 3S   4.30   0.86 5.16 2.000
5 FSSp4   3.00   0.64 3.64 2.222
6 3Lz   6.49 x 1.69 8.18 2.778
7 3F   5.83 x 1.36 7.19 2.667
8 2A+2A+2T+SEQ   8.69 x 0.71 9.40 2.111
9 LSp4   2.70   0.69 3.39 2.556
10 ChSq1   3.00   1.79 4.79 3.444
11 CCoSp4   3.50   1.00 4.50 2.778
  TES   59.11   12.62 71.73  

全要素全ジャッジプラス評価で全要素+2以上。スピンオールレベル4 ジャンプマーク無しのクリーンシート。完璧でした。ミスが少なく見える選手ですが、ジュニアルールで基礎点59.11までしっかり出したのはこれが初めてです。

ルッツフリップ2本構成でスピンオールレベル4なのですが、シンジア選手より1.45基礎点が下がります。基礎点低めなレイバックスピンが入ることと、1.1倍がやや弱い。高難度無しで勝負するなら1.1倍をもう少し強めたいですが、トリプルアクセル挑戦中という話も聞きますし、そちらへシフトしていくのでしょう。元々トリプルアクセルは名古屋のものでした。

上品な滑りをするけれど、下品代表みたいなクレヨンしんちゃん大好きという上薗恋奈選手。ジュニアグランプリファイナルに続いて表彰台に乗りました。ジュニアはあと3シーズン続きます。長いな。表彰台、上へ上がっていくには来期もまだいるシンジア選手、島田麻央選手を超えていかないといけません。まずは、トリプルアクセルの実戦投入を目指していくシーズンオフになるのかと思われます。

 

○櫛田育良選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lzq+2T q 7.20   -0.42 6.78 -0.778
2 3S+3T   8.50   0.92 9.42 2.111
3 FCCoSp4   3.50   0.60 4.10 1.667
4 2A   3.30   0.75 4.05 2.222
5 2A F 3.30   -1.65 1.65 -5.000
6 CCoSp4   3.50   0.35 3.85 1.000
7 3Loq F 5.39 x -2.45 2.94 -5.000
8 3Lz+3Tq+2T q 12.54 x -0.84 11.70 -1.333
9 3F   5.83 x 0.61 6.44 1.111
10 ChSq1   3.00   1.36 4.36 2.667
11 LSp4   2.70   0.85 3.55 3.000
  TES   58.76   0.08 58.84  

ショート3位からの表彰台はならずの櫛田育良選手。中盤の2転倒が痛かったですが、それ以外にもコンビネーションのqで失点しています。基礎点は58.76 スピンもオールレベル4で基礎点削られるミスはなかったです。2回飛ぶジャンプはルッツとトーループ。セカンド3T2本使いは難しそうに見えるのですが、基礎点で見るとルッツフリップ2本使いの方が上へ行きます。フリップが苦手そうにも感じられないので、ルッツフリップ2本使いにしてシークエンスのアクセル入れると基礎点を上げることは出来ます。

今回の日本からの代表3選手の中で、唯一、次のオリンピックに間に合う世代です。シンジア選手と同じスケート年齢になります。ただ、フリーの自己ベスト110点台ですと、オリンピック代表争いは難しいでしょうか。国内では120点台を割と出しているので、国際大会より国内の方が力を出す傾向はありそうですが、全日本ではショート落ち。国内に強いというより単に波が激しいと言う方が実態に近いのでしょうか。

来期はまだジュニア。転倒が割と多い、それも種類問わず転倒してくることがあるので、ジャンプの安定感を高めていきたい、というシーズンオフになるかと思います。

 

○ショートフリー合わせた要素別のスコア(上位18名)

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Mao SHIMADA 218.36 95.47 78.15 10.02 25.08 9.64
2 Jia SHIN 212.43 97.19 67.15 14.26 23.75 10.08
3 Rena UEZONO 194.70 89.41 66.20 8.12 22.98 8.99
4 Iida KARHUNEN 186.32 82.69 66.47 8.02 20.83 8.31
5 Ikura KUSHIDA 180.97 86.34 65.35 -0.50 22.46 9.32
6 Anastasia BRANDENBURG 177.36 83.00 63.06 2.69 20.53 9.08
7 Sarina JOOS 174.73 77.88 66.00 2.14 21.30 8.41
8 Sherry ZHANG 174.04 82.47 58.73 2.39 24.66 8.79
9 Stefania GLADKI 173.84 78.10 64.80 0.74 22.39 7.81
10 Lulu LIN 173.71 76.72 63.97 3.01 21.91 8.10
11 Elina GOIDINA 172.89 79.19 65.41 2.44 20.01 7.84
12 Inga GURGENIDZE 172.87 78.69 64.70 1.97 20.98 7.53
13 Maria Eliise KALJUVERE 170.96 80.56 58.08 2.70 21.09 8.53
14 Anthea GRADINARU 170.84 75.00 63.59 3.43 21.64 7.18
15 Yuseong KIM 170.80 80.16 65.77 -4.02 22.86 8.03
16 Yujae KIM 167.84 79.36 61.10 -1.14 22.30 8.22

PCSはシンジア選手が島田選手を上回りました。上薗選手が3番目。上薗選手と島田選手で6.06差があります。櫛田選手が4番目、櫛田選手と島田選手で9.13差。このあたりの差を埋めていきたいところかと思います。

ジャンプの基礎点は島田選手の78.15が圧倒的。当然の今シーズン最高基礎点です。シンジア選手が2番目ですが、8番目の櫛田選手まであまり差がありません。差が付くのは加点の方。シンジア選手は+14.26でこちらは島田選手越え。今季1位のジャンプ加点です。ジャンプのスコアとしては島田選手とシンジア選手で3.24差。それほど大きな差は付きませんでした。上薗選手もショート転倒ありながらも8.12で3番目に続きます。櫛田選手はここがマイナス。ジャンプの安定性がもう少し欲しい、ということになるかと思います。

スピンは島田選手が25.08でいつものごとく1位ですが、26点台を普通に出す選手なので本人比ではそれほど良くは無いです。シンジア選手の23.75も今シーズンワースト。スピンは2人ともいつもより少し伸びなかったです。上薗選手の22.98は自己ベスト。逆説的に、島田選手とのスピンの差が大きいというのもわかります。

ステップ系要素はシンジア選手のみ二桁乗りました。ジュニアで二桁は今季ただ一人です。島田選手の9.64は本人としてはまずまずくらい。上薗選手は9点台出せますので8.99は今一つでした。

 

○4回転ジャンプ

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Mao SHIMADA 2 4T   9.50   2.31 11.81 2.444

今大会4回転を構成に入れたのは島田麻央選手ただ一人。これをしっかり決めてきました、4回転トーループの成功が最終的には優勝につながりました。

 

トリプルアクセルを含む要素

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS Mao SHIMADA 1 3A   8.00   -1.14 6.86 -1.556
FS Inga GURGENIDZE 2 3A<+COMBO+2T* * 6.40   -2.83 3.57 -4.333
FS Yuseong KIM 1 3Aq F 8.00   -4.00 4.00 -5.000
FS Yujae KIM 1 3A<< F 3.30   -1.65 1.65 -5.000
FS Inga GURGENIDZE 1 3A<< F 3.30   -1.65 1.65 -5.000

トリプルアクセルを入れたのは4選手。回転十分で降りたのは島田麻央選手のみ。アンダーローテーションでグルゲニゼ選手は降りていて、キムユソン選手はqで転倒、あとはダウングレードの転倒でした。トリプルアクセルは難しい。

 

長いジュニアになってから2シーズン目。昨季の上位5人は全員ジュニアに残ったままだったのですが、続けて出てこられたのは島田選手とシンジア選手の2人だけでした。そしてその2人でまたワンツーです。今期の上位6選手は全員来期もジュニア。同じ顔ぶれが来季も並ぶのか、はたまた入れ替わるのか。有力どころがシニアに上がり始めるのは再来年。女子ジュニアの激戦はまだ続きます。

 

 

次回は男子シングルです。

 

世界ジュニア24女子シングル1

今期もシーズン終盤に入ってきました。もうコロナ中止の心配はしなくていいのかな。ちゃんとあります世界ジュニア。7年ぶりに台湾開催。観客ちゃんといます。

世界ジュニアは男女それぞれ別エントリーで見ていきます。まずは女子シングルです。

初回は試合展開の振り返りだけです。

 

○女子シングル フリー進出24名

Pl Name Nation Total SP FS
1 Mao SHIMADA JPN 218.36 72.60 145.76
2 Jia SHIN KOR 212.43 73.48 138.95
3 Rena UEZONO JPN 194.70 61.96 132.74
4 Iida KARHUNEN FIN 186.32 64.64 121.68
5 Ikura KUSHIDA JPN 180.97 66.61 114.36
6 Anastasia BRANDENBURG SUI 177.36 62.57 114.79
7 Sarina JOOS ITA 174.73 57.66 117.07
8 Sherry ZHANG USA 174.04 58.57 115.47
9 Stefania GLADKI FRA 173.84 58.65 115.19
10 Lulu LIN CAN 173.71 57.12 116.59
11 Elina GOIDINA EST 172.89 63.03 109.86
12 Inga GURGENIDZE GEO 172.87 62.28 110.59
13 Maria Eliise KALJUVERE EST 170.96 55.62 115.34
14 Anthea GRADINARU SUI 170.84 57.85 112.99
15 Yuseong KIM KOR 170.80 59.58 111.22
16 Yujae KIM KOR 167.84 54.98 112.86
17 Phattaratida KANESHIGE THA 166.32 54.01 112.31
18 Jana HORCICKOVA CZE 164.22 58.33 105.89
19 Polina DZSUMANYIJAZOVA HUN 162.39 53.35 109.04
20 Josephine LEE USA 161.74 54.33 107.41
21 Kaiya RUITER CAN 161.19 54.62 106.57
22 Sophia SHIFRIN ISR 159.77 53.84 105.93
23 Yu-Feng TSAI TPE 158.90 56.30 102.60
24 Noelle STREULI POL 155.39 53.38 102.01

ショート終わった時点でシンジア選手が首位。島田選手は0.88差の2位です。3位が櫛田選手で2位と5.99差ありますので、上2人が少し抜けている展開でした。優勝争いは一騎打ち。一方で、3位から8位まで4.66差と表彰台争いは多くの選手に可能性があり、8位の上薗選手も十分にチャンスがある。9位のキムユソン選手も3位と7.03差は少し大きいですが、トリプルアクセルの一発があるのでこのあたりまでチャンスがありそう、という展開でした。

フリーの第一グループは、タイのカネシゲ選手がトリプルアクセル入れてくるか注目されましたが今季はアクセル封印しての安全運転、一方、コンボ全後半で基礎点伸ばして112.31のトータル166.32 まずまずのスコアを出してきます。

第二グループには地元台湾でジュニアグランプリシリーズで表彰台にも乗っているユーフェンツァイ選手が出てきます。ショート16位で10位と2.35差。ノーミスなら来期台湾2枠もあるか、という位置。地元声援は盛り上がりますが、ほとんどのジャンプがすっきり決まらず102.60でトータル158.90 ジュニアグランプリシリーズの再現はなりませんでした。

続いて韓国のキムユジェ選手。昨季はトリプルアクセル決めての4位。ここでもその再現で上位進出したいところですがダウングレードの転倒という最悪の出だし。続いて苦手のフリップでショートに続いてeが付く苦しい展開。以降は立て直しましたが112.86は本人としては不本意な出来でトータル167.84 この時点で4位 上位進出はならず。

前半終わって首位はヨーロッパ選手権で8位にも入っているイタリアのサリナヨース選手が174.73 2位には大幅自己ベスト更新でカナダのルルリン選手が173.71が続きます。1人で2枠の10位以内はこのあたりのスコアがターゲットになってきます。

 

第3グループにもトリプルアクセル持ちが2人。先に出てきたのはジョージアのグルゲニゼ選手。冒頭トリプルアクセルはダウングレードの転倒という最悪の出だしながら、2つ目も跳びに行ってアンダーローテーションでステップアウトしながらも立ちます。以降は次々ジャンプを決めて行ったものの110.59でトータル172.87は8人残して5位。トップ10入りは難しい情勢になります。

続いてショート9位の韓国キムユソン選手。逆転表彰台が狙える位置ですが、その前に韓国はまず3枠確保がしたい。そのためにはシンジア選手が2位以内とすると11位には入っておきたくて、7人残して4位以内なら、ということで最低ターゲットスコアは114.14 トリプルアクセルは転倒。ただ基礎点満額入ったのでまだ想定内。痛かったのはルッツのeと後半フリップのダウングレード転倒。結局111,22でトータル170.80は7人残して8位。トリプルアクセルキム姉妹は2人ともショートフリー共にシーズンワーストという苦しい試合展開で韓国3枠は非常に厳しい情勢となります。

 

第3グループ最終滑走は上薗恋奈選手。怪我で全中欠場、ショートでも転倒、非常に心配されたフリーですが、流石の実力者。全要素全ジャッジプラス評価の全要素平均GOE+2以上。割と!つきがちな心配のフリップもクリーンに決めて132.74はパーソナルベスト更新、完璧演技でトータル194.70 国際大会3大会続けて190点台を出して首位に立ち、最終グループを待ちます。日本来期3枠はこれでほぼ確定。

最終グループ1番滑走はジュニア1年目、ジュニアグランプリシリーズの出場もなかったのにショートノーミスの63.30であっと言わせたエストニアのゴイディナ選手から。冒頭2つのジャンプが決まらずショートの再現とはいかずの109.86 トータル172.89 170点台前半の混戦に巻き込まれてこの時点で6位に終わります。

昨季26位のショート落ちだったフィンランドのカルフネン選手が2番滑走。ジャンプノーミス。終盤のスピンで1つミスが出ましたが軽い失点で収まって121.68のパーソナルベスト。トータル186.32で4人残して2位。昨季のリベンジ大成功。

続いてショート6位のスイス代表ブランデンブルク選手。首位に立つには132.14が必要で少し厳しいという情勢。後半ルッツ転倒が痛く114.79 トータル177.36で3人残して3位。スイス来期2枠を守ります。

 

残り3人。ショート3位の櫛田育良選手登場。首位に立つターゲットスコアは128.10 国内ローカルのシニアの試合でなら128.94を出したことあるけれど、ジュニアルールだと全日本ジュニアの124.82が最高。人生最高が表彰台には必要、という局面。チャンスはありました。冒頭のコンビネーションをセカンド2回転に抑えて乗り切り次の3S+3Tをクリーンに決めます。欲が出たか、リカバリー3Tどこで入れるか迷ったか、単独ダブルアクセルで転倒。動揺せずに次のスピンをしっかりレベル4取りますが、その次のループで転倒。2転倒で表彰台は届かず、114.36でトータル180.97 パーソナルベストにはなりますが2人残して3位。大魚を逸したと見るか、いい経験と見るか。日本の来期3枠は島田選手登場前に決まりました。

 

真打登場、島田麻央選手。シンジア選手より先に出てきているのでターゲットスコアはわかりません。ただ、2転倒すると多分勝てないだろうな、というのが想像できる。そんな中、確率高く決まっていた冒頭のトリプルアクセルがステップアウト。これは確率低い4回転で危ないか、と思われたのですが、ジュニアグランプリファイナルに続いてこの4回転トーループを決めます。以降、ジャンプ決めていくのですが中盤はやや硬かったでしょうか、いつもよりGOEはやや少なめ。しかし、ジャンプ終えた最後の2つのスピンは圧巻。145.76はシーズンベストでトータル218.36 首位に立って最終滑走を待ちます。

最終滑走シンジア選手。優勝するには144.89が必要。ベストは2期前の世界ジュニアの136.63 ナショナルでよければ149.28まで出したことがあります。それでも落ち着いた滑りで序盤から高加点を引き出していきます。ただただすごい、という演技でしたが、最後のスピン、フライングというか着地というかがうまくいかず、そこだけミスが出ました。フリー138.95 トータル212.43 どちらもパーソナルベストですが届かず2位。3大会連続の2位表彰台となりました。

 

結局日本は当然の3枠ながら韓国は2枠にとどまります。7位の174.73から15位の170.80まで3.93の僅差の中に9人がひしめき合って、その中で15位16位、と残念な結果になったキム姉妹。姉のユソン選手があと2.10稼いでいれば3枠残りました、来期の自分たちのために非常に痛い結果です。

ショートの通過ラインも53.35 日本人選手でもジャンプ2つミスするとショート落ちがあるという怖いレベルに世界ジュニアもなってきています。

チャレンジカップ 来季へ向けて?

例年日本からは多数の派遣のあるチャレンジカップ。今期はシングル2種目にペアでの派遣がありました。今期はノービスやジュニアの派遣はなく、すべてシニアカテゴリーでの派遣となっています。

 

○女子シングルシニア

Pl Name Nation Total SP FS
1 Kaori SAKAMOTO JPN 212.43 67.76 144.67
2 Yuna AOKI JPN 209.37 72.01 137.36
3 Lorine SCHILD FRA 176.68 59.78 116.90
4 Ekaterina KURAKOVA POL 167.63 56.19 111.44
5 Niina PETROKINA EST 162.18 51.57 110.61
6 Eva-Lotta KIIBUS EST 155.07 46.74 108.33
7 Oona OUNASVUORI FIN 152.00 53.31 98.69
8 Anna PEZZETTA ITA 150.33 55.12 95.21
9 Sarah Marie PESCH GER 128.37 42.42 85.95
10 Flora Marie SCHALLER AUT 124.03 42.85 81.18
11 Natalie KLOTZ AUT 109.55 38.91 70.64

結果的には坂本花織選手の順当勝ちでした。世界選手権まで1カ月。ミスは出ていますがまずまず順調に調整進んでいるのかと思われます。

2位には青木祐奈選手が入りました。なんでB級大会で世界チャンピオンと戦わないといけないかな、みたいな試合になっていまして、209.37出したのに優勝させてもらえませんでした。

フランスのシルト選手が3位表彰台です。ヨーロッパ選手権でパーソナルベスト出しての5位。ある程度の好調さを維持できているようです。世界選手権で上位進出なるか。

一方、ヨーロッパ選手権でまさかのショート落ちしたクラコワ選手が4位でした。やはり今期は今一つ調子が上がってきていない印象です。

エストニアのペトロキナ選手は2週連続の試合で5位に入りました。先週に続いてアクセルはすべて1回転半。怪我からの回復はまだ十分ではないようですがある程度まとめてきています。

 

○坂本花織選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   1.39 4.69 4.143
2 3Lz   5.90   1.77 7.67 2.857
3 3S   4.30   1.12 5.42 2.714
4 CCoSp4   3.50   0.98 4.48 2.714
5 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.000
6 3F+2T   6.60   1.59 8.19 2.857
7 FSSp4   3.00   0.66 3.66 2.286
8 3F+3T   10.45 x 2.12 12.57 3.714
9 2A+3T+2T   9.68 x 1.43 11.11 3.571
10 ChSq1   3.00   1.70 4.70 3.429
11 3Lo F 5.39 x -2.45 2.94 -4.857
12 FCCoSp4   3.50   0.91 4.41 2.571
  TES   62.52   12.39 74.91  

坂本選手のフリーはいつもの構成です。全要素全ジャッジ+2以上、となりそうだったのですが、あれ? ループ転倒。昨シーズンから最後のループのミスが割と目立ちます。ショートで2回転になったルッツはしっかり決めました。

今期は全試合200点超え。今回はショートフリーで1つづつミスありましたが210点超えです。このスコアでも今期これより上を出しているシニアはヘンドリックス選手と千葉百音選手しかいません。やはり強いです。B級ジャッジとはいえ、3F+3Tで+3.714はなかなか出ません。驚異的なジャンプの評価です。

世界選手権まで1カ月。順調に来ているようなので、本番は220点超え、しっかりピークが合うと230点超えまで見られるかもしれません。

 

○青木祐奈選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3Lo   10.80   1.30 12.10 2.286
2 2S   1.30   0.18 1.48 1.571
3 2A+1Eu+3F   9.10   1.48 10.58 2.571
4 3T   4.20   0.92 5.12 2.286
5 FCSp4   3.20   0.64 3.84 2.143
6 2A   3.30   0.99 4.29 2.857
7 3Lz+2T   7.92 x 1.06 8.98 1.857
8 3F< 4.66 x -0.42 4.24 -1.000
9 CCoSp4   3.50   0.70 4.20 2.000
10 ChSq1   3.00   1.50 4.50 2.857
11 StSq4   3.90   1.33 5.23 3.571
12 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.000
  TES   57.58   10.49 68.07  

ルッツループ成功。しかし次のサルコウが2回転に。これを3回転でしっかり決めていれば世界チャンピオンに土を付ける、いや、氷を付けるか? することができたはずでした。ショートのリードもあったので逃げ切っていてもおかしくない滑りだったのですが。そういう意味では残念ではあります。最後のジャンプのフリップもアンダーローテーションが付きました。ミス2つ。ただ、逆説的には、ミス2つあるのにフリーで137.36まで出たのが驚くべきところ。トータル209.37は当然本人過去最高スコアです。ISU非公認ですが今季5位、シニアでは4位にあたります。

今期のルッツループ成功者はフィンランドのペルトネン選手に続いて2人目。ショートフリー共に決めたのは青木選手だけです。昨季もレビト選手と青木選手の2人だけ。希少なルッツループ、しっかり決めて見せてくれました。ISU非公認含めた国際大会の3Lz+3Lo成功者の最年長記録更新です。更新前の記録は昨年のトリグラフトロフィーで自身が決めたジャンプでした。

来期は・・・どうするんでしょう? まだ決めてません発言が続いていますが。いやあ、209点出せる選手がグランプリシリーズ1回だけで終わり、というのは、やはりよくないです。NHK杯の審判団が普通の審判団ならもっとちゃんと点が出て、シーズンベストランクで20位以内くらいになるスコアになっていたはずで、来期のグランプリ枠1枠が優先的に来たはずなので、それを持って現役を続ける決断がしやすかったと思うのですが、今の状態だと何の保証もありません。でも、人生最後の試合が大幅自己ベスト更新の209点台、というのはやはりフィギュアスケート業界としてよくない。これはなんとか現役を続けてほしいのですが、TOKIOインカラミさん、なんとかなりませんか? 渡辺倫果、中井亜美、青木祐奈、看板3枚でミラノオリンピックにチャレンジする姿は、いい宣伝になりますよ。

 

○女子シングルシニア 要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Kaori SAKAMOTO 212.43 104.88 59.37 9.88 24.30 15.00
2 Yuna AOKI 209.37 101.40 61.21 8.80 23.32 14.64
3 Lorine SCHILD 176.68 77.14 63.31 4.05 21.00 11.18
4 Ekaterina KURAKOVA 167.63 81.01 55.77 -3.02 20.45 13.42
5 Niina PETROKINA 162.18 83.15 50.59 -4.19 21.64 11.99
6 Eva-Lotta KIIBUS 155.07 77.73 44.61 2.19 17.23 13.31
7 Oona OUNASVUORI 152.00 72.13 49.07 -0.19 19.80 11.19
8 Anna PEZZETTA 150.33 77.28 44.25 -1.64 21.14 10.30
9 Sarah Marie PESCH 128.37 59.86 49.02 -8.27 19.00 9.76
10 Flora Marie SCHALLER 124.03 59.26 43.00 -5.19 19.82 9.14
11 Natalie KLOTZ 109.55 49.60 44.05 -4.25 14.33 7.82

PCSは坂本選手がいつも通りの100点台。ここに青木選手も続いて101.40を出しました。今期3位のPCSです。これより上は坂本選手とヘンドリックス選手、2人しかいません。多少甘めに出やすいB級大会とは言え、高PCSが違和感ない滑りでした。

ジャンプの基礎点はシルト選手が1位です。青木選手はフリーで2つ基礎点削られ、坂本選手はショートのルッツ零点が効いています。加点の方は坂本選手が1位で青木選手が2位、2人とも10点に迫る加点です。坂本選手は本人の中では今季4番目の加点ですが、今シーズンこれより上の加点をもらった選手はいない、という水準ではあります。青木選手の+8.80で今季6位。ただ、上にいるのは坂本選手以外はジュニアのファイナル表彰台3人組ですので、シニアの中では坂本選手に次ぐ評価ということになります。

スピンも坂本選手が1位。24.30は本人の中でいい方です。青木選手の23.32は国内外通じて自己ベストのスピンとなります。

ステップ系要素も坂本選手が1位で15.00 坂本選手は15点台は普通に出しますので15.00は普通です。青木選手の14.64はこれも国内外通じて自己ベストです。青木選手はジャンプの基礎点だけは国内でこれより高い試合が過去にありましたが、それ以外はジャンプの合計点含め各要素すべて自己最高の得点となっていました。

 

○男子シングルシニア

Pl Name Nation Total SP FS
1 Mikhail SHAIDOROV KAZ 256.34 85.75 170.59
2 Tatsuya TSUBOI JPN 254.81 85.80 169.01
3 Kazuki TOMONO JPN 251.61 84.74 166.87
4 Nikita STAROSTIN GER 220.38 76.81 143.57
5 Vladimir SAMOILOV POL 212.84 68.14 144.70
6 Gabriel FOLKESSON SWE 205.71 75.34 130.37
7 Matthew NEWNHAM CAN 189.91 62.26 127.65
8 Anton SKOFICZ AUT 138.16 53.03 85.13
9 Dillon JUDGE IRL 126.97 47.34 79.63
  Alp Eren OZKAN TUR 44.01 44.01  

カザフスタンのシャイドロフ選手が優勝。国際大会初優勝となります。256.34というスコアは中国杯で出した264.46には届きませんが、コンスタントに250点を超えるようになってきました。

壷井達也選手は2位。254.81は全日本を超えて自己最高スコアです。優勝にはわずかに届きませんでした。

3位には友野一希選手が入っています。251.61は本人比では平凡なスコアでしょうか。

4位にはドイツのニキータストラスティ選手が入っています。ヨーロッパ選手権13位の選手。220.38は国際試合の本人最高スコアとなりました。

5位にはポーランドのサムイノフ選手。ヨーロッパ選手権で8位に入った選手です。2度目の4回転ルッツ成功、それも平均GOE+3.714という高評価を受けました。

 

○ミハイルシャイドロフ選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4Lzq q 11.50   -0.23 11.27 -0.286
2 4Fe e 8.80   -0.88 7.92 -1.000
3 4T+3T   13.70   1.90 15.60 2.000
4 ChSq1   3.00   1.00 4.00 1.857
5 3F! ! 5.30   0.00 5.30 0.000
6 FCCoSp4   3.50   0.49 3.99 1.429
7 4T   10.45 x 2.28 12.73 2.429
8 3A+2A+SEQ   12.43 x 1.76 14.19 2.286
9 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 0.59 12.36 1.143
10 FCSSp3   2.60   0.47 3.07 1.714
11 StSq3   3.30   0.59 3.89 1.857
12 CCoSp3   3.00   0.84 3.84 2.714
  TES   89.35   8.81 98.16  

シャイドロフ選手4回転4本を降りました。ただしフリップはe判定です。4大陸でも4回転4本降りていましたし、ルッツフリップトーループ2本が標準構成になってきています。コンビネーションも3T3S2Aと組み込んで基礎点高く出る組み合わせ。89.35の基礎点は本人最高のものです。これより上の基礎点を今期出したのは、マリニン選手とアダムシャオイムファ選手の2人だけです。まだジャンプ依存型でほかのスコアが伸びていないので、4回転4本までだと世界選手権の表彰台争いまでは厳しいですが、昨季の14位を上回っていくところまでは十分見えてきています。

 

○壷井達也選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4S+3T   13.90   3.69 17.59 3.714
2 4S   9.70   2.91 12.61 3.143
3 3A+1Eu+2S   9.80   1.76 11.56 2.143
4 FSSp3   2.60   0.57 3.17 2.143
5 StSq3   3.30   0.73 4.03 2.286
6 3Lo   4.90   1.37 6.27 2.714
7 3A   8.80 x 1.92 10.72 2.429
8 3F   5.83 x 1.27 7.10 2.429
9 3Lz+2T   7.92 x 1.53 9.45 2.571
10 CCoSp3   3.00   0.60 3.60 2.000
11 ChSq1   3.00   1.10 4.10 2.286
12 FCCoSp3   3.00   0.72 3.72 2.286
  TES   75.75   18.17 93.92  

4回転サルコウ成功。ショートフリーで3本の4回転サルコウを決めたのは初です。全要素全ジャッジプラス評価。ショートも含め全要素プラス評価となりました。

基礎点75.75は本人比で高い方ですが、自己最高ではありません。3連続のサルコウが2回転になった、というのが目立った欠落要素。セカンドで2Tが入ったのは、シークエンスのアクセルを持っていないので仕方ないのですが、4回転増やすよりは難易度低いと思われるので早めに身に付けたいところかと思います。シークエンスアクセルに出来ていれば優勝でした

また、スピンステップでレベル4がとれませんでした。NHK杯ではショートフリーでスピンオールレベル4をやっていたのですが、また昔の壷井選手に戻ってしまったというような今大会のスピンです。ちょっとジャンプに意識が行きすぎたのかもしれません。ステップはレベル4を取れるのは稀ですので力なりかと思われます。3連サルコウが3回転に、あるいはスピンでもう少しレベル4を取る、どちらか出来れば優勝出来た試合ではありました。

今期はこれでおそらく終わりかと思います。来期につながるいい試合ではあったのですが、来期、グランプリ枠あるかどうか・・。ただ、チャレンジャーシリーズの派遣はあると思われますので少なくともチャンスはあります。上位と戦うには4回転2種類目も欲しいですが、シーズンオフにそこまで行けるでしょうか。

 

友野一希選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3T<< <<  1.30   -0.65 0.65 -5.000
2 4T+2T   10.80   1.71 12.51 1.857
3 4Sq q 9.70   -0.39 9.31 -0.429
4 3Lo   4.90   0.98 5.88 1.857
5 FCSp3   2.80   0.56 3.36 1.857
6 3A+1Eu+3S   14.08 x 1.28 15.36 1.429
7 3F+2A+SEQ   9.46 x 1.17 10.63 2.143
8 3A   8.80 x 2.40 11.20 3.000
9 StSq4   3.90   1.33 5.23 3.286
10 CSSp2   2.30   0.60 2.90 2.571
11 ChSq1   3.00   1.40 4.40 2.857
12 CCoSp4   3.50   1.19 4.69 3.571
  TES   74.54   11.58 86.12  

冒頭4回転は不発。その後は印象よく滑ったのですがスコア的にはいまいち伸びてきませんでした。4回転トーループ自体課題のジャンプではありますが、大きな問題としてセカンドが2回転になる、というのがあります。この病は宇野選手が有名でしたが友野選手も同じです。これがショートフリー共に起きる。今期は国際大会でセカンド3回転がゼロ、国内でも直近の国体で1回入っただけです。基礎点にして2.9×2下がります。フリップの3回転と4回転の基礎点差が5.7 4回転もう1本フリーで入れるくらいの価値になりますのでこれは来期までになんとか手に入れたいところかと思います。

今期は、世界選手権補欠3は残っていますがさすがに代打の神様と言えど回ってこないでしょう。おそらく今季終了。来期はまたグランプリシリーズから。意外とファイナルに出たことないのでまずはそれを目指しつつ、チャンピオンシップ復帰を目指すことになるかと思います。

 

○男子シングルシニア 要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Mikhail SHAIDOROV 256.34 107.67 108.52 7.67 20.70 11.78
2 Tatsuya TSUBOI 254.81 113.00 89.66 19.40 20.46 12.29
3 Kazuki TOMONO 251.61 120.75 88.34 6.99 22.61 13.92
4 Nikita STAROSTIN 220.38 107.58 79.07 -1.56 23.13 13.16
5 Vladimir SAMOILOV 212.84 99.76 80.10 0.54 21.15 11.29
6 Gabriel FOLKESSON 205.71 100.01 79.80 -4.78 21.20 10.48
7 Matthew NEWNHAM 189.91 96.42 66.17 -3.89 17.89 13.32
8 Anton SKOFICZ 138.16 74.09 51.42 -12.85 19.81 7.69
9 Dillon JUDGE 126.97 68.84 43.62 -4.92 14.00 7.43
10 Alp Eren OZKAN 44.01 25.56 19.73 -6.95 4.23 2.44

PCSは友野選手が1位です。過去実績はこのメンバーの中で抜けています。1人だけ8点平均を出しました。壺井選手が2番目に続いています。壺井選手は昨シーズン115.24までだしたことがありますのでまだ上があります。シャイドロフ選手は優勝しましたがPCSはあまりもらえていません。

ジャンプの基礎点はショートフリーで4回転6本組み込んだシャイドロフ選手が1位です。これは本人過去最高で、今期3位のジャンプ基礎点です。壺井選手は90点までは届かず。過去にワールドユニバーシティゲームズで92.66まで出したことあります。

ジャンプの加点は壺井選手が圧倒的です。+19.40はもちろん本人過去最高。今期これより上は、マリニン選手、アダムシャオイムファ選手、鍵山優真選手の3人だけしか記録していません。非常に素晴らしい出来でした。シャイドロフ選手、友野選手も一桁後半はもらっています。

スピンはストラスティ選手が1位です。友野選手2番目ですが22.61は平凡です、壷井選手は20.46 元々スピンは苦手側の選手ですがNHK杯では22.83まで出していました。NHK杯並みのスピンなら優勝していた計算です。

ステップ系要素はさすがの友野選手1位ですが13.92はあまりいいスコアではないです。15点台まで出す力のある選手。壺井選手の12.29は国際大会の自己最高です。シャイドロフ選手はスピンステップで32.48しか取れてない計算です。世界の最上位、鍵山選手やアダムシャオイムファ選手は42点台まで出してきますので、4回転トーループ丸々1本分の差がスピンステップでついてきます。世界の最上位で戦うには、スピンステップの差をもう少し詰めていきたいところです。

 

今回のチャレンジカップはペアの派遣もあったのですが、三浦木原組は欠場。こちらはまあ、調整ですかそうですか、というくらいなものですが、長岡森口組は世界選手権用のミニマムを獲りに行ったのですが、これが取れませんでした、ということで今期のワールドは無し。非常に痛い試合となってしまいました。オリンピックまであと2シーズン。来期はワールドへ出てできればフリーにまで進んでオリンピック2枠を確保する、というのが目標になって来るかと思われます。

 

次週は世界ジュニアです。日本からは4種目エントリー。女子は連覇のかかる島田麻央選手、ファイナルに次いで表彰台に乗りたい上薗恋奈選手、全日本ジュニアで190点まではだしてきている櫛田選手の3選手がエントリーで日韓決戦。男子はファイナルチャンピオンの中田璃士選手に全日本ジュニアチャンピオンの中村俊介選手、ジュニアグランプリ表彰台のある垣内珀琉選手がエントリーしています。ペアでは清水本田組、アイスダンスは岸本田村組が出場。岸本田村組はジュニアの中ではシーズンベストもトップ10に入ってきますし、上位に入って来期の2枠が狙える位置にいます。

タリンホテルズカップ それぞれの調整

シーズン後半のB級大会派遣シリーズ。今期はタリンホテルズカップへの派遣となりました。カップル競技はババリアンオープンへの派遣もあったのですが、シングルはここからになっています。

 

○女子シングルシニア

Pl Name Nation Total SP FS
1 Rion SUMIYOSHI JPN 189.21 66.53 122.68
2 Hana YOSHIDA JPN 187.25 59.02 128.23
3 Mako YAMASHITA JPN 179.39 69.85 109.54
4 Niina PETROKINA EST 167.82 59.27 108.55
5 Kristina LISOVSKAJA EST 165.39 58.07 107.32
6 Minja PELTONEN FIN 153.72 57.13 96.59
7 Elizabet GERVITS ISR 142.49 51.07 91.42
8 Selma VALITALO FIN 141.83 54.42 87.41
9 Anastasija KONGA LAT 141.76 53.31 88.45
10 Oona OUNASVUORI FIN 141.59 54.86 86.73
11 Linnea KILSAND NOR 129.65 42.65 87.00
12 Frida Turiddotter BERGE NOR 129.06 47.40 81.66
13 Olesja LEONOVA EST 126.97 49.94 77.03

女子は日本人選手が表彰台をすべて埋めました。住吉りをん選手が国際大会初優勝。グランプリファイナルにまで出ている選手が意外ですが、ジュニア、ノービスの時代から国際大会で2位3位の表彰台は多数あったものの、優勝がなく、これが初栄冠となりました。

2位はフリー番長吉田陽菜選手。今回もショート出遅れからフリー1位で2位まで上がってきています。

国際大会復帰戦の山下真瑚選手は3位表彰台。全日本と同じような流れでショート好成績のリードを活かしてフリーも表彰台に踏みとどまるスコアを出しました。ショートの69.85は以前の国際大会に出ていた時期と比べても上回る、自己ベスト相当のスコアでした。

タリン開催、ということで地元エストニア勢が4位5位と続きます。怪我からの復帰戦な模様のペトロキナ選手が4位。まだ構成自体が本調子になっていませんがある程度のスコアまでは戻してきています。

 

○住吉りをん選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A+3T   7.50   1.12 8.62 2.600
2 4T<< <<  4.20   -2.10 2.10 -4.800
3 FCCoSp4   3.50   0.82 4.32 2.400
4 1Lz   0.60   -0.08 0.52 -1.400
5 3Lo   4.90   1.31 6.21 2.600
6 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.200
7 3F+3T   10.45 x -1.06 9.39 -2.000
8 3S+2A+2T+SEQ   9.79 x 0.72 10.51 1.400
9 3F F 5.83 x -2.65 3.18 -5.000
10 LSp4   2.70   0.99 3.69 3.400
11 ChSq1   3.00   1.00 4.00 2.000
12 CCoSp4   3.50   0.70 4.20 2.000
  TES   59.87   1.94 61.81  

4回転不発。決まらないのまでは織り込み済みかと思いますが、アンダーローテーションくらいにまではしたかったところかと思います。それより痛かったのがそのあとのルッツ。さらに最後のフリップの転倒。1本しか入れていないルッツはそれなりに不十分なことが多いですが、2本入れている得意なフリップの転倒は珍しかったです。

スピンステップオールレベル4 これが最終的に優勝につながったわけですがトータルスコアは180点台ということで、国際大会初優勝だけど何の満足感も無い、みたいな試合だったかもしれません。それでも勝ちは勝ち。シーズン序盤のチャレンジャーシリーズに出ていないこともあり、意外と持っていなかったB級大会ポイントを250ポイント得て、これで一旦ランキングも24位以内に上がります。ただ、世界ジュニア、世界選手権で逆転されるとは思われます。

これで国際大会は今季終了の模様。世界選手権の補欠3はありますが、さすがにオリンピックシーズンでもなければ3までは回ってこないでしょう。国内ローカルで何か出るかどうかはありますが、基本的には来季への準備へ進んでいくことになると思われます。フリーは2シーズン続きましたので来期は新しいプログラムになるでしょうか。住吉選手の雰囲気に合ったいいプログラムだったと思うので大きな試合でのノーミス演技が見たかった、という思いが残ります。

 

○吉田陽菜選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A< F 6.40   -3.20 3.20 -5.000
2 2A+3T   7.50   0.84 8.34 2.200
3 3Lo   4.90   0.98 5.88 2.000
4 FCCoSp4   3.50   0.58 4.08 1.600
5 2F   1.80   0.06 1.86 0.400
6 3Lz+3T   11.11 x 0.39 11.50 0.600
7 ChSq1   3.00   0.83 3.83 1.800
8 3Lz   6.49 x 0.98 7.47 1.800
9 3S+2A+2T+SEQ   9.79 x 0.72 10.51 1.600
10 CCoSp4   3.50   0.12 3.62 0.400
11 StSq3   3.30   0.77 4.07 2.400
12 SSp4   2.50   0.75 3.25 3.000
  TES   63.79   3.82 67.61  

トリプルアクセルはアンダーローテーションの転倒。インターハイ、国体と国内で2戦連続決めていたのですが国際大会で決められないです。今期はまだグランプリファイナルでわずかなGOEマイナスで降りたのが唯一の国際大会での成功と言えるもの。世界選手権で一発決められるでしょうか。

得意なフリーでしたが今回はフリップが2回転に。ショートで単独のループを選ぶ程度に本人比では苦手そうなフリップですのでこんなこともあるでしょうか。これ決めていれば優勝でした。

ルッツは2本後半に入れているわけですが、フリーでの成功率は高いです。一方で、ショートのルッツの成功率が極めて低い。成功したのは優勝した中国杯くらいです。

フリーはグランプリファイナルの142点台はじめ高得点があるのですが、ショートは64.65がシーズンベストで50点台も頻発しています。世界選手権のレベルだと、ショート崩れるとショート落ちもあり得る。ショートの出来がとにかく世界選手権の鍵になるわけですが、どうなるでしょうか? アクセルどうするか、もありますがそちらは入ればボーナス、というくらい。鍵はルッツからのコンビネーション、となりそうです。

音に頼ることのできないフリーの方が難しそうにも感じるのですが、不思議なものです。

 

○山下真瑚選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T   10.10   1.77 11.87 2.800
2 3Fe< F 3.18   -1.59 1.59 -5.000
3 3Lo   4.90   1.14 6.04 2.400
4 FCSp4   3.20   0.43 3.63 1.200
5 2A   3.30   0.66 3.96 2.000
6 ChSq1   3.00   1.00 4.00 2.200
7 1Lz   0.66 x 0.00 0.66 -0.200
8 3Lz<< F 2.31 x -1.05 1.26 -5.000
9 2A+2T+2T   6.49 x 0.44 6.93 1.400
10 SSp4   2.50   0.42 2.92 1.600
11 StSq3   3.30   0.66 3.96 1.800
12 CCoSp4   3.50   0.47 3.97 1.400
  TES   46.44   4.35 50.79  

国際大会出場は、コロナ特別のジャパンオープンNHK杯を除く、19年のNHK杯まで遡ります。海外での試合は19年のスケートアメリカ以来4年4か月ぶりです。

ショート完璧からのフリー、というのは全日本と同じ流れ。今回は冒頭3-3を豪快に決めたのですが、2つ目のフリップ以降の崩れ方が大きかったです。呼吸止まってしまったでしょうか。

後半ルッツが抜けて1回転になった後でもう1度余っている3回転ルッツを飛びなおそうとするなど、しっかり点を獲りに行くんだという意志は見せてくれましたが、結果は3位まででした。グランプリ組2人の出来からすると、普通程度の出来で優勝出来た流れでしたので非常に残念でした。

これで久しぶりに国際大会のスコアを獲りました。ショートは十分ですが、フリーは技術点50.79だと世界選手権のミニマムには届いてきません。来期のミニマムはまだ発表されていませんが、今年の4大陸は42.00でしたので、来期を見越しても確保できていると言えるでしょう。4大陸のミニマムは全日本の時点で取っていないと基本的に間に合わないので、これを今の時点で持っておくことで、来期の4大陸は全日本で結果を出せば得られる、という位置は確保しました。これのあるなしの差は大きいです。今回の遠征メンバーの中で、この試合の結果そのものが一番大事だったのはおそらく山下選手。最低限必要な結果は残したけれど、もう少し欲しかったなあ・・・、というところでした。

来期はグランプリシリーズは基本的に枠は無いはずです。NHK杯地元枠争奪戦の有力候補ではあるので、これを、松生理乃選手や河辺愛菜選手、あるいは引退せず続けてくれれば青木祐奈選手あたりと争うことになるかと思います。ただ、チャレンジャーシリーズにはおそらく派遣があるのではないかと思われます。ここで優勝してのグランプリ補欠枠狙いという渡辺倫果コースもお待ちしております。

 

○女子シングルシニア 上位12名 要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Rion SUMIYOSHI 189.21 92.68 62.56 -2.00 24.61 13.36
2 Hana YOSHIDA 187.25 91.88 62.83 0.27 22.19 12.08
3 Mako YAMASHITA 179.39 92.78 49.73 5.27 21.47 12.14
4 Niina PETROKINA 167.82 90.35 45.96 -1.57 21.33 12.75
5 Kristina LISOVSKAJA 165.39 76.68 55.42 0.52 22.65 10.12
6 Minja PELTONEN 153.72 76.98 51.41 -2.55 19.80 10.08
7 Elizabet GERVITS 142.49 70.45 46.36 -4.41 21.22 10.87
8 Selma VALITALO 141.83 72.79 36.96 2.47 20.56 9.05
9 Anastasija KONGA 141.76 67.01 49.93 -5.10 20.44 10.48
10 Oona OUNASVUORI 141.59 74.56 34.22 0.53 20.58 11.70
11 Linnea KILSAND 129.65 65.42 43.11 -4.96 18.95 9.13
12 Frida Turiddotter BERGE 129.06 64.53 43.10 -3.92 17.95 7.40
13 Olesja LEONOVA 126.97 64.11 40.24 -4.54 18.62 8.54

PCSは90点台で4人ですが、山下真瑚選手の評価が1番高かったです。グランプリ組として住吉選手はもう少し欲しい。世界選手権に出るのですから吉田選手はもっと欲しい、というPCSでした。

ジャンプの基礎点はトリプルアクセル入れ込んだ吉田陽菜選手が1位ですが、ショート3-3入らないなどありまして本人比では大したスコアではありません。住吉選手も4回転はダウングレードでしたのであまり基礎点の押上にはなっておらず、本人比で平凡なスコアでした。加点は山下選手が1位。決まったジャンプの出来は良かったです。

スピンで住吉選手が24点台を出しました。国際大会での自己最高スコアです。吉田選手は22点台前半。いつもと同じ程度ですが、スピンでもう2点くらいは欲しいところ。

ステップ系要素も住吉選手が13点台で1位。こちらは昨シーズン14点台を連発していたのと比べるとやや落ちます。吉田選手は12点台前半。ショートフリー共にレベル3だったこともあり伸びませんでした。

 

○男子シングル シニア

Pl Name Nation Total SP FS
1 Kao MIURA JPN 242.95 99.58 143.37
2 Nozomu YOSHIOKA JPN 219.98 78.02 141.96
3 Valtter VIRTANEN FIN 208.98 70.78 138.20
4 Kyrylo MARSAK UKR 207.52 73.15 134.37
5 Luc ECONOMIDES FRA 204.97 69.54 135.43
6 Makar SUNTSEV FIN 204.31 66.21 138.10
7 Landry le MAY FRA 199.01 57.16 141.85
8 Euken ALBERDI ESP 158.83 50.99 107.84
9 Brandon BAILEY GBR 149.61 50.18 99.43

男子は三浦佳生選手がしっかり優勝しました。250ポイントを得てランキングを上げることに成功しています。

2位には吉岡希選手。日本勢ワンツーです。スコア伸びませんでしたが2位は確保でこちらもランクは上がります。来期のグランプリ枠いくつもらえるか、少し微妙な位置にいますので、大事なランキングポイントだったかとも思います。

3位にはフィンランドのビルタネン選手が入りました。1987年生まれ36歳の大ベテラン。織田信成さんと同い年です。208.98はISU非公認ではありますが自己最高スコアです。驚きの表彰台。どこまで現役を続けてくれるでしょうか。

日本からはもう1人、三宅星南選手が派遣予定でしたが欠場。三宅選手にとっては貴重な国際大会になってきているので大変残念でした。

 

○三浦佳生選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4F< 8.80   -3.52 5.28 -3.800
2 4T   9.50   -2.85 6.65 -3.200
3 4S   9.70   -0.65 9.05 -0.800
4 FCSp3   2.80   0.56 3.36 1.600
5 3A+2A+SEQ   11.30   2.13 13.43 2.600
6 StSq3   3.30   0.66 3.96 1.800
7 2T   1.43 x 0.00 1.43 -0.400
8 3A F 8.80 x -4.00 4.80 -5.000
9 3F   5.83 x -0.53 5.30 -1.000
10 CSSp2   2.30   0.31 2.61 1.200
11 ChSq1   3.00   1.67 4.67 3.400
12 CCoSp3   3.00   0.90 3.90 2.800
  TES   69.76   -5.32 64.44  

4回転フリップ初投入。転倒はしませんでしたがアンダーローテーションとなりました。4回転は3種類4本構成。ループ入りで4本はこれまでも何度か試みていますが、これまでも4本入れてのノーミスはありません。今回も後半ばてた、というだけでなく前半からジャンプはすべて悪い出来でした。はっきり言えば全体的にボロボロ。

今回はショートでおそらく最初から予定で後半4-3を入れていたり、フリーは初の4回転フリップを入れたりと持ち札全部出してみた、というような構成だったかと思います。今大会は世界選手権へ向けての調整試合。結果が出れば最高ですが、出なかったとしても試したこと自体に大きな意味があったかと思います。少なくともショートの後半4-3は、崩れリカバリーでグランプリファイナルでも決めていましたし、今大会の成功含め、世界選手権で狙って入れ行ける計算も立ったかと思います。

フリーはやはり三浦選手のスタイルなら4回転は最低4本は入れたい。ループにするのかフリップにするのか。どちらにしても入れたいです。オリンピックシーズンにはどちらも合わせて4種類5本が目指す形かと思います。

 

○吉岡希選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4Tq F 9.50   -4.75 4.75 -5.000
2 3T+2T   5.50   0.28 5.78 0.600
3 3A   8.00   1.60 9.60 1.800
4 FSSp3   2.60   0.35 2.95 1.200
5 3Lo   4.90   -0.49 4.41 -1.000
6 ChSq1   3.00   0.50 3.50 1.000
7 3A+1Eu+3S   14.08 x 0.53 14.61 0.600
8 2F+2A+SEQ   5.61 x -0.33 5.28 -1.000
9 StSq3   3.30   0.77 4.07 2.000
10 3Lz   6.49 x 0.79 7.28 1.400
11 CCSp3   2.80   0.28 3.08 1.000
12 CCoSp4   3.50   0.58 4.08 1.600
  TES   69.28   0.11 69.39  

確率が高く決まっていた4回転トーループが今大会はショートフリー共にしっかり決められませんでした、フリーは特に転倒と抜け3回転。ここまで決まらない姿はなかなか見られません。後半にはフリップも2回転に。選曲の関係もあってか会場は盛り上がっていましたが、本人としては不満そうなフリーでした。

ちょっとモチベーションの持ち方が難しい試合なところはあったかもしれません。ポイント取って少しでもランクを上げて、来期のグランプリ枠の可能性を少しでも上げたい。というようなものはちょっと間接的すぎて明確なモチベーションにはなりづらいでしょうし。

現在シーズンベストランクは27位。世界ランキングは34位でここに225ポイント足して一旦25位まで上がるはずですが、この後世界ジュニアや世界選手権でもう少し下がってくると思います。どちらも24位に少し足りない位置でシーズンを終えることになりました。来期のグランプリシリーズ出場は微妙な情勢ですが、1枠は回って来るかな。2枠はたぶん無いでしょう。上位で戦うにはそろそろ4回転2種類目が欲しいでしょうか。今期から長光先生のところいますので、ジャンプ以外のところをしっかり、というテーマがあったかと思いますが、ジャンプももう1段階上まで行きたい。そこまでいけば、日本の6強を崩していくところまで行けるチャンスが出てくるかとも思います。

 

○男子シングルシニア 要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Kao MIURA 242.95 121.40 88.13 -0.34 21.06 13.70
2 Nozomu YOSHIOKA 219.98 111.01 79.50 -2.17 21.00 11.64
3 Valtter VIRTANEN 208.98 107.50 62.36 4.56 22.97 11.59
4 Kyrylo MARSAK 207.52 103.48 72.34 2.91 18.09 10.70
5 Luc ECONOMIDES 204.97 115.42 64.26 -6.76 20.75 13.30
6 Makar SUNTSEV 204.31 110.41 58.92 2.06 20.52 13.40
7 Landry le MAY 199.01 104.31 64.45 -1.55 21.55 11.25
8 Euken ALBERDI 158.83 90.28 48.84 -7.52 20.41 9.82
9 Brandon BAILEY 149.61 87.63 42.17 -6.98 19.92 8.87

PCSは三浦選手のみ120点台に乗せて平均8点超えです。2番目はフランスのエコノミド選手です。吉岡選手は111.01の3位。グランプリシリーズの114.15からは少し落としました。PCSも吉岡選手としては伸ばしていきたい部分です。

ジャンプの基礎点は三浦選手が88.13 4回転フリップを構成に入れましたが他の要素でミスが出て伸びていません。グランプリシリーズでは100点超えていました。世界選手権で上位に行くにはそれくらいは必要そうです。吉岡選手の79.50はシーズンワースト。国内戦でも初戦のげんさんサマーカップ以外は80点以上出ていました。ちょっと今回は精彩を欠いたと言わざるを得ないでしょうか。加点は三浦選手も吉岡選手もマイナスです。なかなかうまくいかない試合でした。

スピンも2人とも21点台。2人ともスピンは苦手ですからこれくらいで平常運転。むしろ三浦選手は国内外通じて今シーズン1番のスコアだったりします。

ステップ系要素は三浦選手が13.70 もっと出る選手ですが今回はあまり伸びず。吉岡選手の11.64も本人比で普通くらいです。長光先生、田中刑事先生、ついでにたぶん通りかかりそうな高橋大輔さんに伸ばしてもらいたい要素かとも思います。

 

 

今大会は5人出場して男女とも上から順に日本人選手が占めました。ただ、納得いく結果はだれ一人出せなかったように感じます。三浦選手と吉田選手は世界選手権へ向けての調整試合。ちょうど調子は落ちている時期だと思われます。それぞれいい試しは出来たでしょうか。住吉選手と吉岡選手はモチベーション的に難しい試合だったかと思います。山下選手はせっかく来たチャンス、もう1段階上のレベルの滑りをフリーでは見せてほしいところでした。

 

次週はB級シリーズツアー派遣、シングルは2戦目チャレンジカップがあります。男子は友野一希選手、壷井達也選手、女子では世界チャンピオンの坂本選手に、この先の去就が注目される青木祐奈選手が登場です。男子ではカザフスタンのシャイドロフ選手あたりが日本勢に対抗できる選手としているでしょうか。女子はベルギーのピンツァローネ選手、や昨季のヨーロッパチャンピオンのクラコワ選手、など意外な豪華メンバーです。ただ、日本勢としてはシングル勢よりもペアの派遣の方が重要で、三浦/木原組が復帰2戦目の調整試合でどこまでいくかと、そしてババリアンオープンでショートのミニマム獲り損ねた長岡/森口ペアは、この試合でミニマムスコアを取ること=世界選手権の出場権、という最重要試合となります。