エフゲニアメドベージェワ Evgenia MEDVEDEVA 19-20

1999年11月19日生まれ

シニア5シーズン目

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シーズン獲得賞金:$15,000

世界ランキング:5位

シーズンランキング:29位

シーズンベストスコア 225.76(6位) ロステレコム杯

ショートプログラムシーズンベスト 76.93 ロステレコム杯

フリーシーズンベスト 148.83 ロステレコム杯

ショートプログラム楽曲:Exogenesis Symphony part3

フリープログラム楽曲: Sayuri Memories of Geisha

スピンレベル4率 15/24=62.5%

ステップレベル4率 5/8=62.5%

スピンオールレベル4 0/4

スピンステップオールレベル4 0/4

ジャンプ回転不足率  6/40=15.0%

ジャンプ回転不足なし試合 1/4

スピンステップオールレベル4ジャンプの回転不足もなしの試合 0/4

 

 ●エフゲニアメドベージェワ選手の19-20シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP TSS SP TES SP PCS FS TSS FS TES FS PCS
CS Autumn Classic 2 217.43 75.14 39.54 35.60 142.29 70.05 72.24
IC Shanghai Trophy 1 191.78 72.16 35.88 36.28 119.62 49.49 70.13
GP Skate Canada 5 209.62 62.89 29.75 34.14 146.73 73.01 73.72
GP Rostelecom Cup 2 225.76 76.93 40.27 36.66 148.83 74.77 74.06

メドベージェワ選手の19-20シーズンの国際試合出場は4試合でした。

初戦はチャレンジャーシリーズオータムクラシック。ここは、紀平選手に敗れはしましたが、シーズン初戦としては特に悪くもなくという感じで210点台後半のスコアをマークしました

2戦目は、ジャパンオープンの裏で行われていた上海での招待試合。フリーはどうしちゃったんですか? というような出来でトータル190点台に終わっています。

その心配が当たってしまったのがグランプリシリーズ初戦のスケートカナダ。今度はショートから、コンビネーション決まらず、単独ルッツで転倒で60点台前半という厳しい出だし。フリーは前半グループながらしっかり滑って盛り返しましたが、総合順位は5位。209点出して5位になる時代が来たか、とある種衝撃でしたが、これによりファイナル進出争いからはほとんど脱落しました。

今シーズン一番しっかり滑ってのはロステレコム杯。ショートは76.93 これは今シーズン、トリプルアクセル無し構成としては、ファイナルのザギトワ選手に次いで全体2番目のスコアでした。フリーも148点台までもってきて、トータル225.76 昨シーズンの世界選手権のスコアを上回り、現行ルールでのメドベージェワ選手のパーソナルベストとなりました。

この225.76というのは、トゥルソワ選手のヨーロッパ選手権での225.34 あるいはシェルバコワ選手の中国杯226.04といったスコアと匹敵します。これくらいの点が出せれば、現エテリ三人衆とも、ミス待ちにはなるものの勝負にはなるのですが、ロシア選手権では靴の影響でフリー棄権。実質的にここでシーズン終了となりました。

 

試合数が少なく、チャンピオンシップ大会のポイントもないため、シーズンランキングは29位とその他選手みたいな位置づけになっていますが、過去3年分から見ている世界ランキングでは、まだ5位に残っています。シーズンベストスコアも6位ですし、まだまだ上位で戦う力はあります。世界選手権代表は国情的に大変ですが、ファイナルは普通にやれば進めるくらいの立ち位置なのですが、オリンピック以後は、安定感がなくなってきてるんですよね・・・。

 

●エフゲニアメドベージェワ選手の今シーズンの要素別得点

Grade Event Pl Total TES PCS Jump Spin Step
CS Autumn Classic 2 217.43 109.59 107.84 70.91 24.32 14.36
IC Shanghai Trophy 1 191.78 85.37 106.41 54.30 17.55 13.52
GP Skate Canada 5 209.62 102.76 107.86 65.90 21.57 15.29
GP Rostelecom Cup 2 225.76 115.04 110.72 74.74 24.63 15.67


構成も明らかに落としてる感がありましたし。ただ、そうはいっても、スピンでノーバリューになっていたりとか、なにやってるんですか? な感じな部分はあって、昔との安定感の大きな差を感じさせられる部分でもあったりします。メドベージェワ選手の要素別。上海トロフィーは、ちょっと忘れた方がいいんですかねこれ。

上海トロフィーだけなら、まあ顔見世試合だし、で済むのですが、スケートカナダでもスピンでレベル3あるいは3Vがならんで、21点台しか取れていないとか、ジャンプ委だけでなく全体的に安定感がないです。スピンは出せた時も24点台後半。宮原選手や紀平選手といった日本の上位層と同じくらいです。27点台出してくるトップ層とは少し距離があります

ステップ系要素もばらつきありますが、一番点が取れたロステレコム杯の15.67は、今シーズンの全選手中2番目のスコアでした。スケートカナダの15.29だと、コストルナヤ選手の一番いい時よりは低いですが、シェルバコワ選手やトゥルソワ選手よりは上に行くことができます。

PCSはロステレコム杯で110.72がありました。これは全選手中唯一110点を超えたナンバーワンスコアです。他の試合で出した107点後半あたりまでだと、ザギトワ、コストルナヤ、紀平、三選手はそれくらいまでは出してくる、というスコアではありますが、それでもそういった限られた選手しか出せない領域です。

 

●エフゲニアメドベージェワ選手のスケート偏差値

Grade Event Pl Total Jump Base Jump GOE Spin Step PCS
CS Autumn Classic 2 66.13 59.35 66.57 62.79 64.98 68.80
IC Shanghai Trophy 1 59.15 51.82 55.74 40.35 61.18 67.86
GP Skate Canada 5 64.00 59.12 58.33 53.68 69.19 68.82
GP Rostelecom Cup 2 68.39 59.87 72.04 63.82 70.90 70.69

各要素のスケート偏差値はこんな感じです

いい時はステップ、PCSが偏差値70台に乗ります。ジャンプの基礎点は偏差値50台で平凡な領域になってしまっているのですが、いい滑りをするとGOEは70台の偏差値になることもある、といった形です。ミスのないいい滑りをしたときはトップ層に近いところで戦える、という姿が見えます。

 

メドベージェワスケート偏差値

 レーダーチャートで表すとこんな形に

ジャンプで高難度要素がないので、やはり多少へこむ形になります。

スピンが意外と伸びてないですね。いい時でも60台前半の偏差値にとどまっています。

 

●シーズン最高のショートプログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic 1 3F+3T   9.50   1.70 11.20 3.286
Autumn Classic 2 2A   3.30   0.86 4.16 2.571
Autumn Classic 3 FSSp3   2.60   0.73 3.33 2.714
Autumn Classic 4 3Lz! ! 6.49 x 1.06 7.55 1.857
Autumn Classic 5 CSp4   2.60   0.78 3.38 3.000
Autumn Classic 6 CCoSp4   3.50   1.12 4.62 3.143
Autumn Classic 7 StSq4   3.90   1.40 5.30 3.429
Autumn Classic   TES   31.89   7.65 39.54  

ショートプログラムの最高基礎点は31.89でした。スピンでレベル3があるので、これがレベル4なら32.29となります。スピンが、レベル4でも基礎点2.6しかないシットスピンが選ばれていて、基礎点から低い構成になっています。多くの女子選手が選ぶレイバックスピンも基礎点低めですがそれでもレベル4で2.7あります。その辺の選び方は独特。

1.1倍にルッツを入れていて、単独ジャンプとしてはこれを入れるのが高めな基礎点になるのですが、ここにコンビネーションを入れれば、基礎点の向上ができる可能性はあります。

基礎点が31点台だと、トリプルアクセル無しの最高構成の33.78とも2点近く差があるのですが、その辺はPCS勝負でまだなんとかなる、というのがメドベージェワ選手の今の立ち位置でしょうか。

 

●シーズン最高のフリープログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Rostelecom Cup 1 3Lze e 4.72   -0.67 4.05 -1.444
Rostelecom Cup 2 3S+3Lo   9.20   1.54 10.74 3.111
Rostelecom Cup 3 3F   5.30   1.59 6.89 3.000
Rostelecom Cup 4 FCSp3   2.80   0.60 3.40 2.222
Rostelecom Cup 5 ChSq1   3.00   1.64 4.64 3.111
Rostelecom Cup 6 2A   3.30   0.85 4.15 2.556
Rostelecom Cup 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.20 10.88 2.778
Rostelecom Cup 8 3F+2T   7.26 x 1.44 8.70 2.667
Rostelecom Cup 9 3Lo   5.39 x 1.33 6.72 2.556
Rostelecom Cup 10 FCCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
Rostelecom Cup 11 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.889
Rostelecom Cup 12 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.222
Rostelecom Cup   TES   61.55   13.22 74.77  

フリーの基礎点最高はロステレコム杯の61.55でした。ルッツがエッジエラーで減点されているので、これが基礎点満額入っていた場合は+1.18貼ります。また、スピンも一つレベル3でしたが、これがレベル4ならさらに+0.40あります。なので、この構成での基礎点満額は63.13にまでなってきます。そこまで行けば、テネル選手の基礎点程度になり、トリプルアクセル無し組としてのかなり上位に来るのですが、四試合しても基礎点満額もらえる滑りができなかった、という現実もあります。

基礎点満額もらってノーミスなら技術点80点くらいまで出せる、という計算なのですが、実際にもらえた点数は74.77まで。全盛期と比べて5点くらいは差があるなあ、という状態です。

ジャンプ構成ではフリップとループが2回です。セカンドループをサルコウとつなげて入れるというちょっと珍しい要素があります。セカンドループ、セカンドトーループで3回転を二つ入れた場合、ダブルアクセルをもう一つ入れれば、3連続で最後を3Sにする、というのも可能なのですが、そのためにはセカンドループの一つ目のジャンプをサルコウから変えなくてはならなくなります。コンビネーションを3F-3Tと2A-1Eu-3Sと、もう一つセカンドでトリプルループになるサルコウではないなにか。なんだかパズルみたいなことになってますが、セカンドループの一つ目を自在に入れ替えられれば(ループループとか、ダブルアクセルからとか)もう少し基礎点は上げられる、ということです。

 

●平均GOE+3.200以上

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Rostelecom Cup SP 7 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
Skate Canada FS 11 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
Rostelecom Cup FS 11 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.889
Skate Canada SP 7 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.778
Shanghai Trophy SP 7 StSq3   3.30   1.21 4.51 3.600
Shanghai Trophy FS 11 StSq3   3.30   1.21 4.51 3.600
Rostelecom Cup SP 1 3F+3T   9.50   1.89 11.39 3.556
Skate Canada FS 2 3S+3Lo   9.20   1.68 10.88 3.444
Skate Canada FS 12 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.444
Rostelecom Cup SP 4 3Lo   5.39 x 1.68 7.07 3.444
Rostelecom Cup SP 6 CCoSp4   3.50   1.25 4.75 3.444
Autumn Classic SP 7 StSq4   3.90   1.40 5.30 3.429
Autumn Classic FS 5 ChSq1   3.00   1.70 4.70 3.429
Shanghai Trophy SP 1 3F+3T   9.50   1.77 11.27 3.400
Shanghai Trophy SP 6 CCoSp4   3.50   1.17 4.67 3.400
Autumn Classic SP 1 3F+3T   9.50   1.70 11.20 3.286
Autumn Classic FS 11 StSq3   3.30   1.06 4.36 3.286
Autumn Classic FS 12 CCoSp4   3.50   1.12 4.62 3.286
Rostelecom Cup FS 12 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.222
Shanghai Trophy FS 5 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.200


平均GOEが4.000以上に達したのはステップシークエンスで2回でした。平均GOE3.5以上の要素というのも意外に少ないです。ステップシークエンス以外では3F-3Tというコンビネーションジャンプが高評価で入っています。 

平均GOE3.2以上まで拡げると、それなりの数の要素が入ってきます。スピンは基礎点の高いCCoSpチェンジフットコンビネーションスピンで評価が高め。ジャンプもコンビネーションで評価が高めと、基礎点低いものではなく高めなところで加点を得ているという光景があります。

 

ルッツジャンプ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic SP 4 3Lz! ! 6.49 x 1.06 7.55 1.857
Autumn Classic FS 1 3Lz!+2T+2T ! 8.50   1.06 9.56 1.857
Autumn Classic FS 3 3Lze< 3.54   -0.42 3.12 -1.143
Shanghai Trophy SP 4 3Lz!< 5.19 x -0.63 4.56 -1.000
Shanghai Trophy FS 1 3Lze e 4.72   -0.31 4.41 -1.000
Skate Canada SP 4 3Lz!< 5.19 x -2.36 2.83 -5.000
Skate Canada FS 1 3Lze e 4.72   -0.27 4.45 -0.556
Rostelecom Cup FS 1 3Lze e 4.72   -0.67 4.05 -1.444

メドベージェワ選手には大きな弱点が一つあって、それがこのルッツジャンプです。

今シーズンは8回飛んですべてで!マークあるいはeマークがついています。つまり、正しいエッジで飛べたとされるルッツジャンプが一つもないことになります。それに伴ってGOEでプラスがついたのもチャレンジャーシリーズでの2回だけになっています。

ルッツが弱点なのは以前からのことではあります。オリンピックで最終的に僅差でザギトワ選手に敗れました。あの時も、ショートフリーでとんだルッツは合わせて1本だけでしたが、これが3本そろっていれば理論上はメドベージェワ選手が勝っていた計算です。なので、ルッツがしっかり飛べない、というのがメドベージェワ選手にとってある種人生を左右した事柄なのですが、その弱点は今も変わっていない、という状態です。今シーズン一番点が出たロステレコム杯でも、結局ルッツは一本だけで、そのルッツはエッジエラーで減点されたものでした。

ルッツがしっかり飛べない、というのは実は日本だと本田家でも見られる弱点なのですが、逆にみると、その弱点を抱えていても、他を極めていくとこのレベルの選手にまで行きつけるということでもあるんですね。今の高難度ジャンプ全盛、四回転四回転ダメでもトリプルアクセル、みたいな時代に、三回転の最高難度としてのルッツがしっかり入ってこない、という中で220点台半ばまで出してトップ層と張り合えそうな位置にいる、というのはそれはそれですごいような気もします。

 

●フリップジャンプ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic SP 1 3F+3T   9.50   1.70 11.20 3.286
Autumn Classic FS 8 3F   5.83 x 1.48 7.31 2.857
Shanghai Trophy SP 1 3F+3T   9.50   1.77 11.27 3.400
Shanghai Trophy FS 3 3F   5.30   0.88 6.18 1.800
Shanghai Trophy FS 8 3F<+2T+2T< 7.24 x -0.71 6.53 -1.600
Skate Canada SP 1 3F+3T< 8.66   0.00 8.66 -0.111
Skate Canada FS 3 3F   5.30   1.59 6.89 3.000
Skate Canada FS 8 3F+2T   7.26 x 1.21 8.47 2.333
Rostelecom Cup SP 1 3F+3T   9.50   1.89 11.39 3.556
Rostelecom Cup FS 3 3F   5.30   1.59 6.89 3.000
Rostelecom Cup FS 8 3F+2T   7.26 x 1.44 8.70 2.667

一方で、フリップジャンプは確率高く跳べていて評価も高めです。コンビネーションの3-3で平均GOE3.0以上の評価を4回中3回受けています。これがショートで高得点を出す支えになっています。フリーで3F-2Tになっているものを見かけますが、これは構成の関係で3F-3Tにすると3Tがノーカウントになってしまうための最初から予定の3F-2Tです。メドベージェワ選手のフリー基本構成では、2回飛ぶジャンプはフリップとループなので、セカンド3Tは3Fとのコンビネーションでは使えなくなっています。

3F-3Tのコンビネーションで得た、平均GOE3.556というのは今シーズンの全選手の3F-3Tの中で2番目の高評価です。紀平選手も3F-3Tは基本構成としてショートフリーに入っていますが、一番いい評価の時で平均GOE+3.222 メドベージェワ選手とはそれを3回上回っている、というくらいの高評価なわけです。

なお、メドベージェワ選手のさらに上を行っているのは、コストルナヤ選手だったりします。

 

●セカンドループ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic FS 2 3S+3Lo< 8.22   -0.09 8.13 -0.143
Skate Canada FS 2 3S+3Lo   9.20   1.68 10.88 3.444
Rostelecom Cup FS 2 3S+3Lo   9.20   1.54 10.74 3.111

3S-3Loというコンビネーションは他に見ない稀有なものですが、セカンド3Loなら、使い手は他にまだ何人かいます。そういったセカンド3Lo組の中で見ても、平均GOEで+3.0を超えてくるというのはかなり評価の高い位置にいます。スケートカナダで得た平均GOE+3.444というのは、セカンド3Loの中で今シーズン3位の高評価です。これより上はルッツループのザギトワ選手とトゥルソワ選手、それぞれ1例づつのみになります。

 

●平均GOEが3.0以上のジャンプ要素

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic SP 1 3F+3T   9.50   1.70 11.20 3.286
Shanghai Trophy SP 1 3F+3T   9.50   1.77 11.27 3.400
Skate Canada FS 2 3S+3Lo   9.20   1.68 10.88 3.444
Skate Canada FS 3 3F   5.30   1.59 6.89 3.000
Rostelecom Cup SP 1 3F+3T   9.50   1.89 11.39 3.556
Rostelecom Cup SP 4 3Lo   5.39 x 1.68 7.07 3.444
Rostelecom Cup FS 2 3S+3Lo   9.20   1.54 10.74 3.111
Rostelecom Cup FS 3 3F   5.30   1.59 6.89 3.000

メドベージェワ選手は基礎点はあまり高くありませんが、加点が稼げる選手です。

ジャンプ要素でもしっかり平均GOEが+3.0以上のものを毎試合出しています。特によかったのがロステレコム杯でした。ショートプログラムの単独3Loでスコアとして7点を超えるところまで持ってこられる。これぐらい出せると、ルッツは不安があるからループにしてしまおう、という選択がしやすくなる。ルッツでも7.07を出すには、後半で基礎点が6.49になっているにしてもGOEで+1くらいは出さないといけないので、エッジ不安を考えるとループを選択するのが妥当、となるでしょうか。

 

コンビネーションジャンプで評価が高いというのがすごいですね。一方で、ダブルアクセルがここに入ってこない。ダブルアクセルは一番いい時でもコンビネーションでしたが平均GOE+2.889でした。12回飛んで2回はGOEマイナスとなっていて、ちょっと苦手なのかな、と感じられます。

 

●ステップシークエンスとコレオシークエンス

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic SP 7 StSq4   3.90   1.40 5.30 3.429
Autumn Classic FS 5 ChSq1   3.00   1.70 4.70 3.429
Autumn Classic FS 11 StSq3   3.30   1.06 4.36 3.286
Shanghai Trophy SP 7 StSq3   3.30   1.21 4.51 3.600
Shanghai Trophy FS 5 ChSq1   3.00   1.50 4.50 3.200
Shanghai Trophy FS 11 StSq3   3.30   1.21 4.51 3.600
Skate Canada SP 7 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.778
Skate Canada FS 5 ChSq1   3.00   1.43 4.43 2.889
Skate Canada FS 11 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
Rostelecom Cup SP 7 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.333
Rostelecom Cup FS 5 ChSq1   3.00   1.64 4.64 3.111
Rostelecom Cup FS 11 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.889

ステップとコレオはさすがという感じで、一番悪くても平均GOEが2.889です。ただ、意外とステップはレベル3なことも多いですかね。グランプリシリーズ2試合ではしっかりレベル4だったので、特に問題はないのかもしれませんけど。

 

一覧としては載せませんが、スピンもレベル4率が案外高くなく62.5% グランプリシリーズでもロステレコム杯で1つ取りこぼしましたし、スケートカナダではレベル4は3つだけでした。結局、スピンがオールレベル4だった試合が今シーズンはなし

こういうところにも、以前の盤石さと比べると、だいぶ不安定だなあ、という感じがあります。まあ、昨シーズンも同じような感じだったのが、世界選手権ではスピンステップオールレベル4だったりしましたので、大事なところではしっかり合わせてくるのかもしれませんが、今のメドベージェワ選手の立場は、大事な試合の前に、大事な試合の出場権を必死に取りにいかないといけない立場なので、そういったシーズン中の大事な一つの試合にだけ合わせる、というやり方では通用しないあたりが苦しいところでもあります。

 

今シーズンのショートプログラムはエクソジェネシス交響曲。この曲はかつてジェレミーアボットさんが、オリンピックシーズンのフリーに選んで、オリンピックシーズンなのにうまくいかず、四回転決まらず、オリンピックでもショートからキスアンドクライで頭を抱えてしまう演技でうまくいかず、これが競技生活最後かもという世界選手権のフリーで、ようやく四回転を決めて、最初から最後までいい演技をして、会場総立ちさいたまスーパーアリーナ、というときに使われた曲でした(実際にはもう一シーズン滑ったけれど)。

男子シングルでダブルアクセルが二本入っていたりと、難度はだいぶ落としたものではあったけれど、そんなことはどうでもいい、点数なんかどうでもいいんだ、と見ていて思わせてくれたエクソジェネシス交響曲

この曲、実況がうるさいと台無しなので、静かにしてもらえるとありがたいのですが、それはちょっと横に置いて、演技そのものについて見ると、個人的にはもう少しスローな振りの方が好きかな、と思いました。その辺は、アボット選手の演技が頭に染み付いたところがあるせいな気もしますけれど。もう少し、試合数見れば、メドベージェワ選手のエクソジェネシス交響曲として馴染めたのだろうと思うのですが、シーズン前半で終わってしまいましたのでね・・。

 

フリーはSayuri

日本人がロミオとジュリエットだのオペラ座の怪人だのやるし、アメリカ人が韃靼人の踊りやったりするわけですから、ロシア人がSayuriでもいいんだけど、ホントにやるの? と思ったシーズン前。

でも、シーズンに入って、実際に見てみると、なんだか、ぴったり合うんだな、と感じました。なんなんでしょう? 日本が好きだから? あんまりそういうことでもないと思うのですが、ああ、サユリ、と感じさせられる。

そんなに幸多くないけど強さがある、みたいなのを演じるのがぴったり合うんでしょうか。個人的には、演技終わった瞬間に喜んでいるのはダメです、楽曲がSayuriなので、とだけはちょっといいたいけど、あとは素晴らしいと思いました。エキシビジョンで、ジャンプ少な目で、袖に振りを少し加えたような衣装でまたやってくれませんかね。

 

メドベージェワ選手も今シーズン二十歳になりました。ロシア選手で現役を継続したまま二十歳にたどり着くのはもはや少数派。三つ上にトゥクタミシェワ選手がいますが、近年ではそれくらいです。一度頂点を極め、連覇を果たし、勝ち続けて臨んだオリンピックシーズンにケガをし、回復したけれど後輩に勝ち切れずオリンピックは取れなかった。その上、後から後から後輩たちは出てきて、自分はそれと真っ向勝負するに足るジャンプを持っていない。

そういった中で現役を続けていくのは、よほどの覚悟がいることだろうと思います。見ている方は、続けて、頑張って、と簡単に言えますが、競技する方はそんなに簡単じゃない。

 

でも、言ってしまいます。

来シーズンも、その次も、また、見ていたいです。