世界フィギュア21 振り返り9

国別対抗戦やってますが、それを横に置いて世界選手権の振り返りを続けます

女子シングルの要素別編

ようやくここまでたどり着きました

 

 ●四回転を含む要素

Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Alexandra TRUSOVA FSR 3 4Lz+3T   15.70   3.78 19.48 3.333
Alexandra TRUSOVA FSR 1 4F! ! 11.00   1.57 12.57 1.556
Alexandra TRUSOVA FSR 8 4T<<+1Eu+3Sq << 9.90 x -1.97 7.93 -4.444
Alexandra TRUSOVA FSR 2 4S   9.70   -4.71 4.99 -4.778
Anna SHCHERBAKOVA FSR 1 4Fq q 11.00   -5.50 5.50 -5.000
Alexandra TRUSOVA FSR 7 4Lz< < 10.12 x -4.60 5.52 -5.000

表中のGOEはその要素に対しての実数字としての加点減点分を表し、表の一番右端の列はジャッジ9人の-5から+5までの11段階評価の平均を指します

 

四回転要素はロシアの二人。シェルバコワ選手はqマーク付きで転倒。ということで成功した四回転はトゥルソワ選手のみでした。

トゥルソワ選手は4種類5本にチャレンジしましたが、トーループはダウングレード、ルッツは一つ回転不足で転倒、サルコウも転倒扱いで、加点がついたのは二つ。ただフリップは!付ですので、完全に成功と言えるのは一本だけでした、ただし、この一本だけだった4Lz+3Tがすごくて平均GOE3.333 この一要素だけで19.48というスコアを獲得しました。

トゥルソワ選手は成功しませんでしたが1.1倍のところで四回転を二本組み入れていました。しかも一つはルッツ。とんでもない構成でした。

結果的に、きれいに決まった四回転は一本だけだったわけで、そういう意味ではあまりいい演技ではなかったです。一度、完全ノーミスのトゥルソワ選手というのを見てみたい気もしますが、そんなの見てしまったらほとんどの選手が意欲を失ってしまうような気もします

 

 ●トリプルアクセルを含む要素

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP Elizaveta TUKTAMYSHEVA FSR 1 3A   8.00   1.71 9.71 2.222
FS Elizaveta TUKTAMYSHEVA FSR 2 3A   8.00   1.94 9.94 2.222
SP Rika KIHIRA JPN 1 3Aq q 8.00   0.11 8.11 0.111
FS Elizaveta TUKTAMYSHEVA FSR 1 3A+2T   9.30   -0.69 8.61 -0.889
FS Rika KIHIRA JPN 2 3A<< << 3.30   -1.65 1.65 -5.000

トリプルアクセルを含む要素を実施したのは、四回転と被らない二人でした。ここまでが今大会の高難度ジャンプ実施者です。今回も四回転とトリプルアクセルの両立選手は現れずでした。

 

トリプルアクセルはトゥクタミシェワ選手がショートフリー合わせて三回。単独ジャンプは平均GOE2.222でショートもフリーも降りており成功ジャンプです。コンビネーションはわずかにマイナスが付きましたが、ダブルアクセル比で見れば十分におつりが来ます。

紀平選手はショートでq扱いでほぼプラスマイナス0 フリーはダウングレードの転倒、ということで、トリプルアクセルであまり稼げませんでした。

 

 ●三連続ジャンプで平均GOEがプラス

Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Kaori SAKAMOTO JPN 7 2A+3T+2T   9.68 x 1.38 11.06 3.333
Anna SHCHERBAKOVA FSR 8 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.44 12.55 2.667
Eva-Lotta KIIBUS EST 2 3F+1Eu+3S   10.10   0.98 11.08 1.778
Loena HENDRICKX BEL 7 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.91 10.04 1.778
Ekaterina RYABOVA AZE 7 2A+3T+2T   9.68 x 0.42 10.10 1.000
Josefin TALJEGARD SWE 2 3T+2T+2Lo   7.20   0.36 7.56 0.778
Yelim KIM KOR 9 2A+2T+2Lo   6.93 x 0.24 7.17 0.778
Jenni SAARINEN FIN 3 3T+2T+1Lo   6.00   0.24 6.24 0.667
Olga MIKUTINA AUT 3 1A+1Eu+3S   5.90   0.12 6.02 0.333
Alexandra FEIGIN BUL 6 3Lo+2T+2Lo   8.69 x 0.07 8.76 0.111

三連続ジャンプはフリーで誰もが組み入れることのできる要素です。

この要素では平均GOEトップは坂本花織選手でした。3-1-3と比べると2A-3-2の三連続はやや難易度・基礎点ともに落ちますが、3-2-2よりは上になります。それを1.1倍時に決めていますので、ミドルリスクミドルリターンを割と高い側で得た、と言えるでしょうか。

三連続で加点を得るのはそれほど簡単ではなく、全24選手中10人しかいません。

 

●セカンド3Lo

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP Anna SHCHERBAKOVA FSR 4 3Lz+3Lo   11.88 x 2.19 14.07 3.667
FS Anna SHCHERBAKOVA FSR 9 3Lz+3Lo   11.88 x 1.77 13.65 3.000

セカンドジャンプにトリプルループを入れるコンビネーションを飛んだのはシェルバコワ選手のみでした。ショートフリー共に1.1倍のところに入れて平均GOEは3以上をたたき出しています。女子でルッツループを入れるのは、特にショートではハイリスクローリターンである、というのが計算上言えるのですが、問題なく跳べる人にとってはリスクは低い、という風にも言えるのでしょうか

 

●セカンド3Tの3回転以上2連続コンビネーションで平均GOEが+1.000以上

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP Yelim KIM KOR 1 3Lz+3T   10.10   2.02 12.12 3.444
FS Alexandra TRUSOVA FSR 3 4Lz+3T   15.70   3.78 19.48 3.333
FS Anna SHCHERBAKOVA FSR 2 3F+3T   9.50   1.74 11.24 3.333
FS Olga MIKUTINA AUT 1 3Lz+3T   10.10   1.77 11.87 3.000
SP Jenni SAARINEN FIN 1 3T+3T   8.40   1.20 9.60 2.889
SP Madeline SCHIZAS CAN 1 3Lz+3T   10.10   1.69 11.79 2.778
FS Alexandra TRUSOVA FSR 9 3Lz+3T   11.11 x 1.52 12.63 2.444
SP Karen CHEN USA 1 3Lz+3T   10.10   1.52 11.62 2.444
SP Loena HENDRICKX BEL 1 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.444
FS Loena HENDRICKX BEL 1 3Lz+3T   10.10   1.26 11.36 2.222
SP Elizaveta TUKTAMYSHEVA FSR 2 3Lz+3T   10.10   1.01 11.11 1.778
SP Olga MIKUTINA AUT 1 3F+3T   9.50   0.91 10.41 1.778
FS Hongyi CHEN CHN 2 3T+3T   8.40   0.72 9.12 1.667
FS Ekaterina RYABOVA AZE 1 3Lz+3T   10.10   0.84 10.94 1.444
SP Ekaterina RYABOVA AZE 1 3Lz+3T   10.10   0.76 10.86 1.222
SP Alexandra FEIGIN BUL 4 3T+3T   9.24 x 0.48 9.72 1.111

続いて普通のコンビネーションのセカンド三回転

最高評価はショート5位スタートのキムイェリム選手でした。冒頭コンビネーションで高得点を出したのがパーソナルベストの5位スタートにつながりました

驚きは2位評価がトゥルソワ選手の4Lz+3Tなところ。考えられない高評価です。

他には、オーストリアのミクティナ選手、ベルギーのヘンドリックス選手、アゼルバイジャンのリャボワ選手といった今大会躍進した選手が入ってきています。

一方で、日本勢の姿がここにありません。平均GOE+1.000以上というのはそれほど厳しい閾値でもないのですが、ショートフリー通じて日本勢はだれも入ってきませんでした。

アメリカのテネル選手もいません。3回転-3回転の出来、というのは、かなりトータルスコアに影響するようです。得点として大きいというだけでなく、心理的にも影響する部分があるんでしょうか

 

●CCoSpでレベル4の平均GOE3.000以上

  Name Nation   Elements  BaseValue GOE Scores  
SP Anna SHCHERBAKOVA FSR 3 CCoSp4 3.50 1.65 5.15 4.667
SP Bradie TENNELL USA 7 CCoSp4 3.50 1.40 4.90 4.000
FS Anna SHCHERBAKOVA FSR 12 CCoSp4 3.50 1.35 4.85 3.889
FS Bradie TENNELL USA 12 CCoSp4 3.50 1.35 4.85 3.889
SP Loena HENDRICKX BEL 3 CCoSp4 3.50 1.25 4.75 3.667
SP Karen CHEN USA 3 CCoSp4 3.50 1.25 4.75 3.556
FS Loena HENDRICKX BEL 5 CCoSp4 3.50 1.25 4.75 3.556
FS Karen CHEN USA 9 CCoSp4 3.50 1.25 4.75 3.556
SP Satoko MIYAHARA JPN 3 CCoSp4 3.50 1.10 4.60 3.222
SP Rika KIHIRA JPN 7 CCoSp4 3.50 1.05 4.55 3.111
SP Olga MIKUTINA AUT 7 CCoSp4 3.50 1.10 4.60 3.111
SP Alexandra TRUSOVA FSR 5 CCoSp4 3.50 1.05 4.55 3.111
FS Elizaveta TUKTAMYSHEVA FSR 12 CCoSp4 3.50 1.10 4.60 3.111
FS Haein LEE KOR 12 CCoSp4 3.50 1.10 4.60 3.111
SP Haein LEE KOR 6 CCoSp4 3.50 1.05 4.55 3.000

スピンへ移ります。まず、実施者の多く基礎点の高いCCoSp チェンジフットコンビネーションスピンから

最高評価はシェルバコワ選手のショートで平均GOEが+4.667でした。ジャッジ9人中6人が満点をつけています。

テネル選手が二位。三位はフリーのシェルバコワ選手とテネル背sン種、ということでこの二人が上位を独占です。

宮原選手紀平選手もショートでは割と高い位置につけています。

 

●LSpでレベル4の平均GOE+3.000以上

  Name Nation   Elements  BaseValue GOE Scores  
SP Anna SHCHERBAKOVA FSR 7 LSp4 2.70 1.27 3.97 4.667
SP Satoko MIYAHARA JPN 7 LSp4 2.70 1.20 3.90 4.444
SP Loena HENDRICKX BEL 7 LSp4 2.70 1.16 3.86 4.222
FS Loena HENDRICKX BEL 10 LSp4 2.70 1.16 3.86 4.222
SP Karen CHEN USA 7 LSp4 2.70 1.04 3.74 3.889
SP Alexandra TRUSOVA FSR 7 LSp4 2.70 1.04 3.74 3.778
SP Bradie TENNELL USA 3 LSp4 2.70 1.00 3.70 3.667
FS Karen CHEN USA 12 LSp4 2.70 1.00 3.70 3.667
SP Rika KIHIRA JPN 5 LSp4 2.70 0.93 3.63 3.444
SP Kaori SAKAMOTO JPN 7 LSp4 2.70 0.89 3.59 3.333
SP Hongyi CHEN CHN 7 LSp4 2.70 0.85 3.55 3.111
FS Satoko MIYAHARA JPN 12 LSp4 2.70 0.81 3.51 3.111
SP Emmy MA TPE 6 LSp4 2.70 0.81 3.51 3.000

レイバックスピンもトップはシェルバコワ選手でした。平均GOE+4.667でやはり6人が満点評価です。

宮原選手のショートが二位。4人が満点をつけています。

ヘンドリックス選手が3位を二つ。ヘンドリックス選手もスピンで高評価が多いです。

レイバックスピンは実施者も多く、高GOEが割と出やすいスピンなのですが、今大会は+3以上で並べると、CCoSpと同じくらいの人数にしかなりませんでした。全体のレベルが上がってきていて、スピンも高基礎点のもので高いGOEが出るようになってきていることと、フリーでは基礎点の低いレイバックスピンを外す選手が増えていること、というのがこの結果を生んでいるようです。

 

●上記の二種類以外のスピン要素でレベル4の平均GOE3.000以上

  Name Nation   Elements  BaseValue GOE Scores  
FS Anna SHCHERBAKOVA FSR 6 FCCoSp4 3.50 1.40 4.90 3.889
SP Anna SHCHERBAKOVA FSR 5 FCSp4 3.20 1.10 4.30 3.444
SP Satoko MIYAHARA JPN 6 FCSp4 3.20 1.05 4.25 3.222
SP Bradie TENNELL USA 6 FSSp4 3.00 0.99 3.99 3.222
SP Yelim KIM KOR 7 SSp4 2.50 0.79 3.29 3.222
SP Elizaveta TUKTAMYSHEVA FSR 3 FCSp4 3.20 1.01 4.21 3.111
SP Karen CHEN USA 5 FCSp4 3.20 1.01 4.21 3.111
SP Alexandra TRUSOVA FSR 3 FCSp4 3.20 0.96 4.16 3.111
SP Emmy MA TPE 7 FCSp4 3.20 0.96 4.16 3.000

先に上げた二種類のスピン以外で抜き出してみても、シェルバコワ選手が最高評価となって出てきます。それに続くのが宮原選手。宮原選手はショートはまだジャンプ以外の要素は高いレベルの評価を受けていました。

台湾のエミーマ選手はショート29位でフリーに進めなかったのですが、スピンはFCSpと先に上げたレイバックスピンの二つでGOE+3の高評価を受けています。

 

●ステップレベル4の平均GOE2.000以上

  Name Nation   Elements  BaseValue GOE Scores  
SP Rika KIHIRA JPN 6 StSq4 3.90 1.62 5.52 4.111
SP Haein LEE KOR 7 StSq4 3.90 1.50 5.40 3.889
SP Loena HENDRICKX BEL 6 StSq4 3.90 1.39 5.29 3.556
SP Satoko MIYAHARA JPN 5 StSq4 3.90 1.34 5.24 3.444
SP Josefin TALJEGARD SWE 6 StSq4 3.90 1.28 5.18 3.333
SP Karen CHEN USA 6 StSq4 3.90 1.23 5.13 3.222
SP Jenni SAARINEN FIN 5 StSq4 3.90 1.17 5.07 3.111
SP Bradie TENNELL USA 5 StSq4 3.90 1.17 5.07 3.000
FS Satoko MIYAHARA JPN 11 StSq4 3.90 1.17 5.07 3.000
FS Loena HENDRICKX BEL 6 StSq4 3.90 1.11 5.01 2.778
FS Bradie TENNELL USA 10 StSq4 3.90 1.11 5.01 2.778
FS Haein LEE KOR 6 StSq4 3.90 1.00 4.90 2.556
SP Olga MIKUTINA AUT 6 StSq4 3.90 0.95 4.85 2.444
FS Olga MIKUTINA AUT 5 StSq4 3.90 0.95 4.85 2.444
FS Josefin TALJEGARD SWE 11 StSq4 3.90 0.95 4.85 2.444
SP Natasha McKAY GBR 5 StSq4 3.90 0.78 4.68 2.000

ステップの最高評価は紀平選手のショートで平均GOE+4.111でした。満点をつけたジャッジも二人いました。

二位に韓国のイ・ヘイン選手。三位はスピンに続いてステップも高評価を得てヘンドリックス選手がいます。四位は宮原選手のショート。

ステップではロシアの選手が一人もレベル4かつ平均GOE2.000以上というところには入ってきていません。ステップとPCSは相関係数が高いのですが、ロシア勢はステップ系要素であまり点が出ないけれどPCSは高い、という形で他の選手たちと違う傾向があります。

フィギュアスケートの見どころの一つとしてステップを上げるファン、というより最大の見どころとしてステップを上げるファン、というのがそれなりの数いるように思いますので、そういった視点から見ると、ロシア勢が上位を独占するのが納得感がない、というところに通じていくのかと思います

 

●コレオシークエンスの平均GOE2.000以上

Name Nation   Elements  BaseValue GOE Scores  
Loena HENDRICKX BEL 11 ChSq1 3.00 1.64 4.64 3.333
Karen CHEN USA 10 ChSq1 3.00 1.71 4.71 3.333
Josefin TALJEGARD SWE 6 ChSq1 3.00 1.57 4.57 3.222
Satoko MIYAHARA JPN 4 ChSq1 3.00 1.64 4.64 3.222
Anna SHCHERBAKOVA FSR 5 ChSq1 3.00 1.57 4.57 3.111
Haein LEE KOR 10 ChSq1 3.00 1.50 4.50 3.000
Kaori SAKAMOTO JPN 10 ChSq1 3.00 1.43 4.43 2.889
Elizaveta TUKTAMYSHEVA FSR 10 ChSq1 3.00 1.36 4.36 2.667
Olga MIKUTINA AUT 12 ChSq1 3.00 1.21 4.21 2.444
Bradie TENNELL USA 4 ChSq1 3.00 1.21 4.21 2.444
Alexandra TRUSOVA FSR 6 ChSq1 3.00 1.14 4.14 2.222
Rika KIHIRA JPN 6 ChSq1 3.00 1.14 4.14 2.222
Yelim KIM KOR 6 ChSq1 3.00 1.07 4.07 2.111

コレオのトップはヘンドリックス選手でした。ヘンドリックス選手はスピンとステップ系要素のスコア合計は全体トップ。コストナー選手以来、久しぶりにヨーロッパでロシア以外で上位に来る選手が表れてくれました

カレンチェン選手も平均GOEL+3.333で並んでいて、上下で斬られたジャッジの関係で得られたスコアはトップです。カレンチェン選手もスピン、ステップではロシア勢の上に行きました。

日本勢では宮原選手が3.222で3位タイにいます。宮原選手もやはりスピンステップは強いです。紀平選手は2.222 コレオの評価もロシア勢に負ける形になってしまいました。ジャンプの失敗だけでなく、演技全体が元気なかったですからねえ。

ロシア勢はステップと比べればコレオの方が評価は高めで+2以上のところには入ってきています。