ジュニアグランプリシリーズ終了 やっぱりロシアだけど男子は?

ジュニアグランプリシリーズも終了しました。今シーズンは何とか開催されたものの、いろいろとイレギュラーな形になっています。日本からの派遣は結局なし。また、通常は一カ国からは二人の出場ですが、コロナの関係で出られない試合があったかわりに、別の試合に4人出たりしています。

そういったわけのわからない状態なこともあり、ジュニアグランプリファイナルへの進出も、通常ルールとは違う形となっています。今回は、各大会で優勝した選手がそのスコアの高い順に進出(出場が1試合でもよい)。それで6枠に足りない場合は、残りは2試合の合計スコアの高い選手を加える、としています。

結果として、日本は1選手も派遣しなかったのですが、男女シングルでは、開催国枠として1つづつ出場権を得ています。どうやって選手を決めるのかは不明ですが、順当にいけば全日本ジュニアのチャンピオンでしょうか。ただ、グランプリシリーズとジュニアグランプリシリーズを同時に出ることは出来ない、という規定があるので、NHK杯にエントリーした三浦佳生選手はそれに引っ掛かってしまうことに理論上なるのですが、こういう場合はどうなるのでしょう?

 

○女子シングル 各試合の優勝者

Event Pl Name Nation Total SP FS
Courchevel 1 Lindsay THORNGREN USA 181.45 62.63 118.82
Courchevel 2 1 Isabeau LEVITO USA 202.35 71.25 131.10
Kosice 1 Veronika ZHILINA RUS 216.92 71.57 145.35
Krasnoyarsk 1 Sofia AKATEVA RUS 233.08 75.89 157.19
Ljubljana 1 Adeliia PETROSIAN RUS 210.57 70.86 139.71
Gdansk 1 Sofia AKATEVA RUS 225.64 71.91 153.73
Linz 1 Sofia MURAVIEVA RUS 211.81 73.28 138.53

全7試合。最初の2試合はロシア勢の出場無し。ロシアのワクチンはヨーロッパで信用してもらえず、入出国手続きがうんぬんかんぬんとか、そんな理由だったらしいです。そういった2試合でアメリカ勢が優勝しました。

残りの5試合はロシア勢が圧勝。アカチエワ選手は2試合で優勝。他は1試合づつです。結果としてこの6名がジュニアグランプリファイナルへ進出することとなりました。

2試合目以降は優勝スコアが200点以上。ショートから70点を超える選手が並びます。ものすごいレベルになっています

 

○女子シングルで190点以上のスコア

Event Pl Name Nation Total SP FS
Krasnoyarsk 1 Sofia AKATEVA RUS 233.08 75.89 157.19
Gdansk 1 Sofia AKATEVA RUS 225.64 71.91 153.73
Kosice 1 Veronika ZHILINA RUS 216.92 71.57 145.35
Linz 1 Sofia MURAVIEVA RUS 211.81 73.28 138.53
Ljubljana 1 Adeliia PETROSIAN RUS 210.57 70.86 139.71
Linz 2 Isabeau LEVITO USA 208.31 71.32 136.99
Kosice 2 Sofia MURAVIEVA RUS 208.25 72.52 135.73
Krasnoyarsk 2 Anastasia ZININA RUS 206.20 67.02 139.18
Ljubljana 2 Sofia SAMODELKINA RUS 205.67 65.56 140.11
Krasnoyarsk 3 Sofia SAMODELKINA RUS 202.39 60.76 141.63
Courchevel 2 1 Isabeau LEVITO USA 202.35 71.25 131.10
Kosice 3 Adeliia PETROSIAN RUS 201.21 69.30 131.91
Krasnoyarsk 4 Elizaveta KULIKOVA RUS 196.83 67.08 129.75
Krasnoyarsk 5 Elizaveta BERESTOVSKAIA RUS 196.07 64.91 131.16
Ljubljana 3 Lindsay THORNGREN USA 193.77 70.24 123.53
Ljubljana 4 Minchae KIM KOR 192.48 70.83 121.65
Courchevel 2 2 Chaeyeon KIM KOR 191.46 66.90 124.56
Linz 3 Anastasia ZININA RUS 190.66 69.77 120.89
Kosice 4 Mariia ZAKHAROVA RUS 190.33 69.04 121.29

ロシアのアカデミーにアメリカと韓国から何人か留学しました、みたいな光景です。

ロシアは200点を超えた選手が6名います。ジュニアですこれ、全員。アメリカから辛うじて一人。190点以上になるとアメリカからもう一人と韓国から2人入っています。ロシアはちょっと置くとしても、アメリカや韓国と比べても日本は負けているかな、という印象です。

ロシアは210点以上が4人います。つまり、210点をジュニアで出している選手が、少なくとも一人、世界ジュニアに出られないわけです。

 

○GOEプラスの四回転要素

Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Anastasia ZININA RUS 1 4T+2T   10.80   2.85 13.65 3.111
Sofia AKATEVA RUS 2 4T+3T   13.70   2.58 16.28 2.667
Sofia SAMODELKINA RUS 2 4S   9.70   2.63 12.33 2.667
Veronika ZHILINA RUS 3 4T+3T   13.70   2.31 16.01 2.333
Sofia SAMODELKINA RUS 2 4S   9.70   2.22 11.92 2.222
Sofia AKATEVA RUS 2 4T+3T   13.70   1.90 15.60 2.000
Sofia AKATEVA RUS 3 4S   9.70   0.65 10.35 0.500
Mia KALIN USA 1 4T+2T   10.80   0.41 11.21 0.444
Sofia AKATEVA RUS 6 4T+1Eu+3S   15.73 x 0.16 15.89 0.125
Sofia SAMODELKINA RUS 1 4Lzq q 11.50   0.16 11.66 0.111

ジュニアで4回転を飛ぶ選手はもう普通にたくさんいます。その中でGOEプラスを出したのは結局4人。飛んだ選手は8人いますので、結局半分か、という感じはありますが、それでも4人決めてきています。

決めた4人にとっては、トーループはコンビネーションが常識。冒頭に飛ぶチャレンジジャンプでもなく、2番目3番目に入ってくる普通の要素、という扱いだったりしています。

 

トリプルアクセルを含む要素

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP Sofia AKATEVA RUS 1 3A+3T   12.20   2.51 14.71 3.111
FS Sofia AKATEVA RUS 1 3A   8.00   2.17 10.17 2.667
FS Varvara KISEL BLR 1 3A   8.00   1.94 9.94 2.556
SP Sofia AKATEVA RUS 1 3A+3T   12.20   1.87 14.07 2.250
FS Sofia AKATEVA RUS 1 3A   8.00   -0.40 7.60 -0.375
SP Sofia SAMODELKINA RUS 1 3A+2T   9.30   -2.29 7.01 -2.889
FS Lindsay THORNGREN USA 1 3A<< << 3.30   -1.60 1.70 -4.778
SP Sofia SAMODELKINA RUS 1 3A<+COMBO < 6.40   -3.20 3.20 -5.000
FS Varvara KISEL BLR 1 3A< < 6.40   -3.20 3.20 -5.000

どうも女子にとっては四回転よりトリプルアクセルの方が難しいジャンプという位置づけになるようです。日本人以外にとっては。要素に入れたのは4人。GOEプラスは2人だけです。

ロシアでトリプルアクセルを決めたのはアカチエワ選手だけです。ロシア女子にとっては四回転の方がトリプルアクセルよりはるかに飛びやすいジャンプなようです。

 

○アカチエワ選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3A   8.00   2.17 10.17 2.667
2 4T+3T   13.70   2.58 16.28 2.667
3 4S   9.70   -1.25 8.45 -1.111
4 3Lo   4.90   1.26 6.16 2.556
5 FCSp3   2.80   0.96 3.76 3.444
6 4T+1Eu+3S   15.73 x -1.49 14.24 -1.333
7 3F+3T   10.45 x 1.51 11.96 2.667
8 3Lz   6.49 x 1.77 8.26 3.000
9 FCCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.222
10 StSq4   3.90   1.39 5.29 3.556
11 CCoSp4   3.50   1.55 5.05 4.333
  TES   82.67   11.90 94.57  

これは157.19を出したクラスノヤルスクでの試合の時の構成です。

4回転3本にトリプルアクセル1本。2回飛ぶジャンプは四回転トーループと三回転トーループです。トリプルアクセルを2本入れようとすると、トリプルループから置き換えて、セカンドのトリプルトーループをダブルに変えてアクセルの後ろに付ける、という形になるのですが、その場合1.1倍のところのトリプルトーループを外して持ってくると合計基礎点が下がる、ということが生じます。従って、トリプルアクセルを2本入れる価値がなくなります。セカンドループを付けられると状況は変わってきますが、そうではない場合、トリプルアクセルを2本入れたいなら、1本は後半に入れられるくらいの余裕がないと価値が出ません。

そんなわけで、この構成は一つの完成形だと思うのですが、基礎点にして82.67 加点も獲って94.57まで稼ぎました。これより上の技術点を出したことがあるのは、トゥルソワ選手とワリエワ選手の二人だけです。

これ、ジュニアなのでコレオシークエンスがまだありません。コレオがもしこれに単純に足されると、ワリエワ選手の最高基礎点を超えます。

アカチエワ選手のワリエワ選手やトゥルソワ選手に対しての強みは、トリプルアクセルがしっかり飛べる、というのがあります。このジュニアグランプリシリーズの2試合、ショートフリーで合計4回飛んで、4回とも着氷しています。まだジュニアルールなのでショートではコンビネーションで無理やりトリプルアクセルを飛んで、それとは別に単独ダブルアクセルを飛ぶという不思議構成を強いられていますが、シニアルールであれば単独トリプルアクセルを飛べて基礎点が上がって来る。

全盛期のコストルナヤ選手のショートに、ノーミスしたワリエワ選手のフリーを足した状態、というのがワカチエワ選手がシニアに上がった時に見られるのかもしれません。あるいは、ロシア選手権でそれが現実化して優勝してしまい、浅田真央トリノオリンピックに出られない事件、みたいなことが起きるのかもしれません。

 

○男子シングル 各試合の優勝者

Event Pl Name Nation Total SP FS
Courchevel 1 Ilia MALININ USA 214.64 80.07 134.57
Courchevel 2 1 Wesley CHIU CAN 199.89 76.26 123.63
Kosice 1 Kirill SARNOVSKIY RUS 215.96 71.48 144.48
Krasnoyarsk 1 Gleb LUTFULLIN RUS 230.42 80.13 150.29
Ljubljana 1 Ilya YABLOKOV RUS 231.99 78.89 153.10
Gdansk 1 Gleb LUTFULLIN RUS 231.26 76.06 155.20
Linz 1 Ilia MALININ USA 245.35 81.31 164.04

男子も最初の二試合にはロシア勢のエントリーがありませんでした。3試合目からロシア勢のエントリーが入り、4試合続けて勝ちましたが、最終戦はロシア勢がいる中でもアメリカのマリンイン選手が優勝しています。

ジュニアグランプリファイナルには、この7試合で優勝した5選手と、ロシアのEgor RUKHIN選手が入っています。

 

○男子シングルの200点以上のスコア

Event Pl Name Nation Total SP FS
Linz 1 Ilia MALININ USA 245.35 81.31 164.04
Ljubljana 1 Ilya YABLOKOV RUS 231.99 78.89 153.10
Gdansk 1 Gleb LUTFULLIN RUS 231.26 76.06 155.20
Krasnoyarsk 1 Gleb LUTFULLIN RUS 230.42 80.13 150.29
Krasnoyarsk 2 Egor RUKHIN RUS 223.29 78.43 144.86
Linz 2 Artem KOVALEV RUS 221.51 80.97 140.54
Krasnoyarsk 3 Wesley CHIU CAN 217.59 76.63 140.96
Linz 3 Kirill SARNOVSKIY RUS 216.70 75.20 141.50
Kosice 1 Kirill SARNOVSKIY RUS 215.96 71.48 144.48
Courchevel 1 Ilia MALININ USA 214.64 80.07 134.57
Krasnoyarsk 4 Artem KOVALEV RUS 212.32 81.31 131.01
Kosice 2 Ilya YABLOKOV RUS 207.39 73.25 134.14
Gdansk 2 Mikhail SHAIDOROV KAZ 207.03 64.51 142.52
Kosice 3 William ANNIS USA 204.60 76.21 128.39
Gdansk 3 Egor RUKHIN RUS 202.28 71.43 130.85
Krasnoyarsk 5 Fedor ZONOV RUS 201.28 63.72 137.56

男子もロシア勢が多いですが、女子との違いはトップスコアはアメリカなこと。マリンイン選手の245.35が最高点です。カナダのチウ選手やカザフスタンからシャイドロフ選手も名を連ねています。

日本からの派遣は結局なかったわけですが、東京選手権の三浦佳生選手のスコアは2位相当に位置します。その日の出来次第ということではありますが、上位で戦うことは可能だった、という力関係になりそうです。

なお、ロシア勢の最高得点は女子のアカチエワ選手です、という日本のブロック大会みたいなことがジュニアグランプリレベルで起きています・・・。

 

○四回転を含む要素でGOEがプラス

Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Ilia MALININ USA 2 4S   9.70   2.63 12.33 2.667
Mikhail SHAIDOROV KAZ 1 4T+3T   13.70   2.38 16.08 2.500
Gleb LUTFULLIN RUS 1 4T   9.50   2.22 11.72 2.375
Gleb LUTFULLIN RUS 2 4S+2T   11.00   2.08 13.08 2.111
Egor RUKHIN RUS 1 4T   9.50   2.04 11.54 2.111
Artem KOVALEV RUS 1 4T   9.50   2.04 11.54 2.111
Wesley CHIU CAN 2 4T   9.50   1.76 11.26 1.889
Ilya YABLOKOV RUS 1 4Lo   10.50   1.80 12.30 1.778
Andrei ANISIMOV RUS 1 4S   9.70   1.66 11.36 1.667
Gleb LUTFULLIN RUS 2 4S+2T   11.00   1.46 12.46 1.500
Gleb LUTFULLIN RUS 3 4S   9.70   0.83 10.53 0.889
Mihhail SELEVKO EST 1 4S   9.70   0.97 10.67 0.889
Gleb LUTFULLIN RUS 3 4S   9.70   0.65 10.35 0.750
Lev VINOKUR ISR 2 4T   9.50   0.41 9.91 0.444

男子はジュニアでも四回転が普通に入ってきます。その中でGOEがプラスの成功ジャンプを決めた選手が10人いました。

入っているジャンプはトーループサルコウが基本。ループという変わり種も一人だけいます。二種類跳んでどちらもGOEプラスの成功ジャンプがあった、という選手になると割と少なくて、ロシアのルフリン選手くらいです。二種類をコンスタントに飛ぶのはまだ難しい。

ちょっと意外なのは、女子ではルッツを飛ぶ選手が結構目立つのに対し、男子のジュニアはルッツを飛ぶ選手はいません。女子はジュニアで完成形であってルッツを飛ぼうとするのに対し、男子はジュニアはまだ過程であって、まずはトーループサルコウから、それが飛べたら種類を増やしていく、というそういった違いがあるのかなあ、と感じました。

 

○イリア マリンイン選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4T   9.50   -2.31 7.19 -2.444
2 4S   9.70   2.63 12.33 2.667
3 3A   8.00   1.94 9.94 2.444
4 3F   5.30   1.44 6.74 2.778
5 FCCoSp4   3.50   0.80 4.30 2.333
6 StSq3   3.30   0.90 4.20 2.667
7 3Aq+1Eu+3S q 14.08 x -0.69 13.39 -0.778
8 3Lz+3Loq q 11.88 x -1.18 10.70 -1.889
9 3Lz+3T   11.11 x 0.76 11.87 1.333
10 FSSp4   3.00   0.47 3.47 1.667
11 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.111
  TES   82.87   5.81 88.68  

これは164.04を出したリンツの試合の時の構成です

4回転は2種類2本。トリプルアクセルが2本で、2回飛ぶもう一つのジャンプはトリプルルッツです。

マリンイン選手はルッツループ使いで後半の1.1倍のところにコンビネーションをすべてつぎ込み、3回転6本分を1.1倍にするという面白い構成です。

GOEは+2台が多いです。ジャンプは加点が取れないことも多く、qマークも二つ付きました。

2004年12月生まれの16歳ですのでスケート年齢では三浦佳生選手と同じ世代になります。(日本の学齢ではマリンイン選手の方が一つ上)。年齢的にはオリンピック出場可能ですが、アメリカ国内選手権で、そんな選考をするような結果を出せるでしょうか?

 

ジュニアのグランプリファイナルはシニアと同日開催で、今シーズンはオリンピックシーズンなので、4年に1回、開催地が日本へ回って来るターンです。12月9日より大阪の門真で行われます。男女シングル、日本の枠もありますので、誰が出るのか楽しみです。