フィンランディア杯 真打登場のワールドレコード

チャレンジャーシリーズ、一つ中止で飛ばしての第四戦。ここで真打登場。ロシアからのエントリーが入り始めました。チャレンジャーシリーズも各国からの出場は最大3ですが、女子は、やはり圧倒的にロシアが強いです。

 

○女子シングル 上位12人

Pl Name Nation Total SP FS
1 Kamila VALIEVA RUS 249.24 74.93 174.31
2 Elizaveta TUKTAMYSHEVA RUS 233.30 81.53 151.77
3 Alena KOSTORNAIA RUS 218.83 78.61 140.22
4 Loena HENDRICKX BEL 212.07 68.82 143.25
5 Anastasiia GUBANOVA GEO 203.91 69.50 134.41
6 Karen CHEN USA 202.49 67.50 134.99
7 Eva-Lotta KIIBUS EST 202.04 64.53 137.51
8 Viktoriia SAFONOVA BLR 187.83 64.26 123.57
9 Madeline SCHIZAS CAN 184.73 59.29 125.44
10 Amber GLENN USA 183.46 60.76 122.70
11 Lindsay van ZUNDERT NED 171.40 57.04 114.36
12 Jenni SAARINEN FIN 168.72 67.05 101.67

当然のようにロシアがワンツースリー。しかしながら、4番手のヘンドリックス選手も210点台に乗せてきていて、フリーのスコアはコストルナヤ選手の上に出て3位です。まあ世界選手権5位の選手ですから驚くにはあたらないのですが。ついでに世界選手権4位のカレンチェン選手も今回6位に入ってますし、この試合はかなりの豪華メンバーだったといえます。

そんな中、シニアの国際大会デビュー戦となったワリエワ選手が史上最高得点で優勝。ショートは割と見かけるスコアでしたがフリーは驚異の170点台です。上位3人は後で詳しく見ます。

今回は7位まで200点に乗るというハイレベルな試合でした。

5位のグバノワ選手は2シーズン前まではロシアとして試合に出ていた選手です。紀平選手と同世代で、ジュニアグランプリファイナルでは、ザギトワ-グバノワ-坂本花織-紀平梨花、なんて並びになったこともある選手。国籍変更して復活。高確率でオリンピックに出てくることになると思います。

カレンチェン選手は9月のオータムクラシックでは170点台に終わりどうしたのか? と思ってましたが、今回はしっかり200点台を出しています。アメリカ3枠は結構激戦ですがどうなるでしょう?

エストニアエバロッタキーバス選手が7位。初の200点超えのパーソナルベストです。少しづつ、この200点前後の選手の層が厚くなってきています。

 

○カミラワリエワ選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4S   9.70   1.78 11.48 1.875
2 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000
3 4T+3T   13.70   3.80 17.50 3.875
4 3Lo   4.90   1.31 6.21 2.750
5 FCSp4   3.20   1.60 4.80 4.875
6 ChSq1   3.00   2.17 5.17 4.250
7 4T+1Eu+3S   15.73 x 3.33 19.06 3.375
8 3F+3T   10.45 x 1.33 11.78 2.375
9 3Lz   6.49 x 1.57 8.06 2.750
10 StSq4   3.90   1.76 5.66 4.125
11 FCCoSp4   3.50   1.28 4.78 3.750
12 CCoSp4   3.50   1.69 5.19 4.625
  TES   84.47   18.42 102.89  

ワリエワ選手の世界最高得点の構成。4回転3本。そのうちトーループはどちらもコンビネーションで、平均GOEで+3を超える評価を出しています。トリプルアクセルは失敗。要素の中に2回転のジャンプが一つもありません。2回飛ぶジャンプは4回転のトーループと3回転のトーループ。基礎点の84.47は4回転を4本入れたトゥルソワ選手の最高基礎点88.40に届きませんが、技術点102.89はトゥルソワ選手の最高点100.20を上回ります。

その要因はジャンプの質もありますが、スピンステップの驚異的なGOEによる部分が大きいです。FCSpは8人のジャッジのうち7人が満点で得られたスコアは4.80の満点。CCoSpも8人中6人のジャッジが満点です。さらにステップシークエンスもレベル4をしっかり取った上で、GOEが+4を超えていく。四回転三本ある選手がスピンステップでこれだけ加点を取っていったら、誰も太刀打ちできません。その上でPCSも平均9を超える72.42 ここにも死角はありません。

唯一の弱点は、トリプルアクセルが決まってこないこと。これによりショートではトップに出られません。トリプルアクセルをショートフリーで3本飛んで、四回転も最低2本入れられる選手なら、何とか勝負になる、という領域です。後はこれを一シーズン続けられるかどうか?

 

エリザベータトゥクタミシェワ選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3Aq+2T q 9.30   -0.67 8.63 -0.750
2 3A   8.00   1.60 9.60 1.875
3 3Lz   5.90   1.77 7.67 2.875
4 3F   5.30   1.41 6.71 2.625
5 FCSp4   3.20   1.07 4.27 3.375
6 StSq3   3.30   1.38 4.68 4.000
7 2A+1Eu+3S   8.91 x 0.86 9.77 2.000
8 3Lz+2A+SEQ   8.10 x 1.77 9.87 3.000
9 3Lo   5.39 x -0.49 4.90 -0.875
10 ChSq1   3.00   1.67 4.67 3.375
11 LSp3   2.40   0.60 3.00 2.375
12 CCoSp4   3.50   1.28 4.78 3.750
  TES   66.30   12.25 78.55  

トゥクタミシェワ選手はトリプルアクセル2本構成で150点を超えてきました。ここまで点が出せるなら、オリンピックの出場チャンスは十分ありそうです。

実際には技術点はここ数年はこれくらい出していました。トリプルアクセル2本入りは数年続いています。ステップやスピンの加点が前よりいくらかつくかな、という感じはありますが、78.55という技術点は本人比で普通です。伸びたのはPCS ショートの35.64 フリーの73.22はどちらも過去最高得点です。2シーズン前あたりと比べると、PCSがショートフリー合わせて10点以上高い、というのがこの試合の結果でした。PCSの評価が上がったことで230点台まで乗ってきています。ワリエワ選手にはちょっと届かないですが、ロシア選手権の表彰台、というのには十分上がれるチャンスがあるように見えます。これ、四回転がない、というのもポイントで、トリプルアクセルまででもここまでは行くんですよね。

25歳で迎えるロシア選手権。そしてそこを勝ち抜けば、ロシアでは異例の、25歳にしての初めてのオリンピックとなります。

 

○アリョーナコストルナヤ選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3A< 6.40   -3.09 3.31 -4.625
2 3Lz   5.90   -1.97 3.93 -3.250
3 3Lo   4.90   1.23 6.13 2.375
4 2A+2T   4.60   0.83 5.43 2.500
5 FCSp4   3.20   0.80 4.00 2.500
6 StSq3   3.30   0.94 4.24 2.750
7 3F+3T   10.45 x 1.94 12.39 3.750
8 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.59 12.70 2.875
9 3Lz+REP   4.54 x 1.48 6.02 2.375
10 FCCoSp4   3.50   1.11 4.61 3.125
11 ChSq1   3.00   1.17 4.17 2.250
12 CCoSp4   3.50   1.05 4.55 3.000
  TES   64.40   7.08 71.48  

コストルナヤ選手はトリプルアクセルが回転不足。結果として、シニアデビュー後の国際大会での最低スコアとなってしまいました。ショートでもトリプルアクセルはなし。さすがに、トリプルアクセルも無しで今のロシアで戦うのはちょっと苦しい感じはします。実際にはトリプルアクセル無しのザギトワ選手が239点までは出しているので、代表争いくらいまでは不可能ではないはないのですけど心理的にはかなり苦しい。

ちょっとよくわからない部分もあって、最後のジャンプ、普通にトリプルルッツをリピートしています。まあ、ここまでにジャンプ全部使ってしまっているので、ダブルアクセル入れるよりはトリプルルッツのリピートの方が点が高いししょうがないそのまま入れよう、という感じだったのかもしれませんが、その前のフリップからのコンビネーション二つあたりでもう少し手の打ちようがあったようにも感じました。

まだロシア選手権まで2カ月ちょっとあるので、そこまでにトリプルアクセルをしっかり取り戻せるかもしれませんが、有力選手の中ではトゥクタミシェワ選手に次ぐ18歳4か月で迎えるロシア選手権。ちょっと苦しいかもしれません。

 

なお、この三人はグランプリシリーズの2戦目、スケートカナダにエントリーしていて、そこで紀平梨花選手とぶつかることになります。日本からは他に樋口新葉選手と河辺愛菜選手ですので、トリプルアクセル持ちが何人いるんだこの試合? みたいなことになってます。アリサリュウ選手もいます。

 

○男子シングル 上位12人

Pl Name Nation Total SP FS
1 Jason BROWN USA 262.52 92.39 170.13
2 Mikhail KOLYADA RUS 256.98 82.75 174.23
3 Dmitri ALIEV RUS 249.25 78.28 170.97
4 Keegan MESSING CAN 242.58 92.39 150.19
5 Evgeni SEMENENKO RUS 242.23 69.63 172.60
6 Matteo RIZZO ITA 238.75 62.57 176.18
7 Arlet LEVANDI EST 222.61 70.14 152.47
8 Lukas BRITSCHGI SUI 211.09 65.28 145.81
9 Tomas-Llorenc GUARINO SABATE ESP 210.36 70.13 140.23
10 Gabriele FRANGIPANI ITA 209.25 73.37 135.88
11 Luc ECONOMIDES FRA 207.69 68.99 138.70
12 Nikita STAROSTIN GER 205.60 70.20 135.40

男子はジェイソンブラウン選手が優勝しました。ショートフリー共に四回転無しの構成で260点までもってきています。

ロシア勢が2位3位。オリンピック代表選考がどうなるか? という厳しい国の厳しいラインのあたりにいる選手が上位に並んでいます。

 

○ジェイソンブラウン選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3F   5.30   2.21 7.51 4.125
2 3A+2T   9.30   1.33 10.63 1.750
3 3A   8.00   -4.00 4.00 -5.000
4 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
5 3Lo   4.90   0.90 5.80 2.000
6 3F+2T   7.26 x 0.97 8.23 1.875
7 3Lz+1Eu+3S   11.77 x 1.38 13.15 2.375
8 ChSq1   3.00   2.33 5.33 4.625
9 2A   3.63 x 0.94 4.57 2.875
10 FCCoSp4   3.50   1.34 4.84 3.750
11 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.125
12 CCSp4   3.20   1.49 4.69 4.625
  TES   67.26   11.85 79.11  

ジェイソンブラウン選手は四回転無し構成です。ステップとコレオでどちらもGOE+4超え、スピンも4を超えたものが二つあり、ジャンプでも単独三回転ではありますが4を超えた要素があります。これでトリプルアクセルもしっかり決まってくれば非常に高い完成度のプログラムを見ることができるのですが、その一点だけが残念でした。

こういう戦い方もあるし、これもフィギュアスケートの一つの形であり、こういう選手が長く世界の一線で活躍していることに、非常に大きな価値があると思っています。

 

次週はアジアで唯一のチャレンジャーシリーズ、北京オリンピックの準備試合、アジアンオープンフィギュアがあります。紀平梨花選手は外れましたが、坂本花織選手、三原舞依選手が二人でエントリー、男子では鍵山優真選手と佐藤駿選手、男女とも割と仲のいい二人組でエントリーです。男子はボーヤンジン選手、チャジュンファン選手といったアジアのトップ選手も参加します

一方ヨーロッパでは、単なる国際B級試合ではあるのですが、ブダペストトロフィーに、現世界チャンピオンのシェルバコワ選手がエントリーしています。ロシアからは他に、シニアの国際大会デビュー戦になるフロミフ選手に、かつてのヨーロッパチャンピオンのサムドゥロワ選手もエントリーしています。そちらも注目です。