ロシア選手権21プレビュー1

全日本選手権と丸被りの日程でロシア選手権が行われます。最近はこのパターンが多いというか通常になっていますけれど。世界的に見れば全日本選手権の方がロシアの真裏でやっている、という認識になるでしょうか。男子は除かれますが。というわけで、ロシア選手権のプレビューもします。女子からやっていきますが男子も間に合えば出せるかもしれません。

 

○ロシア女子の今シーズン200点越え選手

  Event Name Total SP FS
1 Rostelecom Cup Kamila VALIEVA 272.71 87.42 185.29
2 Grand Prix Torino Anna SHCHERBAKOVA 236.78 71.73 165.05
3 Finlandia Trophy Elizaveta TUKTAMYSHEVA 233.30 81.53 151.77
4 JGP Krasnoyarsk Sofia AKATEVA 233.08 75.89 157.19
5 Skate America Alexandra TRUSOVA 232.37 77.69 154.68
6 Grand Prix Torino Maiia KHROMYKH 226.35 72.04 154.31
7 Internationaux de France Alena KOSTORNAIA 221.85 76.44 145.41
8 Skate America Daria USACHEVA 217.31 76.71 140.60
9 JGP Kosice Veronika ZHILINA 216.92 71.57 145.35
10 Denis Ten Memorial Sofia SAMODELKINA 215.59 70.29 145.30
11 JGP Linz Sofia MURAVIEVA 211.81 73.28 138.53
12 JGP Ljubljana Adeliia PETROSIAN 210.57 70.86 139.71
13 JGP Krasnoyarsk Anastasia ZININA 206.20 67.02 139.18
14 Skate America Kseniia SINITSYNA 205.76 71.51 134.25

これはロシア選手権にエントリーしているか否かに依らず、今シーズンの国際大会で200点以上のスコアを出した女子シングル選手の一覧です。ジュニアも含め全部で14人います。

これが全員出られれば良かったのですが、残念ながらそうはなっていません。

まず、ロシアはロシアで年齢制限の壁というのがあり、ジュニアにして233点を出したアカチエワ選手、4回転2種類3本を飛んで216.92を出したジリナ選手、トリプルアクセルと四回転を併用できるサモデルキナ選手(間違いです。年齢足りていて出場しています)の3選手は出られません。ロシアは毎年新星が表れるというようなことを言われていたりしますが、実際のところ近年は毎年ではなく2年に1回ペースであって、この三人がシニアに上がるのは2シーズン後。メドベージェワ、ザギトワ、トゥルシェルコス、ワリエワ、と2年ごとにきて、次にアカチエワ選手たちまでまた2年空きます。2年おきというペースも計算してやってるんじゃないか? と思ってしまうのはうがった見方をしすぎでしょうか。

また、コストルナヤ選手、ウサチョワ選手の二人はケガにより欠場。オリンピックへの夢が絶たれました。二人とも今シーズンのスコア的には厳しい位置ではありましたが、それにしても試合にも出られないというのは大変残念でした。

 

スコア並べるとワリエワ選手が圧倒。2番手と36点の差は他国でもなかなか見かけません。大激戦で代表になるのが大変なロシア、ということになっていましたが、この人だけは一人異次元でした。ここまで差が出るとは私も思っていませんでした。ロシア代表は2枠でその他にワリエワという枠がある、みたいなことになっています。ケガさえなければ。ロシア国内ルールだと何点出るんでしょうか? 

230点台が4人ですがアカチエワ選手はいませんので3人。この3人が代表争いを激しく繰り広げることになるのだろうと思われます。3者3様。

その3人に挑む形になるのがフロミフ選手です。まだ5点6点足りないわけですけど上積みしてくるのかどうか。

その下にいたのがコストルナヤ選手とウサチョワ選手だったわけですが欠場となりました。

210点台は他はジュニア勢がならんでシニアで200点を超えているのは後はシニツィナ選手となります。シニツィナ選手のシーズンベストは205.76 フロミフ選手とも20点以上離れていますので実質的には上位5人の代表争いになるのかと思われます。

 

○上位5選手の今シーズンの戦績

Event Name Total SP FS
Rostelecom Cup Kamila VALIEVA 272.71 87.42 185.29
Skate Canada Kamila VALIEVA 265.08 84.19 180.89
Finlandia Trophy Kamila VALIEVA 249.24 74.93 174.31
Grand Prix Torino Anna SHCHERBAKOVA 236.78 71.73 165.05
Finlandia Trophy Elizaveta TUKTAMYSHEVA 233.30 81.53 151.77
Skate Canada Elizaveta TUKTAMYSHEVA 232.88 81.24 151.64
Skate America Alexandra TRUSOVA 232.37 77.69 154.68
Internationaux de France Anna SHCHERBAKOVA 229.69 77.94 151.75
Rostelecom Cup Elizaveta TUKTAMYSHEVA 229.23 80.10 149.13
Grand Prix Torino Maiia KHROMYKH 226.35 72.04 154.31
Budapest Trophy Maia KHROMYKH 224.91 72.82 152.09
Budapest Trophy Anna SHCHERBAKOVA 222.73 74.76 147.97
Rostelecom Cup Maiia KHROMYKH 219.69 64.72 154.97
US International Alexandra TRUSOVA 216.80 74.75 142.05
Warsaw Cup Maiia KHROMYKH 194.02 69.24 124.78

上位5選手の今シーズンの国際大会の全試合の結果を並べます。

ワリエワ選手の最低点は249.24で他の選手の最高点が236.78 かなりの差があります。四回転と比べると確度の低いトリプルアクセルをショートフリーで両方転倒したとしても十分勝てます、くらいの点差がありそうです。

フロミフ選手はちょっと苦しいかなという立ち位置。トゥクタミシェワ選手のシーズンワーストにもシーズンベストが届かないという力関係です。ただ、シェルバコワ選手に勝ったことがありますし、ミスの多いトゥルソワ選手が崩れてきた場合は上へ行ける。他人のミス待ちではありますがチャンスは十分ある。

安定しているのがトゥクタミシェワ選手。3試合で一番いい時と悪い時の点差が3.79しかない。伸びしろは短時間ではあまりなさそうですが大崩れしない安定感があります。四回転ではなくトリプルアクセルが武器なところが多少は難易度に余裕があって安定感につながっているんでしょうか? ここ2シーズンでスピンステップPCSが伸びたことでベースが上がり、230点標準になってきました。

シェルバコワ選手はまだ四回転の不安定さがあります。四回転ルッツが抜けたフランス杯では230点に届かず。四回転決められなかったブダペストトロフィーでは220点台前半にとどまりました。なんだかんだで四回転が生命線。

トゥルソワ選手はケガの状態はどうなのでしょう? これからロシア選手権という彼女に、ケガの状態は? と聞いても、大丈夫全然平気としか言わないでしょうから、だいじょうぶといわれても、実際はどうなんだろう? とよくわからない。 ただ、彼女が一番点数を出せるのは、ちょっとケガの心配が本人にも残っていて、コーチと本人が両方納得して少し難度を下げた構成の時、のようにも感じています。ケガが完全回復してフル構成で行くと大崩れの危険がある。USインターナショナルは四回転4種類でルッツ2本が1.1倍という男子にもない史上空前のスーパー構成でしたが結果的にはうまくいきませんでした。そこらの国際大会ならそれでも上位に来ますがロシアで表彰台に乗るためにはそうはいかない。4回転1本のスケートアメリカのスコアではトゥクタミシェワ選手に勝ち切れていませんが、もう1本入れば上へ行ける、という計算になっています。

 

ショートプログラム70点以上の選手

  Event Name Total SP FS
1 Rostelecom Cup Kamila VALIEVA 87.42 49.97 37.45
2 Finlandia Trophy Elizaveta TUKTAMYSHEVA 81.53 45.89 35.64
3 Finlandia Trophy Alena KOSTORNAIA 78.61 42.88 35.73
4 Internationaux de France Anna SHCHERBAKOVA 77.94 41.60 36.34
5 Skate America Alexandra TRUSOVA 77.69 42.21 35.48
6 Skate America Daria USACHEVA 76.71 42.24 34.47
7 JGP Krasnoyarsk Sofia AKATEVA 75.89 44.60 31.29
8 JGP Linz Sofia MURAVIEVA 73.28 41.54 31.74
9 Budapest Trophy Maia KHROMYKH 72.82 39.30 33.52
10 JGP Kosice Veronika ZHILINA 71.57 40.51 31.06
11 Skate America Kseniia SINITSYNA 71.51 39.62 31.89
12 JGP Ljubljana Adeliia PETROSIAN 70.86 39.96 30.90
13 Denis Ten Memorial Sofia SAMODELKINA 70.29 38.59 31.70

ショートプログラムだけ取ってもワリエワ選手が図抜けています。シーズン開幕戦はトリプルアクセルが入らなかったのですが、それが入ってからはとてつもないスコアになってきました。

トリプルアクセルと言えばこの人、というトゥクタミシェワ選手が80点に乗せて2番手。PCSやスピンステップが以前より点が取れるようになってスコアが伸びてきています。四回転がないのでショートでリードを広げたい、という立ち位置です。

コストルナヤ選手は3番目。これ、トリプルアクセル抜きの構成で出した点数です。やはり完成度は高いんですかね。トリプルアクセル入ればショートで83~84点くらい出せる力があるわけです。欠場は残念でした。

その下にはシェルバコワ選手、トゥルソワ選手と続きます。フリーを前にトゥクタミシェワ選手と何点さで折り返せるか? トゥルソワ選手はトリプルアクセルを入れるか入れないかというのもあります。77.69はトリプルアクセル抜きのスコアです。トリプルアクセルを試みたUSインターナショナルは失敗して74.75でした。トゥクタミシェワ選手と10点近い差がついてもフリーで逆転可能な選手ではありますが、当然点差は小さい方がいいですし、あまり滑走順が早くなるとPCSが出にくくなるというのはあります。

フロミフ選手は9番目。出場選手の中では6番目です。滑走順が早いとPCSも伸ばしづらくなる。ここ2試合70点に乗せられていないのですが、グランプリシリーズなどと違ってロシア選手権で60点台だとジュニア勢などに割って入られて7,8番手になり最終グループに入れなくなる。なんとか最終グループに入って逆転の芽は残しておきたい、という立ち位置かと思われます。

 

○フリー140点以上の選手

  Event Name FS TES PCS
1 Rostelecom Cup Kamila VALIEVA 185.29 109.02 76.27
2 Grand Prix Torino Anna SHCHERBAKOVA 165.05 92.26 72.79
3 JGP Krasnoyarsk Sofia AKATEVA 157.19 94.57 62.62
4 Rostelecom Cup Maiia KHROMYKH 154.97 85.26 69.71
5 Skate America Alexandra TRUSOVA 154.68 85.68 69.00
6 Finlandia Trophy Elizaveta TUKTAMYSHEVA 151.77 78.55 73.22
7 Internationaux de France Alena KOSTORNAIA 145.41 76.35 70.06
8 JGP Kosice Veronika ZHILINA 145.35 83.43 62.92
9 Denis Ten Memorial Sofia SAMODELKINA 145.30 83.10 62.20
10 Skate America Daria USACHEVA 140.60 71.05 69.55

フリーも当然ワリエワ選手が突出したスコアなわけですが、それに次ぐのはシェルバコワ選手です。このスコアが出せれば高確率で代表圏内に入ってこられそうです。四回転が一本でもこのスコアが出せるのがシェルバコワ選手の強み。ワリエワ選手に勝つことを目指して複数の四回転をフリーにつぎ込むというようなことをするとリスクが高まります。

ジュニアにしてアカチエワ選手が3番手。技術点はシェルバコワ選手を上回ります。残念ながらロシア選手権の出場権がありませんが。

フロミフ選手とトゥルソワ選手が154点台です。フロミフ選手はロステレコム杯ではPCS69.71をもらえていました。ショートフリーノーミスでPCSももらえれば、上位のミスでチャンスが回って来ることもあるかと思われます。一方トゥルソワ選手は、今日の構成は簡単と言い切ったスケートアメリカのスコアがシーズンベスト。これくらいの構成で安定的に滑った方がよさそうにも思うのですが、ケガから回復していれば4回転5本のハードモードで来るんでしょうかね。その場合、180点もあり得るけれど130点台もあり得るというはらはらさせられる滑りになるのだろうと思います。それが魅力と言えば魅力ですけれど。

四回転無しのトリプルアクセル2本構成のトゥクタミシェワ選手は有力5選手の中では一番下です。今シーズンは3回滑ってすべて150点前後のスコア。トゥクタミシェワ選手が基準で、ほかの選手はそれを超えられるかどうか? という展開になりそうです。