カミラワリエワ Kamila VALIEVA  19-20

2006年4月26日生まれ

ジュニア1シーズン目

 

シーズン獲得賞金:$20,000

世界ランキング:57位

シーズンランキング:17位

シーズンベストスコア 227.30(5位) 世界ジュニア

ショートプログラムシーズンベスト 74.92 世界ジュニア

フリーシーズンベスト 152.38 世界ジュニア

ショートプログラム楽曲: 鏡の中の鏡

フリープログラム楽曲: Exogenesis Sumphony part3

スピンレベル4率 24/24=100%

ステップレベル4率 6/8=75.0%

スピンオールレベル4 4/4

スピンステップオールレベル4 2/4

ジャンプ回転不足率  1/40=2.50%

ジャンプ回転不足なし試合 3/4

スピンステップオールレベル4ジャンプの回転不足もなしの試合 1/4

 

 ●カミラワリエワ選手の19-20シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP TSS SP TES SP PCS FS TSS FS TES FS PCS
JGP JGP Courchevel 1 200.71 62.31 32.39 30.92 138.40 76.84 62.56
JGP JGP RUS 1 221.95 73.56 41.78 31.78 148.39 83.96 65.43
JGPF JGP Final 1 207.47 69.02 38.28 30.74 138.45 75.87 62.58
WJ World Junior 1 227.30 74.92 42.52 32.40 152.38 85.88 66.50

ワリエワ選手はジュニアデビューシーズンとなります。国際試合4試合出場してすべて200点を超えるスコアを出しました。

ジュニアグランプリシリーズは2戦2勝。初戦はショートプログラムのコンビネーションジャンプで転倒して出遅れますが、フリーでは四回転トーループを決めて逆転優勝を果たします。2戦目は地元ロシアで本領発揮。ショートから73点台のスコアを出し、フリーも4回転こそ2本目を決められず転倒したものの、他はすべての要素で平均GOEが3を超えるという演技で148点台。221.95という高いスコアを出してきました。

ファイナルはケガもあって心配されましたが、四回転無し構成ながらも優勝します。

圧巻だったのは世界ジュニア。ショートをノーミスの74.92で折り返すと、フリーは四回転が一つはクリーンではなかったものの2本着氷しての152.38 ジュニア最高記録をマークし、トータル227.30も、昨シーズンのトゥルソワ選手を上回るジュニア最高記録で圧勝しました。

 

 ●カミラワリエワ選手の今シーズンの要素別得点

Grade Event Pl Total TES PCS Jump Spin Step
JGP JGP Courchevel 1 200.71 109.23 93.48 71.42 27.39 10.42
JGP JGP RUS 1 221.95 125.74 97.21 88.37 27.85 9.52
JGPF JGP Final 1 207.47 114.15 93.32 78.48 26.43 9.24
WJ World Junior 1 227.30 128.40 98.90 89.82 27.99 10.59

要素別は当然のように技術点優位型です。PCSはジュニア1年目でまだ伸びていませんが、それでも98.90まで早くも来ています。各要素平均8点をすでに超えてきていることになります。

ジャンプで得た世界ジュニアの89.82というスコアは、この上はシニアエテリ組3人しかいない点数です。

実はもっとすごいのがスピン。世界ジュニアの27.99は今シーズンの全選手中最高得点でした。ジュニアグランプリロシアの27.85を上回って選手もいません。

ステップは10点台ですが、これもジュニアとしてはやはりトップの数字です。

どれをとってもジュニアのトップですし、シニアと混ざっても上位に来ています。

 

 ●カミラワリエワ選手のスケート偏差値

Event Pl Total Jump Base Jump GOE Spin Step PCS
JGP Courchevel 1 61.58 59.92 66.10 72.97 68.27 59.38
JGP RUS 1 67.36 69.59 72.30 74.49 63.82 61.83
JGP Final 1 63.42 62.09 73.20 69.79 61.93 59.27
World Junior 1 68.81 69.59 74.85 74.96 69.54 62.94

トータルスコアは220点台まで出すと60台後半の偏差値となってきます。

ジャンプは基礎点段階で70近い偏差値なうえに、加点は70点台の偏差値になることで大きく稼いでいます。

スピンは全選手中トップで偏差値75近い数字です。

 

カミラワリエワスケート偏差値

レーダーチャートは右下寄り。これでPCSが伸びたら手の付けられないことになってきそうです。

 

●シーズン最高のショートプログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
World Junior 1 3Lo   4.90   1.61 6.51 3.222
World Junior 2 2A   3.30   1.32 4.62 3.889
World Junior 3 FSSp4   3.00   0.90 3.90 3.000
World Junior 4 3Lz+3T   11.11 x 1.77 12.88 3.111
World Junior 5 CCoSp4   3.50   1.75 5.25 4.889
World Junior 6 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.667
World Junior 7 LSp4   2.70   1.31 4.01 4.778
World Junior   TES   32.41   10.11 42.52  

ショートプログラムの最高基礎点は32.41でした。今シーズンのジュニアでこれより上の基礎点を作るには、ある種裏技的な手法が必要で、それができたのはアリサリュウ選手のみでした。というわけで、ジュニア勢の中で2番目の基礎点です

 

●シーズン最高のフリープログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
World Junior 1 4T   9.50   -2.44 7.06 -2.444
World Junior 2 4T+2T   10.80   2.85 13.65 3.000
World Junior 3 3Lo   4.90   1.54 6.44 3.111
World Junior 4 2A   3.30   1.18 4.48 3.667
World Junior 5 FCSp4   3.20   1.28 4.48 4.000
World Junior 6 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.444
World Junior 7 3Lz+3T   11.11 x 1.85 12.96 3.333
World Junior 8 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.51 12.62 2.889
World Junior 9 3Lz   6.49 x 2.11 8.60 3.556
World Junior 10 FCCoSp4   3.50   1.60 5.10 4.556
World Junior 11 CCoSp4   3.50   1.75 5.25 4.889
World Junior   TES   71.31   14.57 85.88  

フリーの基礎点最高は71.31 基礎点段階ではアリサリュウ選手に次いでジュニア勢で2番目になります。全選手中5番目。コストルナヤ選手より上です。コストルナヤ選手より上の基礎点をもって、出来栄え勝負までできる選手、と考えると、シニアで戦って上に行く可能性を普通に持っていると言ってよいでしょうか。

まだ四回転は一種類だけ、という言い方もできますが、シニアに上がるまでに増やしていくでしょうか。

二本飛ぶジャンプは四回転トーループトリプルルッツ。ルッツループが確認されていませんが、ルッツループが飛べれば、コンビネーションをそれに変えて、4回転の後ろに三回転のトーループを入れ、余った単独ジャンプにダブルアクセルを入れる、という形で基礎点をもう一段上げることもできます。

ただ、ルッツループの習得よりはトリプルアクセル、あるいはもう一種類四回転を増やす、という方向の方が早くてお得かもしれません。

 

●平均GOE+3.800以上

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
World Junior SP 5 CCoSp4   3.50   1.75 5.25 4.889
World Junior FS 11 CCoSp4   3.50   1.75 5.25 4.889
JGP RUS SP 5 CCoSp4   3.50   1.70 5.20 4.778
JGP RUS FS 11 CCoSp4   3.50   1.70 5.20 4.778
World Junior SP 7 LSp4   2.70   1.31 4.01 4.778
JGP RUS SP 7 LSp4   2.70   1.27 3.97 4.667
JGP Courchevel SP 5 CCoSp4   3.50   1.65 5.15 4.556
JGP Courchevel SP 7 LSp4   2.70   1.23 3.93 4.556
World Junior FS 10 FCCoSp4   3.50   1.60 5.10 4.556
JGP Final SP 7 LSp4   2.70   1.23 3.93 4.444
JGP Courchevel FS 5 FCSp4   3.20   1.42 4.62 4.333
JGP RUS FS 5 FCSp4   3.20   1.37 4.57 4.333
JGP Final FS 11 CCoSp4   3.50   1.50 5.00 4.222
JGP RUS FS 4 2A   3.30   1.37 4.67 4.111
JGP Courchevel FS 11 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
JGP Final FS 5 FCSp4   3.20   1.28 4.48 4.000
World Junior FS 5 FCSp4   3.20   1.28 4.48 4.000
World Junior SP 2 2A   3.30   1.32 4.62 3.889

評価の高い要素はとにかくスピンが並びます。他の要素の評価が低いということでもなく、スピンが高すぎて、足切りラインを平均GOE3.8にしてしまったので、他は入ってこれなかったという形です。

スピンの中でとくにCCoSp チェンジフットコンビネーションスピンの評価が高いですが、その他構成に入っている3種類のスピンで、平均GOE+4超えがあります。

スピン以外の要素ではかろうじてダブルアクセルは入ってきました。平均GOE+4.000のダブルアクセルが飛べて、四回転を飛ぶ力があるのですから、トリプルアクセルが構成に入ってくる日も普通にやってきそうに感じます。

 

●四回転ジャンプ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
JGP Courchevel FS 1 4T   9.50   2.99 12.49 3.222
JGP RUS FS 1 4T+2T   10.80   2.99 13.79 3.111
JGP RUS FS 2 4T   9.50   -4.75 4.75 -4.889
World Junior FS 1 4T   9.50   -2.44 7.06 -2.444
World Junior FS 2 4T+2T   10.80   2.85 13.65 3.000

今シーズン四回転は5回飛びました。成功率は60% 世界ジュニアも回転足りての減点なので、十分に高い点数は取れていて、4回転を飛んでいない構成と比べて十分におつりが来ているので成功と見てもよい水準です。

4回転で成功した時は平均GOE+3以上が並んでいるわけですから、すごいスコア出るよな、と思わされます。

 

●三連続ジャンプ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
JGP Courchevel FS 9 3Lz+1Eu+2S   8.47 x 0.93 9.40 1.444
JGP RUS FS 8 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.89 13.00 3.556
JGP Final FS 8 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.59 12.70 2.889
World Junior FS 8 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.51 12.62 2.889

3連続ジャンプはフリップからの3S使いです。初戦はコントロールが効かずに最後のサルコウが2回転になっているので本人的には失敗感があるかもしれませんが、GOEはプラスを得ました。

JGPロシアで出した3連続でGOEが+3.556というのはシニツィナ選手と並んで、今シーズンの三連続ジャンプのトップ評価でした。

 

●セカンド三回転

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
JGP Courchevel FS 7 3Lz+3T   11.11 x 2.19 13.30 3.556
JGP RUS SP 4 3Lz+3T   11.11 x 2.11 13.22 3.667
JGP RUS FS 7 3Lz+3T   11.11 x 2.11 13.22 3.667
JGP Final SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.77 12.88 3.000
JGP Final FS 7 3Lz+3T   11.11 x 2.02 13.13 3.222
World Junior SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.77 12.88 3.111
World Junior FS 7 3Lz+3T   11.11 x 1.85 12.96 3.333

セカンド三回転のコンビネーションは3Lz-3Tになっています。ショートもフリーも1.1倍ボーナスタイムに飛んで、すべて平均GOE+3以上という高評価を得ました。実際には初戦のJGPコーチバルでは、コンビネーションの一つ目のルッツで転倒した、というのがあるので、成功率100%とは本来は言えないのですが、それにしても素晴らしい成功率です。

 

●単独の3回転ジャンプ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
JGP Courchevel SP 1 3Lo   4.90   1.82 6.72 3.667
JGP Courchevel SP 4 3Lz<+COMBO 5.19 x -2.36 2.83 -5.000
JGP Courchevel FS 3 3Lo   4.90   1.33 6.23 2.556
JGP Courchevel FS 8 3F   5.83 x -2.35 3.48 -4.333
JGP RUS SP 1 3Lo   4.90   1.47 6.37 3.000
JGP RUS FS 3 3Lo   4.90   1.54 6.44 3.222
JGP RUS FS 9 3Lz   6.49 x 1.85 8.34 3.111
JGP Final SP 1 3Lo   4.90   -0.28 4.62 -0.444
JGP Final FS 3 3Lo   4.90   1.40 6.30 2.889
JGP Final FS 9 3Lz   6.49 x 1.60 8.09 2.667
World Junior SP 1 3Lo   4.90   1.61 6.51 3.222
World Junior FS 3 3Lo   4.90   1.54 6.44 3.111
World Junior FS 9 3Lz   6.49 x 2.11 8.60 3.556

単独三回転はパーフェクトとはいきませんでした。フリップで一回、ループで一回、GOEマイナスがついています。ルッツのGOE-5は、前記のコンビネーションの一つ目で転倒したものです。

今シーズンのジャンプの回転不足は、このルッツからのコンビネーションで転倒した時のたった一回だけでした。ジャンプ回転不足率2.5%  四回転を装備していながらのこの数字は驚異的です。

 

●ステップシークエンス

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
JGP Courchevel SP 6 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.444
JGP Courchevel FS 6 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.222
JGP RUS SP 6 StSq3   3.30   1.04 4.34 3.111
JGP RUS FS 6 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.222
JGP Final SP 6 StSq3   3.30   1.04 4.34 3.111
JGP Final FS 6 StSq4   3.90   1.00 4.90 2.667
World Junior SP 6 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.667
World Junior FS 6 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.444

ジュニア二コレオシークエンスがないのでステップだけを見ますが、レベル4率が高いうえに、GOEもほとんどの場合平均+3を超えるスコアとなっています。

四回転だけの選手ではなく、こういうところも穴がないです。

 

●チェンジフットコンビネーションスピン

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
JGP Courchevel SP 6 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.444
JGP Courchevel FS 6 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.222
JGP RUS SP 6 StSq3   3.30   1.04 4.34 3.111
JGP RUS FS 6 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.222
JGP Final SP 6 StSq3   3.30   1.04 4.34 3.111
JGP Final FS 6 StSq4   3.90   1.00 4.90 2.667
World Junior SP 6 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.667
World Junior FS 6 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.444

スピンは一つだけ取り出してみました。チェンジフットコンビネーションスピン、8回の実施で7回は平均GOEが+4以上となっています。世界ジュニアのショートフリーは、9人のジャッジのうち1人だけが+4であとは+5という評価で、加点としては満点の1.75が付きました。スピン一つで5点台が付きます。

チェンジフットコンビネーションスピンのこの+4.889は今シーズンの全選手の全要素の中での最高評価です。この種類のスピンとして2番目によいのは、+4.444のザギトワ選手とシェルバコワ選手が1回づつ出していますが、ワリエワ選手は一人でそれより良い評価を5回受けています。

なお、FCSp フライングキャメルスピンも+4.333を二回もらっていて、全選手中トップ。

FCCoSP フライングチェンジフットコンビネーションスピンも世界ジュニアで得た+4.556が全選手中トップ。

LSp レイバックスピンの+4.778も全選手中トップタイ。

FSSp フライングシットスピンは平均GOE+3.667を得て、ブレイディテネル選手に次いで全選手中2番目、と、各スピンでほとんど全選手中トップの評価を得ていました。

 

 

四戦四勝圧倒的強さを誇ったワリエワ選手。

ライバルアリサリュウ選手にも、JGPファイナル、世界ジュニアと連勝しました。

シニアに上がるにはもう一シーズン待たないといけません。ここでさらにジャンプがもう一種類加わってきたりした日には、ジュニアにして230点台、あるいは240点台も見えて来たりするかもしれません。

北京オリンピックシーズンにぴったりシニアに上がるワリエワ選手。構図としては、平昌二シーズン前にシニアに上がったメドベージェワ選手と、平昌シーズンにシニアに上がったザギトワ選手、というのと、北京二シーズン前にシニアに上がったコストルナヤ選手と、北京シーズンにシニアに上がるワリエワ選手、という対比もできます。

 

一方、近年のロシア勢は、ジュニア一年目に活躍しても、シニアに上がってから今一つという選手や、シニアに上がる前にケガなどで結果を出せなくなっていく選手もいました。

ものすごい選手であることは確かですが、まだ、ジュニア一年目が終わっただけなのも事実です。

来シーズン、そして北京オリンピックシーズン。ワリエワ選手はどうなっていくでしょうか。