グランプリシリーズ直前 21シーズンランキング 女子シングル

前日の男子に続いて今回は女子シングルです。グランプリシリーズ直前の21シーズンランキング。

有力選手では、ロシアの今シーズンシニアデビューのウサチェワ選手と昨シーズンはケガでほぼ滑っていなかったシニツィナ選手がまだ国際大会を滑っていません。二人はスケートアメリカが初戦となります。他に、アメリカのブレイディテネル選手もいません。テネル選手もスケートアメリカが初戦の予定でしたがリストから外れました。3戦目のトリノは名前が残っていますがちょっと心配です。

そして、紀平梨花選手。スケートカナダが初戦の予定でしたがここにきてリストから外れました。4戦目のNHK杯はまだ残っていますが、これもかなり心配です。

他は、だいたい各国の有力選手は一度は滑っている感じがします。ただ、日本はショートフリー揃った国際試合を滑ったのは坂本花織選手と三原舞依選手の二人だけです。

 

○女子シングル 200点以上

  J/S Event Name Nation Total SP FS
1 S Finlandia Trophy Kamila VALIEVA RUS 249.24 74.93 174.31
2 S Finlandia Trophy Elizaveta TUKTAMYSHEVA RUS 233.30 81.53 151.77
3 J JGP Krasnoyarsk Sofia AKATEVA RUS 233.08 75.89 157.19
4 S Budapest Trophy Maia KHROMYKH RUS 224.91 72.82 152.09
5 S Budapest Trophy Anna SHCHERBAKOVA RUS 222.73 74.76 147.97
6 S Lombardia Trophy Alysa LIU USA 219.24 74.31 144.93
7 S Finlandia Trophy Alena KOSTORNAIA RUS 218.83 78.61 140.22
8 J JGP Kosice Veronika ZHILINA RUS 216.92 71.57 145.35
9 S US International Alexandra TRUSOVA RUS 216.80 74.75 142.05
10 S US International Yeonjeong PARK KOR 212.40 71.07 141.33
11 S Finlandia Trophy Loena HENDRICKX BEL 212.07 68.82 143.25
12 J JGP Linz Sofia MURAVIEVA RUS 211.81 73.28 138.53
13 J JGP Ljubljana Adeliia PETROSIAN RUS 210.57 70.86 139.71
14 J JGP Linz Isabeau LEVITO USA 208.31 71.32 136.99
15 J JGP Krasnoyarsk Anastasia ZININA RUS 206.20 67.02 139.18
16 J JGP Ljubljana Sofia SAMODELKINA RUS 205.67 65.56 140.11
17 S Finlandia Trophy Anastasiia GUBANOVA GEO 203.91 69.50 134.41
18 S Asian Open Figure MIHARA Mai JPN 203.58 67.83 135.75
19 S Finlandia Trophy Karen CHEN USA 202.49 67.50 134.99
20 S Asian Open Figure SAKAMOTO Kaori JPN 202.28 76.70 125.58
21 S Finlandia Trophy Eva-Lotta KIIBUS EST 202.04 64.53 137.51

女子シングルは当然のようにロシアの名前が並びます。

トップスコアはワリエワ選手。249.24は女子シングルの歴代最高得点です。トゥルソワ選手が似たような形でシニアデビュー(この時はフリーのみ歴代最高)でしたが、シーズン中盤以降失速した感じがありました。ワリエワ選手はこのままオリンピックまで突っ走れるかどうか?

2番目にいるのはなんとトゥクタミシェワ選手です。233.30 ショートで80点超え。4回転無しのトリプルアクセル3本でここにいます。ちょうど紀平梨花選手のベストがこれくらいです。

3番手にジュニアのアカチエワ選手が入っています。233.08はジュニアの歴代最高得点です。末恐ろしい14歳ですが、今14歳ということはオリンピックチャンスは2026年で18歳の時。その時まで恐ろしい存在でいられるかどうか?

ロシアのシニア3番目のスコアはフロミフ選手の224.91になっています。2シーズン前世界を席巻した3人、トゥルソワ、コストルナヤ、シェルバコワ、各選手は220点前後でロシアシニアの中で4から6番手のスコアになっています。トゥルソワ選手以外の二人はここ昨シーズン以降、トリプルアクセルや四回転がほぼ決まっていないという状態です。オリンピック枠3の中に入ってこられるかどうか?

ロシア勢以外のトップはアメリカの今シーズンシニアデビューでアリサリュウ選手。219.24までは出してきました。四回転もトリプルアクセルも決めたことがありますが、今シーズンはそれらの成功無しでこのスコアになっています。

ロシア勢以外の2番手は韓国からパクヨンジョン選手。彼女は2006年1月生まれの15歳。韓国も強くなりました。

ロシア以外の3番手も210点を超えて212.07を出したベルギーのルナヘンドリックス選手。20代選手の中で2番手、みたいな見方もできます。

日本勢は、あまりまだ試合に出ていないせいもありますが、18番目に三原舞依選手、20番目に坂本花織選手が入るのがやっとでした、という現実はあります。

 

○女子シングル ショートプログラム70点以上

  J/S Event Name Nation TSS TES PCS
1 S Finlandia Trophy Elizaveta TUKTAMYSHEVA RUS 81.53 45.89 35.64
2 S Finlandia Trophy Alena KOSTORNAIA RUS 78.61 42.88 35.73
3 S Asian Open Figure SAKAMOTO Kaori JPN 76.70 41.97 34.73
4 J JGP Krasnoyarsk Sofia AKATEVA RUS 75.89 44.60 31.29
5 S Finlandia Trophy Kamila VALIEVA RUS 74.93 40.62 35.31
6 S Budapest Trophy Anna SHCHERBAKOVA RUS 74.76 39.12 35.64
7 S US International Alexandra TRUSOVA RUS 74.75 41.83 33.92
8 S Lombardia Trophy Alysa LIU USA 74.31 41.15 33.16
9 J JGP Linz Sofia MURAVIEVA RUS 73.28 41.54 31.74
10 S Budapest Trophy Maia KHROMYKH RUS 72.82 39.30 33.52
11 J JGP Kosice Veronika ZHILINA RUS 71.57 40.51 31.06
12 J JGP Linz Isabeau LEVITO USA 71.32 40.11 31.21
13 S US International Yeonjeong PARK KOR 71.07 39.07 32.00
14 J JGP Ljubljana Adeliia PETROSIAN RUS 70.86 39.96 30.90
15 J JGP Ljubljana Minchae KIM KOR 70.83 40.94 29.89
16 J JGP Ljubljana Lindsay THORNGREN USA 70.24 40.90 29.34

ショートプログラムのトップスコアはトリプルアクセル持ちのトゥクタミシェワ選手でした。81.53はパーソナルベスト。技術点が45点台まで出たのも素晴らしいですが、PCSが伸びてきて35点台あります。

2位がコストルナヤ選手なので、これもトリプルアクセルで、と一見思うのですが、これはトリプルアクセル無しのダブルアクセルでのスコアです。ステップがレベル3でしたが、内容的には素晴らしい出来でした。トリプルアクセル無しでも十分高いスコアは出せます。しかし彼女はロシア人。トリプルアクセルまでは何としても欲しい。それが入ればもう5点くらい上まで行って、ショートではトップに立てることがほぼ確実です。

3番手に坂本花織選手がいます。ロシアにはトリプルアクセルをしっかり決められる選手が少ないので、トリプルアクセルが無くてもショートでこの辺の位置までは行ける可能性があります。ロシア勢が確実性を優先してくると同じ条件で勝負しないといけないので少し苦しくなりますが、ロシア勢がロシア勢相手に勝つためにトリプルアクセルも何としても決めたい! みたいなショートでの戦略を組むと、坂本選手が上に来る可能性が出てきます。

他、70点以上を出したのが16人。ジュニア勢が結構多いです。4番手のアカチエワ選手のようなコンビネーションでトリプルアクセルを突っ込むという選手はなかなかいませんが、みなそれぞれ出来栄えでしっかり稼いでこの辺のスコアまで出してきます。

 

○女子シングル フリー 135点以上

  J/S Event Name Nation TSS TES PCS
1 S Finlandia Trophy Kamila VALIEVA RUS 174.31 102.89 72.42
2 J JGP Krasnoyarsk Sofia AKATEVA RUS 157.19 94.57 62.62
3 S Budapest Trophy Maia KHROMYKH RUS 152.09 81.45 70.64
4 S Finlandia Trophy Elizaveta TUKTAMYSHEVA RUS 151.77 78.55 73.22
5 S Budapest Trophy Anna SHCHERBAKOVA RUS 147.97 76.17 72.80
6 J JGP Kosice Veronika ZHILINA RUS 145.35 83.43 62.92
7 S Lombardia Trophy Alysa LIU USA 144.93 75.73 69.20
8 S Finlandia Trophy Loena HENDRICKX BEL 143.25 73.91 69.34
9 S US International Alexandra TRUSOVA RUS 142.05 78.65 64.40
10 J JGP Krasnoyarsk Sofia SAMODELKINA RUS 141.63 80.18 61.45
11 S US International Yeonjeong PARK KOR 141.33 76.40 64.93
12 S Finlandia Trophy Alena KOSTORNAIA RUS 140.22 71.48 68.74
13 J JGP Ljubljana Adeliia PETROSIAN RUS 139.71 77.24 62.47
14 J JGP Krasnoyarsk Anastasia ZININA RUS 139.18 78.38 60.80
15 J JGP Linz Sofia MURAVIEVA RUS 138.53 74.25 64.28
16 S Finlandia Trophy Eva-Lotta KIIBUS EST 137.51 73.17 64.34
17 J JGP Linz Isabeau LEVITO USA 136.99 73.56 63.43
18 S Japan Open Wakaba HIGUCHI JPN 136.27 69.46 66.81
19 S Asian Open Figure MIHARA Mai JPN 135.75 70.80 64.95
20 S Japan Open Rino MATSUIKE JPN 135.12 71.32 63.80

フリーの最高点は15点以上の大差をつけてワリエワ選手の174.31があります。技術点102.89 完全にお化けスコアです。

2番目にジュニアのアカチエワ選手がいます。PCSがまだあまりもらえていませんが、TESは94.57 コレオシークエンスなしでこの点なので、実質的に100点に近いところまで出せています。

トゥクタミシェワ選手がPCSトップでフリー4番目。4回転無しでもここまでは出ます。ワリエワ選手に勝って金メダル! みたいなことを考えると少し辛いですが、オリンピックの表彰台争いくらいまでなら四回転は不要で、トリプルアクセル3本+高い完成度で十分勝負が可能、というのが見えます。あくまで勝負が可能、であって、結果的にトゥルソワ選手など四回転勢が上に行く可能性も持ち露なりますけれど。

ロシアのシニア6強(ウサチェワ選手を足せば7ですがまだいない)の中で、コストルナヤ選手が一番下の140.22になってしまっています。トリプルアクセルが回転不足なだけでなく、次のトリプルルッツで大幅減点なあたりが痛く、TESは70点に乗った程度になってしまっています。

日本勢は135~6点あたりに3人。技術点が70点前後でPCSが65点前後。ここが限界点、という選手ではなさそうですので、グランプリシリーズのうちに140点にまず乗せて、さらにそのあともうひと伸び、とか言ってみたい領域にいます。

 

○女子シングル ショートフリー合わせてジャンプの得点が75.00点以上

  J/S Event Name Nation Total Jump
1 J JGP Krasnoyarsk Sofia AKATEVA RUS 233.08 102.30
2 S Finlandia Trophy Kamila VALIEVA RUS 249.24 98.80
3 J JGP Kosice Veronika ZHILINA RUS 216.92 92.02
4 S Finlandia Trophy Elizaveta TUKTAMYSHEVA RUS 233.30 85.47
5 J JGP Krasnoyarsk Anastasia ZININA RUS 206.20 83.31
6 J JGP Ljubljana Adeliia PETROSIAN RUS 210.57 83.23
7 J JGP Ljubljana Sofia SAMODELKINA RUS 205.67 82.18
8 S US International Alexandra TRUSOVA RUS 216.80 81.74
9 J JGP Linz Sofia MURAVIEVA RUS 211.81 81.43
10 S Budapest Trophy Maia KHROMYKH RUS 224.91 79.93
11 J JGP Linz Isabeau LEVITO USA 208.31 78.74
12 S US International Yeonjeong PARK KOR 212.40 77.73
13 S Lombardia Trophy Alysa LIU USA 219.24 76.80
14 J JGP Krasnoyarsk Elizaveta KULIKOVA RUS 196.83 75.42
15 S Finlandia Trophy Alena KOSTORNAIA RUS 218.83 75.38

ジャンプで稼いだ得点のトップは、ジュニアのアカチエワ選手でした。ジャンプだけで100点を超えてます。ショートで単独トリプルアクセルが飛べるルール(=シニアルール)だったらもっと出ていたはずです。

ワリエワ選手が2位。98.80も十分すごいスコアです。トリプルアクセルの決まる決まらないあたりの差でアカチエワ選手が上にいます。

トゥクタミシェワ選手が4位。ジャンプだけでワリエワ選手と13点ほど差がついています。

トゥルソワ選手は8番目。USインターナショナルではジャンプが決まっていませんでしたのでこれくらいの位置になります。全部決まれば彼女が最強。

ロシア勢以外ではアメリカのジュニア、レビト選手がトップの78.74です。彼女はトリプルアクセル以上のジャンプはないのですが、高いGOEで得点を稼いでいます。

四回転ルッツのイメージのあるシェルバコワ選手は74.31でリストに入ってきませんでした。四回転がこの試合では決まらなかったというのもありますが、ほかで稼ぐ割合がロシア勢の中では割と大きい、というのもあるかと思います。

 

○女子シングル ショートフリー合わせてスピンの得点が25.00以上

  J/S Event Name Nation Total Spin
1 S Finlandia Trophy Kamila VALIEVA RUS 249.24 28.55
2 S Finlandia Trophy Karen CHEN USA 202.49 26.45
3 J JGP Krasnoyarsk Sofia AKATEVA RUS 233.08 26.40
4 S Finlandia Trophy Loena HENDRICKX BEL 212.07 25.98
5 S Finlandia Trophy Alena KOSTORNAIA RUS 218.83 25.89
6 S Budapest Trophy Anna SHCHERBAKOVA RUS 222.73 25.85
7 J JGP Linz Isabeau LEVITO USA 208.31 25.78
8 J JGP Krasnoyarsk Elizaveta BERESTOVSKAIA RUS 196.07 25.68
9 S Budapest Trophy Maia KHROMYKH RUS 224.91 25.55
10 J JGP Ljubljana Adeliia PETROSIAN RUS 210.57 25.30
11 S Cranberry Cup Alysa LIU USA 205.74 25.24
12 S US International Yeonjeong PARK KOR 212.40 25.21
13 S Finlandia Trophy Elizaveta TUKTAMYSHEVA RUS 233.30 25.05
14 J JGP Krasnoyarsk Elizaveta KULIKOVA RUS 196.83 25.00

スピンのトップスコアはワリエワ選手。他の選手と2点以上差があります。四回転を飛べない選手がジャンプ以外のところで差を詰めよう、と考えても、スピンでもっと差がつきますというのが現実。ジャンプではなくスピンこそ、彼女にとって比類ない技量があると言える分野だったりします。

スピンのスコア2番目はカレンチェン選手。スピンに定評のある選手です。ジャンプをきっちりこなせれば上位に来る選手。

アカチエワ選手が3番目にいます。この辺彼女もジュニア時代からジャンプだけでなくほかの分野も優れているということでワリエワ選手型。ワリエワ選手にトリプルアクセルを付けたようなとてつもない選手です。

トゥクタミシェワ選手は13番目。2シーズン前はせいぜい21点台でしたから、この2シーズンでここも随分伸びたことになります。ジャンプだけでなくこういった分野でもベテランになってから点を伸ばしています。

 

○女子シングル ショートフリー合わせてステップ系要素の得点が14.00以上

  J/S Event Name Nation Total Step
1 S Finlandia Trophy Kamila VALIEVA RUS 249.24 16.16
2 S Finlandia Trophy Loena HENDRICKX BEL 212.07 15.70
3 S Finlandia Trophy Karen CHEN USA 202.49 15.27
4 S Budapest Trophy Maia KHROMYKH RUS 224.91 15.27
5 S Budapest Trophy Anna SHCHERBAKOVA RUS 222.73 15.13
6 S Lombardia Trophy Alysa LIU USA 219.24 15.03
7 S Asian Open Figure SAKAMOTO Kaori JPN 202.28 14.65
8 S Nebelhorn Trophy Ekaterina KURAKOVA POL 193.58 14.45
9 S US International Gabriella IZZO USA 182.76 14.38
10 S Finlandia Trophy Eva-Lotta KIIBUS EST 202.04 14.33
11 S Nebelhorn Trophy Josefin TALJEGARD SWE 166.05 14.18
12 S US International Alexandra TRUSOVA RUS 216.80 14.14
13 S Finlandia Trophy Amber GLENN USA 183.46 14.01

ステップ系要素はコレオシークエンスを含みますのでジュニアは必然的に入ってきません。アカチエワ選手がいないのはそのためです。

これもトップスコアはワリエワ選手。スピンステップ2分野でトップ。そんな選手が4回転を飛ぶわけです。周りは絶望したくもなります。

2番手3番手に非ロシア圏からヘンドリックス選手とカレンチェン選手が続きます。二人とも実績のある選手。大きな大会の表彰台を経験してほしいのですが、なかなか縁がありません。

坂本花織選手が7番目に入りました。フリーボロボロのアジアンオープンフィギュア、というか今シーズンのフリープログラムですが、それでもステップ評価は相変わらず高いです。ちゃんと滑れば15点台まで出ます。

ステップ系要素は比較的ロシア勢が弱めな要素です。ロシア以外の名前を多く見かけます。

 

ワリエワ選手の強さが目立つシーズンランキングでしたが、まだグランプリシリーズも始まっていない時点のものです。シーズンは長い。トゥルソワ選手も鮮烈なシニアデビューを飾りましたがそのシーズン、結局大きなタイトルは取れませんでした。逆にザギトワ選手はシーズン前半はショートプログラムで転倒したりと今一つ調子が上がり切らない中なんとか勝ち進んでいき、シーズン半ばから調子を上げオリンピックを勝ち切りました。

今の調子と2月の調子が一致するわけではありません。また、オリンピックだけがフィギュアスケートでもないでしょうし。

というわけで次は、グランプリ6戦、楽しんでいけたらと思います。