世界選手権23 女子シングルレビュー3

世界選手権の振り返り、前回からの続きで女子シングルの数値編3回目です。

 

○ショートフリー合わせた要素別のスコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Kaori SAKAMOTO 224.61 110.34 59.99 14.10 24.62 15.56
2 Haein LEE 220.94 105.90 65.28 10.09 25.21 14.46
3 Loena HENDRICKX 210.42 105.34 63.49 3.08 25.88 14.63
4 Isabeau LEVITO 207.65 102.77 61.07 4.43 25.38 15.00
5 Mai MIHARA 205.70 102.87 59.76 2.68 25.08 15.31
6 Chaeyeon KIM 203.51 92.12 66.41 6.97 24.12 13.89
7 Nicole SCHOTT 197.76 96.13 59.14 7.43 22.66 13.40
8 Kimmy REPOND 194.09 90.34 64.94 5.79 20.40 12.62
9 Niina PETROKINA 193.49 95.27 63.90 -1.76 22.74 13.34
10 Rinka WATANABE 192.81 95.88 67.20 -4.19 21.92 14.00
11 Nina PINZARRONE 191.78 87.39 64.21 2.88 24.53 12.77
12 Amber GLENN 188.33 93.09 59.81 -0.94 22.08 14.29
13 Madeline SCHIZAS 187.49 90.12 62.01 3.64 21.06 11.66
14 Anastasiia GUBANOVA 184.92 94.80 59.61 -1.42 21.39 11.54
15 Bradie TENNELL 184.14 97.06 53.39 -6.64 25.66 14.67
16 Ekaterina KURAKOVA 181.43 89.10 59.89 -3.09 22.48 13.05
17 Lara Naki GUTMANN 178.43 82.79 59.81 3.51 19.49 12.83
18 Yelim KIM 174.30 93.33 47.66 0.33 21.75 12.23
19 Olga MIKUTINA 172.31 81.87 61.70 -6.64 23.48 13.90
20 Julia SAUTER 165.62 78.65 57.37 -2.78 20.79 11.59
21 Janna JYRKINEN 160.91 75.24 60.56 -5.04 19.33 10.82
22 Lindsay VAN ZUNDERT 159.55 77.86 59.07 -7.19 19.62 10.19
23 Sofja STEPCENKO 158.38 71.64 62.70 -2.64 18.39 9.29
24 Alexandra FEIGIN 155.74 70.27 55.27 1.21 20.09 8.90

フリー進出24人のショートフリー合わせた要素別のスコアを見ていきます。

PCSは坂本選手1人が110点越え、5位の三原選手までは100点越えです。その次は総合順位は15位でしたがブレイディテネル選手が97.06でPCS順位6位になっています。来期の全面復活をお待ちしております。

ジャンプの基礎点は結局渡辺倫果選手がトップでした。ショートでルッツ零点をやりながらもトップ。アンダーローテーションながらトリプルアクセルが2本入っていることが効いています。キムチェヨン選手が2位、イ・ヘイン選手が3位。フリーで素晴らしい出来だった2人は基礎点削られるミスなく、高い基礎点となりました。坂本選手は13位、三原舞依選手は16位。坂本選手はなんとか他でカバーしきれましたが、三原選手は普通に滑れば3位まであったわけで、ジャンプミスが痛かったです。

ジャンプの加点は坂本選手とイ・ヘイン選手の2人が二桁稼ぎました。ノーミスのニコルショット選手が3番目。ショット選手はショートフリーでルッツなし構成のため基礎点の方がノーミスながら上がっていません。三原選手はここももう少し稼ぎたいところでした。

スピンはヘンドリックス選手が25.88で1位。2位はブレイディテネル選手です。25点越えは5人いました。

ステップ系要素は坂本花織選手の15.56が1位でした。このスコアは今シーズンのISU公認試合での最高スコアです。三原選手が2位。三原選手のワールドユニバーシティゲームズの15.78が非公認含めての今シーズン国際大会の最高スコアでした。上位の中では上位の中では8位のレポンド選手が12.62と低め。スピンも低いのですが、この辺のスピンステップが伸びてくると200点に普通に乗ってくる選手になれそうです。

 

以下、個別の要素を見ます

 

トリプルアクセル

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
FS GLENN 1 3A< < 6.40   -3.11 3.29 -4.778
SP WATANABE 1 3A< < F 6.40   -3.20 3.20 -5.000
FS WATANABE 1 3A< < F 6.40   -3.20 3.20 -5.000

今大会は4回転無し。最高難度はトリプルアクセルだったわけですが、プログラムに入れていたのは2人で3回。いずれもアンダーローテーションとなりました。アンバーグレン選手は転倒はしなかったことでGOEは-5まではいかずにスコアは3.29残りました。渡辺倫果選手はショートフリー共に転倒です。

 

○3連続ジャンプで平均GOEが+1.000以上

Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
SAKAMOTO 9 2A+3T+2T   9.68 X 1.26 10.94 3.111
WATANABE 8 2A+1Eu+3S   8.91 X 1.11 10.02 2.556
SCHIZAS 7 2A+2T+2A+SEQ   8.69 X 0.80 9.49 2.444
Chaeyeon KIM 7 3F+2T+2Lo   9.13 X 1.06 10.19 1.889
HENDRICKX 8 3F+2T+2Lo   9.13 X 0.98 10.11 1.889
LEVITO 8 3Lz+1Eu+3S   11.77 X 1.01 12.78 1.667
Haein LEE 8 3Lz+2T+2Lo   9.79 X 1.01 10.80 1.667
SCHOTT 1 3F+2T+2Lo   8.30   0.83 9.13 1.667
STEPCENKO 1 3F+2A+2A+SEQ   11.90   0.83 12.73 1.556
PINZARRONE 6 3Lo+2A+2T+SEQ   10.45 X 0.56 11.01 1.222
PETROKINA 2 3Lz+1Eu+3S   10.70   0.59 11.29 1.111

昨年の世界選手権では平均GOEがプラスになったのが7人しかいなかったのですが、今回は18人もいました。

坂本選手が平均GOE+3越えと高い評価です。渡辺倫果選手、マデリンシーザス選手までは+2以上。ダブルアクセル起点を選んだ3選手が高い評価を受けました。

今シーズンから1.0倍になったシークエンスを3連続に入れている選手も結構います。

 

○セカンド3回転で平均GOEが+2.000以上のジャンプ

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
SP SAKAMOTO 5 3F+3T   10.45 X 1.89 12.34 3.556
FS Chaeyeon KIM 1 3Lz+3T   10.10   1.85 11.95 3.111
FS SAKAMOTO 9 2A+3T+2T   9.68 X 1.26 10.94 3.111
FS Haein LEE 1 2A+3T   7.50   1.26 8.76 3.111
FS HENDRICKX 1 3Lz+3T   10.10   1.69 11.79 2.889
FS GLENN 2 3F+3T   9.50   1.44 10.94 2.778
FS MIHARA 1 2A+3T   7.50   1.14 8.64 2.778
FS SCHIZAS 1 3Lz+3T   10.10   1.60 11.70 2.667
FS GUBANOVA 1 3Lz+3T   10.10   1.52 11.62 2.667
SP Haein LEE 2 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.556
FS MIKUTINA 1 3Lz+3T   10.10   1.18 11.28 2.000

セカンド3回転というのは女子の中では非常に鍵になるジャンプかと思われます。

これも最高評価は坂本花織選手。ショートプログラムで決めていて、これがショート首位の1つの原動力となっていました。

キムチェヨン選手、イ・ヘイン選手、ヘンドリックス選手とフリーで上位に来た選手は軒並み高評価です。アンバーグレン選手は冒頭トリプルアクセル決まらなかった後にコンビネーションを決め、これは乗って来るかと思われたのですが後が続きませんでした。三原選手も冒頭は良かったですがというこの評価です。

ショートよりもフリーの方が評価の高い選手が多かったです。

 

○平均GOE+3.500以上の要素

  Name   Elements    Base   GOE Scores AvGOE
SP HENDRICKX 5 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.444
FS SAKAMOTO 1 2A   3.30   1.46 4.76 4.444
SP SAKAMOTO 6 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
SP SAKAMOTO 1 2A   3.30   1.37 4.67 4.111
FS Haein LEE 11 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
FS HENDRICKX 5 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
FS HENDRICKX 12 LSp4   2.70   1.12 3.82 4.000
SP LEVITO 6 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.889
FS SAKAMOTO 6 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.889
SP HENDRICKX 3 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.889
FS Haein LEE 12 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 3.889
FS TENNELL 12 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.889
FS MIHARA 11 ChSq1   3.00   2.00 5.00 3.889
SP SAKAMOTO 7 LSp4   2.70   1.08 3.78 3.889
FS PINZARRONE 12 LSp4   2.70   1.08 3.78 3.778
SP TENNELL 7 CCoSp4   3.50   1.25 4.75 3.667
SP SAKAMOTO 5 3F+3T   10.45 X 1.89 12.34 3.556
SP HENDRICKX 1 3F   5.30   1.89 7.19 3.556
SP MIHARA 6 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.556
FS TENNELL 4 FCCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.556
SP PINZARRONE 7 LSp4   2.70   0.96 3.66 3.556

要素問わず平均GOE+3.500以上の高評価のものをリストアップしました。

最高評価はヘンドリックス選手のショートのステップでした。コンビネーションで転倒した直後の要素だったわけですので強い精神力が見て取れます。

坂本選手のダブルアクセルはショートフリーでどちらも平均GOE+4以上。ダブルアクセルと言えば坂本花織、というのは定着しているようです。

平均GOE+4.000以上は表彰台に乗った3人だけが出していました。他もレビト選手、三原舞依選手と上位5位までの名前が並びますが、上位に入ってこなかった選手からブレイディテネル選手、ピンツァローネ選手の2人はスピンで名を連ねてきています。

 

女子シングルは坂本花織選手の2連覇で幕を閉じました。昨季と違って今期はかなりギリギリでしたが。やはりあのスタイルは1つミスが出ると急に危なくなります。それでも勝ち切った強さですが、韓国勢の台頭も著しい。日韓決戦は浅田真央安藤美姫キムヨナ時代以来、歴史は繰り返さないけれど韻を踏む。

これから2シーズンは基本的にジュニアからシニアに上がって来るめぼしい選手はいません(千葉百音選手や吉田陽菜選手はすでにほぼシニアだし)。年齢制限ルール変更の端境期なのでどうしてもそうなります。そうなると基本的には主要メンバーはしばらく変わらない、と言えそうなのですが、そうは簡単にはいかないのが日本と韓国。シニアのメンバーだけでも層が厚いです。

日本勢はジュニアグランプリファイナル、グランプリファイナル、ワールドユニバーシティゲームズ、世界ジュニア、世界選手権と主要大会のタイトルを獲得しました。4大陸選手権だけは獲れず。来期はワールドユニバーシティゲームズはありませんが、ユースオリンピックを開催予定です。来期はいくつ取れるでしょう。

今年は国別対抗戦もあります。勝っても負けてもある程度は賞金ももらえるお祭り大会。海外の選手は、桜は散ってしまっていると思いますが、日本観光も楽しんでいっていただければと思います。