世界選手権23 女子シングルレビュー2

前回からの続き、世界選手権のレビュー、女子シングル数値編の2回目です

 

○フリーの要素別スコア

Pl Name Nation J Base J GOE Spin Step PCS
1 Haein LEE KOR 46.05 6.18 13.27 10.03 71.79
2 Kaori SAKAMOTO JPN 40.34 8.90 12.18 10.04 73.91
3 Chaeyeon KIM KOR 47.68 7.57 12.49 9.04 62.67
4 Loena HENDRICKX BEL 43.78 3.15 13.27 9.00 70.28
5 Isabeau LEVITO USA 41.36 2.51 13.31 9.60 68.84
6 Mai MIHARA JPN 40.05 0.52 13.11 10.07 68.49
7 Rinka WATANABE JPN 50.79 -1.90 11.00 8.87 64.15
8 Kimmy REPOND SUI 45.71 4.98 10.52 8.05 62.08
9 Nicole SCHOTT GER 41.11 5.35 10.97 8.44 65.60
10 Nina PINZARRONE BEL 45.42 3.42 12.58 8.81 59.51
11 Madeline SCHIZAS CAN 44.08 5.26 10.00 7.84 60.29
12 Niina PETROKINA EST 44.61 -3.80 11.52 9.19 63.97
13 Lara Naki GUTMANN ITA 44.68 2.95 10.78 8.92 55.88
14 Amber GLENN USA 41.62 -1.34 10.98 9.28 62.27
15 Anastasiia GUBANOVA GEO 40.82 0.59 10.58 6.64 61.89
16 Bradie TENNELL USA 34.36 -4.77 13.71 9.54 64.85
17 Ekaterina KURAKOVA POL 42.54 -3.70 10.96 7.87 58.07
18 Olga MIKUTINA AUT 43.31 -3.58 12.42 8.89 55.22
19 Yelim KIM KOR 32.38 1.11 11.73 8.32 60.74
20 Julia SAUTER ROU 40.77 -0.53 10.12 6.91 52.33
21 Janna JYRKINEN FIN 42.50 -2.98 8.91 6.91 49.51
22 Lindsay VAN ZUNDERT NED 43.18 -8.34 9.18 6.47 51.50
23 Alexandra FEIGIN BUL 38.34 1.33 10.16 5.46 45.80
24 Sofja STEPCENKO LAT 43.47 -4.73 8.78 5.38 47.61

フリーのジャンプの基礎点は渡辺倫果選手がトップでした。決まらなくても、アンダーローテーションでも、トリプルアクセルが入れば基礎点は高くなります。他のジャンプも基礎点削られるミスはありませんでした。2位にキムチェヨン選手、3位にイ・ヘイン選手とフリーノーミスで好成績な2人が入ってきます。ミスがあった坂本選手、三原選手はジャンプの基礎点で見ると平凡です。

ジャンプの加点は坂本選手がトップ。ミスしたコンビネーションも抜けで基礎点削られますがGOEはプラスでした。坂本選手はジャンプの基礎点20位なのに加点がトップなことで、ジャンプのスコアは全体5位になっています。2番目にキムチェヨン選手、3番目にイ・ヘイン選手。基礎点高く加点もついて、ジャンプのスコアとしてキムチェヨン選手トップですし、イ・ヘイン選手が2番目です。三原選手は基礎点21位で加点14位、合わせて14位。ジャンプのスコア14位だと表彰台はちょっと苦しかったです。

スピンはテネル選手がトップでした。ジャンプでミスが目立ちましたがこういうところでしっかり力を見せています。来期の完全復活をお待ちしています。レビト選手が2位。アメリカ、スピン強いです。ヘンドリックス選手と坂本選手が3番目で並びます。渡辺選手は11.00 これが13点台ならもう1つ2つ順位を上げることが出来ていました。

ステップ系要素は三原舞依選手トップで坂本花織選手が2位です。ステップは日本女子のお家芸。代表選手が移り変わっていっても歴代強いです。

PCSは坂本選手が9点平均超えでトップ。イ・ヘイン選手、ヘンドリックス選手が70点越えで続きます。

 

○総合上位6選手のフリーの構成

  Kaori SAKAMOTO Haein LEE Loena HENDRICKX Mai MIHARA Isabeau LEVITO Chaeyeon KIM
1 2A 2A+3T 3Lz+3T 2A+3T 3Lz 3Lz+3T
2 3Lz 3Lz+3Tq 2A 3Lz 3T 3Lo
3 3S 3Lo 3F 3S 2A 3S
4 CCoSp4 3S 2A 3Fq CCoSp4 2A
5 3F+2T FCSp4 CCoSp4 FSSp4 3F FCCoSp4
6 StSq4 FCCoSp4 ChSq1 CCoSp4 ChSq1 FCSp4
7 1F+3T ChSq1 3Lzq 2A+3Tq 2A 3F+2T+2Lo
8 FSSp4 3Lz+2T+2Lo 3F+2T+2Lo 3Lz<+REP 3Lz+1Eu+3S 3Lz+2A+SEQ
9 2A+3T+2T 3F 3S+2T 2Lo+2T+2Lo 3F+2T 3F
10 ChSq1 2A FCCoSp4 StSq4 FCSp4 StSq4
11 3Lo StSq4 StSq3 ChSq1 StSq4 CCoSp4
12 FCCoSp3 CCoSp4 LSp4 FCCoSp4 FCCoSp4 ChSq1
Base 56.74 63.15 59.78 56.95 58.46 64.78
GOE 14.72 12.38 9.42 6.80 8.32 12.00
PCS 73.91 71.79 70.28 68.49 68.84 62.67
Total 145.37 147.32 138.48 132.24 134.62 139.45

意外と基礎点高くない上位選手が多いです。坂本選手はフリップ1回転にスピン1つレベル3 ヘンドリックス選手は元から3Lo無しの3回転6本でステップがレベル3 三原選手はルッツリピートにループが2回転、レビト選手はコンビネーションが2つになって3Lo1つ入らず。案外ノーミスが揃わなかった女子でした。

坂本選手以外は冒頭にコンビネーションを入れる構成。レビト選手は3Lz+3Lo予定がルッツで転倒して、セカンド予定のループがどこにも付けられないまま最後まで行ってしまいました。

この上位6人の中でシークエンスアクセルを使ったのはキムチェヨン選手のみ。ルッツ2本、フリップ2本にしてセカンド3Tは1つでシークエンスアクセルを付ける、というのが高難度ジャンプ無しで一番高い基礎点を出すやり方になるわけですが、それを組んだのはキムチェヨン選手だけということになります。3連続3Sは誰もいませんが、高難度ジャンプ無しでそれをやっても基礎点的にはあまり価値はありません(セカンド3Tが苦手な選手にとってはその代替として価値があって、実際にクラコワ選手がそういう構成にしています)

スピンはこの上位6人でレベル3が1つだけ。ショートからそうですが、女子の上位はスピンはレベル4を取るのが当然になっています。

スピンで締める選手が多い中、キムチェヨン選手はコレオ締め。ただ、キムチェヨン選手はシーズン前半はジュニア構成で最後はスピンで終わっていたものを、シニア構成にするのに、コレオのところをステップに入れ替えて、最後にコレオ持ってきて時間調整、という組み換えなので、本編はやはりスピン締めでした。

 

○総合7~12位の選手のフリーの構成

  Nicole SCHOTT Kimmy REPOND Niina PETROKINA Rinka WATANABE Nina PINZARRONE Amber GLENN
1 3F+2T+2Lo 3Lz+3T 2A+3T 3A< 3Lz+3T 3A<
2 3F 3F 3Lz+1Eu+3S 3Lo+3Tq 3Lz 3F+3T
3 3Lo+2A+SEQ 3Lo 3Fq 3Lz+2A+SEQ 3F 2A
4 3Lo 2A 3Lo 3F 3S 3Lo
5 CCoSp4 FCCoSp3 FCCoSp4 FCSp3 FCCoSp4 FSSp4
6 ChSq1 ChSq1 3Lzq ChSq1 3Lo+2A+2T+SEQ StSq4
7 3T+2T 3F+2T+2Lo 3F<+2T 3Lzq 3Lo<+2T 3Lz
8 3S 2A+3T CCoSp4 2A+1Eu+3S 2A 3Lo+REP
9 2A 3S StSq4 3Lo CCoSp4 3F+2T
10 StSq3 LSp4 2A CCoSp4 ChSq1 ChSq1
11 LSp4 StSq3 LSp4 StSq4 StSq4 CCoSp4
12 FCSp3 CCoSp3 ChSq1 FSSp4 LSp4 LSp4
Base 56.41 60.71 61.21 66.99 62.02 57.72
GOE 9.46 8.55 0.31 1.77 8.21 2.82
PCS 65.60 62.08 63.97 64.15 59.51 62.27
Total 130.47 131.34 125.49 131.91 129.74 122.81

ここでは渡辺倫果選手とアンバーグレン選手、2人がトリプルアクセルを構成に入れましたが2人ともアンダーローテーションで転倒となりました。渡辺倫果選手は他に基礎点削られるミスが無かったので、トータル基礎点は66.99で全体1位です。ルッツとループが2本でシークエンスアクセルを入れ、3連サルコウを使いセカンド3回転も入る。トリプルアクセルを構成に入れる利点を生かして基礎点を高める構成が組めています。これが組めるなら結果的にアンダーローテーションの転倒でもトリプルアクセルを構成に入れて損はあまりないです。PCSが多少傷むのと体も多少痛むことを覚悟すれば、成功率低くてもトリプルアクセルを入れる価値はあります。

アンバーグレン選手は3連続が入らない、ループがリピートまであるのでトリプルアクセル入れても基礎点57.72となりました。こうなるとトリプルアクセルの利点が何もなくなってしまいます。ニコルショット選手は滑りとしてはノーミスなのですが、フリップ2本とループ2本でルッツなしの構成で、1.1倍も弱めなこともあり基礎点は56.41にとどまっています。トップ6に入っていくようになるためにはルッツは構成に入れたいでしょうか。

スピン3つともレベル4はペトロキナ選手、ピンツァローネ選手、グレン選手の3人。他は取りこぼしも見られました。ステップは4人レベル4です。

締めはスピンの選手がやはり多いですが、ペトロキナ選手はコレオで締めます。ペトロキナ選手は世界ジュニアにも出ていますがこの時もコレオで締めているので、シニア特別付け足し構成で最後に入っているわけではないです。スピンで締める選手が多い中、ステップやコレオで締められると個性が出せる印象です。

 

○フリー上位12人のPCS

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Haein LEE 26.89 24.50 26.50 26.75 26.75 27.00 27.75 27.00 28.50 26.50
Kaori SAKAMOTO 27.68 26.00 28.00 27.25 27.00 27.25 28.25 28.50 28.25 27.75
Chaeyeon KIM 23.47 23.25 24.75 23.75 23.00 23.00 24.25 22.75 24.50 21.75
Loena HENDRICKX 26.32 25.75 25.00 26.00 26.00 27.00 26.25 27.00 26.50 27.00
Isabeau LEVITO 25.78 25.00 25.50 25.75 25.75 26.50 26.00 25.50 27.75 25.00
Mai MIHARA 25.65 23.50 25.25 25.25 25.75 25.75 27.00 26.00 27.00 24.75
Rinka WATANABE 24.03 24.00 25.25 24.25 24.00 24.50 24.50 24.50 22.50 22.00
Kimmy REPOND 23.25 22.75 24.25 24.00 23.25 23.00 24.50 23.00 22.50 22.50
Nicole SCHOTT 24.57 23.75 24.00 26.25 24.50 23.25 25.00 23.00 25.50 26.00
Nina PINZARRONE 22.29 22.00 22.75 22.50 23.00 22.25 21.25 22.25 24.25 20.50
Madeline SCHIZAS 22.58 21.25 21.25 23.25 23.50 23.75 23.75 22.00 23.50 18.25
Niina PETROKINA 23.96 23.00 24.50 23.50 25.00 23.75 23.75 24.50 23.75 24.00

3項目10点満点の合計で見たPCSスコアになります。係数2.67は掛けていませんので30点満点です。

相変わらずフリーでもジャッジ毎の差はそれなりにありますがショートよりは小さいでしょうか。シーザス選手は9番ジャッジが18.25なのに対して5番6番は23.75なので5.50の差があります。係数掛けると15点近い差が出るという、なかなかな評価差になりました。

 

○フリー上位12人のジャッジ別PCS順位

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Haein LEE 2 4 2 2 2 2 2 2 1 3
Kaori SAKAMOTO 1 1 1 1 1 1 1 1 2 1
Chaeyeon KIM 10 9 7 12 15 14 9 14 9 11
Loena HENDRICKX 3 2 6 4 3 2 4 2 5 2
Isabeau LEVITO 4 3 3 5 4 4 5 5 3 5
Mai MIHARA 5 8 4 7 4 5 3 4 4 6
Rinka WATANABE 8 6 4 10 9 6 7 6 14 10
Kimmy REPOND 12 11 11 11 13 14 7 12 14 8
Nicole SCHOTT 6 7 12 3 7 13 6 12 7 4
Nina PINZARRONE 16 14 14 16 15 17 16 16 10 15
Madeline SCHIZAS 15 17 15 14 11 8 10 17 12 18
Niina PETROKINA 9 10 9 13 6 8 10 6 11 7

スコアではなく順位で見てみます。

坂本選手には人が1位を付けましたが8番ジャッジだけはイ・ヘイン選手を1位と付けました。

割れているのは早い滑走順で高いTESを出した選手に顕著です。ニコルショット選手は3番ジャッジは3位と付けたのに5番ジャッジは13位。なお、この3番ジャッジはショートの時は8番ジャッジを務めていてニコルショット選手に2位をつけていました。渡辺倫果選手も4位を付けたジャッジから14位を付けたジャッジまで割れています。2番ジャッジは渡辺選手はヘンドリックス選手より上という評価でした。第2グループ、第3グループは、いい演技をしたときにPCSがしっかり高くつくジャッジと、そうでもないジャッジに分かれる、という傾向があるかもしれません。

 

もう一回続きます。