世界選手権24 女子シングルレビュー2

前回の続きで女子シングルの振り返り2回目。今回はフリーの数値編です

 

○フリーの要素別スコア

Pl Name Nation J Base J GOE Spin Step PCS
1 Kaori SAKAMOTO JPN 44.44 8.67 12.68 9.29 74.59
2 Isabeau LEVITO USA 45.12 2.83 10.46 9.63 70.39
3 Chaeyeon KIM KOR 47.58 4.01 12.19 9.03 63.87
4 Kimmy REPOND SUI 45.71 4.01 11.26 9.17 63.23
5 Mone CHIBA JPN 44.54 3.55 12.73 8.56 63.44
6 Hana YOSHIDA JPN 49.90 0.11 11.18 6.98 63.20
7 Anastasiia GUBANOVA GEO 46.20 -0.65 9.69 7.59 60.93
8 Loena HENDRICKX BEL 34.13 0.39 11.49 8.86 69.40
9 Livia KAISER SUI 47.11 2.12 9.60 6.40 57.96
10 Ekaterina KURAKOVA POL 43.91 -1.12 11.14 9.19 59.30
11 Amber GLENN USA 35.80 2.60 10.61 7.66 65.33
12 Haein LEE KOR 39.91 -4.20 12.49 8.24 65.49
13 Olga MIKUTINA AUT 35.02 1.69 12.38 8.76 59.14
14 Young YOU KOR 34.05 2.19 12.05 7.87 60.82
15 Lorine SCHILD FRA 44.92 -3.08 9.89 7.75 55.01
16 Nina PINZARRONE BEL 40.72 -5.00 11.84 7.19 59.67
17 Madeline SCHIZAS CAN 33.02 4.03 10.07 5.87 59.14
18 Niina PETROKINA EST 37.88 -5.81 11.00 8.26 59.97
19 Sarina JOOS ITA 42.91 -5.29 9.73 7.27 53.03
20 Josefin TALJEGARD SWE 31.95 -3.95 10.99 8.56 58.37
21 Nataly LANGERBAUR EST 36.02 -0.71 9.93 7.46 53.04
22 Tzu-Han TING TPE 34.85 -4.06 11.26 7.20 52.26
23 Mia RISA GOMEZ NOR 36.72 -7.36 10.13 6.49 48.06
24 Nella PELKONEN FIN 26.53 -2.40 8.25 6.79 50.46

フリーのジャンプの基礎点は吉田陽菜選手が1位。トリプルアクセルを決めただけでなく、他のジャンプも大きなミスが無く基礎点を稼ぎました。表彰台に乗ったキムチェヨン選手が2位。大躍進のカイザー選手が3位でした。グレン選手はトリプルアクセルを決めたのに35.80とフリー24人中17位。トリプルアクセルだけではダメ、ということです。

ジャンプのGOEは坂本選手が1位でした。キムチェヨン選手とレポンド選手が並んで2位。ジャンプのスコアとしてはキムチェヨン選手が1位ということになります。ジャンプで表彰台に乗りました。

スピンは千葉選手が1位で坂本選手が2位でした。二人ともスピンが苦手ということは無いですが、すごく得意というほどでもなく、シニアの日本勢がスピンでこうやって上位を占めるのは比較的珍しいです。イ・ヘイン選手が3番目。こちらは昨季もスピンでスコアを稼いでいました。

ステップ系要素はレビト選手が1位でした。坂本選手が2位でクラコワ選手が3位です。いつもなら10点を超える選手がいるのですが今回は全体的に伸びなかったようです。

PCSは坂本選手が1位。レビト選手が続いて2位ですが、70点台はここまで。へんドリックス選手やイ・ヘイン選手といったPCSで稼げる選手が今回のフリーではあまり伸びていませんでした。

 

○総合上位6選手のフリーの構成

 

Kaori

SAKAMOTO

Isabeau

LEVITO

Chaeyeon

KIM

Loena

HENDRICKX

Kimmy

REPOND

Haein

LEE

1 2A 3Lz!+3Tq 2A 3Lz+2T 3F+3T 2A+3T<
2 3Lze 2A 3Lz+3T 2A 3Lz! 1Lz+3Tq
3 3S 3F 3Lo 3F 3Lo 3Loq
4 CCoSp4 2A 3F! 2A 2A 3S
5 StSq3 CCoSp4 FCCoSp4 CCoSp3 FCCoSp4 FCSp4
6 3F+2T 3Lze+1Eu+3S 3F!+2T+2Lo ChSq1 ChSq1 FCCoSp4
7 FSSp4 ChSq1 3Lz+2A+SEQ 2Lz+3T<< 3F+2T+2Lo ChSq1
8 3F+3T 3F+2T StSq4 3F<+REP 2A+3T 3Lzq+2T+2Lo
9 2A+3T+2T 3Lo ChSq1 3Sq+2T+2Lo 3S 3F!
10 ChSq1 FCSp3 3Sq FCCoSp3 LSp3 2A
11 3Lo StSq4 FCSp4 StSq3 StSq4 StSq3
12 FCCoSp4 FCCoSp2V CCoSp4 LSp4 CCoSp4 CCoSp4
Base 60.74 60.20 64.68 49.13 62.01 56.41
GOE 14.34 7.84 8.13 5.74 8.14 0.03
PCS 74.59 70.39 63.87 69.40 63.23 65.49
Total 149.67 138.43 136.68 123.27 133.38 121.93

上位選手の中で基礎点ベースでノーミスと言えるのはキムチェヨン選手くらいでした。64.68というのは今期全体で4位の基礎点構成。トリプルアクセル無し構成では今季1番高い基礎点です。

レポンド選手もほぼノーミスですがレイバックスピンがレベル3な分0.30基礎点が下がります。坂本選手はルッツのeとステップのレベル、レビト選手はルッツのeとさらにスピン2つで基礎点が削られました。ヘンドリックス選手、イ・ヘイン選手は十分な滑りが出来ていません。

2回飛ぶジャンプがルッツとフリップなのがレビト選手とヘンドリックス選手にキムチェヨン選手、ルッツとトーループなのがイ・ヘイン選手、フリップとトーループなのが坂本選手とレポンド選手です。ヘンドリックス選手はもともとループが無いので6トリプル構成なところでミスまで出てしまうと基礎点が出ない。さすがに49.13の基礎点だと勝負にならなかったです。

加点はさすがの坂本花織選手、全選手中ただ一人の二桁だったわけですが、レポンド選手、キムチェヨン選手も大きく稼ぎました。レビト選手はノーミスに見えてeと!とVで伸び悩んだ部分もありました。イ・ヘイン選手は全体的に苦労した印象で、結局加点を獲れなかった構図です。

全員がスピンで締める構成。冒頭は4つジャンプをまとめる選手が多いですが、坂本選手は3つまでで4つ目の要素はスピンを入れています。ステップとコレオを繋げているのはキムチェヨン選手。魅せる力がないとこの構成は間延びしてしまうのですが、しっかり滑り切りました。

 

○総合7~12位の選手のフリーの構成

 

Mone

CHIBA

Hana

YOSHIDA

Livia

KAISER

Amber

GLENN

Ekaterina

KURAKOVA

Young

YOU

1 3F+3T 3Aq 3Lz+3T 3A 3Lz+1Eu+3F!q 3Lz+3T
2 2A 2A+3T 3F+2A+SEQ 3F+3T 3Lo 3S
3 3S 3Lo 3F 3Lo+2T 3Tq 3F!
4 CCoSp4 FCCoSp4 3S 2S 3S 2Lo
5 3Lo<< 3F! CCoSp4 FSSp3 FCCoSp4 FCSp4
6 ChSq1 3Lzq 3Lz+2T+2Loq StSq2 3Lo+2A+SEQ 2A+2T
7 3F+2T+2Lo ChSq1 3Lo 1Lz 3Sq+2T 1Lz
8 3Lz+2A+SEQ 3Lz+2T 2A 3Lo< 2A ChSq1
9 FCCoSp4 3S+2A+2T+SEQ StSq2 3Fq LSp4 2A+2T+2Loq
10 3Lz! CCoSp4 FSSp4 ChSq1 StSq4 FCCoSp4
11 StSq3 StSq2 ChSq1 CCoSp4 ChSq1 StSq3
12 LSp4 SSp4 FCCoSp3 LSp4 CCoSp4 CCoSp4
Base 60.54 65.00 62.21 50.20 60.51 50.55
GOE 8.84 3.17 3.02 6.47 2.61 5.61
PCS 63.44 63.20 57.96 65.33 59.30 60.82
Total 132.82 130.37 123.19 122.00 122.42 115.98

フリーで上がってきた選手、フリーで失敗して落ちてきた選手が入り混じる7~12位。

トリプルアクセルを降りた吉田陽菜選手が全選手中1位の基礎点でした。ただ、セカンド3回転が2回あるはずが1つになった分、本人としては基礎点伸びていません。トリプルアクセルをしっかり決めたもう一人、アンバーグレン選手は他のジャンプが崩れてしまったので基礎点50.20で終わっています。残念。順位を上げたカイザー選手はジャンプノーミス。千葉選手はループが1つダウングレードだったことで予定ほど基礎点は伸びませんでした。クラコワ選手は予定構成で基礎点満額なのですが、それでも60.51までなのがつらいところ。

加点は千葉選手がしっかり稼ぎました。グレン選手は序盤3つのジャンプまでの加点が大きかったです。

2回飛ぶジャンプはルッツとフリップが千葉選手とカイザー選手、吉田選手とユヨン選手はルッツとトーループ予定でトーループ2本目入らず、グレン選手はフリップとループ、クラコワ選手はループとサルコウです。クラコワ選手はやはり構成的にちょっと厳しい。

ここの6人も全員スピンで締めます。冒頭4つジャンプ続ける選手が多い中で千葉選手と吉田選手は3つ目までジャンプで4つ目にスピンを入れます。上位12選手の中で日本の3選手だけ4つ目にスピンを持ってくる構成。お国柄なんでしょうかこれ。

ここの6人でステップレベル4はクラコワ選手のみ。スピンは千葉選手、吉田選手、クラコワ選手とユヨン選手がオールレベル4でした。

クラコワ選手はステップとコレオを繋げます。氷の上を走りだす振り付けは印象的でしたし、演技終わってから走り出す姿も印象的でした。

 

○フリー上位18人のPCS

Name J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Kaori SAKAMOTO 28.50 28.00 26.50 28.50 27.75 28.00 27.00 28.00 28.25
Isabeau LEVITO 27.00 26.75 25.75 27.25 26.25 25.75 27.25 25.50 25.75
Chaeyeon KIM 23.75 24.75 22.00 26.75 24.00 24.50 23.00 24.00 23.50
Kimmy REPOND 24.00 23.75 23.25 24.25 23.75 23.50 24.25 23.50 22.75
Mone CHIBA 24.25 24.00 20.50 23.50 23.50 24.25 23.50 24.50 23.25
Hana YOSHIDA 23.75 24.00 23.75 26.00 23.50 23.25 22.75 22.75 24.50
Anastasiia GUBANOVA 23.00 23.00 21.00 23.00 23.50 21.00 23.00 23.00 24.00
Loena HENDRICKX 27.00 25.75 24.75 28.00 25.75 25.25 26.00 25.75 26.25
Livia KAISER 22.25 22.75 19.00 22.75 23.00 21.75 21.00 20.00 21.50
Ekaterina KURAKOVA 22.75 23.00 18.75 22.00 22.25 21.75 22.75 22.25 22.00
Amber GLENN 25.25 24.50 22.25 25.00 24.25 25.00 23.25 24.25 25.75
Haein LEE 25.25 25.25 23.50 26.75 23.50 24.50 23.50 24.00 25.25
Olga MIKUTINA 22.00 23.00 21.75 22.00 21.75 22.00 22.75 22.00 22.00
Young YOU 22.50 24.25 21.75 23.25 23.00 22.75 22.50 22.50 23.00
Lorine SCHILD 20.50 21.00 19.50 21.75 21.50 20.25 18.50 20.50 20.75
Nina PINZARRONE 22.25 23.75 21.75 22.50 22.00 22.00 22.50 22.25 22.50
Madeline SCHIZAS 22.25 21.50 20.75 22.00 22.50 23.00 23.25 22.00 21.50
Niina PETROKINA 22.00 22.75 23.00 22.00 22.25 21.50 22.50 23.00 22.75

フリーのPCSもやはり9人のジャッジでそれなりに差があります。上位で差が大きかったのはキムチェヨン選手。最終グループ1番滑走で出てきて、あとに有力選手も残る仲いい滑りをしたときにどこまで出すか。それが分かれたように感じます。最低で22.00から最高で26.75まで。その差4.75に係数2.67を掛けると12.68の差が付きます。千葉選手、カイザー選手、クラコワ選手も4点以上の差がジャッジ間で付きました。その滑走順で想定されるよりいい滑りをしてくると、PCS評価のばらつきが大きくなる、という傾向があるようにも見えました。このあたりの選手は係数掛けた後で見るとジャッジ間で10点以上の差が出ます。誰がジャッジかによって表彰台争い、枠取り争い、結果が変わっていた可能性があるわけです。

 

○フリー上位18人のジャッジ別PCS順位

Name J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Kaori SAKAMOTO 1 1 1 1 1 1 2 1 1
Isabeau LEVITO 2 2 2 3 2 2 1 3 3
Chaeyeon KIM 8 5 9 4 5 5 10 6 8
Kimmy REPOND 7 10 6 8 6 8 4 8 12
Mone CHIBA 6 8 16 9 7 7 5 4 9
Hana YOSHIDA 8 8 4 6 7 9 12 11 6
Anastasiia GUBANOVA 10 12 13 11 7 18 10 9 7
Loena HENDRICKX 2 3 3 2 3 3 3 2 2
Livia KAISER 13 15 18 12 11 15 18 19 17
Ekaterina KURAKOVA 11 12 19 14 14 15 12 13 15
Amber GLENN 4 6 8 7 4 4 8 5 3
Haein LEE 4 4 5 4 7 5 5 6 5
Olga MIKUTINA 16 12 10 14 17 13 12 15 15
Young YOU 12 7 10 10 11 11 15 12 10
Lorine SCHILD 20 20 17 18 18 19 23 18 20
Nina PINZARRONE 13 10 10 13 16 13 15 13 14
Madeline SCHIZAS 13 18 14 14 13 10 8 15 17
Niina PETROKINA 16 15 7 14 14 17 15 9 12

続いてジャッジ毎のPCS順位を見ます。8人のジャッジが坂本選手を1位としました。レビト選手1位としたのが1人です。2位をレビト選手としたのが5人、ヘンドリックス選手を2位としたのが4人います。この辺は僅差のようでした。その下にイ・ヘイン選手とグレン選手が来ますが滑走順の早かったグレン選手の方がばらつきがやや大きいようです。

それ以下の選手はジャッジ毎の評価の違いが大きいです。

千葉選手は4位と付けたジャッジがいるかと思えば16位とつけたジャッジもいます。この16位と付けたジャッジは吉田選手を4位と付けていて、日本が嫌いとかそういう特殊な理由で16位を付けたわけではなさそうです。吉田選手も4位があれば12位という評価もあります。

 

もう一回続きます。